外壁パネルの補修方法及びパネル補強金物
【課題】外壁パネルに対し、専用の補強材を用いて補強しつつ補修することで、作業性を格段に向上させ、しかもその補修費用も取り替え費用に比べて格段に低コストで済ますことができる外壁パネルの補修技術を提供すること。
【解決手段】矩形状の外壁パネルPを相互に間隔をおいて配設し、各外壁パネルどうしの間に目地材10を施した外壁パネルの補修方法であり、補修対象外壁パネルの周囲に存在する目地材を除去する第1工程と、補修対象外壁パネルの上下左右の四つの側面部のうち上下の側面部11、12に対し接着剤を介して板状補強材20をそれぞれ取り付ける第2工程と、補修対象外壁パネルに対し、その外面15と、残り二つの左右の側面部13、14と、各板状補強材の表面とをそれぞれ覆う内面30aを有する箱形補強材30を取り付ける第3工程と、箱形補強材の周囲に目地材を施す第4工程とを行う。
【解決手段】矩形状の外壁パネルPを相互に間隔をおいて配設し、各外壁パネルどうしの間に目地材10を施した外壁パネルの補修方法であり、補修対象外壁パネルの周囲に存在する目地材を除去する第1工程と、補修対象外壁パネルの上下左右の四つの側面部のうち上下の側面部11、12に対し接着剤を介して板状補強材20をそれぞれ取り付ける第2工程と、補修対象外壁パネルに対し、その外面15と、残り二つの左右の側面部13、14と、各板状補強材の表面とをそれぞれ覆う内面30aを有する箱形補強材30を取り付ける第3工程と、箱形補強材の周囲に目地材を施す第4工程とを行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の外壁材として相互に間隔をおいて配設された矩形状の外壁パネルの補修方法及びそれに用いるパネル補強金物に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば火力発電施設の建屋においては、矩形状の外壁パネルを相互に間隔をおいて升目状に並べて配設し、各外壁パネルどうしの間に目地材を施して外壁を施工することが従来から行われている。
【0003】
この種の外壁パネルは、セメント系繊維補強パネル(GRCパネル等)で形成されていることが多い。このセメント系繊維補強パネルは、型枠にスラリー状のモルタルと耐アルカリ性ガラス繊維(ロービング:長さ3cm前後)を同時に吹き付けてパネルを製作する。このようにして制作される外壁パネルには、発電施設の騒音が外部に漏洩するのを低減するための吸音材も装備される。
【0004】
ところで、外壁パネルには風圧力や地震力、重力等がかかる。風圧力は外壁に対し、正圧(押す方向)及び負圧(引く方向)に交互にかかる。地震力は外壁に対し、内側に働く方向へ、外側へ働く方向へ交互に働く。このため、外壁パネルに亀裂が発生すると、引っ張り力を負担する補強繊維が切れ、風圧力、地震力、重力により外壁パネルが崩落する恐れがある。
【0005】
外壁パネルの崩落を未然に防止するためには、その亀裂の入った外壁パネルを取り替えるか補修する必要がある。火力発電施設の建屋においては発電施設との関係で、外壁の内側にも作業員を配置して外壁パネルを取り外すことは不可能な構造となっている場合が多い。その場合、作業員は建屋の外からのみ外壁パネルを取り替える作業を行うことになる。
【0006】
図15は従来から採用さている外壁パネルの取り替え工法例を示している。この例では、ゴンドラ1を利用し、取り替え対象の亀裂2入りの外壁パネルPに手や頭を入れることができる大きさの穴3、3を開け、外壁パネルPを支柱4等に取り付けている埋め込みボルトのナットを取り外すことで、外壁パネルPを吊りワイヤ6で吊り降ろし、新たな外壁パネルと取り替える。なお、特許文献1には、プレキャストコンクリート版の背面側にプレキャストコンクリート版補強用の金属板を設ける技術が記載されている。
【特許文献1】特開2003−035008号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、こうした従来の方法では、次のような課題がある。
第1に、外壁パネルPの重量に起因する問題である。この種の外壁パネルPは、軽量な吸音材が装備されているものの、縦1m、横2m、厚さ10cm、重量160kgにも及ぶ。そのため、これを取り替える作業は大掛かりで手間を要する上に作業性が悪いという問題があった。
【0008】
第2に、取り替え費用の問題である。外壁パネルPの取り替え作業は大掛かりで手間を要するため、その分、費用もかかる。特に、取り替える場合には新たな外壁パネルPを制作しなければならないため、パネル制作費用まで加わり、コスト高になる問題があった。
【0009】
よって、本発明の課題は、外壁パネルに対し、専用の補強材を用いて補強しつつ補修することで、作業性を格段に向上させ、しかもその補修費用も取り替え費用に比べて格段に低コストで済ますことができる外壁パネルの補修方法及びパネル補強金物の技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明では以下の手段を採用した。
本発明は、セメント系繊維補強パネルにより形成された矩形状の外壁パネルを相互に間隔をおいて配設し、各外壁パネルどうしの間に目地材を施した外壁パネルの補修方法であって、補修対象外壁パネルの周囲に存在する前記目地材を除去する第1工程と、補修対象外壁パネルの上下左右の四つの側面部のうち上下の側面部に対し接着剤を介して板状補強材をそれぞれ取り付ける第2工程と、補修対象外壁パネルに対し、その外面と、残り二つの左右の側面部と、各板状補強材の表面とをそれぞれ覆う内面を有する箱形補強材を取り付ける第3工程と、箱形補強材の周囲に目地材を施す第4工程と、を行うことを特徴としている。
【0011】
本発明によれば、補修対象外壁パネルに対し、板状補強材と箱形補強材とを備える専用のパネル補強金物を用いて補修することで、補修対象外壁パネルを十分に補強しつつ補修することができる。また、補修対象外壁パネルに箱形補強材を被せるようにして取り付けるので、重量物である外壁パネルごと取り替える場合に比べてその作業性を格段に向上させることができ、しかも金属板等を利用した制作容易な補強金物を用いた場合、その補修費用も取り替え費用に比べて格段に低コストで済ますことが可能になる。
【0012】
本発明において、第3工程では、補強対象外壁パネルに対して接着剤により箱形補強材を取り付ける工程と、補強対象外壁パネルに対してネジ止めにより箱形補強材を固定する工程とを含むことが望ましい。このように、補強対象外壁パネルに対して箱形補強材を接着剤とネジ止めの両方で取り付けることにより、簡易な作業で確実かつ高精度に取り付けることができる。
【0013】
本発明において、外壁パネルは上下の側面部間の寸法よりも左右の側面部間の寸法が大きい横長の長方形状であり、各板状補強材は外壁パネルの上下の側面部に沿ってそれぞれ延びる長方形状に形成され、その長手方向に添う両側部分が互いに内面側へ向かって折れ曲がった屈曲部に形成されていることが望ましい。このように、板状補強材の長手方向に添う両側部分を屈曲部に形成することで、各板状補強材の長手方向の剛性を高めた形状とすることができる。従って、この剛性を高めた板状補強材を外壁パネルの上下の側面部に対して接着材でそれぞれ固定することにより外壁パネルの剛性を高めることができる。
【0014】
一方、本発明は建物の外壁材として相互に間隔をおいて配設された矩形状の外壁パネルの補修に用いるパネル補強金物であって、前記補修対象外壁パネルの上下左右の四つの側面部のうち上下の側面部に対し接着剤を介して取り付けられる板状補強材と、前記補修対象外壁パネルに対し、その外面と、残り二つの左右の側面部と、前記板状補強材の表面とをそれぞれ覆う内面を有する箱形補強材とを備えることを特徴としている。
【0015】
本発明のパネル補強金物によれば、二つの板状補強材と一つの箱形補強材とを備える構成としているので、隣り合う外壁パネル間の間隔(隙間)が小さくてもその隙間を利用してまず板状補強材を差し込むようにして取り付けることができる。そして、板状補強材の取り付け後に、その板状補強材を覆うようにして箱形補強材を取り付けることが可能な構成とすることで、外壁パネルの補強機能向上作用と、パネル補強金物の取り付け作業の向上作用とを効果的に発揮させることができる。
【0016】
ここで、板状補強材は外壁パネルの上下の側面部に沿って延びる長方形状に形成され、その長手方向の両側部分が互いに内面側へ向かって折れ曲がった屈曲部に形成されていることが望ましい。このように、板状補強材の長手方向の両側部分が互いに内面側へ向かって折れ曲がった屈曲部に形成されていることで、板状補強材に必要な剛性を付与できる他、外壁パネルの側面部に添う形状とすることが可能になる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、外壁パネルに対し、専用の補強材を用いて補強しつつ補修することで、作業性を格段に向上させ、しかもその補修費用も取り替え費用に比べて格段に低コストで済ますことができる外壁パネルの補修方法及びパネル補強金物の技術を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施例について、図面を参照して説明する。なお、以下の実施例では、本発明に係る補修技術を、火力発電所の建屋の外壁に適用した例について説明する。
【実施例】
【0019】
図1は、火力発電所の建屋の外壁部分を示すもので、(a)は建屋の部分立面図、(b)はその断面図である。図2は外壁パネルの外観図である。図3は補強対象外壁パネルとパネル補強金物を示す外観図である。なお、これらの図において図15と共通する部分には同一符号を付してその説明を簡略化する。
【0020】
建屋の外壁部分は、胴縁等を含む支柱4の外側に、植え込みボルト5aとナット5により固定された多数の外壁パネルPにより構成されている。各外壁パネルPは、背景技術の欄で説明したものと同様に、縦1m、横2m、厚さ10cm、重量160kg程度の横長の長方形状であって、相互に間隔をおいて平面長方形の升目状に並べて配設されている。各外壁パネルPどうしの間には目地材10が施されている。
【0021】
この外壁パネルPは、セメント系繊維補強パネル(GRCパネル)で形成されている。セメント系繊維補強パネルは、型枠にスラリー状のモルタルと耐アルカリ性ガラス繊維(ロービング:長さ3cm前後)を同時に吹き付けてパネルを製作したものである。この外壁パネルPは、図4に示すように、支柱4に対向する面である内面側に凹所7が設けられ、その凹所7内に吸音材8が装填されている。凹所7は、図3において破線で示すように、横方向に並べて2箇所形成されている。
【0022】
吸音材8は発電施設の騒音が外部に漏洩するのを低減すると共に外壁パネルPの重量を軽減する機能も発揮する。実施例の外壁パネルPの内面側には、吸音材8が装填された凹所7の蓋材の機能を有する金属プレート9が取り付けられている。この金属プレート9は、外壁パネル自体の吸音効果に配慮してステンレス製パンチングメタルにより形成されている。
【0023】
実施例においては、図1に示すように亀裂2の入った外壁パネルPを取り替える代わりに、図3及び図5に示すようなパネル補強金物Kを用いて補修する考え方を採用している。このパネル補強金物Kは、補修対象外壁パネルPの上下左右の四つの側面部11、12、13、14のうち、上下の側面部11、12に対し接着剤を介してそれぞれ取り付けられる二つの板状補強材20、20と、補修対象外壁パネルPに対し、その外面15と、残り二つの左右の側面部13,14と、板状補強材20の表面とをそれぞれ覆う内面30a(図6参照)を有する箱形補強材30とを備えている。
【0024】
板状補強材20、20は、外壁パネルPの上下の側面部11,12に沿って延びる長方形状に形成され、その長手方向の両側部分が互いに内面側へ向かって折れ曲がった屈曲部21、22にそれぞれ形成されている。このように、板状補強材20の長手方向の両側部分が互いに内面側へ向かって折れ曲がった屈曲部21、22に形成されていることで、板状補強材20に必要な剛性を付与できる他、外壁パネルPの側面部11、12に添う形状とすることが可能になる。
【0025】
なお、外壁パネルPの外面15側の縁取りが内面16側の縁取りよりも大きく形成されているため、それに対応させて、屈曲部21よりも屈曲部22の方が大きく形成されている。
【0026】
箱形補強材30は、鋼板の曲げ加工と溶接により片面のみが開放した扁平な箱形に形成されている。具体的には、平面長方形状の一つの表面板31と、上下の側面板32、33と、左右の側面板34、35とにより形成されている。但し、表面板31と上下の側面板32、33とが連続する部分は板状補強材20の屈曲部22に対応させてテーパ面32a、33aに形成されている。
【0027】
この実施例のパネル補強金物Kによれば、二つの板状補強材20と一つの箱形補強材30とを備える構成としているので、隣り合う外壁パネルP間の間隔(隙間)Sが小さくてもその隙間Sを利用してまず板状補強材20を差し込むようにして取り付けることができる。そして、板状補強材20の取り付け後に、その板状補強材20を覆うようにして箱形補強材30を取り付けることが可能な構成とすることで、外壁パネルPの補強機能向上作用と、パネル補強金物Kの取り付け作業の向上作用とを効果的に発揮させることができる。
【0028】
次に、このパネル補強金物Kを用いたパネル補修方法について説明する。
この実施例のパネル補修方法は、図1及び図7に示すように、まず、補修対象外壁パネルPの周囲に存在する既設シール(目地材)10を除去する工程(第1工程)を行う。
【0029】
次に、補修対象外壁パネルPの上下左右の四つの側面部11,12,13,14のうち上下の側面部11、12に対し接着剤(図示せず)を介して板状補強材20、20をそれぞれ取り付ける工程(第2工程)を行う。板状補強材20、20は、その内面に接着剤を塗布してから、上下の外壁パネル間の隙間S(図4参照)に差し込むことにより取り付けることが好ましい。
【0030】
板状補強材20の取り付けに際しては、接着剤が必要な程度に硬化するまで、その板状補強材20を上下の側面部11,12に対して充分に押し付けておくことが好ましい。例えば図11に示すように、上下で隣り合う板状補強材20、20間にスペーサ36を差し込んでおくことができる。
【0031】
なお、必要に応じて、この第2工程の前に、あるいは第2工程の後に、補修対象外壁パネルPに、箱形補強材30を固定するための雌ねじ付きアンカー50を複数(外壁パネルの四隅近くの4箇所と中間の2箇所程度)取り付けておく。例えば、図8に示すように、補修対象外壁パネルPに電動ドリル51により穴52を開け、図9に示すように、穴52内に注入具53により接着剤54を注入した後、アンカー50を挿入して取り付けておく。
【0032】
次に、補修対象外壁パネルPに対し、その外面15と、残り二つの左右の側面部13、14と、各板状補強材20の表面とをそれぞれ覆う内面30aを有する箱形補強材30を取り付ける工程(第3工程)を行う。
【0033】
この第3工程では、補強対象外壁パネルPに対して接着剤(図示せず)により箱形補強材30を取り付ける工程と、補強対象外壁パネルPに対してネジ止めにより箱形補強材30を固定する工程とを含むことが望ましい。このように、補強対象外壁パネルPに対して箱形補強材30を接着剤とネジ止めの両方で取り付けることにより、簡易な作業で確実かつ高精度に取り付けることができる。
【0034】
ここで、接着剤を用いる場合は、相互の接着硬化を高めるために、箱形補強材30の内面30a全体と補強対象外壁パネルPの外面15、両側の側面部13、14及び板状補強材20の表面の双方に対して塗布することが好ましい。ネジ止めにより固定する場合は、図12に示すように予め設けておいたアンカー50に頭部付きボルト55を電動ボックスレンチ56によりねじ込むことで固定することが好ましい。その場合、アンカー50に対応する箱形補強材30の部分に予めボルト穴を設けておく。
【0035】
上記のようにしてパネル補強金物Kの取り付け作業を終えたら、図13に示すように、箱形補強材30の周囲に目地材10を施す工程(第4工程)を行う。なお、この第4工程においては、目地材10の他に、補強済み外壁パネルPのタッチアップ(頭部付き固定ボルトの塗装を含む)等の仕上げ作業を行い、完了とする。
【0036】
実施例によれば、補修対象外壁パネルPに対し、板状補強材20と箱形補強材30とを備える専用のパネル補強金物Kを用いて補修することで、補修対象外壁パネルPを十分に補強しつつ補修することができる。また、補修対象外壁パネルPに箱形補強材30を被せるようにして取り付けるので、重量物である外壁パネルPごと取り替える場合に比べてその作業性を格段に向上させることができ、しかも金属板等を利用した制作容易な補強金物を用いることで、その補修費用も取り替え費用に比べて格段に低コストで済ますことができる。
【0037】
なお、図14に亀裂あり外壁パネルの現状と補強強度試験結果を示す。ここでは、実験結果(正圧方向)、実験結果(負圧方向)、設計時の風圧力(正・負圧方向)、設計時のGRC基準強度、現状パネルの統計処理強度(正圧方向最小値)、現状パネルの統計処理強度(負圧方向最小値)を、パネルA〜パネルD及び鋼板補強パネル(1)〜鋼板補強パネル(6)についてそれぞれ示している。この実験結果に基づいて以下の点を確認した。
【0038】
(a)亀裂のある外壁パネルの強度は、正・負方向とも新設時の基準強度を満足しない。(b)パネルAは現状のパネル、パネルB、C、Dは表面を鋼板・ポリエステルライニング・エポキシライニングしたパネル。パネルAは正・負方向とも破壊強度、パネルB、C、Dについて正方向は破壊強度、負方向は機械の載荷最大荷重。
(c)鋼板補強パネル(1)(2)(3)(4)は正方向で設計時の基準強度を確認、破壊までに至っていない。
(d)鋼板補強パネル(3')は(3)のパネルに掛けた荷重を戻し、再度、正方向に荷
重を加えたが破壊までに至っていない。
(e)鋼板補強パネル(5)(6)は正方向の強度を確認、破壊までに至っていない。
【0039】
この実施例によれば、次のような効果が得られる。
(i)外壁パネルの上・下部にステンレス製の[]形のような板状補強材(補強金物)を、弾性エポキシ系接着剤を使用して取り付け、その上から箱形補強材を取り付けて補強した外壁パネルは、正・負方向とも新設時の基準強度を満足できた。
(ii)亀裂のある外壁パネルを鋼板補強すれば新設時の強度に復元できる。
(iii)一組で20kg程度のパネル補強金物(箱形補強材と上下の板状補強材)と、弾性エポキシ接着剤を使用して、亀裂のある外壁パネルを補強することができた。
(iv)重量が外壁パネルよりも軽く、作業性が良い。
(v)外壁パネルを取り替える半分の費用で補強できた。
【0040】
なお、以上の実施例では、本発明を火力発電所の建屋の外壁部分に適用した例を示したが、基本的には重量のある外壁パネルを間隔をおいて配設した他の建屋の外壁部分に対しても同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明が適用される既存の建屋の外壁部分を示すもので、(a)は部分立面図、(b)はその断面図である。
【図2】本発明が適用される既存の外壁パネルの外観図である。
【図3】本発明の実施例に係る補強対象外壁パネルとパネル補強金物を示す外観図である。
【図4】本発明の実施例に係る補強対象外壁パネルの一部省略断面図である。
【図5】本発明の実施例に係る補強対象外壁パネルと板状補強材の一部省略断面図である。
【図6】本発明の実施例に係る補強対象外壁パネルと板状補強材及び箱形補強材の一部省略断面図である。
【図7】本発明の実施例に係る補修方法(既設シール除去工程)を示す斜視図である。
【図8】本発明の実施例に係る補修方法(穴明け工程)を示す斜視図である。
【図9】本発明の実施例に係る補修方法(接着剤注入工程)を示す斜視図である。
【図10】本発明の実施例に係る補修方法(アンカー挿入工程)を示す斜視図である。
【図11】本発明の実施例に係る補修方法(スペーサ挿入工程)を示す斜視図である。
【図12】本発明の実施例に係る補修方法(ネジ止め工程)を示す斜視図である。
【図13】本発明の実施例に係る補修方法(目地シール打ち工程)を示す斜視図である。
【図14】本発明の実施例に係る補修方法の補強強度試験結果をグラフで示す説明図である。
【図15】従来の外壁パネルの補修方法(取り替え)を説明する立面図である。
【符号の説明】
【0042】
1 ゴンドラ
2 亀裂
3 穴
4 支柱
5 ナット
5a 植え込みボルト
6 ワイヤ
10 目地材
11、12 上下の側面部
13、14 左右の側面部
15 外面
16 内面
20 板状補強材
21、22 屈曲部
30 箱形補強材
31 表面
32、33 上下の側面板
34、35 左右の側面板
36 スペーサ
P 外壁パネル
K パネル補強金物
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の外壁材として相互に間隔をおいて配設された矩形状の外壁パネルの補修方法及びそれに用いるパネル補強金物に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば火力発電施設の建屋においては、矩形状の外壁パネルを相互に間隔をおいて升目状に並べて配設し、各外壁パネルどうしの間に目地材を施して外壁を施工することが従来から行われている。
【0003】
この種の外壁パネルは、セメント系繊維補強パネル(GRCパネル等)で形成されていることが多い。このセメント系繊維補強パネルは、型枠にスラリー状のモルタルと耐アルカリ性ガラス繊維(ロービング:長さ3cm前後)を同時に吹き付けてパネルを製作する。このようにして制作される外壁パネルには、発電施設の騒音が外部に漏洩するのを低減するための吸音材も装備される。
【0004】
ところで、外壁パネルには風圧力や地震力、重力等がかかる。風圧力は外壁に対し、正圧(押す方向)及び負圧(引く方向)に交互にかかる。地震力は外壁に対し、内側に働く方向へ、外側へ働く方向へ交互に働く。このため、外壁パネルに亀裂が発生すると、引っ張り力を負担する補強繊維が切れ、風圧力、地震力、重力により外壁パネルが崩落する恐れがある。
【0005】
外壁パネルの崩落を未然に防止するためには、その亀裂の入った外壁パネルを取り替えるか補修する必要がある。火力発電施設の建屋においては発電施設との関係で、外壁の内側にも作業員を配置して外壁パネルを取り外すことは不可能な構造となっている場合が多い。その場合、作業員は建屋の外からのみ外壁パネルを取り替える作業を行うことになる。
【0006】
図15は従来から採用さている外壁パネルの取り替え工法例を示している。この例では、ゴンドラ1を利用し、取り替え対象の亀裂2入りの外壁パネルPに手や頭を入れることができる大きさの穴3、3を開け、外壁パネルPを支柱4等に取り付けている埋め込みボルトのナットを取り外すことで、外壁パネルPを吊りワイヤ6で吊り降ろし、新たな外壁パネルと取り替える。なお、特許文献1には、プレキャストコンクリート版の背面側にプレキャストコンクリート版補強用の金属板を設ける技術が記載されている。
【特許文献1】特開2003−035008号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、こうした従来の方法では、次のような課題がある。
第1に、外壁パネルPの重量に起因する問題である。この種の外壁パネルPは、軽量な吸音材が装備されているものの、縦1m、横2m、厚さ10cm、重量160kgにも及ぶ。そのため、これを取り替える作業は大掛かりで手間を要する上に作業性が悪いという問題があった。
【0008】
第2に、取り替え費用の問題である。外壁パネルPの取り替え作業は大掛かりで手間を要するため、その分、費用もかかる。特に、取り替える場合には新たな外壁パネルPを制作しなければならないため、パネル制作費用まで加わり、コスト高になる問題があった。
【0009】
よって、本発明の課題は、外壁パネルに対し、専用の補強材を用いて補強しつつ補修することで、作業性を格段に向上させ、しかもその補修費用も取り替え費用に比べて格段に低コストで済ますことができる外壁パネルの補修方法及びパネル補強金物の技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明では以下の手段を採用した。
本発明は、セメント系繊維補強パネルにより形成された矩形状の外壁パネルを相互に間隔をおいて配設し、各外壁パネルどうしの間に目地材を施した外壁パネルの補修方法であって、補修対象外壁パネルの周囲に存在する前記目地材を除去する第1工程と、補修対象外壁パネルの上下左右の四つの側面部のうち上下の側面部に対し接着剤を介して板状補強材をそれぞれ取り付ける第2工程と、補修対象外壁パネルに対し、その外面と、残り二つの左右の側面部と、各板状補強材の表面とをそれぞれ覆う内面を有する箱形補強材を取り付ける第3工程と、箱形補強材の周囲に目地材を施す第4工程と、を行うことを特徴としている。
【0011】
本発明によれば、補修対象外壁パネルに対し、板状補強材と箱形補強材とを備える専用のパネル補強金物を用いて補修することで、補修対象外壁パネルを十分に補強しつつ補修することができる。また、補修対象外壁パネルに箱形補強材を被せるようにして取り付けるので、重量物である外壁パネルごと取り替える場合に比べてその作業性を格段に向上させることができ、しかも金属板等を利用した制作容易な補強金物を用いた場合、その補修費用も取り替え費用に比べて格段に低コストで済ますことが可能になる。
【0012】
本発明において、第3工程では、補強対象外壁パネルに対して接着剤により箱形補強材を取り付ける工程と、補強対象外壁パネルに対してネジ止めにより箱形補強材を固定する工程とを含むことが望ましい。このように、補強対象外壁パネルに対して箱形補強材を接着剤とネジ止めの両方で取り付けることにより、簡易な作業で確実かつ高精度に取り付けることができる。
【0013】
本発明において、外壁パネルは上下の側面部間の寸法よりも左右の側面部間の寸法が大きい横長の長方形状であり、各板状補強材は外壁パネルの上下の側面部に沿ってそれぞれ延びる長方形状に形成され、その長手方向に添う両側部分が互いに内面側へ向かって折れ曲がった屈曲部に形成されていることが望ましい。このように、板状補強材の長手方向に添う両側部分を屈曲部に形成することで、各板状補強材の長手方向の剛性を高めた形状とすることができる。従って、この剛性を高めた板状補強材を外壁パネルの上下の側面部に対して接着材でそれぞれ固定することにより外壁パネルの剛性を高めることができる。
【0014】
一方、本発明は建物の外壁材として相互に間隔をおいて配設された矩形状の外壁パネルの補修に用いるパネル補強金物であって、前記補修対象外壁パネルの上下左右の四つの側面部のうち上下の側面部に対し接着剤を介して取り付けられる板状補強材と、前記補修対象外壁パネルに対し、その外面と、残り二つの左右の側面部と、前記板状補強材の表面とをそれぞれ覆う内面を有する箱形補強材とを備えることを特徴としている。
【0015】
本発明のパネル補強金物によれば、二つの板状補強材と一つの箱形補強材とを備える構成としているので、隣り合う外壁パネル間の間隔(隙間)が小さくてもその隙間を利用してまず板状補強材を差し込むようにして取り付けることができる。そして、板状補強材の取り付け後に、その板状補強材を覆うようにして箱形補強材を取り付けることが可能な構成とすることで、外壁パネルの補強機能向上作用と、パネル補強金物の取り付け作業の向上作用とを効果的に発揮させることができる。
【0016】
ここで、板状補強材は外壁パネルの上下の側面部に沿って延びる長方形状に形成され、その長手方向の両側部分が互いに内面側へ向かって折れ曲がった屈曲部に形成されていることが望ましい。このように、板状補強材の長手方向の両側部分が互いに内面側へ向かって折れ曲がった屈曲部に形成されていることで、板状補強材に必要な剛性を付与できる他、外壁パネルの側面部に添う形状とすることが可能になる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、外壁パネルに対し、専用の補強材を用いて補強しつつ補修することで、作業性を格段に向上させ、しかもその補修費用も取り替え費用に比べて格段に低コストで済ますことができる外壁パネルの補修方法及びパネル補強金物の技術を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施例について、図面を参照して説明する。なお、以下の実施例では、本発明に係る補修技術を、火力発電所の建屋の外壁に適用した例について説明する。
【実施例】
【0019】
図1は、火力発電所の建屋の外壁部分を示すもので、(a)は建屋の部分立面図、(b)はその断面図である。図2は外壁パネルの外観図である。図3は補強対象外壁パネルとパネル補強金物を示す外観図である。なお、これらの図において図15と共通する部分には同一符号を付してその説明を簡略化する。
【0020】
建屋の外壁部分は、胴縁等を含む支柱4の外側に、植え込みボルト5aとナット5により固定された多数の外壁パネルPにより構成されている。各外壁パネルPは、背景技術の欄で説明したものと同様に、縦1m、横2m、厚さ10cm、重量160kg程度の横長の長方形状であって、相互に間隔をおいて平面長方形の升目状に並べて配設されている。各外壁パネルPどうしの間には目地材10が施されている。
【0021】
この外壁パネルPは、セメント系繊維補強パネル(GRCパネル)で形成されている。セメント系繊維補強パネルは、型枠にスラリー状のモルタルと耐アルカリ性ガラス繊維(ロービング:長さ3cm前後)を同時に吹き付けてパネルを製作したものである。この外壁パネルPは、図4に示すように、支柱4に対向する面である内面側に凹所7が設けられ、その凹所7内に吸音材8が装填されている。凹所7は、図3において破線で示すように、横方向に並べて2箇所形成されている。
【0022】
吸音材8は発電施設の騒音が外部に漏洩するのを低減すると共に外壁パネルPの重量を軽減する機能も発揮する。実施例の外壁パネルPの内面側には、吸音材8が装填された凹所7の蓋材の機能を有する金属プレート9が取り付けられている。この金属プレート9は、外壁パネル自体の吸音効果に配慮してステンレス製パンチングメタルにより形成されている。
【0023】
実施例においては、図1に示すように亀裂2の入った外壁パネルPを取り替える代わりに、図3及び図5に示すようなパネル補強金物Kを用いて補修する考え方を採用している。このパネル補強金物Kは、補修対象外壁パネルPの上下左右の四つの側面部11、12、13、14のうち、上下の側面部11、12に対し接着剤を介してそれぞれ取り付けられる二つの板状補強材20、20と、補修対象外壁パネルPに対し、その外面15と、残り二つの左右の側面部13,14と、板状補強材20の表面とをそれぞれ覆う内面30a(図6参照)を有する箱形補強材30とを備えている。
【0024】
板状補強材20、20は、外壁パネルPの上下の側面部11,12に沿って延びる長方形状に形成され、その長手方向の両側部分が互いに内面側へ向かって折れ曲がった屈曲部21、22にそれぞれ形成されている。このように、板状補強材20の長手方向の両側部分が互いに内面側へ向かって折れ曲がった屈曲部21、22に形成されていることで、板状補強材20に必要な剛性を付与できる他、外壁パネルPの側面部11、12に添う形状とすることが可能になる。
【0025】
なお、外壁パネルPの外面15側の縁取りが内面16側の縁取りよりも大きく形成されているため、それに対応させて、屈曲部21よりも屈曲部22の方が大きく形成されている。
【0026】
箱形補強材30は、鋼板の曲げ加工と溶接により片面のみが開放した扁平な箱形に形成されている。具体的には、平面長方形状の一つの表面板31と、上下の側面板32、33と、左右の側面板34、35とにより形成されている。但し、表面板31と上下の側面板32、33とが連続する部分は板状補強材20の屈曲部22に対応させてテーパ面32a、33aに形成されている。
【0027】
この実施例のパネル補強金物Kによれば、二つの板状補強材20と一つの箱形補強材30とを備える構成としているので、隣り合う外壁パネルP間の間隔(隙間)Sが小さくてもその隙間Sを利用してまず板状補強材20を差し込むようにして取り付けることができる。そして、板状補強材20の取り付け後に、その板状補強材20を覆うようにして箱形補強材30を取り付けることが可能な構成とすることで、外壁パネルPの補強機能向上作用と、パネル補強金物Kの取り付け作業の向上作用とを効果的に発揮させることができる。
【0028】
次に、このパネル補強金物Kを用いたパネル補修方法について説明する。
この実施例のパネル補修方法は、図1及び図7に示すように、まず、補修対象外壁パネルPの周囲に存在する既設シール(目地材)10を除去する工程(第1工程)を行う。
【0029】
次に、補修対象外壁パネルPの上下左右の四つの側面部11,12,13,14のうち上下の側面部11、12に対し接着剤(図示せず)を介して板状補強材20、20をそれぞれ取り付ける工程(第2工程)を行う。板状補強材20、20は、その内面に接着剤を塗布してから、上下の外壁パネル間の隙間S(図4参照)に差し込むことにより取り付けることが好ましい。
【0030】
板状補強材20の取り付けに際しては、接着剤が必要な程度に硬化するまで、その板状補強材20を上下の側面部11,12に対して充分に押し付けておくことが好ましい。例えば図11に示すように、上下で隣り合う板状補強材20、20間にスペーサ36を差し込んでおくことができる。
【0031】
なお、必要に応じて、この第2工程の前に、あるいは第2工程の後に、補修対象外壁パネルPに、箱形補強材30を固定するための雌ねじ付きアンカー50を複数(外壁パネルの四隅近くの4箇所と中間の2箇所程度)取り付けておく。例えば、図8に示すように、補修対象外壁パネルPに電動ドリル51により穴52を開け、図9に示すように、穴52内に注入具53により接着剤54を注入した後、アンカー50を挿入して取り付けておく。
【0032】
次に、補修対象外壁パネルPに対し、その外面15と、残り二つの左右の側面部13、14と、各板状補強材20の表面とをそれぞれ覆う内面30aを有する箱形補強材30を取り付ける工程(第3工程)を行う。
【0033】
この第3工程では、補強対象外壁パネルPに対して接着剤(図示せず)により箱形補強材30を取り付ける工程と、補強対象外壁パネルPに対してネジ止めにより箱形補強材30を固定する工程とを含むことが望ましい。このように、補強対象外壁パネルPに対して箱形補強材30を接着剤とネジ止めの両方で取り付けることにより、簡易な作業で確実かつ高精度に取り付けることができる。
【0034】
ここで、接着剤を用いる場合は、相互の接着硬化を高めるために、箱形補強材30の内面30a全体と補強対象外壁パネルPの外面15、両側の側面部13、14及び板状補強材20の表面の双方に対して塗布することが好ましい。ネジ止めにより固定する場合は、図12に示すように予め設けておいたアンカー50に頭部付きボルト55を電動ボックスレンチ56によりねじ込むことで固定することが好ましい。その場合、アンカー50に対応する箱形補強材30の部分に予めボルト穴を設けておく。
【0035】
上記のようにしてパネル補強金物Kの取り付け作業を終えたら、図13に示すように、箱形補強材30の周囲に目地材10を施す工程(第4工程)を行う。なお、この第4工程においては、目地材10の他に、補強済み外壁パネルPのタッチアップ(頭部付き固定ボルトの塗装を含む)等の仕上げ作業を行い、完了とする。
【0036】
実施例によれば、補修対象外壁パネルPに対し、板状補強材20と箱形補強材30とを備える専用のパネル補強金物Kを用いて補修することで、補修対象外壁パネルPを十分に補強しつつ補修することができる。また、補修対象外壁パネルPに箱形補強材30を被せるようにして取り付けるので、重量物である外壁パネルPごと取り替える場合に比べてその作業性を格段に向上させることができ、しかも金属板等を利用した制作容易な補強金物を用いることで、その補修費用も取り替え費用に比べて格段に低コストで済ますことができる。
【0037】
なお、図14に亀裂あり外壁パネルの現状と補強強度試験結果を示す。ここでは、実験結果(正圧方向)、実験結果(負圧方向)、設計時の風圧力(正・負圧方向)、設計時のGRC基準強度、現状パネルの統計処理強度(正圧方向最小値)、現状パネルの統計処理強度(負圧方向最小値)を、パネルA〜パネルD及び鋼板補強パネル(1)〜鋼板補強パネル(6)についてそれぞれ示している。この実験結果に基づいて以下の点を確認した。
【0038】
(a)亀裂のある外壁パネルの強度は、正・負方向とも新設時の基準強度を満足しない。(b)パネルAは現状のパネル、パネルB、C、Dは表面を鋼板・ポリエステルライニング・エポキシライニングしたパネル。パネルAは正・負方向とも破壊強度、パネルB、C、Dについて正方向は破壊強度、負方向は機械の載荷最大荷重。
(c)鋼板補強パネル(1)(2)(3)(4)は正方向で設計時の基準強度を確認、破壊までに至っていない。
(d)鋼板補強パネル(3')は(3)のパネルに掛けた荷重を戻し、再度、正方向に荷
重を加えたが破壊までに至っていない。
(e)鋼板補強パネル(5)(6)は正方向の強度を確認、破壊までに至っていない。
【0039】
この実施例によれば、次のような効果が得られる。
(i)外壁パネルの上・下部にステンレス製の[]形のような板状補強材(補強金物)を、弾性エポキシ系接着剤を使用して取り付け、その上から箱形補強材を取り付けて補強した外壁パネルは、正・負方向とも新設時の基準強度を満足できた。
(ii)亀裂のある外壁パネルを鋼板補強すれば新設時の強度に復元できる。
(iii)一組で20kg程度のパネル補強金物(箱形補強材と上下の板状補強材)と、弾性エポキシ接着剤を使用して、亀裂のある外壁パネルを補強することができた。
(iv)重量が外壁パネルよりも軽く、作業性が良い。
(v)外壁パネルを取り替える半分の費用で補強できた。
【0040】
なお、以上の実施例では、本発明を火力発電所の建屋の外壁部分に適用した例を示したが、基本的には重量のある外壁パネルを間隔をおいて配設した他の建屋の外壁部分に対しても同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明が適用される既存の建屋の外壁部分を示すもので、(a)は部分立面図、(b)はその断面図である。
【図2】本発明が適用される既存の外壁パネルの外観図である。
【図3】本発明の実施例に係る補強対象外壁パネルとパネル補強金物を示す外観図である。
【図4】本発明の実施例に係る補強対象外壁パネルの一部省略断面図である。
【図5】本発明の実施例に係る補強対象外壁パネルと板状補強材の一部省略断面図である。
【図6】本発明の実施例に係る補強対象外壁パネルと板状補強材及び箱形補強材の一部省略断面図である。
【図7】本発明の実施例に係る補修方法(既設シール除去工程)を示す斜視図である。
【図8】本発明の実施例に係る補修方法(穴明け工程)を示す斜視図である。
【図9】本発明の実施例に係る補修方法(接着剤注入工程)を示す斜視図である。
【図10】本発明の実施例に係る補修方法(アンカー挿入工程)を示す斜視図である。
【図11】本発明の実施例に係る補修方法(スペーサ挿入工程)を示す斜視図である。
【図12】本発明の実施例に係る補修方法(ネジ止め工程)を示す斜視図である。
【図13】本発明の実施例に係る補修方法(目地シール打ち工程)を示す斜視図である。
【図14】本発明の実施例に係る補修方法の補強強度試験結果をグラフで示す説明図である。
【図15】従来の外壁パネルの補修方法(取り替え)を説明する立面図である。
【符号の説明】
【0042】
1 ゴンドラ
2 亀裂
3 穴
4 支柱
5 ナット
5a 植え込みボルト
6 ワイヤ
10 目地材
11、12 上下の側面部
13、14 左右の側面部
15 外面
16 内面
20 板状補強材
21、22 屈曲部
30 箱形補強材
31 表面
32、33 上下の側面板
34、35 左右の側面板
36 スペーサ
P 外壁パネル
K パネル補強金物
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント系繊維補強パネルにより形成された矩形状の外壁パネルを相互に間隔をおいて配設し、各外壁パネルどうしの間に目地材を施した外壁パネルの補修方法であって、
補修対象外壁パネルの周囲に存在する前記目地材を除去する第1工程と、
前記補修対象外壁パネルの上下左右の四つの側面部のうち上下の側面部に対し接着剤を介して板状補強材を取り付ける第2工程と、
前記補修対象外壁パネルに対し、その外面と、残り二つの左右の側面部と、前記補強金属板の表面とをそれぞれ覆う内面を有する箱形補強材を取り付ける第3工程と、
前記箱形補強材の周囲に目地材を施す第4工程と、を行うことを特徴とする外壁パネルの補修方法。
【請求項2】
前記第3工程では、前記補強対象外壁パネルに対して接着剤により前記箱形補強材を取り付ける工程と、前記補強対象外壁パネルに対してネジ止めにより前記箱形補強材を固定する工程と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の外壁パネルの補修方法。
【請求項3】
前記外壁パネルは上下の側面部間の寸法よりも左右の側面部間の寸法が大きい横長の長方形状であり、前記板状補強材は前記外壁パネルの上下の側面部に沿って延びる長方形状に形成され、その長手方向の両側部分が互いに内面側へ向かって折れ曲がった屈曲部に形成されている、請求項1に記載の外壁パネルの補修方法。
【請求項4】
建物の外壁材として相互に間隔をおいて配設された矩形状の外壁パネルの補修に用いるパネル補強金物であって、
前記補修対象外壁パネルの上下左右の四つの側面部のうち上下の側面部に対し接着剤を介して取り付けられる板状補強材と、
前記補修対象外壁パネルに対し、その外面と、残り二つの左右の側面部と、前記板状補強材の表面とをそれぞれ覆う内面を有する箱形補強材とを備えることを特徴とするパネル補強金物。
【請求項5】
前記板状補強材は前記外壁パネルの上下の側面部に沿って延びる長方形状に形成され、その長手方向の両側部分が互いに内面側へ向かって折れ曲がった屈曲部に形成されている、請求項4に記載のパネル補強金物。
【請求項1】
セメント系繊維補強パネルにより形成された矩形状の外壁パネルを相互に間隔をおいて配設し、各外壁パネルどうしの間に目地材を施した外壁パネルの補修方法であって、
補修対象外壁パネルの周囲に存在する前記目地材を除去する第1工程と、
前記補修対象外壁パネルの上下左右の四つの側面部のうち上下の側面部に対し接着剤を介して板状補強材を取り付ける第2工程と、
前記補修対象外壁パネルに対し、その外面と、残り二つの左右の側面部と、前記補強金属板の表面とをそれぞれ覆う内面を有する箱形補強材を取り付ける第3工程と、
前記箱形補強材の周囲に目地材を施す第4工程と、を行うことを特徴とする外壁パネルの補修方法。
【請求項2】
前記第3工程では、前記補強対象外壁パネルに対して接着剤により前記箱形補強材を取り付ける工程と、前記補強対象外壁パネルに対してネジ止めにより前記箱形補強材を固定する工程と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の外壁パネルの補修方法。
【請求項3】
前記外壁パネルは上下の側面部間の寸法よりも左右の側面部間の寸法が大きい横長の長方形状であり、前記板状補強材は前記外壁パネルの上下の側面部に沿って延びる長方形状に形成され、その長手方向の両側部分が互いに内面側へ向かって折れ曲がった屈曲部に形成されている、請求項1に記載の外壁パネルの補修方法。
【請求項4】
建物の外壁材として相互に間隔をおいて配設された矩形状の外壁パネルの補修に用いるパネル補強金物であって、
前記補修対象外壁パネルの上下左右の四つの側面部のうち上下の側面部に対し接着剤を介して取り付けられる板状補強材と、
前記補修対象外壁パネルに対し、その外面と、残り二つの左右の側面部と、前記板状補強材の表面とをそれぞれ覆う内面を有する箱形補強材とを備えることを特徴とするパネル補強金物。
【請求項5】
前記板状補強材は前記外壁パネルの上下の側面部に沿って延びる長方形状に形成され、その長手方向の両側部分が互いに内面側へ向かって折れ曲がった屈曲部に形成されている、請求項4に記載のパネル補強金物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2008−127931(P2008−127931A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−316792(P2006−316792)
【出願日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】
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