説明

多出力電源装置

【課題】 複数のレギュレータを備え複数の直流電圧を出力する多出力電源装置において、端子数を増加させることなく所定の順番で各レギュレータの出力を立ち上げることができるようにする。
【解決手段】 複数のレギュレータ(レギュレータ)を備え入力電圧に基づいて各々電圧レベルの異なる複数の出力電圧を出力可能な多出力電源装置において、複数のレギュレータ(11A,11B,11C)に対応された複数の電圧検出回路(12A,12B,12C)を設け、複数の電圧検出回路のうち、最初に起動されるべきレギュレータに対応された電圧検出回路は、電圧入力端子に入力されている電圧と所定の参照電圧とを比較して、入力電圧が所定の電位に達した際に出力が変化するように構成し、複数のレギュレータは、それぞれ対応する電圧検出回路の出力の変化に応じて変換動作を開始するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の直流電圧を出力する多出力電源装置に関し、特に複数の出力電圧を所定の順序に従って立ち上げる多出力電源装置に利用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の半導体集積回路やコンデンサなどの電子部品で構成された電子システムには、メイン基板(マザーボード)やサブ基板(子基板、孫基板)など複数の基板で構成され、さらに各基板にメインLSI(大規模半導体集積回路)、サブLSIなど複数のLSIが実装されているものがある。このようなシステムにおいては、システムを構成する複数のLSIの電源電圧のレベルがそれぞれ異なる場合がある。
その場合、これらのLSIに必要な電源電圧を供給する電源装置として、複数のレギュレータを備え複数の直流電圧を出力することが可能な多出力電源装置が使用される。また、複数のLSIを備えたシステムにおいては、電源投入時にLSIの電源電圧を予め規定された順序で立ち上げないとシステムが誤動作を起こす場合がある。
【0003】
従来、複数のレギュレータを備え複数の直流電圧を出力する多出力電源装置において、電圧の供給を受けるLSIによって電源電圧の立上げ順序が規定されている場合には、複数のレギュレータを直列的に設けるとともに、前段のレギュレータの出力の立ち上がりを検出する検出回路(遅延回路)を設け、この検出回路(遅延回路)の出力を起動信号として後段のレギュレータを起動させるようにしていた。
このような発明としては、例えば特許文献1に開示されているものがある。また、ユーザが電源の立ち上げ順序を自由に設定できるようにするため、図8に示すようなコントロール信号CONT1〜CONT3を入力する端子を備えた多出力電源装置もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−266953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前段のレギュレータの出力の立ち上がりを検出する検出回路(遅延回路)を設けた特許文献1に記載されているような発明の直流電源装置にあっては、検出回路の遅延時間を設定するために抵抗や容量などの素子を必要とするため、半導体集積回路化された電源装置においては容量を接続するための外部端子が必要となる。さらに、電圧検出回路ではなく時間的に遅延される遅延回路を設けて複数のレギュレータを順次起動する電源装置も実用化されているが、かかる電源装置においては、例えば電源電圧や出力電圧の立ち上がり速度が、設計時に想定した速度よりも遅くなった場合には、前段のレギュレータの出力電圧が充分に立ち上がる前に次段のレギュレータが起動されてしまい正確な立ち上げができなくなるおそれがある。
【0006】
一方、図8に示すような多出力電源装置においても、半導体集積回路化する場合、コントロール信号を入力する端子が必要となり、チップサイズが大きくなってしまうという不具合がある。なお、図8に示す多出力電源装置においては、レギュレータ11A,11B,11Cを、11A→11B→11Cの順序で起動したい場合には、図9に示すように、順番に変化するコントロール信号CONT1,CONT2,CONT3を生成する回路を設ける必要があり、ユーザの負担が増加するという課題がある。
【0007】
この発明は上記のような課題に着目してなされたものでその目的は、複数のレギュレータを備え複数の直流電圧を出力する多出力電源装置において、端子数を増加させることなく所定の順番で各レギュレータの出力を立ち上げることができるようにすることにある。
本発明の他の目的は、複数のレギュレータを備え複数の直流電圧を出力する多出力電源装置において、各レギュレータの出力電圧の立ち上がり速度が異なる場合にも正確な立ち上げが行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため本発明は、
直流電圧が入力される電圧入力端子と、
前記電圧入力端子に入力されている電圧を受けて異なる電位の直流電圧に変換して出力する複数のレギュレータと、
前記複数のレギュレータに対応して設けられた複数の電圧出力端子と、
前記複数のレギュレータに対応して設けられた複数の電圧検出回路と、を備え、
前記複数の電圧検出回路のうち、最初に起動されるべきレギュレータに対応された電圧検出回路は、前記電圧入力端子に入力されている電圧が予め設定された所定の電位に達した際に出力が変化するようにされ、
前記複数のレギュレータは、それぞれ対応する前記電圧検出回路の出力の変化に応じて動作を開始するように構成したものである。
【0009】
上記した手段によれば、遅延回路を使用せずに、電圧検出回路の出力の変化に応じて複数のレギュレータの動作を開始させることができるため、端子数を増加させることなく所定の順番で各レギュレータ(レギュレータ)の出力電圧を立ち上げることができる。その結果、半導体集積回路化する場合に、チップサイズの増加を抑えることができる。
【0010】
ここで、望ましくは、前記複数の電圧検出回路は、各々前記電圧入力端子に入力されている電圧と所定の参照電圧とを比較して、入力電圧が所定の電位に達した際に出力が変化するようにされ、前記所定の参照電圧の電位は、予め規定されている出力電圧が立ち上がる順序に従って段階的に高い電位となるように設定する。これにより、電圧検出回路の参照電圧の電位を変えるだけで予め規定されている順序で出力電圧を立ち上げることができる。
【0011】
また、望ましくは、前記複数のレギュレータのうち、少なくとも最後に起動されるべきレギュレータは、出力電圧の立ち上がり速度を規制するソフトスタート回路を備えるようにする。これにより、ソフトスタート回路を備えているレギュレータ(レギュレータ)の出力電圧は立ち上がりが遅くされるため、確実に最後に出力電圧が立ち上がるようにすることができる。
【0012】
さらに、望ましくは、前記複数のレギュレータは、それぞれ出力電圧の立ち上がり速度を規制するソフトスタート回路を備え、各ソフトスタート回路により規制される出力電圧の立ち上がり時間を同一に設定する。各ソフトスタート回路により、複数のレギュレータの出力電圧の立ち上がり時間が同一にされるため、電圧検出回路が入力電圧を検出した順序に従って正確に出力電圧を立ち上げることができる。
【0013】
また、前記複数の電圧検出回路のうち、最初に起動されるべきレギュレータに対応された電圧検出回路以外の電圧検出回路は、それぞれ対応するレギュレータよりも一つ前に起動されるべきレギュレータの出力電圧と所定の参照電圧とを比較して、出力電圧が所定の電位に達した際に出力が変化するように構成してもよい。このように構成することにより、最初に起動されるべきレギュレータの出力電圧が立ち上がると次のレギュレータの出力電圧が立ち上がり、その立ち上がりを受けてさらに次のレギュレータの出力電圧が立ち上がるので、所定の順番で正確に各レギュレータ(レギュレータ)の出力電圧を立ち上げることができる。
【0014】
さらに、本出願の他の発明は、
直流電圧が入力される電圧入力端子と、
前記電圧入力端子に入力されている電圧を受けて異なる電位の直流電圧に変換して出力する複数のレギュレータと、
前記複数のレギュレータに対応して設けられた複数の電圧出力端子と、
前記複数のレギュレータに対応して設けられた複数の第1電圧検出回路と、
前記複数のレギュレータに対応して設けられた複数の第2電圧検出回路と、
前記第1電圧検出回路と前記第2電圧検出回路の出力に基づいて対応する前記レギュレータの起動および停止を制御する信号を生成する複数の起動・停止制御回路と、を備え、
前記複数の第1電圧検出回路は、前記電圧入力端子に入力されている電圧と各々異なる電位に設定された参照電圧とを比較して、入力電圧が所定の電位に達した際に出力が変化するようにされ、
前記複数の第2電圧検出回路は、それぞれ対応する前記レギュレータの出力電圧と所定の参照電圧とを比較して、各出力電圧が所定の電位に達した際に出力が変化するようにされ、
前記複数の起動・停止制御回路は、それぞれ対応する前記第1電圧検出回路の出力と、対応するレギュレータとは別のレギュレータの出力電圧を検出する前記第2電圧検出回路の出力に基づいて対応する前記レギュレータの起動および停止を制御する信号を生成するように構成する。
【0015】
上記した手段によれば、遅延回路を使用せずに、電圧検出回路の出力の変化に応じて起動・停止制御回路によって複数のレギュレータ(レギュレータ)の動作を所望の順序で開始させるとともに、複数のレギュレータの動作を所望の順序で停止させることができるため、端子数を増加させることなく所定の順番で出力電圧を立ち上げ、所定の順番で出力電圧を立ち下げることができる。
ここで、望ましくは、前記複数のレギュレータのうち、少なくとも最後に起動されるべきレギュレータは、出力電圧の立ち上がり速度を規制するソフトスタート回路を備えるようにする。これにより、ソフトスタート回路を備えている電圧検出回路(レギュレータ)の出力電圧は立ち上がりが遅くされるため、確実に最後に出力電圧が立ち上がるようにすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、複数のレギュレータを備え複数の直流電圧を出力する多出力電源装置において、端子数を増加させることなく所定の順番で各レギュレータの出力を立ち上げることができる。また、複数のレギュレータを備え複数の直流電圧を出力する多出力電源装置において、各レギュレータの出力電圧の立ち上がり速度が異なる場合にも予め規定された順序に従った正確な立ち上げが行えるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明を適用した多出力電源装置の第1の実施形態を示すブロック図である。
【図2】第1の実施形態の多出力電源装置における入力電圧Vinと出力電圧Vout1,Vout2,Vout3の立ち上がりおよび立ち下がりのタイミングを示すタイミングチャートである。
【図3】第2の実施形態の多出力電源装置の構成例を示すブロック図である。
【図4】第2の実施形態の多出力電源装置における入力電圧Vinと出力電圧Vout1,Vout2,Vout3の立ち上がりおよび立ち下がりのタイミングを示すタイミングチャートである。
【図5】第3の実施形態の多出力電源装置の構成例を示すブロック図である。
【図6】図5の第3実施形態の多出力電源装置の具体例を示すブロック図である。
【図7】図6の多出力電源装置における入力電圧Vinと出力電圧Vout1,Vout2の立ち上がりおよび立ち下がりのタイミングおよび電圧検出回路の出力の変化を示すタイミングチャートである。
【図8】従来の多出力電源装置の構成例を示すブロック図である。
【図9】従来の多出力電源装置における入力電圧Vinと出力電圧Vout1,Vout2,Vout3の立ち上がりおよび立ち下がりのタイミングとおよびコントロール信号の変化を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面に基づいて説明する。(実施例1) 図1は、本発明を適用した多出力電源装置の第1の実施形態を示す。この実施形態は、3つのレギュレータ11A,11B,11Cを内蔵し一つの入力電圧Vinに基づいて各々電圧レベルの異なる3つの出力電圧Vout1,Vout2,Vout3を出力可能な多出力電源装置として構成したものである。また、特に限定されるものではないが、この実施形態の多出力電源装置は、第1と第2のレギュレータ11A,11Bは、スイッチングレギュレータからなるDC−DCコンバータにより構成され、第3のレギュレータはLDO(低飽和型シリーズレギュレータ)により構成されている。さらに、この実施形態の多出力電源装置は、1個の半導体チップ上に半導体集積回路(レギュレータIC)として構成されている。
【0019】
また、この実施形態の多出力電源装置には、入力電圧Vinが印加される電圧入力端子VINと、3つのレギュレータ11A,11B,11Cに対応して、3つの電圧出力端子OUT1,OUT2,OUT3と、上記入力電圧Vinと所定の参照電圧Vref1,Vref2,Vref3とを比較するコンパレータ(電圧比較回路)などからなる入力電圧検出回路12A,12B,12Cが設けられている。そして、各入力電圧検出回路12A,12B,12Cが、入力電圧Vinが所定の電位に達したことを検出すると、出力が変化して対応するレギュレータを起動させるように構成されている。ここで、特に限定されるものではないが、この実施形態では、参照電圧Vref1,Vref2,Vref3は、Vref1<Vref2<Vref3の関係となるようにそれぞれの電圧値が設定されている。
【0020】
図2には、図1の電源装置における入力電圧Vinと出力電圧Vout1,Vout2,Vout3の立ち上がりおよび立ち下がりのタイミングが示されている。本実施形態の多出力電源装置では、参照電圧Vref1,Vref2,Vref3が、Vref1<Vref2<Vref3のように設定されているため、図2示されているように、入力電圧Vinが先ずVref1に達した時点t1で、レギュレータ11Aが起動されてその出力電圧Vout1が立ち上がり始める。続いて、入力電圧VinがVref2に達すると、レギュレータ11Bが起動されてその出力電圧Vout2が立ち上がり始める(タイミングt2)。そして、最後に入力電圧VinがVref3に達した時点t3で、レギュレータ11Cが起動されてその出力電圧Vout2が立ち上がり始める。
【0021】
上記のように、本実施形態の多出力電源装置においては、比較される参照電圧が異なる3つの入力電圧検出回路12A,12B,12Cを設けているため、予め設定した順序で3つのレギュレータ11A,11B,11Cを順に起動して、3つの出力電圧Vout1,Vout2,Vout3を順に立ち上げることができる。また、図2からも分かるように、入力電圧Vinが立ち下がる際には、立ち上がりとは逆の順序で立ち下がることとなる。なお、複数の電源電圧の立ち上がりの順序が規定されているシステムにおいては、一般には立ち上がりとは逆の順序で立ち下がることが規定されることが多いので、そのようなシステムには本実施形態の多出力電源装置を使用することができる。なお、図示しないが、レギュレータ11A,11B,11Cおよび入力電圧検出回路12A,12B,12Cは、電圧入力端子VINに入力される電圧Vinを電源電圧として動作するように構成することができる。
【0022】
ところで、スイッチングレギュレータがそのスイッチング動作のためのクロック信号を生成する発振器を内蔵している場合、発振器は電源電圧(入力電圧Vin)が立ち上がってもすぐには発振動作することができず若干動作が遅れ、出力電圧の立ち上がりも遅れる。一方、LDO(低飽和型シリーズレギュレータ)は、電源電圧(入力電圧Vin)が立ち上がると比較的速やか出力電圧が立ち上がることが知られている。従って、何も対策しないと、図1のような多出力電源装置においては、スイッチングレギュレータからなるDC−DCコンバータにより構成されたレギュレータ11Aと11Bの出力電圧Vout1,Vout2の立ち上がりが、LDOからなるレギュレータ11Cの出力電圧Vout3の立ち上がりよりも遅れてしまい、所望の順序でレギュレータ11A,11B,11Cの出力電圧Vout1,Vout2,Vout3を立ち上げることができなくなるおそれがある。
【0023】
そこで本実施形態では、特にLDOからなるレギュレータ11Cについては、内部にソフトスタート回路(図面にはSS回路と記載)を設けて出力電圧の立ち上がりが緩やかになるように制御することとした。なお、ソフトスタート回路は、レギュレータの起動時に、負荷へ向かって急激に大きな突入電流が流れ込むのを防止するために、出力電圧が一定の速度で立ち上がるように規制するための回路であり、従来よりレギュレータにおいてよく使用されている回路である。レギュレータ11Cにソフトスタート回路を設けることによって、誤ってレギュレータ11Cの出力電圧Vout3がレギュレータ11A,11Bの出力電圧Vout1,Vout2よりも先に立ち上がってしまうのを回避することができる。また、レギュレータ11Cにソフトスタート回路を設けることによって、負荷へ向かって流れ込む突入電流を抑えることができるという利点もある。
【0024】
ところで、各レギュレータの出力端子に接続される負荷の大きさによっては、DC−DCコンバータにより構成されたレギュレータ11Aや11Bであってもその出力電圧の立ち上がりが速くなることも考えられる。そこで、本実施形態の多出力電源装置においては、レギュレータ11A,11Bに対してもソフトスタート回路を設けてレギュレータ11Cの出力電圧Vout3と同一の立ち上がり時間で出力電圧Vout1,Vout2を立ち上げることとした。
【0025】
ソフトスタート回路によって規定されるレギュレータ11A,11B,11Cの出力電圧Vout1,Vout2,Vout3の立ち上げ時間が同一であるとすると、到達電位がそれぞれ異なっていたとしても、上記のように入力電圧検出回路12A,12B,12Cの参照電圧Vref1,Vref2,Vref3が、Vref1<Vref2<Vref3の関係となるように設定されることにより、Vout1→Vout2→Vout3の順序で正確に出力電圧を立ち上げることができるようになる。なお、ソフトスタート回路は、従来よりよく知られた技術で種々の形式の回路が提案されており、本発明においては従来のソフトスタート回路と同様な回路を使用することができるので、ソフトスタート回路の具体例については、図示および説明を省略する。
(実施例2)
【0026】
図3は、本発明を適用した多出力電源装置の第2の実施形態を示す。この実施形態は、複数のレギュレータを備えた多出力電源装置であって、各レギュレータの立ち上げの順序と立ち下げの順序が同じである場合に有効な電源装置である。
【0027】
図3に示すように、本実施形態の多出力電源装置は、3つのレギュレータ11A,11B,11Cを内蔵し一つの入力電圧Vinに基づいて各々電圧レベルの異なる3つの出力電圧Vout1,Vout2,Vout3を出力可能な多出力電源装置として構成されている。各レギュレータ11A,11B,11Cは、すべて、スイッチングレギュレータからなるDC−DCコンバータにより構成されていてもよいし、LDO(低飽和型シリーズレギュレータ)により構成されていてもよい。また、2種類のレギュレータが混在する場合、立ち上がる順序はLDOが最初あるいは途中であっても良い。
【0028】
この実施形態の多出力電源装置においては、レギュレータ11Aに対応して、電圧入力端子VINに印加されている入力電圧Vinと所定の参照電圧Vrefとを比較して入力電圧の立ち上がりを検出するコンパレータ(電圧比較回路)などからなる入力電圧検出回路12Aが設けられている。また、レギュレータ11Bに対応してレギュレータ11Aの出力電圧Vout1の立ち上がりを検出する電圧検出回路12Dが、さらにレギュレータ11Bに対応してレギュレータ11Bの出力電圧Vout2の立ち上がりを検出する電圧検出回路12Eが設けられている。
【0029】
そして、上記入力電圧検出回路12Aが、入力電圧Vinが所定の電位に達したことを検出すると入力電圧検出回路12Aの出力が変化してレギュレータ11Bを起動させ。その後、レギュレータ11Aの出力電圧Vout1が所定の電位に達したことを電圧検出回路12Dが検出すると電圧検出回路12Dの出力が変化してレギュレータ11Bを起動させ、レギュレータ11Bの出力電圧Vout2が所定の電位に達したことを電圧検出回路12Eが検出すると電圧検出回路12Eの出力が変化してレギュレータ11Cを起動させるように構成されている。
【0030】
その結果、図4に示すように、Vout1→Vout2→Vout3の順序で出力電圧を立ち上げることができる。また、入力電圧Vinが立ち下がると、入力電圧検出回路12Aの出力、電圧検出回路12Dの出力、電圧検出回路12Eの出力が順次変化して、レギュレータ11A、11B、11Cの動作を停止させ、Vout1→Vout2→Vout3の順序で出力電圧を立ち下げることができる。なお、本実施形態の多出力電源装置においては、レギュレータ11A,11B,11Cのすべてあるいはいずれかのレギュレータがソフトスタート回路を備えている場合においても、所定の順序で正確に出力電圧を立ち上げることができる。
(実施例3)
【0031】
図5は、本発明を適用した多出力電源装置の第3の実施形態を示す。この実施形態は、複数のレギュレータを備えた多出力電源装置であって、各レギュレータの立ち上げの順序と立ち下げの順序を任意に設定できるようにしたい場合に有効な電源装置である。
【0032】
この実施形態の多出力電源装置においては、3つのレギュレータ11A,11B,11Cに対応して、入力電圧Vinと所定の参照電圧Vref1,Vref2,Vref3とを比較するコンパレータ(電圧比較回路)などからなる入力電圧検出回路12A,12B,12Cが設けられているとともに、レギュレータ11Aの出力電圧Vout1の立ち上がりを検出する電圧検出回路12Dと、レギュレータ11Bの出力電圧Vout2の立ち上がりを検出する電圧検出回路12Eと、レギュレータ11Cの出力電圧Vout3の立ち上がりを検出する電圧検出回路12Fとが設けられている。
【0033】
さらに、入力電圧検出回路12Bと電圧検出回路12D(または12F)の出力に基づいてレギュレータ11Bの起動制御信号を生成する起動・停止制御回路13Aと、入力電圧検出回路12Cと電圧検出回路12E(または12D)の出力に基づいてレギュレータ11Cの起動制御信号を生成する起動・停止制御回路13Bと、電圧検出回路12F(または12E)や入力電圧検出回路12Cの出力に基づいてレギュレータ11Aの起動制御信号を生成する起動・停止制御回路13Cとが設けられている。このような構成を有することにより、各レギュレータの立ち上げの順序と立ち下げの順序を任意に設定することが容易となる。
【0034】
なお、図5の多出力電源装置においては、3つのレギュレータ11A,11B,11Cは、それぞれソフトスタート回路を備えたものでもよいし、備えていないものでも良い。また、図5の多出力電源装置においては、起動・停止制御回路13A,13B,13Cに対して、チップ外部から制御信号を入力する外部端子を設けておくことにより、起動順序を外部から制御信号で変更できるように構成することも可能である。
(具体例)
【0035】
図6に、図5の第3実施形態を適用した多出力電源装置において、2つのレギュレータ11A,11Bを備える場合に電源立上がり時に各レギュレータを11A→11Bの順に起動させてVout2→Vout1の順序で出力電圧を立ち上げる一方、電源立下がり時に各レギュレータを11B→11Aの順序に停止させてVout2→Vout1の順序で出力電圧を立ち下げることができるようにした具体例を示す。
【0036】
図6に示すように、この具体例の多出力電源装置においては、2つのレギュレータ11A,11Bに対応して、入力電圧Vinと所定の参照電圧Vref1,Vref2とを比較して入力電圧が所定の電位に達したか検出する入力電圧検出回路12A,12Bと、レギュレータ11Bの出力電圧Vout2の立ち上がりを検出する電圧検出回路12Eと、入力電圧検出回路12Aの出力と電圧検出回路12Eの出力とからレギュレータ11Aの起動制御信号ST1を生成する起動・停止制御回路13AとしてのNORゲートG1とが設けられている。レギュレータ11Bは、入力電圧検出回路12Bの出力によって直接起動制御されるように構成されている。
【0037】
図7に、図6の具体例を適用した多出力電源装置における入力電圧Vinと出力電圧Vout1、Vout2と電圧検出回路12Eの出力の変化のタイミングが示されている。図7に示されているように、図6の多出力電源装置においては、入力電圧Vinが立ち上がって参照電圧Vref1に達すると、入力電圧検出回路12Aの出力がハイレベルに変化し、それによってNORゲートG1の出力がロウレベルに変化してレギュレータ11Aが起動され、出力電圧Vout1が立ち上がり始める(タイミングt11)。
【0038】
その後、入力電圧Vinがさらに高くなって参照電圧Vref2に達すると、入力電圧検出回路12Bの出力がハイレベルに変化してレギュレータ11Bが起動され、出力電圧Vout2が立ち上がり始める(タイミングt12)。そして、出力電圧Vout2が参照電圧Vrefに達すると、電圧検出回路12Eの出力がハイレベルに変化する(タイミングt13)が、このときNORゲートG1の出力はすでにロウレベルに変化しているため、レギュレータ11Aの動作に変化はない。
【0039】
一方、入力電圧Vinが立ち下がる際には、先ずVinが参照電圧Vref2に達すると、入力電圧検出回路12Bの出力がロウレベルに変化し、それによってレギュレータ11Bの動作が停止され、出力電圧Vout2が立ち下がり始める(タイミングt21)。このとき入力電圧検出回路12Aの出力はまだハイレベルであるため、NORゲートG1の出力はロウレベルを保持しており、レギュレータ11Aは動作を続ける。
【0040】
その後、入力電圧Vinがさらに低くなって参照電圧Vref1に達すると、入力電圧検出回路12Aの出力がロウレベルに変化する(タイミングt22)が、このときレギュレータ11Bの出力電圧Vout2が参照電圧Vrefに達していないと、電圧検出回路12Eの出力がハイレベルのままであるため、NORゲートG1の出力はロウレベルを保持し、レギュレータ11Aは動作を続ける。そして、その後、レギュレータ11Bの出力電圧Vout2が参照電圧Vrefに達すると、電圧検出回路12Eの出力がロウレベルに変化してレギュレータ11Aの動作が停止され、出力電圧Vout1が立ち下がり始める(タイミングt23)。
【0041】
このように、第3実施形態を適用した図6の電源装置においては、電源立上がり時に各レギュレータを11A→11Bの順に起動させてVout1→Vout2の順序で出力電圧を立ち上げるとともに、電源立下がり時に各レギュレータを11B→11Aの順序に停止させてVout2→Vout1の順序で出力電圧を立ち下げることができる。しかも、Vout2が所定のレベルまで下がったのを検出してレギュレータ11Aの動作を停止させるため、正確にVout2→Vout1の順序で出力電圧を立ち下げることができる。
【0042】
以上本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。例えば、図1や図3の実施形態においては、レギュレータを3個備えた多出力電源装置を例にとって説明したが、レギュレータの数は3個に限定されず、4個以上であっても良い。また、前記実施形態においては、レギュレータとしてのDC−DCコンバータとLDOを内蔵した多出力電源装置を例にとって説明したが、内蔵される複数のレギュレータがすべてDC−DCコンバータまたはLDOである場合にも適用することができる。また、レギュレータとしてシャントレギュレータを使用する電源装置にも適用することができる。また、実施形態においては、電圧検出回路として、所定の参照電圧と比較するコンパレータ(電圧比較回路)を使用したが、回路が有するしきい値電圧に応じて出力が変化するような回路であっても良い。
【0043】
さらに、前記実施形態においては、レギュレータに出力電圧の立ち上がり時間を規制するためソフトスタート回路を設けることについて説明したが、レギュレータに出力電圧の立ち下がり時間を規制するため例えばスイッチ用トランジスタと抵抗などからなる立ち下がり制御回路を設け、立ち下がり時間を規制して確実に所定の順序で複数のレギュレータが停止するように構成しても良い。また、前記実施形態においてはレギュレータとして定電圧を出力する電圧レギュレータを使用した例を説明したが、定電流を出力する電流レギュレータを使用する電源装置にも適用することができる。
【0044】
さらに、前記実施形態においては、本発明を複数の直流電圧を出力可能な多出力電源装置に適用した例を説明したが、本発明にそれに限定されるものではなく、複数のDC−DCコンバータやLDOなどのレギュレータとともに、二次電池の充電制御回路や、WLED(ホワイト発光ダイオード)ドライバ回路等複数の電源系回路を搭載したパワーマネージメントICのような多機能電源制御用ICにも利用する。
【符号の説明】
【0045】
11A,11B,11C レギュレータ(DC−DCコンバータ、シリーズレギュレータ)
12A,12B,12C 入力電圧検出回路
12D,12E,12F 電圧検出回路
13A,13B,13C 起動・停止制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電圧が入力される電圧入力端子と、
前記電圧入力端子に入力されている電圧を受けて異なる電位の直流電圧に変換して出力する複数のレギュレータと、
前記複数のレギュレータに対応して設けられた複数の電圧出力端子と、
前記複数のレギュレータに対応して設けられた複数の電圧検出回路と、を備え、
前記複数の電圧検出回路のうち、最初に起動されるべきレギュレータに対応された電圧検出回路は、前記電圧入力端子に入力されている電圧が予め設定された所定の電位に達した際に出力が変化するようにされ、
前記複数のレギュレータは、それぞれ対応する前記電圧検出回路の出力の変化に応じて動作を開始するように構成されていることを特徴とする多出力電源装置。
【請求項2】
前記複数の電圧検出回路は、各々前記電圧入力端子に入力されている電圧と所定の参照電圧とを比較して、入力電圧が所定の電位に達した際に出力が変化するようにされ、
前記所定の参照電圧の電位は、予め規定されている出力電圧が立ち上がる順序に従って段階的に高い電位となるように設定されていることを特徴とする請求項1に記載の多出力電源装置。
【請求項3】
前記複数のレギュレータのうち、少なくとも最後に起動されるべきレギュレータは、出力電圧の立ち上がり速度を規制するソフトスタート回路を備えていることを特徴とする請求項2に記載の多出力電源装置。
【請求項4】
前記複数のレギュレータは、それぞれ出力電圧の立ち上がり速度を規制するソフトスタート回路を備え、各ソフトスタート回路により規制される出力電圧の立ち上がり時間は同一に設定されていることを特徴とする請求項2に記載の多出力電源装置。
【請求項5】
前記複数の電圧検出回路のうち、最初に起動されるべきレギュレータに対応された電圧検出回路以外の電圧検出回路は、それぞれ対応するレギュレータよりも一つ前に起動されるべきレギュレータの出力電圧と所定の参照電圧とを比較して、出力電圧が所定の電位に達した際に出力が変化するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の多出力電源装置。
【請求項6】
直流電圧が入力される電圧入力端子と、
前記電圧入力端子に入力されている電圧を受けて異なる電位の直流電圧に変換して出力する複数のレギュレータと、
前記複数のレギュレータに対応して設けられた複数の電圧出力端子と、
前記複数のレギュレータに対応して設けられた複数の第1電圧検出回路と、
前記複数のレギュレータに対応して設けられた複数の第2電圧検出回路と、
前記第1電圧検出回路と前記第2電圧検出回路の出力に基づいて対応する前記レギュレータの起動および停止を制御する信号を生成する複数の起動・停止制御回路と、を備え、
前記複数の第1電圧検出回路は、前記電圧入力端子に入力されている電圧と各々異なる電位に設定された参照電圧とを比較して、入力電圧が所定の電位に達した際に出力が変化するようにされ、
前記複数の第2電圧検出回路は、それぞれ対応する前記レギュレータの出力電圧と所定の参照電圧とを比較して、各出力電圧が所定の電位に達した際に出力が変化するようにされ、
前記複数の起動・停止制御回路は、それぞれ対応する前記第1電圧検出回路の出力と、対応するレギュレータとは別のレギュレータの出力電圧を検出する前記第2電圧検出回路の出力に基づいて対応する前記レギュレータの起動および停止を制御する信号を生成するように構成されていることを特徴とする多出力電源装置。
【請求項7】
前記複数のレギュレータのうち、少なくとも最後に起動されるべきレギュレータは、出力電圧の立ち上がり速度を規制するソフトスタート回路を備えていることを特徴とする請求項6に記載の多出力電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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