説明

外用製剤

【課題】 ハッカ臭などの刺激臭が抑制され、かつ薬効成分の経皮吸収速度に実質的に影響を与えない清涼化剤を含む外用製剤を提供する。
【解決手段】 外用製剤であって、(1)薬効成分、及び(2)ハッカ臭が抑制されており、かつ上記薬効成分の経皮吸収速度に実質的に影響を与えない清涼化剤(例えば2−メチル−3−(l−メンチルオキシ)プロパン−1,2−ジオール又はその誘導体など)を含む外用製剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬効成分と薬効成分の経皮吸収速度に実質的に影響を与えない清涼化剤とを含有する外用製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外用製剤に配合される清涼化剤としては、l−メントールなどのメントール類やハッカ油などが一般的に用いられている。メントール類やハッカ油は昇華性が高く、ハッカ臭を有するために、特にパップ剤やテープ剤などの貼付剤に配合した場合には強いにおいを発する。それゆえ、メントール類やハッカ油を配合した貼付剤の形態の外用製剤は、周囲に悪臭を撒き散らしたり、また衣服や髪の毛に臭いを吸着させてしまい、におい残りを生ずるなどの問題を有している。この問題のため、患者が貼付剤の使用を自ら制限したり、治療が完了していないにもかかわらず貼付剤を剥がしてしまい、コンプライアンスが低下して十分な治療が行えないという深刻な事態となることがしばしばあった。
【0003】
また、l−メントールなどのメントール類が持つハッカ臭は、食欲を減退させたり胃液の分泌を抑制するなどの効果を有していることから、貼付剤あるいは頭髪用製剤や皮膚用ローション剤などの外用製剤にメントール類を配合した場合には、使用者がハッカ臭により食欲不振となり、ときには吐き気や嘔吐をもよおすなどの問題点があった。さらに、l−メントールなどのメントール類は常温において固体であることから、外用製剤中にl−メントールを清涼化剤として配合すると経時的に結晶が生じたり、製剤中に清涼化剤が均一に存在できずに経時的に昇華してしまい清涼感が持続しないなどの問題があった。ハッカ油にはメントールが約50%含有されており、清涼化剤としてハッカ油を用いた場合にも上記と同様の問題が生じる。また、ハッカ油は天然物であることから、その成分が不均一であることが多く、製品規格の安定性に欠けるという別の問題もあった。
【0004】
メントールの強い揮発性及びハッカ臭を抑制した清涼化剤として、特公平61−48813号公報には3−l−(メントキシプロパン−1,2−ジオール)が開示されており、特許第2852816号には上記物質を特定の薬物の溶解剤として含有する外用製剤が開示されている。この外用製剤は、ハッカ油やメントール類などのハッカ臭がなく、上記の問題を解決した外用製剤として使用できる。しかしながら、この物質は外用製剤中の薬効成分(例えば抗炎症剤など)の経皮吸収速度に影響を及ぼすという問題点を有していた。すなわち、ハッカ油やl−メントールなどのメントール類は薬物の経皮吸収を促進する効果を有しているが、3−l−(メントキシプロパン−1,2−ジオール)もハッカ油やメントール類と同様に薬効成分の経皮吸収促進効果を有しており、経皮吸収における薬効成分の累積透過量は上記物質の濃度に依存して顕著な増加を示す。従って、薬効成分の累積透過量を長時間にわたってコントロールするためには3−l−(メントキシプロパン−1,2−ジオール)の配合量を制限しなければならず、それによって清涼感が減少するなどの問題点があった。このような理由から、揮発性及びハッカ臭が抑制されており、かつ薬効成分の経皮吸収速度に実質的に影響を与えない清涼化剤を含む外用製剤の提供が切望されていた。
【0005】
一方、2−メチル−3−(l−メンチルオキシ)プロパン−1,2−ジオールは、上記、3−l−(メントキシプロパン−1,2−ジオール)の持つ苦味を抑える目的で開発された清涼感改善剤であり、特許第3219995号に開示されている。この特許公報には、2−メチル−3−(l−メンチルオキシ)プロパン−1,2−ジオールからなる清涼感改善剤が開示されており、l−メントールと併用することにより清涼感を持続させる旨が記載されている。また、上記特許公報には、上記物質をパップ剤に配合することについての示唆がある。しかしながら、上記特許公報には、この物質が外用製剤の薬効成分の経皮吸収速度に影響を与えるか否かについて何ら示唆ないし教示はない。
【特許文献1】特公平61−48813号公報
【特許文献2】特許第2852816号
【特許文献3】特許第3219995号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、上記の問題点を解決した外用製剤を提供することにあり、より具体的には、ハッカ臭などの刺激臭が抑制され、かつ薬効成分の経皮吸収速度に実質的に影響を与えない清涼化剤を含む外用製剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、ハッカ臭が抑制されており、かつ外用製剤に含まれる薬効成分の経皮吸収速度に実質的に影響を与えない清涼化剤を鋭意探索したところ、2−メチル−3−(l−メンチルオキシ)プロパン−1,2−ジオール又はその誘導体に代表される一群の清涼化剤が上記の望ましい性質を有していることを見出した。従来、上記の2つの性質を両立させた清涼化剤の存在は全く知られていない。また、2−メチル−3−(l−メンチルオキシ)プロパン−1,2−ジオールを清涼化剤として外用製剤に適量配合することにより、薬効成分の経皮吸収速度に実質的に影響を与えずに、極めて清涼感が高く、しかもハッカ臭などの刺激臭のない外用製剤を提供できることを見出した。本発明は上記の知見を基にして完成されたものである。
【0008】
すなわち、本発明により、外用製剤であって、(1)薬効成分、及び(2)ハッカ臭が抑制されており、かつ上記薬効成分の経皮吸収速度に実質的に影響を与えない清涼化剤を含む外用製剤が提供される。
本発明の好ましい態様によれば、上記清涼化剤が2−メチル−3−(l−メンチルオキシ)プロパン−1,2−ジオール又はその誘導体である上記の外用製剤;上記清涼化剤が2−メチル−3−(l−メンチルオキシ)プロパン−1,2−ジオールである上記の外用製剤;上記清涼化剤の配合量が、外用製剤の組成物全重量に対して0.0001〜20重量%である上記の外用製剤;薬効成分が、非ステロイド系抗炎症剤、骨格筋弛緩剤、及び血管拡張剤からなる群から選ばれる1又は2以上の薬効成分である上記の外用製剤;パップ剤、テープ剤、パッチ剤、若しくはリザーバー型パッチ剤などの貼付剤、スティック剤などの固形製剤、ゲル軟膏剤、軟膏剤、若しくはクリーム剤などの半固形製剤、ローション剤若しくはリニメント剤などの液剤、又はエアゾール剤若しくはノンガススプレー剤などのスプレー剤の形態である上記の外用製剤が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の外用製剤に含まれる清涼化剤は、ハッカ臭が抑制されていることに加えて、外用製剤の薬効成分の経皮吸収速度に実質的に影響を与えないという優れた性質を有している。従って、本発明の外用製剤では、薬効成分に対する上記清涼化剤の配合比率を従来の外用製剤に比べて大幅に高めることができ、それによって非常に清涼感に優れた外用製剤として使用することができる。また、薬効成分の経皮吸収速度に影響を与えないことから、製剤設計が容易となる。しかも、上記清涼化剤を大量に含む本発明の外用製剤は、ハッカ臭などの刺激臭がほとんどなく、患者に不快感を感じさせることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の外用製剤は、(1)薬効成分、及び(2)ハッカ臭が抑制されており、かつ上記薬効成分の経皮吸収速度に実質的に影響を与えない清涼化剤を含むことを特徴としている。本発明の外用製剤における薬効成分の種類は特に限定されないが、例えば、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、デキサメタゾン、トリアムシノロン、ベタメタゾン等のステロイド系抗炎症剤、サリチル酸グリコール、インドメタシン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、フェルビナク、ピロキシカム、メロキシカム、ジクロフェナク及びその塩、ロキソプロフェン及びその塩、スプロフェン、ザルトプロフェン、チアプロフェン、テニダップ等の非ステロイド系抗炎症剤及びその誘導体、トラニスト、ケトチフェン、アゼラスチン、イブジラスト等の抗アレルギー剤、塩酸エペリゾン、トルペリゾン、チザニジン、プリジノール等の骨格筋弛緩剤、ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン等の抗ヒスタミン剤、ニトログリセリン、硝酸イソソルビド、塩化カルプロニウム、ミノキシジル等の血管拡張剤、リドカイン、塩酸プロカイン、ベンゾカイン等の局所麻酔剤、ミコナゾール、クロトリマゾール、塩酸ブテナフィン、ビフォナゾール等の抗真菌剤、塩酸オキシブチニン、塩酸タムスロシン、塩酸リトドリン等の排尿障害剤、ニトラゼパム、ジアゼパム等の抗てんかん剤が挙げられる。これらの薬効成分を2種以上組み合わせて用いてもよい。これらのうち、非ステロイド系抗炎症剤及びその誘導体、骨格筋弛緩剤、及び血管拡張剤からなる群から選ばれる1又は2以上の薬効成分が好ましい。
【0011】
ハッカ臭が抑制されており、かつ薬効成分の経皮吸収速度に実質的に影響を与えない清涼化剤としては、例えば、2−メチル−3−(l−メンチルオキシ)プロパン−1,2−ジオール又はその誘導体を好ましく用いることができるが、これらの特定の物質に限定されることはない。ハッカ臭が抑制されており、かつ薬効成分の経皮吸収速度に実質的に影響を与えない性質を有する清涼化剤であれば、いかなるものを用いてもよい。2−メチル−3−(l−メンチルオキシ)プロパン−1,2−ジオールの誘導体としては、エステル誘導体、アルキル誘導体、ハロゲン誘導体などを挙げることができるが、その種類は特に限定されない。特に好ましいのは2−メチル−3−(l−メンチルオキシ)プロパン−1,2−ジオールである。
【0012】
本発明の外用製剤に用いる清涼化剤の清涼化効果については特に限定されないが、例えば、メントール類、ハッカ油、3−l−(メントキシプロパン−1,2−ジオール)、又は2−メチル−3−(l−メンチルオキシ)プロパン−1,2−ジオールなどの従来公知の清涼化剤の清涼化効果とほぼ同等であることが望ましい。清涼化効果は当業界で周知の方法に従って当業者が容易に測定可能である。本発明の外用製剤に用いる清涼化剤のハッカ臭が抑制されていることは、例えば、2−メチル−3−(l−メンチルオキシ)プロパン−1,2−ジオールを比較対照として用いて、被験清涼化剤のハッカ臭が上記物質と同等又はそれ以下のハッカ臭であることを確認すればよい。このような確認は、例えば官能試験により行うことができる。
【0013】
本発明の外用製剤に用いる清涼化剤が薬効成分の経皮吸収速度に実質的に影響を与えないことは、本明細書の実施例に具体的に説明した方法により当業者が容易に確認できる。薬効成分の種類、剤型によって、経皮吸収プロファイルが異なるため一概には言えないが、例えば、被験清涼化剤の存在下において、外用製剤からの薬効成分の経皮吸収速度の増加率が被験清涼化剤の非存在下に比べて250パーセント未満、好ましくは200パーセント未満、さらに好ましくは100パーセント未満、特に好ましくは50パーセント未満、最も好ましくは30パーセント未満である。本明細書において、薬効成分の経皮吸収速度とは、外用製剤を皮膚、粘膜、又は頭皮などの外皮に適用した場合において、外用製剤に含まれる薬効成分が単位時間当りに外皮を透過した量によって示される。通常、その単位はμg/cm2/hrであり、透過速度として評価される。
【0014】
本発明の外用製剤に配合される清涼化剤の量は特に限定されないが、本発明の外用剤に用いられる清涼化剤は薬効成分の経皮吸収速度に実質的に影響を与えないという性質を有していることから、従来の外用製剤に比べて、薬効成分に対する清涼化剤の配合割合を高めることができ、それにより本発明の外用製剤を高い清涼感を有する外用製剤として提供することが可能になる。一般的には、清涼化剤の配合量はヒトが感じる清涼感及びその持続性等の観点から選択することができ、例えば、外用製剤の組成物全重量に対して0.0001〜20重量%、好ましくは0.01〜10重量%、最も好ましくは0.1〜5重量%程度である。
【0015】
本発明の外用製剤の形態は特に制限されず、従来より外用製剤として使用されている製剤形態、例えば、パップ剤、テープ剤、パッチ剤、若しくはリザーバー型パッチ剤などの貼付剤、スティック剤などの固形製剤、ゲル軟膏剤、軟膏剤、若しくはクリーム剤などの半固形剤、ローション剤若しくはリニメント剤などの液剤、又はエアゾール剤若しくはノンガススプレー剤などのスプレー剤等の形態の外用製剤として提供することができる。
【0016】
本発明の外用製剤の製造方法は特に限定されず、外用製剤の形態に応じて、当業者に周知・慣用の製造方法を採用することができる。本発明の外用製剤の製造にあたっては、1種又は2種以上の製剤用添加物を用いることができるが、それらの必要性及び種類は、製剤の形態に応じて当業者が適宜選択することが可能である。例えば、マクロゴールなどの水性基剤;ワセリン、流動パラフィンなどの油性基剤;アラビアゴム、ゼラチン、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリアクリル酸及びその塩、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどの水溶性高分子;エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム、ヒドロキシアニソール、無水亜硫酸ナトリウムなどの抗酸化剤;防腐剤;着色剤;pH調整剤などを製剤用添加物として用いることができるが、これらに限定されることはない。
【実施例】
【0017】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕 テープ剤
(重量%)
スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体 21.5
水素添加ロジングリセリンエステル 22.5
流動パラフィン 39.5
ジブチルヒドロキシトルエン 1.0
マクロゴール 10.0
フェルビナク 2.5
2−メチル−3−(l−メンチルオキシ)プロパン−1,2−ジオール 3.0
上記成分をニーダーにて混合し、剥離処理の施されたポリエステルフィルムに展延し、ポリエステル織布で覆い圧着転写し、テープ剤とした。
【0018】
〔実施例2〕 テープ剤
(重量%)
スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体 21.0
水素添加ロジングリセリンエステル 22.0
流動パラフィン 38.5
ジブチルヒドロキシトルエン 1.0
マクロゴール 10.0
ジクロフェナクナトリウム 2.5
2−メチル−3−(l−メンチルオキシ)プロパン−1,2−ジオール 5.0
上記成分をニーダーにて混合し、剥離処理の施されたポリエステルフィルムに展延し、ポリエステル織布で覆い圧着転写し、テープ剤とした。
【0019】
〔実施例3〕 テープ剤
(重量%)
スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体 22.0
水素添加ロジングリセリンエステル 24.0
流動パラフィン 39.5
ジブチルヒドロキシトルエン 1.0
マクロゴール 10.0
塩酸エペリゾン 0.5
2−メチル−3−(l−メンチルオキシ)プロパン−1,2−ジオール 3.0
上記成分をニーダーにて混合し、剥離処理の施されたポリエステルフィルムに展延し、ポリエステル織布で覆い圧着転写し、テープ剤とした。
【0020】
〔実施例4〕 パップ剤
(重量%)
サリチル酸グリコール 1.0
2−メチル−3−(l−メンチルオキシ)プロパン−1,2−ジオール 0.3
ポリアクリル酸ナトリウム 5.0
カルボキシビニルポリマー 1.0
カルメロースナトリウム 1.5
軽質無水ケイ酸 2.0
セスキオレイン酸ソルビタン 0.5
乾燥水酸化アルミニウムゲル 0.1
乳酸 1.0
濃グリセリン 30.0
精製水 残量
上記成分をニーダーにて混合し、これを不織布上に均一に展延して、剥離ライナーとしてのポリエステルフィルムで圧着し、パップ剤とした。
【0021】
〔実施例5〕 ゲル軟膏剤
(重量%)
カルボキシビニルポリマー 1.5
トリエタノールアミン 2.0
エタノール 40.0
ケトプロフェン 3.0
2−メチル−3−(l−メンチルオキシ)プロパン−1,2−ジオール 0.5
精製水 残量
上記成分をミキサーにて混和し、ゲル軟膏剤とした。
【0022】
〔実施例6〕 ゲル軟膏剤
(重量%)
カルボキシビニルポリマー 1.5
トリエタノールアミン 2.0
エタノール 40.0
ケトプロフェン 3.0
2−メチル−3−(l−メンチルオキシ)プロパン−1,2−ジオール 1.0
精製水 残量
上記成分をミキサーにて混和し、ゲル軟膏剤とした。
【0023】
〔実施例7〕 ゲル軟膏剤
(重量%)
カルボキシビニルポリマー 1.5
トリエタノールアミン 2.0
エタノール 40.0
ケトプロフェン 3.0
2−メチル−3−(l−メンチルオキシ)プロパン−1,2−ジオール 2.0
精製水 残量
上記成分をミキサーにて混和し、ゲル軟膏剤とした。
【0024】
〔実施例8〕 ゲル軟膏剤
(重量%)
カルボキシビニルポリマー 1.5
トリエタノールアミン 2.0
エタノール 40.0
インドメタシン 1.0
2−メチル−3−(l−メンチルオキシ)プロパン−1,2−ジオール 0.5
精製水 残量
上記成分をミキサーにて混和し、ゲル軟膏剤とした。
【0025】
〔実施例9〕 ゲル軟膏剤
(重量%)
カルボキシビニルポリマー 1.5
トリエタノールアミン 2.0
エタノール 40.0
インドメタシン 1.0
2−メチル−3−(l−メンチルオキシ)プロパン−1,2−ジオール 1.0
精製水 残量
上記成分をミキサーにて混和し、ゲル軟膏剤とした。
【0026】
〔実施例10〕 ゲル軟膏剤
(重量%)
カルボキシビニルポリマー 1.5
トリエタノールアミン 2.0
エタノール 40.0
インドメタシン 1.0
2−メチル−3−(l−メンチルオキシ)プロパン−1,2−ジオール 2.0
精製水 残量
上記成分をミキサーにて混和し、ゲル軟膏剤とした。
【0027】
〔実施例11〕 軟膏剤
(重量%)
ポリエチレングリコール400 45.5
ポリエチレングリコール4000 45.5
ミリスチン酸イソプロピル 5.0
ピロキシカム 1.0
2−メチル−3−(l−メンチルオキシ)プロパン−1,2−ジオール 3.0
上記成分をミキサーにて混和し、軟膏剤とした。
【0028】
〔実施例12〕 軟膏剤
(重量%)
ポリエチレングリコール400 45.5
ポリエチレングリコール4000 45.5
ミリスチン酸イソプロピル 5.0
メロキシカム 1.0
2−メチル−3−(l−メンチルオキシ)プロパン−1,2−ジオール 3.0
上記成分をミキサーにて混和し、軟膏剤とした。
【0029】
〔実施例13〕 クリーム剤
(重量%)
ペンタスルホン酸デカグリセリル 1.0
ステアリン酸 3.5
ベヘニルアルコール 2.5
パルミチン酸セチル 3.0
スクワラン 8.0
トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル 8.0
1,3−ブチレングリコール 3.0
グリセリン 3.0
フルルビプロフェン 1.0
2−メチル−3−(l−メンチルオキシ)プロパン−1,2−ジオール 3.0
精製水 残量
上記成分をミキサーにて混和し、クリーム剤とした。
【0030】
〔実施例14〕 クリーム剤
(重量%)
白色ワセリン 25.0
ステアリルアルコール 22.0
プロピレングリコール 12.0
ラウリル硫酸ナトリウム 1.5
フルルビプロフェン 1.0
2−メチル−3−(l−メンチルオキシ)プロパン−1,2−ジオール 3.0
精製水 残量
上記成分をミキサーにて混和し、クリーム剤とした。
【0031】
〔実施例15〕 ローション剤
(重量%)
エタノール 50.0
1,3−ブチレングリコール 5.0
塩化カルプロニウム 1.0
2−メチル−3−(l−メンチルオキシ)プロパン−1,2−ジオール 0.1
精製水 残量
上記成分をミキサーにて混和し、ローション剤とした。
【0032】
〔実施例16〕 ローション剤
(重量%)
エタノール 50.0
プロピレングリコール 5.0
ミノキシジル 1.0
2−メチル−3−(l−メンチルオキシ)プロパン−1,2−ジオール 0.3
精製水 残量
上記成分をミキサーにて混和し、ローション剤とした。
【0033】
〔実施例17〕 リニメント剤
(重量%)
エタノール 45.0
濃グリセリン 2.5
フェルビナク 3.0
2−メチル−3−(l−メンチルオキシ)プロパン−1,2−ジオール 0.3
精製水 残量
上記成分をミキサーにて混和し、リニメント剤とした。また、同様に操作し、スプレー用容器に充填し、ノンガススプレー剤とした。
【0034】
〔実施例18〕 エアゾール剤
(重量%)
エタノール 55.0
クロタミトン 5.0
インドメタシン 1.0
2−メチル−3−(l−メンチルオキシ)プロパン−1,2−ジオール 0.3
精製水 残量
上記成分をミキサーにて混和し、耐圧容器に入れ、ジメチルエーテルを充填し、エアゾール剤とした。
【0035】
〔実施例19〕 スティック剤
(重量%)
ステアリン酸ナトリウム 7.0
イソプロパノール 5.0
1,3−ブチレングリコール 65.0
フェルピナク 1.0
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 1.0
2−メチル−3−(l−メンチルオキシ)プロパン−1,2−ジオール 7.0
精製水 残量
上記成分をミキサーにて加熱しながら混和し、均一な溶液とし、これを冷却し、固化させ、スティック剤とした。
【0036】
〔比較例1〕 ゲル軟膏剤
2−メチル−3−(l−メンチルオキシ)プロパン−1,2−ジオールを配合しない以外は、実施例5と全く同様の配合及び製造法でゲル軟膏剤を調製した。
〔比較例2〕 ゲル軟膏剤
2−メチル−3−(l−メンチルオキシ)プロパン−1,2−ジオールの替わりにl−メントールを配合した以外は、実施例5と全く同様の配合及び製造法でゲル軟膏剤を調製した。
〔比較例3〕 ゲル軟膏剤
2−メチル−3−(l−メンチルオキシ)プロパン−1,2−ジオールの替わりにl−メントールを配合した以外は、実施例6と全く同様の配合及び製造法でゲル軟膏剤を調製した。
【0037】
〔比較例4〕 ゲル軟膏剤
2−メチル−3−(l−メンチルオキシ)プロパン−1,2−ジオールの替わりにl−メントールを配合した以外は、実施例7と全く同様の配合及び製造法でゲル軟膏剤を調製した。
〔比較例5〕 ゲル軟膏剤
2−メチル−3−(l−メンチルオキシ)プロパン−1,2−ジオールを配合しない以外は、実施例8と全く同様の配合及び製造法でゲル軟膏剤を調製した。
〔比較例6〕 ゲル軟膏剤
2−メチル−3−(l−メンチルオキシ)プロパン−1,2−ジオールの替わりにl−メントールを配合した以外は、実施例8と全く同様の配合及び製造法でゲル軟膏剤を調製した。
【0038】
〔比較例7〕 ゲル軟膏剤
2−メチル−3−(l−メンチルオキシ)プロパン−1,2−ジオールの替わりにl−メントールを配合した以外は、実施例9と全く同様の配合及び製造法でゲル軟膏剤を調製した。
〔比較例8〕 ゲル軟膏剤
2−メチル−3−(l−メンチルオキシ)プロパン−1,2−ジオールの替わりにl−メントールを配合した以外は、実施例10と全く同様の配合及び製造法でゲル軟膏剤を調製した。
〔比較例9〕 パップ剤
2−メチル−3−(l−メンチルオキシ)プロパン−1,2−ジオールの替わりにl−メントールを配合した以外は、実施例4と全く同様の配合及び製造法でパップ剤を調製した。
【0039】
〔試験例1〕
実施例5〜10のゲル軟膏剤及び比較例1〜8のゲル軟膏剤について、ヘアレスマウス皮膚透過試験を行った。試験方法はフランツ型セルにヘアレスマウス摘出皮膚を装着して、ドナーセルに製剤0.5mLを、レシーバーセルにリン酸緩衝生理食塩液4mLを適用した。実験は32℃で行った。一定時間ごとに、レシーバー溶液の一部を採取し、レシーバー側に透過した薬物量を、HPLCで定量した。試験結果についてケトプロフェンの透過速度及びラグタイムを表1に、インドメタシンの透過速度及びラグタイムを表2に示す。
【0040】
【表1】

【0041】
薬効成分をケトプロフェンとした場合、清涼化剤を配合していない比較例1の透過速度114.8(μg/cm2/hr)に対して、清涼化剤に2−メチル−3−(l−メンチルオキシ)プロパン−1,2−ジオールをそれぞれ0.5重量%、1.0重量%、2.0重量%配合した実施例5、実施例6、実施例7における透過速度の増加率は30%、51%、84%であり、ほとんど経皮吸収速度には影響を及ぼさなかった。
一方、清涼化剤にl−メントールを同様に配合した比較例2、比較例3、比較例4における透過速度の増加率は、70%、284%、373%と、経皮吸収速度に大きく影響した。
【0042】
【表2】

【0043】
薬効成分をインドメタシンとした場合、清涼化剤を配合していない比較例5の透過速度16.5(μg/cm2/hr)に対して、清涼化剤に2−メチル−3−(l−メンチルオキシ)プロパン−1,2−ジオールをそれぞれ0.5重量%、1.0重量%、2.0重量%配合した実施例8、実施例9、実施例10における透過速度の増加率は8%、61%、220%と、ほとんど経皮吸収速度には影響を及ぼさなかった。
一方、清涼化剤にl−メントールを同様に配合した比較例6、比較例7、比較例8における透過速度の増加率は、212%、900%、985%と、経皮吸収速度に大きく影響した。
【0044】
〔試験例2〕
実施例4のパップ剤及び比較例9のパップ剤について、官能評価試験を行った。試験方法はパップ剤を肩に貼付し、その生理学的清涼効果とにおいを比較検討した。表3に示す判定項目で試験した。被験者の回答した点数を合計して、平均値を示した官能評価結果を表4に示す。
【0045】
【表3】

【0046】
【表4】

【0047】
以上の結果から明らかなように、清涼化剤として2−メチル−3−(l−メンチルオキシ)プロパン−1,2−ジオールを配合した実施例4の外用製剤は、l−メントールを配合した比較例9に対して、清涼感の強さは同等に保ちながらも、においの強さは約6分の1となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外用製剤であって、
(1)薬効成分、及び
(2)ハッカ臭が抑制されており、かつ上記薬効成分の経皮吸収速度に実質的に影響を与えない清涼化剤を含む外用製剤。
【請求項2】
上記清涼化剤が2−メチル−3−(l−メンチルオキシ)プロパン−1,2−ジオール又はその誘導体である請求項1に記載の外用製剤。
【請求項3】
上記清涼化剤が2−メチル−3−(l−メンチルオキシ)プロパン−1,2−ジオールである請求項1に記載の外用製剤。
【請求項4】
上記清涼化剤の配合量が、外用製剤の組成物全重量に対して0.0001〜20重量%である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の外用製剤。
【請求項5】
薬効成分が、非ステロイド系抗炎症剤及びその誘導体、骨格筋弛緩剤、及び血管拡張剤からなる群から選ばれる1又は2以上の薬効成分である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の外用製剤。
【請求項6】
貼付剤、固形製剤、半固形製剤、液剤、又はスプレー剤の形態である請求項1ないし5のいずれか1項に記載の外用製剤。

【公開番号】特開2006−176502(P2006−176502A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−341312(P2005−341312)
【出願日】平成17年11月28日(2005.11.28)
【出願人】(000174622)埼玉第一製薬株式会社 (31)
【出願人】(000002831)第一製薬株式会社 (129)
【Fターム(参考)】