説明

外圧式中空糸膜モジュール

複数本の中空糸膜からなる中空糸膜束、ハウジング及び流体の出入用ノズルを含んでなり、該中空糸膜束の両端部において中空糸膜同士、及び中空糸膜と該ハウジングの内壁とが接着固定されており、片側又は両側の接着固定端の中空部が開口しており、中空部が開口した少なくとも一方の接着固定端のハウジング側面に流体の出入用ノズルが備えられている外圧式中空糸膜モジュールであって、該ノズル近傍にある、該中空部が開口した少なくとも一方の接着固定端において、接着固定部内側の膜充填可能領域のうち該ノズルの近傍領域Aと非近傍領域Bにおける膜占有率を各々PA、PBとしたとき、膜占有率比PB/PAが0.50以上0.95以下である上記外圧式中空糸膜モジュール。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川水、湖沼水、地下水、海水、生活排水、又は工場排水等の大量の原水について除濁、除菌を行う濾過装置に用いられる外圧式中空糸膜モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に中空糸膜モジュールは、内圧式と外圧式とに大別される。そのうち外圧式中空糸膜モジュールは、通常、長さ200〜3000mm、膜外径0.1〜5mmの中空糸膜を数百〜数万本束ねて筒状のケースに収納し、その両側端部を樹脂でケース内壁に接着固定している。その両端部を接着固定するにあたり、一方の接着固定部では中空糸膜端を開口させ、他方の接着固定部は中空部を封止し、この両接着固定部間に挟まれた領域に原水を加圧供給することによって中空糸膜を透過させ、そのろ過水を中空糸端部が開口した接着固定部から取り出すようにした片端集水方式のモジュールと、両方の接着固定部で中空糸膜端を開口させて両端部から透過液を取り出すようにした両端集水方式のモジュールとがある。更に、使用時に下方側になる接着固定部には複数の貫通口が中空糸膜束内に設けられており、ろ過時の原水供給口として利用したり、物理洗浄工程における空気の供給口や洗浄排水出口として利用される。
【0003】
このような外圧式中空糸膜モジュールを除菌や除濁目的で使用する場合、通常、クロスフローろ過を行って中空糸膜表面への懸濁物質の蓄積を防止したり、定期的に逆洗やエアーバブリング等の物理洗浄を行ってろ過性能を回復させ、安定なろ過運転を可能にしている。このような運転を行うために、上側の接着固定部近傍のケース側面に排出口を設け、該モジュールを縦に設置している。ろ過時には、下部の接着固定部に設けられた貫通口から懸濁物質を含んだ原水を供給し、ケース上部側面に設けられた排出口から濃縮水を排出する。また、エアーバブリングによる洗浄では、下部の貫通口から空気を供給し、空気・水混合流れにより膜を揺り動かして膜表面に堆積した懸濁物質を剥ぎ取り、次いで空気と共に原水を供給してケース上部側面に設けられた排出口から排出する。
このようなクロスフローろ過やエアーバブリング洗浄時に排出口から排出する時の液流れによって、中空糸膜が該排出口に引き込まれて損傷したり、また、膜が揺動する時に生じる接着固定部内側表面付近への応力集中によって中空糸膜が破断することがある。
【0004】
また、上記のように物理洗浄によって堆積物を膜表面から剥離させてモジュール外に効率的に排出させるためには中空糸間に空間を確保する必要があり、内圧式モジュールのような最密充填に近い状態に中空糸膜を収容できない。このためにハウジング内における膜占有率は、通常0.3〜0.6に設定される。ここで「ハウジング内における膜占有率」とは、膜のろ過領域におけるハウジング内径基準断面積に対する膜外径基準断面積の総和の比率である。このような比較的低い収容密度の場合には、膜の接着固定部における膜の分布が不均一になり易く、上記の接着固定部内側の表面付近における中空糸膜の破断が起こる傾向が強くなる。
【0005】
上記のような中空糸膜の接着固定部付近での膜の損傷・破断を防止する手段としては、接着固定部の内側表面付近に整流筒を設置し、接着固定部の内側にゴム状弾性を有する高分子材料層を設ける方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、接着固定部の内側に延在する中空糸膜の表面を、該固定部の内側表面を形成する接着剤と同一の接着剤で被覆する方法も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
しかしながら、特許文献1記載の方法では、上記のような膜の損傷・破断を防止する効果は優れているものの、ゴム状弾性を有する高分子のみで接着固定層を形成した場合、耐圧性が劣り接着固定部が破損することがある。また、耐圧性を確保するには、高強度で高弾性率の材料で接着固定した後にその内側にゴム状弾性体の層を形成させる必要があり、製造が煩雑でコスト高になる欠点を有している。
一方、特許文献2記載の方法では、膜の破断防止効果が十分でなく、長期間の運転でのエアーバブリングによって膜破断を起こすという問題がある。
【0007】
【特許文献1】特開平9−220446号公報
【特許文献2】特開平10−305218号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、膜面上の堆積物をモジュール外へ効率的に排出できると共に、流体の流れに起因して生じる接着固定部の内側付近での膜破断を起こすことなく長期間使用することができ、かつ、製造が容易な外圧式中空糸膜モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、接着固定部内側の膜の分布を制御することによって上記目的を達成し得ることを見いだし、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
【0010】
すなわち本発明は、下記のとおりである。
(1)複数本の中空糸膜からなる中空糸膜束、ハウジング及び流体の出入用ノズルを含んでなり、該中空糸膜束の両端部において中空糸膜同士、及び中空糸膜と該ハウジングの内壁とが接着固定されており、片側又は両側の接着固定端の中空部が開口しており、中空部が開口した少なくとも一方の接着固定端のハウジング側面に流体の出入用ノズルが備えられている外圧式中空糸膜モジュールであって、該ノズル近傍にある、該中空部が開口した少なくとも一方の接着固定端において、接着固定部内側の膜充填可能領域のうち該ノズルの近傍領域Aと非近傍領域Bにおける膜占有率を各々PA、PBとしたとき、膜占有率比PB/PAが0.50以上0.95以下である上記外圧式中空糸膜モジュール。
(2)複数本の中空糸膜からなる中空糸膜束をその両端部が接着固定して有し、少なくとも一方の接着固定端の中空部が開口している中空糸膜カートリッジ、及び該中空糸膜カートリッジを収容する、少なくとも片側側面に流体の出入用ノズルを有するハウジングを含んでなり、該中空糸膜カートリッジの中空部が開口した側の接着固定部内側表面近傍に位置するように、ハウジングに設けられたノズルが固定されてなる外圧式中空糸膜モジュールであって、該ノズル近傍にある接着固定端において接着固定部内側の膜充填可能領域のうち該ノズルの近傍領域Aと非近傍領域Bにおける膜占有率を各々PA、PBとしたとき、膜占有率比PB/PAが0.50以上0.95以下である上記外圧式中空糸膜モジュール。
(3)接着固定部内側の膜充填可能領域のうちノズルの近傍領域Aにおいて、該近傍領域Aを構成する全ての単位領域Cの膜占有率PCが、該近傍領域Aの膜占有率PAの0.5倍以上2.0倍以下である上記(1)又は(2)記載の外圧式中空糸膜モジュール。
(4)接着固定部内側の膜充填可能領域のうちノズルの非近傍領域Bにおいて、第一非近傍領域B1及び第二近傍領域B2における膜占有率を各々PB1及びPB2としたとき、PA≧PB1≧PB2であり、かつ、PAが0.40以上0.60以下、PB2が0.20以上0.40未満である上記(1)又は(2)記載の外圧式中空糸膜モジュール。
(5)接着固定部内側の膜充填可能領域のうちノズルの非近傍領域Bにおいて、該非近傍領域Bを構成する単位領域Cの膜占有率PCが該非近傍領域Bの膜占有率PBの0.5倍未満である単位領域を少なくとも1つ含む上記(1)〜(3)記載のいずれか一項記載の外圧式中空糸膜モジュール。
(6)中空糸膜束の外周部のうちノズル近傍に整流板が設けられている請求項1又は2記載の外圧式中空糸膜モジュール。
(7)整流板が筒状であって、その内側に中空糸膜束が収納されており、該整流板はノズル近傍以外の壁面部分に複数の貫通口を有し、ノズル近傍には貫通口がない請求項6記載の外圧式中空糸膜モジュール。
(8)接着固定部を構成する接着剤部分が単一層の高分子材料からなり、その硬度が使用温度範囲において50A〜70Dである請求項1又は2記載の外圧式中空糸膜モジュール。
(9)少なくとも中空部を開口させる側の中空糸膜束の端部内に、複数本の柱状物を予め挿入した状態で接着固定部形成容器に収容し、接着剤を注入して硬化させた後に中空糸膜束の端面を切断して接着固定部を形成し、少なくとも近傍領域Aの接着固定部内に長さが接着固定部厚みの0.3倍以上0.9倍以下の柱状物を存在させることを含む、請求項1又は2記載の外圧式中空糸膜モジュールの製造方法。
(10)少なくとも片側側面に流体の出入用ノズルを有するハウジングケースに中空糸膜束を収容し、該ノズルを水平方向より下向きに保持した状態で水平方向に回転させ、その遠心力下で接着剤を注入して硬化させて接着固定部を形成させることを含む、請求項1記載の外圧式中空糸膜モジュールの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の外圧式中空糸膜モジュールは、物理洗浄による膜面堆積物の排出性がよく、エアーバブリングを含む過酷な物理洗浄を伴うろ過運転を長期間行っても接着固定部内側付近での膜破断が起こり難く、しかも容易に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明について、特にその好ましい形態を中心に、具体的に説明する。
本発明の外圧式膜モジュールでは、少なくとも接着固定部内側の膜充填可能領域のうちノズルの近傍領域Aにおける膜占有率PAと非近傍領域Bにおける膜占有率PBとの比PB/PAが0.50以上0.95以下であることが重要である。PB/PAがこの範囲であると、非近傍領域から膜面堆積物を含む流体が膜束外に流出し易くなり、かつ、近傍領域で流体が集中的に流れることがなくなって膜の損傷や破断が起こり難くなる。PB/PAが0.50未満では非近傍領域Bの方が相対的に疎な状態になりすぎ、流体が集中的に流れるようになるため、該領域Bにある膜が損傷・破断する傾向が出てくる。また、PB/PA比が0.95を超える場合には非近傍領域から優先的に膜面堆積物の排出される効果が薄れ、更に、1.0を超えると近傍領域Aの方が相対的に疎な状態になるため流速が著しく大きくなり、該領域Aにある膜が損傷・破断する傾向が出てくる。該PB/PA比は、0.60以上0.90以下が好ましく、0.7以上0.90以下がより好ましい。
【0013】
また、非近傍領域を第一非近傍領域B1及び第二近傍領域B2とに分画し、各々の領域での膜占有率をPB1及びPB2としたとき、PA≧PB1≧PB2であり、かつ、PAが0.40以上0.60以下、PB2が0.20以上0.40未満であることが特に好ましい。この条件を満たす場合に膜束中からの膜面堆積物の排出性が良好であり、かつ、流体の流れによる膜の損傷や破断を防止できる。
【0014】
以下、図1及び図3の例を用いて本発明を詳しく説明する。図1はモジュールを構成するハウジング2部分と中空糸膜1とが接着固定された一体型モジュールの例であり、図1中のX−X断面を図2に示す。また、図3はモジュールがハウジング2(図4)と中空糸膜エレメント(図5)とで構成されるカートリッジ型モジュールの例であり、図3中のX−X断面を図6に示す。本発明の「接着固定部内側の膜充填可能領域」とは、接着固定部の内側表面の領域であり、かつ膜を充填し得る領域を意味する。即ち、図2においては整流筒5で囲まれた領域であり、図6ではカートリッジヘッド9内側の領域である。更に、本発明の「ノズルの近傍領域A」とは、該ノズルの中心軸と膜充填可能領域外周との交点をZ1及びZ2としたとき、ノズルに近い側の交点Z1を中心とし、Z1と該膜充填可能領域の中心点Z3との距離を半径として描かれる円内に含まれる膜充填可能領域の部分を意味する。また、「ノズルの非近傍領域B」とは、膜充填可能領域のうち近傍領域A以外の領域を意味する。更に、「第一非近傍領域B1」とは、交点Z1を中心とし、Z2とZ3との中点Z4とZ1との距離を半径として描かれる円内に含まれる非近傍領域Bの部分を意味する。「第二非近傍領域B2」とは、該第一近傍領域以外の非近傍領域Bの部分を意味する。また、本発明の「膜占有率」とは、対象領域の面積Sに対する膜の総断面積Mの割合(百分率)であり、対象領域にある中空糸膜の本数と膜外径から計算された総断面積を対象領域の面積で除して計算する方法やコンピューターを利用した画像解析による方法で求められる。
【0015】
近傍領域Aにおいては、該近傍領域Aを構成するすべての単位領域Cの膜占有率PCが近傍領域Aの膜占有率PAの0.5倍以上であることが好ましい。より好ましくは0.6倍以上であり、更に好ましくは0.7倍以上である。これは、近傍領域A内には著しく疎な局所的部分がないことを意味しており、膜の損傷や破断をより確実に防止することができる。ここで「単位領域C」とは、ノズル3の中心軸と膜充填可能領域との交点Z1を基点としてノズルの中心軸に平行な複数の直線と垂直な複数の直線から成る特定間隔の升目で分割された領域Dを意味している。「特定間隔」とは、中空糸膜の外径平均値をRとしたとき15Rの値である。近傍領域Aの周辺部においては該特定間隔に相当する長さの辺の四角形にはならず欠損部が生じるが、その分割部はノズルの中心軸との平行方向に隣接する分割部と合体させ、225R以上450R未満の面積となる最少の合体数の領域を1単位領域とする。なお、ノズルの中心軸に平行な方向に隣接する分割部のみでは225R以上にならない場合には、それらの分割部に対して中心軸に垂直な方向に隣接する分割部のうちの1つ、又は、2つと合体させる。この場合、合体させる分割部としては、合計面積が225R以上となり、225Rに最も近くなる分割部を選択する。これを具体的に図7の例で説明する。分割部D17は隣接する分割部D16との合体のみでは225R未満であるため、更にD15と合体させて単位領域C1とする。また、分割部D14は分割部D13と合体させて単位領域C2とし、分割部D11は分割部D12と合体させて単位領域C3する。更に、分割部D10は分割部D9と、分割部D6は分割部D7と、分割部D5は分割部D4と、分割部D1は分割部D2と合体させて、各々単位領域C4、C6、C7、C9とする。なお、D8とD3は各々単独で単位領域C5、C8とする。
【0016】
非近傍領域Bにおいては、該非近傍領域Bを構成する単位領域Cの膜占有率PCが該非近傍領域Bの膜占有率PBの0.5倍未満である単位領域を少なくとも1つ含むことが好ましい。PCがPBの0.5倍未満の単位領域Cが複数個、膜束中心部から外周部にかけて連続的に存在していることが特に好ましい。このような分布にすることによって、膜面堆積物の排出性が更に向上し、また、ノズル近傍領域Aへの流体の集中を抑制できる。
【0017】
図3に示すようなカートリッジ型モジュールは、中空糸膜エレメントと上部側面に原水及び/又は洗浄用流体が出入りするノズルを有するハウジングとから構成されている。該中空糸膜エレメントは、複数本の中空糸膜の両端部が接着固定されており、上側の中空糸膜端部の中空部が開口し、下側の中空糸膜端部の中空部が封止され、かつ、下側接着固定部に複数の貫通穴が設けられている。そして該中空糸膜エレメントは、該ハウジング内に収容されシール材と固定冶具で液密的に固定されている。該中空糸膜エレメントの上側接着固定部内側の膜充填可能領域における膜占有率は均一でなく粗密の分布があり、膜占有率の比較的低い領域が該ハウジングのノズルの反対側に配置されるように該中空糸膜エレメントをセットすることが重要である。このようにセットすることによってノズル近傍領域Aと非近傍領域Bにおける膜占有率比PB/PAが0.50以上0.95以下の範囲となるモジュールは、本発明の効果を発揮する。
【0018】
本発明のモジュールでは、ノズル近傍において中空糸膜束とハウジング内壁との間隔を保持するための整流板8を設けることが好ましい。該整流板8は、図8のようにハウジング内周方向とハウジング軸方向の両方向においてノズルの近傍にのみ設けてもよいが、好ましくは、図9のようにハウジング軸方向におけるノズル近傍に配置され、中空糸膜束外周を囲むように設けた筒状のもの(整流筒)がよい。特に好ましくは、ノズル中心軸から左右対称に計60°〜120°の範囲の領域で整流板の壁を貫通する穴がなく、残りの部分において整流板に貫通穴が開いているものがよい。該整流板のハウジング軸方向の長さは、接着固定部内側からハウジング中央側のノズル開口部を超えた位置まで延びるような長さが好ましい。
なお、本発明のモジュールでは、ハウジングの下側側面にもノズルを設けて、原水及び/又は洗浄用流体を導入することもできる。この場合においても上記の整流板を設けることが好ましい。
【0019】
本発明の特徴を有する一体型中空糸膜モジュール、及び、本発明の特徴を有するカートリッジ型モジュールを構成する中空糸膜エレメントは、複数本の柱状物を予め中空糸膜束端部内に挿入した状態で接着固定部形成容器に収容した後、接着剤を注入して硬化させて接着固定部を形成することによって容易に製造することができる。
該柱状物は、少なくとも近傍領域Aの接着固定部における長さが接着固定部厚みの0.3倍以上0.9倍以下であることが必要であり、0.5倍以上0.8倍未満であることが特に好ましい。また、非近傍領域Bの接着固定部における長さは、0.3倍以上1.0倍未満であることが好ましい。このような範囲にすることによって、濁質の排出性を向上させ、膜の損傷や破断をより確実に防止する効果を発揮する。
【0020】
該柱状物は、中空糸膜束の端部内に挿入することによって該膜束を嵩高くし、その挿入位置を適所に配置することによって中空糸膜の分散状態、即ち膜占有率の分布を制御することを可能にする。例えば、複数本の該柱状物を中空糸膜束の断面において均等に分布するように挿入して膜充填可能領域全体に該中空糸膜束を広げた状態にすることによって、膜占有率比PB/PAを0.95に近くすることができる。更に、ノズルの非近傍領域Bに該柱状物を比較的多く分布するように配置することによって、膜占有率比PB/PAを0.50に近くすることも可能である。なお、膜占有率の分布は、具体的には(1)同一太さの柱状物を用いて挿入点の密度を変える方法、(2)挿入点の密度は一定にして柱状物の太さを変える方法等によって制御できる。
【0021】
該柱状物の断面形状は特に限定されるものでなく、円形、楕円形や四角形、六角形、星型等の多角形や板状が例として挙げられる。中空糸膜に接触したときに中空糸膜に損傷を与える恐れのない円形、又は楕円形の形状が好ましく用いられる。また、該柱状物の太さは、円形、楕円形や四角形、六角形、星型等の多角形の場合、中空糸膜外径の5倍以上20倍以下であることが、膜の分布を制御し易い点から好ましい。ここでいう「太さ」とは、該柱状物の長さ方向においてその断面積が最も大きい部分の円相当直径を意味する。中空糸膜の外径は0.6mm〜2.5mmが一般的であるので、具体的には3mm〜50mmの範囲から選ばれるが、3mm〜30mmの範囲が好ましく、5mm〜20mmの範囲が特に好ましく用いられる。また、板状の場合には、上記と同様の理由でその平均厚みが中空糸膜外径の3倍以上15倍以下であることが好ましい。なお、該柱状物の先端部分を錐状にする等中空糸膜束内に挿入しやすい形状にしておくことが好ましい。該柱状物の材質としては、高分子材料、無機材料、金属材料等特に限定されないが、接着固定層を構成する接着剤と接着力を有し、かつ、該接着剤と同等又はそれ以上の引張弾性率を有するものが好ましく用いられる。
【0022】
本発明の外圧式中空糸膜モジュールの製造方法における接着固定部形成容器は、一体型モジュールの場合にはハウジングケースそのものと該ハウジングケース端部と液密的に固定される端部容器から構成することができる。接着剤は、該端部容器に接着剤注入口を設けておき、該導入口から注入してもよいし、ハウジングケースに設けられているノズルから直接注入することも可能である。また、接着固定部形成容器はカートリッジ型モジュール用の中空糸膜エレメントの場合には、該エレメントを構成するヘッド部材と液密的に固定される端部容器から構成される。また、該ヘッド部材が端部容器部分を一体として形成された容器状を成していてもよい。接着剤は、端部容器部分に接着剤注入口を設けておき、該導入口から注入してもよいし、ヘッド部材の開口端(中空糸膜束が挿入されている部分)から直接注入することもできる。更に、中空糸膜エレメントの場合には、接着固定部形成容器を硬化後の接着剤との接着力が弱い材質で構成し、かつ、剥離可能な構造としておくことによって、接着剤を硬化させた後に該容器を剥離除去して、接着固定部を接着剤と中空糸膜とのみから構成させることも可能である。
【0023】
本発明の製造方法において、接着剤の注入・硬化は遠心力を利用した、いわゆる遠心接着法で行ってもよいし、静置下で強制的に接着剤を注入して硬化させる所謂静置接着法で行うこともできる。遠心接着法で行う方が、接着固定部内側表面における中空糸膜外表面の被覆層が均一にでき、膜破断を起こし難いので好ましい。なお、遠心接着法の場合には、ノズルを上向きにした状態で水平にして回転させることが定法として行われているが(例えば、特許文献1参照)、本発明のモジュールを製造するに際しては、ノズルを水平位置より下向きにした状態で回転させることが好ましい。ノズルを下向きにすることによって、ノズル近傍領域Aに膜占有率の小さい部分ができ難くなる。また、遠心接着法の場合には、接着剤が流動化しなくなる程度まで硬化反応が進んだ段階で回転を停止し、次いで、オーブン等で加温して実用的な硬化状態まで反応を完了させることが好ましい。
【0024】
本発明に用いられる中空糸膜としては、逆浸透膜、ナノ濾過膜、限外濾過膜、及び精密濾過膜を用いることができる。
中空糸膜の素材は特に限定されず、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4−メチルペンテン)、エチレン−ビニルアルコール共重合体、セルロース、酢酸セルロース、ポリフッ化ビニリデン、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられ、また、これらの複合素材も使用できる。
【0025】
また、中空糸膜の形状としては、好ましくは内径50μm〜3000μm、より好ましくは500〜2000μmであり、内/外径比が0.3〜0.8のものが好適に使用される。
更に、該中空糸膜はウェーブを有していることが好ましい。該中空糸膜がウェーブを有している場合、膜占有率分布を制御するために使用する柱状物の数を減少させることができる。
【0026】
このウェーブのつき方、即ち、ウェーブ度合いは中空糸束の捲縮度で表現され、該捲縮度が1.45以上2.5未満であることが好ましい。特に好ましくは、1.50以上2.0以下である。このような範囲の中空糸膜束を用いた場合に、より少ない数量で所定の膜分布に制御することができて膜の損傷や破断を防止でき、かつ、ハウジング内での膜の揺動を阻害することなく物理洗浄効果をより一層発揮することができる。ここでいう捲縮度とは、1000本の中空糸膜を束ねて整えた後に、端部にバネ秤を取り付けた厚さ200μm、幅40mmのPETフィルムを該中空糸膜束に巻きつけ、バネ秤を引っ張って1kgの荷重を印加した状態で該中空糸膜束の周長を測定し、下式で計算して求めた値である。
捲縮度=(周長〔m〕/π)/((中空糸膜外径〔m〕)×中空糸膜本数)
【0027】
上記のウェーブを有する膜を用いて中空糸膜モジュール又はモジュールを構成する膜エレメントを製造する場合、接着固定部内側の膜充填可能領域の面積S1に対する接着固定部端面における膜充填可能領域の面積S2の比S2/S1が0.7以上0.9以下になるようにすることによって上記の柱状物を5〜0個に減少させることができる。S2/S1が0.80以上0.90以下の範囲であることが特に好ましい。
【0028】
本発明に用いられる接着剤としては、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、エポキシアクリレート樹脂、シリコン樹脂等の高分子材料が好ましい。中でも、ウレタン樹脂は比較的短時間で反応が完結するので特に好ましい。また、これらの接着剤で構成された接着固定層は、使用中に生じる差圧に耐え得る耐圧性を有することが必要であり、そのためには適度な硬さを有していることが望ましい。一方、物理洗浄時等の流体の流れによる中空糸膜の破断をより長期間確実に防止するために、適度な柔らかさを有した接着剤を使用することが望ましい。したがって、使用上必要充分な耐圧性を付与し、かつ、確実に膜破断を防止するためには、使用温度範囲で硬度70D〜50Aの特性を有する接着剤を使用することが好ましい。なお、ここでいう硬度は、ショア硬度計を実質的に平滑な面を有する試料面に押し当てた時に、10秒後に示した値をいう。この値が70Dを超えると上記の膜破断が起こる場合があり、また、50A未満では耐圧性が不足する場合がある。
次に、実施例及び参考例によって本発明を説明する。
【実施例】
【0029】
実施例1
片端の中空部を閉塞させたPVDF製中空糸膜(旭化成製)6600本を束ね、内径154mmの整流筒5が内側に装着されたヘッド部を有する図1記載のハウジングケース2に挿入した。該ヘッド部はその法線を中心軸とする内径40mmのノズル3を有しており、また、該整流筒はノズル中心軸から左右対称に計90°の部分を除いた領域に240個の5mmφの貫通口4Cを有した円筒状のものである。用いた中空糸膜1は、孔径0.1μm内径0.65mm外径1.22mmであり、捲縮度1.65のウェーブを有している。次いで、中空部を閉塞した側の膜束端部に外径11mmの円柱棒(予め、下記の接着剤を型に流延して硬化させて成形したもの)28本を均等に分布するように挿入・配置した。また、中空部が開口した側の膜束端部には外径11mmのポリエチレン製円柱棒24本を均等に分布するように挿入・配置した。次いで、接着剤導入用チューブを取り付けた接着カップをハウジングケースの両端部に固定し、ノズルを下方45°の向きにしてハウジングケースを水平にして遠心用フレームに固定し、水平方向に回転させて接着剤をハウジングケースのヘッド部内に注入した。該接着剤としては、2液性熱硬化型ウレタン樹脂(サンユレック社製:SA−6330A2/SA−6330B5(商品名))を用いた。接着剤の硬化反応が進行して流動化が停止した時点で遠心機の回転を停止して取り出し、オーブン中で50℃に加熱してキュアーした。その後、ハウジングケースの端部を切断して接着前の段階で中空部を閉塞した側の中空部を開口させ、反対側端部のポリエチレン製円柱棒を全て取り外して貫通穴を形成した。なお、本モジュールの膜有効長は2mである。
次いで、ハウジングナット8a、8bを用い、Oリング7a、7bを介してキャップ6a、6bを接合した後、中空部が開口した側を上にして該モジュールをろ過装置に取り付け、以下の物理洗浄耐久性試験を行った。
上側接着固定部4a側から清浄水を8m/hrの流量で供給し、同時に下側接着固定部4b側から空気を7m/hrの流量で供給した。供給された両流体は、上側ヘッド部のノズルから排出させた。1ヵ月毎に行うリークテストの時以外は連続的に上記の運転を実施した。なお、運転中は水温を5℃に保持した。
6ヶ月間の運転後でも膜の破断によるリークは発生しなかった。この運転期間は、実際のろ過運転条件下では10年以上の運転期間に相当する。
この試験終了後、該モジュールの上側接着固定部の内側で切断し、膜を毟り取って接着表面を詳細に観察した。該接着固定部の内側表面を写真にとり、A3サイズに拡大して中空糸膜の分布状態を計測したところ、PAが0.44、PB1が0.43、PB2が0.34、膜占有率比PB/PAが0.89であり、いずれの単位領域Cにおいても、その膜占有率PCは近傍領域Aの膜占有率PAの0.8倍〜1.2倍であった。また、第二非近傍領域B2の束外周部にPBの0.5倍未満の単位領域Cが1つだけ存在した。
次いで、上側接着固定部の内側表面から5mmの位置で該接着固定部を切断して平滑な断面を形成し、該切断面の接着剤部分の硬度を測定したところ、5℃及び40℃でのショア硬度が各々65D、40Dであった。
また、上側接着部固定部の長さ65mmに対して、挿入した円柱棒の該接着固定部における長さは50mmであり、その比は0.77である。
【0030】
実施例2
実施例1と同様な中空糸膜6600本を用い、平型ツバ部を有するカートリッジヘッド9と、11mmφの貫通穴24ヶを有し長さ40mmの突き出し部を有する下部リング11、及び、外径10mm肉厚1mmのパイプ状SUS製支柱(10)2本とからなる図5に示す中空糸膜エレメントを作製した。該支柱は中空糸膜束内最外周部に配置し、該中空糸膜と二液性熱硬化型ウレタン樹脂(サンユレック社製:SA−6330A2/SA−6330B4(商品名))を用いて接着固定した。なお、該カートリッジヘッドは、端部容器部分を一体として成形したものであり、該端部容器部分に接着剤導入口を有している。接着に際しては、中空部を閉塞した側の膜束端部には特に挿入物を入れない状態でカートリッジヘッド内にセットし、また、中空部が開口した側の膜束端部を下部リング内にセットした後、ポリエチレン製円柱棒24本を下部リングの貫通穴を通して該中空糸膜束内に挿入・固定し、これらを接着用冶具に水平に固定した状態で遠心接着を行った。実施例1と同様にして接着剤を硬化・キュアーした後、カートリッジヘッドの端部容器部分を切断して中空糸膜端部の中空部を開口させ、下部リングからポリエチレン製円柱棒を抜き取って貫通穴を形成させた。なお、本中空糸膜エレメントの膜有効長は2mである。
該カートリッジヘッドと下部リングの内径は、各々155mm、144mmであり、カートリッジヘッド部及び下部リングにおける接着厚みが、各々65mm、30mmである。また、切断端面での端部容器部の内径は140mmであり、S2/S1が0.82である。
該カートリッジヘッド側の接着固定部においては、遠心接着時に上になっていた部分には中空糸膜が疎な状態で固定されているのが観察された。
下側側面にノズルと整流筒がない他は実施例1と同様である図4に示すようなケースをハウジングとして使用し、該ハウジング内に上記の中空糸膜エレメントを収納して図3に示すような膜モジュールを構成した(7cはカートリッジ用Oリングを表す)。該中空糸膜エレメントの収納にあたっては、中空糸膜が比較的疎な状態になっている側をハウジングに付設された排出口とは反対側になるようにセットした。このときの排出口との位置関係をカートリッジヘッドに刻印した。
上記のモジュールをラック装置に取り付け、実施例1と同様にして物理洗浄耐久性試験を行った。
6ヶ月間の運転後でも膜の破断によるリークは発生しなかった。
この試験終了後、実施例1と同様にして接着表面を詳細に観察したところ、PAが0.48、PB1が0.40、PB2が0.24、膜占有率比PB/PAが0.70であり、いずれの単位領域Cにおいてもその膜占有率PCは近傍領域Aの膜占有率PAの0.7倍〜1.6倍であった。また、第一非近傍領域B1から第二非近傍領域B2の束外周部にかけてPBの0.5倍未満の単位領域Cが3つ存在した。
次いで、カートリッジヘッド接着固定部の内側表面から5mmの位置で該接着固定部を切断して平滑な断面を形成し、該切断面の接着剤部分の硬度を測定したところ、5℃及び40℃でのショア硬度が各々53D、37Dであった。
【0031】
実施例3
孔径が0.1μm、内径が0.68mm、外径が1.25mmであり、ウェーブを有していないPVDF製中空糸膜(旭化成製)6400本を用い、膜束のノズル側1/2の領域に14本、ノズルと反対側の領域に18本円柱棒を挿入した他は実施例1と同様にしてモジュールを作製した。
このモジュールを用いて実施例1と同様にして物理洗浄耐久性試験を行ったところ、6ヶ月間の運転後でも膜の破断によるリークは発生しなかった。
この試験終了後、該中空糸膜モジュールをカートリッジヘッド接着固定部の内側で切断し、膜を毟り取って接着表面を詳細に観察した。該接着固定部の内側表面を写真にとり、A3サイズに拡大して中空糸膜の分布状態を計測したところ、PAが0.46、PB1が0.44、PB2が0.30、膜占有率比PB/PAが0.83であり、いずれの単位領域Cにおいても、その膜占有率PCは近傍領域Aの膜占有率PAの0.7倍〜1.4倍であった。また、第一非近傍領域B1から第二非近傍領域B2の束外周部にかけてPBの0.5倍未満の単位領域Cが2つ存在した。
また、上側接着部固定部の長さ65mmに対して、挿入した円柱棒の該接着固定部における長さは45mmであり、その比は0.69である。
【0032】
実施例4
実施例3と同様のPVDF製中空糸膜6400本の膜束を4分割し、図10A〜図10Cに示す十字状板を挿入した。該十字状板の厚みは5mmであり、一辺が他の辺より20mm長い形状である。該膜束を実施例1と同様のハウジングケースに挿入し、十字状板の長い辺がノズルと正反対の位置になるようにしてセットした。次いで、4分割された膜束のうちノズルに近い側の2つの分画に実施例1と同様の円柱棒を各々6本、ノズルと反対側の2つの分画には各々8本挿入した。以下、実施例1と同様にしてモジュールを作製した。
このモジュールを用いて実施例1と同様にして物理洗浄耐久性試験を行ったところ、6ヶ月間の運転期間において1本のみしかリークが発生しなかった。
この試験終了後、該中空糸膜モジュールをカートリッジヘッド接着固定部の内側で切断してリーク部分を観察したところ、第二非近傍領域の十字状板の位置に相当する部分で膜が1本接着界面において破断していた。更に、中空糸膜を毟り取って接着表面を詳細に観察したところ、十字状板の長い辺が埋設されている部分が約3mmの幅で膜が存在しない状態であった。該接着固定部の内側表面を写真にとり、A3サイズに拡大して中空糸膜の分布状態を計測したところ、PAが0.43、PB1が0.42、PB2が0.37、膜占有率比PB/PAが0.93であり、いずれの単位領域Cにおいても、その膜占有率PCは近傍領域Aの膜占有率PAの0.7倍〜1.4倍であった。また、第一非近傍領域B1から第二非近傍領域B2の束外周部にかけてPBの0.5倍未満の単位領域Cが連続して3つ存在した。
また、上側接着部固定部の長さ65mmに対して、挿入した円柱棒の該接着固定部における長さは45mmであり、その比は0.69である。また、十字状板の長辺部分と短辺部分は各々55mm、35mmであり、その比は各々0.85、0.54である。
【0033】
比較例1
上側接着固定部の形成時に挿入物を用いず、定法に則ってノズルを上方に向けた状態で遠心接着した他は実施例1と同様にして中空糸膜モジュールを作製した。
該モジュールについて、実施例1と同様にして物理洗浄耐久性試験を実施したところ、1ヶ月目に2本の膜リークが発生し、2ヶ月目では累計20本以上の膜リークが発生した。この時点で試験終了として膜モジュールを解体したところ、いずれのリークにおいても上側接着固定部のノズルに近い側で膜が破断していた。
実施例1と同様にして中空糸膜の分布状態を観察したところ、ハウジングのノズル側において膜が疎な状態になっており、膜が存在しない約10cmの領域があった。分布状態を計測したところ、膜占有率比PB/PAは2.5であった。
【0034】
比較例2
実施例2と同様に作製した中空糸膜エレメントをハウジングに収納するに際して、カートリッジヘッド内の接着固定部において中空糸膜が比較的疎な状態になっている側をハウジングに付設されたノズルに最も近くなるようにセットした。このときのノズルとの位置関係をカートリッジヘッドに刻印した後、実施例1と同様にして物理洗浄耐久性試験を行った。
試験運転1ヶ月目に1本の膜リークが発生し、3ヶ月目で累計5本、6ヶ月目では累計36本の膜リークが発生した。この時点で試験終了として膜モジュールを解体したところ、いずれのリークにおいても上側接着固定部のノズルに近い側で膜が破断していた。
実施例2と同様にして中空糸膜の分布状態を計測したところ、膜占有率比PB/PAは1.9であった。
【0035】
実施例5
実施例1〜4並びに比較例1及び2に記載した方法により作製したモジュールをラック装置に取り付け、河川底泥を添加して濁度を1000ppmに調整したモデル液1mをろ過した後に、逆洗水量8m/hr、エアー流量5N−m/hで1分間流す洗浄操作を行った。このろ過と洗浄操作を5回繰り返した後に各々のモジュールを解体して上側接着固定部付近の膜束内の状態を観察した。
比較例1及び2では、第二非近傍領域の部分に汚泥が多く溜まっているのが観察された。それに対して、実施例1では第一非近傍領域の一部に少し汚泥が溜まっているだけであり、実施例2及び実施例3では殆ど汚泥が溜まっていなかった。また、実施例4では近傍領域の一部に少し汚泥が溜まっているだけであった。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、河川水、湖沼水、地下水、海水、生活排水、又は工場排水等の原水について除濁、除菌を行う濾過装置に用いられるろ過膜モジュールとして好適である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明のハウジング一体型中空糸膜モジュールの一例を示す縦断面図である。
【図2】ハウジング一体型中空糸膜モジュールにおける「膜充填可能領域」の説明図である。
【図3】本発明のカートリッジ型中空糸膜モジュールの一例を示す縦断面図である。
【図4】本発明のカートリッジ型中空糸膜モジュール用ハウジングの一例を示す縦断面図である。
【図5】本発明のカートリッジ型中空糸膜モジュールにおける中空糸膜エレメントの一例を示す縦断面図である。
【図6】カートリッジ型中空糸膜モジュールにおける「膜充填可能領域」の説明図である。
【図7】本発明の「単位領域C」の説明図である。
【図8】本発明のハウジング一体型中空糸膜モジュールにおける整流板の一例を示す断面図である。
【図9】本発明のハウジング一体型中空糸膜モジュールにおける整流板の他の一例を示す断面図である。
【図10A】本発明のハウジング一体型中空糸膜モジュールにおける十字状板の一例を示す斜視図である。
【図10B】図10AのX方向からみた十字状板の平面図である。
【図10C】図10AのY方向からみた十字状板の側面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の中空糸膜からなる中空糸膜束、ハウジング及び流体の出入用ノズルを含んでなり、該中空糸膜束の両端部において中空糸膜同士、及び中空糸膜と該ハウジングの内壁とが接着固定されており、片側又は両側の接着固定端の中空部が開口しており、中空部が開口した少なくとも一方の接着固定端のハウジング側面に流体の出入用ノズルが備えられている外圧式中空糸膜モジュールであって、該ノズル近傍にある、該中空部が開口した少なくとも一方の接着固定端において、接着固定部内側の膜充填可能領域のうち該ノズルの近傍領域Aと非近傍領域Bにおける膜占有率を各々PA、PBとしたとき、膜占有率比PB/PAが0.50以上0.95以下である上記外圧式中空糸膜モジュール。
【請求項2】
複数本の中空糸膜からなる中空糸膜束をその両端部が接着固定して有し、少なくとも一方の接着固定端の中空部が開口している中空糸膜カートリッジ、及び該中空糸膜カートリッジを収容する、少なくとも片側側面に流体の出入用ノズルを有するハウジングを含んでなり、該中空糸膜カートリッジの中空部が開口した側の接着固定部内側表面近傍に位置するように、ハウジングに設けられたノズルが固定されてなる外圧式中空糸膜モジュールであって、該ノズル近傍にある接着固定端において接着固定部内側の膜充填可能領域のうち該ノズルの近傍領域Aと非近傍領域Bにおける膜占有率を各々PA、PBとしたとき、膜占有率比PB/PAが0.50以上0.95以下である上記外圧式中空糸膜モジュール。
【請求項3】
接着固定部内側の膜充填可能領域のうちノズルの近傍領域Aにおいて、該近傍領域Aを構成する全ての単位領域Cの膜占有率PCが、該近傍領域Aの膜占有率PAの0.5倍以上2.0倍以下である請求項1又は2記載の外圧式中空糸膜モジュール。
【請求項4】
接着固定部内側の膜充填可能領域のうちノズルの非近傍領域Bにおいて、第一非近傍領域B1及び第二近傍領域B2における膜占有率を各々PB1及びPB2としたとき、PA≧PB1≧PB2であり、かつ、PAが0.40以上0.60以下、PB2が0.20以上0.40未満である請求項1又は2記載の外圧式中空糸膜モジュール。
【請求項5】
接着固定部内側の膜充填可能領域のうちノズルの非近傍領域Bにおいて、該非近傍領域Bを構成する単位領域Cの膜占有率PCが該非近傍領域Bの膜占有率PBの0.5倍未満である単位領域を少なくとも1つ含む請求項1〜3のいずれか一項記載の外圧式中空糸膜モジュール。
【請求項6】
中空糸膜束の外周部のうちノズル近傍に整流板が設けられている請求項1又は2記載の外圧式中空糸膜モジュール。
【請求項7】
整流板が筒状であって、その内側に中空糸膜束が収納されており、該整流板はノズル近傍以外の壁面部分に複数の貫通口を有し、ノズル近傍には貫通口がない請求項6記載の外圧式中空糸膜モジュール。
【請求項8】
接着固定部を構成する接着剤部分が単一層の高分子材料からなり、その硬度が使用温度範囲において50A〜70Dである請求項1又は2記載の外圧式中空糸膜モジュール。
【請求項9】
少なくとも中空部を開口させる側の中空糸膜束の端部内に、複数本の柱状物を予め挿入した状態で接着固定部形成容器に収容し、接着剤を注入して硬化させた後に中空糸膜束の端面を切断して接着固定部を形成し、少なくとも近傍領域Aの接着固定部内に長さが接着固定部厚みの0.3倍以上0.9倍以下の柱状物を存在させることを含む、請求項1又は2記載の外圧式中空糸膜モジュールの製造方法。
【請求項10】
少なくとも片側側面に流体の出入用ノズルを有するハウジングケースに中空糸膜束を収容し、該ノズルを水平方向より下向きに保持した状態で水平方向に回転させ、その遠心力下で接着剤を注入して硬化させて接着固定部を形成させることを含む、請求項1記載の外圧式中空糸膜モジュールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【国際公開番号】WO2005/030375
【国際公開日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【発行日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−514235(P2005−514235)
【国際出願番号】PCT/JP2004/014182
【国際出願日】平成16年9月28日(2004.9.28)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】