説明

外壁構造

【課題】簡単に外壁にデザインを形成することできる外壁構造を提供することを目的としている。
【解決手段】建物の外壁面に複数の外装材が貼り付けられてなる外壁構造であって、複数の外装材1…のうちのいずれか一つ或いは複数の外装材1B…が、他の外装材1A…に対して傾斜するように意図的に角度を付けて設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外装材を用いた外壁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の外壁構造として、外壁面にタイル等の外装材を貼り付けるものがある。この外壁構造をデザインする場合、従来、外装材の表面に塗装を施して当該塗装によってデザインを形成する方法と、素材(色彩や材質)が異なる外装材をデザインに基づいて配設してデザインを形成する方法とがある。
【0003】
また、従来、建物の外壁面にデザインが印刷されたスクリーンを配置して外壁面をデザインする技術もある(例えば、特許文献1参照。)。さらに、従来、建物の外壁に液晶ディスプレイを装着させて外壁面にデザインを形成する技術もある(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2003−253978号公報
【特許文献2】特開2000−132123号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、外装材に塗装を施して外壁をデザインする上記した従来の技術では、建物外壁面に外装材を貼り付けた後に塗装を施す必要があるため、塗装範囲が大面積である場合に色むらが無いように塗るのは困難であるという問題がある。
また、素材の異なる外装材を貼り付けて外壁をデザインする上記した従来の技術では、異なる素材の外装材ごとに施工する必要があり、外装材の貼り付け作業が煩雑になるという問題がある。
さらに、上記したスクリーンや液晶ディスプレイを用いる従来の技術では、スクリーンや液晶ディスプレイ及びその周辺機器の設置に手間がかかるという問題がある。
【0005】
本発明は、上記した従来の問題が考慮されたものであり、簡単に外壁にデザインを形成することができる外壁構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、建物の外壁面に複数の外装材が貼り付けられてなる外壁構造であって、複数の外装材のうちのいずれか一つ或いは複数の外装材が、他の外装材に対して傾斜するように意図的に角度を付けて設けられていることを特徴としている。
【0007】
このような特徴により、傾斜した外装材と他の外装材とによって反射された光の反射角度の違いにより干渉作用が生じて特定の色の波長が強調される。この光の干渉作用により、傾斜した外装材の色調が他の外装材の色調と比べて大きく変化し、傾斜した外装材の色調と他の外装材の色調とが異なった色に見える。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の外壁構造において、前記角度をθとすると、tanθが1/10〜1/3の範囲内になっていることを特徴としている。
【0009】
このような特徴により、傾斜した外装材の色調が他の外装材の色調と比べて明確に変化し、外壁にデザインがはっきりと形成される。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の外壁構造において、前記外装材の表面に、凹凸を連続的に設けた幾何学的な立体模様が形成されていることを特徴としている。
【0011】
このような特徴により、幾何学的な立体模様の各面によって反射された光の反射角度の違いにより干渉作用が生じて特定の色の波長が強調される。この光の干渉作用により、外壁を見る角度によって異なった色に見える。これにより、見る場所(視点)によって外装材の表面の色調が変化する。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る外壁構造によれば、傾斜した外装材によって外壁にデザインが施され、魅力的なファサードデザインを創造することできる。また、本発明に係る外壁構造では、同一素材の外装材を貼り付けるため、手間がかからず簡単に施工できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る外壁構造の実施の形態について、図面に基いて説明する。
【0014】
図1は外壁構造を表す斜視図である。
図1に示すように、外壁構造は、外壁面に複数の外装材1…を貼り付けた構成からなる。具体的には、複数の板状の外装材1…が、外壁面に一定の秩序をもって貼り付けられており、複数の外装材1…で外壁面を被覆した構成になっている。なお、外装材1は、反射率の高い外装材であり、例えば、矩形(図1では正四角形)の外装パネルや外壁タイル等からなり、アルミニウム製や陶磁器製等の部材である。
【0015】
図2は外壁構造を表す断面図である。
図1,図2に示すように、複数の外装材1…は、それぞれ同一素材からなるものであるが、その貼り付け角度によって、第1外装材1A…と第2外装材1B…とに分けられる。具体的には、第1外装材1A…は、外装材貼り付け面Wに対して平行に配設されたものであり、一方、第2外装材1B…は、外装材貼り付け面Wに対して所定の傾斜角度θだけ鉛直方向に傾けて配設されたものである。つまり、第2外装材1B…は、第1外装材1A…に対して傾斜するように意図的に角度(傾斜角度θ)を付けて設けられており、第1外装材1A…の表面と第2外装材1B…の表面とは、異なった方向に向けられている。
【0016】
また、上記した第1,第2外装材1A…,1B…によって外壁にデザインが形成されている。例えば、模様や図形、文字等を形成するように複数の第2外装材1B…を並べることで、第1外装材1A…からなる壁面に第2外装材1B…からなる模様等が浮き出される。なお、複数の第1外装材1A…を模様等を形成するように配設させ、第2外装材1B…からなる壁面に第1外装材1A…からなる模様等が浮き彫りされる構成でもよい。
【0017】
図3は外装材1の貼り付け状態を表す拡大断面図である。
図3に示すように、第2外装材1B…の傾斜角度θは、第1外装材1A…と比較して色調が明確に変化する程度の角度であり、具体的には、tanθ(a/b)が1/10〜1/3の範囲内になるような角度である。また、第2外装材1B…の傾斜角度θは、tanθ(a/b)が1/5になるような角度であることが好ましい。
【0018】
次に、上記した構成からなる外壁構造の作用について説明する。
第1外装材1A…と第2外装材1B…とは、各々の表面が異なった方向に向けられているため、それぞれ異なった方向に光を反射させる。そして、異なった方向にそれぞれ反射された光同士は干渉し、特定の色の波長が強調される結果となる。このような光の干渉作用により、第2外装材1B…の色調が第1外装材1A…の色調と比べて大きく変化し、第1外装材1A…と第2外装材1B…とは異なった色に見える。
【0019】
上記した構成からなる外壁構造によれば、複数の外装材1…のうちのいずれか複数の外装材(第2外装材1B…)が、第1外装材1A…に対して傾斜するように意図的に角度θを付けて設けられた構成からなり、光の干渉作用により、第1外装材1A…と第2外装材1B…とは異なった色に見えるため、これらの第1外装材1A…と第2外装材1B…とによってデザインが形成される。これによって、傾斜した第2外装材1B…によって外壁にデザインが施され、魅力的なファサードデザインを創造することできる。また、上記した外壁構造では、同一素材の外装材1A…,1B…を貼り付けるため、手間がかからず簡単に施工できる。
【0020】
また、上記した構成からなる外壁構造によれば、第2外装材1B…の傾斜角度をθとすると、tanθが1/10〜1/3の範囲内になっているため、傾斜した第2外装材1B…の色調が第1外装材1A…の色調と比べて明確に変化し、外壁にデザインがはっきりと形成される。これによって、はっきりしたファサードデザインを創造することできる。
【0021】
以上、本発明に係る外壁構造の実施の形態について説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、上記した実施の形態では、表面がフラットな外装材1が用いられているが、本発明は、図4に示すように、外装材1の表面に、凹凸を連続的に設けた幾何学的な立体模様2が形成されてもよい。これによって、光の干渉作用によって、見る場所によって色調が変化する幾何学的なデザインの外壁となり、魅力的なファサードデザインを創造することできる。
【0022】
また、上記した立体模様2は、その凹凸ピッチαが外装材1の長さ寸法Lの1/10〜1/100のピッチであって、その凹凸深さ寸法Hが凹凸ピッチαの1/5であることが好ましい。これによって、色調がはっきりと変化するファサードデザインを創造することできる。
【0023】
また、上記した立体模様2の各面のうちの少なくとも一面2a…が、他の面2b…と異なった色調が施されていることが好ましい。これによって、外壁を見る角度により見える面(色)の比率が異なり、見る場所(視点)によって外装材1の表面の色調が変化されるため、さらに魅力的なファサードデザインを創造することできる。
【0024】
なお、図4では、立体模様2は、断面三角形の山形部3…が連続的に設けられた構成になっているが、図5(a)に示すように、曲線的な波形の凹凸からなる立体模様2’ものであってもよく、或いは、図5(b)に示すように、断面矩形の凸部3a”と凹部3b”とを交互に連設した構成の立体模様2”であってもよい。
【0025】
また、上記した立体模様2は、外壁面に貼り付けられる全ての外装材1…の表面にそれぞれ形成されていてもよく、或いは、貼り付けられる複数の外装材1…のうちの一部の外装材1の表面に上記した立体模様2が形成されていてもよい。また、外装材1の表面全体に立体模様2が形成されていてもよく、或いは、外装材1の表面のうちの一部に立体模様2が形成されていてもよい。
【0026】
また、上記した実施の形態では、第2外装材1B…が鉛直方向に傾けられた状態になっているが、本発明は、図6に示すように、第2外装材1B’…(傾斜した外装材)が水平方向に傾けられた状態で配設されていてもよい。
【0027】
また、上記した実施の形態では、複数の外装材(第2外装材1B…)が傾斜して設けられているが、本発明は、一つの外装材だけが傾斜して設けられていてもよく、傾斜した外装材の数量に限定されるものではない。
【0028】
また、上記した実施の形態では、外装材1として矩形板状のものを使用しているが、本発明に係る外装材は、上記した外装材1以外の構成のものでもよく、例えば、外装材の形状は長方形や三角形等であってもよい。
【0029】
また、上記した実施の形態では、第2外装材1B…の傾斜角度をθとすると、tanθが1/10〜1/3の範囲内になっているが、本発明は、傾斜する外装材の角度が、上記した実施の形態に示された角度以外になっていてもよく、例えば、外装材の角度をθとしたとき、tanθが1/10より小さくなってもよく、或いはtanθが1/3よりも大きくなってもよい。
【0030】
その他、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る実施の形態を説明するための外壁構造の斜視図である。
【図2】本発明に係る実施の形態を説明するための外壁構造の断面図である。
【図3】本発明に係る実施の形態を説明するための外装材の断面図である。
【図4】本発明に係る他の実施の形態を説明するための外装材の断面図である。
【図5】本発明に係る他の実施の形態を説明するための外装材の断面図である。
【図6】本発明に係る実施の形態を説明するための外壁構造の斜視図である。
【符号の説明】
【0032】
1 外装材
1A 第1外装材(外装材)
1B,1B’ 第2外装材(外装材)
2,2’,2” 立体模様

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の外壁面に複数の外装材が貼り付けられてなる外壁構造であって、
複数の外装材のうちのいずれか一つ或いは複数の外装材が、他の外装材に対して傾斜するように意図的に角度を付けて設けられていることを特徴とする外壁構造。
【請求項2】
請求項1記載の外壁構造において、
前記角度をθとすると、tanθが1/10〜1/3の範囲内になっていることを特徴とする外壁構造。
【請求項3】
請求項1または2記載の外壁構造において、
外装材の表面に、凹凸を連続的に設けた幾何学的な立体模様が形成されていることを特徴とする外壁構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−309002(P2007−309002A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−140265(P2006−140265)
【出願日】平成18年5月19日(2006.5.19)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】