説明

外曲げホッチキス

【課題】ホッチキス止めをする場合、上部の針供給押さえユニットと下部のクリンチャーユニットに、紙などの被クリンチ材を挟み込んで、それら上下のユニットの位置決めをする必要がある。しかし、クリンチ位置と上下ユニットの支点の関係から針クリンチ位置の奥行き距離には制限がある。また、挟み込み間に凸部等の障害がある場合などは、針クリンチが困難になる。そして、毎回上部ユニットと下部クリンチャーユニットに挟み込んで針クリンチするのでは、手間ががかりクリンチ点数が多い場合など時間的ロスも大きくなっている。
【解決手段】この発明は、上部ユニットにクリンチャー部分を持って行くことにより、従来の下クリンチャーユニット自体を削除した。これにより距離によるクリンチ位置規制が無くなった。また、挟み込みが不要なため、挟み込み途中の凸部など障害物の影響を受けることなく使用できる。そして、挟み込みのため持ち上げて位置決めをする必要の無い事から、作業効率の向上が図れるホッチキスである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙や布シートなどの合わせ止め、綴じ止めなどをするホッチキスに関する。特に下クリンチユニット部の廃止により、針クリンチの奥行き距離に制限が無く、凸部挟み込み障害もなく、自由に針クリンチできるクリンチ位置フリーのホッチキスであり、また押し込みユニットを押すだけで針クリンチできるホッチキスに関する物である。
【背景技術】
【0002】
従来は、ホッチキスで紙や布シートなどの合わせ止め、綴じ止めなどをする場合には、それら紙などの被クリンチ材を手に持って、ホッチキスの上下ユニット間に、それらを挟み込んで針クリンチをする。しかしながら従来品の、針クリンチ止めできる位置には、上部のクリンチ針供給及び押し込みユニット部と、下クリンチ部ユニットの位置決め支点の関係から、針クリンチできる奥行き距離には制限がある。このためフリーな位置に針クリンチする事はできない。また、挟み込み途中に凸部がある場合などは挟み込みが不可であり針クリンチする事はできないなど使用に制限があった。
【0003】
従来、ホッチキスで紙や布シートなどの合わせ止めや綴じ止めなどをする場合で、針クリンチできる位置に奥行きがある場合など自由な位置に針クリンチする場合、上下ユニットを分離し、磁石で分離した上下ユニットの位置決めをするホッチキスがある。(例えば、特許文献1参照)及び(例えば、特許文献2参照)また、上下ユニットの支点位置の可動調節タイプのホッチギスが有る。(例えば、特許文献3参照)
【特許文献1】特開2003−136425
【特許文献2】特開2004−223698
【特許文献3】特開平08−187679
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
解決しようとする問題点は、ホッチキスで合わせ止めや綴じ止めなどをする場合には、上部のクリンチ針供給押さえユニットと下部のクリンチユニットに、紙などの被クリンチ材を挟み込んで、それら上下ユニットの位置決めをする必要がある。しかし、クリンチ位置と上下ユニットの支点の関係から針クリンチ位置の奥行き距離には制限がある。また、挟み込み間に凸部等の障害がある場合などは、針クリンチが困難である。
【0005】
また、紙など被クリンチ材を手に持って、ホッチキス使用の都度、上部ユニットと下部クリンチユニットに挟み込んで針クリンチするのでは、手間がかかりクリンチ点数が多い場合など時間的ロスが大きくなる。
【0006】
そこでこの発明は、針クリンチで紙など被クリンチ材を、上部ユニットと下部クリンチユニットに挟み込んで置決めをやらなくても使用できる。また、紙など被クリンチ材を受け台の上に置いたままで使用出来るホッチキスを提供できることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するための、請求項1の発明は、ホッチキスにおいて、上部のクリンチ針供給とクリンチ針押し込みユニット部の先端に、3方向に傾斜面を持つクリンチャーを取り付けた。このクリチャーは両脇に付けた傾斜面によりクリンチ針の外曲げを実施しさせる。また、その進行により前方向に付けた傾斜面で、クリンチ針の両脇傾斜面からのスムーズな抜けを実現させる。この事により従来ホッチキスの必需ユニットである下部クリンチユニットを廃止した。その為、従来ホッチキスでの上下ユニット挟み込みクリンチによる不具合である、クリンチ位置の奥行き位置規制及び凸部障害が解消され、フリーな位置にクリンチできることを特徴とするホッチキスである。
【0008】
また、請求項2の発明は、クリンチ針はクリンチ針押しユニットによって押され始めて、クリンチャーの内部規制と本体外壁に規制されながら進行する。クリンチャー両脇の傾斜面により、クリンチ針は外に曲がりながら紙など被クリンチ材を貫通する。且つ、前方向の傾斜面により両脇傾斜面を外れながら、フラットな受け台と反り止めで規制され針クリンチができる機構である。従って被クリンチ材を手に持って上下ユニットで挟み込みクリンチするのでなく、受け台の上に置いたまま、押し込みユニットを押すだけでクリンチできることをも特徴とするホッチキスである。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように、この発明によれば、紙や布シートなどを、ホッチキスで合わせ止めや綴り止めなどする場合に於いて、針クリンチする位置に奥行き距離の制限が無く、自由なポジションへの針クリンチ使用が可能になる。
【0010】
また、下部ユニットを廃止したため、凸部などの挟み込み障害による使用困難などの問題が解消される。
【0011】
また、下部ユニットを廃止することにより、紙など被クリンチ材を手に持って針クリンチする事なく受け台の上に置いたままで、上から押さえ込みクリンチができるために、作業の時間ロスを排除して片手使用をも可能にした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
この発明の実施形態を図1に示す。図1に於いて、Aはホッチキスの針を押し出しクリンチを行う押し込み板である。Bは本体部であってクリンチ針のストックと供給及び、クリンチ動作での外規制の役目を果たす。そして下部はクリンチ針の外曲げのため逃がし用の切り欠きを設けている。Dはクリンチ針である。
【0013】
Gはクリンチ針の一次外曲げを実施するための、高硬度の傾斜面を両脇に持ち、且つ、その傾斜面からスムーズにクリンチ針を外すために、前面に高硬度の傾斜面を付けるなど針の予備曲げを実施するクリンチャーであって、クリンチ針供給に於ける内面及び前面の案内をも兼ねた重要な部品である。このクリンチャーGの詳細部品図は図7部品図の、Ga、Gbに示す。
【0014】
Eはそのクリンチャーを常時Bの本体に引き付けるための引っ張りコイルバネであり、両側フックにより本体に固定されている。
【0015】
Kは針クリンチをするための受け台であって、通常は鉄板やスチール机など表面がなめらかで、且つ、ある程度の硬度を有するフラットな材質で有れば何でも良い。
【0016】
CはそのK受け台により、下曲げ規制されて逆反りになったクリンチ針の上部規制となる反り止めである。またHは、紙や布シートなど綴じ止めされる被クリンチ材である。
【0017】
図2は外曲げホッチキスの構造斜視図であって、Aの押し込み板、Bの本体及びDのクリンチ針、Gのクリンチャーなどの位置関係を詳細に示した状態図である。この2図は、外曲げホッチキスにDのクリンチ針を装着した時点の、初期スタンバイ状態にある主要動作部分の構造断面斜視図を示す。
【0018】
図3は外曲げホッチキスのクリンチが進行している状態の詳細である。Aの押し込み板によってDのクリンチ針がM方向に押され、進行するに従ってDのクリンチ針は、Gクリンチャーの両サイドに設けられた傾斜面で図8のGa部品図に示すにT1傾斜角と,T2傾斜角に沿って、両側に押し広げられ半外曲げが進行する。Dクリンチ針の元部は、クリンチャー自身と、B本体の内壁とで規制を受けているため、Dクリンチ針は先端から外曲げが進行する事になる。
【0019】
Dのクリンチ針は、Hの紙や布シートなど被クリンチ材を曲がりながら突き破り貫通する。貫通後、K受け台で下規制を受けて、Dのクリンチ針は更に曲がりが進行する。また同時に進行してクリンチ針が、Gのクリンチャー前面の傾斜面、図8のCb部品図に示すR1斜面に掛かると、常時Eの引っ張りバネにより本体に押し付けられているGのクリンチャーが、その傾斜面、図8のCb部品図R1傾斜角に沿って外側F方向に押されて開き逃げ始める。これによりDのクリンチ針は、徐々にGのクリンチャーから外れだす。図3は、その進行途中の状態を示す主要動作部分の、構造断面斜視図である。
【0020】
図4は、更に針クリンチが進行し、Dのクリンチ針が、Kの受け台で下方向の規制を受け逆に上に曲がり、更にはCの反り止めにより上方向への規制を受けて、外曲げ針クリンチが完了した状態の詳細である。従って最終的にDのクリンチ針は、図8部品図Gbの傾斜角R1により、Gのクリンチャーから完全に外れ、Aの押し込み板とKの受け台、及びCの反り止めにより挟まれた状態で、クリンチ成形され外曲げの針クリンチが完了する。図4は、その針クリンが完了した状態を示す主要動作部分の構造断面斜視図である。
【0021】
図5は、外曲げ針クリンチに於いて、その進行途中でのDクリンチ針の曲がり状態図でDaから最終外曲げクリンチ完了状態のDcまでの、Dリンチ針の曲がり形状を示した変化斜視図である。
【0022】
この外曲げホッチキスは、図1の斜視図や図2、図3、図4の構造断面斜視図に示すように、上部ユニットにクリンチャー部分を持って行くことにより、従来の下クリンチャーユニット自体を全面的に削除した構造であり、紙など被クリンチ材から下に飛び出るユニット部分はない。
【0023】
下部ユニットを削除することにより、距離によるクリンチ位置規制が無くなり、フリーポジションでの針クリンチが可能となった。また、下部クリンチャー部と上部クリンチ針の供給押さえ部との位置決めによる挟み込みが不要なため、挟み込み途中の凸部など障害物の影響を受けることもなく使用できる。
【0024】
下部ユニットの全面的削除はその構造上や機能上でのトラブル防止、及び設計の簡素化、組立の簡素化、部品削減など製作コストの削減効果が大きくなる。
【0025】
また、綴じ止めなどその針クリンチ作業に於いても、挟み込みによる位置決めをする必要の無い事などから、作業能率の向上が図れる。
【実施例1】
【0026】
図11は従来のホッチキスでは不可能である状態、途中に凸曲面が存在する筒状で、しかも筒に平行に針クリンチ止めをした例の実施例斜視図である。
【実施例2】
【0027】
図12は針クリンチする奥行き距離が長く、従来のホッチキスでは上下ユニットの位置規制支点の関係から不可である位置に針クリンチをした例の実施例斜視図である。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、紙や布シートなどの綴じ止めなど、ホッチキスの針クリンチ止めに関する。特に下クリンチユニットを上部ユニットに供用することで、下部ユニットを廃止した事により、上下ユニットの挟み込みによる凸部障害の影響を無くした。また、上下ユニットの位置決め支点による、クリンチ位置の距離規制を無くすることをも可能にしたホッチキスに関する物である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の全体構成を示す斜視図
【図2】外曲げ針クリンチに於ける主要部分の構成を示す断面斜視図、(本図は針クリンチのスタート前初期状態の図)
【図3】外曲げ針クリンチに於ける主要部分の構成を示す断面斜視図、(本図は針クリンチの進行途中の状態図)
【図4】外曲げ針クリンチに於ける主要部分の構成を示す断面斜視図、(本図は針クリンチが完了した状態の図)
【図5】針クリンチに於ける、各進行途中での針の曲がり状況を示す、(図Daは進行30%の針の曲がり斜視図)(図Dbは進行70%の針の曲がり斜視図)(図Dcは針クリンチ完了状態の針曲がり斜視図)
【図6】本体の部品追加工図、(Baは左側面図)(Bbは正面図)(Bcは平面図)
【図7】反り止めの部品図、(Caは正面図)(Cbは右側面図)
【図8】クリンチャーの部品図、(Gaは正面図)(Gbは右側面図)
【図9】引っ張りコイルバネの部品図、(Eaは平面図)(Ebは正面図)
【図10】紙を筒状にし、針クリンチした状態の使用例斜視図
【図11】距離のある紙の位置に針クリンチした状態の使用例斜視図
【符号の説明】
【0030】
A 押し込み板
B 本体
C 反り止め
D クリンチ針
E 引っ張りコイルバネ
F クリンチャー逃げ方向
G クリンチャー
H 紙など被クリンチ材
K 受け台
T1 クリンチャー外曲げ傾斜角1
T2 クリンチャー外曲げ傾斜角2
R1 クリンチャー針逃がし傾斜角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホッチキスに於いて、上部のクリンチ針供給とクリンチ針押し込みユニット部の先端に、3方向に傾斜面を持つクリンチャーを取り付けた。このクリチャーは両脇に付けた傾斜面によりクリンチ針の外曲げを実施しさせる。また、その進行により前方向に付けた傾斜面で、クリンチ針の両側傾斜面からのスムーズな抜けを実現させる。この事により従来ホッチキスの必需ユニットである下部クリンチユニットを廃止した。その為、従来ホッチキスでの上下ユニット挟み込みクリンチによる不具合である、クリンチ位置の奥行き位置規制及び凸部障害が解消され、フリーな位置にクリンチできることを特徴とするホッチキス。
【請求項2】
クリンチ針は、クリンチ針押しユニットによって押され始めて、クリンチャーの内部規制と本体外壁に規制されながら進行する。クリンチャー両脇の傾斜面により、クリンチ針は外に曲がりながら紙など被クリンチ材を貫通する。且つ、前方向の傾斜面により両脇傾斜面を外れながら、フラットな受け台と反り止めで規制され、針クリンチができる機構である。従って被クリンチ材を手に持って、上下ユニットで挟み込みクリンチするのでなく、受け台の上に置いたまま、押し込みユニットを押すだけでクリンチできることをも特徴とした請求項1記載のホッチキス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−260808(P2007−260808A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−86825(P2006−86825)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(305007366)
【Fターム(参考)】