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外来タンパク質の発現用遺伝子カセットおよび外来タンパク質の製造方法
説明

外来タンパク質の発現用遺伝子カセットおよび外来タンパク質の製造方法

【課題】 組換えバキュロウイルスを用いる必要がなく、かつ、目的タンパク質の精製を容易にすることができる昆虫用の遺伝子工学材料を提供すると同時に、その遺伝子工学材料を利用した外来タンパク質の製造方法を提供することを課題としている。
【解決手段】 セリシン遺伝子の5'末端部分のDNA配列と3'末端部分のDNA配列を外来タンパク質遺伝子に融合させた発現用遺伝子カセットを絹糸腺細胞などに導入することで、大量の外来タンパク質を絹糸腺細胞内、絹糸腺特に中部絹糸線、さらには絹糸のセリシン層にまで産生させることが可能となった。この新手法により、組換えバキュロウイルスを用いることなく、絹糸腺を利用して外来タンパク質生産を生産させることで精製の容易な外来タンパク質生産技術を確立した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昆虫細胞への遺伝子導入ベクターおよびそのベクターを用いて遺伝子導入された昆虫細胞、昆虫組織、昆虫を用いた外来タンパク質の製造方法に関する。さらに、本発明で得られる組換えカイコが産生した外来タンパク質を含む絹糸に関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子組換え技術を用いた外来タンパク質の生産は、様々な産業に利用されている。その宿主として主に大腸菌、酵母、動物細胞、植物細胞、昆虫細胞などが用いられている。しかし、あらゆる外来タンパク質を効率よく生産できる宿主は開発されておらず、目的とするタンパク質ごとに生産系を構築することが必要であり、個々の宿主における外来タンパク質生産技術においてさらなる技術革新が望まれている。
【0003】
大腸菌などの細菌または酵母の系では、翻訳後修飾に問題があり、タンパク質を十分機能する形で合成できないことがある。また、動物細胞は、タンパク質を機能する形で合成できることが多いが、一般的に増殖させるのが困難で産生量も低く経済的ではない。
【0004】
一方、昆虫または昆虫細胞を用いた遺伝子組み換えタンパク質の生産では、酵素や生理活性を持つ有用タンパク質等が、比較的安価に量産でき、動物に近いタンパク質の翻訳後修飾が得られることが知られている。具体的には、外来タンパク質遺伝子を組み込んだバキュロウイルスを、昆虫または昆虫細胞に感染させる方法で、外来タンパク質が比較的安価に量産が可能であり、医薬品として製品化された生理活性タンパク質も知られている(特許文献1,2参照)。
【0005】
しかし、従来の昆虫または昆虫細胞を用いた組換えタンパク質の生産技術では、外来遺伝子の導入に組換えウイルスを用いることから、安全性の点から、その不活性化や封じ込めが必要であるという課題がある。また、組換えウイルスをカイコに接種する方法では、組換えウイルスの接種が煩雑であり、目的とする外来タンパク質が体液中に産生されるため、目的の組換えタンパク質をカイコ体液由来の大量の夾雑タンパク質から精製することが必要であった。このため高純度な組換えタンパク質を得ることが困難であるという課題があった。
【0006】
一方、近年、昆虫染色体への外来遺伝子の組換えが試みられ、核多核体病ウイルスの一種であるAutographa californica nuclear polyhedrosis virus (AcNPV)のDNAを用いて、カイコフィブロインL鎖遺伝子にクラゲ緑色蛍光タンパク質遺伝子を付加した融合遺伝子を、相同組み換えにより、カイコ染色体上に導入し、発現させる方法が開発され(非特許文献1参照)、その技術を用いたヒト・コラーゲン遺伝子を導入したカイコおよびその製造方法が開示されている(特許文献3参照)。しかし、上記のAcNPVを用いた昆虫染色体への外来タンパク質遺伝子の導入方法では、組換えバキュロウイルス(AcNPV)を用いることから、組換えウイルスの不活化や封じ込めの課題が依然として残っている。
【0007】
また最近、外来遺伝子を、鱗翅目昆虫由来のトランスポゾンであるpiggyBacを用いてカイコ染色体へ安定に導入し、その外来遺伝子がコードするタンパク質を発現させる方法が、クラゲ緑色蛍光タンパク質をモデルとして研究され、交配により子孫へと遺伝子が安定に伝わることも確認された(非特許文献2参照)。しかし、緑色蛍光タンパク質は、産生量が十分ではなく、かつ、カイコ全身に産生されるため、発現させた組換え型緑色蛍光タンパク質を高純度な形で回収するためには、高度な精製技術を必要とすることから、経済的に問題があった。
【0008】
また、フィブロインH鎖遺伝子の5’末端部分のDNA配列と3’末端部分のDNA配列を外来タンパク質遺伝子に融合させた発現用遺伝子カセットを絹糸腺細胞などに導入することで、大量の外来タンパク質を絹糸腺細胞内、絹糸腺細胞外、さらには絹糸のフィブロイン層にまで産生させることが可能となった(特許文献4参照)。しかしながら、外来タンパク質がフィブロイン層に産生されることから、フィブロイン層を覆っているセリシン層を除去した後に、フィブロイン層を可溶化した後に外来タンパク質を回収する必要があった。
【0009】
また最近、セリシン層を溶解して、ペプチド溶液を作製したり、それを用いて粉末化セリシンを作製する方法が報告されている(特許文献5、6参照)。しかし、これらは絹糸タンパク質(主にセリシン)を使用するためのものであり、絹糸中に存在する組換えタンパク質の回収・利用を想定したものではない。
【0010】
すなわち、このような昆虫を宿主とした外来タンパク質の生産技術においては、組換えバキュロウイルスの不活化や封じ込めが必要であったり、絹糸のフィブロイン層から目的タンパク質を精製することが困難である、目的タンパク質の発現量が少ないなど、いくつかの課題がある。
【特許文献1】特開昭61-9288号公報
【特許文献2】特開昭61-9297号公報
【特許文献3】特開2001-161214号公報
【特許文献4】特開2004-254681号公報
【特許文献5】特開平10-29909号公報
【特許文献6】特開2001-39999号公報
【非特許文献1】ジーンズアンドデベロップメント(Genes and Development) 1999年、第13巻、p.511-516
【非特許文献2】ネイチャーバイオテクノロジー(Nature Biotechnology) 2000年、第18巻、p81-84
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
昆虫を用いた組換え型タンパク質の生産技術は、精力的に研究されているが、外来タンパク質遺伝子を組み込んだ組換えバキュロウイルスの不活化や封じ込めの必要があり、また、組換えウイルスの接種が煩雑であるなどの課題がある。また、組換えバキュロウイルスを用いたカイコにおける外来タンパク質の生産では、大量の夾雑物を含む体液より目的タンパク質を抽出、精製することが困難であるという課題があった。
【0012】
カイコ染色体に外来タンパク遺伝子を導入する組換えタンパク質の製造技術の検討が行われているが、目的の外来タンパク質の生産量は低く、また、カイコ組織や絹糸のフィブロイン層から目的タンパク質を精製することが困難であるという課題もある。
【0013】
本発明は、こうした状況に鑑み、組換えバキュロウイルスを用いる必要がなく、かつ、目的タンパク質の精製を容易にすることができる昆虫用の遺伝子工学材料を提供すると同時に、その遺伝子工学材料を利用した外来タンパク質の製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、絹タンパク質の20〜30%を占めるセリシン層に組換えタンパク質を産生させようと、鋭意検討した結果、絹糸腺で発現するプロモーターの下流にセリシン遺伝子の第1イントロンを含む5'末端部分の3'末端側に外来タンパク質遺伝子の5'末端側をアミノ酸フレームが一続きになるように連結した遺伝子カセットを絹糸腺細胞に導入することで、絹糸のセリシン層における外来タンパク質の産生量が飛躍的に向上することを見出した。
【0015】
すなわち、本発明者らは、セリシン遺伝子の5'末端部分のDNA配列を外来タンパク質遺伝子に融合させた発現用遺伝子カセットを絹糸腺細胞などに導入することで、大量の外来タンパク質を絹糸腺細胞内、絹糸腺特に中部絹糸線、および絹糸のセリシン層に大量に産生させることに成功した。組換えバキュロウイルスを用いることなく、また、絹糸腺を利用して外来タンパク質生産を生産させることにより、精製を容易にする外来タンパク質生産技術を確立することができた。特に、絹糸のセリシン層に外来タンパク質を産生させた場合、水、緩衝液、アルカリ性水溶液(好ましくは水を電気分解して作製したアルカリイオン水)などで可溶化することで、外来タンパク質を含むセリシン溶液を簡便に得ることができる。この外来タンパク質を含むセリシン溶液からは、他の夾雑タンパク質が少なく通常の精製技術を用いて、外来タンパク質を容易に回収することが可能である。
【0016】
本発明は、以下の遺伝子カセット、ベクターなど昆虫での外来タンパク質生産に利用可能な遺伝子工学材料、形質転換体、その形質転換体を用いた外来タンパク質の製造方法および外来タンパク質を含む絹糸に関する。
【0017】
1)(1)絹糸腺で発現するプロモーターと、
(2)前記(1)の下流に連結された、セリシン遺伝子の5’末端部分を外来タンパク質構造遺伝子の5’側に融合させた遺伝子とを含む外来タンパク質の発現用遺伝子カセット。
【0018】
2)前記セリシン遺伝子の5’末端部分が、セリシン遺伝子の第1エキソン、第1イントロン、第2エキソンの一部を含むことを特徴とする1)に記載の外来タンパク質の発現用遺伝子カセット。
【0019】
3)前記セリシンの第1エキソンと第2エキソンを合わせた部分が、セリシン遺伝子の分泌シグナル遺伝子領域であることを特徴とする2)の外来タンパク質の発現用遺伝子カセット。
【0020】
4)前記1)〜3)のいずれかに記載の外来タンパク質の発現用遺伝子カセットにおいて、外来タンパク質の発現用遺伝子カセットに含まれる(1)絹糸腺プロモーターおよび/または(2)セリシン遺伝子の5’末端部分が実質的に同等の機能を有する範囲において1個もしくは数個の塩基の付加、欠失もしくは他の塩基への置換を有することを特徴とする外来タンパク質の発現用遺伝子カセット。
【0021】
5)前記1)〜4)のいずれかに記載の外来タンパク質の発現用遺伝子カセットにおいて、外来タンパク質の発現用遺伝子カセットに含まれる(1)絹糸腺プロモーター部分および/または(2)セリシン遺伝子の5’末端部分に代えて、該部分とストリンジェントな条件でハイブリダイズする遺伝子であって、該部分と実質的に同等の機能を有する遺伝子を有することを特徴とする外来タンパク質の発現用遺伝子カセット。
【0022】
6)前記絹糸腺で発現するプロモーターが、セリシン遺伝子のプロモーター、フィブロインL鎖遺伝子のプロモーター及びフィブロインH鎖遺伝子のプロモーターのうちから選ばれる少なくとも一つのプロモーターであることを特徴とする1)〜5)のいずれか1項に記載の外来タンパク質の発現用遺伝子カセット。
【0023】
7)外来タンパク質発現遺伝子カセットの下流に、セリシン遺伝子のポリA付加領域、フィブロインL鎖遺伝子のポリA付加領域およびフィブロインH鎖遺伝子のポリA付加領域のうちから選ばれる少なくとも一つのポリA付加領域が存在することを特徴とする1)〜6)のいずれか1項に記載の外来タンパク質の発現用遺伝子カセット。
【0024】
8)前記1)〜6)のいずれか1項に記載の外来タンパク質の発現用遺伝子カセットの両側に、1対のピギーバック(piggyBac)トランスポゾンの逆位反復配列が存在することを特徴とする昆虫細胞の染色体への遺伝子導入用遺伝子カセット。
【0025】
9)前記1)〜8)のいずれか1項に記載の外来タンパク質の発現用遺伝子カセットを含むことを特徴とする昆虫細胞用発現ベクター。
【0026】
10)前記8)に記載の昆虫細胞の染色体への遺伝子導入用遺伝子カセットを含むことを特徴とする昆虫細胞用遺伝子導入ベクター。
【0027】
11) 前記1)〜8)のいずれか1項に記載の外来タンパク質の発現用遺伝子カセットが染色体に導入されており、かつ、絹糸腺または絹糸に外来タンパク質を産生する能力を持つ組換えカイコ。
【0028】
12)前記11)に記載の組換えカイコが産生する外来タンパク質を含む絹糸。
【0029】
13)前記9)または10)に記載の昆虫細胞用遺伝子導入ベクターを昆虫細胞へ導入することを特徴とする外来タンパク質の製造方法。
【0030】
14)昆虫細胞が鱗翅目昆虫由来であることを特徴とする12)に記載の外来タンパク質の製造方法。
【0031】
15)昆虫細胞がカイコガ(Bombyx mori)由来であることを特徴とする13)に記載の外来タンパク質の製造方法。
【0032】
16)昆虫細胞がカイコガ(Bombyx mori)の絹糸腺細胞であることを特徴とする14)に記載の外来タンパク質の製造方法。
【0033】
17)ピギーバック(piggyBac)トランスポゼースのDNA転移活性を利用して、外来タンパク質の発現用遺伝子カセットを染色体に組み込んだ組換えカイコを作製し、得られた組換えカイコの絹糸腺または絹糸に外来タンパク質を産生させた後、その絹糸腺または絹糸から外来タンパク質を回収することを特徴とする13)に記載の外来タンパク質の製造方法。
【0034】
18)昆虫細胞用遺伝子導入ベクターと、ピギーバック(piggyBac)トランスポゼースを産生するDNAもしくはRNAを同時にカイコ卵にマイクロインジェクションすることによって該外来タンパク質の発現用遺伝子カセットを染色体に組み込んだ組換えカイコを作製することを特徴とする17)に記載の外来タンパク質製造方法。
【0035】
19)前記12)に記載の絹糸を水溶液で懸濁し、セリシン層を溶解した水溶液中から有用タンパク質を回収することを特徴とする外来タンパク質製造方法。
【0036】
20)水溶液が水、または緩衝液、もしくはアルカリ性水溶液から選ばれる一種以上であることを特徴とする19)に記載の外来タンパク質製造方法。
【0037】
21)アルカリ性水溶液が水を電気分解して陰極近傍の水溶液を集めたアルカリイオン水であることを特徴とする20)記載の外来タンパク質製造方法。
【0038】
22) 上記記載の水溶液が界面活性剤を含むことを特徴とする19)〜21)のいずれか1項記載の外来タンパク質製造方法。
【0039】
23)絹糸を溶解した水溶液から、カラムクロマトグラフィーを用いて外来タンパク質を回収することを特徴とする19)から22)のいずれか1項記載の外来タンパク質製造方法。
【0040】
24) 外来タンパク質が、水溶液に可溶性であることを特徴とする11)から23)のいずれか1項記載の外来タンパク質製造方法。
【0041】
25) 外来タンパク質がサイトカイン、抗原タンパク質のいずれかであることを特徴とする11)から24)のいずれか1項記載の外来タンパク質製造方法。
【0042】
26) サイトカインがインターフェロン、抗原タンパク質がウイルス抗原タンパク質であることを特徴とする25)記載の外来タンパク質製造方法。
【発明の効果】
【0043】
セリシン遺伝子の5'末端部分のDNA配列を外来タンパク質遺伝子に融合させた発現用遺伝子カセットを絹糸腺細胞などに導入することで、大量の外来タンパク質を絹糸腺細胞内、絹糸腺特に中部絹糸線、さらには絹糸のセリシン層にまで産生させることが可能となった。この新手法により、組換えバキュロウイルスを用いることなく、絹糸腺を利用して外来タンパク質生産を生産させることで精製の容易な外来タンパク質生産技術を確立した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
本発明において、「外来タンパク質の発現用遺伝子カセット」とは、昆虫細胞に導入された場合その外来タンパク質構造遺伝子がコードするタンパク質が発現されるために必要なDNAのセットをいう。この外来タンパク質発現カセットは、外来タンパク質構造遺伝子とその遺伝子の発現を促進するプロモーターを含む。通常はさらに、ターミネーター、ポリA付加領域を含み、好ましくはプロモーター、外来タンパク質構造遺伝子、ターミネーター、ポリA付加領域の全てを含む。さらにプロモーターとの間に外来タンパク質構造遺伝子に結合した分泌シグナル遺伝子を含んでいてもよい。ポリA付加配列との間にも任意の遺伝子配列を連結しても良い。また人工的に設計、合成された遺伝子配列を連結することもできる。
【0045】
また、「遺伝子導入用遺伝子カセット」とは、両側に1対のピギーバック(piggyBac)トランスポゾンの逆位反復配列を有する外来タンパク質の発現用遺伝子カセットであり、かつ、ピギーバック(piggyBac)トランスポゼーズの作用により昆虫細胞染色体へ導入されるDNAセットをいう。本発明において、「昆虫細胞用発現ベクター」とは外来タンパク質の発現用遺伝子カセットまたは遺伝子導入用遺伝子カセットを含み、昆虫細胞に導入された際に、外来タンパク質を発現させるために必要なDNAのセットをいう。また、本発明において、「昆虫細胞用遺伝子導入ベクター」とは外来タンパク質の発現用遺伝子カセットまたは遺伝子導入用遺伝子カセットを含み、両端に1対のピギーバックトランスポゾンの逆位反復配列を有し、かつ、ピギーバックトランスポゼースの作用により昆虫細胞染色体へ導入されるDNAセットをいう。
【0046】
本発明において使用されるDNAを取得する方法に特に制限はない。既知の遺伝子情報に基づき、PCR(polymerase chain reactiion)法を用いて必要な遺伝子領域を増幅取得する方法、既知の遺伝子情報に基づきゲノムライブラリーやcDNAライブラリーより相同性を指標としてスクリーニングする方法などが挙げられる。本発明においては、これらの遺伝子は遺伝的多型性や変異剤などを用いた人為的変異処理による変異型も含む。遺伝的多型性とは遺伝子上の自然突然変異により遺伝子の塩基配列が一部変化しているものをいう。
【0047】
外来タンパク質発現カセットにおけるプロモーターは特に限定されないが、外来タンパク質遺伝子の発現を促進する活性の高いものが好ましい。例えば、特開平6-261770号公報や特開昭62-285787号公報に記載されているショウジョウバエの熱ショックタンパク質遺伝子のプロモーターやカイコアクチン遺伝子のプロモーター(Nature Biotechnology 18,81-84,2000)などが挙げられるが、フィブロインH鎖遺伝子のプロモーター(GenBank登録番号V00094の塩基番号255〜574番目、GenBank登録番号AF226688の塩基番号62118〜62437番目)、フィブロインL鎖遺伝子のプロモーター(Gene, 100:151-158:GenBank登録番号M76430)、セリシン遺伝子のプロモーター(GenBank登録番号AB007831の塩基番号599〜1656番目)などカイコ絹糸腺細胞中で高い転写促進活性を有するプロモーターが好適である。
【0048】
「外来タンパク質構造遺伝子」とは、遺伝子を発現させようとする宿主細胞が有しない遺伝子のことであり、宿主細胞が本来産生しないタンパク質をコードしている遺伝子のことであり、特に限定されない。産業的価値から考えて、ヒトやほ乳類が産生するタンパク質、例えば、成長ホルモン、サイトカイン、増殖因子および細胞骨格タンパク質の遺伝子などが挙げられる。また、微生物、植物または昆虫などが産生する酵素や種々タンパク質の遺伝子なども本発明の範囲に含まれる。
【0049】
本発明における外来タンパク質発現用遺伝子カセットにおいて、セリシン遺伝子の5’末端部分は、プロモーターによる外来タンパク質の発現を増強する作用を有するDNA配列であり、セリシン遺伝子の第1エキソンと第1イントロン全長またはその一部および第2エキソンの一部を含むDNA配列である。本発明においてセリシン遺伝子の5’末端部分が、組換え個体において中後部絹糸腺での遺伝子の発現、転写を促進することが明らかとなった。こうした遺伝子の転写活性を促進する領域は、種々の方法により改変されても、その基本的な活性を保持することが十分に認識されている。
【0050】
遺伝子の転写活性を促進するセリシン遺伝子の5’末端部分に、実質的に同等の機能を有する範囲において、人為的、自然発生的のいずれを問わず、1または2以上の塩基の付加または欠失、もしくは他の塩基への置換を生じたDNAを用いることもできる。「1個もしくは数個の塩基の付加、欠失もしくは他の塩基への置換」とは、基本となる塩基配列に比較して1または2以上の塩基が付加または欠失、もしくは1または2以上の塩基が他の塩基に置換といった変異が存在するが、基本となる無変異配列と同等の機能を保持していることを意味する。
【0051】
この場合の実質的に同等の機能とは、カイコ絹糸腺細胞中で高い転写促進活性を表す。1個もしくは数個の塩基の付加、欠失もしくは他の塩基への置換の手段は自体は公知であり、例えば、ランダム変異導入法、部位特異的変異導入法、遺伝子相同組換え法、またはポリメラーゼ連鎖増幅法(PCR)を単独または適宜組み合わせて行うことができる。例えば亜硫酸水素ナトリウムを用いた化学的な処理によりシトシン塩基をウラシル塩基に置換する方法や、マンガンを含む反応液中でPCRを行い、DNA合成時のヌクレオチドの取り込みの正確性を低くする方法、部位特異的変異導入のための市販されている各種キットを用いることもできる。
【0052】
例えばサムブルック等編[モレキュラークローニング、ア ラボラトリーマニュアル 第2版]コールドスプリングハーバーラボラトリー、1989、村松正實編[ラボマニュアル遺伝子工学]丸善株式会社、1988、エールリッヒ、HE.編[PCRテクノロジー、DNA増幅の原理と応用]ストックトンプレス、1989等の成書に記載の方法に準じて、あるいはそれらの方法を改変して実施することができる。この場合の実質的に同等の機能とは、カイコ絹糸腺細胞中での高い転写活性や転写促進活性を表す。
【0053】
具体的には、5令2日目のカイコ後部絹糸腺もしくは中部絹糸腺において、変異配列をもつ組換えカイコでの外来タンパク質遺伝子の転写量が、カイコアクチン遺伝子もしくはフィブロインH鎖遺伝子もしくはフィブロインL鎖遺伝子もしくはセリシン遺伝子の転写量のいずれかとくらべて0.1〜1倍の範囲内にあることが、ノーザン解析により確認されることを示す。好ましくはフィブロインH鎖遺伝子の転写量と比較して、0.1〜1倍の範囲内にあることが望ましい。
【0054】
転写量の比較には、BIORAD社製モレキュラーイメージャーFXProを用いることで、アマシャムファルマシア社製Gene Images Random-Prime Labelling and Detection Systemで標識、検出したシグナルを、定量的に検出、比較することができる。このとき、外来タンパク質遺伝子検出プローブと、カイコアクチン遺伝子もしくはフィブロインH鎖遺伝子もしくはフィブロインL鎖遺伝子もしくはセリシン遺伝子検出プローブの検出感度が同程度になるよう、あらかじめプローブ量、ハイブリダイズ条件、検出条件を確定する。その条件を用い、外来タンパク質遺伝子検出プローブと、比較するカイコアクチン遺伝子もしくはフィブロインH鎖遺伝子もしくはフィブロインL鎖遺伝子もしくはセリシン遺伝子検出プローブを混合しハイブリダイズし、検出、比較を行う。
【0055】
また、同じく実質的に同等の機能を有する範囲において、セリシン遺伝子の5’末端部分の相同配列がストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAを用いることもできる。1本鎖DNAは相同性の程度によって相手鎖とハイブリダイズする。このとき、ハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーをより厳密に設定することによって、より相同性の高い配列を特定することができる。ストリンジェント条件は、ハイブリダイゼーションおよび洗浄工程における塩濃度(ホルムアミド等)の濃度、温度条件によって規定される。詳しくは、米国特許No.6,100,037に詳しく記載されている。このようなストリンジェント条件下でのハイブリダイゼーションスクリーニングによって特定されるDNAは、相同性のレベルにおいて70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上である。
【0056】
前記第2エキソンの3'側に外来タンパク質構造遺伝子の5'側をアミノ酸フレームが一続きとなるように融合させることによって、外来タンパク質の産生量を向上させることができるが、第2エキソン部分を長くしすぎると目的とする外来タンパク質のN末端側に余分なアミノ酸残基が付加されるため、目的とする外来タンパク質の構造や活性が失われる場合もあるので、目的に応じて適切な長さとすることが必要である。
【0057】
多くの場合、第2エキソン部分は、セリシン遺伝子の分泌シグナル遺伝子の直後もしくは数アミノ酸残基までとすることで好適な結果を得ることができる。
【0058】
タンパク質産生量の比較には、BIORAD社製モレキュラーイメージャーFXProを用いることで、アマシャムファルマシア社製ECL Western Blotting Detection Systemで検出した外来タンパク質由来のシグナルを検出、比較することができる。
【0059】
ポリA領域についても特に制限はないが、フィブロインH鎖、フィブロインL鎖、セリシンなど絹糸腺で大量に発現しているタンパク質遺伝子のポリA領域が好適に使用できる。
【0060】
本発明におけるベクターとは、環状DNA構造または線状DNA構造を有するものをいう。特に、大腸菌内でも複製可能で、かつ、環状DNA構造を持つベクターが好適に使用できる。このベクターには、形質転換体の選抜を容易にする目的で、抗生物質耐性遺伝子、クラゲ由来蛍光緑色タンパク質遺伝子などマーカー遺伝子を組み込んでおくこともできる。
【0061】
本発明で使用する昆虫細胞とは特に限定されるものではないが、好ましくは鱗翅目昆虫、より好ましくはカイコガ(Bombyx mori)由来細胞、さらに好ましくはカイコ絹糸腺細胞またはカイコガ(Bombyx mori)の卵に含まれる細胞である。絹糸腺細胞においては、セリシンタンパク質の合成が盛んで、かつ、取り扱いが容易なカイコ5令幼虫の中部絹糸腺細胞が好適である。
【0062】
昆虫細胞へ外来タンパク質の発現用遺伝子カセットおよびベクターを導入する方法には、特に制限はない。昆虫培養細胞への導入方法としては、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーションによる方法、リポソームを用いる方法、遺伝子銃を用いる方法、マイクロインジェクションする方法などを用いることができるが、カイコ絹糸腺細胞への導入においては、例えばカイコ5令幼虫の体内から取り出した中部絹糸腺組織に対して遺伝子銃を用いることによって簡便に遺伝子を導入することが可能である。
【0063】
遺伝子銃による中部絹糸腺への遺伝子導入は、例えば、外来タンパク質の発現用遺伝子カセットを含むベクターをコーティングした金粒子を、バイオラッド社のパーティクルガン(型番:PDS−1000/He)を用いて、寒天プレートなどに固定した中部絹糸腺へ、1,100〜1,800psiのHeガス圧で噴射させることによって可能である。
【0064】
カイコガ(Bombyx mori)の卵に含まれる細胞に遺伝子を導入する場合には、マイクロインジェクションする方法が好適である。ここで卵にマイクロインジェクションを行う場合、卵中の細胞に直接マイクロインジェクションする必要はなく、卵中にマイクロインジェクションするだけで遺伝子を導入することが可能である。
【0065】
本発明の「遺伝子導入用遺伝子カセット」を有するベクターをカイコガ(Bombyx mori)の卵にマイクロインジェクションすることで、本発明の「外来タンパク質の発現用遺伝子カセット」が染色体に導入された組換えカイコを取得することが可能である。例えば、田村らの方法(Nature Biotechnology 18,81-84,2000)に従って、「遺伝子導入用遺伝子カセット」を有するベクターとカイコアクチンプロモーター制御下にピギーバック(PiggyBac)トランスポゼーセス遺伝子を配置したプラスミドを、同時にカイコガの卵にマイクロインジェクションし、孵化した幼虫を飼育し、得られた成虫(G0)を群内で掛け合わせて次世代(G1)カイコ幼虫を得る。
【0066】
組換えカイコは、このG1世代において通常1〜2%の頻度で出現する。組換えカイコの選抜は、G1世代カイコの組織の一部からDNAを取り出し、外来タンパク質遺伝子を基に設計したプライマーを用いてPCRによって行うことができる。または、予め「遺伝子導入用遺伝子カセット」内に、カイコ細胞で発現可能なプロモータ下流に連結した緑色蛍光タンパク質(例えば、GFPおよびその類縁体)をコードする遺伝子を導入しておけば、G1世代のカイコ、例えば1令幼虫について紫外線下で緑色蛍光を発する個体を選抜することで組換えカイコの選抜が容易に行える。
【0067】
緑色蛍光タンパク質をコードする遺伝子を連結する、カイコ細胞で発現可能なプロモーターとして、たとえば特開平6−261770号公報や特開昭62−285787号公報に記載されているショウジョウバエの熱ショックタンパク質遺伝子のプロモーターやカイコアクチン遺伝子のプロモーター(Nature Biotechnology 18,81-84,2000)、ショウジョウバエの視神経で発現することが知られている3xP3プロモーターなどが挙げられる。好ましくはカイコアクチン遺伝子のプロモーター(Nature Biotechnology 18,81-84,2000)もしくは3xP3プロモーターが用いられる。
【0068】
そのほかに、カイコ細胞で発現可能なプロモーターとして、カイコ絹糸腺細胞中で高い転写促進活性を有するプロモーター、たとえばフィブロインH鎖遺伝子のプロモーター(GenBank登録番号V00094の塩基番号255〜574番目、GenBank登録番号AF226688の塩基番号62118〜62437番目)、フィブロインL鎖遺伝子のプロモーター(Gene, 100:151-158:GenBank登録番号M76430)、セリシン遺伝子のプロモーター(GenBank登録番号AB007831の塩基番号599〜1656番目)を選択することも可能である。
【0069】
しかし、本発明に従って、カイコ絹糸腺細胞中で高い転写促進活性を有するプロモーターに緑色蛍光タンパク質をコードする遺伝子に連結した場合、カイコ絹糸腺細胞中で緑色蛍光タンパク質が大量に生産されることから、絹糸腺および絹糸中に、目的外来蛋白質に加えて緑色蛍光蛋白質が産生される。この場合、目的外来タンパク質を絹糸線および絹糸から精製、回収する時に、緑色蛍光蛋白質は、きょう雑タンパク質として、目的外来タンパク質の精製、回収を困難にする。また、緑色蛍光タンパク質が絹糸の物性に、強伸度の低下など望まない性質を与える可能性が考えられる。
【0070】
また、「外来タンパク質の発現用遺伝子カセット」が染色体に導入された組換えカイコを取得する目的で、「遺伝子導入用遺伝子カセット」を有するベクターをカイコガ(Bombyx mori)の卵にマイクロインジェクションするにあたり、ピギーバック(PiggyBac)トランスポゼーセスタンパク質を同時にマイクロインジェクションすることによっても、上記と同様にして組換えカイコを取得することが可能である。
【0071】
ピギーバック(PiggyBac)トランスポゾンとは両端に13塩基対の逆位配列と、内部に約2.1k塩基対のORFを有するDNAの転位因子である。本発明において使用されるピギーバック(PiggyBac)トランスポゾンは特に限定されないが、例えばTrichoplusia ni cell line TN-368、Autographa californica NPV(AcNPV)、Galleria mellonea NPV(GmMNPV)由来のものを用いることができる。好ましくはTrichoplusia ni cell line TN-368由来ピギーバック(PiggyBac)の一部を持つプラスミドpHA3PIGとpPIGA3GFP(Nature biotechnology 18,81-84,2000)を用いて、その遺伝子およびDNA転移活性を有するピギーバックトランスポゼースを調製することができる。
【0072】
本発明で用いられる遺伝子組換えカイコとは、外来タンパク質遺伝子がカイコ染色体に導入されたカイコのことであり、そのカイコ染色体DNAを常法に従って制限酵素処理したのち、常法に従って標識した外来タンパク質遺伝子をプローブとしてサザンブロッティングを行う時、ポジティブなシグナルを与えるカイコのことである。外来タンパク質遺伝子が導入される染色体上の遺伝子座位は、カイコの発生、分化、成長を阻害しない部位であれば特に制限はない。組換えカイコは、その絹糸腺細胞、絹糸腺内腔、および、絹糸中に外来タンパク質を産生する能力を有している。また、組換えカイコは、正常に発育し、交配が可能であり、導入された外来タンパク質遺伝子を安定に保有し、かつ子孫に伝えることが可能である。
【0073】
従って、組換えカイコを継代し頭数を増やすことで、外来タンパク質の生産量を容易にスケールアップすることが可能である。交配において、野生型のカイコと交配させることで、外来タンパク質の産生量を向上させることも可能である。この場合、目的の外来タンパク質遺伝子が導入されたカイコを適宜選抜しながら継代していく必要が生じる。この場合、任意の組織から得られた細胞のDNAを用いて、組換えカイコ選抜に使用したマーカー遺伝子や外来タンパク質遺伝子の存在や構造を、PCR、サザンブロッティング法などで解析することで、容易に組換えカイコの遺伝子を継承した子孫を判別することが可能である。
【0074】
本発明の外来タンパク質の発現用遺伝子カセットを導入された昆虫細胞やカイコ絹糸腺は、それぞれ培養に適した培養液で培養することで、その培養上清や細胞中に外来タンパク質を産生することが可能である。例えば、本発明の発現用遺伝子カセットを導入されたカイコ卵巣由来細胞であるBmN細胞は、TC−100培地(ファーミンジェン社製)で、27℃で培養することで、培養3から4日で、目的とする外来タンパク質を産生する。また、カイコ後部絹糸腺は、例えば5令幼虫から無菌的に摘出したのち、インセクト・グレース培地中で、25℃で培養することで、外来タンパク質を産生する。絹糸腺でタンパク産生を行う場合は、培地中の溶存酸素濃度を高く維持することが好適であり、また、培地中に蓄積する低分子のタンパク質合成を阻害する因子を、例えば、限外濾過膜などで除去しながら培養することが好適であり、長時間のタンパク合成が可能となる。
【0075】
本発明で得られる組換えカイコは、通常のカイコと同様に飼育が可能であり、通常の条件で飼育することで外来タンパク質を産生させることが可能である。目的とする外来タンパク質に応じて、特に5令時期の培養温度、湿度、給餌条件などを最適化することで、外来タンパク質の産生量を向上させることも可能である。
【0076】
本発明のセリシン遺伝子の5'末端部分を融合させた外来タンパク遺伝子を導入した組換えカイコは、その繭中に目的とする外来タンパク質を大量に産生することが可能となる。得られた繭から、目的外来タンパク質を容易に精製、回収することが可能となる。また、産生させた外来タンパク質の機能によっては、得られた外来タンパク質を含む絹糸を、各種の産業用途で、そのままの形態、または、一部加工した形態で利用することができる。
【0077】
カイコ絹糸はフィブロイン層とその表面を覆うようにあるセリシン層により形成されている。セリシン層は比較的可溶性が高いため本発明で得られる組換えカイコの絹糸腺または絹糸より、簡便な抽出操作によって、外来タンパク質を得ることができる。外来タンパク質を、絹糸腺または絹糸から抽出するために使用する溶媒については特に制限はないが、多くの場合、水または水溶液が好ましい。抽出に使用する水溶液は、外来タンパク質の抽出を促進させるために適切な溶質を含むことが可能である。例えば、緩衝液などを使用することができる。種類としては酢酸、クエン酸、ホウ酸、酒石酸、リン酸緩衝液などを用いることができる。また、pHも特に限定はなく、目的とする外来タンパク質の機能を失活させないpHであれば、任意のpHを用いることができる。好ましくはpH8〜13のアルカリ性水溶液がよい。アルカリ性水溶液には水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、アンモニア水、炭酸水素ナトリウム、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム、水酸化銅、水酸化鉄などを使用することができる。なかでもpH8〜11のアルカリイオン水がよい。アルカリイオン水とは、水を電気分解して陰極近傍の液を回収することにより作製したアルカリ性水溶液である。
【0078】
また上記記載の水溶液に表面張力を弱めることができる界面活性剤を含有して用いることも可能である。界面活性剤は、イオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤とに大別される。イオン性界面活性剤は、さらに陰イオン性(アニオン性)界面活性剤、陽イオン性(カチオン性)界面活性剤、両性界面活性剤とに分けられる。陰イオン性(アニオン性)界面活性剤には、アルキル硫酸ナトリウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、石鹸(アルカリ金属の高級脂肪酸塩)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸、ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウロイルサルコシンナトリウム、ラウロイルメチルβ-アラニンナトリウム液、ラウロイルメチルタウリンナトリウムなどがある。また陽イオン性(カチオン性)界面活性剤には、エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムなどがある。また両性界面活性剤には、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン液、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロ岸エチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインなどがある。非イオン性界面活性剤としては、ジメチコンコポリオール、ショ糖脂肪酸エステル、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、ベミュレン、ポリメチルポリシロキサン共重合体、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリン酸アミド、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリグリセリン脂肪酸エステル、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノアウテアリン酸エチレングリコール、モノステアリン酸プロビレングリコール、モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビットなどがある。どの種類の界面活性剤でも使用可能であるが、イオン性界面活性剤の陰イオン界面活性剤を使用するのが好ましい。
【0079】
上記界面活性剤の使用量は水溶液に対して、0.1%(w/vol)〜5%(w/vol)程度であることが好ましい。
【0080】
抽出された外来タンパク質を、単離・精製するための方法に特に限定はなく、通常の蛋白質の精製方法を用いることができる。例えば、限外濾過、ゲル濾過、透析、塩析等による脱塩、濃縮を組み合わせることによって精製し単離することができる。また目的とする有用蛋白質が本来有する機能を指標としながら、シリカゲル担体、イオン交換性担体、ゲル濾過担体、キレート性担体、色素担持担体等を用いたカラムクロマトグラフィーによって精製し単離することができる。中でもイオン交換性担体を用いるのがよい。例えば、イヌパルボウイルスVP2抗原は、イヌパルボウイルスVP2の遺伝子を導入したカイコの絹糸腺または繭糸に、アルカリ性イオン水を加えホモジナイズして得られる可溶性画分に回収することができる。さらに、得られた抽出液を、例えばブルーセファロース担体に吸着させ、洗浄後、塩類を含む緩衝液で溶出することにより、イヌパルボウイルスVP2抗原の純度を上げることができる。
【0081】
このように製造される外来タンパク質については、特に限定はないが水溶液に対して可溶性であるタンパク質が望ましい。たとえばサイトカインが好ましい。サイトカインとは細胞の増殖・分化・機能発現を行い、構造や作用機構などで様々な種類に分類できる。代表的なものにインターフェロンなどがある。また、ワクチンの抗原タンパク質も好ましい。ワクチンの抗原タンパク質とは、動物に対して抗原性を有し、動物体内に投与されたときに、それに対する抗体の産生や細胞性免疫を誘導するもの、またウイルス、微生物、寄生虫、腫瘍、その他動物由来のタンパク質であり、それに起因する疾病の予防または治癒が期待できるものであり、アミノ酸組成や分子量、糖鎖の有無は問題とはならず、どのようなタンパク質、ペプチドでも使用できる。このように製造されたタンパク質は、従来の他の製造方法で製造されたサイトカインやワクチンの抗原タンパク質と同様に、医薬用途や各種の測定、診断用途に用いることができる。この場合、各種添加剤を加えた混合物として使用してもよい。また、サイトカインやワクチンの抗原タンパク質を発現したカイコの組織、もしくは繭糸は、そのまま、もしくは加工して、医療用または衣料用の繊維として用いることができる。また、酵素類を発現した組換えカイコの組織もしくは絹糸は、そのまま酵素反応に使用することも可能である。
【実施例】
【0082】
以下に実施例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の記載に限定されるものではない。
【0083】
実施例1. Bombyx mori genomic DNAの調製
5齢3日目のカイコを解剖し、中部絹糸腺組織を取り出した。1×SSCで洗浄した後、DNA 抽出バッファー(50mM Tris-HCl pH8.0, 1mM EDTA pH8.0, 100mM NaCl)200μlを加えた。Proteinase K(final 200μg/ml)を加えて組織をグラインダーで充分すりつぶし、更にDNA抽出バッファーを350μl、10%SDS 60μlを加え混合後、50℃2時間保温した。Tris-HCl飽和フェノールpH8.0 500μlを加え10分混合後、10,000rpm 5分 4℃にて遠心分離し上清を回収した。
【0084】
上清に等量のフェノール/クロロフォルム/イソアミルアルコール(25:24:1)を加え混合後、遠心分離した。再度フェノール/クロロフォルム/イソアミルアルコールを加え、遠心分離後上清を回収した。等量のクロロフォルム/イソアミルアルコール(24:1)を加え混合後、遠心分離した上清に再度クロロフォルム/イソアミルアルコールを加え、遠心分離後上清を回収した。得られた上清に1/10量の3M 酢酸ナトリウム(pH5.2)を加え混合し、更に2.5倍量の冷エタノールを加え-80℃にて30分静置後、15,000rpm 10分 4℃にて遠心分離しgenomic DNAを沈殿させた。70%エタノールでDNAの沈殿を洗浄した後、風乾させた。RNase入り滅菌水で100μg/mlとなるように溶解、希釈しgenomic DNA溶液を調製した。
【0085】
実施例2. 遺伝子の調製
用いた遺伝子は既知の配列を利用して、その両端配列のプライマーを作製し、適当なDNAソースを鋳型としてPCRを行うことにより取得した。プライマーの端には後の遺伝子操作のために制限酵素切断部位を付加した。
【0086】
セリシンプロモーター(GeneBank登録番号AB007831の塩基番号599〜1656番目:以下P領域)は、Bombyx mori genomic DNAを鋳型に、プライマー1(配列番号1)とプライマー2(配列番号2)の2種類のプライマーを用いたPCRにより取得した。
【0087】
セリシンプロモーター・セリシン遺伝子第一エキソン・第一イントロン・第二エキソン領域(以下SP領域)は、Bombyx mori genomic DNAを鋳型に、プライマー3(配列番号3)とプライマー4(配列番号4)の2種類のプライマーを用いたPCRにより取得した。
【0088】
ネコインターフェロンーω遺伝子(GeneBank登録番号S62636の塩基番号9〜593番目:以下IC領域)はネコインターフェロンーω遺伝子をコードするバキュロウイルスrBNV100を鋳型にプライマー5(配列番号5)とプライマー6(配列番号6)の2種類のプライマーを用いてPCRにより取得した。rBNV100は、例えばE.Coli(pFeIFN1)(微工研条寄第1633号)から抽出したプラスミドからネコインターフェロンーωの遺伝子を切り出して、カイコのクローニングベクター(T.Horiuchiら、Agric.Biol.Chem.,51,1573-1580,1987)に連結して作製した組換えプラスミドとカイコ多核体病ウイルスDNAとを、カイコ樹立細胞にコ・トランスフェクションして作製することができる。
【0089】
セリシンポリAシグナル領域(GeneBank登録番号AF226688の塩基番号79099〜79995番目:以下SA領域)は、Bombyx mori genomic DNAを鋳型に、プライマー7(配列番号7)とプライマー8(配列番号8)の2種類のプライマーを用いたPCRにより取得した。
【0090】
これらの反応液を1%アガロースゲルにて電気泳動し、それぞれP領域では約0.3kbp、SP領域では約3.5kbp.、IC領域では約580bp.、SA領域では約0.9bpのDNA断片を常法に従って抽出、調製した。これらのDNA断片をポリヌクレオチドキナーゼ(宝酒造(株)製)によりリン酸化した後、HincIIで切断後脱リン酸化処理したpUC19ベクターに宝酒造(株)のDNA Ligation Kit Ver.2を用いて16℃、終夜反応を行い、連結した。これらを用いて常法に従い大腸菌を形質転換し、得られた形質転換体にPCR断片が挿入されていることを、得られたコロニーを前述と同じ条件でPCRすることによって確認し、PCR断片の挿入されたプラスミドを常法によって調製した。これらのプラスミドをシークエンスすることにより、得られた断片がそれぞれの遺伝子の塩基配列であることを確認した。
【0091】
実施例3. 遺伝子導入用プラスミドの作製
遺伝子導入用プラスミドには、トランスポゾンpiggyBacの一対の逆向き反復配列の間に、ネコインターフェロン−ω遺伝子の発現カセットを挿入した遺伝子構造を含むプラスミドを用いた。
【0092】
すなわち、米国特許第6218185号に開示されるプラスミドp3E1.2よりtransposaseをコードする領域を取り除き、そのBgl II部位およびHpa I部位を平滑化しネコインターフェロン−ω遺伝子の発現カセットを挿入した。
【0093】
本実施例における遺伝子発現カセットの構成は、セリシンプロモーター・ネコインターフェロンーω・セリシンポリAシグナル領域(P・IC・SA)、もしくはセリシンプロモーター・セリシン遺伝子第一エキソン・第一イントロン・第二エキソン領域・ネコインターフェロンーω・セリシンポリAシグナル領域(SP・IC・SA)である。
【0094】
以下に具体的な方法を示す。
【0095】
P・IC・SAコンストラクトの作製は以下の手法により行った。実施例2で調製したネコインターフェロンーω(IC領域)を持つプラスミドをSal IとHind IIIにより切断し、ここにセリシンプロモーターを持つプラスミドからSal IとHind IIIにより切り出した約1kbp.断片(P領域)を挿入した。さらにこれをBamH Iにより切断し、ここにセリシンポリAシグナル領域を持つプラスミドからBamH Iにより切り出した約0.9kbp.断片(SA領域)を挿入した。このP・IC・SAを持つプラスミドをAsc Iで切断し、切り出した約2.5kbp断片を宝酒造(株)T4 DNA Polymeraseにより平滑化したものと、p3E1.2をBgl II、Hpa Iで切断し、750bpの遺伝子断片を除去後、平滑化、脱リン酸化処理したものとを連結し、P・IC・SA遺伝子カセットを含む遺伝子導入用コンストラクトを作製した。
【0096】
SP・IC・SAコンストラクトの作製は以下の手法により行った。実施例2で調製したネコインターフェロンーω(IC領域)を持つプラスミドをSal IとHind IIIにより切断し、ここにセリシンプロモーター・セリシン遺伝子第一エキソン・第一イントロン・第二エキソン領域を持つプラスミドからSal IとHind IIIにより切り出した約3.5kbp.断片(SP領域)を挿入した。
【0097】
さらにこれをBamH Iにより切断し、ここにセリシンポリAシグナル領域を持つプラスミドからBamH Iにより切り出した約0.9kbp.断片(SA領域)を挿入した。このSP・IC・SAを持つプラスミドをAsc Iで切断し、切り出した約5kbp断片を宝酒造(株)T4 DNA Polymeraseにより平滑化したものと、p3E1.2をBgl II、Hpa Iで切断し、750bpの遺伝子断片を除去後、平滑化、脱リン酸化処理したものとを連結し、SP・IC・SA遺伝子カセットを含む遺伝子導入用コンストラクトを作製した。
P・IC・SA遺伝子導入用コンストラクト、SP・IC・SA遺伝子導入用コンストラクトをQIAGEN Plasmid Maxi Kitを用い、添付のプロトコールに従って精製した。
【0098】
実施例4 ピギーバックトランスポゼースタンパク質の調製
(1)遺伝子のクローニングおよび発現ベクターの作製
ピギーバックトランスポゼース遺伝子のクローニングには、米国特許6218185号公報で開示されているピギーバックトランスポゼース遺伝子の塩基配列を参考にオリゴヌクレオチドプライマーを合成した。プライマーの端には後の遺伝子操作のために制限酵素切断部位を付加した。
【0099】
ピギーバックトランスポゼースタンパク質遺伝子のクローニングには、プライマー9(配列番号9)とプライマー10(配列番号10)の2種類のプライマーを用い、米国特許6218185号公報により開示されるプラスミドp3E1.2をテンプレートとして用いたPCRにより取得した。
【0100】
PCRは0.2mlのミクロ遠心チューブを用い、鋳型DNAを10ng、各プライマーを50pmol、添付の10×PCRバッファーを10μl、1mM MgCl、0.2mM dNTPs、2単位KODplusとなるように各試薬を加え、全量を100μlとした。DNAの変性条件を94℃、30秒、プライマーのアニーリング条件を60℃、30秒、DNAプライマーの伸長反応条件を72℃、3分の各条件でBioRad社のサーマルサイクラーを用い、30サイクル反応させた。この反応液を1%アガロースゲルにて電気泳動し、約1.8kbpのDNA断片を常法に従って抽出、調整した。
【0101】
このDNA断片をポリヌクレオチドキナーゼ(宝酒造(株)製)によりリン酸化した後、HincIIで切断後脱リン酸化処理したpUC19ベクターに宝酒造(株)のDNAライゲーションキットVer.2を用いて16℃、終夜反応を行い、連結した。これを用いて常法に従い大腸菌を形質転換し、得られた形質転換体にPCR断片が挿入されていることを、得られたコロニーを前述と同じ条件でPCRすることによって確認し、PCR断片の挿入されたプラスミドを常法によって調整した。このプラスミドをシークエンスすることにより、得られた断片が遺伝子の塩基配列であることを確認した。
【0102】
このプラスミドを、NcoI、およびBamHIで消化し、得られた1.8kbpのNcoI/BamHI断片を、予めNcoI、およびBamHIで消化しておいたpTV118N(宝酒造(株)製)のNcoI/BamHI間隙に常法に従ったライゲーション反応により挿入し、得られたプラスミドをpTV−piggyと命名した。このプラスミドを導入した大腸菌を培養することで、ピギーバックトランスポゼースタンパク質のN末端アミノ酸配列に10個のヒスジチン残基が付加された分子量約70kDaの組換えピギーバックトランスポゼースタンパク質を生産することができる。
【0103】
(2)組換えピギーバックトランスポゼースタンパク質の産生
pTV−piggyでE.coli BL21株をアンピシリン耐性に形質転換し、得られた形質転換体をそれぞれBL21−piggy株と命名した。
【0104】
次にBL21−piggy株で、組換えピギーバックトランスポゼースタンパク質を産生させた。まず、BL21−piggy株を50μg/mlのアンピシリンナトリウムを含んだ滅菌LB培地(Sambrook, J. et al., 2001、Molecular Cloning 3rd. edition, Cold Spring Harbor Lab. Press)(LB-amp培地)5mlに1白金耳植菌し、37℃で24時間振とうして前培養を行った。
【0105】
この前培養液をLB-amp培地50mlに全量植菌し、37℃、振幅30cmで、180rpmの条件下で3時間培養した後に1mM IPTG(isopropyl-1-thio-β-D-galactoside)添加し、更に4時間培養した。対照実験として、BL21をpTV118Nで形質転換した形質転換体を対照として用い同様の培養を行った。こうして得られた菌体を集め、5mlのTBS緩衝液(宝酒造製)に再懸濁後、超音波破砕および遠心分離により細胞破砕液を調製した。この細胞破砕液をSDS-PAGEで分画し、Penta-His Antibody抗体(QIAGEN社製)でウエスタンブロッティングを行った結果、BL21−piggy株由来の細胞破砕液から、分子量約70kDaの組み換えピギーバックトランスポゼースタンパク質を検出した。
【0106】
(3)組換えピギーバックトランスポゼースタンパク質の精製
この組み換えタンパク質は、N末端アミノ酸配列に10個のヒスチジン残基があることから、ニッケルイオンとの相互作用を利用した精製を行った。
【0107】
まず、10mlのキレーティング セファロース ファースト フロー(Chilating Sepharose Fast Flow)担体(アマシャム バイオサイエンス社製)を充填したカラムシステムを構築した。このカラムに50mlの50mM 硫酸ニッケル水溶液、50mlのTBS緩衝液の順で流した後、(2)と同様の方法で得られたBL21−piggy株の500ml培溶液由来の50ml細胞破砕液を流した。その後、100mlの5mM イミダゾールを含むTBS緩衝液、100mlの50mM イミダゾールを含むTBS緩衝液をこの順序で流した。更に50mlの600mM イミダゾールを含むTBS緩衝液を流した。カラムに流した各々の緩衝液を(2)と同様の方法でウエスタンブロッティングを行ったところ、600mM イミダゾールを含むTBS緩衝液に約70kDaタンパク質を検出した。また、カラムに流した各々の緩衝液をSDS-PAGEし、クマシーブリリアントブルーで染色したところ、600mM イミダゾールを含むTBS緩衝液から、約70kDaの単一バンドを検出し、この精製タンパク質は組換えピギーバックトランスポゼースタンパク質であることを確認した。透析によりイミダゾールを除去した後、ウシ血清アルブミンを標準タンパク質として、Pierce社 BCA試薬を用いてタンパク質濃度を定量した。
【0108】
実施例5. 遺伝子組換えカイコの作製
実施例3に記載の遺伝子導入用プラスミドと実施例4に記載ピギーバックトランスポゼースタンパク質を各200μg/ml含んだ0.5mMリン酸バッファー(pH7.0)・5mMKCl溶液を調製し、3〜20nlを 産卵後4時間以内のカイコ卵500個に対してマイクロインジェクションした。
【0109】
そのカイコ卵より孵化した幼虫を飼育し、得られた成虫(G0)を群内で掛け合わせ得られた次世代(G1)を4齢時にその体液を注射用針(21G)で採取し、PCRにより遺伝子の導入をスクリーニングした。PCRは配列番号5および配列番号6のプライマーを用いて宝酒造(株)製のPremix Taqにより行った。すなわち、Premix Taqを最終濃度2倍希釈、プライマーそれぞれ0.5μMとなるように調製した液を20μLずつ分注し、体液を0.5〜2μL加え、DNAの変性条件を94℃、30秒、プライマーのアニーリング条件を55℃、30秒、DNAプライマーの伸長反応条件を72℃、1分の各条件でBioRad社のサーマルサイクラーを用い、30サイクル反応させた。これらの反応液を1%アガロースゲルにて電気泳動し、約580bpのDNA断片が確認されたものを、遺伝子導入陽性と判断した。その結果、染色体中にネコインターフェロンω遺伝子の発現カセットが導入された遺伝子組換えカイコが得られた。
【0110】
実施例6. ウエスタン解析による絹糸中の組換えタンパク質の測定
絹糸への外来タンパク質すなわちネコインターフェロンωの分泌を調べた。
非形質転換カイコ、形質転換カイコ(P・IC・SA遺伝子導入形質転換カイコ、SP・IC・SA遺伝子導入形質転換カイコ)の繭を各10mg量り採り、絹糸(フィブロイン層、セリシン層)を完全に溶解する60%リチウムチオシアネイト(LiSCN)4mlを加え攪拌後、終夜室温に静置し繭を溶解した。これを8M尿素・2%SDS・5%2-メルカプトエタノールで10培希釈したものをサンプルとし、、ECL PlusTM Western blotting Kit (アマシャムファルマシア社製)を用い、添付のプロトコールに従ってネコインターフェロンの検出を行った。その結果をモレキュラーイメージャー(BioRad社製)を用いてシグナル強度を測定し、濃度既知のネコインターフェロンのシグナル強度と比較しタンパク質含量を測定した。また、非形質転換カイコ、形質転換カイコ(P・IC・SA遺伝子導入形質転換カイコ、SP・IC・SA遺伝子導入形質転換カイコ)の繭に、リン酸ナトリウムバッファーを添加してセリシン層のみを可溶化し、これをサンプルとして同様にウエスタンブロッティング法でネコインターフェロンの検出を行った。
【0111】
その結果非形質転換カイコおよびP・IC・SA遺伝子導入形質転換カイコの繭からはシグナルが検出されなかったのに対しSP・IC・SA遺伝子導入形質転換カイコの繭からはシグナルが検出され、ネコインターフェロンタンパク質が絹糸中へと分泌されていることが確認できた。またその含量はSP・IC・SA形質転換カイコでは約0.8〜2.0%であった。これはカイコ一頭当たりの重量に換算すると0.4〜2mgであった。この結果を図1に示す。また、セリシン層のみを可溶化し、可溶性画分と不溶性画分に分画したところ、可溶性画分にネコインターフェロンタンパク質が確認できた。この結果を図2に示す。
【0112】
実施例7.ウエスタン解析による中部絹糸腺組織中の組換えタンパク質の発現解析
非形質転換カイコ、形質転換カイコ(P・IC・SA遺伝子導入形質転換カイコ、SP・IC・SA遺伝子導入形質転換カイコ)の中部絹糸腺組織を回収し、組織中でのネコインターフェロンωの発現をウエスタン解析により調べた。カイコ中部絹糸腺を100mMリン酸ナトリウムバッファー(pH7.0)中でホモジナイズし、遠心分離後上清を回収しサンプルとし、ECL PlusTM Western blotting Kit (アマシャムファルマシア社製)を用い、添付のプロトコールに従ってネコインターフェロンの検出を行った。すなわち、ブロッティングしたメンブレンをブロッキング溶液(5%スキムミルク・0.1%Tween20・PBS)中で4℃終夜ブロッキングした。
【0113】
メンブレンをTPBS(0.1%Tween20・PBS)で2回洗浄し、TPBSで1000倍希釈した抗ネコインターフェロン抗体で室温1時間処理した。メンブレンをTPBSで2回洗浄し、更にTPBSで5分間3回洗浄した。その後TPBSで10000倍希釈した後、HRPラベル抗ラビットIgG抗体で室温1時間処理した。メンブレンをTPBSで2回洗浄し、更にTPBSで5分間3回洗浄した後、ECL PlusTM Western blotting Detection System(アマシャムファルマシア社製)の検出試薬(溶液A+溶液B)を加えた。発光をHyperfilmTMECLTM に露光、現像した。シグナルの比較には、BIORAD社製モレキュラーイメージャーFXProを用いた。
【0114】
その結果非形質転換カイコおよびP・IC・SAコンストラクト導入形質転換カイコの中部絹糸腺組織からはシグナルが検出されなかったのに対し、SP・IC・SAコンストラクト導入形質転換カイコの絹糸腺組織からはシグナルが検出された。本実験の結果から、カイコ中部絹糸腺細胞内でのタンパク質の合成もしくは遺伝子発現の飛躍的な向上に、セリシンプロモーター以外の領域すなわちセリシン遺伝子第一エキソン・第一イントロン・第二エキソン領域が重要な役割を果たしている事が再確認された。
【0115】
実施例8.抗原タンパク質(イヌパルボウイルスVP2)の遺伝子の調製
用いた遺伝子は既知の配列を利用して、その両端配列のプライマーを作製し、適当なDNAソースを鋳型としてPCRを行うことにより取得した。プライマーの端には後の遺伝子操作のために制限酵素切断部位を付加した。
【0116】
イヌパルボウイルスVP2遺伝子(GeneBank登録番号AB128923の塩基番号1〜1755番目:以下VP2領域)はイヌパルボウイルスVP2遺伝子をコードするCanine parvovirusを鋳型にプライマー11(配列番号11)とプライマー12(配列番号12)の2種類のプライマーを用いてPCRにより取得した。
【0117】
反応液を1%アガロースゲルにて電気泳動し、VP2領域は約1700bpのDNA断片を常法に従って抽出、調製した。このDNA断片をポリヌクレオチドキナーゼ(宝酒造(株)製)によりリン酸化した後、HincIIで切断後脱リン酸化処理したpUC19ベクターに宝酒造(株)のDNA Ligation Kit Ver.2を用いて16℃、終夜反応を行い、連結した。これを用いて常法に従い大腸菌を形質転換し、得られた形質転換体にPCR断片が挿入されていることを、得られたコロニーを前述と同じ条件でPCRすることによって確認し、PCR断片の挿入されたプラスミドを常法によって調製した。このプラスミドをシークエンスすることにより、得られた断片がそれぞれの遺伝子の塩基配列であることを確認した。
【0118】
実施例9. 遺伝子導入用プラスミドの作製
遺伝子導入用プラスミドには、トランスポゾンpiggyBacの一対の逆向き反復配列の間に、イヌパルボウイルスVP2遺伝子の発現カセットを挿入した遺伝子構造を含むプラスミドを用いた。
すなわち、米国特許第6218185号に開示されるプラスミドp3E1.2よりtransposaseをコードする領域を取り除き、そのBgl II部位およびHpa I部位を平滑化しイヌパルボウイルスVP2遺伝子の発現カセットを挿入した。
【0119】
本実施例における遺伝子発現カセットの構成は、セリシンプロモーター・イヌパルボウイルスVP2・セリシンポリAシグナル領域(P・VP2・SA)、もしくはセリシンプロモーター・セリシン遺伝子第一エキソン・第一イントロン・第二エキソン領域・イヌパルボウイルスVP2・セリシンポリAシグナル領域(SP・VP2・SA)である。
以下に具体的な方法を示す。
【0120】
P・VP2・SAコンストラクトの作製は以下の手法により行った。実施例8で調製したイヌパルボウイルスVP2(VP2領域)を持つプラスミドをSal IとHind IIIにより切断し、ここにセリシンプロモーターを持つプラスミドからSal IとHind IIIにより切り出した約1kbp.断片(P領域)を挿入した。さらにこれをBamH Iにより切断し、ここにセリシンポリAシグナル領域を持つプラスミドからBamH Iにより切り出した約0.9kbp.断片(SA領域)を挿入した。このP・VP2・SAを持つプラスミドをAsc Iで切断し、切り出した約2.5kbp断片を宝酒造(株)T4 DNA Polymeraseにより平滑化したものと、p3E1.2をBgl II、Hpa Iで切断し、750bpの遺伝子断片を除去後、平滑化、脱リン酸化処理したものとを連結し、P・VP2・SA遺伝子カセットを含む遺伝子導入用コンストラクトを作製した。
【0121】
SP・VP2・SAコンストラクトの作製は以下の手法により行った。実施例7で調製したイヌパルボウイルスVP2(VP2領域)を持つプラスミドをSal IとHind IIIにより切断し、ここにセリシンプロモーター・セリシン遺伝子第一エキソン・第一イントロン・第二エキソン領域を持つプラスミドからSal IとHind IIIにより切り出した約3.5kbp.断片(SP領域)を挿入した。
【0122】
さらにこれをBamH Iにより切断し、ここにセリシンポリAシグナル領域を持つプラスミドからBamH Iにより切り出した約0.9kbp.断片(SA領域)を挿入した。このSP・VP2・SAを持つプラスミドをAsc Iで切断し、切り出した約7kbp断片を宝酒造(株)T4 DNA Polymeraseにより平滑化したものと、p3E1.2をBgl II、Hpa Iで切断し、750bpの遺伝子断片を除去後、平滑化、脱リン酸化処理したものとを連結し、SP・VP2・SA遺伝子カセットを含む遺伝子導入用コンストラクトを作製した。
【0123】
P・VP2・SA遺伝子導入用コンストラクト、SP・VP2・SA遺伝子導入用コンストラクトをQIAGEN Plasmid Maxi Kitを用い、添付のプロトコールに従って精製した。
【0124】
実施例10. 遺伝子組換えカイコの作製
実施例9に記載の遺伝子導入用プラスミドと実施例4に記載のピギーバックトランスポゼースタンパク質を各200μg/ml含んだ0.5mMリン酸バッファー(pH7.0)・5mMKCl溶液を調製し、3〜20nlを産卵後4時間以内のカイコ卵500個に対してマイクロインジェクションした。
【0125】
そのカイコ卵より孵化した幼虫を飼育し、得られた成虫(G0)を群内で掛け合わせ得られた次世代(G1)を4齢時にその体液を注射用針(21G)で採取し、PCRにより遺伝子の導入をスクリーニングした。PCRは配列番号11および配列番号12のプライマーを用いて宝酒造(株)製のPremix Taqにより行った。すなわち、Premix Taqを最終濃度2倍希釈、プライマーそれぞれ0.5μMとなるように調製した液を20μLずつ分注し、体液を0.5〜2μL加え、DNAの変性条件を94℃、30秒、プライマーのアニーリング条件を55℃、30秒、DNAプライマーの伸長反応条件を72℃、2分の各条件でBioRad社のサーマルサイクラーを用い、30サイクル反応させた。これらの反応液を1%アガロースゲルにて電気泳動し、約1700bpのDNA断片が確認されたものを、遺伝子導入陽性と判断した。その結果、染色体中にイヌパルボウイルスVP2遺伝子の発現カセットが導入された遺伝子組換えカイコが得られた。
【0126】
実施例11. ウエスタン解析による絹糸中の組換えタンパク質の測定
絹糸への外来タンパク質すなわち抗原タンパク質(イヌパルボウイルスVP2)の分泌を調べた。
非形質転換カイコ、形質転換カイコ(P・VP2・SA遺伝子導入形質転換カイコ、SP・VP2・SA遺伝子導入形質転換カイコ)の繭を各10mg量り採り、絹糸(フィブロイン層、セリシン層)を完全に溶解する60%リチウムチオシアネイト(LiSCN)4mlを加え攪拌後、終夜室温に静置し繭を溶解した。これを8M尿素・2%SDS・5%2-メルカプトエタノールで10培希釈したものをサンプルとし、ECL PlusTM Western blotting Kit (アマシャムファルマシア社製)を用い、添付のプロトコールに従って抗原タンパク質(イヌパルボウイルスVP2)の検出を行った。その結果をモレキュラーイメージャー(BioRad社製)を用いてシグナル強度を測定し、濃度既知の抗原タンパク質(イヌパルボウイルスVP2)のシグナル強度と比較しタンパク質含量を測定した。また、非形質転換カイコ、形質転換カイコ(P・VP2・SA遺伝子導入形質転換カイコ、SP・VP2・SA遺伝子導入形質転換カイコ)の繭に、PBSを添加してセリシン層のみを可溶化し、これをサンプルとして同様にウエスタンブロッティング法でイヌパルボウイルスVP2の検出を行った。
【0127】
その結果非形質転換カイコおよびP・VP2・SA遺伝子導入形質転換カイコの繭からはシグナルが検出されなかったのに対しSP・VP2・SA遺伝子導入形質転換カイコの繭からはシグナルが検出され、抗原タンパク質(イヌパルボウイルスVP2)が絹糸中へと分泌されていることが確認できた。またその含量はSP・VP2・SA形質転換カイコでは約0.1〜1.2%であった。これはカイコ一頭当たりの重量に換算すると0.1〜1.2mgであった。この結果を図3に示す。また、セリシン層のみを可溶化処理し、可溶性画分と不溶性画分に分画したところ、可溶性画分に抗原タンパク質(イヌパルボウイルスVP2)が確認できた。この結果を図4に示す。
【0128】
実施例12.絹糸中からの組換えタンパク質の抽出
絹糸から下記の方法で外来タンパク質すなわち抗原タンパク質(イヌパルボウイルスVP2)の抽出・回収を実施した。絹糸(セリシン層)が解け、外来タンパク質が回収できる溶媒として以下に示す水溶液を用いた。
【0129】
絹糸(フィブロイン層、セリシン層)を完全に溶解する水溶液:60%LiSCN水溶液
セリシン層のみを溶解する水溶液:リン酸水溶液(緩衝液)、1%SDS水溶液、アルカリイオン水
上記水溶液各100mLに、形質転換カイコ(SP・VP2・SA遺伝子導入形質転換カイコ)の繭を1g量り採り、室温で12時間攪拌しながら溶解させた。溶解液を一部とり、ECL PlusTM Western blotting Kit (アマシャムファルマシア社製)を用い、添付のプロトコールに従って抗原タンパク質(イヌパルボウイルスVP2)の検出を行った。その結果をモレキュラーイメージャー(BioRad社製)を用いてシグナル強度を測定した。また、非形質転換カイコの繭に、絹糸(フィブロイン層、セリシン層)を完全に溶解する60%LiSCN水溶液で可溶化し、これをサンプルとして同様にウエスタンブロッティング法でイヌパルボウイルスVP2の検出を行った。その結果を図5、表1に示す。
【0130】
【表1】

【0131】
図5、表1の結果から、アルカリイオン水で溶解させたものがもっともセリシン層を溶解し、外来タンパク質の抽出が高いことが判明した。
【0132】
評価方法は、形質転換カイコ(SP・VP2・SA遺伝子導入形質転換カイコ)の繭を絹糸(フィブロイン層、セリシン層)を完全に溶解する60%LiSCN溶液で可溶化したサンプルのシグナル強度を+++、非形質転換カイコの繭を絹糸(フィブロイン層、セリシン層)を完全に溶解する60%LiSCN水溶液で可溶化したサンプルのシグナル強度を−として、その他のサンプルのシグナル強度を相対的に示した。
【0133】
そこで、アルカリイオン水で得られた抽出液を、限外ろ過膜を用いて濃縮し、20mMリン酸緩衝にバッファー交換を行った。その溶液をブルーセファロース担体に吸着させ、20mMリン酸緩衝で洗浄後、塩化ナトリウムを含む20mMリン酸緩衝液で溶出することにより、イヌパルボウイルスVP2抗原を高純度に得ることができた。図6に銀染色解析の結果を示す。
【産業上の利用可能性】
【0134】
セリシン遺伝子の5'末端部分のDNA配列を外来タンパク質遺伝子に融合させた発現用遺伝子カセットを絹糸腺細胞などに導入することで、大量の外来タンパク質を絹糸腺細胞内、絹糸腺特に中部絹糸線、さらには絹糸のセリシン層にまで産生させることが可能となった。この新手法により、組換えバキュロウイルスを用いることなく、絹糸腺を利用して外来タンパク質生産を生産させることで精製の容易な外来タンパク質生産技術を確立した。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】図1は、絹糸への組換えタンパク質の産生をウエスタン解析により解析した図であり、電気泳動を示す図面代用写真である。
【図2】図2は、絹糸のセリシン層のみを可溶化したサンプルをウエスタン解析により解析した図であり、電気泳動を示す図面代用写真である。
【図3】図3は、絹糸への組換えタンパク質の産生をウエスタン解析により解析した図であり、電気泳動を示す図面代用写真である。
【図4】図4は、絹糸のセリシン層のみを可溶化したサンプルをウエスタン解析により解析した図であり、電気泳動を示す図面代用写真である。
【図5】図5は、絹糸のセリシン層を可溶化し組換えタンパク質の抽出をウエスタン解析により解析した図であり、電気泳動を示す図面代用写真である。
【図6】図6は、絹糸のセリシン層を可溶化し組換えタンパク質の抽出した水溶液をカラムクロマトグラフィーで精製し銀染色により解析した図であり、電気泳動を示す図面代用写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)絹糸腺で発現するプロモーターと、
(2)前記(1)の下流に連結された、セリシン遺伝子の5’末端部分を外来タンパク質構造遺伝子の5’側に融合させた遺伝子とを含む外来タンパク質の発現用遺伝子カセット。
【請求項2】
前記セリシン遺伝子の5’末端部分が、セリシン遺伝子の第1エキソン、第1イントロン、第2エキソンの一部を含むことを特徴とする請求項1に記載の外来タンパク質の発現用遺伝子カセット。
【請求項3】
前記セリシンの第1エキソンと第2エキソンを合わせた部分が、セリシン遺伝子の分泌シグナル遺伝子領域であることを特徴とする請求項2記載の外来タンパク質の発現用遺伝子カセット。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の外来タンパク質の発現用遺伝子カセットにおいて、外来タンパク質の発現用遺伝子カセットに含まれる(1)絹糸腺プロモーターおよび/または(2)セリシン遺伝子の5’末端部分が実質的に同等の機能を有する範囲において1個もしくは数個の塩基の付加、欠失もしくは他の塩基への置換を有することを特徴とする外来タンパク質の発現用遺伝子カセット。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の外来タンパク質の発現用遺伝子カセットにおいて、外来タンパク質の発現用遺伝子カセットに含まれる(1)絹糸腺プロモーター部分および/または(2)セリシン遺伝子の5’末端部分に代えて、該部分とストリンジェントな条件でハイブリダイズする遺伝子であって、該部分と実質的に同等の機能を有する遺伝子を有することを特徴とする外来タンパク質の発現用遺伝子カセット。
【請求項6】
前記絹糸腺で発現するプロモーターが、セリシン遺伝子のプロモーター、フィブロインH鎖遺伝子のプロモーターおよびフィブロインL鎖遺伝子のプロモーターのうちから選ばれる少なくとも一つのプロモーターであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の外来タンパク質の発現用遺伝子カセット。
【請求項7】
外来タンパク質発現遺伝子カセットの下流に、セリシン遺伝子のポリA付加領域、フィブロインH鎖遺伝子のポリA付加領域およびフィブロインL鎖遺伝子のポリA付加領域のうちから選ばれる少なくとも一つのポリA付加領域が存在することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の外来タンパク質の発現用遺伝子カセット。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の外来タンパク質の発現用遺伝子カセットの両側に、1対のピギーバック(piggyBac)トランスポゾンの逆位反復配列が存在することを特徴とする昆虫細胞の染色体への遺伝子導入用遺伝子カセット。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の外来タンパク質の発現用遺伝子カセットを含むことを特徴とする昆虫細胞用発現ベクター。
【請求項10】
請求項8に記載の昆虫細胞の染色体への遺伝子導入用遺伝子カセットを含むことを特徴とする昆虫細胞用遺伝子導入ベクター。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の外来タンパク質の発現用遺伝子カセットが染色体に導入されており、かつ、絹糸腺または絹糸に外来タンパク質を産生する能力を持つ組換えカイコ。
【請求項12】
請求項11に記載の組換えカイコが産生する外来タンパク質を含む絹糸。
【請求項13】
請求項9または10に記載の昆虫細胞用遺伝子導入ベクターを昆虫細胞へ導入することを特徴とする外来タンパク質の製造方法。
【請求項14】
昆虫細胞が鱗翅目昆虫由来であることを特徴とする請求項12に記載の外来タンパク質の製造方法。
【請求項15】
昆虫細胞がカイコガ(Bombyx mori)由来であることを特徴とする請求項13に記載の外来タンパク質の製造方法。
【請求項16】
昆虫細胞がカイコガ(Bombyx mori)の絹糸腺細胞であることを特徴とする請求項14に記載の外来タンパク質の製造方法。
【請求項17】
ピギーバック(piggyBac)トランスポゼースのDNA転移活性を利用して、外来タンパク質の発現用遺伝子カセットを染色体に組み込んだ組換えカイコを作製し、得られた組換えカイコの絹糸腺または絹糸に外来タンパク質を産生させた後、その絹糸腺または絹糸から外来タンパク質を回収することを特徴とする請求項13に記載の外来タンパク質の製造方法。
【請求項18】
昆虫細胞用遺伝子導入ベクターと、ピギーバック(piggyBac)トランスポゼースを産生するDNAもしくはRNAを同時にカイコ卵にマイクロインジェクションすることによって外来タンパク質の発現用遺伝子カセットを染色体に組み込んだ組換えカイコを作製することを特徴とする請求項17に記載の外来タンパク質製造方法。
【請求項19】
請求項12に記載の絹糸を水溶液で懸濁し、セリシン層が溶解した水溶液中から有用タンパク質を回収することを特徴とする外来タンパク質製造方法。
【請求項20】
水溶液が水、または緩衝液、もしくはアルカリ性水溶液から選ばれる一種以上であることを特徴とする請求項19に記載の外来タンパク質製造方法。
【請求項21】
アルカリ性水溶液が水を電気分解して陰極近傍の水溶液を集めたアルカリイオン水であることを特徴とする請求項20記載の外来タンパク質製造方法。
【請求項22】
上記記載の水溶液が界面活性剤を含むことを特徴とする請求項19〜21のいずれか1項記載の外来タンパク質製造方法。
【請求項23】
絹糸を溶解した水溶液から、カラムクロマトグラフィーを用いて外来タンパク質を回収することを特徴とする請求項19から22のいずれか1項記載の外来タンパク質製造方法。
【請求項24】
外来タンパク質が、水溶液に可溶性であることを特徴とする請求項11から23のいずれか1項記載の外来タンパク質製造方法。
【請求項25】
外来タンパク質がサイトカイン、抗原タンパク質のいずれかであることを特徴とする請求項11から24のいずれか1項記載の外来タンパク質製造方法。
【請求項26】
サイトカインがインターフェロン、抗原タンパク質がウイルス抗原タンパク質であることを特徴とする請求項25記載の外来タンパク質製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−228814(P2007−228814A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−51076(P2006−51076)
【出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】