変色もしくは消色可能な水性ボールペン用インキ組成物
【課題】本発明の課題は、インキ垂れ下がりなく、筆跡のにじみや裏抜け等による被記録媒体から受けるｐＨ変化抑制することができ、かつインキ溶解安定性に優れた水性ボールペン用インキ組成物を提供することである。
【解決手段】少なくとも水、ｐＨ調整剤、ｐＨ指示薬、及び剪断減粘性付与剤（イオンの反発によって増粘する剪断減粘性付与剤を除く）を含有してなる水性ボールペン用インキ組成物であることを特徴とする。
【解決手段】少なくとも水、ｐＨ調整剤、ｐＨ指示薬、及び剪断減粘性付与剤（イオンの反発によって増粘する剪断減粘性付与剤を除く）を含有してなる水性ボールペン用インキ組成物であることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は水性ボールペン用インキ組成物に関し、さらに詳細としては該インキ組成物中にｐＨ指示薬、剪断減粘性付与剤を含有することで、筆跡が経時的又は任意的に消色もしくは変色可能な水性ボールペン用インキ組成物に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
従来より、筆記後の筆跡を任意的、あるいは経時的なｐＨの変化により消色もしくは変色するｐＨ指示薬を用いた筆記具用インキが多く提案されている。
【０００３】
こうした筆記後の筆跡を任意的、あるいは経時的なｐＨの変化により消色もしくは変色できるｐＨ指示薬を用いた筆記具用インキとしては、特開昭５４−１６１４２８号公報「インク組成物」や特開２００２−３５６６３１号公報「消色性水性インキ」では筆記後の筆跡を任意的に消色できるｐＨ指示薬を用いた筆記具用インキとして、特開平５−５９３１２号公報「消色性インキ組成物」では筆記後の筆跡を経時的なｐＨの変化により消色できるｐＨ指示薬を用いた筆記具用インキが従来技術として知られている。
【特許文献１】「特開昭５４−１３１４２８号公報」
【特許文献２】「特開平５−５９３１２号公報」
【特許文献３】「特開２００２−３５６６３１号公報」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
しかし、従来のインキは粘度が極めて低く、ペン先部からのインキ垂れ下がり、筆記時には筆跡のにじみや裏抜け、さらには紙面等の被記録媒体へのインキの浸透により、その被記録媒体のｐＨの影響によって、筆記時に不用意に筆跡が変色してしまうことがあった。
【０００５】
こうした問題を鑑みて、インキ粘度を調整し、インキ垂れ下がり、筆跡のにじみ、裏抜けを防止し、被記録媒体から受けるｐＨ変化を抑制するために、インキ組成物中に剪断減粘性付与剤を含有させることが考えられる。
【０００６】
しかし、剪断減粘性付与剤を含有することによって、他のインキ組成物への影響、例えば、ｐＨ指示薬やｐＨ調整剤等の溶解安定性、析出物の発生、インキ組成物のｐＨの変化、インキ溶解安定性等が低下するという新たな問題が発生する。
【０００７】
本発明の目的は、インキ垂れ下がりなく、筆跡のにじみや裏抜け等による被記録媒体から受けるｐＨ変化抑制することができ、かつインキ溶解安定性に優れた変色もしくは消色可能な水性ボールペン用インキ組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【０００８】
本発明は、上記課題を解決するために、水性インキ組成物中に、ｐＨ指示薬、剪断減粘性付与剤等を含有することによって、消色もしくは変色可能な水性ボールペン用インキ組成物を得ることができた。すなわち、本発明は、
「１．少なくとも水、ｐＨ調整剤、ｐＨ指示薬、及び剪断減粘性付与剤（イオンの反発によって増粘する剪断減粘性付与剤を除く）を含有してなる変色もしくは消色可能な水性ボールペン用インキ組成物。
２．前記剪断減粘性付与剤が、多糖類であることを特徴とする第１項に記載の変色もしくは消色可能な水性ボールペン用インキ組成物。
３．前記剪断減粘性付与剤が、キサンタンガムであることを特徴とする第２項に記載の変色もしくは消色可能な水性ボールペン用インキ組成物。
４．ｐＨ調整剤が少なくとも弱塩基性無機塩又は有機酸であることを特徴とする第１項ないし第３項の何れか１項に記載の変色もしくは消色可能な水性ボールペン用インキ組成物。
５．前記水性インキ組成物の粘度が、ずり速度１．９２ｓｅｃ−１、２０℃、において５０〜３０００ｍＰａ・ｓである第１項ないし第４項の何れか１項に記載の変色もしくは消色可能な水性ボールペン用インキ組成物。」である。
【発明の効果】
【０００９】
本発明は、少なくとも水、ｐＨ調整剤、ｐＨ指示薬、及び剪断減粘性付与剤（イオンの反発によって増粘する剪断減粘性付与剤を除く）を含有してなる水性ボールペン用インキ組成物を用いることで、インキ垂れ下がりなく、筆跡のにじみや裏抜け等による被記録媒体から受けるｐＨ変化抑制することができ、かつインキ溶解安定性に優れた変色もしくは消色可能な水性ボールペン用インキ組成物を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１０】
本発明の第一の特徴は、剪断減粘性付与剤（イオンの反発によって増粘する剪断減粘性付与剤を除く）を用いることである。
【００１１】
剪断減粘性付与剤には、大別して、インキ組成物中でイオン反発によって増粘するタイプと、インキ組成物中で溶解分散し、分子鎖が３次元網目構造となる等、イオン反発を利用しないで増粘するタイプと、２種類のタイプに分かれる。
【００１２】
前者のインキ組成物中でイオン反発によって増粘する剪断減粘性付与剤とは、具体的には、架橋型アクリル酸重合体のように、カルボキシル基（−ＣＯＯ−）がイオン反発することによって膨潤し、増粘するものである。そのため、他の組成物、特にｐＨ指示薬の溶解安定性に大きく影響するため、析出物の発生や所望する色が得られない等、溶解安定性に問題がある。
【００１３】
一方、後者のインキ組成物中で分子鎖が３次元網目構造により増粘する等、イオン反発を利用しない剪断減粘性付与剤は、他のインキ組成物、特にｐＨ指示薬への影響が少なく、溶解安定性に優れているため、ボールペン用インキとしては、イオン反発を利用しないで増粘するタイプの剪断減粘性付与剤を用いることが重要である。
【００１４】
本発明に用いることができる剪断減粘性付与剤としては、天然ガム、セルロース、多糖類等の一般的な剪断減粘性付与剤の中からイオンの反発によって増粘する剪断減粘性付与剤を除くものが使用できる。具体的には、グァーガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、ウエランガム、ラムザンガム、カラヤガム、トラガントガム、サクシノグリカン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等が挙げられる。これら剪断減粘性付与剤を単独又は２種以上混合して使用してもよい。特に、溶解安定性を考慮して、非イオン性又は弱イオン性であるグァーガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、等の多糖類を用いることが好ましく、この中でも、耐塩性及びイオン安定性の高いものがよい。また、ボールペン用インキとしては、筆跡が良好なキサンタンガムを用いることが最も好ましい。
【００１５】
剪断減粘性付与剤の含有量は、インキ組成物全量に対して、０．１質量％未満だと、インキ粘度が低く、インキ垂れ下がり、筆跡のにじみや裏抜け等が防止し難く、５．０質量％を超えると、インキ粘度が高く、筆跡のカスレ、書き味が低下する恐れがあるため、０．１質量％以上、５．０質量％以下が望ましい。
【００１６】
本発明に用いるｐＨ指示薬は、ｐＨの変化、例えば、塩基性領域で発色し、酸性領域で消色又は変色、もしくは酸性領域で発色し、塩基性領域で消色又は変色するものであり、消色するｐＨ指示薬としては、ｏ−クレゾールフタレーン、フェノールフタレーン、ｐ−クレゾールフタレーン、チモールフタレーン、γ−ジニトロフェノール、ｐ−ニトロフェノール、ｍ−ニトロフェノール等が挙げられ、これらは単独又は２種以上混合して使用してもよい。また、変色するｐＨ指示薬としては、ブロモフェノールブルー、ブロモフェノールレッド、ブロモチモールブルー、ブロモクレゾールグリーン、ブロモクレゾールパープル、チモールブルー、メチルレッド、メチルオレンジ、メチルバイオレット、フェノールレッド、ｍ−クレゾールパープル、テトラブロモフェノールブルー、キノリンブルー、α−ナフトールフタレーン等が挙げられ、これらは単独又は２種以上混合して使用してもよい。
【００１７】
ｐＨ指示薬は、インキ組成物全量に対して含有量は、０．１質量％未満だと、十分な筆跡の濃さが得られず、１０．０質量％を超えると、析出するため、０．１質量％以上、１０．０質量％以下、好ましくはインキ組成物全量に対して含有量、０．１質量％以上、５．０質量％以下がよい。
【００１８】
ｐＨ調整剤は、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素カリウム等のアルカリ性無機塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の強アルカリ、乳酸、酢酸、クエン酸等の有機酸等が挙げられる。これらのｐＨ調整剤は単独又は２種以上混合して使用してもかまわないが、これらｐＨ調整剤の中でも、ｐＨの安定性に優れる弱塩基性無機塩、及び／又は有機酸、具体的には、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、乳酸、酢酸、クエン酸を用いることが好ましい。
【００１９】
ｐＨ調整剤は、インキ組成物全量に対して含有量は、０．１質量％未満だと所望のｐＨが得られず、２０．０質量％を超えると変色性あるいは消色性が低下するので、０．１質量％以上、２０．０質量％以下、好ましくは、インキ組成物全量に対して、０．１質量％以上、１０．０質量％以下がよい。
【００２０】
また、インキの潤滑性を高めることで滑らかな筆感を有してチップ内の腐食防止を図ることができるため防錆潤滑剤としてリン酸エステル系界面活性剤を用いることができる。具体例としては、プライサーフシリーズ（第一工業製薬（株）社製）、フォスファノールシリーズ（東邦化学工業（株）社製）の中から、プライサーフＡ２１２Ｃ、同Ａ２１０Ｇ、同Ａ２０７Ｈ、同ＡＬ、同Ａ２０８Ｂ、同Ａ２０８Ｓ、同Ａ２０８Ｆ、同Ａ２１２Ｅ、同Ａ２１９Ｂ、同Ａ２０６Ｋ、同Ａ２１７Ｅ、同Ａ２１５Ｃ、同Ａ２１３Ｂ、同Ｍ２０８Ｂ、同Ｍ２０８Ｆ、 フォスファノールＲＥ−２１０、同ＲＥ−４１０、同ＲＥ−５１０、同ＲＥ−６１０、同ＲＥ−７１０、同ＲＥ−９６０、同ＲＳ−４１０、同ＲＳ−６１０、同ＲＳ−７１０、同ＲＢ−４１０、同ＲＭ−４１０、同ＲＭ−５１０、同ＲＭ−７１０、同ＲＬ−２１０、同ＲＤ−５１０Ｙ、同ＲＰ−７１０、同ＲＡ−６００、同ＢＨ−６５０、同ＭＬ−２００、同ＧＢ−５２０等が挙げられる。これらの防錆潤滑剤は単独又は２種以上混合して使用してもよい。含有量は、インキ組成物全量に対し、０．１〜１０．０質量％が望ましい。
【００２１】
その他添加剤として、水性ボールペン用インキ組成物に一般的に用いられる、シリコン系、アセチレングリコール系の濡れ性向上剤等を添加することができ、これらは単独又は２種以上組み合わせて使用することができる。またベンゾトリアゾール、１，２−ベンゾイソチアゾリン−３−オン等の防錆剤、防菌剤も配合可能である。
【００２２】
また、着色剤としては、ｐＨ指示薬に染料及び／又は顔料を併用して用いても良い。染料としては、従来から水性ボールペンに採用されている水溶性染料、直接染料、酸性染料、塩基性染料、含金染料、及び各種造塩タイプ染料等が採用可能である。これらの着色剤は単独又は２種以上混合して使用してもかまわない。また、顔料としては、有機、無機、加工顔料、例えば、カーボンブラック、フタロシアニン系、アゾ系、キナクリドン系、キノフタロン系、スレン系、トリフェニルメタン系等がある。これらの着色剤は単独、２種以上混合して使用してもかまわない。
【００２３】
また、所望により、水溶性有機溶剤を用いることができる。水溶性有機溶剤としては、水分の溶解安定性、水分蒸発乾燥防止等を考慮し、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、チオジグリコール、ポリグリセリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカービトール、エチルカービトール等が挙げられるが、ボールペンとしては、他のインキ組成物、特に剪断減粘性付与剤の溶解安定性を考慮してグリセリンを用いることが最も好ましい。これらの水溶性有機溶剤は単独又は２種以上混合して使用してもよい。含有量は、インキ組成物全量に対し、１．０質量％〜３０．０質量％が望ましい。
【００２４】
次に実施例を示して本発明を説明する。
実施例１
イオン交換水 ７３．５質量部
水溶性有機溶剤（グリセリン） ２０．０質量部
弱塩基性無機塩（炭酸カリウム） ０．５質量部
防錆潤滑剤（リン酸エステル系界面活性剤） ０．２質量部
ｐＨ調整剤（トリエタノールアミン） ５．０質量部
ｐＨ指示薬（メチルレッド） ０．５質量部
防菌剤（１，２−ベンゾイソチアゾリン−３−オン） ０．３質量部
剪断減粘性付与剤（キサンタンガム） ０．５質量部
【００２５】
イオン交換水、水溶性有機溶剤、弱塩基性無機塩、防錆潤滑剤、ｐＨ調整剤、ｐＨ指示薬、防菌剤をマグネットホットスターラーで加温撹拌してベースインキを作成した。
【００２６】
上記作製したベースインキを加温しながら、剪断減粘性付与剤を投入してホモジナイザー攪拌機を用いて均一な状態となるまで混合攪拌した後、濾紙を用い濾過を行って、実施例１の水性ボールペン用インキ組成物を得た。
【００２７】
尚、実施例のインキ粘度は、ブルックフィールド社製 ＤＶ−２＋Ｐｒｏ型粘度計（ＣＰＥ−４２コーンプレート）を用いて、２０℃の環境下で、ずり速度１．９２ｓｅｃ−１（回転数０．５ｒｐｍ）、ずり速度３８４ｓｅｃ−１（回転数１００ｒｐｍ）の２条件にて測定した。比較例の方のインキ粘度は、インキ粘度が低すぎるため、上記粘度計では測定できなかったため、トキメック社製、Ｂ８Ｍ型粘度計（ＢＬローター）を用いて、２０℃の環境下で、回転数、３０ｒｐｍにて測定した。
またｐＨ測定は東亜ディーケーケー社製IＭ−４０Ｓ型ｐＨメーターを用いて、２０℃にて測定した結果である。表１に測定、評価結果を示す。
【表１】
【００２８】
実施例２〜６
表１に示すように各成分を表１に示す配合に変更した以外は、実施例１と同様な手順で実施例２〜６の水性ボールペン用インキ組成物を得た。
尚、実施例６のずり速度３８４ｓｅｃ−１（１００ｒｐｍ）時の粘度は、前述した測定器の測定範囲（６４ｍＰａ・ｓ以下）を超えていたため、ずり速度１．９２ｓｅｃ−１（０．５ｒｐｍ）の粘度（２０００ｍＰａ・ｓ）と別に測定したずり速度１９．２ｓｅｃ−１（５ｒｐｍ）時の粘度（５８５ｍＰａ・ｓ）からｎ値（０．４８）を算出し、外挿法によって、ずり速度３８４ｓｅｃ−１（１００ｒｐｍ）の粘度を算出した値である。
【００２９】
比較例１〜５
インキの配合を表２に示す通りとし、比較例１〜４は、剪断減粘性付与剤を投入せずに実施例１と同様の手順で、比較例５では、イオン反発によって増粘する剪断減粘性付与剤（架橋型アクリル酸重合体：商品名 ハイビスワコー 和光純薬工業（株）製）を配合し、比較例１〜５の水性ボールペン用インキ組成物を得た。表２に測定、評価結果を示す。
【表２】
【００３０】
試験及び評価
実施例１〜６及び比較例１〜５で作製した水性ボールペン用インキ組成物を、インキ収容筒（ポリプロピレン）に、ボール径が０．７ｍｍのボールを回転自在に抱持したボールペンチップ（ステンレス綱線）を装着したボールペン用レフィルに充填し、さらに、水性ボールペン用インキ組成物の後端にグリース状のインキ追従体を充填し、筆記試験用紙としてコピー用紙（ＰＰＣ用紙）を用いて以下の試験及び評価を行った。
【００３１】
にじみ：筆記後のにじみを目視にて観察した。
にじみが発生せず極めて良好なもの ・・・○
実用上において気にならないもの ・・・△
非常に気になるもの ・・・× とした。
【００３２】
裏抜け：筆記後の紙面の裏側に浸透したインキを目視にて観察した。
裏抜けが発生せず極めて良好なもの ・・・○
実用上において気にならないもの ・・・△
非常に気になるもの ・・・× とした。
【００３３】
書き味：手書きによる官能試験を行い評価した。
非常に滑らかで良好なもの ・・・◎
滑らかで良好なもの ・・・○
やや劣るもの ・・・△
引っかかる感じや重く感じるもの ・・・× とした。
【００３４】
インキ垂れ下がり：３０℃、８５％ＲＨの環境下にペン先下向きで２時間放置し、ペン先からのインキ漏れを確認した。
インキ垂れ下がりの発生しなかったもの ・・・◎
ペン先に泣き程度の濡れが発生したもの ・・・○
ペン先にインキ滴が発生したもの ・・・× とした。
【００３５】
筆記後の筆跡変化については、実施例１では筆記後、黄色であったが経時によって赤色に変色した。これは筆記後、一定期間放置しておくと、空気中の二酸化炭素と、インキ組成物中の塩基性の成分（炭酸カリウム）が反応して、経時的にｐＨが低下して、ｐＨ指示薬の構造が変化して変色したためである。
【００３６】
実施例２では、実施例１と同様に青色から黄色に変色し、実施例３、４は、紫色から無色に消色した。
【００３７】
実施例１〜５は剪断減粘性付与剤として非イオン性又は弱イオン性の多糖類を用いたため、イオン安定性が高く、良好な変色を示した。また、実施例１〜４では、キサンタンガムを用いているので、特に溶解安定性が良好であった。
【００３８】
表２に示すように比較例１〜４は、剪断減粘性付与剤を添加しなかったため、筆跡が、にじみ、裏抜けが発生した。また、静止時におけるインキ粘度も低く、垂れ下がり試験においてもペン先にインキ滴が発生してしまい、ひどいものではインキが垂れ落ちてしまうものもみられた。
【００３９】
また、比較例３、４は筆記後、直ぐに、薄色になりやや消色してしまった。これは、紙面に浸透し、紙面の酸性成分と反応して、ｐＨが下がったためと推測できる。
【００４０】
また、比較例５は、イオン反発を利用して増粘する剪断減粘性付与剤を添加したため、インキ組成物中に析出物が発生し、インキ収容筒内に充填できず、評価することができなかった。
【００４１】
本発明の水性ボールペン用インキ組成物のインキ粘度は、インキ垂れ下がりがなく、筆跡のにじみや裏抜け等を防止するために、ずり速度１．９２ｓｅｃ−１（０．５ｒｐｍ）、２０℃の環境下で、５０〜３０００ｍＰａ・ｓとすることが好ましい。また、書き出し性や筆感等を考慮するとともに、ノック式ボールペンのようなペン先を常時、外部に露出する構造とするには、ずり速度１．９２ｓｅｃ−１（０．５ｒｐｍ）、２０℃の環境下で、１０００〜２０００ｍＰａ・ｓとすることが好ましい。
【００４２】
本実施例では便宜上、ｐＨが塩基性領域から低下して変色又は消色するｐＨ指示薬を用いているが、酸性領域で、ｐＨが上昇して変色するタイプのｐＨ指示薬を用いてもよい。この場合、他の塩基性液体を用いて変色又は消色することができる。
【産業上の利用可能性】
【００４３】
本発明は、少なくとも水、ｐＨ調整剤、ｐＨ指示薬、剪断減粘性付与剤（イオンの反発によって増粘する剪断減粘性付与剤を除く）を含有してなる水性ボールペン用インキ組成物を用いることでインキ垂れ下がり等がなく、筆跡が優れた消色もしくは変色可能な水性ボールペン用インキ組成物を提供することができる。そのため、キャップ式、ノック式等、ボールペンとして広く利用することができる。
【技術分野】
【０００１】
本発明は水性ボールペン用インキ組成物に関し、さらに詳細としては該インキ組成物中にｐＨ指示薬、剪断減粘性付与剤を含有することで、筆跡が経時的又は任意的に消色もしくは変色可能な水性ボールペン用インキ組成物に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
従来より、筆記後の筆跡を任意的、あるいは経時的なｐＨの変化により消色もしくは変色するｐＨ指示薬を用いた筆記具用インキが多く提案されている。
【０００３】
こうした筆記後の筆跡を任意的、あるいは経時的なｐＨの変化により消色もしくは変色できるｐＨ指示薬を用いた筆記具用インキとしては、特開昭５４−１６１４２８号公報「インク組成物」や特開２００２−３５６６３１号公報「消色性水性インキ」では筆記後の筆跡を任意的に消色できるｐＨ指示薬を用いた筆記具用インキとして、特開平５−５９３１２号公報「消色性インキ組成物」では筆記後の筆跡を経時的なｐＨの変化により消色できるｐＨ指示薬を用いた筆記具用インキが従来技術として知られている。
【特許文献１】「特開昭５４−１３１４２８号公報」
【特許文献２】「特開平５−５９３１２号公報」
【特許文献３】「特開２００２−３５６６３１号公報」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
しかし、従来のインキは粘度が極めて低く、ペン先部からのインキ垂れ下がり、筆記時には筆跡のにじみや裏抜け、さらには紙面等の被記録媒体へのインキの浸透により、その被記録媒体のｐＨの影響によって、筆記時に不用意に筆跡が変色してしまうことがあった。
【０００５】
こうした問題を鑑みて、インキ粘度を調整し、インキ垂れ下がり、筆跡のにじみ、裏抜けを防止し、被記録媒体から受けるｐＨ変化を抑制するために、インキ組成物中に剪断減粘性付与剤を含有させることが考えられる。
【０００６】
しかし、剪断減粘性付与剤を含有することによって、他のインキ組成物への影響、例えば、ｐＨ指示薬やｐＨ調整剤等の溶解安定性、析出物の発生、インキ組成物のｐＨの変化、インキ溶解安定性等が低下するという新たな問題が発生する。
【０００７】
本発明の目的は、インキ垂れ下がりなく、筆跡のにじみや裏抜け等による被記録媒体から受けるｐＨ変化抑制することができ、かつインキ溶解安定性に優れた変色もしくは消色可能な水性ボールペン用インキ組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【０００８】
本発明は、上記課題を解決するために、水性インキ組成物中に、ｐＨ指示薬、剪断減粘性付与剤等を含有することによって、消色もしくは変色可能な水性ボールペン用インキ組成物を得ることができた。すなわち、本発明は、
「１．少なくとも水、ｐＨ調整剤、ｐＨ指示薬、及び剪断減粘性付与剤（イオンの反発によって増粘する剪断減粘性付与剤を除く）を含有してなる変色もしくは消色可能な水性ボールペン用インキ組成物。
２．前記剪断減粘性付与剤が、多糖類であることを特徴とする第１項に記載の変色もしくは消色可能な水性ボールペン用インキ組成物。
３．前記剪断減粘性付与剤が、キサンタンガムであることを特徴とする第２項に記載の変色もしくは消色可能な水性ボールペン用インキ組成物。
４．ｐＨ調整剤が少なくとも弱塩基性無機塩又は有機酸であることを特徴とする第１項ないし第３項の何れか１項に記載の変色もしくは消色可能な水性ボールペン用インキ組成物。
５．前記水性インキ組成物の粘度が、ずり速度１．９２ｓｅｃ−１、２０℃、において５０〜３０００ｍＰａ・ｓである第１項ないし第４項の何れか１項に記載の変色もしくは消色可能な水性ボールペン用インキ組成物。」である。
【発明の効果】
【０００９】
本発明は、少なくとも水、ｐＨ調整剤、ｐＨ指示薬、及び剪断減粘性付与剤（イオンの反発によって増粘する剪断減粘性付与剤を除く）を含有してなる水性ボールペン用インキ組成物を用いることで、インキ垂れ下がりなく、筆跡のにじみや裏抜け等による被記録媒体から受けるｐＨ変化抑制することができ、かつインキ溶解安定性に優れた変色もしくは消色可能な水性ボールペン用インキ組成物を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１０】
本発明の第一の特徴は、剪断減粘性付与剤（イオンの反発によって増粘する剪断減粘性付与剤を除く）を用いることである。
【００１１】
剪断減粘性付与剤には、大別して、インキ組成物中でイオン反発によって増粘するタイプと、インキ組成物中で溶解分散し、分子鎖が３次元網目構造となる等、イオン反発を利用しないで増粘するタイプと、２種類のタイプに分かれる。
【００１２】
前者のインキ組成物中でイオン反発によって増粘する剪断減粘性付与剤とは、具体的には、架橋型アクリル酸重合体のように、カルボキシル基（−ＣＯＯ−）がイオン反発することによって膨潤し、増粘するものである。そのため、他の組成物、特にｐＨ指示薬の溶解安定性に大きく影響するため、析出物の発生や所望する色が得られない等、溶解安定性に問題がある。
【００１３】
一方、後者のインキ組成物中で分子鎖が３次元網目構造により増粘する等、イオン反発を利用しない剪断減粘性付与剤は、他のインキ組成物、特にｐＨ指示薬への影響が少なく、溶解安定性に優れているため、ボールペン用インキとしては、イオン反発を利用しないで増粘するタイプの剪断減粘性付与剤を用いることが重要である。
【００１４】
本発明に用いることができる剪断減粘性付与剤としては、天然ガム、セルロース、多糖類等の一般的な剪断減粘性付与剤の中からイオンの反発によって増粘する剪断減粘性付与剤を除くものが使用できる。具体的には、グァーガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、ウエランガム、ラムザンガム、カラヤガム、トラガントガム、サクシノグリカン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等が挙げられる。これら剪断減粘性付与剤を単独又は２種以上混合して使用してもよい。特に、溶解安定性を考慮して、非イオン性又は弱イオン性であるグァーガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、等の多糖類を用いることが好ましく、この中でも、耐塩性及びイオン安定性の高いものがよい。また、ボールペン用インキとしては、筆跡が良好なキサンタンガムを用いることが最も好ましい。
【００１５】
剪断減粘性付与剤の含有量は、インキ組成物全量に対して、０．１質量％未満だと、インキ粘度が低く、インキ垂れ下がり、筆跡のにじみや裏抜け等が防止し難く、５．０質量％を超えると、インキ粘度が高く、筆跡のカスレ、書き味が低下する恐れがあるため、０．１質量％以上、５．０質量％以下が望ましい。
【００１６】
本発明に用いるｐＨ指示薬は、ｐＨの変化、例えば、塩基性領域で発色し、酸性領域で消色又は変色、もしくは酸性領域で発色し、塩基性領域で消色又は変色するものであり、消色するｐＨ指示薬としては、ｏ−クレゾールフタレーン、フェノールフタレーン、ｐ−クレゾールフタレーン、チモールフタレーン、γ−ジニトロフェノール、ｐ−ニトロフェノール、ｍ−ニトロフェノール等が挙げられ、これらは単独又は２種以上混合して使用してもよい。また、変色するｐＨ指示薬としては、ブロモフェノールブルー、ブロモフェノールレッド、ブロモチモールブルー、ブロモクレゾールグリーン、ブロモクレゾールパープル、チモールブルー、メチルレッド、メチルオレンジ、メチルバイオレット、フェノールレッド、ｍ−クレゾールパープル、テトラブロモフェノールブルー、キノリンブルー、α−ナフトールフタレーン等が挙げられ、これらは単独又は２種以上混合して使用してもよい。
【００１７】
ｐＨ指示薬は、インキ組成物全量に対して含有量は、０．１質量％未満だと、十分な筆跡の濃さが得られず、１０．０質量％を超えると、析出するため、０．１質量％以上、１０．０質量％以下、好ましくはインキ組成物全量に対して含有量、０．１質量％以上、５．０質量％以下がよい。
【００１８】
ｐＨ調整剤は、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素カリウム等のアルカリ性無機塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の強アルカリ、乳酸、酢酸、クエン酸等の有機酸等が挙げられる。これらのｐＨ調整剤は単独又は２種以上混合して使用してもかまわないが、これらｐＨ調整剤の中でも、ｐＨの安定性に優れる弱塩基性無機塩、及び／又は有機酸、具体的には、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、乳酸、酢酸、クエン酸を用いることが好ましい。
【００１９】
ｐＨ調整剤は、インキ組成物全量に対して含有量は、０．１質量％未満だと所望のｐＨが得られず、２０．０質量％を超えると変色性あるいは消色性が低下するので、０．１質量％以上、２０．０質量％以下、好ましくは、インキ組成物全量に対して、０．１質量％以上、１０．０質量％以下がよい。
【００２０】
また、インキの潤滑性を高めることで滑らかな筆感を有してチップ内の腐食防止を図ることができるため防錆潤滑剤としてリン酸エステル系界面活性剤を用いることができる。具体例としては、プライサーフシリーズ（第一工業製薬（株）社製）、フォスファノールシリーズ（東邦化学工業（株）社製）の中から、プライサーフＡ２１２Ｃ、同Ａ２１０Ｇ、同Ａ２０７Ｈ、同ＡＬ、同Ａ２０８Ｂ、同Ａ２０８Ｓ、同Ａ２０８Ｆ、同Ａ２１２Ｅ、同Ａ２１９Ｂ、同Ａ２０６Ｋ、同Ａ２１７Ｅ、同Ａ２１５Ｃ、同Ａ２１３Ｂ、同Ｍ２０８Ｂ、同Ｍ２０８Ｆ、 フォスファノールＲＥ−２１０、同ＲＥ−４１０、同ＲＥ−５１０、同ＲＥ−６１０、同ＲＥ−７１０、同ＲＥ−９６０、同ＲＳ−４１０、同ＲＳ−６１０、同ＲＳ−７１０、同ＲＢ−４１０、同ＲＭ−４１０、同ＲＭ−５１０、同ＲＭ−７１０、同ＲＬ−２１０、同ＲＤ−５１０Ｙ、同ＲＰ−７１０、同ＲＡ−６００、同ＢＨ−６５０、同ＭＬ−２００、同ＧＢ−５２０等が挙げられる。これらの防錆潤滑剤は単独又は２種以上混合して使用してもよい。含有量は、インキ組成物全量に対し、０．１〜１０．０質量％が望ましい。
【００２１】
その他添加剤として、水性ボールペン用インキ組成物に一般的に用いられる、シリコン系、アセチレングリコール系の濡れ性向上剤等を添加することができ、これらは単独又は２種以上組み合わせて使用することができる。またベンゾトリアゾール、１，２−ベンゾイソチアゾリン−３−オン等の防錆剤、防菌剤も配合可能である。
【００２２】
また、着色剤としては、ｐＨ指示薬に染料及び／又は顔料を併用して用いても良い。染料としては、従来から水性ボールペンに採用されている水溶性染料、直接染料、酸性染料、塩基性染料、含金染料、及び各種造塩タイプ染料等が採用可能である。これらの着色剤は単独又は２種以上混合して使用してもかまわない。また、顔料としては、有機、無機、加工顔料、例えば、カーボンブラック、フタロシアニン系、アゾ系、キナクリドン系、キノフタロン系、スレン系、トリフェニルメタン系等がある。これらの着色剤は単独、２種以上混合して使用してもかまわない。
【００２３】
また、所望により、水溶性有機溶剤を用いることができる。水溶性有機溶剤としては、水分の溶解安定性、水分蒸発乾燥防止等を考慮し、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、チオジグリコール、ポリグリセリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカービトール、エチルカービトール等が挙げられるが、ボールペンとしては、他のインキ組成物、特に剪断減粘性付与剤の溶解安定性を考慮してグリセリンを用いることが最も好ましい。これらの水溶性有機溶剤は単独又は２種以上混合して使用してもよい。含有量は、インキ組成物全量に対し、１．０質量％〜３０．０質量％が望ましい。
【００２４】
次に実施例を示して本発明を説明する。
実施例１
イオン交換水 ７３．５質量部
水溶性有機溶剤（グリセリン） ２０．０質量部
弱塩基性無機塩（炭酸カリウム） ０．５質量部
防錆潤滑剤（リン酸エステル系界面活性剤） ０．２質量部
ｐＨ調整剤（トリエタノールアミン） ５．０質量部
ｐＨ指示薬（メチルレッド） ０．５質量部
防菌剤（１，２−ベンゾイソチアゾリン−３−オン） ０．３質量部
剪断減粘性付与剤（キサンタンガム） ０．５質量部
【００２５】
イオン交換水、水溶性有機溶剤、弱塩基性無機塩、防錆潤滑剤、ｐＨ調整剤、ｐＨ指示薬、防菌剤をマグネットホットスターラーで加温撹拌してベースインキを作成した。
【００２６】
上記作製したベースインキを加温しながら、剪断減粘性付与剤を投入してホモジナイザー攪拌機を用いて均一な状態となるまで混合攪拌した後、濾紙を用い濾過を行って、実施例１の水性ボールペン用インキ組成物を得た。
【００２７】
尚、実施例のインキ粘度は、ブルックフィールド社製 ＤＶ−２＋Ｐｒｏ型粘度計（ＣＰＥ−４２コーンプレート）を用いて、２０℃の環境下で、ずり速度１．９２ｓｅｃ−１（回転数０．５ｒｐｍ）、ずり速度３８４ｓｅｃ−１（回転数１００ｒｐｍ）の２条件にて測定した。比較例の方のインキ粘度は、インキ粘度が低すぎるため、上記粘度計では測定できなかったため、トキメック社製、Ｂ８Ｍ型粘度計（ＢＬローター）を用いて、２０℃の環境下で、回転数、３０ｒｐｍにて測定した。
またｐＨ測定は東亜ディーケーケー社製IＭ−４０Ｓ型ｐＨメーターを用いて、２０℃にて測定した結果である。表１に測定、評価結果を示す。
【表１】
【００２８】
実施例２〜６
表１に示すように各成分を表１に示す配合に変更した以外は、実施例１と同様な手順で実施例２〜６の水性ボールペン用インキ組成物を得た。
尚、実施例６のずり速度３８４ｓｅｃ−１（１００ｒｐｍ）時の粘度は、前述した測定器の測定範囲（６４ｍＰａ・ｓ以下）を超えていたため、ずり速度１．９２ｓｅｃ−１（０．５ｒｐｍ）の粘度（２０００ｍＰａ・ｓ）と別に測定したずり速度１９．２ｓｅｃ−１（５ｒｐｍ）時の粘度（５８５ｍＰａ・ｓ）からｎ値（０．４８）を算出し、外挿法によって、ずり速度３８４ｓｅｃ−１（１００ｒｐｍ）の粘度を算出した値である。
【００２９】
比較例１〜５
インキの配合を表２に示す通りとし、比較例１〜４は、剪断減粘性付与剤を投入せずに実施例１と同様の手順で、比較例５では、イオン反発によって増粘する剪断減粘性付与剤（架橋型アクリル酸重合体：商品名 ハイビスワコー 和光純薬工業（株）製）を配合し、比較例１〜５の水性ボールペン用インキ組成物を得た。表２に測定、評価結果を示す。
【表２】
【００３０】
試験及び評価
実施例１〜６及び比較例１〜５で作製した水性ボールペン用インキ組成物を、インキ収容筒（ポリプロピレン）に、ボール径が０．７ｍｍのボールを回転自在に抱持したボールペンチップ（ステンレス綱線）を装着したボールペン用レフィルに充填し、さらに、水性ボールペン用インキ組成物の後端にグリース状のインキ追従体を充填し、筆記試験用紙としてコピー用紙（ＰＰＣ用紙）を用いて以下の試験及び評価を行った。
【００３１】
にじみ：筆記後のにじみを目視にて観察した。
にじみが発生せず極めて良好なもの ・・・○
実用上において気にならないもの ・・・△
非常に気になるもの ・・・× とした。
【００３２】
裏抜け：筆記後の紙面の裏側に浸透したインキを目視にて観察した。
裏抜けが発生せず極めて良好なもの ・・・○
実用上において気にならないもの ・・・△
非常に気になるもの ・・・× とした。
【００３３】
書き味：手書きによる官能試験を行い評価した。
非常に滑らかで良好なもの ・・・◎
滑らかで良好なもの ・・・○
やや劣るもの ・・・△
引っかかる感じや重く感じるもの ・・・× とした。
【００３４】
インキ垂れ下がり：３０℃、８５％ＲＨの環境下にペン先下向きで２時間放置し、ペン先からのインキ漏れを確認した。
インキ垂れ下がりの発生しなかったもの ・・・◎
ペン先に泣き程度の濡れが発生したもの ・・・○
ペン先にインキ滴が発生したもの ・・・× とした。
【００３５】
筆記後の筆跡変化については、実施例１では筆記後、黄色であったが経時によって赤色に変色した。これは筆記後、一定期間放置しておくと、空気中の二酸化炭素と、インキ組成物中の塩基性の成分（炭酸カリウム）が反応して、経時的にｐＨが低下して、ｐＨ指示薬の構造が変化して変色したためである。
【００３６】
実施例２では、実施例１と同様に青色から黄色に変色し、実施例３、４は、紫色から無色に消色した。
【００３７】
実施例１〜５は剪断減粘性付与剤として非イオン性又は弱イオン性の多糖類を用いたため、イオン安定性が高く、良好な変色を示した。また、実施例１〜４では、キサンタンガムを用いているので、特に溶解安定性が良好であった。
【００３８】
表２に示すように比較例１〜４は、剪断減粘性付与剤を添加しなかったため、筆跡が、にじみ、裏抜けが発生した。また、静止時におけるインキ粘度も低く、垂れ下がり試験においてもペン先にインキ滴が発生してしまい、ひどいものではインキが垂れ落ちてしまうものもみられた。
【００３９】
また、比較例３、４は筆記後、直ぐに、薄色になりやや消色してしまった。これは、紙面に浸透し、紙面の酸性成分と反応して、ｐＨが下がったためと推測できる。
【００４０】
また、比較例５は、イオン反発を利用して増粘する剪断減粘性付与剤を添加したため、インキ組成物中に析出物が発生し、インキ収容筒内に充填できず、評価することができなかった。
【００４１】
本発明の水性ボールペン用インキ組成物のインキ粘度は、インキ垂れ下がりがなく、筆跡のにじみや裏抜け等を防止するために、ずり速度１．９２ｓｅｃ−１（０．５ｒｐｍ）、２０℃の環境下で、５０〜３０００ｍＰａ・ｓとすることが好ましい。また、書き出し性や筆感等を考慮するとともに、ノック式ボールペンのようなペン先を常時、外部に露出する構造とするには、ずり速度１．９２ｓｅｃ−１（０．５ｒｐｍ）、２０℃の環境下で、１０００〜２０００ｍＰａ・ｓとすることが好ましい。
【００４２】
本実施例では便宜上、ｐＨが塩基性領域から低下して変色又は消色するｐＨ指示薬を用いているが、酸性領域で、ｐＨが上昇して変色するタイプのｐＨ指示薬を用いてもよい。この場合、他の塩基性液体を用いて変色又は消色することができる。
【産業上の利用可能性】
【００４３】
本発明は、少なくとも水、ｐＨ調整剤、ｐＨ指示薬、剪断減粘性付与剤（イオンの反発によって増粘する剪断減粘性付与剤を除く）を含有してなる水性ボールペン用インキ組成物を用いることでインキ垂れ下がり等がなく、筆跡が優れた消色もしくは変色可能な水性ボールペン用インキ組成物を提供することができる。そのため、キャップ式、ノック式等、ボールペンとして広く利用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項１】
少なくとも水、ｐＨ調整剤、ｐＨ指示薬、及び剪断減粘性付与剤（イオンの反発によって増粘する剪断減粘性付与剤を除く）を含有してなる変色もしくは消色可能な水性ボールペン用インキ組成物。
【請求項２】
前記剪断減粘性付与剤が、多糖類であることを特徴とする請求項１に記載の変色もしくは消色可能な水性ボールペン用インキ組成物。
【請求項３】
前記多糖類が、キサンタンガムであることを特徴とする請求項２に記載の変色もしくは消色可能な水性ボールペン用インキ組成物。
【請求項４】
前記ｐＨ調整剤が、少なくとも弱塩基性無機塩及び／又は有機酸であることを特徴とする請求項１ないし３の何れか１項に記載の変色もしくは消色可能な水性ボールペンインキ組成物。
【請求項５】
前記水性ボールペン用インキ組成物の粘度が、ずり速度１．９２ｓｅｃ−１、２０℃、において５０〜３０００ｍＰａ・であることを特徴とする請求項１ないし４の何れか１項に記載の変色もしくは消色可能な水性ボールペンインキ組成物。
【請求項１】
少なくとも水、ｐＨ調整剤、ｐＨ指示薬、及び剪断減粘性付与剤（イオンの反発によって増粘する剪断減粘性付与剤を除く）を含有してなる変色もしくは消色可能な水性ボールペン用インキ組成物。
【請求項２】
前記剪断減粘性付与剤が、多糖類であることを特徴とする請求項１に記載の変色もしくは消色可能な水性ボールペン用インキ組成物。
【請求項３】
前記多糖類が、キサンタンガムであることを特徴とする請求項２に記載の変色もしくは消色可能な水性ボールペン用インキ組成物。
【請求項４】
前記ｐＨ調整剤が、少なくとも弱塩基性無機塩及び／又は有機酸であることを特徴とする請求項１ないし３の何れか１項に記載の変色もしくは消色可能な水性ボールペンインキ組成物。
【請求項５】
前記水性ボールペン用インキ組成物の粘度が、ずり速度１．９２ｓｅｃ−１、２０℃、において５０〜３０００ｍＰａ・であることを特徴とする請求項１ないし４の何れか１項に記載の変色もしくは消色可能な水性ボールペンインキ組成物。
【公開番号】特開２００７−１５４０６２（Ｐ２００７−１５４０６２Ａ）
【公開日】平成１９年６月２１日（２００７．６．２１）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００５−３５２０７４（Ｐ２００５−３５２０７４）
【出願日】平成１７年１２月６日（２００５．１２．６）
【出願人】（３０３０２２８９１）株式会社パイロットコーポレーション (647)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成１９年６月２１日（２００７．６．２１）
【国際特許分類】
【出願日】平成１７年１２月６日（２００５．１２．６）
【出願人】（３０３０２２８９１）株式会社パイロットコーポレーション (647)
【Ｆターム（参考）】
[ Back to top ]