説明

外装漆喰調層構成及び塗装方法。

【課題】消石灰を40重量%以上含有し、合成樹脂成分が10重量%以下である漆喰調塗材において、屋外の使用に耐えうる構造及び方法である。
【解決手段】JIS A6909外装合成樹脂エマルジョン系薄付け仕上げ塗材を下地層とし、消石灰を40%以上含有し、合成樹脂成分が10%以下である漆喰調塗材を意匠層とし、アクリルポリオール主剤とポリイソシアネート硬化剤からなる保護層を有することを特徴し、この合成樹脂脂エマルジョン系薄付け仕上げ塗材のゼロスパン引っ張り試験のゼロスパンが0.7mm以上であることを特徴とする外装漆喰調層構成及び方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、意匠性の豊かな内装漆喰調層構成を屋外塗装に耐えうる外装漆喰調層構成およびその塗装方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
漆喰は消石灰を主に、日本では砂、糊、スサなど練り、塗り壁仕上げ材料として、土蔵、城郭に白壁として使用され、色粉を配合して、糊を使わない土佐漆喰等種々のものが古来から、使用され、耐久性の高いものである。外国においても、スイス、イタリア等で、それぞれ、各地特有の配合がなされている。これら漆喰に対して、作業性、耐水性を向上させる目的で、水硬性組成物、樹脂エマルジョンが糊の代わりに添加され、室内の壁では、鏝作業性が改善され、カラフルで、様々な質感を持ったものの組み合わせも使用されている。この中で、大理石調の質感で意匠性が高く、高級感が得られるものが、店舗など高級感のある意匠性を求める建築物に多く使用されいる。しかし、これら漆喰は作業性、意匠性を求めるため、耐水性、耐候性が劣り、室内用途に限定されていた。外装で使用する場合、雨が当たると剥がれたり、白化が発生するなど不具合が多くみられた。
【0003】
壁面などの塗装面を熟練者によらずになめらかな微小凹凸模様の光沢面とするために、粒径10μm以下の消石灰粉末の単独又は顔料微粉等を混合した粉体に固形分換算で1〜5重量%のポリマーエマルジョンを混合して塗材とし、これを複数回塗ることが開示されている。(特許文献1)
【0004】
従来の磨き漆喰にほとんど遜色のない風合いで、しかも強度等に優れ、かつひび割れ等の発生しにくい磨き漆喰風の壁材が得られる磨き漆喰風壁材組成物を目的として、消石灰100重量部に対して、珪砂30〜70重量部、合成樹脂エマルジョンまたはパウダー樹脂3〜10重量部、すさ0.5〜6重量部、クレイ成分0.5〜5重量部、分散剤0.5〜5重量部、セルロース系増粘剤0.2〜3重量部、消泡剤0.1〜2重量部含有することを特徴とする磨き漆喰風壁材組成物が開示されている。(特許文献2)
【0005】
漆喰調塗材は磨き、鏝裁き等特有の表現意匠を奏するもので、外装塗材では意匠を奏することはできなかった。前記開示は外観、作業性を向上させるもので、屋外使用に耐えるものでなかった。
【特許文献1】特開平10−316902号公報
【特許文献2】特開2001−192255号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする課題は、消石灰を40重量%以上含有し、合成樹脂成分が10重量%以下である漆喰調塗材において、屋外の使用に耐えうる層構成及び施工方法である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、JIS A6909外装合成樹脂エマルジョン系薄付け仕上げ塗材を下地層とし、消石灰を40%以上含有し、合成樹脂成分が10%以下である漆喰調塗材を意匠層とし、アクリルポリオール主剤とポリイソシアネート硬化剤からなる保護層を有することを特徴とする外装漆喰調層構成であり、屋外におけるクラックを防ぎ、漆喰調塗材の意匠性を損なわない。
請求項2の発明は請求項1に記載の外装合成樹脂エマルジョン系薄付け仕上げ塗材のゼロスパン引っ張り試験のゼロスパンが0.7mm以上であることを特徴とする請求項1記載の外装漆喰調層構成であり、漆喰調塗材の意匠を豊富に表現でき、屋外におけるクラックを防ぐ。
請求項3の発明はJIS A6909外装合成樹脂エマルジョン系薄付け仕上げ塗材を塗布し、消石灰を40%以上含有し、合成樹脂成分が10%以下である漆喰調塗材を意匠層とし塗布し、アクリルポリオール主剤とポリイソシアネート硬化剤からなる保護層を塗布することを特徴とする外装漆喰調塗装方法であり、屋外におけるクラックを防ぎ、漆喰調塗材の意匠性を損なわない。
請求項4の発明は請求項3に記載の外装合成樹脂エマルジョン系薄付け仕上げ塗材のゼロスパン引っ張り試験のゼロスパンが0.7mm以上であることを特徴とする請求項1記載の外装漆喰調塗装方法て゜あり、漆喰調塗材の意匠を豊富に表現でき、屋外におけるクラックを防ぐ。
【発明の効果】
【0008】
本発明は屋内での意匠を屋外でも再現でき、クラックの発生することがないという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
外装下地はコンクリート、ALCなどをモルタルで平滑に仕上げた面に適応でき、JIS A6909外装合成樹脂エマルジョン系薄付け仕上げ塗材を塗装する前に必要に応じて下地の対応したシーラーを塗布する。シーラーには1液型水系アクリル樹脂、2液混合型溶剤系エボキシ樹脂、1液型溶剤系塩化ゴム樹脂、1液型水系アクリルウレタン系樹脂などのシーラーを用いることができる。
【0010】
下地層となるJIS A6909外装合成樹脂エマルジョン系薄付け仕上げ塗材はJIS規格に準じたものであれば、良く、アクリル共重合樹脂エマルジョンが密着性、耐水性、塗膜性能の設計のし易さから主に使用される。市販の製品として、ジョリパットJP−100、JQ−100(以上 アイカ工業(株)製、商品名)ベルアート(エスケー化研(株)、商品名)、マジックコート((株)フッコー、商品名)等があり、塗布量は500〜1000g/mが好ましい。また、下地材の動きに追従して、ゼロスパン引っ張り試験におけるゼロスパンが、0.7mm以上であることが好ましい。
【0011】
漆喰調塗材は消石灰を40〜80重量%含有し、充填剤として、炭酸カルシウム粉、大理石粉、珪砂粉等を意匠、塗布適性のため25〜40重量%、着色剤として、顔料を5〜10重量%、粘性等塗料適性を向上させるものとして、増粘剤、分散剤、消泡剤等を2〜5重量%、合成樹脂エマルジョンを樹脂成分として10重量%以下であるものが、意匠性を得るための塗布作業適性や、耐水性、耐クラック性を向上させるため、配合される。
この漆喰調塗材は磨き、鏝裁きによる表現、複数の着色塗材のコントラスト等の多彩、高級意匠が表現できるものである。塗布量は100〜1200g/mが適応でき、意匠性付与目的で重層することもできる。市販品にジョリパットイタリアートJP−70、JP−65、JM−65(アイカ工業(株)、商品名)フィオレンティーノ((株)フッコー、商品名)、ベネチアーノ((株)エバーファースト、商品名)等がある。
【0012】
保護層として用いる塗料はウレタン系塗料が、密着性耐久性の点で好ましく、耐候性の点で、アクリル共重合樹脂に水酸基を導入したアクリルポリオール主剤とポリイソシアネート硬化剤が好ましい。意匠上、適宜光沢は調整する。塗布量は100〜300g/mを塗布する。市販品にウレタンクリヤーUC−800(亜細亜工業社製、商品名)、ウレタンクリヤーUC−810PE艶消し(亜細亜工業社製、商品名)等がある。
以下実施例、比較例で、詳細に説明する。
【実施例1】
【0013】
JISA5430スレート板(6mm厚、JISA5430平板相当品)にジョリパットシーラーJS−410(アイカ工業(株)製、塩化ゴム系樹脂固形分15%溶剤形、商品名)を150g/m刷毛塗り、乾燥後、下地層としてアイカジョリパットJP−100(アイカ工業(株)製、JISA6909外装建築仕上塗材E相当品、商品名)を500g/m鏝にて平滑に塗り、4時間乾燥後、中塗漆喰調塗材であるジョリパットイタリアートJP−70(エチレン酢酸ビニル樹脂5%)500g/m鏝にて平滑に塗り、4時間後、さらにジョリパットイタリアートJP−65(アクリル樹脂5%以下)150g/m鏝にて平滑に塗り、6時間後、ウレタンクリヤーUC−810PE艶消し(亜細亜工業(株)、アクリルポリオール樹脂系溶剤形2液ウレタン塗料、固形分約30%)を2回塗りで200g/mスプレー塗布し、実施例1とした。
【実施例2】
【0014】
実施例1のジョリパットイタリアートJP−70を抜いた以外、実施例1と同じに行い実施例2とした。
【実施例3】
【0015】
実施例1の中塗漆喰調塗材ジョリパットイタリアートJP−70をジョリパットイタリアートJM−65(中塗用、アクリル樹脂5%以下)に変えた以外実施例1と同じに行い実施例3とした。
【0016】
比較例1
実施例1の保護層をなくした以外実施例1と同じに行い比較例1とした。
【0017】
比較例2
実施例1の下地層をジョリパットJP−100の代わりにジョリパットイタリアートJP−70を600g/m鏝にて平滑に塗り以外実施例1と同じに行い比較例2とした。
【0018】
比較例3
実施例1の下地層をなくした以外実施例1と同じに行い比較例3とした。
【0019】
【表1】

【0020】
ゼロスパン引っ張り試験
図2に示す、70mm×70mm×6mmスレート基材を合わせ、その上に実施例、比較例の条件で、塗布し、23℃、相対湿度50%で14日間静置後万能試験機にて測定を行った。引張り速度は2mm/minで引張り、表面にひび割れが発生した距離をひび割れ距離(単位:mm)、ピンホールが発生した距離をゼロスパン距離(単位:mm)とした。全試験片とも破壊後、各層間で剥離破壊したものはなかった。なお ピンホールは表面から裏面まで、貫通したものをいう。
なお 使用したジョリパットJP−100(アイカ工業(株)製、商品名)を2kg/m鏝で平滑にし、23℃、相対湿度50%で14日間静置後万能試験機にて測定を行った。ゼロスパン距離は0.7mmであった。
【0021】
耐クラック性
ゼロスパン引張試験のひび割れ発生距離が0.3mm以上、ゼロスパン距離が0.5mm以上を○とし、ひび割れ発生距離が0.3mm未満、ゼロスパン距離が0.5mm未満を×とした。
【0022】
付着強さ試験
JIS A6909(建築仕上塗材)に準拠し、標準状態、温冷繰返し試験後の付着強さ試験も実施した。試験体は70×70mmのモルタル板に塗材を塗布したものとし、下記の通り養生した後、上部引張り用鋼製ジグを接着し測定を行なった。荷重速度は1500N/minで引張り、最大引張荷重を測定し、付着強さ(単位:N/mm)を算出した。
モルタル板は基板は、JIS R5201の10.4(供試体の作り方)に規定する方法によって調整したモルタルを、内のり寸法70×70×20mmの金属製型枠を用いて成形し、温度20±2℃、湿度80%以上の状態で24時間静置した後、脱型し、その後6日間20±2℃の水中で養生し、更に7日間以上養生室で静置した後、JIS R6252に規定する150番研磨紙を用いて成形時のした面を十分に研磨したものとする。
標準状態:23℃、相対湿度65%で14日間養生したものを試験体とする。
温冷繰返し:23℃、相対湿度65%で14日間養生した後、4側面をエポキシ樹脂で塗り包み、23℃±2℃の水中に18時間浸せきした後、直ちに−20℃±2℃の恒温器中で3時間冷却し、次いで50±3℃の別の恒温器中で3時間加温し、この24時間を1サイクルとする操作を10回繰返した後、試験室に2時間静置したものを試験体とする。これを上記試験により、付着強さを算出した。
【0023】
耐候性試験
アイスーパーUVテスター(岩崎電気(株)製)を用いてUV照射を行なった。照射条件は照度100(mW/cm)で照射24時間、結露時間24時間を1サイクルとして合計100時間試験を行い、試験体の明度差(ΔL)を測定し耐候性とした。
【0024】
耐洗浄性試験
JIS A 6909(建築仕上塗材)に準拠し、試験体を洗浄試験機の試験台に塗付け面を上向きにして、水平に固定し、あらかじめ処理したブラシを塗付け面に載せ、500回ブラシを往復させ、その後試験体を試験機から取り外して水で洗い、ブラシでこすった跡の中央に当たる長さ100mmの部分に、表面のはがれ及び磨耗による基板の露出の有無を目視によって調べるものとする。なお、ブラシが往復する面は、常に石けん水でぬらしておくものとする。
基準は変化のないものを○、跡がついたものを△とした。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】代表実施例層構成図。
【図2】ゼロスパン引張試験方法を示した説明図である。
【符号の説明】
【0026】
1 シーラー層
2 外装合成樹脂エマルジョン系薄付け仕上げ塗材層
3 漆喰調塗材意匠層
4 保護層
5 下地材
6 万能試験機つかみ具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
JIS A6909外装合成樹脂エマルジョン系薄付け仕上げ塗材を下地層とし、消石灰を40%以上含有し、合成樹脂成分が10%以下である漆喰調塗材を意匠層とし、アクリルポリオール主剤とポリイソシアネート硬化剤からなる保護層を有することを特徴とする外装漆喰調層構成。
【請求項2】
請求項1に記載の合成樹脂エマルジョン系薄付け仕上げ塗材のゼロスパン引っ張り試験のゼロスパンが0.7mm以上であることを特徴とする請求項1記載の外装漆喰調層構成。
【請求項3】
JIS A6909外装合成樹脂エマルジョン系薄付け仕上げ塗材を塗布し、消石灰を40%以上含有し、合成樹脂成分が10%以下である漆喰調塗材を意匠層とし塗布し、アクリルポリオール主剤とポリイソシアネート硬化剤からなる保護層を塗布することを特徴とする外装漆喰調塗装方法。
【請求項4】
請求項3に記載の合成樹脂エマルジョン系薄付け仕上げ塗材のゼロスパン引っ張り試験のゼロスパンが0.7mm以上であることを特徴とする請求項3記載の外装漆喰調塗装方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−86954(P2008−86954A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−272906(P2006−272906)
【出願日】平成18年10月4日(2006.10.4)
【出願人】(000100698)アイカ工業株式会社 (566)
【Fターム(参考)】