説明

外来性遺伝子をメチル化する方法

【課題】本発明は、形質転換植物の作出にあたり、導入される外来遺伝子のコピー数を制御することが可能な方法の提供を課題とする。あるいは本発明は、カルスに加え根での外来遺伝子の発現が可能なプロモーターの提供を課題とする。
【解決手段】同じ塩基配列を含む複数のエンハンサーを利用することにより、コピー数に応じて、外来遺伝子のメチル化が増強されることを見出した。その結果、導入コピー数の多い形質転換体においては、外来遺伝子の発現レベルは低下する。外来遺伝子が選択マーカーであれば、低コピー数の個体を優先的に拾い出すことができる。更に本発明は、カルスのみならず、根での遺伝子発現を誘導しうるプロモーターを提供した。カルスから発生する根が、選択剤によって枯死し、形質転換体を失う恐れが無い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物細胞への外来性遺伝子の導入技術に関する。
【背景技術】
【0002】
形質転換体植物を作出する場合、導入したい目的遺伝子以外に選択マーカー遺伝子も同時に導入する必要がある。このため、現在、作出された形質転換植物の多くは選択マーカー遺伝子を発現している。しかし、特に形質転換体植物が農作物である場合、選択マーカー遺伝子が食用となる組織で発現することは不必要かつ望ましくない形質である。そのため選択マーカー遺伝子を発現しない形質転換植物体を取得するための工夫がいくつか考案されている。
そのうちの一つは、二種類のT-DNAカセットを用いる方法である(非特許文献1〜7)。この方法においては、まず、導入したい遺伝子と選択マーカー遺伝子を別々のT-DNAカセットに挿入して共形質転換することにより両遺伝子を独立した箇所に組み込ませる。そして、次世代で両遺伝子を分離させて選択マーカーフリーの個体の選抜を行う。この方法には、多くの時間と労力を必要とするという欠点が存在する。
【0003】
二つ目の方法としては、形質転換後にcre/lox系やR/RS系を利用した部位特異的切り出しによって選択マーカー遺伝子を除去する方法が挙げられる(非特許文献8〜11)。この方法においては、選択マーカーの切り出しを誘導するcre遺伝子やR遺伝子を発現させるタイミングの制御が重要なポイントとなる。1つの解決策として、誘導性のプロモータにこれら遺伝子を連結し、適切な時期に遺伝子発現の誘導を行うことで、選択マーカー遺伝子の切り出しを制御している。
【0004】
三つ目の方法としては、トウモロコシのAc/Dsトランスポゾンを利用してマーカーフリーの個体を取得する方法が挙げられる(非特許文献12−13)。しかし、この方法の場合も、一つ目の方法と同様に、目的の個体は次世代で初めて取得することができるため、時間と労力がかかり過ぎるという難点がある。
【0005】
四つ目の方法としては、カルス細胞でのみ活性化し、カルス細胞から再生された植物体では活性化しないプロモータを用いる方法が挙げられる。この方法に関しては、最近になり、カルスの組織でのみ発現するプロモータを利用したモデル実験での報告がなされた(特許文献1、非特許文献14)。この方法には、カルス細胞の形質転換後に上記の方法のような煩雑な操作を行う必要がないという利点がある。
【0006】
さて、一般に、植物の形質転換体を作るときには、次の2つの条件を満たすことが課題とされてきた。
I. ゲノムへの導入位置を制御すること
II.導入遺伝子の数を制御すること
これらの課題のうち、ゲノムへの導入位置(I)は、相同組み換え技術によってあるていど制御できるようになった。外来性の遺伝子がランダムにゲノムに導入されると、本来の遺伝的性質が破壊される可能性もある。しかし相同組み換えを利用すれば、ゲノム内の予め塩基配列がわかっている位置に外来性遺伝子を導入することができる。相同組み換え技術によって、ゲノムの塩基配列が完全に把握されている植物であれば、理論的には、外来性遺伝子の導入位置の予測が可能となった。
しかし、導入遺伝子の数の制御については、現在のところ有効な対策は知られていない。一般に、複数コピーの外来性遺伝子が導入されると、植物育種上の問題を含む、さまざまな問題の原因につながると認識されている。
【0007】
【特許文献1】特開2003−265182
【特許文献2】PCTパンフレットWO 2004/81213
【非特許文献1】Depicker A, Herman L, Jacobs A, Schell J, Van Montagu M(1985) Mol Gen Genet 201: 477-484
【非特許文献2】McKnight TD, Lillis MT, Simpson RB(1987) Plant Mol Biol 8:439-445
【非特許文献3】De Block M, Debrouwer D(1991) Theor Appl Genet 82:257-263
【非特許文献4】De Neve M, De Buck S, Jacobs A, Van Montagu M, Depicker A(1997) Plant J 11:15-29
【非特許文献5】Komari T, Hiei Y, Saito Y, Murai N, Kumashiro T(1996) Plant J 10:165-174
【非特許文献6】De Framond AJ, Back EW, Chilton WS, Kayes L, Chilton MD(1986) Mol Gen Genet 202:125-131
【非特許文献7】Deley M, Knauf VC, Summerfelt KR,Turner JC(1998) Plant Cell Rep 17:489-496
【非特許文献8】Odell J, Caimi P, Sauer B, Russell S(1990) Mol Gen Genet 223:369-378
【非特許文献9】Dale EC, Ow DW(1991) Proc Natl Acad Sci USA 88:10558-10562
【非特許文献10】Russell SH, Hoopes JL, Odell JL(1992) Mol Gen Genet 234:49-59
【非特許文献11】Gleave AP, Mitra DS, Morris BAM(1999) Plant Mol Biol 40:223-235
【非特許文献12】Yoder JI, Goldsborough AP(1994) Biotechnology 12:263-267
【非特許文献13】Goldsbrough AP, Lastrella CN, Yoder JI(1993) Biotechnology 11:1286-1292
【非特許文献14】Huang N., Wu L., Nandi S., Bowman E., Huang J., Sutliff T., Rodriguez R.L.(2001)Plant Science 161:589-595
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
形質転換体植物は、通常、カルスを経由して作り出される。本発明者らは、カルス細胞において遺伝子の発現を誘導するプロモーターを明らかにした(WO 2004/81213)。本発明者が提供したプロモーターは、カルス特異的な遺伝子発現を誘導する。一方、可食部(edible part)における外来遺伝子の発現は、ほとんど検出できなかった。つまり本発明者が提供したプロモーターは、選択マーカーの発現用プロモーターとして好適な性質を有していた。その他にも、カルス特異的に遺伝子の発現を誘導できるプロモーターは公知である(Huang N., Wu L., Nandi S., Bowman E., Huang J., Sutliff T., Rodriguez R.L. Plant Science 161:589-595, 2001; 特開2003-265182)。
【0009】
さて、植物に外来性遺伝子を導入するためには、先に述べたように、通常、選択マーカーと呼ばれる遺伝子が利用される。選択マーカーを発現しているカルスは選択培地中で増殖する。他方、形質転換されていない細胞は、選択マーカーを持たないので、選択培地中では生存できない。つまり、選択培地で生存しカルスを形成した細胞を選択し、植物体に再構成すれば、形質転換された植物体を得ることができる。これが、植物の形質転換体を得るための、一般的な方法の原理である。
【0010】
しかし、実際の形質転換体の取得過程においては、カルスとして増殖させた植物細胞は、引き続き分化誘導によって植物体に再構成される。この過程で、カルスは、根やシュート(shoot)を生じるまで選択培地で培養を継続する。次いで十分な増殖の後に、カルスは選択培地から分化誘導用の培地に移植される。選択マーカーがカルス特異的なプロモーターによって発現している場合には、分化誘導用の培地には、選択剤は加えられない。カルス特異的なプロモーターの制御下で発現する選択マーカーは、分化の過程で発生するシュートや根においては、必ずしも発現しないためである。
【0011】
ところが培養中のカルスは、分化誘導用の培地に移植する前に、選択培地上で根を発生することがある。選択マーカーを発現しない根を発生したクローンは、選択培地の中では生存できず、枯死してしまう。その結果、枯死したクローンが失われる。
カルスの培養を開始した後、早い時期に分化誘導用の培地に移植すれば、早期に根を発生するクローンの枯死を防ぐことができる。しかし選択培地での培養期間が短いと、選択が不完全になる可能性がある。選択が不完全な場合には、外来遺伝子を持たないクローンが含まれることになる。このように、目的とする遺伝子の導入に失敗したのにもかかわらず、選択されてしまったクローンは、エスケープと呼ばれる。
【0012】
もしも根においても選択マーカーが発現していれば、選択培地において、十分な時間培養を継続することができる。たとえば、組織特異性の無いプロモーターであるCaMV35Sプロモーターを選択マーカーの発現に利用すると、形質転換体を選択剤の作用で失う恐れは無くなる。そればかりか、選択培地のみならず、分化誘導用の培地にも選択剤を加えることができる。その結果、不十分な選択によるエスケープは生じない。しかし、選択培地における培養期間が長いと、カルスが大きくなり、分離が難しい多数のシュートを生じる。その結果、最終的に得られる形質転換体の中に、同一クローン由来の複数の個体が含まれる可能性がある。あるいは、逆に異なるクローンに由来する細胞を含む個体を生じる可能性もある。
【0013】
形質転換植物の選択にあたり、これらの個体の混入は、避けるべきである。同一クローン由来の複数の植物体が重複して存在する場合には、本来不必要であるはずの植物体を選択してしまったことになる。逆に異なるクローンに由来する植物体については、単一クローン由来の植物体に分離させなければならない。
もしもプロモーターに組織特異性が無ければ、選択培地中での根の発生によってクローンを失うことはない。しかしそれは可食部における選択マーカーの発現を意味する。したがって食料とする植物の形質転換には不向きである。
本発明は、このような形質転換植物を得るための操作上の問題の解消を課題とする。より具体的には、形質転換体の効率的な選択を実現することが本発明の課題である。
【0014】
あるいは本発明は、植物の形質転換において、外来性遺伝子のコピー数を制御するための方法の提供を課題とする。現在、外来性遺伝子のコピー数を制御することができる有効な対策は知られていない。そのため現状では、導入された外来性遺伝子のコピー数を知るために、実際に形質転換体のゲノムを解析する必要があった。ゲノムの解析にはサザンブロット法などが利用される。しかしサザンブロット法は、時間と手間のかかる解析手法である。したがって形質転換体の全てについて、サザンブロット法によってコピー数を解析することは、現実的ではない。
【0015】
その他、後代検定(progeny test)によって遺伝学的にコピー数を推測することもできる。後代検定によれば、ハプロイドにおける遺伝子の分布を知ることができる。しかし交配を必要とする後代検定によっては、迅速なスクリーニングは不可能である。あるいは交配に時間のかかる植物には応用できない。
このように、形質転換した後に導入された外来性遺伝子のコピー数を解析し、目的とするコピー数を有する個体を選択する方法は現実的でない。したがって、導入遺伝子のコピー数の少ない細胞をより選択的に得ることができる方法が提供されれば有用である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、カルスから発生する根において選択マーカーが発現していれば、選択培地における根の発生による形質転換体の枯死を防止できると考えた。そのためには、カルスから発生する根においても、選択マーカーの発現が維持される必要がある。この課題を解決するために、本発明者らはカルスのみならず、根における発現をも維持できるプロモーターの構造を明らかにして本発明を完成した。
【0017】
ところで、植物の形質転換において、導入される外来性遺伝子のコピー数の制御は、いまなお解決すべき課題とされていることを既に述べた。この課題に対して、本発明者らは、特定の構造を有するプロモーターを用いたときに、ゲノムに導入される外来性遺伝子のコピー数を制御しうることを見出して本発明を完成した。すなわち本発明は、植物の形質転換のための方法に関する。より具体的には、本発明は、以下に記載の方法を提供する。
〔1〕次の工程を含む、植物細胞において、複数コピーが導入された外来性遺伝子をメチル化する方法;
1) 転写調節配列の制御下に発現する外来性遺伝子を含むコンストラクトを植物細胞に導入する工程であって、前記転写調節配列が、少なくとも、(a)プロモーターと、(b)複数の同じ塩基配列を含むエンハンサーを含む工程、および
2) 1)のコンストラクトを植物細胞に導入しゲノムにインテグレートする工程。
〔2〕プロモーターが、イネRezA遺伝子のプロモーターである〔1〕に記載の方法。
〔3〕イネRezA遺伝子のプロモーターが、配列番号:17に記載の塩基配列を含む〔2〕に記載の方法。
〔4〕イネRezA遺伝子のプロモーターが、配列番号:17に記載の塩基配列からなる〔3〕に記載の方法。
〔5〕エンハンサーが、CaMV 35Sプロモーター由来のエンハンサーである〔1〕に記載の方法。
〔6〕CaMV 35Sプロモーター由来のエンハンサーが、配列番号:13に記載の塩基配列を含む〔5〕に記載の方法。
〔7〕外来性遺伝子が、選択マーカーである〔1〕に記載の方法。
〔8〕次の工程を含む、第2の外来性遺伝子が導入された植物体の製造方法;
1) 転写調節配列の制御下に発現する第1の外来性遺伝子と、植物細胞に導入すべき第2の外来性遺伝子を含むコンストラクトを植物細胞に導入する工程であって、前記転写調節配列が、少なくとも、(a) RezA遺伝子のプロモーター、(b)同じ塩基配列を含む複数のエンハンサーを含み、かつ第1の外来性遺伝子が選択マーカーである工程、
2) 1)のコンストラクトを植物細胞のゲノムにインテグレートする工程、
3) 前記選択マーカーを発現する細胞を選択できる培地で2)の植物細胞を培養してカルスを形成する工程、
4) 3)のカルスから根が発生するまで、前記培地でカルスを培養する工程、および
5) 根が発生したカルスを植物体に分化させる工程。
〔9〕(a) RezA遺伝子のプロモーター、および(b)同じ塩基配列を含む複数のエンハンサーを含む転写調節配列と、当該転写調節配列の制御下に発現する外来性遺伝子を含む、外来性遺伝子を植物の根において発現させるための遺伝子発現ユニット。
〔10〕〔9〕に記載の遺伝子発現ユニットを導入された植物細胞。
〔11〕次の工程を含む、低コピー数の第2の外来性遺伝子が導入された植物細胞の製造方法;
1) 転写調節配列の制御下に発現する第1の外来性遺伝子と、植物細胞に導入すべき第2の外来性遺伝子を含むコンストラクトを植物細胞に導入する工程であって、前記転写調節配列が、少なくとも、(a) RezA遺伝子のプロモーター、(b)同じ塩基配列を含む複数のエンハンサーを含み、かつ第1の外来性遺伝子が選択マーカーである工程、
2) 1)のコンストラクトを植物細胞のゲノムにインテグレートする工程、
3) 前記選択マーカーを発現する細胞を選択できる培地で2)の植物細胞を培養してカルスを形成する工程、および
4) 形成されたカルスのゲノムに含まれる前記第2の外来性遺伝子を定性的に検出し、当該遺伝子が検出されたカルスの細胞を低コピー数の第2の外来性遺伝子が導入された植物細胞として選択する工程。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明者らは、既にカルスにおいて高い遺伝子発現を誘導しうるプロモーターとして、RezA遺伝子のプロモーターに着目し、その転写活性に必要な塩基配列の特定に成功している。すなわち、RezA遺伝子のコーデイング領域の5'上流を含む233bpのDNA断片が、カルスにおいてプロモータ活性を維持するのに必要充分な領域である。そして、翻訳開始点前後の塩基配列を含む135bpのDNA断片でも、233bpのDNA断片の約半分のプロモータ活性が得られることを確認した(WO 2004/81213)。この135bpの塩基配列をプロモーターとして利用したとき、外来遺伝子のイネ胚乳における外来遺伝子の発現は検出されなかった。すなわち、すなわち本発明者らが見出したプロモーターは、カルスにおいては選択マーカーを発現し、可食部(胚乳)においては選択マーカーを発現しない、植物の形質転換における理想的なツールであった。
更に本発明者らは、RezA遺伝子のプロモーター135bp断片による遺伝子の発現強度を増強するために、CaMV35Sプロモータ由来のエンハンサー-351〜-84部分の利用を試みた。その結果、当該エンハンサーを特にタンデムに連結することによって、135bpの塩基配列の制御下に発現する遺伝子の発現レベルを高い水準に増強できることを確認した。
【0019】
このようにして作出されたカルス特異的なプロモーターについて本発明者らは更に研究を重ね、特定の構成を有するプロモーターが、コピー数に応じて遺伝子のメチル化を誘導していることを見出した。メチル化された遺伝子の転写は阻害される。つまり、特定の構成を有するプロモーターは、コピー数が多い遺伝子の発現を抑制することが見出された。本発明者らはこの知見に基づいて、特定の構造のプロモーターを利用することによって、植物の形質転換において不利とされている、コピー数の多い外来遺伝子をメチル化するための方法を確立して本発明を完成した。
【0020】
すなわち本発明は、次の工程を含む、植物細胞において、複数コピーが導入された外来性遺伝子をメチル化する方法を提供する。
1) 転写調節配列の制御下に発現する外来性遺伝子を含むコンストラクトを植物細胞に導入する工程であって、前記転写調節配列が、少なくとも、(a)プロモーターと、(b)同じ塩基配列を含む複数のエンハンサーを含む工程、および
2) 1)のコンストラクトを植物細胞に導入しゲノムにインテグレートする工程
あるいは本発明は、次の工程を含む、植物細胞において、複数コピーが導入された外来性遺伝子をメチル化する方法を提供する。
1) 転写調節配列の制御下に発現する外来性遺伝子を含むコンストラクトを植物細胞に導入する工程であって、前記転写調節配列が、少なくとも、(a)プロモーターと、(b)同じ塩基配列を含む複数のエンハンサーを含む工程、
2) 1)のコンストラクトを植物細胞に導入しゲノムにインテグレートする工程、および
3) 2)の植物細胞を培養して複数コピーが導入された外来性遺伝子をメチル化する工程
【0021】
本発明においては、(a)プロモーターと、(b)同じ塩基配列を含む複数のエンハンサーを含む転写調節配列が利用される。本発明において、転写調節配列を構成する(a)プロモーターは、植物細胞において外来性遺伝子の発現を誘導することができるプロモーターであれば任意のプロモーターを利用することができる。具体的には、たとえば下記の群から選択された少なくとも一つのプロモーターを利用することができる。本発明における好ましいプロモーターは、RezA遺伝子のプロモーターである。たとえばイネ由来のRezA遺伝子のプロモーターが公知である(WO 2004/81213)。このほか、カルスにおけるプロモーター活性が期待できる任意のプロモーターを本発明に利用することができる。
【0022】
本発明において、RezA遺伝子のプロモーターには、植物のカルス細胞においてプロモータ活性を有し、かつ下記(a)〜(d)のいずれかに記載のDNAが含まれる。
(a)配列番号:17に記載の塩基配列からなるDNA
(b)配列番号:17に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA
(c)配列番号:17に記載の塩基配列において、1または複数の塩基が置換、欠失、付加、および/または挿入された塩基配列からなるDNA
(d)配列番号:18に記載の塩基配列における、少なくとも配列番号:17に記載の塩基配列を含む塩基配列からなるDNA
【0023】
本発明において、RezA遺伝子のプロモータとしては、配列番号:17に示す翻訳開始点を含む2527bpの塩基配列(配列番号:18)からなるプロモータ領域において、少なくとも配列番号:17に示す135bpの塩基配列を含む塩基配列を含むDNAが好ましい。この中でも翻訳開始点を含む233bpの塩基配列からなるDNA(配列番号:19)は、短鎖でかつプロモータ活性が高い。他方、より短い135bpの塩基配列からなるDNA(配列番号:17)は、プロモータ活性は233bpの塩基配列からなるDNAよりも低いものの、カルス特異性が高い。
【0024】
本発明を単子葉植物の形質転換に応用する場合、本発明におけるプロモータは、単子葉植物由来であることが好ましい。たとえば配列番号:18に示した塩基配列はイネゲノム由来の塩基配列である。このほか、たとえば以下に述べるような方法によって、イネ以外の植物からRezA遺伝子のプロモータを取得し、本発明におけるプロモーターとして利用することもできる。
【0025】
配列番号:17に示す塩基配列からなるイネ由来のRezA遺伝子のプロモータと同等の機能を有するDNAは、公知の方法によってイネ以外の植物から取得することができる。具体的には、一般的なハイブリダイゼーション技術(Southern, EM., J Mol Biol, 1975, 98, 503.)、またはPCR技術(Saiki, RK. et al., Science, 1985, 230, 1350.、Saiki, RK. et al., Science, 1988, 239, 487.)を、目的とするDNAの取得に利用することができる。すなわち、当業者は、配列番号:17(あるいは配列番号:19)に示すDNAもしくはその一部をプローブとして、任意の単子葉植物から配列番号:17に示すイネ由来のDNAと同等の機能を有するDNAを単離することができる。同様に、イネ由来のDNAに特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドをプライマーとして、PCR技術によって機能的に同等なDNAを取得することもできる。
同等な機能を有するDNAを単離するためには、好ましくはストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーション反応を行う。本発明においてストリンジェントなハイブリダイゼーション条件としては、6M 尿素、0.4% SDS、0.5×SSCの条件、または0.1% SDS(60℃、0.3mol NaCl、0.03M クエン酸ソーダ)のハイブリダイゼーション条件、あるいはこれらと同等のストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件を指す。よりストリンジェンシーの高い条件、例えば、6M 尿素、0.4% SDS、0.1×SSCの条件下では、より相同性の高いDNAを単離できることが期待される。
【0026】
このようにして単離されたDNAは配列番号:17に示すイネ由来のDNAと有意な相同性を有する。有意な相同性とは、塩基配列全体で好ましくは50%以上、さらに好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、最も好ましくは90%以上(例えば、95,96,97,98,99%以上)の配列の同一性を指す。塩基配列の同一性は、カーリンおよびアルチュールによるアルゴリズムBLAST(Proc. Natl. Acad. Sei. USA, 1990, 87, 2264-2268.、Karlin, S. & Altschul, SF., Proc Natl Acad Sci USA, 90, 5873.)を用いて決定できる。BLASTのアルゴリズムに基づいたBLASTNと呼ばれるプログラムが開発されている(Altschul, SF. et al., J Mol Biol, 1990, 215, 403.)。BLASTNを用いて塩基配列を解析する場合は、パラメーターは、例えばscore=100、wordlength=12とする。BLASTとGapped BLASTプログラムを用いる場合は、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いる。これらの解析方法の具体的な手法は公知である(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)。
【0027】
また、本発明におけるRezA遺伝子のプロモータとしては、カルス細胞および根においてプロモータ活性を示す限り、配列番号:17に記載の塩基配列において、1または複数の塩基が置換、欠失、付加、および/または挿入された塩基配列からなるDNAであってもよい。ここで「複数の塩基」とは、好ましくは30塩基以内、より好ましくは10塩基以内、さらに好ましくは5塩基以内(例えば、3塩基以内)である。このようなDNAを調製するために当業者によく知られた方法としては、例えば、site-directed mutagenesis(Kramer, W. & Fritz, HJ., Methods Enzymol, 1987, 154, 350.)による変異の導入を挙げることができる。また、DNAにおける塩基の変異は、自然界において生じることもある。
【0028】
調製されたDNAのプロモータ活性は、例えばレポーターアッセイ等により確認することができる。レポーターアッセイのために、プロモータ活性を確認すべきDNAの下流にレポーター遺伝子が発現可能に結合されたベクターが作製される。これをカルス細胞に導入して、該細胞内のレポーター活性を測定する。レポーター遺伝子は、その発現が検出可能なものであれば制限されない。例えば、GFP遺伝子、CAT遺伝子、lacZ遺伝子、ルシフェラーゼ遺伝子、およびβ−グルクロニダーゼ(以下、GUS)遺伝子等をレポーター遺伝子として挙げることができる。レポーター遺伝子の発現レベルは、該レポーター遺伝子の種類に応じて、公知の方法により測定することができる。
例えば、レポーター遺伝子がGFP遺伝子である場合には、GFPタンパク質による蛍光を検出することにより、レポーター遺伝子の発現レベルを測定することができる。また、レポーター遺伝子がCAT遺伝子である場合には、該遺伝子産物によるクロラムフェニコールのアセチル化を検出することによって、レポーター遺伝子の発現レベルを測定することができる。
【0029】
本発明におけるプロモータDNAは、ゲノムDNAであっても、化学的に合成されたDNAであってもよい。ゲノムDNAの調製方法は公知である。具体的には、例えば、植物細胞からゲノムDNAを抽出し、ゲノミックライブラリーを作製し、目的とするDNAを単離することができる。ゲノミックライブラリーを作成するためのベクターとしては、プラスミド、ファージ、コスミド、BAC、PAC等を利用することができる。ゲノムライブラリーは、コロニーハイブリダイゼーション、あるいはプラークハイブリダイゼーションによってスクリーニングすることができる。あるいは植物細胞から抽出されたゲノムDNAを鋳型として、PCRによって目的とするDNAを増幅することもできる。ハイブリダイゼーションのためのプローブ、あるいはPCRのためのプライマーは、たとえば、たとえば配列番号:17に示したイネ由来のRezA遺伝子のプロモーターの塩基配列に基づいてデザインすることができる。
【0030】
本発明において、転写調節配列を構成する(b)同じ塩基配列を含むエンハンサーとは、エンハンサー活性を有し、かつ同じ塩基配列の繰り返しを含むDNAが含まれる。同じく転写調節配列を構成する(a)プロモーターと、(b)複数の同じ塩基配列を含むエンハンサーとは機能的に結合される。本発明において、プロモータとエンハンサーとが「機能的に結合している」とは、プロモータ活性が高まるように、本発明のプロモータ活性を有するプロモータDNAとエンハンサーとが結合していることをいう。従って、プロモータDNAとエンハンサーの距離が離れていたり、間に他の遺伝子が挿入された場合であっても、エンハンサーを伴わない場合と比較して、プロモータDNAのプロモータ活性が高まるのであれば、エンハンサーは「機能的に結合している」と言うことができる。エンハンサーは本発明のプロモータDNAの上流下流どちらに配置されていても良い。
【0031】
本発明においてエンハンサーとは、転写により生成するメッセンジャーRNA(mRNA)の量を結果的に増加させるものであれば限定されない。エンハンサーはプロモータの作用を促進する効果を持つ塩基配列であり、一般的には100bp前後からなるものが多い。エンハンサーは配列の向きにかかわらず転写を促進することができる。また、通常、エンハンサー自体はプロモータ活性を持っていないが、数千塩基対も離れた所から転写を活性化することができる。さらに、エンハンサーは転写される遺伝子領域の上流、下流、および遺伝子内にも存在し、転写の活性化することができる。また、上述したように本発明におけるエンハンサーは、転写により生成するmRNAの量を増加させるものであれば限定されないので、mRNAの転写後にmRNAの分解を阻害したり、mRNAを安定化することによって、細胞内に存在するmRNAの量を増加させ、アミノ酸の翻訳効率を上げるものも本発明のエンハンサーに含まれる。
【0032】
本発明においては、エンハンサーは、複数の同じ塩基配列を含む。複数の同じ塩基配列は、たとえば、あるエンハンサーを複数連結することによって構成することができる。あるいは、部分的に同じ塩基配列を含むエンハンサーの複数種を連結することによって、本発明におけるエンハンサーとすることもできる。更に、複数の同じ塩基配列の繰り返しを含んでいる、単一のエンハンサーを本発明に用いることもできる。
【0033】
本発明におけるエンハンサーには制限は無い。植物に由来する種々のエンハンサーが報告されている。たとえば以下のような報告において記載されたエンハンサーを複数連結することによって、本発明に利用することができる。
**** Timko MP, Kausch AP, Castresana C, Fassler J, Herrera-Estrella L, Van den
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【0034】
その他、たとえばCaMV35Sプロモータ由来のエンハンサーを本発明に利用することができる。より具体的には、CaMV35Sエンハンサーの-351〜-84部分の塩基配列(配列番号:20)は、本発明におけるエンハンサーとして好ましい。すなわち、CaMV35Sエンハンサーの-351〜-84部分の塩基配列(配列番号:20)の複数を連結した構造を、本発明におけるエンハンサーとして利用することができる。連結する数は、2以上の任意の数から選択することができる。具体的には、通常2〜20、一般的には3〜10、好ましくは4〜9、より具体的には4個または8個である。繰り返される塩基配列は、完全に同一であっても良いし、あるいは同じ塩基配列を含み、かつそれぞれが異なる長さの塩基配列である場合も許容される。
【0035】
配列番号:17の塩基配列からなるプロモーターと、配列番号:20のタンデム配列を連結した塩基配列を、配列番号:21および配列番号:22に示す。配列番号:21および配列番号:22は、配列番号:20に記載されたエンハンサーの塩基配列を、それぞれ4つ、あるいは8つ含んでいる。配列番号:21あるいは配列番号:22に記載の塩基配列を含む転写調節配列は、本発明における転写調節配列として好ましい。
【0036】
更に、エンハンサーの繰り返し配列を、転写調節配列の中で分けて配置することもできる。たとえば、それぞれ4回の繰り返しを含む2組のエンハンサーを、前記プロモータの上流と下流に分けて配置することもできる。
本発明における転写調節配列は、その塩基配列に基づいて、当業者が合成することができる。たとえば、転写調節配列を構成するプロモーターは、必要なプロモーターを含むゲノムからPCRなどによって得ることができる。たとえば配列番号:17に記載の塩基配列を含むプロモーターはイネのゲノムから取得することができる。
【0037】
一方、複数のエンハンサーは、当該エンハンサーを含む任意の生物材料から取得することができる。たとえば配列番号:13に示した塩基配列を含むエンハンサーは、カリフラワーモザイクウイルスCaMVに由来する塩基配列である。したがって、CaMVのゲノムからPCRなどによって必要なDNAを取得することができる。その他、配列番号:17に示すようなプロモーターの塩基配列、あるいは配列番号:20に示すようなエンハンサーの塩基配列に基づいて、必要なDNAを化学的に合成することもできる。複数のエンハンサーを連結するためには、酵素的にDNAを連結すればよい。たとえば実施例に示すように、エンハンサーを1つづつ連結していくことができる。
【0038】
本発明において、(a)プロモーターと、(b)複数の同じ塩基配列を含むエンハンサーを含む転写調節配列には、その制御下に発現する外来性遺伝子が連結され、組み換えコンストラクトが構成される。本発明における外来性遺伝子は、メチル化を通じてゲノムに組み込まれるコピー数を制御すべき任意の遺伝子を利用することができる。本発明における好ましい外来性遺伝子は、選択マーカーをコードする遺伝子である。本発明において、選択マーカーとは、選択マーカーを発現している細胞と、発現していない細胞との識別を容易にする遺伝子を言う。
【0039】
たとえば、特定の条件下で生存し増殖する能力を植物細胞に付与する遺伝子は選択マーカーに含まれる。具体的には、たとえば薬剤耐性遺伝子は、代表的な選択マーカーである。あるいは、野生型の植物細胞の栄養要求性とは異なる栄養要求性を付与する遺伝子も、選択マーカーとして利用することができる。本発明に利用することができる選択マーカーは制限されない。たとえば、現在、一般的に利用されている選択マーカーと、各選択マーカーによって付与される形質を以下に示す。
ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ(ハイグロマイシン耐性)
ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(カナマイシン耐性、ゲンタマイシン耐性)
アセチルトランスフェラーゼ(除草剤ホスフィノスリシン耐性)
その他、蛍光蛋白質をコードする遺伝子や、特定の基質の存在下でカルスや培地に色素を生成する反応を触媒する酵素をコードする遺伝子も、選択マーカーに含まれる。これらの選択マーカーを利用した場合、選択マーカーを発現するカルスは、蛍光や着色によって、選択マーカーを発現していないカルスと識別することができる。更に、低温耐性などの温度感受性を変化させる遺伝子を利用することによって、培養温度に基づいて選択することもできる。
【0040】
上記のような選択マーカーを発現する細胞は、選択マーカーによって細胞に付与された形質を確認することができる培養条件に置くことによって、選択マーカーを発現していない細胞と識別される。選択マーカーの発現を確認することができる培養条件を与える培地を、本発明においては、選択培地と言う。すなわち、選択マーカーを発現する細胞を選択できる培地は選択培地である。たとえば薬剤耐性遺伝子を選択マーカーとするときには、当該薬剤を含む培地が選択培地である。薬剤を含む選択培地においては、生存している細胞が、選択マーカーを発現している細胞として選択される。
【0041】
これらの外来性遺伝子は、前記転写調節配列に機能的に結合して植物細胞に導入することにより、植物細胞中で発現させることができる。本発明において、外来性遺伝子と転写調節配列の機能的な結合とは、植物細胞において、外来性遺伝子が転写調節配列の制御下に発現することを言う。
たとえば、プロモーターとして配列番号:17あるいは配列番号:19に示す塩基配列を含む、イネRezA遺伝子由来のプロモーターを用い、配列番号:20に記載の塩基配列をタンデムに連結した転写調節配列を利用するとき、プロモーターと外来性遺伝子は、タンデムに結合されたエンハンサーの下流に配置することができる。このときのコンストラクトの構造は、以下のように示すことができる。なお「[エンハンサー]n」は、同じ塩基配列を含むエンハンサーのn個の繰り返しを意味する。
5'-[エンハンサー]n-[RezA遺伝子由来のプロモーター]-[外来性遺伝子]-3'
【0042】
更に、本発明の好ましい態様においては、外来性遺伝子は、非翻訳領域(UTR)を介してプロモーターの下流に連結することができる。本発明に利用することができるUTRとしてイネRezA遺伝子の5'-UTRから選択された塩基配列を示すことができる。たとえば、配列番号:17に記載した135bpの塩基配列は、配列番号:23に示す96bpの塩基配列を5'UTRとして含んでいる。
【0043】
本発明においては、前記のような構成を有するコンストラクトを植物細胞に導入し、ゲノムに組み込む。コンストラクトを導入する「植物細胞」は限定されない。例えば、カルス細胞、懸濁培養細胞、プロトプラスト、葉の切片などを植物細胞として利用することができる。好ましくはカルス細胞である。植物細胞は、好ましくは単子葉植物由来であり、最も好ましくはイネ由来である。
【0044】
コンストラクトは、公知の方法により植物細胞に導入される。通常、植物細胞への遺伝子の導入には、ベクターが利用される。植物細胞へのベクターの導入には、パーティクルガン法、ポリエチレングリコール法、電気穿孔法(エレクトロポレーション法)、アグロバクテリウムを介する方法など、当業者に公知の種々の方法を用いることができる。アグロバクテリウムを介する方法においては、例えば、超迅速単子葉形質転換法(特許第3141084号)を用いることができる。ベクターの導入に利用するアグロバクテリウムとしては、たとえばAgrobacterium tumefaciens LBA4404株、EHA101株などが公知である。また、パーティクルガンを利用して遺伝子を植物細胞に導入することもできる。パーティクルガンは、例えば、バイオラッド社などから商業的に供給されている。遺伝子導入装置として、例えば、GIE-III型IDERA(タナカ社)を用いることもできる。
【0045】
アグロバクテリウム法に利用することができるベクターとして、RK2系バイナリーベクターが公知である。RK2系ベクターとして、たとえばpBI121(クロンテック社製)を利用することができる。pBI121においては、選択マーカーであるカナマイシン耐性遺伝子(npt II)がノパリン合成酵素遺伝子のプロモータ(NOS-Pro)の制御下に発現する。したがって、本発明における転写調節配列でNOS-Proを置換することによって、npt II遺伝子を当該転写調節配列の制御下に発現するように改変することができる。更にnpt IIをHPT(ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ)に置換することによって、ハイグロマイシン耐性遺伝子を選択マーカー遺伝子とすることもできる。pBI121については、以下の文献を参照することができる。
Bevan,M. Nucl.Acid Res.12 8711-8721 1984
Jefferson,R.A., et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83 8447-8451 1986
Bevan,M.et al., Nucl.Acid Res.11 369-385 1983
Bevan,M.et al., Nature 304 184-187 1983
その他に、バイナリーベクターであるpPZP200(Hajdukiewicz et al., Plant Mol.Biol.25, 989-994, 1994)とその改変ベクター、pPZP2H-lac pPZP2Ha3(Fuse et al.,Plant Biotechnology 18 219-222 2001)、pCGN1548、あるいはpCGN1549(Calgene社)等の公知のベクターをベースに、選択マーカーのプロモーターを置換することによって本発明に応用することができる。
【0046】
このように本発明における転写調節配列の制御下に選択マーカーを発現するベクターで形質転換された植物細胞においては、導入されたコンストラクトを一つの細胞が複数コピー含む場合に、選択マーカー遺伝子がメチル化される。その結果、選択マーカー遺伝子が複数コピー導入されると、メチル化によってその発現が抑制される。選択マーカー遺伝子を発現できない植物細胞は、選択剤を含む培地の中で生存できない。けっきょく本発明の方法によれば、導入コンストラクトのコピー数が少ない細胞が優先的に選択剤の存在下で生存することになる。つまり、本発明によって、低コピー数のコンストラクトを含む植物細胞を優先的に取得することができる。
【0047】
本発明による複数コピーが導入された外来性遺伝子をメチル化する方法を、選択マーカー遺伝子に応用することによって、低コピー数の外来性遺伝子が導入された植物細胞を選択的に製造することができる。すなわち本発明は、次の工程を含む、低コピー数の第2の外来性遺伝子が導入された植物細胞の製造方法;
1) 転写調節配列の制御下に発現する第1の外来性遺伝子と、植物細胞に導入すべき第2の外来性遺伝子を含むコンストラクトを植物細胞に導入する工程であって、前記転写調節配列が、少なくとも、(a) RezA遺伝子のプロモーター、(b)同じ塩基配列を含む複数のエンハンサーを含み、かつ第1の外来性遺伝子が選択マーカーである工程、
2) 1)のコンストラクトを植物細胞のゲノムにインテグレートする工程、
3) 前記選択マーカーを発現する細胞を選択できる培地で2)の植物細胞を培養してカルスを形成する工程、および
4) 形成されたカルスのゲノムに含まれる前記第2の外来性遺伝子を定性的に検出し、当該遺伝子が検出されたカルスの細胞を低コピー数の第2の外来性遺伝子が導入された植物細胞として選択する工程。
【0048】
本発明において、第2の外来性遺伝子には、植物体への導入を目的とする任意の遺伝子を用いることができる。たとえば、その遺伝子の導入によって植物体に特定の遺伝形質を与える遺伝子が第2の外来性遺伝子に含まれる。選択マーカー(第1の外来性遺伝子)が前記転写調節配列の制御下に発現すべきであるのに対して、第2の外来性遺伝子は、任意のプロモーターと機能的に結合される。したがって、全身性に発現するプロモーターの制御下に発現するように第2の外来性遺伝子を結合することができる。あるいは、第2の外来性遺伝子が可食部における発現を期待する遺伝子の場合には、可食部での発現を誘導するプロモーターと組み合わせても良い。
【0049】
更に、本発明における第2の外来性遺伝子には、植物体あるいは植物細胞における機能を確認すべき遺伝子が含まれる。言い換えれば、本発明に基づいて機能未知の遺伝子を第2の外来性遺伝子として植物体に導入し、phenotypeの変化を観察することによって、当該遺伝子の機能を知ることができる。すなわち本発明における第2の外来性遺伝子は、(1)その遺伝子の導入によって植物体あるいは植物細胞に特定の遺伝形質を与える遺伝子、および(2)植物体あるいは植物細胞に導入されたときに観察される遺伝形質を観察するための遺伝子、が含まれる。
【0050】
本発明の方法においては、選択マーカー(第1の外来性遺伝子)と第2の外来性遺伝子の2つの外来性遺伝子が植物に導入される。たとえばTiプラスミドのようなベクターで形質転換するとき、これらの外来性遺伝子は、そろって植物細胞のゲノムにインテグレートされる。したがって、選択マーカーが複数コピー導入された細胞には、高い確率で第2の外来性遺伝子も同数のコピーが導入されている。その結果、選択マーカーのメチル化を通じてコピー数を制御することによって、結果的に、第2の外来性遺伝子のコピー数も制御することができる。
【0051】
本発明において、低コピー数とは、通常3以下、好ましくは1または2コピーである。既に述べたように、植物の形質転換体を遺伝子工学的に作り出す場合、一般に導入される第2の外来性遺伝子の細胞あたりのコピー数は少ないほうが望ましい。そのため導入される第2の外来性遺伝子のコピー数の制御は、植物の形質転換体の取得において、大きな課題であった。しかし現在のところ、導入される遺伝子のコピー数を制御する方法は実現されていない。そのため、導入された外来性遺伝子を定量的に測定し、細胞あたりの遺伝子のコピー数を推定しなければ、低コピー数の形質転換体を得ることはできなかった。コピー数を定量的に比較するためには、定量的なPCRや、時間と手間のかかるサザンブロット解析が必要であった。
【0052】
一方、本発明においては、複数コピーの選択マーカーを導入された細胞においては選択マーカーのメチル化が起き、その発現が抑制される。その結果、選択マーカーを有する細胞であるのにもかかわらず、結局、選択培地の選択条件に対して感受性になってしまう。つまり、選択培地において、選択マーカーが導入されなかった細胞と同じように、選択培地で生存することができない。こうして、低コピー数のコンストラクトが導入された細胞が、優先的に選択培地中で成育してカルスを形成する。すなわち選択培地に形成されたカルスは、目的とする植物細胞、すなわち低コピー数のコンストラクトが導入された植物細胞からなっている可能性が高い。ここで、第2の外来性遺伝子を定性的に検出し、目的とする遺伝子の導入が確認できたクローンは、低コピー数の第2の外来性遺伝子が導入されたクローンであるといえる。なぜならば、多数のコピー数を導入されたクローンは、選択培地中に生存していないからである。
【0053】
本発明において、遺伝子の定性的な検出とは、検出対象となる塩基配列の量を明らかにしないことを言う。たとえば、PCR法は本発明における好ましい検出方法である。一般的なPCR法では、鋳型となった塩基配列の量を比較することはできない。すなわち、定性的な検出方法である。
【0054】
真核生物ゲノムDNAのメチル化による修飾は、遺伝子の重要な発現制御機構と考えられている。真核生物においては、DNAメチルトランスフェラーゼ活性によって、シトシン(C)の5位がメチル化される。特に植物細胞においては、ゲノムの複製工程の中でメチル化の情報も複製される。すなわち植物細胞では、ゲノムの塩基配列のみならず、メチル化の情報も遺伝する。したがって、植物細胞におけるゲノムのメチル化によるジーンサイレンシング機構は、通常、世代を越えて機能する。そのため本発明によってメチル化された外来性遺伝子は、世代を越えても発現することは無い。
【0055】
ところで、本発明における好ましいプロモーターとして、イネRezA遺伝子のプロモーターを示した。更にこのプロモーターに組み合わせることができるエンハンサーとして、CaMV由来のエンハンサーを示した。イネRezA遺伝子のプロモーターと、複数のCaMV由来エンハンサーの組み合わせからなる転写調節配列は、本発明における好ましい態様である。本発明者らは、本発明における好ましい転写調節配列の制御下に外来性遺伝子を発現した場合に、その発現がカルスのみならず根においても検出されることを見出した。すなわち本発明は、(a) RezA遺伝子のプロモーター、および(b)同じ塩基配列を含む複数のエンハンサーを含む転写調節配列と、当該転写調節配列の制御下に発現する外来性遺伝子を含む、外来性遺伝子を植物の根において発現させるための遺伝子発現ユニットを提供する。
【0056】
更に本発明者らは、本発明の遺伝子発現ユニットの特徴を利用して、形質転換植物の新規な製造方法を完成した。すなわち本発明は、次の工程を含む、第2の外来性遺伝子が導入された植物体の製造方法に関する。
1) 転写調節配列の制御下に発現する第1の外来性遺伝子と、植物細胞に導入すべき第2の外来性遺伝子を含むコンストラクトを植物細胞に導入工程であって、前記転写調節配列が、少なくとも、(a) RezA遺伝子のプロモーター、(b)同じ塩基配列を含む複数のエンハンサーを含み、かつ第1の外来性遺伝子が選択マーカーである工程、
2) 1)のコンストラクトを植物細胞のゲノムにインテグレートする工程、
3) 前記選択マーカーを発現する細胞を選択できる培地で2)の植物細胞を培養してカルスを形成する工程、
4) 3)のカルスから根が発生するまで、前記培地でカルスを培養する工程、および
5) 根が発生したカルスを植物体に分化させる工程。
【0057】
本発明において、少なくとも、(a) RezA遺伝子のプロモーターと、(b)複数の同じ塩基配列を含むエンハンサーを含む転写調節配列は、先に述べたような方法によって得ることができる。得られた転写調節配列に選択マーカーが機能的に結合される。転写調節配列と選択マーカーとの機能的な結合についても既に述べた。本発明において、転写調節配列と選択マーカーとは、好ましくは非翻訳配列を介して結合することができる。たとえば、イネRezA遺伝子の5'-UTRから選択された135塩基の塩基配列(配列番号:23)は、非翻訳配列として好ましい。
【0058】
本発明における外来性遺伝子が導入された植物体の製造方法において、選択マーカーは、植物細胞において選択マーカーとして機能する任意の遺伝子を利用することができる。たとえば植物細胞が感受性を示す抗生物質や除草剤に対して耐性を与えることができる遺伝子は、選択マーカーとして好ましい。野生型の植物細胞が生存できない培養環境を与える化合物に対して耐性を付与する選択マーカーは、特に薬剤耐性遺伝子と呼ばれる。あるいは、植物細胞に特殊な栄養要求性を付与する遺伝子も、選択マーカーとして有用である。本発明においては、その発現をカルスの生存によって検出することができる選択マーカーが有利である。選択マーカーを発現しない個体が生存できない(あるいはできるだけ少ない)条件の下では、目的とする個体を効率的に選択することができる。
【0059】
本発明において、転写調節配列と選択マーカーを含むコンストラクトは、たとえば先に述べたような方法に従って植物細胞に導入され、そのゲノムに組み込まれる。具体的には、たとえばpBI121などのベクターを利用して、植物細胞に導入される。このとき、コンストラクトを導入する植物細胞は、任意の植物細胞であることができる。具体的には、カルス細胞、懸濁培養細胞、プロトプラスト、あるいは葉や茎頂などの植物組織などを利用することができる。コンストラクトを導入された植物細胞は、コンストラクトによって導入された選択マーカーを備えている。したがって、当該選択マーカーによって耐性を付与された薬剤を含む選択培地中での培養によって、コンストラクトが導入された細胞を選択することができる。
【0060】
選択培地とは、選択マーカーの発現を検出するための組成を有する培地である。具体的には、選択マーカーとして薬剤耐性遺伝子を用いた場合には、当該遺伝子によって耐性を付与される薬剤を含有する培地を選択培地とすることができる。薬剤耐性遺伝子の発現を、選択培地によけるカルスの生存を指標として検出することができる。あるいは、色素を生成する酵素を選択マーカーとした場合には、色素の前駆物質を含む選択培地が利用される。本発明において、選択培地の組成は制限されない。すなわち、植物種や細胞の種類に応じて適切な培地を利用することができる。たとえばイネの場合、LS培地、あるいはN6培地等の公知の培地に選択剤を添加して選択培地とすることができる。
【0061】
本発明の方法において、選択培地における植物細胞の培養は、カルスから根が発生するまで継続される。たとえばイネのカルス培養においては、苗条(shoot)が見られるようになると根も発生してくる。したがって、苗条が見られる時期まで選択培地での培養が継続される。培養の期間は、たとえば2〜4週間程度、通常3週間前後、具体的には18日〜25日である。
【0062】
カルス特異プロモーターを使った公知の方法においては、選択培地における培養の過程で、カルスの培養中に、形質転換体を失う可能性と、形質転換に失敗した細胞を形質転換体として選択してしまう可能性の2つの問題点が指摘されていた。まず、カルスの培養中に万が一根に相当する組織が生じた場合、形質転換には成功していながら、根における選択マーカーの発現していない細胞のために、枯死してしまう。他方、形質転換体のロスを防ぐために、根が生じないことが明らかな早い時期にカルスを選択剤を含まない培地に移植することもできる。しかし、選択培地での培養期間が短いと、形質転換に失敗した細胞(エスケープ)を拾い上げてしまう原因となる。
一方本発明では、カルスの選択培地中における培養期間中に万が一根に相当する組織が分化しても、根においても選択マーカーが発現しているので選択剤による影響を受けない。したがって、培養中に形質転換体を失う心配が無い。
【0063】
本発明において、根の発生する時期になったら、速やかにカルスを再分化用の培地に移植するのが望ましい。本発明においては、根においても選択マーカーの発現が期待できるので、選択培地での培養が継続することによって、形質転換体が失われる恐れは無い。しかしカルスが大きくなると、多くの苗条が発生してきて、分離が難しくなることがある。苗条の分離ができないと、複数のクローンが混在する場合もある。したがって、カルスが小さいうちに分離して、再分化用培地に移植するのが好ましい。
【0064】
再分化用培地への選択剤の添加は任意である。本発明における転写調節配列による選択マーカーの発現は、カルスと根において確認されている。したがって、カルスから根が発生する段階では、選択剤の影響は受けない。しかしその他の組織が分化してくるにつれて、選択剤の影響を受ける可能性を否定できない。したがって、通常、再分化用培地においては選択剤を添加しない。
本発明における再分化用培地は、カルスを植物体に再生できるものであれば任意の培地を利用することができる。具体的には、各種植物ホルモンを添加したMS培地などを再分化用培地として利用することができる。
【0065】
本発明による外来性遺伝子が導入された植物体の製造方法において、コンストラクトの導入、カルスの培養、植物への再分化などの一般的な操作は、公知の方法を利用することができる。たとえば種々の植物について、形質転換された植物細胞から、植物体を再生するための方法は公知である(Toki S, et al: Plant Physiol 100: 1503, 1995)。またパーティクルガン法でイネ細胞へ遺伝子を直接導入し、植物体を再生させる方法(Christou P, et al: Biotechnology 9: 957, 1991)も公知である。
【0066】
あるいは、ポリエチレングリコールを用いてプロトプラストへ遺伝子導入し、植物体を再生させる方法(Datta SK: In Gene Transfer To Plants (Potrykus I and Spangenberg, Eds) pp.66-74, 1995)が知られている。この方法は、インド型イネ品種が適している。更に、電気パルスによりプロトプラストへ遺伝子導入し、植物体を再生させる方法(Toki S, et al: Plant Physiol 100: 1503, 1992)も報告されている。この方法は、日本型イネ品種に適した方法である。アグロバクテリウムを介して遺伝子を導入し、植物体を再生させる方法も確立している(Hiei Y, et al: Plant J 6: 271, 1994)。
【0067】
ゲノム内に目的の遺伝子が導入された形質転換植物体が一旦得られれば、該植物体から有性生殖または無性生殖により子孫を得ることができる。また、該植物体やその子孫あるいはクローンから繁殖材料(例えば、種子、果実、切穂、塊茎、塊根、株、カルス、プロトプラストなど)を得て、それらを基に該植物体を量産することもできる。
【0068】
本発明におけるコンストラクトには、選択マーカーに加えて、導入すべき遺伝形質を表現型(phenotype)とする第2の外来性遺伝子を組み合わせて、植物細胞に導入される。第2の外来性遺伝子は、その表現型の発現が期待される組織において発現可能なプロモーターと機能的に結合される。たとえば、葉において発現が期待される遺伝子の場合には、少なくとも葉における発現を誘導できるプロモーターの制御下に発現するように第2の外来性遺伝子が配置される。
【0069】
たとえば本発明の転写調節配列の制御下にnptII遺伝子を発現するように改変されたpBI121ベクターを用いる場合、マルチクローニングサイトに第2の外来性遺伝子を挿入することができる。pBI121ベクターのマルチクローニングサイトに挿入された遺伝子は、CaMV35Sプロモーターの制御下に発現する。すなわち第2の外来性遺伝子は、原則として、形質転換植物においては全身性の発現が期待できる。本発明の形質転換植物の製造方法を利用して、たとえば、農業において有用な形質を植物に導入することができる。
農業的に有用な遺伝形質を付与する遺伝子としては、例えば、耐病性、耐虫性、耐ウイルス性、細菌抵抗性、カビ抵抗性、ストレス耐性、花色関連遺伝子、形態形成に関与する遺伝子、生理活性物質の生合成系遺伝子、有用物質生産遺伝子等がある。
【0070】
他方、本発明に基づいて、植物を物質の生産工場として利用することもできる。具体的には、ワクチン遺伝子、抗体遺伝子、医薬原料生産遺伝子等を、医薬産業等において有用な物質の生産に利用することができる。あるいは、油脂の生合成系遺伝子、工業用酵素遺伝子等を、工業上有用な物質の生産に利用することができる。更に、研究を目的として、遺伝子発現機構の研究に必要とされる遺伝子群などを植物に導入することもできる。本発明における第2の外来性遺伝子は、自然界の生物からクローン化した遺伝子、化学合成遺伝子、あるいはそれらの組み合わせやそれらの改変遺伝子でも良い。植物細胞に導入する遺伝子の数も1つに限らず、目的に応じて複数であってもよい。
【実施例】
【0071】
以下に、本発明を実施例をあげて説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されない。
材料と方法
[実施例1]キメラプロモータの構築
ジーンバンクよりイネのRezA遺伝子のゲノム配列(AP000570)を得た。RezAの5'−上流域の2527-bp断片(完全長cDNAの開始点に対し-2431〜+96)を、0. sativa cv. NipponbareのゲノムDNAから、プライマー P5(5'-TCAAGCTTGACCGCTACCCTGGGCC-3')(配列番号:1)および P6(5'-GCTCTAGATCGGATCACTCGATCGGACGGC-3')(配列番号:2)を用いたPCRにより増幅した。PCRは、PCR SuperMix High Fidelity Reaction Mixture(Invitrogen)中で行った。サイクル条件は98℃で30秒、55℃で30秒、および72℃で2分を25サイクルであった。生成物をRezA2527と命名した。
【0072】
以下のとおり、PCRを用いてRezA2527断片から一連のプロモータの 5'−欠失体を生成した。(1)997-bp(-901〜+96)断片(RezA997)は、プライマー P7(5'-TCAAGCTTTTCTAGGGAAGATAAAGCG-3')(配列番号:3)およびP6を用いたPCRにより増幅した。サイクル条件は、98℃で30秒、55℃で30秒および72℃で1分を25サイクルであった。(2)478-bp(-382〜+96)断片(RezA478)は、プライマー P8(5'-TCAAGCTTTAGGAACTAATTACACAACG-3')(配列番号:4)およびP6を用いたPCRにより増幅した。
サイクル条件は、98℃で30秒、55℃で30秒および72℃で30秒を25サイクルであった。(3)233-bp(-137〜+96)断片(RezA233)はプライマーP9(5'-TCAAGCTTCCCTCGACCCGTCACG-3')(配列番号:5)およびP6を用いて増幅した。をサイクル条件は、478-bp断片の条件と同一であった。(4)135-bp(-39〜+96)断片(RezA135)は、P10(5'-TCAAGCTTCGCCTCTTTAAATGCG-3')(配列番号:6)およびP6を用いて増幅した。サイクル条件は、478-bp断片の条件と同一であった。プライマーP5、P7、P8、P9およびP10は、HindIII部位を有しており、P6はXbaI部位を有している。その結果、各欠失配列は、HindIII-XbaI断片として得られ、CaMV35Sプロモータ断片を、pCaMV35S-sGFP(S65T)-NOS3'(Chiu W, et al: Curr Biol 6: 325, 1996)およびpBI221プラスミド(Clontech)に置換するために用いられた。
【0073】
CaMV35Sプロモータのエンハンサー様エレメント(-351〜-84)(Odell JT, et al: Plant Mol Biol 10:263, 1988)は、次のプライマーを用いてpBI221よりPCRにより調製した。
35S-Sal(5'-CGTCGAGAGGGCAATTGAGAC-3')(配列番号:7)および
35S-Hind(5'-TCAAGCTTTGGAGATATCACATC-3')(配列番号:8)
プライマー 35S-Salは、SalI部位およびCaMV35Sプロモータのエンハンサー様エレメントの5' 領域と同一の配列を含んでいる。プライマー35S-Hindは、HindIII部位および前記エンハンサー様エレメントの3' 領域に相補的な配列とを含んでいる。PCRサイクル条件は、98℃で30秒、55℃で30秒、72℃で30秒を25サイクルであった。PCR産物はSalI-HindIII断片(以下、「E」と称する)にRezA135を連結したものとして獲得し、pBluescript SKII(Stratagene)のSalIとXbaI部位間に挿入してp1xE-RezA135を得た。
【0074】
タンデムリピートの構築を実質的に(Rushton PJ, et al: Plant Cell 14:749, 2002)に記載の方法に従って実施した。即ち、p1xE-RezA135をSalIまたはHindIIIのいずれかとXbaIで消化した。EおよびRezA135の融合断片である1xE-RezA135をSalIおよびXbaI消化してp1xE-RezA135から切り出し、p1xE-RezA135のHindIII-XbaI部位に挿入してp2xE-RezA135を得た。連結する前に、1xE-RezA135断片のSalI部位とp1xE-RezA135のHindIII部位をクレノウフラグメント(Klenow fragment)で平滑化し、続いてXbaIで消化した。この手順を繰り返し、p4xE-RezA135およびp8xE-RezA135のSalI-XbaI部位にエンハンサー様エレメントを4コピー(4xE-RezA135)そしてエンハンサー様エレメントを8コピー(8xE-RezA135)含むキメラプロモータを得た。
【0075】
キメラプロモータの選択効率を検証するために、以下のようにして4xE-RezA135および8xE-RezA135それぞれをHPT遺伝子と融合した。第一に、HPT遺伝子をバイナリーベクター pPZP2H-lac(Fuse T, et al: Plant Biotechnol 18: 219, 2001)から次のプライマーを用いてPCRで増幅した。
HYGF(5'-CGCGGATCCATGAAAAAGCCTGAACTC-3')(配列番号:9)および
HYGR(5'-TATGAGCTCCTATTCCTTTGCCCTCGG-3')(配列番号:10)
HYGFは、BamHI部位およびHPTの5' 末端領域と同一な配列とを含んでいる。HYGRはSacI部位およびHPTの3' 末端領域に相補の配列とを含んでいる。サイクル条件は、98℃で30秒、55℃で30秒そして72℃で1分間の25サイクルであった。
HPTはBamHI-SacI断片として得られ、これを用いてバイナリーTiプラスミドpBI121(Clontech)のGUS遺伝子を置換してpBI-CaMV35S-HPTを得た。キメラプロモータをHPTに融合するために、CaMV35SをHindIII-XbaI消化してpBI-CaMV35S-HPTから放出した。SalI-XbaI消化によってp4xE-RezA135またはp8xE-RezA135から切り出された断片4xE-RezA135または8xE-RezA135をpBI-CaMV35S-HPTのHindIII-XbaI部位に挿入してpBI-4xE-RezA135-HPTまたはpBI-8xE-RezA135-HPTを得た。連結する前に、4xE-RezA135および8xE-RezA135のSalI部位、pBI-CaMV35S-HPTのHindIII部位をクレノウフラグメント(Klenow fragment)で平滑化し、続いてXbaIで消化した。
【0076】
キメラプロモータの発現を組織学的に試験するために、4xE-RezA135または8xE-RezA135それぞれに以下のようにしてGUS遺伝子を融合した。p4xE-RezA135またはp8xE-RezA135から切り出した4xE-RezA135または8xE-RezA135のSalI-XbaI断片をpBI1221のHindIII-XbaI部位に挿入し、p4xE-RezA135-GUSおよびp8xE-RezA135-GUSを得た。連結前に、4xE-RezA135および8xE-RezA135のSalI部位、pBI221のHindIII部位をクレノウフラグメント(Klenow fragment)で平滑化し、続いてXbaI消化した。これらp4xE-RezA135-GUSおよびp8xE-RezA135-GUSは一過性発現アッセイに用いた。
【0077】
形質転換体を生成するために、4xE-RezA135-GUSまたは8xE-RezA135-GUS断片それぞれを、2工程でバイナリープラスミドpPZP2H-lacにクローニングし直し、pPZP-4xE-RezA135-GUSおよびpPZP-8xE-RezA135-GUSを作成した。第1工程では、GUS遺伝子のXbaI-EcoRI断片をpBI221から切り出してpPZP2H-lacのXbaI-SacI部位に挿入し、pPZP-GUSを生成した。連結前にGUS遺伝子のEcoRI部位をクレノウフラグメント(Klenow fragment)で平滑化し、pPZP2H-lacのSacI部位は、KOD DNAポリメラーゼ(TOYOBO CO., LTD.)を用いて平滑化してからXbaI消化を行った。
第2工程では、p4xE-RezA135またはp8xE-RezA135から切り出された4xE-RezA135または8xE-RezA135のSalI-XbaI断片を、pPZP-GUS内のHindIII-XbaI部位に挿入してpPZP-4xE-RezA135-GUSおよびpPZP-8xE-RezA135-GUSを作成した。連結前に、4xE-RezA135および8xE-RezA135のSalI部位、pPZP-GUSのHindIII部位をクレノウフラグメント(Klenow fragment)で平滑化し、続いてXbaI消化を行った。
【0078】
[実施例2]一過性発現アッセイ
一過性発現アッセイをhelium-driven particle bombardment apparatus(Model GIE-III, Tanaka Co., Ltd.)を用いて行った。撃ち込み条件は既に報告されている(Sugimura Y, et al: Sericologia 39: 33, 1999)。プラスミドDNA 1 μgでコーティングした金粒子(0.03 mg; Cat. no. 165-2263, Bio-Rad)をイネカルス、根および葉に撃ち込んだ。撃ち込んだ組織を暗所、28℃にて、ホルモンを含まない、無機塩およびビタミンを含む寒天培地(Murashige and Skoog basal medium with Gamborg's vitamins, Sigma)上で一晩インキュベーションした。
【0079】
連続した一連の5'−欠損体のプロモータ活性を評価するために(図1B)、GFPフィルターセット(励起波長:460〜490 nm;発光:510〜550 nm;二色性:505 nm)を持つIX-FLA(Olympus Corp.)を装備したIX70蛍光顕微鏡を使ってGFP蛍光活性化細胞を探し、16-ビット冷却CCDカメラ(Roper Scientific, Inc)を用いて蛍光細胞像を撮影した。グレースケールフィルムを用いてデジタル化されたグレー値の較正を行った後、細胞像を画面上でトレースし、続いてScion Imagingソフトウエア(Scion Corp.)を用いて蛍光強度を半定量的に測定し平均値を得た。値は選択した細胞内のピクセルの平均グレー値であった。実験は同一条件で3回繰り返した。各実験では、一連の5'−欠失プロモータおよびCaMV35Sプロモータについて、少なくとも20個の独立した蛍光細胞を選び測定した。平均蛍光強度を計算して完全長プロモータ、RezA2527により誘導された活性に対する相対活性を決定した。
【0080】
粒子を撃ち込んだ後、1 mM 5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-グルクロン酸(X-Gluc)、20% MeOHおよび0.1% Tween 20を含有する50 mMリン酸緩衝液(pH 7.0)の中で組織化学的GUS染色(Jefferson RA, et al: EMBO J 6: 3901, 1987)を37℃で一晩行った。
【0081】
[実施例3]イネの形質転換体
キメラプロモータでの選択効率を検証するために、pBI-4xE-RezA135-HPTおよびpBI-8xE-RezA135-HPTを凍結融解法(Holsters M, et al: Mol Gen Genet 163: 181, 1978)を用いてA.tumefaciens株LBA4404に導入して、これをカルスに感染させた。イネカルス(O. sativa cv. Nipponbare)は、公知のAgrobacterium−媒介形質転換法(Hiei Y, et al: Plant J 6: 271, 1994)を用いて形質転換した。
【0082】
カルス、シュートおよび根組織での発現を見るために、pPZP-4xE-RezA135-GUSおよびpPZP-8xE-RezA135-GUSを上記の凍結融解法を用いてA.tumefaciens株EHA101に導入してカルスに感染させた。トランスジェニックカルスおよび再生植物をハイグロマイシンBを50 mgl-1含む寒天培地(Kyozuka J, Shimamoto K: Plant Tissue Culture Manual. Kluwer Academic Publishers, pp B1, 1-16, 1991)で培養した。
【0083】
[実施例4]PCR、RT-PCRおよびサザン分析
、PCRおよびサザン分析を用いて、コンストラクトのトランスジェニック植物内への組込みを検証した。再生したイネの葉から、(Murry MG, Thompson WF: Nucleic Acids Res 8: 4321, 1980)に記載のようにしてゲノムDNAを調製した。PCRは、PCR SuperMix High Fidelity Reaction Mixture(Invitrogen)中で実施した。サザン分析については、イネゲノムDNA 10μgを、GUS遺伝子中にその制限部位がないHindIIIで消化した。HindIIIで消化したpBI121(13kb)およびGUSのPCR産物(1.8kb)を、シングルコピーコンストラクトの標準として使用した。各トランスジェニック植物中のゲノム当たりのコピー数は、それぞれシングルコピーコンストラクトに相当するpBI121 162.5 pgおよびGUS遺伝子22.5 pgから見積もった(図5C)。
【0084】
GUS遺伝子プローブは、コーディング領域に相当し、以下のプライマーを用いてpBI121からPCRで増幅した。
GUS-F(5'-GTCTGGTATCAGCGCGAAGTCT-3')(配列番号:11)および
GUS-R2(5'-TCCATACCTGTTCACCGACGAC-3')(配列番号:12)
サイクル条件は、98℃で30秒、55℃で30秒、72℃で1分の25サイクルとした。メンブレンをGUS遺伝子プローブと55℃でハイブリダイゼーションさせ、55℃にて洗浄した後、メーカーの取扱説明書に従ってAlkPhos Direct Labeling and Detection System(Amersham Biosciences)により可視化した。
【0085】
RT-PCR分析では、葉、根およびカルスからSepasol(Nacalai Tesque)を用いて全RNAを抽出した。DNase1で処理した全RNAをSuperScript III逆転写酵素(Invitrogen)およびオリゴ d(T)15(Gibco BRL)を用いて逆転写した。第一鎖生成物は、3'-UTRを含有する307 bpに相当するRezAに特異的な次のプライマーのセットを用いて増幅した。
RezRTF2(5'-ACTCGGGTACGTGGTGAAACCG-3')(配列番号:13)および
RezRTR2(5'-GACGACGACGCCATCCATCC-3')(配列番号:14)
GUS mRNA検出に関しては、3'−領域を含有する499 bpに対応する次のプライマーのセットを用いた。
GUS-F2(5'-ACTCAGCAAGCGCACTTACAGG-3')(配列番号:15)および
GUS-R2(5'-TCCATACCTGTTCACCGACGAC-3')(配列番号:16)
同一サンプルを、対照としてアクチン遺伝子に特異的なプライマーで増幅した。RT-PCRのサイクル数は図1Aでは25回、図3Aおよび図3Bでは20回であった。
【0086】
[実施例5]DNAメチル化の分析
組込まれたGUS遺伝子のDNAメチル化を検証するために、メチル化−感受性である制限酵素HpaIIおよびMspIを用いて、シトシンのメチル化レベルを検定した。トランスジェニックイネのゲノムDNA(10 μg)をHpaIIまたはMspIで消化してから標識化したGUS遺伝子プローブとハイブリダイゼーションした。
【0087】
結果および考察
<カルスで高発現できるキメラプロモータの構築>
大規模なcDNA配列決定による発現プロフィール分析を通じて、イネ(O. sativa cv. Nipponbare)RezA遺伝子がカルス組織内で高発現していることを確認した(データは示さず)。RezA mRNAのcDNA配列は、DDBJ/EMBL/GenBank(U46138)に登録され、イネの亜鉛誘導タンパク質(Zn induced protein)と名づけられているが機能は未知である。その後、より長い5'-UTRを有する全長cDNAと思われる配列(AK069098)が単離された(Kikuchi S, et al: Science 301: 376, 2003)。
【0088】
この遺伝子がカルスで優先的に発現しているかを知るために、カルス、葉、根および吸水24、48および96時間後の発芽中の種子から調製したcDNAライブラリーについてRezA遺伝子転写体の出現頻度を比較した。RezAはカルスでは高発現し、葉もしくは根では高発現していなかったが(データ示さず)、この推定は次にRT-PCR分析によって確認された(図1A)。図1Aでは葉のアクチン増幅レベルがその他の組織に比べ低かったが、アクチンレベルを他組織と同量に調整した場合でもRezA遺伝子の発現が検出できないことを確認した。
【0089】
興味深いことに、RezAは吸水24時間後の発芽中の種子で発現していたが、その後発現は代謝活性が加速する時期である(Takahashi N: Science of the rice plant. FAPRC Tokyo 2: pp35-56, 1995)吸水48および96時間後に急激に減少していた(データ示さず)。RezAの機能は、今のところ確認されていない。
【0090】
GenBankよりイネのRezAゲノム配列(AP000570)を得た。得たRezA2527(-2431〜+96までの完全長プロモータ)のプロモータ活性を一過性発現アッセイにより試験したところ、プロモータは葉および根で弱い活性を示した。そのため、カルス特異的発現を担う領域を決定するために、5'-欠失構築体を用いてプロモータ活性を試験した(図1B)。カルス内でのRezA135(-39〜+96)のプロモータ活性はより長いプロモータの約半分であり、葉および根ではゼロであった(データ示さず)。
【0091】
これらの結果は、前記135-bp断片の中にカルス特異的シス−作用エレメントが存在することを示している。5'-フランキング領域(-39〜+96)のコンピュータ検索(PLACEデータベース;Higo K, et al: Nucleic Acids Res 27: 297, 1999)は、TATAボックス様モチーフを欠いていることを明らかにした。したがって、RezA135は、TATAボックス非依存型プロモータと思われる。5'-UTR領域(位置+2〜+7)にイニシエータ様エレメント(PyPyA(+1)N(T/A)PyPy:ccacac)(Smale ST, et al: Cell 57: 103, 1989)を、そしてイニシエータ様配列(+13〜+73)(Nakamura M, et al: Plant J 29: 1, 2002)近くにTCAモチーフを見いだした。いくつかのTATA欠失プロモータでは、イニシエータエレメントがTATAボックスの欠失を代償し、転写開始部位と重複している(Achard P, et al: Plant J 35: 743, 2003)。これらのことは、RezA135プロモータはTATAボックス非依存型であることを示している。
【0092】
トランスジェニックイネの選択に使用できるレベルまでRezA135のプロモータ活性を強化するために、この断片にCaMV35S遺伝子(図2A)の5'-上流領域(位置 -351〜-84)より得たエンハンサー様エレメントの多量体を組み合わせた。一過性発現アッセイでは、エンハンサー様エレメントを4または8コピー融合すると、CaMV35Sコアプロモータについて報告されているように(Mitsuhara I, et al: Plant Cell Physiol 37: 49, 1996)プロモータ活性を高めた。我々の知る限りでは、本例がウイルス由来エンハンサーによる真核生物のTATA欠失プロモータへのエンハンサー効果を実証した最初の報告である。
【0093】
<キメラプロモータの選択効果と内在性遺伝子発現に及ぼす影響>
選択効率を明らかにするために、pBI-4xE-RezA135-HPTおよびpBI-8xE-RezA135-HPTをイネに導入した。ハイグロマイシンB 50 mgl-1を含有する寒天培地で、形質転換したイネのカルスを選択した。サザン分析は、再生した植物がすべてHPT遺伝子を持っていることを示した(データは示さず)。この結果は、キメラプロモータの活性がCaMV35Sプロモータを用いた時に得られる活性と少なくとも同程度強いことを示している。
【0094】
次に、キメラプロモータが内在性RezA遺伝子の発現に及ぼす影響について調べた。キメラプロモータはカルスで高発現することから、形質転換したカルスでの内在性RezA遺伝子の発現に及ぼすその影響について試験した。pPZP-4xE-RezA135-GUSおよびpPZP-8xE-RezA135-GUSをカルス内に導入した。図3Aに示すように内在性RezAは、非形質転換体およびレポーター GUS遺伝子が様々なレベルで発現している6種類の形質転換体で同レベルに発現していた(図3B)。レーン1、2および3では弱いGUSシグナルが検出された。一方、非形質転換体のレーンでは、GUS発現は検出されなかった。この結果は、キメラプロモータが内在性RezA遺伝子の発現には全く影響せず、したがって、キメラプロモータはカルスを正常に成長および発生させることを示している。このように、本プロモータはイネへの遺伝子導入にとって理想的なものと思われる。
【0095】
<トランスジェニックイネ植物でのキメラプロモータ活性の組織化学的分析>
キメラプロモータの活性様式を検証するために、図3と同一のベクター、即ちpPZP-4xE-RezA135-GUSおよびpPZP-8xE-RezA135-GUSを用いて形質転換したトランスジェニックカルスおよび植物を組織化学GUS染色して観察した。図4に示すように、強いGUS活性がカルスで検出され、そして根およびシュートでは弱い活性が検出された。根およびシュートでの陽性GUS染色は、CaMV35Sプロモータ由来のエンハンサーが持つタンデムリピートの影響によるものと推測した。根でGUS染色が陽性であったことから、キメラプロモータ:HPT遺伝子を導入すれば再生中の根がハイグロマイシンBに耐性になる可能性が出てきた。
【0096】
実際にキメラプロモータ:HPT遺伝子を持つ再生中のカルスはハイグロマイシンB含有再生培地で維持することができ、正常に発生した(データ示さず)。HPTの発現をカルス内でのみ活性であるプロモータで制御した場合には、トランスジェニックカルスに由来する再生中の植物はすべて選択培地で増殖しにくくなるが(Huang N, at al: Plant Sci 161: 589, 2001)、これは根がハイグロマイシンBに耐性でないからである。実際の使用では、トランスジェニック植物を選択培地での再生期間中に損失することなしに維持することが望ましい。したがって、、キメラプロモータは他のカルス特異的プロモータに比べより有用であろう(Huang N, at al: Plant Sci 161: 589, 2001)。
【0097】
しかし、本発明者らは、いくつかの形質転換体がGUS活性を有さない根を持つことを見いだした(図5A:1、2、4、5)。図5BおよびCが示すように、サザン分析はGUS遺伝子が根においてGUS遺伝子を発現していないすべての植物のゲノムDNAに組み込まれていることを示した。
【0098】
そこで、GUS遺伝子のメチル化について、メチル化−感受性制限酵素HpaIIおよびMspIを用いたDNAゲルブロット分析により検証した。HpaIIは、C残基がメチル化されていない場合のみCCGG部位を切断するが、一方MspIは、C5mCGGのときは切断するが5mCCGGでは切断しない。GUS遺伝子内にはCCGG部位が多数存在しており−ほぼ100または200ヌクレオチド毎−したがってC残基がメチル化されていなければ約100または200 bpに相当する2種類の主要バンドのみが、図5Bのサンプル3および6に見られるように、ゲル底部に検出される(2本の白色の矢印で示す)。
【0099】
一方、図5Bのサンプル1、2、4および5に示すように、予想されるものより長いいくつかのバンド(黒色の矢じりで示す)は、GUS遺伝子内のいくつかのC残基がメチル化されていることを示す。従ってDNAメチル化分析からは、根でGUSを発現していない植物ではGUS遺伝子がメチル化されているが(図5A、B:1、2、4、5)、根が青く染まった植物ではメチル化されていない(図5A、B:3、6)ことを示した。高等植物では、DNAの反復配列のメチル化と遺伝子サイレンシングが関連している(Selker EU: Cell 97: 157, 1999; Chan SWL, et al: Science 303: 1336, 2004; Hirochika H, et al: Plant Cell 12: 357, 2000)。
【0100】
図5Cから、組込まれたGUS遺伝子のコピー数を推定した。サンプル3および6のバンド密度は共に2つのスタンダード(1.8- および13-kbバンド)の中間であった。これらの結果は、サンプル3および6では組込まれたコピーの数が1であることを示している。2種類のスタンダードの間にある再構築バンドの密度差は、アガロースゲルからブロッティングメンブレンへのDNA移動の効率差によって生じるものであろう(低分子の移動効率は、高分子の移動効率に比べ良好である)。このことはデータにも反映されており、1.8-kbバンドの密度は13-kbバンドの密度より高い。根が染色されていない植物(図5A、C:1、2、4、5)は、複数のGUS遺伝子が組込まれている。
【0101】
このことは、キメラプロモータは相同性−依存型の遺伝子サイレンシングとDNAのメチル化を起こす傾向があることを示唆している。キメラプロモータのこの特性は図6にみることができ、ここではキメラプロモータを用いて形質転換した選択植物(図6:1 〜 8)に組込まれたHPT遺伝子のコピー数がCaMV35Sプロモータを用いて形質転換した植物(図6:9〜15)より低くなっている。即ち、キメラプロモータは高コピー数が組込まれた形質転換体を取除くのに有用であるシステムを提供する。キメラプロモータが相同性−依存型の遺伝子サイレンシング誘導の傾向が強いことは、キメラプロモータ内にエンハンサー様エレメントの複数のコピーが存在していることによるものであろう。
【0102】
次に、イネの穀粒でのキメラプロモータの発現パターンを調べた。図7A、Bに見られるように、GUS発現はデンプン貯蔵柔組織には検出されず、表層にのみ検出された。表層は消化が悪く食味にも悪いので、通常、玄米は、この表層(ぬか部分)を取り除いて精米にしてから食用にする。玄米の表層は果皮、種皮、及びアリューロン層で構成される。表層は、消化に悪く食味も悪い。これらの結果は、キメラプロモータを形質転換に用いることで、マーカー遺伝子の産物を持たない精米の内乳(食用組織)が得られることを示している。組織特異性を持たないCaMV35Sのようなプロモーターでは可食部分にもマーカー遺伝子産物が発現する。そのため食物中にマーカー遺伝子産物が長く存在することが一般に知られている。食用組織にこのような産物がないことはトランスジェニック米の商品化にとって有益であろう。
【0103】
[実施例6]本発明によるキメラプロモーターを用いた形質転換体の作出
培地組成は基本的には文献Kyouzuka J and Shimamoto K Plant Tissue Culture Manual. Kluwer Academic Publisher, pp B1, 1-16 1991に従った。イネカルスはアグロバクテリウム感染後10mg/lのアセトシリンゴンを含むカルス誘導培地で3日培養した。アグロバクテリウム菌体の増殖が肉眼的に観察できるようになってから、カルスを回収した。集めたカルスは、菌体が除去されて洗浄水が透明になるまで滅菌洗浄水で洗った。最後の洗浄水には500mg/lのカルベニシリンを加えた。
【0104】
余分な水分を除去したカルスを、50mg/lの ハイグロマイシンBを含むカルス誘導培地に置いて選抜を開始した。選抜開始後3週間目に再分化培地に移植して選抜を継続した。移植後、3〜5週間目に再分化してシュートが確認された。この段階で、本発明のプロモーターは多コピー導入個体の耐性を低くしている。そのため、シングルコピーをもつ少数の耐性カルスが優先的に再分化し始めた。カルスの数が少ないので、異なるクローン由来のシュートを容易に識別することができた。そのため、この時点でカルスを分けることによって、異なるクローンの混入を容易に防ぐことができた。選抜されたクローンは、成長を速めるためにハイグロマイシンBを除いた培地で完全植物体になるまで生育させた。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明は、植物の遺伝子工学的な形質転換に有用である。より具体的には、選択マーカーを利用した植物の形質転換体の製造において、選択マーカーをカルスおよび根特異的に発現させることができる。つまり種子や実を可食部とする植物においては、本発明によって可食部に選択マーカーを含まない植物体を提供できる。更に本発明は、植物体に導入される外来性遺伝子のコピー数の制御を実現した。形質転換植物における外来性遺伝子の導入コピー数の制御は、安定な形質転換体を得る上できわめて重要な条件である。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】(A)イネでのRezA遺伝子の組織特異的発現を示す図である。NAA 1 mgl-1およびBAP 2 mgl-1含む再生培地でインキュベーションしたカルス(C1)、2,4-D 2 mgl-1含む誘導培地でインキュベーションしたカルス(C2)、シュート(S)または根(R)についてのRT-PCR産物についてアガロースゲル電気泳動を行った。RT-PCRはイネのアクチン遺伝子を対照として実施した。(B)レポーター遺伝子に融合したRezA遺伝子プロモータの段階的欠失構築体の概略図。(C)キメラプロモータ導入細胞における、キメラプロモータの発現強度を示すグラフである。蛍光顕微鏡で撮影した細胞像に対し、Scion Imagingソフトウエア(Scion Corp.)を用いて蛍光強度を半定量化および平均化した。同一条件で3回繰り返し実験行い、各実験では、一連の5'−欠失プロモータおよびCaMV35Sプロモータについて、少なくとも20個の独立した蛍光細胞を選び測定した。縦軸は、RezA2527に対する平均蛍光強度の相対値を示す。
【図2】イネのカルスでのキメラプロモータの一過性発現分析を示す図、及び写真である。(A)GUS遺伝子に融合した、エンハンサー様エレメントを4または8コピー有するキメラプロモータの図である。E(斜線入りボックス);CaMV35Sプロモータのエンハンサー様エレメント(-351〜-84)。(B)エレクトロポレーション後1日目のイネのカルスでのGUSの組織化学検出を示す写真である。プラスミドは、1; RezA135; 2: 4×E-RezA135; 3: 8×E-RezA135; 4: 陽性コントロール(CaMV35S)を含む。
【図3】pPZP-4xE-RezA135-GUSおよびpPZP-8xE-RezA135-GUSで形質転換したイネ植物のRT-PCR分析を示す写真である。(A)RezA遺伝子発現。307-bpバンドはRezA遺伝子転写体の3'−領域に対応する。(B)GUS遺伝子発現。499-bpバンドはGUS遺伝子転写体の3'−領域に対応する。レーン1〜6;トランスジェニックイネ植物。Non;非形質転換植物。
【図4】初期再生段階のトランスジェニック植物での、キメラプロモータ制御下でのGUSレポーター遺伝子の発現を示す写真である。T0トランスジェニック植物はGUSについて染色した。1; pPZP-4xE-RezA135-GUSで形質転換した植物、2および3; pPZP-8xE-RezA135-GUSで形質転換した植物。
【図5】(A)トランスジェニック植物の根でのGUS遺伝子発現を示す写真である。(B)図5Aのトランスジェニック植物におけるDNAメチル化の分析を示す写真である。ブロットを標識GUS遺伝子プローブでハイブリダイゼーションした。レーン2および4のゲノムDNAはメチル化されていた。レーン1および5で弱いメチル化が検出された。レーン3および6のDNAはメチル化されていなかった。下方の2本のバンド(白色の矢印で示した)はメチル化されていないGUS遺伝子が消化されたものを示している。黒色の矢じりは消化されなかった(メチル化された)DNAを示す。H;HpaII、M;MspI、N;形質転換していないコントロールDNA。(C)組込まれたGUS遺伝子のコピー数推定のためのサザン再構築実験を示す写真である。サンプル1、2および3は、pPZP-4xE-RezA135-GUSで形質転換した。サンプル4、5および6は、pPZP-8xE-RezA135-GUSで形質転換した。ブロットを標識GUS遺伝子プローブでハイブリダイゼーションした。GUS遺伝子配列は、HindIII制限部位を含まない。推定コピー数は、レーン1、2、4および5では1より多く、レーン3および6では1である。N+GUS;GUS遺伝子プローブ22.5 pgを非トランスジェニックのイネのゲノムDNA 10μgと混合した。
【図6】キメラプロモータによりHPT遺伝子で形質転換されたトランスジェニックイネ植物のサザン分析を示す写真である。ゲノムDNAをEcoRI(E)またはHindIII(H)のいずれかで消化した。ブロットを標識HPT遺伝子プローブでハイブリダイゼーションした。レーン1〜4;4xE-RezA135+HPTを含むプラスミドで形質転換したトランスジェニックイネ。レーン5〜8;8xE-RezA135+HPTを含むプラスミドで形質転換したトランスジェニックイネ。レーン9〜15;CaMV35Sプロモータ+hptで形質転換したトランスジェニックイネ。Non;非形質転換植物。
【図7】トランスジェニックイネの穀粒におけるGUS活性の局在化を示す写真である。(A)各種子は独立したクローンに由来する植物から得たものであり、また穀粒は染色前に横断面切片を作製した。(B)デンプン貯蔵組織の外層にGUS活性を示す染色した種子の拡大図。s;デンプン充填柔細胞。o;アリューロン層、種皮および果皮で構成される外層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の工程を含む、植物細胞において、複数コピーが導入された外来性遺伝子をメチル化する方法;
1) 転写調節配列の制御下に発現する外来性遺伝子を含むコンストラクトで植物細胞を形質転換する工程であって、前記転写調節配列が、少なくとも、(a)プロモーターと、(b)複数の同じ塩基配列を含むエンハンサーを含む工程、および
2) 1)のコンストラクトを植物細胞に導入しゲノムにインテグレートする工程。
【請求項2】
プロモーターが、イネRezA遺伝子のプロモーターである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
イネRezA遺伝子のプロモーターが、配列番号:17に記載の塩基配列を含む請求項2に記載の方法。
【請求項4】
イネRezA遺伝子のプロモーターが、配列番号:17に記載の塩基配列からなる請求項3に記載の方法。
【請求項5】
エンハンサーが、CaMV 35Sプロモーター由来のエンハンサーである請求項1に記載の方法。
【請求項6】
CaMV 35Sプロモーター由来のエンハンサーが、配列番号:13に記載の塩基配列を含む請求項5に記載の方法。
【請求項7】
外来性遺伝子が、選択マーカーである請求項1に記載の方法。
【請求項8】
次の工程を含む、第2の外来性遺伝子が導入された植物体の製造方法;
1) 転写調節配列の制御下に発現する第1の外来性遺伝子と、植物細胞に導入すべき第2の外来性遺伝子を含むコンストラクトを植物細胞に導入する工程であって、前記転写調節配列が、少なくとも、(a) RezA遺伝子のプロモーター、(b)同じ塩基配列を含む複数のエンハンサーを含み、かつ第1の外来性遺伝子が選択マーカーである工程、
2) 1)のコンストラクトを植物細胞のゲノムにインテグレートする工程、
3) 前記選択マーカーを発現する細胞を選択できる培地で2)の植物細胞を培養してカルスを形成する工程、
4) 3)のカルスから根が発生するまで、前記培地でカルスを培養する工程、および
5) 根が発生したカルスを植物体に分化させる工程。
【請求項9】
(a) RezA遺伝子のプロモーター、および(b)同じ塩基配列を含む複数のエンハンサーを含む転写調節配列と、当該転写調節配列の制御下に発現する外来性遺伝子を含む、外来性遺伝子を植物の根において発現させるための遺伝子発現ユニット。
【請求項10】
請求項9に記載の遺伝子発現ユニットを導入された植物細胞。
【請求項11】
次の工程を含む、低コピー数の第2の外来性遺伝子が導入された植物細胞の製造方法;
1) 転写調節配列の制御下に発現する第1の外来性遺伝子と、植物細胞に導入すべき第2の外来性遺伝子を含むコンストラクトを植物細胞に導入する工程であって、前記転写調節配列が、少なくとも、(a) RezA遺伝子のプロモーター、(b)同じ塩基配列を含む複数のエンハンサーを含み、かつ第1の外来性遺伝子が選択マーカーである工程、
2) 1)のコンストラクトを植物細胞のゲノムにインテグレートする工程、
3) 前記選択マーカーを発現する細胞を選択できる培地で2)の植物細胞を培養してカルスを形成する工程、および
4) 形成されたカルスのゲノムに含まれる前記第2の外来性遺伝子を定性的に検出し、当該遺伝子が検出されたカルスの細胞を低コピー数の第2の外来性遺伝子が導入された植物細胞として選択する工程。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−124957(P2007−124957A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−321042(P2005−321042)
【出願日】平成17年11月4日(2005.11.4)
【出願人】(503044617)株式会社 植物ディー・エヌ・エー機能研究所 (7)
【出願人】(500301371)株式会社植物ゲノムセンター (16)
【Fターム(参考)】