説明

外部電源クーラユニットの支持構造

【課題】組み付け作業に要する作業者の労力負担を軽減し且つウィンドデフレクタの性能低下を回避し得る外部電源クーラユニットの支持構造を提供する。
【解決手段】トラックのキャブ5上面に搭載されてウィンドデフレクタ6により被覆された外部電源クーラユニット7を支持するための構造に関し、キャブ5のサイドメンバ10の上部に取り付けられて立ち上がるブラケット21の上部21aを車幅方向内側(図1中の右側)へ延ばし且つ該ブラケット21の上部21aに外部電源クーラユニット7を取り付けて支持せしめると共に、前記サイドメンバ10の上部から立ち上がる前記ブラケット21の中途部に対しウィンドデフレクタ6を固定金具15を介し取り付けて支持せしめる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部電源クーラユニットの支持構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、長距離輸送のトラックの運転者が高速道路のパーキングエリアに車両を停めて車内で休憩や仮眠をとるような場合には、車内の冷暖房を維持するためにアイドリング状態で停車するケースが多いが、このような休憩や仮眠のためにアイドリングしている間における燃料消費量やCO2排出量は、国内全体で見た場合に見過ごせない量になるものと想定される。
【0003】
このため、近年においては、図3に示す如く、トラック1が停車するパーキングエリア2内に外部電源設備3を設置し、この外部電源設備3から接続ケーブル4を介し電力を得ることによりエンジンを止めても車内を冷暖房できるようにしたアイドリングストップ冷暖房システムが提案されており、このようなシステムを実現した場合、外部電源設備3からの電力は有償で提供されることになるが、電力で冷暖房した方が費用面で著しく有利であり、また、エンジンをかけずにすめば、CO2排出量も約97%削減できるものと期待されている。
【0004】
ただし、トラック1の車載クーラを外部電源で動かすためには、その駆動を担うモータを新たに増設する必要があるのに対し、そのようなモータを配置するための十分な空間をエンジン付近に新たに確保することが難しいため、図4に示す如く、キャブ5上面のウィンドデフレクタ6内の空間を利用して外部電源クーラユニット7を外付けし、キャブ5のルーフ8に穴9(図4参照)を開けて冷風を車内に導き入れるようにすることが考えられている(暖房については、予め車内に積み込んだホットカーペットや電気毛布を車内の電源プラグに差して使う方式が検討されている)。
【0005】
そして、先の図4に図5を更に併せて示す如く、キャブ5上面に設置されるウィンドデフレクタ6は、キャブ5のルーフ8の車幅方向両側を支持しているサイドメンバ10の上部にブラケット11を介して取り付けられているが、このサイドメンバ10の上部は、アウタパネル10aとインナパネル10bとによりボックス構造を成し且つスティフナ12などにより補強された剛性の高い構造となっているため、外部電源クーラユニット7についても、前記ブラケット11と同じ位置にボルト13で共締めしたブラケット14を介して設置することが考えられている。
【0006】
即ち、外部電源クーラユニット7をキャブ5上面に設置するためのブラケット14をサイドメンバ10の上部以外のルーフ8の適宜位置に取り付けようとしても、その位置のルーフ8を補強しなければならず、新たなボルト穴のための穴開け加工も必要となるため、コストの高騰が避けられなくなってしまうからである。
【0007】
ここで、図5中における15はウィンドデフレクタ6側に設けられて前記ブラケット11に対しボルト16で締結される固定金具、17は外部電源クーラユニット7下部のベース部材18に取り付けられて前記ブラケット14に対しボルト19で締結されるリインフォース、20はメタルタッチを防ぐためのゴムシートを示している。
【0008】
尚、この種の外部電源クーラユニットは、最近になって提案されたばかりで特に従来技術に相当するものは存在していないが、トラックなどのウィンドデフレクタに関する先行技術文献情報としては下記の特許文献1等がある。
【特許文献1】実開平6−8168号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、図4及び図5に示す如き現在検討中の外部電源クーラユニット7の支持構造では、外部電源クーラユニット7のブラケット14とウィンドデフレクタ6のブラケット11とを、作業性の悪いキャブ上面で相互の姿勢や位置を合わせながらボルト13で共締めしなければならないため、その組み付け作業に手間がかかって作業者の労力負担が大きくなるという問題があった。
【0010】
また、図5を参照すれば明らかな通り、外部電源クーラユニット7のブラケット14の厚さ分だけウィンドデフレクタ6が嵩上げされることになり、該ウィンドデフレクタ6が空力的な最適高さより上方へ変位すると共に、ウィンドデフレクタ6とキャブ5上面との間の隙間が大きくなってしまうため、空気抵抗が従来よりも増加してウィンドデフレクタ6の性能低下を招くという問題もあった。
【0011】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、組み付け作業に要する作業者の労力負担を軽減し且つウィンドデフレクタの性能低下を回避し得る外部電源クーラユニットの支持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、トラックのキャブ上面に搭載されてウィンドデフレクタにより被覆された外部電源クーラユニットを支持するための構造であって、キャブのサイドメンバの上部に取り付けられて立ち上がるブラケットの上部を車幅方向内側へ延ばし且つ該ブラケットの上部に外部電源クーラユニットを取り付けて支持せしめると共に、前記サイドメンバの上部から立ち上がる前記ブラケットの中途部に対しウィンドデフレクタを取り付けて支持せしめたことを特徴とするものである。
【0013】
而して、このようにすれば、外部電源クーラユニットとウィンドデフレクタとでブラケットを共用し、該ブラケットに対し外部電源クーラユニットとウィンドデフレクタの両方を取り付けて支持せしめることが可能となるので、外部電源クーラユニットのブラケットとウィンドデフレクタのブラケットとを個別に用意して両ブラケットを相互の姿勢や位置を合わせながらボルトで共締めする場合と比較して、作業性の悪いキャブ上面での組み付け作業が簡略化されることになる。
【0014】
また、ウィンドデフレクタが外部電源クーラユニットのブラケットの厚さ分で嵩上げされてしまう事態が起こらなくなるので、従前の通りウィンドデフレクタが空力的な最適高さに維持されると共に、該ウィンドデフレクタとキャブ上面との間の隙間も小さく抑制されることになる。
【発明の効果】
【0015】
上記した本発明の外部電源クーラユニットの支持構造によれば、下記の如き種々の優れた効果を奏し得る。
【0016】
(I)外部電源クーラユニットのブラケットとウィンドデフレクタのブラケットとを個別に用意して両ブラケットを相互の姿勢や位置を合わせながらボルトで共締めする場合と比較して、作業性の悪いキャブ上面での組み付け作業を簡略化することができるので、この組み付け作業に要する作業者の労力負担を大幅に軽減することができる。
【0017】
(II)従前の通りウィンドデフレクタを空力的な最適高さに維持することができると共に、該ウィンドデフレクタとキャブ上面との間の隙間も小さく抑制することができるので、空気抵抗の増加によるウィンドデフレクタの性能低下を未然に回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0019】
図1は本発明を実施する形態の一例を示すもので、図3〜図5と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。
【0020】
図1に示す如く、本形態例においては、外部電源クーラユニット7とウィンドデフレクタ6とでブラケット21を共用するようにしており、キャブ5のサイドメンバ10の上部に取り付けられて立ち上がる前記ブラケット21の上部21aを車幅方向内側(図1中の右側)へ延ばし、該ブラケット21の上部21aに対し外部電源クーラユニット7下部のベース部材18をリインフォース17を介しボルト19で締結する一方、前記サイドメンバ10の上部から立ち上がる前記ブラケット21の中途部に対しウィンドデフレクタ6の固定金具15を介してボルト16で締結するようにしている。
【0021】
尚、ここに図示している例では、サイドメンバ10の上部から鉛直方向に立ち上がる前記ブラケット21の中途部に、ウィンドデフレクタ6の固定金具15の鉛直部を沿わせてボルト16により締結しているので、これら相互を重ね合わせた部分が厚い縦壁を成すように機能して支持構造を補強するようにもなっている。
【0022】
而して、このように外部電源クーラユニット7の支持構造を構成すれば、外部電源クーラユニット7とウィンドデフレクタ6とでブラケット21を共用し、該ブラケット21に対し外部電源クーラユニット7とウィンドデフレクタ6の両方を取り付けて支持せしめることが可能となるので、外部電源クーラユニット7のブラケットとウィンドデフレクタ6のブラケットとを個別に用意して両ブラケットを相互の姿勢や位置を合わせながらボルト13で共締めする場合と比較して、作業性の悪いキャブ5上面での組み付け作業が簡略化されることになる。
【0023】
また、ウィンドデフレクタ6が外部電源クーラユニット7のブラケット21の厚さ分で嵩上げされてしまう事態が起こらなくなるので、従前の通りウィンドデフレクタ6が空力的な最適高さに維持されると共に、該ウィンドデフレクタ6とキャブ5上面との間の隙間も小さく抑制されることになる。
【0024】
従って、上記形態例によれば、外部電源クーラユニット7のブラケットとウィンドデフレクタ6のブラケットとを個別に用意して両ブラケットを相互の姿勢や位置を合わせながらボルト13で共締めする場合と比較して、作業性の悪いキャブ5上面での組み付け作業を簡略化することができるので、この組み付け作業に要する作業者の労力負担を大幅に軽減することができる。
【0025】
また、従前の通りウィンドデフレクタ6を空力的な最適高さに維持することができると共に、該ウィンドデフレクタ6とキャブ5上面との間の隙間も小さく抑制することができるので、空気抵抗の増加によるウィンドデフレクタ6の性能低下を未然に回避することができる。
【0026】
図2は本発明の別の形態例を示すもので、外部電源クーラユニット7下部のベース部材18に取り付けられているリインフォース17の車幅方向外側に下向きに張り出す掛止爪17aを形成しておくと共に、該掛止爪17aと係合する長孔22をブラケット21の上部21aに形成しておき、この長孔22に対する前記掛止爪17aの係合を利用して外部電源クーラユニット7をブラケット21に対し位置決めできるようにしたものであり、このようにすれば、ボルト19による締結前に外部電源クーラユニット7をブラケット21の上部21aに仮置きして位置決めしておくことが可能となるため、外部電源クーラユニット7の組み付け作業を行い易くして更なる労力負担の軽減を図ることができる。
【0027】
尚、本発明の外部電源クーラユニットの支持構造は、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、サイドメンバの上部から立ち上がるブラケットの中途部に階段状に水平部を形成してウィンドデフレクタを水平部を備えた固定金具などを介し縦向きのボルトで締結することも可能であること、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明を実施する形態の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の別の形態例を示す断面図である。
【図3】アイドリングストップ冷暖房システムを説明する概念図である。
【図4】現在検討中の外部電源クーラユニットの支持構造を説明する分解図である。
【図5】図4の外部電源クーラユニットの支持構造の断面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 トラック
3 外部電源設備
5 キャブ
6 ウィンドデフレクタ
7 外部電源クーラユニット
10 サイドメンバ
21 ブラケット
21a 上部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラックのキャブ上面に搭載されてウィンドデフレクタにより被覆された外部電源クーラユニットを支持するための構造であって、キャブのサイドメンバの上部に取り付けられて立ち上がるブラケットの上部を車幅方向内側へ延ばし且つ該ブラケットの上部に外部電源クーラユニットを取り付けて支持せしめると共に、前記サイドメンバの上部から立ち上がる前記ブラケットの中途部に対しウィンドデフレクタを取り付けて支持せしめたことを特徴とする外部電源クーラユニットの支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−296869(P2008−296869A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−148216(P2007−148216)
【出願日】平成19年6月4日(2007.6.4)
【出願人】(000005463)日野自動車株式会社 (1,484)
【Fターム(参考)】