説明

外燃機関

【課題】加熱器による加熱効率を向上する。
【解決手段】作動媒体14が液体状態で流動可能に封入された管状の容器10と、容器10の一端側に配置され、外部から供給された熱で作動媒体14を加熱して蒸発させる加熱器15と、容器10のうち加熱器15の配置部位よりも他端側に配置され、加熱器15によって蒸発した作動媒体14の蒸気を冷却して凝縮させる冷却器19と、容器10の他端部に連通し、作動媒体14の蒸発と凝縮に伴う作動媒体14の体積変動によって生じる作動媒体14の液体部分の変位を機械的エネルギに変換して出力する出力部11とを備え、加熱器15は、冷却器19に近い部位が厚肉をなし、冷却器19から離れた部位が薄肉をなすように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作動媒体の蒸発と凝縮によって作動媒体の液体部分を変位させ、作動媒体の液体部分の変位を機械的エネルギに変換して出力する外燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の外燃機関は、液体ピストン蒸気エンジンとも呼ばれ、管状の容器内に作動媒体を液相状態で流動可能に封入し、容器の一端部に配置された加熱器によって液相状態の作動媒体の一部を加熱して蒸発させ、容器の中間部に配置された冷却器によって作動媒体の蒸気を冷却して凝縮させ、この作動媒体の蒸発と凝縮によって作動媒体の液体部分を周期的に変位(いわゆる自励振動)させ、容器の他端部と連通する出力部にて、この作動媒体の自励振動を機械的エネルギとして取り出すように構成されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
この特許文献1の従来技術では、加熱器が上下方向に延びる円筒状に形成されており、この円筒状の加熱器の内面側に形成された空間が、作動媒体を加熱して蒸発させる加熱部を構成している。円筒状の加熱器は、内径および外径がともに一定であり、肉厚が一定になっている。
【0004】
同様に、冷却器も上下方向に延びる円筒状に形成されており、この円筒状の冷却器の内面側に形成された空間が、作動媒体を冷却して凝縮させる冷却部を構成している。
【特許文献1】特開2005−330909号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来技術では、作動媒体が自励振動することから、加熱部のうち冷却部に近い下方部と、冷却部から離れた上方部とでは作動媒体の液体部分の存在する時間が異なる。より具体的には、冷却部に近い下方部ほど、作動媒体の液体部分の存在する時間が長くなる。その結果、加熱器の下方部では作動媒体と熱交換する熱量が多くなり、加熱器の上方部では作動媒体と熱交換する熱量が少なくなる。
【0006】
一方、上記従来技術では、円筒状の加熱器の肉厚が一定になっていることから、加熱器は下方部と上方部とで熱容量が同じになる。
【0007】
そのため、加熱器のうち作動媒体と熱交換する熱量が多い下方部では、作動媒体と熱交換する熱量が少ない上方部よりも温度低下してしまうので、加熱器の加熱効率が低下してしまうという問題がある。
【0008】
本発明は上記点に鑑みて、加熱器による加熱効率を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、作動媒体(14)が液体状態で流動可能に封入された管状の容器(10)と、
容器(10)の一端側に配置され、外部から供給された熱で作動媒体(14)を加熱して蒸発させる加熱器(15)と、
容器(10)のうち加熱器(15)の配置部位よりも他端側に配置され、加熱器(15)によって蒸発した作動媒体(14)の蒸気を冷却して凝縮させる冷却器(19)と、
容器(10)の他端部に連通し、作動媒体(14)の蒸発と凝縮に伴う作動媒体(14)の体積変動によって生じる作動媒体(14)の液体部分の変位を機械的エネルギに変換して出力する出力部(11)とを備え、
加熱器(15)は、冷却器(19)に近い部位が厚肉をなし、冷却器(19)から離れた部位が薄肉をなすように形成されていることを特徴とする。
【0010】
これによると、加熱器(15)は、冷却器(19)に近い部位が厚肉をなしているので、加熱器(15)のうち冷却器(19)に近い部位の熱容量を大きくできる。このため、加熱器(15)のうち冷却器(19)に近い部位での温度低下を抑制できるので、加熱器(15)の加熱効率を向上できる。
【0011】
しかも、加熱器(15)は、冷却器(19)から離れた部位が薄肉をなしているので、加熱器(15)のうち冷却器(19)から離れた部位の肉厚が過剰になることを回避でき、ひいては小型軽量化を図ることができる。
【0012】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の外燃機関において、加熱器(15)は、内面側で作動媒体(14)を加熱する閉断面部(15a)を有しており、
閉断面部(15a)は、冷却器(19)に近い部位が大断面積をなし、冷却器(19)から離れた部位が小断面積をなすように形成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の発明では、請求項2に記載の外燃機関において、閉断面部(15a)は、冷却器(19)から離れた側から冷却器(19)に近い側に向かうにつれて外面が外側に向かって拡がる形状を有していることを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の発明では、請求項2に記載の外燃機関において、閉断面部(15a)は、冷却器(19)に近い側から冷却器(19)から離れた側に向かうにつれて内面が外面側に向かって窪む形状を有していることを特徴とする。
【0015】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図1、図2に基づいて説明する。本実施形態は、本発明による外燃機関(液体ピストン蒸気エンジン)を車両に搭載される発電装置に適用したものである。
【0017】
図1は本実施形態による液体ピストン蒸気エンジンの概略構成を表す断面図であり、図1中の上下の矢印は液体ピストン蒸気エンジンの設置状態における上下方向を示している。図2は図1の要部拡大図である。
【0018】
本実施形態による液体ピストン蒸気エンジンは容器10と、出力部をなす発電機11とを有している。発電機11は、ケーシング12内に永久磁石が埋設された可動子13を収納しており、可動子13が振動変位することによって起電力を発生する。
【0019】
容器10は、作動媒体(本例では水)14が液体状態で流動可能に封入された管状の圧力容器であり、中間部が下方側に位置し、両端部が上方に向かって延びる略U字状に形成されている。本例では、容器10をステンレスで形成している。
【0020】
発電機11は、略U字状の容器10の一端部に配置されており、容器10の他端部には、高温流体(本例では排気ガス)を加熱源として作動媒体14を加熱する加熱器15が配置されている。加熱器15は、熱伝導性に優れた材質(本例では、銅)で形成されている。
【0021】
なお、加熱器15は一体成形することができる。また、加熱器15を複数個の分割体に分割して成形した後に、この複数個の分割体をネジ等の締結手段によって一体に締結することで加熱器15を形成してもよい。
【0022】
加熱器15は、上下方向に延びる円筒状の閉断面部15aを有しており、この閉断面部15a内面側で作動媒体14を加熱する。閉断面部15aの内部空間のうち下方部は、液体状態の作動媒体14を加熱して蒸発させる加熱部16を構成し、閉断面部15aの内部空間のうち上方部は、作動媒体14の蒸気を溜める蒸気溜め部17を構成している。
【0023】
円筒状の閉断面部15aの外径は、上方側から下方側に向かうにつれて連続的に大きくなっており、閉断面部15aの外面が上方側から下方側に向かうにつれて径方向外側に向かって拡がっている。一方、円筒状の閉断面部15aの内径は略一定になっている。
【0024】
これにより、閉断面部15aは、下方部が大断面積をなし、上方部が小断面積をなしている。換言すれば、加熱器15は、下方部が厚肉をなし、上方部が薄肉をなすように形成されている。
【0025】
なお、加熱器15の上方部(薄肉部)は、作動媒体14の蒸気圧に耐えうる肉厚を有している。図示を省略しているが、加熱器15は、車両のエンジン(内燃機関)から排出される排気ガス(高温ガス)から熱の供給を受けるようになっている。
【0026】
容器10の内部空間のうち加熱器15の下方側に位置する部位は、加熱部16で蒸発した作動媒体14の蒸気を冷却して凝縮させる冷却部18を構成している。この冷却部18における容器10の外周面には、車両のエンジン(内燃機関)を冷却する冷却水が循環する冷却器19が熱伝導可能に接触配置されている。
【0027】
発電機11のケーシング12内には、作動媒体14の液体部分から圧力を受けて変位するピストン20がシリンダ部21に摺動可能に配置されている。なお、ピストン20はシャフト22に連結されており、シャフト22のうちピストン20と反対側の端部には、一旦押し出されたピストン20を押し戻すように弾性力を発生させるコイルばね23が設けられている。なお、シャフト22には上述の可動子13が連結され、シャフト22が振動変位することによって可動子13も振動変位するようになっている。
【0028】
次に、上記構成における作動を説明する。加熱器15および冷却器19を動作させると、まず加熱器15により加熱部16内の液相状態の作動媒体14が加熱されて蒸発し、蒸気溜め部17内および加熱部16内に高温・高圧の作動媒体14の蒸気が蓄積されて、作動媒体14の液面14aを押し下げる。すると、作動媒体14の液体部分は、略U字状の容器10内をピストン20側に向かって変位して、ピストン20を押し上げる。このとき、コイルばね23は弾性圧縮される。
【0029】
次に、作動媒体14の液面14aが冷却部18まで下がり、冷却部18内に作動媒体14の蒸気が進入すると、この作動媒体14の蒸気が冷却器19により冷却されて凝縮するため、作動媒体14の液面14aを押し下げる力が消滅する。
【0030】
すると、作動媒体14の蒸気の膨張によって一旦押し上げられた発電機11側のピストン20はコイルばね23の弾性復元力により下降し、作動媒体14の液体部分が略U字状の容器10内を加熱部16側に向かって変位する。そして、容器10内の作動媒体14の液面14aが加熱部16まで上昇する。
【0031】
こうした動作は、加熱器15及び冷却器19の動作を停止させるまで繰り返し実行され、その間、容器10内の作動媒体14は周期的に変位(いわゆる自励振動)して、発電機11の可動子13を上下動させることになる。
【0032】
つまり、作動媒体14の蒸気の発生と凝縮とが交互に繰り返し行われることによって、作動媒体14の液体部分が液体ピストンとして自励振動し、この液体ピストンの自励振動変位が出力として取り出される。
【0033】
これまでの説明からわかるように、加熱部16のうち冷却部18に近い下方部と、冷却部18から離れた上方部とでは作動媒体14の液体部分の存在する時間が異なる。すなわち、加熱部16では、冷却部18に近い下方部ほど、作動媒体14の液体部分の存在する時間が長くなる。
【0034】
その結果、加熱器15の下方部では作動媒体14と熱交換する熱量が多くなり、加熱器15の上方部では作動媒体14と熱交換する熱量が少なくなる。
【0035】
この点に鑑みて、本実施形態では、加熱器15の下方部を厚肉にすることで、加熱器15の下方部の熱容量を大きくしているので、加熱器15のうち作動媒体14と熱交換する熱量が多い下方部の温度低下を抑制でき、ひいては加熱器15の加熱効率を向上できる。
【0036】
一方、加熱器15の上方部を薄肉にしているので、加熱器15の上方部の肉厚が過剰になることを回避でき、ひいては小型軽量化を図ることができる。
【0037】
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、閉断面部15aの外径が、上方側から下方側に向かうにつれて連続的に大きくなっているが、本第2実施形態では、図3に示すように、閉断面部15aの外径が、上方側から下方側に向かうにつれて階段状に大きくなっている。これにより、閉断面部15aの加工を容易化できるので、コスト低減を図ることができる。
【0038】
(第3実施形態)
上記第1実施形態では、閉断面部15aの外径が上方側から下方側に向かうにつれて連続的に大きくなっているとともに、閉断面部15aの内径が略一定になっているが、本第3実施形態では、図4に示すように、閉断面部15aの外径が略一定になっているとともに、閉断面部15aの内径が上方側から下方側に向かうにつれて連続的に大きくなっている。
【0039】
つまり、本実施形態では、閉断面部15aの内面が下方側から上方側に向かうにつれて径方向外側に向かって窪んでいる。
【0040】
これにより、上記第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。しかも、本実施形態では、上記第1実施形態に比べて、蒸気溜め部17の体積を大きく確保することができる。
【0041】
(第4実施形態)
上記各実施形態では、閉断面部15aを上下方向に延びる円筒状に形成しているが、本第4実施形態では、図5に示すように、閉断面部15aを水平方向に拡がる中空円板状に形成している。
【0042】
加熱部16および蒸気溜め部17は互いに独立した空間で構成されており、水平方向に拡がる円形状を有している。そして、加熱部16の中心部に容器10の上端部が接続され、加熱部16および蒸気溜め部17が連通路20を介して互いに連通している。
【0043】
中空円板状の閉断面部15aは、径方向外側から径方向内側に向かうにつれて外面が上下方向に拡がる形状を有しているので、径方向内側の部位が大断面積をなし、径方向外側の部位が小断面積をなしている。したがって、加熱器15は、径方向内側の部位が厚肉をなし、径方向外側の部位が薄肉をなすこととなる。
【0044】
本実施形態によると、加熱部16のうち冷却部18に近い径方向内側ほど作動媒体14の液体部分の存在する時間が長くなるので、加熱器15のうち径方向内側の部位では作動媒体14と熱交換する熱量が多くなるのであるが、加熱器15の径方向内側の部位が厚肉をなしているので、加熱器15のうち径方向内側の部位の温度低下を抑制でき、ひいては加熱器15の加熱効率を向上できる。
【0045】
さらに、本実施形態では、作動媒体14の蒸気が冷却器19により冷却されて凝縮して作動媒体14の液面14aが上昇すると、作動媒体14の液体部分が加熱部16の上壁面に衝突する。
【0046】
これにより、加熱部16内の作動媒体14が撹拌されて乱流が生じるので、加熱部16内の温度境界層を破壊することができる。この結果、加熱器13の加熱効率を一層向上できる。
【0047】
(他の実施形態)
なお、上記各実施形態では、本発明を発電装置の駆動源に適用した場合について説明したが、本発明の外燃機関は、発電装置以外の駆動源としても利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の第1実施形態による外燃機関の概略構成を示す断面図である。
【図2】図1の要部拡大図である。
【図3】第2実施形態による外燃機関の要部を示す断面図である。
【図4】第3実施形態による外燃機関の要部を示す断面図である。
【図5】第4実施形態による外燃機関の要部を示す断面図である。
【符号の説明】
【0049】
10 容器
11 出力部
14 作動媒体
15 加熱器
15a 閉断面部
19 冷却器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動媒体(14)が液体状態で流動可能に封入された管状の容器(10)と、
前記容器(10)の一端側に配置され、外部から供給された熱で前記作動媒体(14)を加熱して蒸発させる加熱器(15)と、
前記容器(10)のうち前記加熱器(15)の配置部位よりも他端側に配置され、前記加熱器(15)によって蒸発した前記作動媒体(14)の蒸気を冷却して凝縮させる冷却器(19)と、
前記容器(10)の他端部に連通し、前記作動媒体(14)の蒸発と凝縮に伴う前記作動媒体(14)の体積変動によって生じる前記作動媒体(14)の液体部分の変位を機械的エネルギに変換して出力する出力部(11)とを備え、
前記加熱器(15)は、前記冷却器(19)に近い部位が厚肉をなし、前記冷却器(19)から離れた部位が薄肉をなすように形成されていることを特徴とする外燃機関。
【請求項2】
前記加熱器(15)は、内面側で前記作動媒体(14)を加熱する閉断面部(15a)を有しており、
前記閉断面部(15a)は、前記冷却器(19)に近い部位が大断面積をなし、前記冷却器(19)から離れた部位が小断面積をなすように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の外燃機関。
【請求項3】
前記閉断面部(15a)は、前記冷却器(19)から離れた側から前記冷却器(19)に近い側に向かうにつれて外面が外側に向かって拡がる形状を有していることを特徴とする請求項2に記載の外燃機関。
【請求項4】
前記閉断面部(15a)は、前記冷却器(19)に近い側から前記冷却器(19)から離れた側に向かうにつれて前記内面が外面側に向かって窪む形状を有していることを特徴とする請求項2に記載の外燃機関。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−156039(P2009−156039A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−331935(P2007−331935)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)