説明

外膜タンパク質を有する免疫原性細菌小胞

【課題】さらなる改善された小胞調製物に加え、その製造のための方法を提供すること。
【解決手段】髄膜炎菌のmltAホモログのノックアウトにより、免疫原性外膜タンパク質を豊富に含み、かつ通常の産生手順によって調製されるOMVよりも高い殺菌力価を伴って干渉効果的抗体応答を惹起し得る小胞を自発的に放出する細菌が得られる。したがって、本発明は、そのmltA遺伝子のノックアウト変異を有する細菌を提供する。本発明はまた、(i)ペプチドグリカンを含む細胞壁を有する;および(ii)MltAタンパク質の溶解性トランスグリコシラーゼ活性を有するタンパク質を発現しない細菌を提供する。本発明はまた、本発明の細菌の培養中、培地中に放出される小胞を含む組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中で引用されるすべての文献は、その全体が参考として援用される。
【0002】
本発明は、免疫処置目的のための小胞調製物の分野のものである。
【背景技術】
【0003】
N.meningitidis感染に対する免疫処置に対する種々のアプローチの1つは、外膜小胞(OMV)を使用することである。血清群Bに対する有効なOMVワクチンが、ノルウェー国立公衆衛生院(Norwegian National Institute of Public Health)によって作製されており[例えば、参考文献1]、このワクチンは、安全であり、MenB疾患を予防するが、該ワクチンを作製するために用いられる相同な菌株に対するその有効性は限定的である。
【0004】
「RIVM」ワクチンは、6種類の異なるPorAサブタイプを含有するOMVを主成分とする。これは、フェーズII臨床試験において、小児に免疫原性であることが示されている[2]。
【0005】
参考文献3には、65kDaのタンパク質複合体を保持するOMVを主成分とする血清群B髄膜炎菌の異なる病原性血清型に対するワクチンが開示されている。参考文献4には、遺伝子操作された髄膜炎菌株由来のOMVであって、少なくとも1種類のクラス1外膜タンパク質(OMP)を含むがクラス2/3 OMPは含まないOMVを含むワクチンが開示されている。参考文献5には、その表面ループ内に変異を有するOMPおよび髄膜炎菌のリポ多糖(LPS)の誘導体を含むOMVを含むOMVが開示されている。
【0006】
血清群BのN.meningitidisに加え、小胞は、他の細菌でも調製されている。参考文献6には、血清群Aの髄膜炎菌に対するOMV系ワクチンの調製方法が開示されている。参考文献7および8には、N.gonorrhoeae由来の小胞が開示されている。参考文献9には、N.lactamica由来の小胞調製物が開示されている。小胞はまた、Moraxella catarrhalis[10,11]、Shigella flexneri[12,13]、Pseudomonas aeruginosa[12,13]、Porphyromonas gingivalis[14]、Treponema pallidum[15]、Haemophilus influenzae[16および21]およびHelicobacter pylori[17]から調製されている。
【0007】
OMVが非相同な菌株に対して干渉効果(cross−protection)を惹起できないことは、特に、ほとんどのN.meningitidis単離菌が、広い保護対象範囲(coverage)を提供することが予測され得る少数の保存された保護的表面抗原(もしOMV内に存在する場合)を共有するため、充分理解されていない。この惹起できないことの考えられ得る説明の1つは、保存された抗原がその保護的作用を奏することを妨げる可変性の免疫優性表面抗原の存在であり、免疫優性超可変タンパク質(例えば、PorAなど)の存在は、広く文献に記載され、実証されている。他の考えられ得る説明は、OMV調製のための方法が保護的外膜タンパク質を希釈する細胞質性および/または内膜タンパク質の夾雑物混入をもたらすこと、または抗原が界面活性剤抽出によって失われることである。
【0008】
OMV有効性を改善するための種々の提案がなされている。特許文献1(参考文献18)には、トランスフェリン結合タンパク質(例えば、TbpAおよびTbpB)および/またはCu,Zn−スーパーオキシドジスムターゼを加えたOMVを含む組成物が開示されている。特許文献2(参考文献19)には、種々のタンパク質を加えたOMVを含む組成物が開示されている。特許文献3(参考文献20)には、改変されたfur遺伝子を有するN.meningitidisから得た膜小胞の調製物が開示されている。特許文献4(参考文献21)には、nspA発現が、同時porAおよびcpsノックアウトにより上方調節されるはずであることが教示されている。さらに、OMV産生のためのN.meningitidesのノックアウト変異型が特許文献4〜6(参考文献21〜23)に開示されている。発現パターンを変化させることによりOMVを改善するこれらの試みとは対照的に、特許文献7(参考文献24)は、OMV調製のための方法を変えることに着目し、NspAなどの抗原がデオキシコレートなど界面活性剤の使用を回避することにより小胞抽出中に保持され得ることが教示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第00/25811号パンフレット
【特許文献2】国際公開第01/52885号パンフレット
【特許文献3】国際公開第98/56901号パンフレット
【特許文献4】国際公開第02/09746号パンフレット
【特許文献5】国際公開第02/062378号パンフレット
【特許文献6】国際公開第2004/014417号パンフレット
【特許文献7】国際公開第2004/019977号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、さらなる改善された小胞調製物に加え、その製造のための方法を提供することである。特に、本発明の目的は、N.meningitidis由来の重要な細菌の免疫原性成分を保持する小胞を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ペプチドグリカン(ムレイン層)分解に関与する経路の破壊により、小胞をその培地中に放出する細菌が得られ、これらの小胞は、免疫原性外膜タンパク質を豊富に含み、広範な殺菌性免疫応答を惹起し得るという驚くべき知見に基づく。小胞は、(例えば、超音波処理およびサルコシル抽出[25]によって)完全体の細菌を破壊することにより調製され得るOMVとは異なり、細菌細胞を破壊することさえなく、例えば、小胞を細菌から遠心分離などのプロセスによって分離することにより簡単に調製され得る。
【0012】
特に、本発明者らは、髄膜炎菌のmltAホモログ(「GNA33」または「NMB0033」[26]ともいう)のノックアウトにより、免疫原性外膜タンパク質を豊富に含み、通常の産生手順によって調製されるOMVよりも高い殺菌力価を伴って広く干渉効果的抗体応答を惹起し得る小胞の自発的放出がもたらされることを見出した。この有効性の増強は、2つの理由で、驚くべきことである。第1は、NMB0033タンパク質は、以前に、殺菌抗体の生成に高度に有効性であること(例えば、参考文献196の表1を参照)、および強力なワクチン候補であること(例えば、参考文献27の表2を参照)が報告されており、参考文献28において、小胞生成のために上方調節すべきであることが推奨されており、そのため、その低下は、演繹的に殺菌性有効性を増大させるのではなく低下させることが予測され得る。第2は、該ノックアウト菌株は、細胞膜の正しいトポロジー構成をもたず、通常のOMV(例えば、PorA、PIB、クラス4およびクラス5外膜タンパク質)の主な構成成分タンパク質は、以前に、培地中に放出されることが報告されていた[25]。本発明者らは、ここに、以前に報告されていた放出が、個々のタンパク質の分泌に関与しないが、その代わり、外膜タンパク質が小胞の形態で放出されることを見出した。このような小胞は、先行技術の手段によって調製されるOMVと比べ、好都合である。それは、これが、培地中に自発的に放出され、したがって、OMVを調製するために通常使用される複雑で時間のかかる破壊および精製方法を伴わずに、簡単かつ効率的に調製され得るからである。
【0013】
したがって、本発明は、そのmltA遺伝子のノックアウト変異を有する細菌を提供する。該細菌はまた、好ましくは、少なくとも1つのさらなる遺伝子、例えば、porA遺伝子および/またはporB遺伝子および/またはlpxA遺伝子のノックアウト変異を有する。
【0014】
本発明はまた、(i)ペプチドグリカンを含む細胞壁を有し;かつ(ii)MltAタンパク質の溶解性トランスグリコシラーゼ活性を有するタンパク質を発現しない、細菌を提供する。細菌は、好ましくは変異型細菌であり、すなわち、細菌は、MltAタンパク質を発現する野生型種の変異株である。細菌はまた、好ましくは、少なくとも1種類のさらなるタンパク質、例えば、PorAタンパク質および/またはPorBタンパク質および/またはLpxAタンパク質を発現しない。
【0015】
好ましい本発明の細菌は、N.meningitidisなどのナイセリア属であり、したがって、本発明は、そのgna33遺伝子のノックアウト変異を有する細菌である髄膜炎菌を提供する。好ましい髄膜炎菌は、gna33lpxAPorAである。
【0016】
本発明はまた、本発明の細菌の培養の間に培地中に放出される小胞を含む、組成物を提供する。この組成物は、好ましくは、生菌および/または完全体の細菌を全く含まない。この組成物は、ワクチン調製物に使用され得る。
【0017】
本発明はまた、本発明の細菌を増殖させた培地を0.22μmフィルターを通した濾過後に得られ得る濾液中に存在する小胞を含む、組成物を提供する。この組成物は、ワクチン調製物に使用され得る。
【0018】
本発明はまた、MinD、FtsAおよび/またはホスホエノールピルベートシンターゼのうちの少なくとも1つ(すなわち、1、2または3つ)を含まない、髄膜炎菌小胞を提供する。本発明はまた、NMBタンパク質0126、NMBタンパク質0154、NMBタンパク質0157、NMBタンパク質0171、NMBタンパク質0219、NMBタンパク質0359、NMBタンパク質0387、NMBタンパク質0426、NMBタンパク質0595、NMBタンパク質0617、NMBタンパク質0618、NMBタンパク質0631、NMBタンパク質0757、NMBタンパク質0763、NMBタンパク質0875、NMBタンパク質0876、NMBタンパク質0943、NMBタンパク質0946、NMBタンパク質0957、NMBタンパク質1131、NMBタンパク質1252、NMBタンパク質1323、NMBタンパク質1341、NMBタンパク質1445、NMBタンパク質1497、NMBタンパク質1574、NMBタンパク質1576、NMBタンパク質1869、NMBタンパク質1934、NMBタンパク質1936、NMBタンパク質2096および/またはNMBタンパク質2101のうちの少なくとも1つを含まない髄膜炎菌小胞を提供する。本発明はまた、リボソームを実質的に含まない髄膜炎菌小胞を提供する。本発明はまた、いかなるアミノ酸tRNAシンセターゼも実質的に含まない髄膜炎菌小胞を提供する。本発明はまた、クレブズ回路由来のいかなる酵素も実質的に含まない髄膜炎菌小胞を提供する。このような小胞はまた、MltAを含まない(ノックアウト変異のため)が、外膜タンパク質は含む。該小胞は、3量体外膜タンパク質を含み得る(図13)。
【0019】
本発明はまた、以下の47種類のタンパク質:NMB0035、NMB0044、NMB0086、NMB0088、NMB0109、NMB0124、NMB0138、NMB0182、NMB0204、NMB0278、NMB0294、NMB0313、NMB0345、NMB0346、NMB0382、NMB0460、NMB0461、NMB0550、NMB0554、NMB0623、NMB0634、NMB0663、NMB0703、NMB0787、NMB0873、NMB0928、NMB1030、NMB1053、NMB1057、NMB1126、NMB1285、NMB1301、NMB1332、NMB1429、NMB1483、NMB1533、NMB1567、NMB1612、NMB1710、NMB1870、NMB1898、NMB1949、NMB1961、NMB1972、NMB1988、NMB2039およびNMB2091を含む髄膜炎菌小胞を提供する。
【0020】
本発明はまた、以下の19種類のタンパク質:NMB0044、NMB0086、NMB0204、NMB0278、NMB0294、NMB0313、NMB0345、NMB0346、NMB0460、NMB0550、NMB0873、NMB0928、NMB1030、NMB1057、NMB1483、NMB1870、NMB1898、NMB1961および/またはNMB2091の1つ以上(すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18または19個)を含む髄膜炎菌小胞を提供する。以下の表4も参照のこと。
【0021】
本発明はまた、本発明の小胞の第1の組と、本発明の小胞の第2の組とを含む組成物であって、上記の第1の組と第2の組とが異なる、髄膜炎菌株から調製される組成物を提供する。本発明はまた、(a)第1の髄膜炎菌株から本発明の小胞を調製する工程;(b)第2の髄膜炎菌株から本発明の小胞を調製する工程;および(c)(a)および(b)の小胞を合わせる工程;を包含する、小胞混合物を調製するための方法を提供する。異なる菌株由来の小胞を合わせることにより、臨床株の対象範囲が改善され得る。
【0022】
本発明はまた、(i)MltA細菌を培地中で、該細菌が小胞を上記培地中に放出するように培養する工程;および(ii)小胞を上記培地から収集する工程;を包含する、細菌小胞を調製するための方法を提供する。MltA細菌は、好ましくは、ΔMltAノックアウト変異型である。小胞は、サイズ分離(例えば、小胞が通過することは許容するが、インタクトな細菌が通過することは許容しないフィルターを用いる濾過)によって回収され得、これは、小さい小胞よりも細胞を優先的にペレット化する遠心分離(例えば、低速遠心分離)後に簡便に行なわれ得る。
【0023】
(ペプチドグリカン代謝)
ペプチドグリカン(ムレイン、ムコペプチドまたはグリコサミノペプチドとしても知られている)は、ほとんどの細菌の細胞壁に見出されるヘテロポリマーである。ペプチドグリカンは、主に、細菌の細胞壁の機械的強度および細胞の形状の維持を担う成分である。グラム陽性細菌において、これは、細胞壁の主要成分である。グラム陰性菌では、これは、細胞質膜と外膜と間の層として存在し、Braunリポタンパク質によって外膜に共有結合されている。
【0024】
ペプチドグリカンは、主に直鎖のヘテロ多糖主鎖からなり、これは、「幹」ペプチドによって架橋されて格子構造を形成している。これは、たいへん大きなポリマーであるため、単一の巨大な共有結合された分子とみなされ得る。大腸菌では、糖主鎖がN−アセチルグルコサミン(GlcNAc)およびN−アセチルムラミン酸(MurNAc)残基が交互になって形成されている。MurNAc残基は、幹テトラペプチドに連結され得る。主鎖間の架橋は、通常、1つの幹ペプチド内のD−アラニンと別のペプチド内のmeso−DAP間に直接形成される。大腸菌の構造は、グラム陰性菌に典型的であるが、グラム陽性細菌においては、より多くの差異があり、例えば、S.aureusでは、ムラミン酸残基の30〜50%がアセチル化されておらず、幹ペプチドは、多くの場合、meso−DAPの代わりにL−リシンおよびD−グルタメートの代わりにイソグルタミンを有し、架橋が幹ペプチド間に存在し得る。
【0025】
大腸菌ペプチドグリカン生合成における最初の段階は、細胞質内に存在するGlcNAcのUDP誘導体の形成である。一部のUDP−GlcNAcは、PEP:UDP−GlcNAcエノールピルビルトランスフェラーゼによって触媒されるUDP−GlcNAcとホスホエノールピルベート(PEP)の反応においてUDP−MurNAcに変換される。さらに、細胞質内では、アミノ酸がUDP−MurNAcに逐次的付加され、末端D−アラニル−D−アラニンを含む「パーク(Park)ヌクレオチド」として知られるUDP−MurNAc−ペンタペプチドが形成される。次いで、パークヌクレオチドは、細胞質内膜内のバクトプレノール一リン酸塩に輸送され、ここで、UDP−GlcNACもまた付加され、バクトプレノール−二糖−ペンタペプチドサブユニットが作製される。次いで、二糖−ペンタペプチドサブユニットは、ペリプラズム領域内に輸送され、バクトプレノール−ピロリン酸塩が膜内に残留する。ペリプラズム内では、輸送されたサブユニットが伸長中のペプチドグリカン内に挿入される。
【0026】
細胞分裂を可能にするためには、形状の変化、および大きな複合体の移入(import)/移出(export)(例えば、コンジュゲーション中)、次いでペプチドグリカン分解が起こらなければならない。大腸菌では、この分解は、ムレイン加水分解酵素[29]と呼ばれる酵素によって引き起こされ、この酵素としては、ファミリーとして、溶解性トランスグリコシラーゼ[mltA、mltB、mltC、mltD、slt70、emtA)、エンドペプチダーゼ(pbp4、pbp7、mepA)およびアミダーゼ(amiC)が挙げられる。リゾチームなどのムラミダーゼは、MurNAc残基とGlcNAc残基間の同じβ−(l−4)−グリコシド結合を切断する。しかしながら、ムラミダーゼとは異なり、トランスグリコシラーゼは、該グリコシド結合を切断すると同時に、1,6−アンヒドロムラモイル(anhydromuramoyl)残基(AnhMurNAc)の形成を伴う。
【0027】
標準的なペプチドグリカンの同化作用経路および異化作用経路は、このように、充分特性付けされており、これは、細菌間で起こる軽微な差異および変更である。該酵素は、充分特性付けされており、タンパク質は、新たな細菌のゲノム配列が公表された場合、経路に関与すると直ちにアノテーション(annotate)される。したがって、当業者は、任意の所与の細菌についてペプチドグリカン代謝経路に関与する酵素を容易に決定することができ、関与する酵素を容易に同定することができ、これらの酵素をコードする遺伝子を容易に同定することができる。
【0028】
本発明は、膜結合溶解性トランスグリコシラーゼをコードするmltA遺伝子のノックアウトに基づく。MltAファミリーは、INTERPRO(登録「ipr005300」)およびPFAM(登録「MltA」または「PF03562」)において認識され、PFAM記録には、Rhizobium loti、Bradyrhizobium japonicum、Brucella melitensis、Brucella suis、Rhizobium meliloti、Agrobacterium tumefaciens、Zymomonas mobilis、Caulobacter crescentus、Yersinia pestis、Salmonella typhimurium、Buchnera aphidicola、Photorhabdus
luminescens、Escherichia coli、Shigella fiexneri、Salmonella typhi、Pseudomonas aeruginosa、Pseudomonas putida、Pseudomonas syringae、Coxiella burnetii、Vibrio cholerae、Vibrio vulnificus、Vibrio parahaemolyticus、Haemophilus ducreyi、Pasteurella multocida、Chromobacterium violaceum、Neisseria meningitidis、Neisseria gonorrhoeae、Bordetella parapertussis、Bordetella bronchiseptica、Bordetella pertussis、Nitrosomonas europaea、Ralstonia solanacearum、Synechococcus elongatus、Gloeobacter violaceus、およびLeptospira interrogansなどの多様な細菌のMltAタンパク質が列挙されている。
【0029】
MltAノックアウトに好ましい細菌は、ナイセリア属であり、N.meningitidisが最も好ましい細菌である。血清群BのN.meningitidisのMltA遺伝子は、文献において「GNA33」と称され[25,26,196]、配列の一例は、GenBankアクセッション番号「AF226391.1」を有する。血清群AのMltA遺伝子(「NMA0279」)は、GenBankアクセッション番号NP_283118.1を有する。髄膜炎菌のMltAのアラインメントされた多型形態が、参考文献30の図7および18に見られ得る。N.meningitidisの2つの完全ゲノム配列が利用可能である[31,32]。したがって、N.meningitidisの任意の所与の株について、当業者は、mltA遺伝子を同定することができよう。髄膜炎菌に関して、ノックアウトされたmltA遺伝子は、好ましくは、野生型株において、本明細書おける配列番号1と細孔の配列同一性を有する遺伝子である。MltAは、髄膜炎菌のリポタンパク質である[26]。
【0030】
mltAのノックアウトは、ビルレンス、異常細胞分離、異常細胞形態学、未分裂隔壁、二重隔壁、細胞クラスター化および外膜の共有の低減をもたらし得る[25]。しかしながら、同時にノックアウト変異は、驚くべきことに、免疫原性であり、外膜タンパク質を豊富に含む小胞を自発的に生成させ得る細菌をもたらすことがわかった。
【0031】
(細菌)
小胞が調製される細菌はグラム陽性であり得るが、好ましくは、グラム陰性である。細菌は、モラクセラ属、赤痢菌属、シュードモナス属、トレポネーマ属、ポルフィロモナス属またはヘリコバクター属(好ましい種に関する上記参照)由来であり得るが、好ましくは、ナイセリア属由来である。好ましいナイセリア属種は、N.meningitidisおよびN.gonorrhoeaeである。
【0032】
N.meningitidisにおいて、任意の血清群A、C、W135およびYが使用され得るが、血清群B由来の小胞を調製することが好ましい。関連する場合、髄膜炎菌は、任意の血清型(例えば、1、2a、2b、4、14、15、16など)、任意の血清亜型(P1.2;P1.4;P1.5;P1.5,2;P1.7,16;P1.7,16b;P1.9;P1.9,15;P1.12,13;P1.13;P1.14;P1.15;P1.21,16;P1.22,14;など)および任意の免疫型(例えば、L1;L3,3,7;L10;など)であり得、好ましい細菌としては、B:4:P1.4;B:4:P1.15;B:15:P1.7,16が挙げられる。髄膜炎菌は、任意の適当な系統、例えば、超侵襲性および超ビルレント系統、例えば、任意の以下の7種の超ビルレント系統:亜群I;亜群III;亜群IV−1;ET−5複合体;ET−37複合体;A4クラスター;系統3由来のものであり得る。これらの系統は、多座位酵素電気泳動(MLEE)によって同定されているが、Multi Locus Sequence Typing(MLST)もまた、髄膜炎菌の分類に用いられており[参考文献33]、例えば、ET−37複合体は、MLSTによるST−11複合体であり、ET−5複合体はST−32(ET−5)であり、系統3はST−41/44であるなどである。
【0033】
血清群Bにおいて好ましい株は、MC58、2996、H4476および394/98である。しかしながら、本発明の一部の実施形態において、髄膜炎菌は、MC58株ではなく、BZ232株ではない。
【0034】
mltAのノックアウトを有することに加え、該細菌は、他の遺伝子(1つまたは複数)の1つ以上のノックアウト変異を有し得る。発熱活性を低減させるため、例えば、該細菌は低い内毒素(LOS/LPS)レベルを有するべきであり、これは、LPS生合成に関与する酵素のノックアウトによって達成され得る。好適な変異型細菌は既に知られており、例えば、変異型ナイセリア属[34,35]および変異型Helicobacter[36]である。髄膜炎菌のlpxA変異型が好ましい。グラム陰性菌由来のLPS枯渇外膜の調製方法が参考文献37に開示されている。
【0035】
N.meningitidisにおいて、好ましいさらなるノックアウトは、PorAクラスI外膜タンパク質である。好都合には、かかるノックアウトは、免疫優性超可変株特異的PorAタンパク質を示さず、それにより、レシピエントの免疫応答は他の抗原に焦点が合わされる。具体的な一態様において、本発明は、MltAのノックアウト変異およびPorAのノックアウト変異の両方を含む細菌であるN.meningitidisを提供する。該細菌はまた、さらなるノックアウト変異、例えば、LOS/LPS合成経路において(例えば、lpxA)、免疫優性可変タンパク質、PorB、OpA、OpCなどを担持し得る。
【0036】
特定の内因性遺伝子のノックアウトを有することに加え、該細菌は、内因性でない1つ以上の遺伝子を発現し得る。例えば、本発明では、対応する野生型株に関して新しい遺伝子を発現する組換え株が使用され得る。PorA発現をノックアウトすることが好ましいが、択一的なアプローチでは、髄膜炎菌が多くのPorAサブタイプ(例えば、PorAサブタイプ:P1.7,16;P1.5,2;P1.19,15;P1.5c,10;P1.12,13;およびP1.7h,4[例えば、参考文献38,39]の2、3、4、5または6つ)を発現するように操作することが可能である。このような様式の非内在遺伝子の発現は、種々の手法、例えば、染色体挿入(多数のPorA遺伝子を導入するのに用いる場合[40])、ノッキング(knockin)変異、染色体外ベクターから(例えば、プラスミドから)の発現などによって達成され得る。
【0037】
特定のタンパク質の発現の下方調節に加え、該細菌は、NspA、タンパク質287[19]、タンパク質741[41]、TbpA[18]、TbpB[18]、スーパーオキシドジスムターゼ[18]などの免疫原を過剰発現し得る(対応する野生型株と比べて)。
【0038】
該細菌はまた、参考文献16、21〜24および/または42〜43に開示されているノックアウトおよび/または過剰発現変異の1つ以上を含み得る。下方調節および/またはノックアウトに好ましい遺伝子としては、(a)Cps、CtrA、CtrB、CtrC、CtrD、FrpB、GaIE、HtrB/MsbB、LbpA、LbpB、LpxK、Opa、Opc、PilC、PorA、PorB、SiaA、SiaB、SiaC、SiaD、TbpAおよび/またはTbpB[16];(b)CtrA、CtrB、CtrC、CtrD、FrpB、GalE、HtrB/MsbB、LbpA、LbpB、LpxK、Opa、Opc、PhoP、PilC、PmrE、PmrF、PorA、SiaA、SiaB、SiaC、SiaD、TbpAおよび/またはTbpB[21];(c)ExbB、ExbD、rmpM、CtrA、CtrB、CtrD、GalE、LbpA、LpbB、Opa、Opc、PilC、PorA、PorB、SiaA、SiaB、SiaC、SiaD、TbpAおよび/またはTbpB[42];および(d)CtrA、CtrB、CtrD、FrpB、OpA、OpC、PilC、PorA、PorB、SiaD、SynA、SynBおよび/またはSynC[43]が挙げられる。
【0039】
髄膜炎菌の組成物には、参考文献44の選択基準が使用され得る。
【0040】
好ましい小胞は、以下の亜型:P1.2;P1.2,5;P1.4;P1.5;P1.5,2;P1.5,c;P1.5c,10;P1.7,16;P1.7,16b;P1.7h,4;P1.9;P1.15;P1.9,15;P1.12,13;P1.13;P1.14;P1.21,16;P1.22,14の1つを有する髄膜炎菌から調製される。髄膜炎菌は、好ましくは、血清群Bである。
【0041】
また、小胞は、エシェリキア属、例えば、大腸菌種から調製され得る。大腸菌株は、伝統的には、共生性または病原性のうちのいずれかに分類されており、病原性株は、さらに、腸内株または腸管外株に下位分類される。また、分類は「K」抗原に基づくものであり得る。もっともよく研究されている「K」抗原は「K1」であり、これは、新生児髄膜炎を引き起こす大腸菌株のビルレンスの主な決定基であると考えられている。本発明の小胞は、任意のこれらの大腸菌株から調製され得るが、好ましくは、病原性株、例えば、腸管外病原性(「ExPEC」[45])株、尿路病原性(uropathogenic)(UPEC)株または髄膜炎/敗血症関連(MNEC)株から調製される。病原性株のゲノム配列は、データベースにおいて受託番号AE005174、BA000007およびNC−004431で入手可能である。mltAノックアウトの使用ではなく、大腸菌Tol−Pal複合体[46]の成分、例えば、tolA、tolQ、tolB、palおよび/またはtolRの1つ以上をノックアウトすることが好ましい場合があり得る。tolRのノックアウトが好ましい。髄膜炎菌は、Tol−Pal系のホモログを有しない。
【0042】
(小胞組成物)
本発明は、本発明の細菌によって培地中に自発的に放出される小胞を提供する。このような小胞は、同じ細菌から人工的に調製され得る小胞(例えば、参考文献25の「ΔGNA33」髄膜炎菌から調製されるサルコシル抽出OMV)とは明白に異なる。このような小胞はまた、微小胞(microvesicle)(MV[47])および「天然OMV」(「NOMV」[64])とは明白に異なるが、本発明の小胞は、サルコシル抽出OMVよりはMVおよびNOMVとより類似しているようである。該小胞はまた、MVとして放出される前は細菌に付着された状態である外膜突起であるブレブと明白に異なる[48,49]。
【0043】
本発明の小胞は50〜100nmの直径を有し(電子顕微鏡検査による)、これは、人工髄膜炎菌のOMV(直径約270nm[50])のものより小さい。この直径は、熱変性させた人工OMVのもの(約105nm[50])とほぼ同じであるが、本発明の小胞は抗原性を保持しているのに対し、熱変性させた人工OMVはその抗原性を喪失している。またさらに、本発明の小胞は(MV、OMVおよびNOMVと異なり)、細胞質内夾雑物を実質的に含まない。
【0044】
本発明の小胞は、好ましくは、全タンパク質に対して測定したとき20重量%以下のLOS/LPSを含有する(すなわち、重量基準で、LOS/LPSよりも少なくとも4倍多くのタンパク質が存在しなければならない)。最大LOS/LPSレベルは、好ましくは、20%よりもさらに少なく、例えば、15%、10%、5%またはそれ未満である。
【0045】
出発培養物とは異なり、本発明の小胞含有組成物は、一般的に、生菌であれ死菌であれ、完全体の細菌を実質的に含まない。本発明の小胞のサイズは、これが、0.22μmフィルター(例えば、濾過滅菌に典型的に用いられるもの)を通す濾過によって、完全体の細菌から容易に分離され得ることを意味する。したがって、本発明は、完全体の細菌は遅滞させるが、小胞の通過は許容するフィルター、例えば0.22μmフィルターを通して本発明の細菌から培地を濾過することを含む、本発明の小胞の調製方法を提供する。小胞は、標準的な0.22μmフィルターを通過するが、他の物質によってすぐに詰まり得るため、標準的な滅菌フィルター(例えば、0.22μmフィルター)で終わる漸減孔径の一連のフィルターを通す逐次的な濾過滅菌工程を行なうことが好ましい。前述のフィルターの例は、0.8μm、0.45μmなどの孔径を有するものであり得る。濾液を、例えば超遠心分離によって、さらに処理してもよい。
【0046】
本発明の小胞は、脂質およびタンパク質を含有する。髄膜炎菌小胞のタンパク質内容物(content)が分析されており、小胞内のタンパク質の実質的にすべてが、バイオインフォマティクス分析によって外膜タンパク質に分類されている。小胞内に見られる外膜タンパク質としては、PilE;IgA特異的セリンエンドペプチダーゼ;PorA;FrpB;PlB;などが挙げられる。以前にプロテオミクスによって分析された[51]人工OMVとは異なり、本発明の小胞は、MinD、FtsAおよびホスホエノールピルベートシンターゼなどのタンパク質が欠損していることがわかった。該小胞はまた、MltAも欠損している。
【0047】
本発明の小胞は、人工的な破壊が必要とされないため、培養細菌の破壊によって調製される小胞と比べると好都合である。簡単なサイズに基づく分離を用い、化学的処理などをなんら必要とすることなく、細菌と小胞を分離することができる。より簡単な方法であることに加え、これによって、先行技術のOMV調製方法において用いられる界面活性剤などによって引き起こされる変性のリスクが回避される。
【0048】
上記のように、本発明の小胞は、細菌の増殖中に自発的に形成され、培地中に放出される天然に存在する膜小胞である微小胞(MV)および「天然OMV」(「NOMV」)に類似したものであり得る。MVは、ナイセリア属をブイヨン培地中で培養し、完全体の細胞をブイヨン培地から分離し(例えば、濾過によって、または細胞のみがペレット化され、より小さい小胞はペレット化されない低速遠心分離によって)、次いで、細胞枯渇培地中に存在するMVを回収する(例えば、濾過、MVの差次的沈殿または凝集、MVがペレット化される高速遠心分離によって)ことにより得られ得る。MVの生成における使用のための菌株は、一般的に、培養中に生成されるMVの量に基づいて選択され得る。参考文献52および53には、高MV生成を伴うナイセリア属が記載されている。
【0049】
(小胞の組合せ)
本発明は、最適な細菌からの免疫原性小胞の生成を可能にする。該細菌は、典型的には、選択した出発株の変異によって作製されたものである。目的の多数の出発株が多数ある場合では、本発明は、各株からの小胞の調製方法を提供し、その異なる小胞を合わせ得る。この組合せストラテジーは、株対株の差異が、単一の株では、通常、臨床的に有用な保護がもたらされないことを意味する細菌(例えば、血清群B髄膜炎菌)に特に有用である。
【0050】
したがって、本発明は、n種の異なる細菌株から調製されるn組の本発明の小胞の混合物を含む組成物を提供する。nの値は1、2、3、4、5などであり得る。異なる菌株は、同じまたは異なる血清群であり得る。血清群の好ましい混合物としては、A+B;A+C;A+W135;A+Y;B+C;B+W135;B+Y;C+W135;C+Y;W135+Y;A+B+C;A+B+W135;A+B+Y;A+C+W135;A+C+Y;A+W135+Y;B+C+W135;B+C+Y;C+W135+Y;A+B+C+W135;A+B+C+Y;B+C+W135+Y;およびA+B+C+W135+Yが挙げられる。
【0051】
本発明はまた、n種の異なる細菌株から調製される本発明の小胞を備えるキットを提供する。小胞はキット内に、例えば、混合物として、または個々もしくは逐次の同時使用のために一緒に使用されることが必要とされるまで別々に維持および保存され得る。
【0052】
本発明はまた、n種の異なる細菌株の各々に由来するn組の本発明の小胞を調製すること;およびn組の小胞を合わせることを含む方法を提供する。異なる組は、キット内で、または混合物で合わせ得る。
【0053】
本発明はまた、患者の免疫処置のための医薬の製造における第1の細菌株に由来する小胞の使用であって、該医薬が、第2の細菌株に由来する小胞とともに、個々または逐次的に同時投与される小胞の使用を提供する。
【0054】
本発明はまた、患者の免疫処置のための医薬の製造における第1の細菌株に由来する小胞の使用であって、患者が、第2の細菌株に由来する小胞で予備免疫処置されている、小胞の使用を提供する。
【0055】
該細菌は、好ましくはN.meningitidisであり、より好ましくは血清群Bのものである。異なる菌株は、種々の基準に従って選択され得る。基準の例としては、サブタイプおよび/または血清亜型[例えば、参考文献47];免疫型;株の地学的起源;臨床株の局所有病率;超ビルレント系統(例えば、亜群I、IIIおよびIV−1、ET−5複合体、ET−37複合体、A4クラスターならびに系統3;Multilocus
Sequence Type(MLST)[54]の1つ以上)が挙げられる。
【0056】
菌株の好ましい選択基準は、1つより多いPorB血清型(クラス2または3 OMP)の選択;1つより多いPorA血清亜型(クラス1 OMP)の選択;1つより多い異なる免疫型(リポ多糖またはリポオリゴ糖)の選択;3種の異なるNMB1870バリアント[55]の1つより多くの選択である。NMB1870は本発明の小胞において見られ、明白に異なるバリアントを示し、ワクチン接種用の良好な候補抗原である[55〜57]。2または3種の異なるNMB1870バリアントを含む小胞の組合せは、特に好都合である。
【0057】
異なる髄膜炎菌株から選択されることに加え、小胞は、異なる病原体から選択され得る。したがって、本発明は、n種の異なる細菌種から調製されるn組の本発明の小胞の混合物を含む組成物を提供する。同様に、本発明は、n種の異なる細菌種から調製される本発明の小胞を備えるキットを提供し、n種の異なる細菌種の各々に由来するn組の本発明の小胞を調製する工程を含む方法を提供する。
【0058】
(MltA発現)
本発明の細菌は、機能的MltA酵素活性を有しない。MltAタンパク質発現の抑制は、主に2つの様式:内因性mltA遺伝子(その制御領域を含む)の除去もしくは破壊によりMtA株をもたらすこと;またはMltA株におけるMltA発現の抑制により達成され得る。MltA株を用いることが好ましい。
【0059】
MltA株は、慣用のノックアウト技術によって構築され得る。遺伝子ノックアウトのための手法はよく知られており、髄膜炎菌のノックアウト変異型は、以前に報告されている[例えば、参考文献25および58〜60]。ノックアウトは、好ましくは、コード領域の少なくとも一部分の欠失(好ましくは、同遺伝子系欠失)によって達成されるが、任意の他の適当な手法、例えば、プロモーターの欠失または変異、開始コドンの欠失または変異なども使用され得る。該細菌は、ノックアウトされた遺伝子の代わりにマーカー遺伝子(例えば、抗生物質耐性マーカー)を含有するものであり得る。
【0060】
内因性mltA遺伝子の発現の抑制を用いる場合、アンチセンス阻害および阻害性RNAなどの手法が使用され得るが、これらの手法は、より典型的には真核生物宿主で使用される。得られる細菌において、ノックアウトされたタンパク質をコードするmRNAが実質的に非存在である、および/またはその翻訳が実質的に阻害される(例えば、抑制の非存在下で見られ得る発現レベルの1%未満まで)。
【0061】
ノックアウトまたは発現の抑制の代替法として、内因性mltA遺伝子の部位特異的変異誘発が使用され得る。参考文献61には、髄膜炎菌のMltAの変異型が開示されており、残基Glu255、Glu323およびAsp362を変異させ、次いで、MltA触媒活性について試験している。E255G変異型は50%の活性低下を示し、E323G変異型は70%の活性低下を示した。MltAコード領域内の特定の残基の変異誘発は、したがって、コード領域をノックアウトすることなく、溶解性グリコシド転移酵素の酵素活性をノックアウトするための手法として使用され得る。
【0062】
いずれの手法(または手法の組合せ)を選択しても、得られる細菌は、MltA酵素活性を実質的に含まない。
【0063】
(薬学的組成物)
本発明は、(a)本発明の小胞および(b)薬学的に受容可能なキャリアを含む薬学的組成物を提供する。本発明はまた、本発明の小胞を薬学的に受容可能なキャリアと混合する工程を含む、かかる組成物の調製方法を提供する。
【0064】
典型的な「薬学的に受容可能なキャリア」には、それ自体、該組成物を受ける個体に有害な抗体の産生を誘導しない任意のキャリアが含まれる。好適なキャリアは、典型的には、ゆっくり代謝される大きな巨大分子、例えば、タンパク質、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、アミノ酸ポリマー、アミノ酸コポリマー、および脂質会合体(例えば、油滴またはリポソーム)である。かかるキャリアは当業者によく知られている。ワクチンはまた、希釈剤、例えば、水、生理食塩水、グリセロールなどを含有し得る。さらに、補助物質、例えば、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝物質、スクロースなどを存在させてもよい。無菌で発熱因子無含有のリン酸緩衝生理食塩水(例えば、pH7.4)は、典型的なキャリアである。薬学的に受容可能な賦形剤の詳細な論考は、参考文献62にて得られ得る。
【0065】
本発明の組成物は、典型的には、乾燥形態(例えば、凍結乾燥されたもの)ではなく、水性形態(すなわち、溶液または懸濁液)である。また、水性組成物は、凍結乾燥形態(例えば、凍結乾燥Hib結合体ワクチン、凍結乾燥髄膜炎菌結合体ワクチンなど)からの他のワクチンの再構成に好適である。本発明の組成物がかかる即時調合再構成に使用される場合、本発明は、2つのバイアルを備え得るか、または1つの充填済みシリンジおよび1つのバイアルを備え得る(ここで、シリンジの水性内容物は、注射前にバイアルの乾燥内容物を再活性化させるために用いられる)キットを提供する。
【0066】
本発明の組成物はバイアルにおいて提示され得るか、または充填済みシリンジにおいて提示され得る。シリンジは針を備えていても備えていなくてもよい。組成物は、単位投薬形態または反復投薬形態でパッケージングされ得る。シリンジは、一般的に単回用量の組成物を含むが、バイアルは、単回用量または反復用量を含む。したがって、反復投薬形態では、バイアルは、前充填シリンジよりも好ましい。
【0067】
有効投薬容量は常套的に確立され得るが、組成物の典型的なヒト用量は、例えば筋肉内注射では、約0.5mlの容量を有する。RIVM OMV系ワクチンが、0.5ml容量で[63]筋肉内注射によって大腿または上腕に投与された。同様の用量が、他の送達経路に使用され得、例えば、噴霧化用の鼻腔内OMV系ワクチンは、約100μlまたは約130μl/スプレー[64]の容量を有し得、4回のスプレー投与により、合計用量約0.5mlが与えられる。
【0068】
該組成物のpHは、好ましくは、6〜8の間、より好ましくは6.5〜7.5の間(例えば、約7または約7.4)である。RTVM OMV系ワクチンのpHは7.4であり[65]、pH<8(好ましくは、<7.5)が本発明の組成物に好ましい。好適なpHは、緩衝液、例えば、Tris緩衝液、リン酸塩緩衝液またはヒスチジン緩衝液の使用によって維持され得る。本発明の組成物は、一般的に緩衝液を含む。組成物が水酸化アルミニウム塩を含む場合、ヒスチジン緩衝液を[66]、例えば1〜10mM、好ましくは約5mMで用いることが好ましい。RIVM OMV系ワクチンではpHは、10mM Tris/HCl緩衝液を用いることにより維持される。該組成物は、無菌および/または発熱因子無含有のものであり得る。本発明の組成物は、ヒトに関して等張性のものであり得る。
【0069】
本発明の組成物は免疫原性であり、より好ましくはワクチン組成物である。本発明によるワクチンは、予防用(すなわち、感染を予防するため)または治療用(すなわち、感染を処置するため)のうちのいずれかであり得るが、典型的には予防用である。ワクチンとして使用される免疫原性組成物は、免疫学的に有効性な量の抗原(1種類または複数種)、ならびに必要に応じて任意の他の成分を含む。「免疫学的に有効性な量」により、個体への該量の投与が、単回用量または一連の用量の一部のうちのいずれかとして、処置または予防に有効であることが意図される。この量は、処置対象の健康状態および体調、年齢、処置対象の個体の分類群(例えば、非ヒト霊長類、霊長類など)、個体の免疫系が抗体を合成する能力、所望される保護の程度、ワクチンの処方物化、医療状況に対する処置する医師の評価、および他の関連する要素に応じて異なる。該量は、常套的な試験により決定され得る比較的広い範囲内である(fall in)ことが期待される。本発明の組成物の抗原含量は、一般的に、1回用量あたりのタンパク質の量で示される。約0.9mgタンパク質/mlの1回用量がOMV系鼻腔内ワクチンに典型的である[64]。MeNZB(登録商標)OMV系ワクチンは、1ミリリットルあたり25〜200μgのタンパク質(例えば、45〜90μg/ml、または50±10μg/ml)を含有する。本発明の組成物は、好ましくは、細菌1株あたり100μg/ml未満のOMVを含む。
【0070】
髄膜炎菌は身体の種々の領域を冒すため、本発明の組成物は、種々の形態で調製され得る。例えば、該組成物は、注射可能物質として、液状の溶液または懸濁液のうちのいずれかとして調製され得る。該組成物は、肺投与用、例えば、微粉末またはスプレーを用いて吸入器として調製され得る。該組成物は、坐剤またはペッサリーとして調製され得る。該組成物は、経鼻、経耳または眼投与用、例えば、スプレー剤、滴剤、ゲル剤または粉剤として調製され得る[例えば、参考文献67および68]。
【0071】
本発明の組成物は、特に、反復投薬形式でパッケージングされる場合、抗菌剤を含み得る。チオメルサールおよび2−フェノキシエタノールなどの抗菌剤が一般的にワクチンにおいて見られるが、水銀無含有の保存剤を用いるか、保存剤を全く用いないかのうちのいずれかが好ましい。
【0072】
本発明の組成物は、界面活性剤、例えばTween(ポリソルベート)(Tween 80など)を含み得る。界面活性剤は、一般的に、低レベル(例えば、<0.01%)で存在させる。
【0073】
本発明の組成物は、張性を付与するためにナトリウム塩(例えば、塩化ナトリウム)を含み得る。10±2mg/ml NaClの濃度が典型的である。塩化ナトリウムの濃度は、好ましくは、7.5mg/mlより大きい。
【0074】
本発明の組成物は、一般的に、他の免疫調節剤と併せて投与される。特に、組成物は、通常、1種類以上のアジュバントを含み、本発明は、本発明の小胞をアジュバントと、例えば薬学的に受容可能なキャリア中で混合する工程を含む、本発明の組成物の調製方法を提供する。好適なアジュバントとしては、限定されないが、以下のものが挙げられる。
【0075】
(A.無機質含有組成物)
本発明におけるアジュバントとしての使用に適した無機質含有組成物としては、無機塩類、例えば、アルミニウム塩およびカルシウム塩などが挙げられる。本発明は、無機塩類、例えば、水酸化物(例えば、オキシ水酸化物)、リン酸塩(例えば、ヒドロキシリン酸塩、オルトリン酸塩)、硫酸塩など[例えば、参考文献69の第8および9章を参照]、または異なる無機質化合物の混合物などを含み、これらの化合物は任意の適当な形態が採用され(例えば、ゲル、結晶質、非晶質など)、吸着性であることが好ましい。無機質含有組成物はまた、金属塩の粒子として処方物化され得る[70]。
【0076】
典型的なリン酸アルミニウムアジュバントは、0.84〜0.92のPO/Alモル比(0.6mg Al3+/mlを含む)を有する非晶質ヒドロキシリン酸アルミニウムである。低用量のリン酸アルミニウムでの吸着が、例えば、50〜100μg Al3+/結合体/用量で使用され得る。リン酸アルミニウムが使用され、アジュバントに抗原が吸着されないことが所望される場合、これは、遊離リン酸塩イオンを溶液中に含めることにより(例えば、リン酸塩緩衝液の使用によって)有利である。
【0077】
RIVMワクチンは、リン酸アルミニウムまたは水酸化アルミニウムアジュバントのうちのいずれかに対する吸着に関して試験され、リン酸アルミニウムアジュバントが、より優れた結果をもたらすことがわかった[65]。MeNZB(登録商標)、MenBvac(登録商標)およびVA−MENINGOC−BC(登録商標)製品は、すべて水酸化アルミニウムアジュバントを含むものである。
【0078】
アルミニウムアジュバントの典型的な用量は約3.3mg/ml(Al3+濃度として示す)。
【0079】
(B.油性エマルジョン)
本発明におけるアジュバントとしての使用に適した油性エマルジョン組成物としては、スクアレン−水エマルジョン、例えば、MF59[参考文献69の第10章;また、参考文献71も参照](5%スクアレン、0.5%Tween 80、および0.5%Span 85、マイクロフルイダイザーを用いてサブミクロン粒子に処方物化)などが挙げられる。完全フロイントアジュバント(CFA)および不完全フロイントアジュバント(IFA)もまた使用され得る。
【0080】
(C.サポニン処方物[参考文献69の第22章])
サポニン処方物もまた、本発明においてアジュバントとして使用され得る。サポニンは、広範な植物種の樹皮、葉、茎、根および花にも見られるステロールグリコシドおよびトリテルペノイドグリコシドの異種群である。Quillaia saponaria Molina樹木の樹皮由来のサポニンは、アジュバントとして広く研究されている。サポニンはまた、Smilax ornata(サルサパリラ)、Gypsophilla paniculata(ブライダルベール(brides veil))、およびSaponaria officianalis(ソープルート)由来のものが市販品として得られ得る。サポニンアジュバント処方物としては、精製処方物(例えば、QS21など)、ならびに脂質処方物(例えば、ISCOMなど)が挙げられる。QS21は、Stimulon(登録商標)として市販されている。
【0081】
サポニン組成物は、HPLCおよびRP−HPLCを用いて精製されたものである。これらの手法を用いた具体的な精製画分が同定されており、QS7、QS17、QS18、QS21、QH−A、QH−BおよびQH−Cが挙げられる。好ましくは、サポニンはQS21である。QS21の作製方法は参考文献72に開示されている。サポニン処方物はまた、コレステロールなどのステロールを含み得る[73]。
【0082】
サポニンおよびコレステロールの組み合わせを用い、免疫刺激複合体(ISCOM)と呼ばれる特異な粒子を形成することができる[参考文献69の第23章]。ISCOMは、典型的には、ホスファチジルエタノールアミンまたはホスファチジルコリンなどのリン脂質もまた含む。任意の公知のサポニンがISCOMに使用され得る。好ましくは、ISCOMは、QuilA、QHAおよびQHCの1つ以上を含む。ISCOMは、参考文献73〜75にさらに記載されている。任意選択で、ISCOMSは、余分な界面活性剤を含まないものであり得る[76]。
【0083】
サポニン系アジュバントの開発の概説は、参考文献77および78に見られ得る。
【0084】
(D.ビロソームおよびウイルス様粒子)
ビロソームおよびウイルス様粒子(VLP)もまた、本発明においてアジュバントとして使用され得る。このような構造は、一般的に、ウイルス由来の1種類以上のタンパク質を、任意選択でリン脂質と合わせて、または配合されて含有する。これらは、一般的に、非病原性、非複製性であり、一般的に、天然ウイルスゲノムを全く含まない。ウイルス系タンパク質は、組換えにより産生させたもの、または完全体ウイルスから単離したものであり得る。ビロソームまたはVLPにおける使用に適したこのようなウイルス系タンパク質としては、インフルエンザウイルス(例えば、HAまたはNAなど)、B型肝炎ウイルス(例えば、コアまたはキャプシドタンパク質など)、E型肝炎ウイルス、麻疹ウイルス、シンドビスウイルス、ロタウイルス、口蹄疫ウイルス、レトロウイルス、ノーウォークウイルス、ヒトパピローマウイルス、HIV、RNA−ファージ、Qβ−ファージ(例えば、コートタンパク質など)、GA−ファージ、fr−ファージ、AP205ファージ、およびTy(例えば、レトロトランスポゾンTyタンパク質p1など)に由来するタンパク質が挙げられる。VLPは、参考文献79〜84にさらに論考されている。ビロソームは、例えば、参考文献85にさらに論考されている。
【0085】
(E.細菌または微生物の誘導体)
本発明における使用に適したアジュバントとしては、細菌または微生物の誘導体、例えば、腸内細菌のリポ多糖(LPS)の非毒性誘導体、リピドA誘導体、免疫刺激オリゴヌクレオチドおよびADPリボシル化毒素およびその無毒化誘導体などが挙げられる。
【0086】
LPSの非毒性誘導体としては、モノホスホリルリピドA(MPL)および3−O−脱アシル化MPL(3dMPL)が挙げられる。3dMPLは、4、5または6アシル化鎖を有する3脱−O−アシル化モノホスホリルリピドAの混合物である。3脱−O−アシル化モノホスホリルリピドAの好ましい「小粒子」形態は参考文献86に開示されている。3dMPLのかかる「小粒子」は、0.22μm膜を通して滅菌濾過されるのに充分小さい[86]。他の非毒性LPS誘導体としては、モノホスホリルリピドA模倣物、例えば、アミノアルキルグルコサミニドのリン酸塩誘導体、例えば、RC−529が挙げられる[87,88]。
【0087】
リピドA誘導体としては、OM−174などの大腸菌由来のリピドAの誘導体が挙げられる。OM−174は、例えば、参考文献89および90に記載されている。
【0088】
本発明におけるアジュバントとしての使用に適した免疫刺激オリゴヌクレオチドとしては、CpGモチーフを含有するヌクレオチド配列(リン酸塩結合によってグアノシンに連結された非メチル化シトシンを含有するジヌクレオチド配列)が挙げられる。パリンドローム配列またはポリ(dG)配列を含有する二本鎖RNAおよびオリゴヌクレオチドもまた、免疫刺激性であることが示されている。
【0089】
CpGは、ヌクレオチド修飾/アナログ(例えば、ホスホチオエート修飾など)を含み得、二本鎖または一本鎖であり得る。参考文献91、92および93には、考えられ得るアナログ置換、例えば、2’−デオキシ−7−デアザグアノシンでのグアノシンの置換えが開示されている。CpGオリゴヌクレオチドのアジュバント効果が、参考文献94〜99にさらに論考されている。
【0090】
CpG配列は、TLR9、例えば、モチーフGTCGTTまたはTTCGTTに指向されるものであり得る[100]。CpG配列は、Th1免疫応答の誘導に特異的であり得る(例えば、CpG−A ODNなど)か、またはB細胞応答の誘導により特異的であり得る(例えば、CpG−B ODNなど)。CpG−AおよびCpG−B ODNは、参考文献101〜103に論考されている。好ましくは、CpGはCpG−A ODNである。
【0091】
好ましくは、CpGオリゴヌクレオチドは、5’末端がレセプター認識のために接近可能となるように構築される。任意選択で、2つのCpGオリゴヌクレオチド配列がその3’末端で結合され、「イムノマー(immunomer)」を形成していてもよい。例えば、参考文献100および104〜106を参照のこと。
【0092】
細菌のADPリボシル化毒素およびその無毒化誘導体は、本発明においてアジュバントとして使用され得る。好ましくは、該タンパク質は、大腸菌(大腸菌熱不安定性エンテロトキシン「LT」)、コレラ(「CT」)または百日咳(「PT」)に由来するものである。粘膜用アジュバントとしての無毒化ADPリボシル化毒素の使用は、参考文献107に記載されており、非経口用アジュバントとしてのものは参考文献108に記載されている。毒素またはトキソイドは、好ましくは、AおよびBの両方のサブユニットを含むホロ毒素の形態である。好ましくは、Aサブユニットは、無毒化変異を含み、好ましくは、Bサブユニットは変異されていない。好ましくは、アジュバントは無毒化LT変異型、例えば、LT−K63、LT−R72、およびLT−G192などである。アジュバントとしてのADPリボシル化毒素およびその無毒化誘導体、特にLT−K63およびLT−R72の使用は、参考文献109〜116をみるとよい。アミノ酸置換に関する数値符号は、好ましくは、参考文献117に示すADPリボシル化毒素のAおよびBサブユニットのアラインメントに基づくものであり、引用により、その全体が本明細書に具体的に組み込まれる。
【0093】
(F.ヒト免疫調整剤)
本発明におけるアジュバントとしての使用に適したヒト免疫調整剤としては、サイトカイン、例えば、インターロイキン(例えば、IL−1、IL−2、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−12[118]など)[119]、インターフェロン(例えば、インターフェロン−γ)、マクロファージコロニー刺激因子、および腫瘍壊死因子などが挙げられる。
【0094】
(G.生体接着剤および粘膜接着剤)
生体接着剤および粘膜接着剤もまた、本発明においてアジュバントとして使用され得る。好適な生体接着剤としては、エステル化ヒアルロン酸ミクロスフェア[120]または粘膜接着剤、例えば、ポリ(アクリル酸)の架橋誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、多糖およびカルボキシメチルセルロースが挙げられる。キトサンおよびその誘導体もまた、本発明においてアジュバントとして使用され得る[121]。
【0095】
(H.ミクロ粒子)
ミクロ粒子もまた、本発明においてアジュバントとして使用され得る。生分解性で非毒性である材料(例えば、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリカプロラクトンなど)とポリ(ラクチド−コ−グリコリド)から形成されるミクロ粒子(すなわち、約100nm〜約150μmの直径、より好ましくは約200nm〜約30μmの直径、最も好ましくは約500nm〜約10μmの直径の粒子)が好ましく、任意選択で、負に帯電した表面(例えば、SDSで)または正に帯電した表面(例えば、CTABなどのカチオン系界面活性剤で)を有するように処理する。
【0096】
(I.リポソーム(参考文献69の第13および14章))
アジュバントとしての使用に適したリポソーム処方物の例は、参考文献122〜124に記載されている。
【0097】
(J.ポリオキシエチレンエーテル処方物およびポリオキシエチレンエステル処方物)
本発明における使用に適したアジュバントとしては、ポリオキシエチレンエーテルおよびポリオキシエチレンエステル[125]が挙げられる。かかる処方物は、ポリオキシエチレンソルビタンエステル界面活性剤をオクトキシノール[126]との組合せで、ならびにポリオキシエチレンアルキルエーテルまたはエステル界面活性剤を少なくとも1種類のさらなる非イオン系界面活性剤、例えば、オクトキシノール[127]との組合せでさらに含む。好ましいポリオキシエチレンエーテルは、以下の群:ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル(laureth 9)、ポリオキシエチレン−9−ステオリル(steoryl)エーテル、ポリオキシエチレン(theylene)−8−ステオリルエーテル、ポリオキシエチレン−4−ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン−35−ラウリルエーテル、およびポリオキシエチレン−23−ラウリルエーテルから選択される。
【0098】
(K.ポリホスファゼン(PCPP))
PCPP処方物は、例えば、参考文献128および129に記載されている。
【0099】
(L.ムラミルペプチド)
本発明におけるアジュバントとしての使用に適したムラミルペプチドの例としては、N−アセチル−ムラミル−L−トレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−ノル(nor)ムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン(nor−MDP)、およびN−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミンMTP−PE)が挙げられる。
【0100】
(M.イミダゾキノロン化合物)
本発明におけるアジュバントとしての使用に適したイミダゾキノロン化合物の例としては、参考文献130および131にさらに記載されているImiquamodおよびそのホモログ(例えば、「Resiquimod 3M」)が挙げられる。
【0101】
本発明はまた、上記のアジュバントの1種類以上の態様の組合せを含み得る。例えば、以下のアジュバント組成物:(1)サポニンと水中油型エマルジョン[132];(2)サポニン(例えば、QS21)+非毒性LPS誘導体(例えば、3dMPL)[133];(3)サポニン(例えば、QS21)+非毒性LPS誘導体(例えば、3dMPL)+コレステロール;(4)サポニン(例えば、QS21)+3dMPL+IL−12(任意選択で+ステロール)[134];(5)3dMPLと、例えばQS21および/または水中油型エマルジョンの組合せ[135];(6)10%スクワラン、0.4%Tween 80(登録商標)、5%プルロニック−ブロックポリマーL121およびthr−MDPを含有し、サブミクロンエマルジョンにミクロ流動化されたもの、またはより大きな粒径のエマルジョンを生成させるためにボルテックスされたもののうちのいずれかであるSAF;(7)2%スクアレンと、0.2%Tween 80と、モノホスホリルリピドA(MPL)、トレハロースジミコレート(TDM)および細胞壁骨格(CWS)からなる群からの1種類以上の細菌の細胞壁成分とを含有するRibi(登録商標)アジュバント系(RAS)(Ribi Immunochem)、好ましくは、MPL+CWS(Detox(登録商標));ならびに(8)1種類以上の無機塩類(例えば、アルミニウム塩)+LPSの非毒性誘導体(例えば、3dMPLなど)が本発明において使用され得る。
【0102】
免疫刺激剤として作用する他の物質は、参考文献69の第7章に開示されている。
【0103】
アルミニウム塩アジュバントの使用は特に好ましく、抗原は、一般的に、かかる塩に吸着される。本発明の組成物において、一部の抗原を水酸化アルミニウムに吸着させることが可能であるが、リン酸アルミニウムと会合する他の抗原を有することが可能である。しかしながら、一般に、単一の塩、例えば水酸化物またはリン酸塩を用いることが好ましいが、両方ではない。すべての小胞が吸着される必要はなく、すなわち、一部または全部が溶液中で遊離状態であり得る。
【0104】
(処置方法)
本発明はまた、本発明の組成物を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物において免疫応答を惹起するための方法を提供する。免疫応答は、好ましくは保護的であり、好ましくは抗体が関与する。該方法により、既にN.meningitidisに対して初回抗原刺激した患者において、追加免疫応答が惹起され得る。OMVに関する皮下および鼻腔内初回抗原刺激/追加免疫レジメン(regime)は、参考文献136に開示されている。
【0105】
哺乳動物は、好ましくはヒトである。ワクチンが予防的使用のためのものである場合、ヒトは、好ましくは小児(例えば、よちよち歩きの幼児または乳児)または10代の若者であり、ワクチンが治療用途のものである場合、ヒトは、好ましくは成人である。小児を対象とするワクチンはまた、例えば、安全性、投薬量、免疫原性などを評価するために成人に投与され得る。
【0106】
本発明はまた、医薬としての使用のための本発明の小胞を提供する。医薬は、好ましくは、哺乳動物免疫応答を惹起することができるものであり(すなわち、免疫原性組成物である)、より好ましくはワクチンである。
【0107】
本発明はまた、哺乳動物において免疫応答を惹起するための医薬の製造における本発明の小胞の使用を提供する。
【0108】
本発明はまた、患者の免疫処置のための医薬の製造における本発明の小胞の使用であって、患者が、以下:ジフテリアトキソイド;破傷風トキソイド;無細胞性または細胞性百日咳抗原;結合体されたHib莢膜糖鎖;B型肝炎ウイルス表面抗原;結合体された髄膜炎菌莢膜糖鎖;および/または結合体された肺炎球菌莢膜糖鎖の少なくとも1つで予備免疫処置されている使用を提供する。
【0109】
このような使用および方法は、好ましくは、N.meningitidisによって引き起こされる疾患、例えば、細菌性(または、より具体的には、髄膜炎菌性)髄膜炎または敗血症の予防および/または処置のためのものである。
【0110】
治療処置の有効性を確認する方法の一例は、本発明の組成物の投与後のナイセリア属感染のモニタリングを伴う。予防的処置の有効性を確認する方法の一例は、該組成物の投与後の小胞の抗原に対する免疫応答のモニタリングを伴う。本発明の組成物の免疫原性は、これを試験被験体(例えば、12〜16ヶ月齢の小児または動物モデル[137])に投与し、次いで、標準的なパラメータ(例えば、血清中殺菌抗体(SBA)およびELISA力価(GMT)など)を測定することにより決定され得る。このような免疫応答は、一般的に、該組成物投与のおよそ4週間後に測定され、該組成物の投与前に測定した値と比較する。少なくとも4倍または8倍のSBA増加が好ましい。1回より多い用量の該組成物が投与される場合、1回より多い投与後測定が行なわれ得る。
【0111】
好ましい本発明の組成物は、許容され得る(acceptable)割合のヒト被験体に対するセロプロテクションの基準よりも優れた患者において、抗体力価を付与(confer)し得る。それより上では宿主が抗原に対してセロコンバージョンされたとみなされる関連抗体力価を有する抗原はよく知られており、かかる力価は、WHOなどの機関によって公表されている。好ましくは、被験体の統計学的に有意な試料の80%より多く、より好ましくは90%より多く、さらにより好ましくは93%より多く、最も好ましくは96〜100%がセロコンバージョンされる。
【0112】
本発明の組成物は、一般的に、直接患者に投与される。直接送達は、非経口注射(例えば、皮下、腹腔内、静脈内、筋肉内、もしくは組織の間隙腔に対して)によって、または経直腸、経口、経膣、局所、経皮、鼻腔内、眼、経耳、肺もしくは他の粘膜投与によってなされ得る。大腿または上腕に対する筋肉内投与が好ましい。注射は、針(例えば、皮下針)によるものであり得るが、無針注も代替的に使用され得る。典型的な筋肉内用量は0.5mlである。
【0113】
投薬処置は、単回投与スケジュールまたは反復投与スケジュールであり得る。反復投与は、初回免疫処置スケジュールおよび/または追加免疫処置スケジュールにおいて使用され得る。初回投与スケジュールの後に追加免疫投与スケジュールが行なわれ得る。初回投与間(例えば、4〜16週間の間)、および初回抗原刺激と追加免疫間の好適なタイミングは、常套的に決定され得る。OMV系RIVMワクチンは、3または4回投与の初回スケジュールを用い、0、2および8または0、1、2および8ヶ月時点でのワクチン接種により試験した。MeNZB(登録商標)を、6週間隔で3回投与にて投与する。このようなスケジュールは、本発明に従って使用され得る。各投与段階で得られる小胞調製物は、同じかまたは異なり得る。
【0114】
本発明の方法において、第1の用量を時間点ゼロで与え、次いで、第2および第3の用量が、次の2ヶ月の間に与えられ得、第4の用量が時間点ゼロの後、11〜13ヶ月の間に与えられ得る。第1、第2および第3の用量は、互いのものと同じ血清亜型を有する小胞を含み得、第4の用量は、最初の3回の用量のものと異なる血清亜型を有する小胞を含み得る。第4の用量は、最初の3回の用量のものと異なる血清亜型を有する小胞のみを含有し得るか、または1つは最初の3回の用量のものと異なる血清亜型を有し、1つ同じ亜型を有する2つの型の小胞を含有し得る。第1、第2および第3の用量は、好ましくは、6〜8週の間の間隔で与えられる。第4の用量は、好ましくは、時間点ゼロの約1年後に与えられる。患者は、好ましくは、4回の投与の各々で同じ量のワクチンを受ける。
【0115】
上記のように、本発明は、N.meningitidisサブタイプおよび/または血清亜型[例えば、参考文献47]の1種類より多くに由来する小胞の、個々の、または混合状態でのうちのいずれかでの投与を伴い得る。
【0116】
本発明は、全身免疫および/または粘膜免疫を惹起するために使用され得る。
【0117】
一般に、本発明の組成物は、被験体に投与された後、血清中殺菌抗体応答を誘導することができる。このような応答は、マウスにおいて簡便に測定され、ワクチン有効性の標準的な指標である[例えば、参考文献196の巻末の注14を参照]。血清中殺菌活性(SBA)は、補体によって媒介される細菌の死滅を測定するものであり、ヒトまたは仔ウサギの補体を用いてアッセイされ得る。WHO基準では、レシピエントの90%超において、ワクチンは、SBAの少なくとも4倍上昇を誘導することが求められる。MeNZB(登録商標)は、第3の用量の投与の4〜6週間後、SBAの4倍上昇を惹起する。
【0118】
狭い保護をもたらすのではなく、本発明の組成物は、血清群Bの1つより多い超ビルレント系統に対する殺菌抗体応答を誘導し得る。特に、これらは、好ましくは、以下の3種類の超ビルレント系統:(i)クラスターA4;(ii)ET5複合体;および(iii)系統3のうちの2種または3種に対する殺菌性応答を誘導するものであり得る。さらに、これらは、超ビルレント系統である亜群I、亜群III、亜群IV−1またはET−37複合体のうちの1種類以上に対する、および他の系統、例えば超侵襲性系統に対する殺菌抗体応答を誘導し得る。これは、必ずしも該組成物が、これらの超ビルレント系統の血清群B髄膜炎菌の1つ1つの菌株に対して殺菌抗体を誘導し得るのではなく、むしろ、例えば、ある特定の超ビルレント系統の血清群B髄膜炎菌のより多くの(more)菌株の4種類のうちの任意の所与の群について、該組成物によって誘導された抗体が、該群の少なくとも50%(例えば、60%、70%、80%、90%またはそれ以上)に対して殺菌性であることを意味する。好ましい菌株の群としては、以下の国々:GB、AU、CA、NO、IT、US、NZ、NL、BRおよびCUの少なくとも4カ国で単離された菌株が挙げられる。該血清は、好ましくは、少なくとも1024(例えば、210、211、212、213、214、215、216、217、218またはより大きい、好ましくは少なくとも214)の殺菌力価を有し、例えば、血清は、参考文献196に記載のように、1/1024に希釈したとき、特定の一菌株の試験細菌の少なくとも50%を死滅させることができる。
【0119】
好ましい組成物は、以下:(i)クラスターA4、菌株961−5945(B:2b:P1.21,16)および/または菌株G2136(B:−);(ii)ET−5複合体、菌株MC58(B:15:P1.7,16b)および/または菌株44/76(B:15:P1.7,16);(iii)系統3、菌株394/98(B:4:P1.4)および/または菌株BZ198(B:NT:−)に由来する血清群B髄膜炎菌の菌株に対する殺菌性応答を誘導し得るものである。より好ましい組成物は、菌株961−5945、44/76および394/98に対する殺菌性応答を誘導し得るものである。
【0120】
菌株961−5945およびG2136は、ともにNeisseria MLST参照菌株である[同一著者の参考文献138の638および1002]。菌株MC58は、広く入手可能であり(例えば、ATCC BAA−335)、参考文献32において配列決定された菌株である。菌株44/76は、広く使用され、キャラクタライズされており(例えば、参考文献139)、Neisseria MLST参照菌株の1つである[同一著者の参考文献138の237;参考文献33の表2の第32列]。菌株394/98は、1998年にニュージーランドで最初に単離され、この菌株を用いた研究がいくつか発表されている(例えば、参考文献140および141)。菌株BZ198は別のMLST参照菌株である[同一著者の参考文献138の409;参考文献33の表2の第41列]。
【0121】
(さらなる抗原性成分)
本発明の抗原性小胞を含有することに加え、本発明の組成物は、さらなる非小胞抗原を含み得る。例えば、該組成物は、以下のさらなる抗原の1種類以上:
− N.meningitidis血清群A、C、W135および/またはY由来の糖鎖抗原、例えば、血清群C由来の参考文献142に開示されオリゴ糖または参考文献143のオリゴ糖など。VA−MENINGOC−BC(登録商標)製品は血清群Cの多糖を含有する。
【0122】
− Streptococcus pneumoniae由来の糖鎖抗原[例えば、参考文献144〜146;参考文献153の第22および23章]。
【0123】
− A型肝炎ウイルス由来の抗原、例えば、不活化ウイルスなど[例えば、147、148;参考文献153の第15章]。
【0124】
− B型肝炎ウイルス由来の抗原、例えば、表面および/またはコア抗原など[例えば、148、149;参考文献153の第16章]。
【0125】
− C型肝炎ウイルス由来の抗原[例えば、150]。
【0126】
− 百日咳菌由来の抗原、例えば、百日咳ホロ毒素(PT)およびB.pertussis由来の糸状血球凝集素(FHA)など、任意選択でペルタクチンおよび/または凝集原2および3との組合せでもある[例えば、参考文献151および152;参考文献153の第21章]。
【0127】
− ジフテリア抗原、例えば、ジフテリアトキソイドなど[例えば、参考文献153の第13章]。
【0128】
− 破傷風抗原、例えば、破傷風トキソイドなど[例えば、参考文献153の第27章]。
【0129】
− Haemophilus influenzae B由来の糖鎖抗原[例えば、参考文献153の第14章]。
【0130】
− N.gonorrhoeae由来の抗原[例えば、参考文献154]。
【0131】
− Chlamydia pneumoniae由来の抗原[例えば、155〜161]。
【0132】
− Chlamydia trachomatis由来の抗原[例えば、162]。
【0133】
− Porphyromonas gingivalis由来の抗原[例えば、163]。
【0134】
− ポリオ抗原(1種類または複数種)[例えば、164、165;参考文献153の第24章]、例えば、IPVなど。
【0135】
− 狂犬病抗原(1種類または複数種)[例えば、166]、例えば、凍結乾燥不活化ウイルスなど[例えば、167、RabAvert(登録商標)]。
【0136】
− 麻疹、耳下腺炎および/または風疹抗原[例えば、参考文献153の第19、20および26章]。
【0137】
−インフルエンザ抗原(1種類または複数種)[例えば、参考文献153の第17および18章]、例えば、血球凝集素および/またはノイラミニダーゼ表面タンパク質など。
【0138】
− Moraxella catarrhalis由来の抗原[例えば、168]。
【0139】
− Streptococcus agalactiae由来のタンパク質抗原(B群連鎖球菌)[例えば、169、170]。
【0140】
− Streptococcus pyogenes由来の抗原(A群連鎖球菌)[例えば、170、171、172]。
を含み得る。
【0141】
糖鎖(saccharide/carbohydrate)抗原を用いる場合、これは、好ましくは、免疫原性を増強するためにキャリアに結合体させる。H.influenzae B、髄膜炎菌および肺炎球菌の糖鎖抗原のコンジュゲーションがよく知られている。
【0142】
毒性のタンパク質抗原は、必要な場合は、無毒化するのがよい(例えば、化学的および/または遺伝的手段による百日咳毒素の無毒化[152])。
【0143】
ジフテリア抗原を該組成物中に含める場合、破傷風抗原および百日咳抗原も含めることが好ましい。同様に、破傷風抗原を含める場合、ジフテリア抗原および百日咳抗原も含めることが好ましい。同様に、百日咳抗原を含める場合、ジフテリア抗原および破傷風抗原も含めることが好ましい。したがって、DTPの組合せが好ましい。
【0144】
糖鎖抗原は、好ましくは、結合体の形態である。結合体のための好ましい輸送タンパク質は、細菌の毒素またはトキソイド(例えば、ジフテリアトキソイドまたは破傷風トキソイドなど)である。ジフテリア毒素のCRM197変異型[173〜175]は、それ自体がジフテリアトキソイドであるため特に好ましいキャリアである。他の好適な輸送タンパク質としては、N.meningitidis外膜タンパク質[176]、合成ペプチド[177,178]、熱ショックタンパク質[179,180]、百日咳タンパク質[181,182]、サイトカイン[183]、リンホカイン[183]、ホルモン[183]、増殖因子[183]、種々の病原体由来抗原に由来する多数のヒトCD4T細胞エピトープを含む人工タンパク質[184](例えば、N19など)、H.influenzae由来プロテインD[185,186]、肺炎球菌表面タンパク質PspA[187]、ニューモリシン[188]、鉄分取込みタンパク質[189]、C.difficile由来毒素AまたはB[190]などが挙げられる。
【0145】
好ましい組成物は、上記の髄膜炎菌小胞に加え、髄膜炎菌の血清群A、C、W135およびYの1種類以上(すなわち、1、2、3または4種類)に由来する結合体された莢膜糖鎖を含む。小胞が血清群Bに由来する場合、このアプローチは、以下の血清群:B+A;B+C;B+W135;B+Y;B+C+W135;B+C+Y;B+W135+Y;B+A+C+W135;B+A+C+Y;B+A+W135+Y;B+C+W135+Y;およびB+A+C+W135+Yが包含されることを許容する。2つの好ましい組合せでは、血清群B小胞に加え、血清群A+W135+Yまたは血清群A+C+W135+Yのうちのいずれかに由来する結合体抗原が使用される。一般に、x種類の血清群(1種類または複数種)で小胞および残りの(5−x)種類の血清群の結合体糖鎖を選択することにより、血清群A、B、C、W135およびYの5種類すべてを包含することが可能である。
【0146】
また、特定の髄膜炎菌のタンパク質抗原(好ましくは、血清群B由来)が、小胞組成物を補足するために添加され得る。特に、参考文献41および191〜199に開示されたものなどのタンパク質抗原が添加され得る。少数の規定の抗原(10種類より少ない(例えば、9、8、7、6、5、4、3、2)精製抗原の混合物)が添加され得る。本発明での使用に好ましいさらなる免疫原性ポリペプチドは、参考文献199に開示された:(1)「NadA」タンパク質;(2)「741」タンパク質;(3)「936」タンパク質;(4)「953」タンパク質;および(5)「287」タンパク質である。他の考えられ得る補足の髄膜炎菌抗原としては、トランスフェリン結合タンパク質(例えば、TbpAやTbpB)および/またはCu,Zn−スーパーオキシドジスムターゼ[18]が挙げられる。他の考えられ得る補足の髄膜炎菌抗原としては、ORF40(「Hsf」または「NhhA」としても知られる[200,201])、LctP[202]およびExbB[202]が挙げられる。他の考えられ得る補足の髄膜炎菌抗原としては、以下のアミノ酸配列:参考文献191の配列番号650;参考文献191の配列番号878;参考文献191の配列番号884;参考文献192の配列番号4;参考文献193の配列番号598;参考文献193の配列番号818;参考文献193の配列番号864;参考文献193の配列番号866;参考文献193の配列番号1196;参考文献193の配列番号1272;参考文献193の配列番号1274;参考文献193の配列番号1640;参考文献193の配列番号1788;参考文献193の配列番号2288;参考文献193の配列番号2466;参考文献193の配列番号2554;参考文献193の配列番号2576;参考文献193の配列番号2606;参考文献193の配列番号2608;参考文献193の配列番号2616;参考文献193の配列番号2668;参考文献193の配列番号2780;参考文献193の配列番号2932;参考文献193の配列番号2958;参考文献193の配列番号2970;参考文献193の配列番号2988の1つ以上を含むタンパク質、または(a)前記配列に対して50%またはそれ以上同一性(例えば、60%、70%、80%、90%、95%、99%またはそれ以上)を有する;および/または(b)前記配列由来の少なくともn個の連続するアミノ酸である断片を含むアミノ酸配列を含む(ここで、nは、7以上(例えば、8、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250もしくはそれより大きい)である)ポリペプチドが挙げられる。(b)の好ましい断片は、関連する配列に由来するエピトープを含む。これらのポリペプチドの1つより多く(例えば、2、3、4、5、6個)が含まれ得る。また、髄膜炎菌抗原トランスフェリン結合タンパク質および/またはHsfタンパク質が添加されてもよい[203]。
【0147】
このような規定の髄膜炎菌抗原によるOMVの補足は、OMVが血清亜型P1.7b,4髄膜炎菌または血清亜型P1.7,16髄膜炎菌に由来する場合、特に有用である。これらの両方の血清亜型に由来するOMVの混合物の補足が好ましい。
【0148】
また、本発明のもの以外の方法で調製される(例えば、先行技術において開示された細菌膜の破壊を伴う方法によって調製される)本発明の小胞ではない小胞(例えば、OMV、MV、NOMVなど)を添加することも可能である。
【0149】
組成物中の抗原は、典型的には、各々、少なくともlμg/mlの濃度で存在させる。一般に、任意の所与の抗原の濃度は、該抗原に対する免疫応答を惹起するのに充分なものである。
【0150】
本発明の組成物においてタンパク質抗原を用いる代わりに、該抗原をコードする核酸を使用してもよい。本発明の組成物のタンパク質成分は、したがって、タンパク質をコードする核酸(好ましくはDNA、例えば、プラスミドの形態)で置き換えられ得る。
【0151】
(新しい髄膜炎菌のタンパク質)
血清群B髄膜炎菌のゲノム配列は、参考文献32に報告されている。ゲノムの最初の(initial)アノテーションは、>2000個の遺伝子すべてに認められていない。例えば、NMB1870の開始コドンは、その後、再割り当てされている[41,55]。本発明者らは、NMB0928、NMB0109およびNMB1057の開始コドンもまた、再割り当てされるはずであることを見出した。
・ NMB0928の最初の配列を図6(配列番号3)に示す。本発明者らは、NMB0928の真の開始コドンは、図6の残基24のメチオニンをコードするATGであると考える。新しい開始コドン(配列番号6)では、NMB0928は、リポ−ボックスモチーフ(下線)を有するシグナルペプチドを特徴とする、表面発現(exposed)タンパク質の典型的な形跡(signature)を提示する。
・ NMB0109の最初の配列を図7(配列番号4)に示す。本発明者らは、NMB0109の真の開始コドンは、図7の残基39のMetをコードするATGであると考える。(配列番号7)
・ NMB1057の最初の配列を図8(配列番号5)に示す。本発明者らは、NMB1057の真の開始コドンは、図8の残基14のValをコードするGTGであると考える。(配列番号8)
したがって、本発明は、(a)配列番号6のアミノ酸配列;(b)配列番号6に対して少なくとも50%(例えば、60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%またはそれ以上)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドおよび/または配列番号6由来の少なくとも7個(例えば、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、60、7080、90、100、120、140、160、180、200、225、250個)の連続するアミノ酸である断片からなるアミノ酸配列を含むポリペプチドを提供する。好ましいポリペプチドは、N末端システイン残基(好ましくは、配列番号6のCys−19に対応する)を有し、N末端システインは、好ましくは脂質化されている。好ましいポリペプチドは、そのN末端の30個のアミノ酸内にアミノ酸配列MTHIKPVIAALALIGLAA(配列番号9)を含まない。
【0152】
本発明はまた、(a)配列番号7のアミノ酸配列;(b)配列番号7に対して少なくとも50%(例えば、60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%またはそれ以上)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドおよび/または配列番号7由来の少なくとも7個(例えば、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、225、250個)の連続するアミノ酸である断片からなるアミノ酸配列を含むポリペプチドを提供する。好ましいポリペプチドは、そのN末端の20個のアミノ酸内にアミノ酸配列MLKCGTFFITRHIPRGCRRFFQPNQARQTEIYQIRGTV(配列番号10)を含まない。
【0153】
本発明はまた、(a)配列番号8のアミノ酸配列;(b)配列番号8に対して少なくとも50%(例えば、60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%またはそれ以上)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドおよび/または配列番号8由来の少なくとも7個(例えば、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、225、250個)の連続するアミノ酸である断片からなるアミノ酸配列を含むポリペプチドを提供する。好ましいポリペプチドは、N末端システイン残基(好ましくは、配列番号8のCys−Glnに対応する)を有し、N末端システインは、好ましくは脂質化されている。他の好ましいポリペプチドは、そのN末端の20個のアミノ酸内にアミノ酸配列MPCMNHQSNS(配列番号11)を含まない。
【0154】
ポリペプチドは、種々の手段によって、例えば、化学合成(少なくとも一部)、プロテアーゼを用いた長鎖ポリペプチドの消化、RNAからの翻訳、細胞培養物からの精製(例えば、組換え発現またはN.meningitidis培養物から)などによって調製され得る。大腸菌宿主における異種発現は、好ましい発現経路である。
【0155】
本発明のポリペプチドは、固相支持体に結合または固定化させてもよい。本発明のポリペプチドは、検出可能な標識、例えば、放射能標識、蛍光標識またはビオチン標識を含み得る。これは、イムノアッセイ手法において特に有用である。
【0156】
ポリペプチドは、種々の形態(例えば、天然状態、融合体、グリコシル化、非グリコシル化、脂質化、ジスルフィド結合など)を採用し得る。ポリペプチドは、好ましくは、髄膜炎菌のポリペプチドである。
【0157】
ポリペプチドは、好ましくは、実質的に純粋な、もしくは実質的に単離された形態(すなわち、他のナイセリア属もしくは宿主細胞のポリペプチドを実質的に含まない)、または実質的に単離された形態で調製される。一般に、該ポリペプチドは、非天然環境で提供され、例えば、その天然環境から分離される。ある特定の実施形態では、主題のポリペプチドは、対照と比べてポリペプチドが富化された組成物中に存在する。したがって、精製されたポリペプチドが提供される。ここで、精製されたとは、該ポリペプチドが、他の発現ポリペプチドを実質的に含まない組成物中に存在することを意味し、ここで、実質的に含まないとは、50%未満、通常30%未満、より通常的には10%未満の組成物が、他の発現ポリペプチドで構成されることを意味する。
【0158】
用語「ポリペプチド」は、任意の鎖長のアミノ酸ポリマーをいう。該ポリマーは、直鎖または分枝であり得、修飾アミノ酸を含んでいてもよく、非アミノ酸によって分断されていてもよい。該用語はまた、天然で、または介在;例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、または任意の他の操作もしくは修飾(例えば、標識成分でのコンジュゲーションなど)によって修飾されたアミノ酸ポリマーを包含する。また、例えば、アミノ酸の1種類以上のアナログ(例えば、非天然アミノ酸など)、ならびに当該技術分野で知られた他の修飾を含有するポリペプチドもこの定義に含まれる。ポリペプチドは、単一の鎖または会合した鎖として存在し得る。
【0159】
(一般)
用語「含む(comprising)」は、「を含む(including)」ならびに「からなる(consisting)」を包含し、例えば、Xを「含む(comprising)」組成物は、排他的にXからなるものであり得、または追加の何かを含むもの、例えばX+Yであり得る。
【0160】
数値xに関する用語「約」は、例えば、x±10%を意味する。
【0161】
語句「実質的に」は、「完全に」を排除せず、例えば、Yを「実質的に含まない」組成物は、完全にYを含まないものであり得る。必要に応じて、語句「実質的に」は、本発明の定義で省略されている場合がある。
【0162】
2つのアミノ酸配列間の配列同一性割合に対する言及は、アラインメントしたとき、該割合のアミノ酸は、この2つの配列の比較において同じであることを意味する。このアラインメントおよび相同性または配列同一性の割合は、当該技術分野で知られたソフトウエアプログラム(例えば、参考文献204のセクション7.7.18に記載されたものなど)を用いて決定され得る。好ましいアラインメントは、Smith−Waterman相同性検索アルゴリズム(ギャップオープンペナルティ12およびギャップ伸長ペナルティ2、BLOSUMマトリックス62でのアフィンギャップ検索を用いる)によって決定される。Smith−Waterman相同性検索アルゴリズムはよく知られており、参考文献205に開示されている。
【0163】
4桁の数の「NMB」タンパク質に対する言及は、血清群B髄膜炎菌のプロトタイプ菌株のゲノム配列に基づいて割り当てられた参考文献32の標準的な命名法を示す。公の配列データベースは、これらのNMB配列を含む。任意の所与の髄膜炎菌について、当業者は、例えば、プライマー、プローブなどを設計するために、プロトタイプ菌株のNMBnnnn ORFのデータベースおよび/または遺伝子(genetic)環境由来の既存の配列を用いることにより、NMBnnnn配列に相当する遺伝子を容易に疑いなく見出すことができる。
【0164】
用語「GNA33」、「NMB0033」および「mltA」は、髄膜炎菌に関する場合、互換的に使用され得る。
本願発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
(i)ペプチドグリカンを含む細胞壁を有し;かつ(ii)MltAタンパク質の溶解性トランスグリコシラーゼ活性を有するタンパク質を発現しない、細菌。
(項目2)
細菌であって、そのmltA遺伝子のノックアウト変異を有する、細菌。
(項目3)
少なくとも1つのさらなる遺伝子のノックアウト変異もまた有する、項目2に記載の細菌。
(項目4)
ナイセリア属またはエシェリキア属である、項目1〜3のうちのいずれか1項に記載の細菌。
(項目5)
Neisseria meningitidisである、項目4に記載の細菌。
(項目6)
Neisseria meningitidisが、血清群A、血清群B、血清群C、血清群W135または血清群Yに由来する、項目5に記載の細菌。
(項目7)
gna33lpxAPorA髄膜炎菌である、項目5または項目6に記載の細菌。
(項目8)
大腸菌である、項目4に記載の細菌。
(項目9)
病原性大腸菌である、項目8に記載の細菌。
(項目10)
前記病原性大腸菌が、腸管外病原性細菌、尿路病原性細菌または髄膜炎/敗血症関連細菌である、項目9に記載の細菌。
(項目11)
Tol−Pal複合体のタンパク質を発現しない、病原性大腸菌。
(項目12)
tolR株である、項目11に記載の大腸菌。
(項目13)
項目1〜12のうちのいずれか1項に記載の細菌の培養の間に培地中に放出される小胞を含む、組成物。
(項目14)
生菌および/または完全体の細菌を全く含まない、項目13に記載の組成物。
(項目15)
項目1〜12のうちのいずれか1項に記載の細菌を増殖させた培地を0.22μmフィルターに通す濾過後に得られ得る濾液中に存在する小胞を含む、組成物。
(項目16)
項目5〜7のうちのいずれか1項に記載の細菌を培養することにより得られ得る、髄膜炎菌小胞。
(項目17)
MinD、FtsAおよび/またはホスホエノールピルベートシンターゼタンパク質のうちの少なくとも1つを含まない、項目16に記載の髄膜炎菌小胞。
(項目18)
リボソームを実質的に含まない、項目16に記載の髄膜炎菌小胞。
(項目19)
いかなるアミノ酸tRNAシンセターゼも実質的に含まない、項目16に記載の髄膜炎菌小胞。
(項目20)
クレブズ回路由来のいかなる酵素も実質的に含まない、項目16に記載の髄膜炎菌小胞。
(項目21)
NMB0035、NMB0044、NMB0086、NMB0088、NMB0109、NMB0124、NMB0138、NMB0182、NMB0204、NMB0278、NMB0294、NMB0313、NMB0345、NMB0346、NMB0382、NMB0460、NMB0461、NMB0550、NMB0554、NMB0623、NMB0634、NMB0663、NMB0703、NMB0787、NMB0873、NMB0928、NMB1030、NMB1053、NMB1057、NMB1126、NMB1285、NMB1301、NMB1332、NMB1429、NMB1483、NMB1533、NMB1567、NMB1612、NMB1710、NMB1870、NMB1898、NMB1949、NMB1961、NMB1972、NMB1988、NMB2039、およびNMB2091である47種類のタンパク質を含む、項目16に記載の髄膜炎菌小胞。
(項目22)
項目16〜21のうちのいずれか1項に記載の髄膜炎菌小胞を含む、薬学的組成物。
(項目23)
(i)項目16〜21のうちのいずれか1項に記載の髄膜炎菌小胞の第1の組と、(ii)項目16〜21のうちのいずれか1項に記載の髄膜炎菌小胞の第2の組とを含む、組成物であって、該第1の組と該第2の組とは、異なる髄膜炎菌株から調製される、組成物。
(項目24)
アジュバントを含む、項目13、項目14、項目15、項目22または項目23のうちのいずれか1項に記載の組成物。
(項目25)
細菌小胞を調製するための方法であって、
(i)項目1〜12のうちのいずれか1項に記載の細菌を培地中で、該細菌が小胞を該培地中に放出するように培養する工程;および
(ii)該小胞を該培地から収集する工程;
を包含する、方法。
【図面の簡単な説明】
【0165】
【図1A】図1は、GenBankアクセッションAAF40504.1[32]から得られる血清群B Neisseria meningitidisの菌株MC58のゲノム配列由来の膜結合溶解性ムレイントランスグリコシラーゼA(mltA)のアミノ酸配列(配列番号1)およびヌクレオチド配列(配列番号2)を示す。
【図1B】図1は、GenBankアクセッションAAF40504.1[32]から得られる血清群B Neisseria meningitidisの菌株MC58のゲノム配列由来の膜結合溶解性ムレイントランスグリコシラーゼA(mltA)のアミノ酸配列(配列番号1)およびヌクレオチド配列(配列番号2)を示す。
【図2】図2は、本発明の小胞の2D−PAGEを示す。
【図3】図3は、標準的なタンパク質(下)およびΔmltA株の培養上清みの遠心分離ペレット(上)のゲル濾過の結果を示す。y軸は、280nmにおける吸光度を示す。
【図4】図4は、本発明の小胞の電子顕微鏡検査を示す。
【図5】図5は、本発明の小胞のウェスタンブロット分析を示す。6種類の異なる抗体(A〜F)を用いてブロットを染色した:A=デオキシコレート抽出によってNZ株から調製されたOMVに対して生成させたマウス血清;B=ΔGNA33ノックアウト変異型に対して生成させたマウス血清;C=マウス抗PorAP1.4モノクローナル;D=マウス抗NMB2132血清;E=マウス抗NTMB1030血清;F=マウス抗NMB1870血清。
【図6】図6〜8は、NMB0928、NMB0109およびNMB1057のアミノ酸配列を示す。
【図7】図6〜8は、NMB0928、NMB0109およびNMB1057のアミノ酸配列を示す。
【図8】図6〜8は、NMB0928、NMB0109およびNMB1057のアミノ酸配列を示す。
【図9】図9〜11は、開始コドンがシフトされたNMB0928、NMB0109およびNMB1057のアミノ酸配列を示す。
【図10】図9〜11は、開始コドンがシフトされたNMB0928、NMB0109およびNMB1057のアミノ酸配列を示す。
【図11】図9〜11は、開始コドンがシフトされたNMB0928、NMB0109およびNMB1057のアミノ酸配列を示す。
【図12】図12は、野生型またはΔGNA33細菌によって培養上清み液中に放出されたタンパク質の比較である。レーン1:分子量マーカー;レーン2:培地対照;レーン3:OD620nm=0.5のΔGNA33培地(6.5mlの培地に相当)の高速遠心分離によって回収した20μgのタンパク質;レーン4:OD620nm=0.5の野生型MC58培地6.5mlから高速遠心分離によって回収したタンパク質。
【図13】図13は、野生型MC58全抽出物(レーン2および4)およびΔGNA33ノックアウト変異型によって放出された小胞(レーン3および5)のSDS−PAGEを示す。レーン2および3は、SDS−PAGE前に95℃で変性しなかったタンパク質;レーン4および5は95℃で変性。
【図14】図14および15は、菌株394/98から調製された小胞の1Dおよび2DのSDS−PAGEを示す。図15において、水平軸はpI3〜10までであり、垂直軸は10〜200kDaまでである。
【図15】図14および15は、菌株394/98から調製された小胞の1Dおよび2DのSDS−PAGEを示す。図15において、水平軸はpI3〜10までであり、垂直軸は10〜200kDaまでである。
【図16】図16および17は、tolR ExPECノックアウト菌株から調製された小胞の1DのSDS−PAGEを示す。
【図17】図16および17は、tolR ExPECノックアウト菌株から調製された小胞の1DのSDS−PAGEを示す。
【図18】図18〜20は、ΔmltAノックアウト髄膜炎菌由来の小胞の1Dおよび2DのSDS−PAGEを示す。
【図19】図18〜20は、ΔmltAノックアウト髄膜炎菌由来の小胞の1Dおよび2DのSDS−PAGEを示す。
【図20】図18〜20は、ΔmltAノックアウト髄膜炎菌由来の小胞の1Dおよび2DのSDS−PAGEを示す。
【発明を実施するための形態】
【0166】
(発明の実施の形態)
(髄膜炎菌のΔmltAノックアウト菌株の調製)
mltA遺伝子が対立遺伝子交換によって抗生物質カセットで置き換えられた髄膜炎菌株を調製した。
【0167】
N.meningitidis株MC58を、プラスミドpBSUDGNA33ERMで形質転換した。このプラスミドは、上流および下流に対立遺伝子交換のためのフランキング領域、切断型mltA遺伝子、ならびにermC遺伝子(エリスロマイシン耐性をコードする)を含有する。−867から+75までの位置の上流フランキング領域(開始コドンを含む)および+1268から+1744までの位置の下流フランキング領域(停止コドンを含む)を、MC58から、プライマーU33FOR、U33REV、D33FORおよびD33REV[25]を用いることにより増幅した。標準的な手法を用いることにより、断片をpBluescript(登録商標)内にクローン化し、大腸菌DH5を形質転換した。すべてのサブクローニングが完了したら、自然状態でコンピテントなナイセリア属株MC58を、GC寒天プレート上で一晩増殖させた数個のコロニーを選択し、これをlμgのプラスミドDNAを含有する10mM Tris−HCl(pH6.5)20μlと混合することにより形質転換した。混合物をチョコレート寒天プレート上にスポッティングし、6時間37℃で5%COにてインキュベートし、次いで、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で希釈し、7μg/mlのエリスロマイシンを含有するGC寒天プレート上にスプレッドした。染色体mltA遺伝子の対立遺伝子交換をPCRによって確認し、MltA発現の欠如は、ウェスタンブロット分析によって確認した。
【0168】
参考文献25に報告されているように、ΔmltAノックアウト菌株は、正しいトポロジー構成の細胞膜を有さず、異常細胞分離、異常細胞形態学、未分裂隔壁、二重隔壁、細胞クラスター化、外膜の共有および低下したビルレンスを有する。また、参考文献25では、ノックアウト菌株は、種々の膜タンパク質、例えば、PorA、PIB、クラス4およびクラス5外膜タンパク質を培養上清み中に放出することが報告されている。
【0169】
また、ΔmltAノックアウトは、MeNZB(登録商標)製品が作製される菌株であるニュージーランド菌株394/98(lin3;B:4:P1.4)からも行なわれた。
【0170】
(放出されたタンパク質の分析)
ΔmltA株をGC培地中、5%COを含む加湿雰囲気においてOD600nm0.5まで増殖させた。菌体を、3500×gでの10分間の遠心分離によって回収した。上清み(すなわち、培地)を、0.22μm孔径フィルター(Millipore)を通して濾過し、細胞無含有濾液を、高速遠心分離(200,000×g、90分間)に供した。この遠心分離によりペレットの形成がもたらされ、培地1リットルあたりタンパク質は約8〜12mgであった。かかるペレットは、野生型MC58細菌を同様に処理した場合は見られず、したがって、ペレット形成はΔmltAノックアウトの成果である。ペレットを、さらなる分析のためにPBS(遠心分離200,000×g、30分間)で2回洗浄した。
【0171】
第1の分析では、該ペレット由来の材料をPBS中に再懸濁し、PBS中で平衡化させておいたSMART系(Amersham Biosciences)でランさせるSuperdex 200 PC3.2/30ゲル濾過カラムに適用した。流速を40μl/分とし、溶出液を280nmでモニターした。カラムを、20μgのBleuデキストラン(2,000kDa)、10μgのフェリチン(440kDa)、140μgのウシ血清アルブミン(65kDa)および200μgのリボヌクレアーゼA(15kDa)で較正した。図3に示されるように、タンパク質の大部分が、2,000kDaよりも実質的に大きい分子量に相当する主要ピークにおいて溶出された。この結果は、種々のタンパク質が会合していることを示す。
【0172】
第2の分析では、高分子量ピークに存在する材料を、ネガティブ染色電子顕微鏡検査に供した。この分析により、約50〜100nmの直径を有する良好に組織化された膜小胞の存在が明らかになった(図4)。
【0173】
これらの実験は、mltA遺伝子の欠失により、細菌膜の正常な合成(assembly)を撹乱されること、およびこれにより、球状で均質な小胞に合成される膜構造が、培養上清み中に自発的に放出されることを示す。
【0174】
図12は、野生型またはΔGNA33細菌の増殖後の培地のSDS−PAGE分析を示し、異なるタンパク質放出特性を示す。
【0175】
(小胞の分析)
ΔmltA由来小胞を、「通常の」界面活性剤抽出方法によって調製した髄膜炎菌小胞と比較した。
【0176】
髄膜炎菌株MC58、NZ394/98およびNZ98/254、ならびにそのそれぞれの同遺伝子系ΔmltA変異型を、20mlまたは200mlのGC培地中、5%COを含む加湿雰囲気においてOD620nm0.5まで増殖させた。菌体を、3500×gでの10分間の遠心分離によって回収した。小胞(「DOMV」)を野生型細菌から、参考文献206に記載の界面活性剤抽出によって調製した。本発明の小胞(「mOMV」)は、ノックアウト菌株から、0.22μm孔径フィルターを通して濾過した後、濾液を高速遠心分離(200,000g、90分間)し、小胞含有ペレットをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で2回洗浄し(遠心分離200,000g30分間)、次いで、PBSで再懸濁することにより調製した。
【0177】
mOMVおよびDOMVの両方を、変性一次元電気泳動によって分析した。簡単には、20μgの小胞タンパク質をSDS−PAGEによって分離し、12.5%ゲルのクマシーブルー染色によって可視化した。変性(2%SDS)および半変性(0.2%SDS、ジチオトレイトールなし、加熱なし)条件を一次元電気泳動に用いた。タンパク質の量(20μg)は、DCタンパク質アッセイ(Bio−Rad)によって、ウシ血清アルブミンを標準タンパク質として用いて測定した。
【0178】
小胞を、2%SDSを含有するSDS−PAGE試料緩衝液中、95℃で3分間変性させた。次いで、20μgのタンパク質を12,5%アクリルアミドゲル上に負荷し、これを、クマシーブルーR−250で染色した。また、2次元電気泳動を、7Mウレア、2Mチオウレア、2%(w/v)(3−((3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ)−l−プロパン−スルホネート)、65mMジチオトレイトール、2%(w/v)アミドスルホベタイン−14、2mMトリブチルホスフィン、20mM Trisおよび2%(v/v)キャリア両性電解質を含有する再膨潤緩衝液により、125UIの最終容量にした200μgのタンパク質に対して行なった。タンパク質を一晩、Immobiline DryStrips(7cm;pH勾配3〜10、非線形)上に吸着させた。次いで、タンパク質を2次元的に分離した。1次元では、IPGphor Isoelectric
Focusing Unitを用いて行ない、逐次的に、150Vを35分間、500Vを35分間、1,000Vを30分間、2,600Vを10分間、3,500Vを15分間、4,200Vを15分間、および最後に5,000Vを12kVhに達するまで適用した。2次元では、ストリップを平衡化し、タンパク質を線形9〜16.5%ポリアクリルアミドゲル(1.5mm厚、4×7cm)上で分離した。ゲルをCoomassie
Brilliant Blue G−250で再度染色した。266個のタンパク質スポットがColloidal Coomassie Blue染色後に見られた(図2)。
【0179】
次いで、1Dおよび2Dゲルを、質量分析による分析のためのゲル内タンパク質消化および試料調製に供した。タンパク質スポットをゲルから切り出し、100mM重炭酸アンモニウム/アセトニトリル50/50(V/V)で洗浄し、SpeedVac遠心分離機を用いて乾燥した。乾燥させたスポットを、2時間37℃で、12μlの0.012μg/μlシークエンスグレードトリプシン(Promega)(50mM重炭酸アンモニウム(5mM)中)にて消化させた。消化後、5μlの0.1%トリフルオロ(trifluoacetic)酸を添加し、ペプチドを脱塩し、ZIP−TIP(C18、Millipore)で濃縮した。試料を、2μlの5g/l 2,5−ジヒドロキシ安息香酸(50%アセトニトリル/0.1%トリフルオロ酸)にて、質量分析計Anchorchip 384(400μm、Bruker、ブレーメン,ドイツ)に溶出し、室温で風乾させた。337nm Nレーザーおよび陽イオンリフレクタモードに設定されたSCOUT 384 マルチプローブイオン源を備えたBruker Biflex III MALDI−TOFにおいて、MALDI−TOFスペクトルを得た。加速電圧およびリフレクタ電圧を、それぞれ19kVおよび20kVに設定した。典型的には、各スペクトルは、100回のレーザーショットを平均することにより測定した。スペクトルは、4種類の標準的なペプチド、アンギオテンシンII(1,046.54Da)、サブスタンスP(1,347.74Da)、ボンベシン(1,619.82Da)およびACTH18−39 Clipヒト(2,465.20Da)の組合せを用いて外部較正し、試料に隣接する位置上にスポッティングした。タンパク質の同定を、Mascotソフトウエアを用い、コンピュータ処理フィンガープリントにより、700〜3000Daの質量範囲のペプチドの実験で得られたモノアイソトピック値の自動および手作業の両方での比較によって行なった。
【0180】
MC58 ΔmltA変異型の結果を図18に示す。単に1Dゲル上の20個の切り出したバンドから、25種類の特異なタンパク質が同定され、そのうちの24種類(96%)が、PSORTアルゴリズムによって外膜タンパク質であると予測された(以下の表1)。2Dゲル上の170種類のタンパク質スポットは、51種類の特異なタンパク質に相当し、MALDI−TOFによって明白に同定された(表1)。44/51の同定タンパク質は、ゲノムアノテーションによって外膜画分に割り当てられた[32]。残りの7種類のタンパク質を、オリジナルアノテーションにおいて考えられ得るエラーについて分析した。4種類のタンパク質(仮想タンパク質NMB1870、NMB0928およびNMB0l09、ならびにグルタミルトランスペプチダーNMB1057)は、参考文献32に記載のもの(例えば、NMB1870のもの)由来の異なる開始コドンを用い、参考文献55に割り当てられた開始コドンを用いて、外膜タンパク質に分類することができた。
【0181】
1Dおよび2Dの電気泳動実験の組合せにより、MC58 ΔmltA変異型由来小胞において合計65種類のタンパク質が同定された。これらのうち、6種類のタンパク質が1Dおよび2Dの両方のゲルで同定され、14種類および45種類が、それぞれ1Dおよび2Dゲルで特異的であった(表1)。またさらに、65種類の同定タンパク質のうち61種類が、現行のアルゴリズムによって膜関連タンパク質であると予測され、ΔmltA小胞(mOMV)は大部分が、おそらく排他的に膜タンパク質で構成されていることを示していた。
【0182】
菌株NZ394/98のΔmltAノックアウトを、同様に、1Dおよび2DのSDS−PAGEに供した(図14および15)。表2は、一方または両方のゲルにおいて同定された66種類のタンパク質を、予測される該タンパク質の位置とともに示す。この場合も、大部分のタンパク質が膜関連であると予測された。表1および2に共通する47種類のタンパク質を表3に示す。
【0183】
NZ98/254 ΔmltA変異型の結果を図19に示す。66種類のタンパク質がこれらの2つのゲルから同定され、そのうちの57種類が外膜画分に割り当てられた。したがって、この場合も、mOMVは外膜タンパク質内で高度に富化されている。57種類のタンパク質のうち46種類は、MC58由来mOMVにおいても同定されていた。
【0184】
比較のため、図20にNZ98/254 DOMVの結果を示す。プロテオミクス分析により、138種類のタンパク質が明らかになり、そのうち44種類のみが外膜画分に割り当てられた。残りの94種類のタンパク質は、細胞質内画分および内膜画分に属した。これらの44種類の膜タンパク質のうち、32種類は、同遺伝子系株由来のmOMV内に見られる57種類の外膜タンパク質においても見られた。
【0185】
mOMVは大部分が外膜タンパク質によって構成されており、したがって、DOMVタンパク質の約70%は細胞質内タンパク質または内膜タンパク質のうちのいずれかである。DOMVはmOMVと、細胞質内タンパク質の比率に関してだけでなく、その外膜タンパク質の種々のプロフィールに関しても異なる。DOMV内に見られる44種類の外膜タンパク質のうち、32種類だけがmOMVにおいても見られた。
【0186】
MC58およびNZ98/254の両方に由来するmOMV内に見られるが、NZ98/254由来のDOMVには見られない19種類のタンパク質を以下の表4に列挙する。
【0187】
細菌の全細胞抽出物を以下のようにして調製した。細菌細胞をPBSで洗浄し、細菌のペレットを8mlのプロテアーゼインヒビターカクテル(Roche Diagnostic)含有50mM Tris−HCl(pH7.3)に再懸濁した。2mM EDTAおよび2000単位のベンゾナーゼ(Merck)を添加し、菌体を4℃で、Basic Z 0.75V Model Cell Disrupter(「ワンショットヘッド(one shot head)」を備える)(Constant System Ltd)により2サイクルで破壊し、未破壊菌体を8000×gにて4℃での10分間の遠心分離によって除去した。この抽出物をSDS−PAGEによって分析し、ΔGNA33細菌によって生成された小胞のタンパク質抽出物と比較した。図13に示されるように、ポーリン(porins)PorAおよびPorB(これらであることはMALDI−TOFシーケンシングによって確認)は、野生型細菌の外膜(レーン2および4)およびΔGNA33ノックアウト変異型の小胞(レーン3および5)にも見られる。またさらに、これらのタンパク質は、小胞内で、安定なトリマーとして保持されるが、これは、半天然状態下、低濃度のSDS(0.2%)を有するSDS−PAGE試料緩衝液中でモノマーに分解されない(電気泳動前に加熱なし;レーン2および3)が、95℃では変性する(レーン4および5)。
【0188】
界面活性剤抽出OMVにおけるLPSレベルは、典型的には、タンパク質に対して5〜8重量%である[207]。Limulusアッセイで試験した場合、小胞の内毒素含量は、界面活性剤抽出OMVに見られるものより約2倍高かった。
【0189】
最後に、増殖培養物における小胞の収量を評価した。初期の指数関数的増殖培養物(OD620nm=0.5)の培養上清み中の細胞1グラム(湿潤重量)あたり20mgまでのOMV関連タンパク質が回収され得ることがわかった。
【0190】
(小胞免疫原性)
ΔmltA由来小胞は、外膜タンパク質内で高度に富化されているため、一群の広いMenB臨床用単離物を死滅させることができる殺菌抗体を惹起するその能力を調べた。
【0191】
試験のために選択した菌株は394/98であった。この株は、MeNZB(登録商標)OMV系ワクチンが調製される菌株であり、それにより、典型的な先行技術方法による本発明のΔmltA小胞と野生型株から調製されたOMVとの直接比較が補助されるため選択した。
【0192】
10μgの各型の小胞を水酸化アルミニウムアジュバント(3mg/ml)に吸着させ、5週齢マウスでCDl雌マウス(1群あたり5〜10匹のマウス)に注射した。小胞を腹腔内に第0日および第21日に与えた。分析用の血液試料を第34日に採取し、プールした赤ちゃんウサギの血清を補体源として用いて、11種類の異なる亜型(4種類の主な超ビルレント系統を含む)に対応する15種類の異なる血清群B株に対するSBAについて試験した。血清殺菌力価は、時間0での対照1mlあたりのコロニー形成単位(CFU)と比べて、反応混合物との細菌の60分間のインキュベーション後、CFU/mlの50%減少をもたらす血清希釈度と定義した。典型的には、陰性対照抗体とともに補体の存在下でインキュベートした細菌は、60分間のインキュベーション中、CFU/mlの150〜200%増加を示した。力価は以下の通りであり、=50%細菌の死滅をもたらす血清希釈度の逆数で示す。
【0193】
【化1】

結果は、ΔmltA由来小胞に由来する血清は、化学的抽出によって調製されるOMVと少なくとも同等に殺菌的有効性であり、通常、より良好であった(相同な菌株を除く)ことを示す。本発明の小胞は、したがって、典型的なOMVよりもはるかに良好な菌株交差(cross−strain)反応性をもたらす。またさらに、1:1024希釈度を殺菌性有効性の閾値とみなすと、本発明の小胞は、菌株の87%に対して有効であったのに対し、人工OMVは40%有効であるにすぎなかった。
【0194】
したがって、一群の15種類の異なる血清群B株について試験した場合、mOMVはDOMVよりも補体依存性抗体死滅の惹起に関して良好である。抗mOMVマウス血清は、相同な菌株に対して、および14種類のさらなる菌株(10種類の異なるPorAサブタイプを含む)に対して高殺菌活性を示した。対照的に、DOMVに対して生成させたマウス血清は、2つのPorAサブタイプに属する6種類のMenB株に対してのみ高殺菌力価を示す。これらの結果は、抗mOMV血清の保護は、最も高存在度の外膜タンパク質の1つであり、殺菌抗体の最も強力な誘導物質であるPorAに対する殺菌抗体の惹起に起因しただけでなく、mOMVにおいてDOMVよりも高量で存在する他の殺菌性抗原にも起因したことを示す。
【0195】
(ウェスタンブロット)
ΔmltA由来小胞が、保存された保護的抗原を含有することを確認するため、これらをSDS−PAGE上でランさせ、PDFフィルター上に移し、保護的で高度に保存されていることが以前に示されている6種類のタンパク質抗原(「287」、「953」、「741」(GNA1870)および「NadA」を含む)に対する特異的抗血清を用いてイムノブロットした。
【0196】
小胞を、Mini−Protean II電気泳動装置(Bio−Rad)を用いて、10%アクリルアミドSDS−PAGEゲル上に分離した。タンパク質分離後、ゲルを48mM Tris−HCl、39mMグリシン(pH9.0)、20%(v/v)メタノールで平衡化し、Trans−Blot(登録商標)半乾燥電気泳動用転移細胞を用いてニトロセルロース膜(Bio−Rad)に移した。ニトロセルロース膜を、0.2%(w/v)アジ化ナトリウムを含む10%(w/v)スキムミルク含有PBSでブロックした。
【0197】
図5に示されるように、6種類のタンパク質はすべて、小胞内で高存在度であった。対照的に、同6種類のタンパク質は、DOMV内にはあまり存在しなかった。
【0198】
結論として、ΔmltA由来小胞は、主に外膜タンパク質によって構成されているが、DOMVは、多くの細胞質内タンパク質が夾雑している。マウスの免疫処置に用いる場合、ΔmltA由来小胞に対して生成させた血清は、DOMVよりも高く広い菌株対象範囲を示した。
【0199】
(腸管外病原性大腸菌)
ExPEC CFT073のノックアウト菌株を、tolR遺伝子の同遺伝子系欠失(カナマイシン耐性マーカーでの置き換え)によって調製した。ノックアウト菌株をOD600nm0.4まで増殖させ、次いで、培養物を遠心分離した。上清みを、0.22μmフィルターを通して濾過し、TCAを用いて濾液を沈殿させた。次いで、ペレットをTris緩衝液中に再懸濁した。
【0200】
同じ増殖および精製手順を、ノックアウトなしの親菌株に対して使用し、2つの最終調製物のSDS−PAGE分析を図16に示す。右側のバンドはノックアウト菌株のものであり、数個のタンパク質バンドの富化を示す。
【0201】
さらなるtolRノックアウトExPEC株を菌株DH5a、536およびIHE3034から調製した。小胞は先のようにして調製し、TCA沈殿物のSDS−PAGE分析を図17に示す。
【0202】
ノックアウト変異型は、高量の小胞をもたらし、これらの小胞をプロテオミクス分析、例えば、小胞内の表面発現タンパク質の1Dおよび2DのSDS−PAGEならびにトリプシン消化、続いて放出されたペプチドの配列分析に供した。
【0203】
本発明は、一例として記載したにすぎず、本発明の範囲および精神の範囲内で変形がなされ得ることは理解されよう。
【0204】
【表1】

【0205】
【表2】

【0206】
【表3】

【0207】
【表4】

(参考文献(その内容は、本明細書により参考として援用される))
【0208】
【表5】






【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図13】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図12】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate


【公開番号】特開2011−188870(P2011−188870A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−147317(P2011−147317)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【分割の表示】特願2007−538548(P2007−538548)の分割
【原出願日】平成17年10月28日(2005.10.28)
【出願人】(507238285)ノバルティス ヴァクシンズ アンド ダイアグノスティクス エスアールエル (35)
【Fターム(参考)】