説明

夏用枕

【課題】剛体の構造体を持つ夏用枕であって、枕の硬さと高さをそれぞれ別個に簡便に調節ができて、その上、不使用の時には小さく折りたたんで、取り扱いに便利な夏用枕を得る。
【解決手段】台板1の左右両端部上面に支板3と主板5、2本の軸2と軸4および1本の、主板5と台板1との回転中心の軸6、または曲率中心とによって、水平方向に見て、それぞれスコット・ラッセルの近似直線運動機構を形成する。主板5の下端に軸6によって枢着された底板10の下面、または主板5の下端の接触曲面と台板1の上面にはそれぞれマジックテープ(登録商標)等の片側8、9を取りつけ、固定・解除自由にする。左右の主板5の上端の稜7の少なくとも片側の背面に、それぞれマジックテープ等の片側11を取りつけ、これらの間に少なくともその片側にマジックテープ等の片側12を取りつけた屈曲性に富み、充分な抗張力を持つ材料の張布13を張り渡して夏用枕を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般家庭で使用する夏用枕に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の、構造体を持つ高さ可変の夏用枕は、特許文献1、または特許文献2のように、棒
状材をX字状に組み合わせた構造で、その両端に屈曲性と抗張力をもつ布状材を張り渡し
たものであった。頭が当たる布状材の中央部は垂れさがるが、ここにX字の交点が来るの
で、布状材を強く張り、頭に棒状材が触れないようにしなければならず、軟らかくはでき
なかった。同じ理由で同部をあまり低くはできなかった。また高さを変えるためX字の交
角を変えると、布状材の張り硬さも変わってしまい、両者を個別に調節できない。不使用
時に折りたたむにしても、棒状材の2倍の厚さになり、かさばるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実新登録 3036462
【特許文献2】実新登録 3054526
【特許文献3】実開 平03-004750
【特許文献4】実開 平04-125837
【特許文献5】特開 2005-066254
【特許文献6】特開 2007-068952
【非特許文献1】機械の素復刊委員会編 新編機械の素 理工学社1966年10月30日P81
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上述べたように、従来の、構造体を有する夏用枕は、その硬軟も、その高さも、共に調
整できず、また使用が終わって収納する際にも折りたたむことができず、かさばって不便
であった。
【0005】
本発明はこのような従来の、構造体を持つ夏用枕の課題を解決し、硬さと高さを簡便に調
節でき、またコンパクトに折りたためる夏用枕を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、床面に水平に置いた、長方形、板状の材、または小間隔の2
平行平面を包絡面とする枠状材(以下、単に板状材と記す。)台板の両端部に、それぞれ
長短2枚ずつの板状材と、それぞれ2本ずつの軸と1本ずつの回転中心によって、水平方
向に見て、非特許文献1に記載の、スコット・ラッセルの近似直線運動機構を形成し、斜
めになった長い板状材の下端が台板の上面に沿ってマジックテープ、または突起相互の、
または突起と穴、あるいは突起と溝の噛合わせ等による固定・解除機構(以下、マジック
テープ等と記す。)によって固定・解除自由に水平方向に動くと、上記、長い板状材の上
端は垂直方向に動き、左右の長い板状材上端間の距離は殆ど変わらない。この左右の長い
板状材の上端部に脱着自由に、マジックテープ等により張布を取りつけて夏用枕とする。
【発明の効果】
【0007】
このような構造としたので、次のような効果がある。
【0008】
枕の高さが簡便に調整できる。台板と左右の長い長方形・板状材の下端部との固定を解除
し台板の表面に沿って左右に移せば、それぞれの上端は垂直に上下し、張布も上下するの
で適当な所で、それぞれの下端部を再び固定すればよい。
【0009】
枕の硬さを簡単に調整できる。張布は脱着自由に取り付けられているので、簡単に取り外
して、再び取りつけて張り強さを調整すればよい。
【0010】
張布の下方には突出した構造物がないので、従来より涼しく、また従来より低くすること
ができる。張布の下方は大きな空間となって、風通しが良くて涼しく、また台板に、ほと
んど接触するほど低くすることもできる。
【0011】
不使用時には極めて小さく折り畳めるので、取り扱いや収納に便利である。左右の長短の
長方形・板状材をそれぞれ寝かせて行けば、殆んど水平に近くなり、各板状材は重なり、
全体としても1枚の板状となって、極めてコンパクトな形になるので、取り扱いや収納に
まことに便利である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態を示す夏用枕の立面図
【図2】主板5の下端部の他の実施形態を示した部分立面図。
【図3】同夏用枕を折りたたんだ姿の立面図。
【図4】同夏用枕の左側部の斜視図。
【図5】セルフヒンジ部を持った部材
【図6】セルフヒンジ部を持った支板部材及び主板部材の組合せ図
【図7】セルフヒンジ部を持った支板主板一体成形部材
【図8】張布へのマジックテープ取付け図
【図9】スコットラッセル機構の説明図
【発明を実施するための形態】
【0013】
始めに、図9を用いてスコットラッセル機構について説明する。図示のスコットラッセル
機構は、4つの点A、B、C、Pとからなり、C、B、Pの各点は一直線上にある。AB:BC=
BC:BPである。ここで、点Aの位置は固定されており、点Cは水平方向に滑り運動する。
点Cの動く範囲を点Aの右側の範囲とすれば、点Pは点Cの動く水平方向に対して垂直な軸線
上をほぼ直線運動する。特別な場合として、AB=BC=BPである場合、点Pは点Cが水
平移動することにより常に垂直な軸線上を直線移動する。以上がスコット・ラッセル機構
の基本態様である。
以下、本発明の1実施例の形態を図1〜図4に基づいて説明する。本品は左右対称なので
、主に左端部について説明する。
【0014】
長方形、板状材の台板1の短手方向において、中央部に指先が入る巾の、左右計2個の穴
、または、同様の巾で連続した隙間を設けて14とする。
【0015】
長方形の台板1の左端部上面に接近して平行な平面として水平面30内に短手方向に軸2を設
け、支板3の下端と台板1の左端部上面とを枢着する。
【0016】
軸2と同方向の軸4によって、主板5の中間部と支板3の上端とを枢着する。
【0017】
水平面30内に軸2と同方向の軸6によって、主板5の下端と長方形、板状材の底板10とを枢
着するか、または主板5の下端部を曲面に形成し、その曲率中心を16とし、水平面30と
一致させる。両者はともに主板5の台板1に対する回転中心となっている。
【0018】
各部の長さは線分2・4:線分4・6(または線分4・16)=線分4・6(または線分4
・16):線分4・7の比率としてスコット・ラッセルの近似直線運動機構を構成する。本
発明の構成上、軸6は軸2を越えて左に動くことは無いので、稜7は近似直線上を垂直方
向に動く。全ての線分が等長の時は厳密直線運動をすることが知られている。
【0019】
底板10の下面と、または主板5の下端部の曲面と、これに対応する台板1の上面とに、それ
ぞれマジックテープ等の片側8,9を取りつけ、固定・解除自由にする。
【0020】
主板5の上端の稜7の背面にはマジックテープ等の片側11を取りつける。以上の構成を台
板1の右端部についても全く同様に、左右対称に施す。
【0021】
主板5の上端の稜7と、これに対応する右端部の部分との間に、屈曲性に富み、充分な抗
張力を持つ材料でその両端にマジックテープ等の片側12を取りつけた張布13を張り渡
して、夏用枕とする。
【0022】
このような構造にしたので、枕の高さを変更するには指先を台板1の穴、または隙間14
を通して、底板10、または主板5の曲面部を押し上げて、マジックテープ等の固定を解除
し、水平面30に沿って移動させれば、主板5の上端の稜7は水平面30に対して垂直な垂直面
20に沿って上下するので、適当な高さで、前記のマジックテープ等を再び固定すればよい
。この時、枕の硬さ、即ち張り強さは変わらない。

【0023】
本発明の請求項2の夏用枕は、軸2、4、6に成形樹脂からなる図5に例示するセルフヒ
ンジ部を有する部材200を適用したものである。この部材200はセルフヒンジ部20
2の繰り返し折り曲げ寿命を長くするために、耐折り曲げ疲労性のある樹脂、例えばポリ
プロピレン(PP)が用いられる。台板1、支板3、主板5等への取り付けは、取付板2
01を係合、ねじ止め、接着等、何でも良く、組立が容易な方法を選択すれば良い。また
、セルフヒンジ部を有する部材200の適用は、軸2、軸4、軸6の任意の箇所に適用し
て良い。

【0024】
本発明の請求項3の夏用枕を、図6を参照して説明する。支板305の両端にセルフヒン
ジ部302、304、前記各セルフヒンジ部の先に他部材に取り付ける取付板301,3
03を有し、これ等を成形樹脂で一体成形して支板部材300とする。主板507の片端
にセルフヒンジ部506、前記セルフヒンジ部の先には他部材に取り付ける取付板505
を有し、これ等を成形樹脂で一体成形して主板部材500とする。各セルフヒンジ部30
2,304、506は屈曲し易いように薄肉に成形し、繰り返し折り曲げ寿命を長くする
ために、耐折り曲げ疲労性のある樹脂、例えばポリプロピレン(PP)が用いられる。支
板部材300、主板部材500がそれぞれ1つの部品となり、支板部材300と主板部材
500の組み合わせは1箇所で、ヒンジ軸やヒンジ受けを取り付ける必要がなく、構造も
簡単であり、部品点数削減、組立性向上の効果と相俟って低コスト化できる。
図6では、支板部材300、主板部材500の両方適用した例を示しているが、何れか片
方のみを適用し他方は軸材等を適用しても良い。
支板部材300の取付板301、303を台板1に、あるいは主板507に取り付ける手
段は、係合、ねじ止め、接着等、何でも良く、組立が容易な方法を選択すれば良い。
【0025】
請求項4の一例を図7に示すが、支板603、主板607、セルフヒンジ部602、60
4、606と他部材に取り付ける取付板601、605を耐折り曲げ疲労性のある樹脂で
一体に形成して主柱部材600とすれば1つの部品となり、直いっそう部品点数削減、組
立性向上の要求を満たすことができる。各部の構造は、請求項3の支板部材300や主板
部材500等と同様である。
【0026】
次に張布13へのマジックテープ取り付け方法について図8を参照して説明する。張布1
3へのマジックテープは、マジックテープのループ側の座布118を取り付け、マジック
テープセットの他方の鈎針もしくは針側の座布は主板5、507、607等に取り付ける
。張布13は頭を載せるので使用しているうちに汗、脂等で汚れる。このような時、張布
13を洗濯する事になるが、洗濯機等で他の衣類と同時に洗濯する場合、マジックテープ
の鈎針側が張布13に取り付けられていた場合、同時に洗濯する他の衣類を傷つけたり、
糸を解れさせたり、あるいは張布13自体を傷める事になる。しかし、張布13にマジッ
クテープのループ側の座布118を取り付けた場合、マジックテープのループ119には
他の衣類等を損傷する突起、鈎針、針等の形状を有していないので、他の衣類と同時に洗
濯しても傷つけることは無く、安心して洗濯をする事が出来る。
【0027】
本発明の請求項3、4のセルフヒンジ部を有する支板部材300、主板部材500、支柱
部材600は支板、主板、セルフヒンジ部、取付板等と一体成形したので、部品点数削減
、組立性向上の要求を満たすことができ、夏用枕を低コスト化できる。























【符号の説明】
【0028】
1 台板
2 軸
3 支板
4 軸
5 主板
6 軸
7 稜
8 マジックテープ等
9 マジックテープ等
10 底板
11 マジックテープ等
12 マジックテープ等
13 張布
14 穴または隙間
16 曲率中心
20 垂直面
30 水平面

118 マジックテープのループ側の座布
119 マジックテープのループ
200 セルフヒンジ部を有する部材
201 取付板
202 セルフヒンジ部
300 支板部材
301 取付板
302 セルフヒンジ部
303 取付板
304 セルフヒンジ部
305 支板
500 主板部材
505 取付板
506 セルフヒンジ部
507 主板
600 支柱部材
601 取付板
602 セルフヒンジ部
603 支板
604 セルフヒンジ部
605 取付板
606 セルフヒンジ部
607 主板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本発明は左右対称であるので主に左側について述べる。長方形、板状材、または小間隔
で平行な2平面を包絡面とする、枠状材(以下、単に板状材と記す)の台板1を水平に置
き、その上面に接近し、平行な水平面30に長手方向の左端部に、その短手方向に軸2を
設け、長方形、板状材の支板3の下端と台板1の上面とを枢着する。支板3の上端に、軸
4を、軸2と同方向に設け、長方形、板状材の主板5の上端の稜7と下端部との中間とを枢
着する。主板5の下端部が台板1の上面に平行に、長手方向に動く時、両者の回転中心が軸
2を含む面内を動くように、長方形、板状材で、下面が台板1の上面に接触している底板10
と主板5の下端部とを軸4と同方向の軸6によって枢着するか、または、主板5の下端を、台
板1の上面と接触する曲面に形成し、その曲率中心を16とする。各部の長さは線分2・4
:線分4・6(または線分4・16)=線分4・6(または線分4・16):線分4・7
として、スコット・ラッセルの近似直線運動機構を構成する。底板10の下面、または主板
5の下端部に形成した接触曲面と、これらに対応する台板1の上面には、それぞれマジック
テープ、または突起相互の、または突起と穴との、または突起と溝との噛合いによる固定
・解除自由にする機構(以下マジックテープ等と記す)の片側8,9を取りつけ、主板5
の下端部を台板1に固定・解除自由にする。このような構成を、台板1の右端部にも、全く
同様に左右対称に形成する。主板5の上端の稜7と、右側の対応する部分の背面の少なくと
も片側にマジックテープ等の片側11を取りつける。屈曲性に富み、頭頸部を支えるに充
分な抗張力を有する材料の張布13の少なくとも一端に、マジックテープ等の片側12を
取りつけて、張り渡して成る枕。

【請求項2】
軸2,4,6の少なくともいずれか一箇所にセルフヒンジ部を持った部材を適用したこと
を特徴とする請求項1の枕。

【請求項3】
支板の両端にセルフヒンジ部、前記各セルフヒンジ部の先に他部材に取り付ける取付板を
有し、これ等を成形樹脂で一体成形した支板部材、主板の片端にセルフヒンジ部、前記セ
ルフヒンジ部の先には他部材に取り付ける取付板を有し、これ等を成形樹脂で一体成形し
た主板部材、こられ支板部材、主板部材の少なくともいずれか1つを適用したことを特徴
とする請求項1の枕。

【請求項4】
支板の一端にセルフヒンジ部を有し前記セルフヒンジ部の先に他部材に取り付ける取付板
を、主板の片端にセルフヒンジ部を有し前記セルフヒンジ部の先には他部材に取り付ける
取付板を、支板のセルフヒンジ部と反対側と主板の約中央部の接合部にセルフヒンジ部を
有し、これ等を成形樹脂で一体成形した部材を適用したことを特徴とする請求項1の枕。

【請求項5】
張布に取り付けるマジックテープはループ側とし、対応する相手側は鈎針もしくは針側と
したことを特徴とする請求項1、2、3、4いずれか1つに記載の枕。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−56248(P2011−56248A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−178487(P2010−178487)
【出願日】平成22年8月9日(2010.8.9)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.マジックテープ
【出願人】(394000725)
【Fターム(参考)】