説明

外来性植物駆除工法

【目的】
本発明は栽培、観賞用等の目的によって日本以外の国から導入されて、日本国内で繁殖して問題となっている外来性物(植物)について,その生育土壌環境特性を有機質資材によって変化させることによって繁殖を減退、植生を衰退させることを可能としたものである。
【解決手段】
外来性植物駆除工法において、有機質資材を燻製した粉状又は粗粒の燻製炭、泥炭腐植土、ピートモス、ココピート、フミン酸及び炭、バーク堆肥、おが屑、稲わら、籾殻、ゼオライトにモル濃度で1.0〜18.0molL-1の硫酸、塩酸、酢酸、竹酢液、木酢液等をしみ込ませて製造し、当該有機質資材を用いた客土又は有機質資材と粗粒砂とを混合して得た客土から成る緑化基盤材を緑化基盤材吹付機で対象地盤に吹き付けることにより、セイタカアワダチソウ等の外来生物を駆除するようにした構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は栽培、観賞用等の目的によって日本以外の国から導入されて、日本国内で繁殖して問題となっている外来性物(植物)について,その生育土壌環境特性を燻製炭等によって変化させることにより、繁殖を減退、植生を衰退させることを可能としたものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に外来性の植物は、日本国内に古くから生育している植物と比較すると、その成長スピードが著しく速いことから在来性の植物の生活圏を短期に脅かす傾向にある。このような対処法としては、セイタカアワダチソウ等の外来性植物を1本々伐採したり、引き抜いたりするような単純作業や引き抜いた後に表面に遮光マットを張って生長を抑制しようとする方法がとられている。また、植物自体が嫌う微生物を増殖させることによって、植物の勢いを減ずる方法もある。
【特許文献1】特開2002−101874号公報の発明
【特許文献2】特開2000−290117号公報の発明
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、上記の従来工法では、短期的に植物を駆逐する機能は有しているものの、周辺からの風散布による種子供給での発芽生育や遮光マットの経年劣化等により中長期的に機能を保持することが困難となっていた。また、植物自体が嫌う微生物についても周辺環境への影響等問題が多くなっていた。
【0004】
そこで、本発明では、外来性の植物が生育している土壌環境を変化させることによって、従来の課題を解決し、且つ発明の目的を達成するようにした。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1は、外来性植物駆除工法において、有機質資材を燻製した粉状又は粗粒の燻製炭、泥炭腐植土、ピートモス、ココピート、フミン酸及び炭、バーク堆肥、おが屑、稲わら、籾殻、ゼオライトにモル濃度で1.0〜18.0molL-1の硫酸、塩酸、酢酸、竹酢液、木酢液等をしみ込ませて成る有機質資材を用いた客土を緑化基盤材吹付機で対象地盤に吹き付けることにより、セイタカアワダチソウ等の外来生物を駆除するようにしたものである。
【0006】
本発明の第2は、第1の発明に係る外来性植物駆除工法において、有機質資材と粗粒砂、又は有機質資材と浄水ケーキを含む粗粒砂を5.0〜95.0%:5.0〜95.0%の割合に設定してハイドロシーダー又はモルタル・コンクリート吹付機等の客土吹付機中で混合して客土を作成し、当該客土吹付機によって対象地盤への吹き付けを行うようにしたものである。
【0007】
発明の第3は、第1の発明に係る外来性植物駆除工法において、有機質資材は、pH(H2O)で3.0〜4.5、電気伝導度が0.05ms/cm以上となる直径が1.0mm程度の粉状のもの及び直径が2.0〜5.0mmの粗粒状のものを含み、且つ塩基飽和度の値は、25.0〜50.0%までの値のものを利活用するものである。
【0008】
発明の第4は、第1の発明に係る外来性植物駆除工法において、有機質資材を燻製した燻製炭の炭化温度を100℃〜300℃までの間とし、変化現象としては、熱減成となり、性質としては,酸性,化学反応性,電気絶縁性,化学吸着性を有するものである。なお、前記の熱減成は、熱処理によって固体の容量が減っていくことを指している。
【発明の効果】
【0009】
本発明は上記の構成であることから,次の効果がある。すなわち、極強酸性で低塩基飽和度の有機質資材は、高い土壌改良効果が期待できる。また、この土壌改良効果の発現によって、外来性の植物が生長や侵入して来にくい土壌環境を中長期的に保持することが可能となる。基材の吹き付けについては、通常の緑化工法で利活用されている吹付機械の使用が可能である。
【0010】
また、本発明にあっては、低い塩基飽和度の有機質資材の使用量を可変させることによって、各種の外来性の植物に対して駆逐対応することが可能となる。
そして、本発明において、低い塩基飽和度の有機質資材に粗粒砂を混合撹拌によて得た客土を緑化基盤材としても外来性の植物の駆逐が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(1)外来性の植物は日本特有の酸性土壌(低塩基飽和度=50%以下)土壌では,その活動が緩慢、衰退することを確認したことにある。そもそも外来性植物は、石灰岩等に見られるような高い塩基飽和度(100%以上)の箇所で、個体数を増やしてきた経緯がある。
(2)竹を500℃以上の炭化高温で処理するとpH(H2O)が9.0以上と高いアルカリ性を示すが、300℃以下で燻製とした場合には著しく酸性となることに着目したことによる。このように酸性化した基材を対象面に吹き付けることによって外来生物が好んでいる高い塩基飽和度の土壌環境か、交換性イオン「酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カリウム(K2O)等」の塩類を追い出して、水素を吸着させることができるのである。
(3)液体状の木酢液や竹酢液では、短期的に同様な効果を発現させることも可能となるが、降雨等で容易に流亡してしまう。この問題を粉末ないし粗粒の燻製炭を用いることにより解決していることにある。また、有機質資材に液体状の木酢液や竹酢液を染み込ませることによっても同様の効果を期待できる。
【実施例1】
【0012】
次に、本発明の実施例を説明する。1は緑化基盤材、2は緑化基盤材1を作るために、有機質資材3に粗粒砂4を混合撹拌してなる客土である。当該有機質資材3は、pH(H2O)で3.0〜4.5、電気伝導度(EC)が0.05ms/cm以上となる直径=1.0mm程度の粉状のもの及び直径=2.0〜5.0mmの粗粒状のものを含み、且つ塩基飽和度の値は、25.0〜50.0%までの値のものを利活用する。4は粗粒砂であり、その粒径は1.0mm〜5.0mm程度のものをとする。また、この有機質資材3は、燻製した粉状又は粗粒の燻製炭、泥炭腐植土、ピートモス、ココピート、フミン酸及び炭、バーク堆肥、おが屑、稲わら、籾殻、ゼオライトにモル濃度で1.0〜18.0molL-1の硫酸、塩酸、酢酸、竹酢液、木酢液等をしみ込ませてなる。
5は有機質資材3・粗粒砂4を混合して得る客土2を計量する計量器、6・6′は緑化基盤材1を吹付機12に搬送するコンベア、7〜9は緑化基盤材1に加えて吹付材を作るための部材である。すなわち、緑化基盤材を地盤と一体化するために例えばナイロン又は生分解プラスチック繊維等を可とし、極細で且つ長さが1.0〜5.0cm程度に短く設定した化学短繊維8を用水9で解繊して混合物7を得る。その他、当該混合物には、化学繊維及び無機系固化剤、粘結剤で作成したものを含むものである。
10は発電機、11はコンプレッサ、12は湿式の緑化基盤材の吹付機であり、ハイドロシーダー又はモルタル吹付機を用いるものとする。13は揚水ポンプ、14は水槽、15は配電盤、16は緑化基盤材1を地盤Gに吹き付ける噴射ノズルを示す。
17は法面に吹き付けた植生基盤1の上に覆設するための養生マットであり、その構成は、植物の成長を妨げないように透過性を有するマット状とし、且つ素材はナイロン、ポリエステル、麻、椰子等を用いることを可とする。
【0013】
「具体的な施工例における施工順序」
(1) 有機質資材3に粗粒砂4を混合撹拌してなる客土2を計量器5で所定量に計量し、これを緑化基盤材1とする。
(2) この緑化基盤材1をコンベア6・6′で吹付機12に搬送して投入する。
(3) 一方、緑化基盤材1の補強材として利用されている束になっている化学短繊維8を用水9と混合して混合物7を得て、吹付機12に投入する。
(4) 緑化しようとする目的の法面や各種造成地等の地盤Gに化学短繊維入りの緑化基盤材を湿式の吹付機12を使って地盤Gに吹き付ける。
(5) 吹き付ける地盤Gの目的に応じて厚さ1.0〜5.0cm程度に吹き付けて緑化基盤Aを形成する。
(6) そして、上記の化学短繊維入り緑化基盤材は、その仕様によっては、降雨に対しての耐性は高いものとなるが、急勾配等で降雨の流速が速い個所においては、法面に吹き付けて形成した植生基盤Aの表面に養生マット17をアンカー等を介して張り付けることで、当該植生基盤の流亡を防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0014】
本発明は、セイタカアワダチソウが覆っている宅地造成地やゴルフ場及び供用されている道路周辺の法面の維持管理に利活用が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】燻製炭を吹き付けて土壌環境を変化させて外来性の植物を駆逐するための模式図である。
【図2】本発明の実施工程を示す概略説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機質資材(3)を燻製した粉状又は粗粒の燻製炭、泥炭腐植土、ピートモス、ココピート、フミン酸及び炭、バーク堆肥、おが屑、稲わら、籾殻、ゼオライトにモル濃度で1.0〜18.0molL-1の硫酸、塩酸、酢酸、竹酢液、木酢液等をしみ込ませて製造し、当該有機質資材を用いた客土(2)を緑化基盤材吹付機(12)で対象地盤(G)に吹き付けることにより、セイタカアワダチソウ等の外来生物を駆除することを特徴とする外来性植物駆除工法。
【請求項2】
有機質資材(3)と粗粒砂(4)、又は有機質資材(3)と浄水ケーキを含む粗粒砂(4)を5.0〜95.0%:5.0〜95.0%の割合に設定してハイドロシーダー又はモルタル・コンクリート吹付機等の客土吹付機(12)中で混合して客土(2)を製造し、当該客土吹付機(12)によって対象地盤(G)への吹き付けを行うようにした請求項1記載の外来性植物駆除工法。
【請求項3】
有機質資材(3)は、pH(H2O)で3.0〜4.5、電気伝導度が0.05ms/cm以上となる直径が1.0mm程度の粉状のもの及び直径が2.0〜5.0mmの粗粒状のものを含み、且つ塩基飽和度の値は、25.0〜50.0%までの値のものを利活用する請求項1記載の外来性植物駆除工法。
【請求項4】
有機質資材(3)を燻製した粉状又は粗目の粉状又は粗粒状の燻製炭の炭化温度を100℃〜300℃までの間とし、変化現象として熱減成となり、性質として酸性、化学反応性、電気絶縁性、化学吸着性を有する請求項1記載の外来性植物駆除工法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−215285(P2009−215285A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−30496(P2009−30496)
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(000170646)国土防災技術株式会社 (23)
【Fターム(参考)】