説明

多孔性コーティング層を備える電極の製造方法、その方法によって形成された電極、及びそれを備える電気化学素子

本発明による電極の製造方法は、(S1)金属アルコキシド化合物を含むゾル溶液を用意する段階と、(S2)前記ゾル溶液を集電体の少なくとも一面に形成された電極活物質層の外面に電気噴射し、無機繊維からなる多孔性不織布コーティング層を形成する段階と、を含む。本発明により電極の外面に形成された多孔性不織布コーティング層は、熱的安定性に優れた無機繊維で構成され、電気化学素子が過熱する場合でも、正極と負極との間の短絡を抑制でき、気孔が均一に分布しているため、電気化学素子の性能向上に寄与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池のような電気化学素子の電極の製造方法、その方法によって形成された電極、及びそれを備える電気化学素子に関し、より詳しくは、無機物を含む多孔性コーティング層が形成された電極の製造方法、その方法によって形成された電極、及びそれを備える電気化学素子に関する。
【0002】
本出願は、2009年6月30日出願の韓国特許出願第10−2009−0058977号及び2010年6月29日出願の韓国特許出願第10−2010−0061845号に基づく優先権を主張し、該当出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に援用される。
【背景技術】
【0003】
近年、エネルギー貯蔵技術に対する関心が高まりつつある。携帯電話、カムコーダー、及びノートパソコン、さらには電気自動車のエネルギーまで適用分野が拡がるとともに、電気化学素子の研究と開発に対する努力が次第に具体化されている。電気化学素子はこのような面で最も注目される分野であり、その中でも、充放電可能な二次電池の開発に関心が寄せられている。このような電池の開発において、容量密度及び比エネルギーを向上させるために、新たな電極と電池の設計に対する研究開発が行われている。
【0004】
1990年代の初めに開発されたリチウム二次電池は、水溶液電解液を用いるニッケル‐マンガン、ニッケル‐カドミウム、硫酸‐鉛電池などの従来型電池に比べて作動電圧が高くエネルギー密度が格段に高いという長所から、現在使用されている二次電池のうち最も脚光を浴びている。しかし、このようなリチウムイオン電池は、有機電解液を用いることによる発火及び爆発などの安全問題を抱えており、またその製造に手間がかかるという短所がある。最近のリチウムイオン高分子電池は、上記のようなリチウムイオン電池の短所を改善し、次世代電池の1つとして挙げられているが、未だ電池の容量がリチウムイオン電池と比べて相対的に低く、特に低温における放電容量が不十分であるため、それに対する改善が至急に求められている。
【0005】
上記のような電気化学素子は多くのメーカにおいて生産中であるが、それらの安全性特性は相異なる様相を呈している。電気化学素子の安全性の評価及び安全性の確保は最も重要に考慮すべき事項である。特に、電気化学素子の誤作動によりユーザが傷害を被ることはあってはならなく、ゆえに、安全規格は電気化学素子内の発火及び発煙などを厳格に規制している。電気化学素子が過熱し、熱暴走が起きるか又はセパレータが貫通される場合は、爆発が起きる恐れが大きい。特に、電気化学素子のセパレータとして通常使用されるポリオレフィン系多孔性基材は、材料特性及び延伸を含む製造工程上の特性から100℃以上の温度で甚だしい熱収縮挙動を見せ、正極と負極との間の短絡を起こすという問題点がある。
【0006】
このような電気化学素子の安全性問題を解決するために、多数の気孔を有する多孔性基材の少なくとも一面に、過量の無機物粒子とバインダー高分子との混合物をコーティングして多孔性コーティング層を形成した電極が提案された。多孔性コーティング層に含有された無機物粒子は耐熱性に優れるため、電気化学素子が過熱する場合にも正極と負極との間の短絡を防止する。したがって、このような電極を備える電気化学素子は従来のセパレーターに代替するか、又はそれに加えられ、熱的安定性を向上させることができる。
【0007】
このような多孔性コーティング層を備える電極は、過量の無機物粒子をバインダー高分子が溶解された溶液に分散させた後、これを電極の電極活物質層の外面にコーティング及び乾燥させて製造される。電気化学素子が円滑に作動するためには、多孔性コーティング層内の気孔が均一に分布しなければならない。すなわち、多孔性コーティング層内に含有された過量の無機物粒子がよく分散していなければならない。そのために無機物粒子をバインダー高分子溶液に添加した後、長時間物理的に撹拌するか、または、超音波分散法を用いるなどの方法が試みられている。しかし、このような方法によって無機物粒子を高分子溶液によく分散させた場合でも、溶媒の乾燥過程で無機物粒子が再び凝集する現象が生じるため、過量の無機物粒子が均一に分散した多孔性コーティング層を製造することは非常に難しい。このような問題は、無機物粒子が分散した高分子溶液を電気噴射する場合にも依然として存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、従来の無機物粒子を含む多孔性コーティング層に代えて、気孔が均一に分布した無機物含有多孔性コーティング層を形成した電極の製造方法、その方法によって形成された電極、及びそれを備える電気化学素子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明による電極の製造方法は、
(S1)金属アルコキシド化合物を含むゾル溶液を用意する段階と、
(S2)前記ゾル溶液を集電体の少なくとも一面に形成された電極活物質層の外面に電気噴射し、無機繊維からなる多孔性不織布コーティング層を形成する段階と、を含む。
【0010】
本発明の電極の製造方法において、金属アルコキシド化合物としては珪素含有アルコキシド、アルミニウム含有アルコキシド、チタン含有アルコキシドなどを単独でまたはこれらのうち2種以上を混合して使用することができる。金属アルコキシドのうち金属は、リチウム、マグネシウム、バリウムなどのアルカリ金属またはアルカリ土金属、コバルト、マンガン、鉄、ニッケル、バナジウムなどの遷移金属などで一部置換することができる。
【0011】
珪素含有アルコキシドとしてはテトラアルキルオルトシリケート(炭素数1ないし4)が、アルミニウム含有アルコキシドとしてはアルミニウムセクブトキシド、アルミニウムイソプロトキシド、アルミニウムエトキシドなどが、チタン含有アルコキシドとしてはチタンイソプロポキシド、チタンアルキルアルコキシド(炭素数1ないし4)が挙げられる。
【0012】
本発明の電極の製造方法において、ゾル溶液にはポリフッ化ビニリデン‐ヘキサフルオロプロピレン、ポリフッ化ビニリデン‐トリクロロエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアセテート共重合体、ポリエチレンオキサイド、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、シアノエチルプルラン、シアノエチルポリビニルアルコール、シアノエチルセルロース、シアノエチルスクロース、プルラン、カルボキシルメチルセルロースなどのような高分子または分子量10,000g/mol以下の低分子化合物を結合剤としてさらに添加することができる。
【0013】
前記(S2)段階の後、上記の結合剤が多孔性不織布コーティング層から分離するように、熱処理して分解する段階をさらに含むことが望ましい。
【0014】
本発明の電極の製造方法において、電気噴射は電気紡糸(electrospinning)または電気噴霧(electrospraying)であり得る。
【0015】
本発明による電極は、
(a)集電体及び前記集電体の少なくとも一面に形成された電極活物質層と、
(b)前記電極活物質層の外面に形成され、無機繊維からなった多孔性不織布コーティング層と、を備える。
【0016】
本発明による電極において、無機繊維はSiO、Al、BaTiO、TiOなどの無機酸化物単独でまたはこれらのうち2種以上の混合物で形成でき、無機酸化物の金属はリチウム、マグネシウム、バリウムなどのアルカリ金属またはアルカリ土金属、コバルト、マンガン、鉄、ニッケル、バナジウムなどの遷移金属などで一部置換することができる。
【0017】
このような無機繊維は、電気紡糸または電気噴霧のような電気噴射によって形成することができる。
【0018】
本発明による電極において、無機繊維の平均直径は0.001ないし1000nm、不織布の厚さは0.1ないし100um、不織布の平均気孔径は0.01ないし10um、不織布の気孔度は1ないし80%であることが望ましい。
【0019】
このような本発明の電極は、リチウム二次電子やスーパーキャパシタ素子のような電気化学素子の正極、負極、または正極と負極の双方に適用することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によって電極の外面に形成された多孔性不織布コーティング層は、熱的安定性に優れた無機繊維から構成されるため、電気化学素子が過熱する場合でも正極と負極との間の短絡を抑制することができる。また、無機物粒子が過量含有された従来の多孔性コーティング層とは異なり、繊維状の無機物で形成された不織布コーティング層であるため、気孔が均一に分布して電気化学素子の性能向上に寄与する。さらに、電気噴射で形成した無機繊維極細糸で構成された多孔性不織布コーティング層はその厚さを薄くすることができるため、高容量の電気化学素子の具現に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施例1によって電極上に形成されたコーティング層のSEM写真である。
【図2】実施例2によって電極上に形成されたコーティング層のSEM写真である。
【図3】比較例1によって電極上に形成されたコーティング層のSEM写真である。
【図4】比較例2によって電極上に形成されたコーティング層のSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付された図面を参照して本発明の望ましい実施例を詳しく説明する。これに先立ち、本明細書及び請求範囲に使われた用語や単語は通常的や辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されねばならない。したがって、本明細書に記載された実施例及び図面に示された構成は、本発明のもっとも望ましい一実施例に過ぎず、本発明の技術的な思想のすべてを代弁するものではないため、本出願の時点においてこれらに代替できる多様な均等物及び変形例があり得ることを理解せねばならない。
【0023】
本発明によって電極の外面に無機繊維からなる多孔性の不織布コーティング層を形成する方法は、次のようである。
【0024】
まず、金属アルコキシド化合物を含むゾル溶液を用意する(S1段階)。
【0025】
金属アルコキシド化合物としては、珪素含有アルコキシド、アルミニウム含有アルコキシド、チタン含有アルコキシドなどをそれぞれ単独でまたはこれらのうち2種以上を混合して使用することができる。金属アルコキシドのうち金属は、必要に応じて、リチウム、マグネシウム、バリウムなどのアルカリ金属またはアルカリ土金属、コバルト、マンガン、鉄、ニッケル、バナジウムなどの遷移金属などで一部置換して使用することができる。
【0026】
珪素含有アルコキシドとしてはテトラアルキルオルトシリケート(炭素数1ないし4)が、アルミニウム含有アルコキシドとしてはアルミニウムセクブトキシド、アルミニウムイソプロトキシド、アルミニウムエトキシドなどが、チタン含有アルコキシドとしてはチタンイソプロポキシド、チタンアルキルアルコキシド(炭素数1ないし4)が挙げられ、ゾル‐ゲル反応によって繊維化できる金属アルコキシド化合物であればいずれも使用可能である。
【0027】
後述する電気噴射のために、このような金属アルコキシド化合物を含むゾル溶液を用意する方法は当業界で周知である。金属アルコキシド化合物を含むゾル溶液は、通常金属アルコキシド化合物を溶媒に混合して撹拌するか、塩酸などの酸成分をさらに添加してから加水分解と縮合反応を行い熟成させることが一般的である。
【0028】
例えば、韓国特許登録第0596543号公報には、テトラエチルオルトシリケートをエタノールに混合した溶液を熟成させてゾル溶液を用意する方法が開示されている。また、韓国特許公開第2009−0054385号公報には、シリコン含有アルコキシド化合物とチタン含有アルコキシド化合物を含む前駆体溶液を熟成させてゾル溶液を用意する方法が開示されている。上記の文献は本発明の参考として援用される。
【0029】
ゾル溶液には、必要に応じて、ポリフッ化ビニリデン‐ヘキサフルオロプロピレン、ポリフッ化ビニリデン‐トリクロロエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアセテート共重合体、ポリエチレンオキサイド、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、シアノエチルプルラン、シアノエチルポリビニルアルコール、シアノエチルセルロース、シアノエチルスクロース、プルラン、カルボキシルメチルセルロースなどのような高分子、または分子量10,000g/mol以下の低分子化合物を結合剤としてさらに添加してもよい。
【0030】
次いで、用意したゾル溶液を集電体の少なくとも一面に形成された電極活物質層の外面に電気噴射し、無機繊維からなる多孔性不織布コーティング層を形成する(S2段階)。
【0031】
ゾル溶液を用いて電気噴射する方法も当業界で周知である。電気噴射とは、溶液に対して高電圧を印加して電荷を与えた後、荷電された溶液を微細径の噴射ノズルや小滴を発生させる噴霧ヘッドを用いて基材に噴射する方法である。電気噴射には電気紡糸または電気噴霧が含まれる。韓国特許公開第2009−0054385号公報には、注射器(シリンジポンプ)、注射針、ボトム電極(回転速度を調節できるステンレス鋼板のドラム)及び紡糸電圧供給装置で構成された電気紡糸装置を用いて、注射針の先とドラムとの間の距離を5ないし30cm、紡糸電圧は15kV以上、シリンジポンプの紡糸溶液の流量を1ないし20ml/hrに調節して電気紡糸する方法が開示されている。また、韓国特許登録第0271116号公報には電気噴霧装置及び方法が開示されている。上記の文献も本発明の参考として援用される。
【0032】
本発明では、電気噴射装置の基材に電極を位置させ、電極の集電体の少なくとも一面に形成された電極活物質層の外面に、用意したゾル溶液を電気噴射することで、無機繊維からなる不織布コーティング層を形成する。このとき、公知の方法によって注射針同士の間隔、基材の運び速度などを調節し、不織布コーティング層の気孔度を最適化することができる。
【0033】
本発明によってゾル溶液が噴射される電極は特に制限されなく、当業界で周知の通常の方法によって電極活物質を含む層(すなわち、電極活物質層)を集電体の少なくとも一面に結着する形態で製造することができる。前記電極活物質としては、従来電気化学素子の正極に使用される通常の正極活物質が使用でき、リチウムマンガン酸化物、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウム鉄酸化物、またはこれらを組み合わせたリチウム複合酸化物が挙げられるが、これに限定されることはない。負極活物質としては、従来電気化学素子の負極に使用される通常の負極活物質が使用でき、特にリチウム金属またはリチウム合金、炭素、石油コークス(petroleum coke)、活性化炭素、グラファイトまたはその他炭素類などのようなリチウム吸着物質などが挙げられるが、これに限定されることはない。正極活物質層が形成される集電体の非制限的な例としては、アルミニウム、ニッケルまたはこれらの組合せによって製造されるホイルなどがあり、負極活物質層が形成される集電体の非制限的な例としては、銅、金、ニッケル、銅合金、またはこれらの組合せによって製造されるホイルなどがある。
【0034】
電気噴射過程で、ゾル溶液に含まれた溶媒は溶媒の種類によって殆ど揮発するため、別に溶媒を乾燥させる工程は要らないが、必要に応じて常温または高温で溶媒を除去するための別の乾燥工程を追加し得ることは言うまでもない。
【0035】
必要に応じて、上述した高分子結合剤が多孔性不織布コーティング層から分離するように、多孔性不織布コーティング層が形成された電極を熱処理して分解する段階をさらに含んでもよい。このような段階を追加する場合、電極活物質層内のバインダーが分解されてはならないため、電極活物質層内のバインダーと高分子結合剤の選択はこれら高分子の分解温度を考慮して選択しなければならない。
【0036】
上述した方法によって製造した本発明の電極は、
(a)集電体、及び前記集電体の少なくとも一面に形成された電極活物質層と、
(b)前記電極活物質層の外面に形成され、無機繊維からなった多孔性不織布コーティング層と、を備える。
【0037】
周知のように、金属アルコキシド化合物を含むゾル溶液を電気噴射すれば、噴射密度を調節することで、SiO、Al、BaTiO、TiOなどの無機酸化物単独でまたはこれらのうち2種以上の混合物で構成された無機繊維が得られ、最終的にはこれら無機繊維が絡み合って多数の気孔が均一に分布した不織布が製造される。無機酸化物の金属は、リチウム、マグネシウム、バリウムなどのアルカリ金属またはアルカリ土金属、コバルト、マンガン、鉄、ニッケル、バナジウムなどの遷移金属などで一部置換してもよい。また、無機繊維内には金属アルコキシドから起因した有機アルコール類、結合体などが含まれ得る。
【0038】
このような不織布は電極活物質層上に直接形成されるため、電極活物質層のコーティング層をなす。電気噴射によって形成される無機繊維は通常1ないし100nmの直径を有するナノサイズの無機繊維を形成するが、近年の技術動向によればサブミクロンサイズ、すなわち1ないし1000nmの直径を有する無機繊維の形成も可能である。
【0039】
電気紡糸によって形成された無機繊維不織布は比較的長い無機繊維で構成され、電気噴霧によって形成された無機繊維不織布は比較的短い無機繊維で構成される。これらが相互繋がれて網目状の不織布が形成される。特に、電気噴射によって形成した無機繊維極細糸で構成された多孔性不織布コーティング層は、その厚さを薄くすることができるため、高容量の電気化学素子の具現に用いることができる。
【0040】
本発明による電極において、多孔性不織布コーティング層の厚さは0.1ないし100um、不織布の平均気孔径は0.01ないし10um、不織布の気孔度は1ないし80%であることが望ましい。
【0041】
このような本発明の電極は、電気化学素子の正極、負極、または正極と負極の双方に適用することができる。正極と負極との間に介在した無機繊維からなる多孔性不織布コーティング層は、従来のセパレーターに代えることができる。また、従来のセパレーターを正極と負極との間に介在させてもよいが、この場合、無機繊維からなる多孔性不織布コーティング層は、過熱によって従来のセパレーターが熱収縮または溶融しても正極と負極との間の短絡を防止する。
【0042】
本発明の電気化学素子は、電気化学反応を行うあらゆる素子を含み、具体例として、あらゆる種類の一次電池、二次電池、燃料電池、太陽電池またはスーパーキャパシタ素子のようなキャパシタなどがある。特に、前記二次電池のうちリチウム金属二次電池、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池またはリチウムイオンポリマー二次電池などを含むリチウム二次電池が望ましい。
【0043】
本発明の電気化学素子には、Aのような構造の塩を有機溶媒に溶解させた電解質を選択的に使用することができる。ここで、AはLi、Na、Kのようなアルカリ金属陽イオンまたはこれらの組合せからなるイオンを含み、BはPF、BF、Cl、Br、I、ClO、AsF、CHCO、CFSO、N(CFSO、C(CFSOのような陰イオンまたはこれらの組合せからなるイオンを含む。有機溶媒としては、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、N‐メチル‐2‐ピロリドン(NMP)、エチルメチルカーボネート(EMC)、γ‐ブチロラクトンまたはこれらの混合物が挙げられるが、これに限定されることはない。
【0044】
前記電解質の注入は、最終製品の製造工程及び求められる物性に応じて、電池製造工程のうち適宜な段階において行えばよい。すなわち、電池組立て前または電池組立ての最終段階などにおいて注入すればよい。
【実施例】
【0045】
以下、本発明を具体的な実施例を挙げて説明する。しかし、本発明による実施例は多くの他の形態に変形され得、本発明の範囲が後述する実施例に限定されると解釈されてはならない。本発明の実施例は当業界で平均的な知識を持つ者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0046】
実施例1
アルミニウムトリ‐sec‐ブトキシド5gをエタノール18.98mlと水0.22mlに混合し、60℃で3時間撹拌して熟成させた後、常温に冷却させてゾル溶液を用意した。次いで、製造したゾル溶液をシリンジポンプを用いて流量100uL/minで内径0.5mmの管を通じて移送した後、10kVを印加して電極(集電体の外面に正極活物質層が形成された電極)上に電気噴霧してコーティング層を形成した。
【0047】
形成されたコーティング層のSEM写真を図1に示した。コーティング層を構成するAlからなった無機繊維の直径は殆ど100nm以下であることが観察された。
【0048】
実施例2
バリウムアセテート5.1gを酢酸12mlに溶解させた後、2時間撹拌した。撹拌を続きながら、5.9mLのチタンイソプロポキシドを徐々に添加し、5時間撹拌してゾル溶液を用意した。次いで、製造したゾル溶液をシリンジポンプを用いて流量100uL/minで内径0.5mmの管を通じて移送した後、10kVを印加して電極(集電体の外面に正極活物質層が形成された電極)上に電気噴霧してコーティング層を形成した。
【0049】
形成されたコーティング層のSEM写真を図2に示した。コーティング層を構成するBaTiOからなった無機繊維の直径は殆ど800nm以下であることが観察された。
【0050】
実施例3
アルミニウムトリ‐sec‐ブトキシド、エタノール、及び水を1:16:0.6のモル比で混合し、60℃で1時間撹拌して熟成させた後、常温に冷却させてゾル溶液を用意した。次いで、ゾル溶液、メタノール及び水を1:0.2:0.003の重量比で混合し、これに酢酸を3体積%添加して常温で30分間撹拌した。その後、5重量%のポリビニルアルコール水溶液をさらに添加して常温で2時間撹拌し、電気紡糸のためのゾル溶液を用意した。
【0051】
製造されたゾル溶液をシリンジポンプを用いて流量100uL/minで内径0.5mmの管を通じて移送した後、20kVを印加して電極(集電体の外面に正極活物質層が形成された電極)上に電気紡糸してコーティング層を形成した。
【0052】
コーティング層を構成するAlからなった無機繊維の直径は殆ど300nm以下であることが観察された。
【0053】
実施例4
バリウムアセテート1.275gを酢酸3mLに溶解させた後、2時間撹拌した。撹拌を続きながら1.475mLのチタンイソプロポキシドを徐々に添加し、ポリビニルピロリドンをエタノールに10重量%の濃度で溶解させた溶液をさらに添加した後、常温で2時間撹拌して電気紡糸のためのゾル溶液を用意した。
【0054】
製造されたゾル溶液をシリンジポンプを用いて流量100uL/minで内径0.5mmの管を通じて移送した後、15kVを印加して電極(集電体の外面に正極活物質層が形成された電極)上に電気紡糸してコーティング層を形成した。
【0055】
コーティング層を構成するBaTiOからなった無機繊維の直径は殆ど300nm以下であることが観察された。
【0056】
比較例1
アラミドをジメチルアセトアミドに溶解させて高分子溶液を製造した後、約500nmの平均直径を有するAl無機酸化物粒子を高分子:無機酸化物の重量比が8:2になるように添加し、ミキサーを用いて6時間分散させた。
【0057】
次いで、無機酸化物粒子が分散した高分子溶液をシリンジポンプを用いて流量5L/minで内径2mmの管を通じて移送した後、23kVを印加して電極(集電体の外面に正極活物質層が形成された電極)上に5分間電気紡糸してコーティング層を形成した。
【0058】
形成されたコーティング層のSEM写真を図3に示した。コーティング層を構成する繊維の直径は殆ど500nm以下であったが、無機酸化物粒子が効果的に分散できず凝集した形態で観察された。
【0059】
比較例2
アラミドをジメチルアセトアミドに溶解させて高分子溶液を製造した後、約50nmの平均直径を有するAl無機酸化物粒子を高分子:無機酸化物の重量比が2:1になるように添加し、ミキサーを用いて6時間分散させた。
【0060】
次いで、無機酸化物粒子が分散した高分子溶液をシリンジポンプを用いて流量0.8L/minで内径0.5mmの管を通じて移送した後、23kVを印加して電極(集電体の外面に正極活物質層が形成された電極)上に20分間電気紡糸してコーティング層を形成した。
【0061】
形成されたコーティング層のSEM写真を図4に示した。コーティング層を構成する繊維の直径は殆ど100nm以下であったが、無機酸化物粒子が効果的に分散できず凝集した形態で観察された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(S1)金属アルコキシド化合物を含むゾル溶液を用意する段階と、
(S2)前記ゾル溶液を集電体の少なくとも一面に形成された電極活物質層の外面に電気噴射し、無機繊維からなる多孔性不織布コーティング層を形成する段階とを含んでなる、電極の製造方法。
【請求項2】
前記金属アルコキシド化合物の金属が、アルカリ金属、アルカリ土金属、及び遷移金属からなる群より選択される一種又は二種以上のものを含むことを特徴とする、請求項1に記載の電極の製造方法。
【請求項3】
前記アルカリ金属がリチウムであることを特徴とする、請求項2に記載の電極の製造方法。
【請求項4】
前記金属アルコキシド化合物が、珪素含有アルコキシド、アルミニウム含有アルコキシド、及びチタン含有アルコキシドからなる群より選択される一種又は二種以上の混合物であることを特徴とする、請求項1に記載の電極の製造方法。
【請求項5】
前記珪素含有アルコキシドが、テトラアルキルオルトシリケート(炭素数1ないし4)であり、アルミニウム含有アルコキシドはアルミニウムセクブトキシド、アルミニウムイソプロトキシド、アルミニウムエトキシドからなる群より選択される一種又は二種以上の混合物であり、チタン含有アルコキシドはチタンイソプロポキシドまたはチタンアルキルアルコキシド(炭素数1ないし4)であることを特徴とする、請求項4に記載の電極の製造方法。
【請求項6】
前記ゾル溶液が結合剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の電極の製造方法。
【請求項7】
前記結合剤が、ポリフッ化ビニリデン‐ヘキサフルオロプロピレン、ポリフッ化ビニリデン‐トリクロロエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアセテート共重合体、ポリエチレンオキサイド、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、シアノエチルプルラン、シアノエチルポリビニルアルコール、シアノエチルセルロース、シアノエチルスクロース、プルラン、カルボキシルメチルセルロース、及び分子量10,000g/mol以下の低分子化合物からなる群より選択される一種又は二種以上の混合物であることを特徴とする、請求項6に記載の電極の製造方法。
【請求項8】
前記(S2)段階後に、前記多孔性不織布コーティング層内の有機成分を分解させるために熱処理する段階をさらに含むことを特徴とする、請求項6に記載の電極の製造方法。
【請求項9】
前記電気噴射が、電気紡糸または電気噴霧であることを特徴とする、請求項1に記載の電極の製造方法。
【請求項10】
(a)集電体、及び前記集電体の少なくとも一面に形成された電極活物質層と、
(b)前記電極活物質層の外面に形成され、無機繊維からなった多孔性不織布コーティング層とを備えてなる、電極。
【請求項11】
前記無機繊維を構成する無機酸化物のうち金属が、アルカリ金属、アルカリ土金属、及び遷移金属からなる群より選択される一種又は二種以上のものを含むことを特徴とする、請求項10に記載の電極。
【請求項12】
前記アルカリ金属がリチウムであることを特徴とする請求項11に記載の電極。
【請求項13】
前記無機繊維が、SiO、Al、BaTiO、及びTiOからなる群より選択される一種又は二種以上の混合物で形成されたことを特徴とする、請求項10に記載の電極。
【請求項14】
前記無機繊維が、電気噴射によって形成されたことを特徴とする、請求項10に記載の電極。
【請求項15】
前記電気噴射が、電気紡糸または電気噴霧であることを特徴とする、請求項14に記載の電極。
【請求項16】
前記無機繊維の平均直径が、0.001ないし1000nmであることを特徴とする、請求項10に記載の電極。
【請求項17】
前記多孔性不織布コーティング層の厚さが、0.1ないし100umであることを特徴とする、請求項10に記載の電極。
【請求項18】
前記多孔性不織布コーティング層の平均気孔径が、0.01ないし10umであることを特徴とする、請求項10に記載の電極。
【請求項19】
前記不織布の気孔度が、1ないし80%であることを特徴とする、請求項10に記載の電極。
【請求項20】
正極と、及び負極と備えた電気化学素子であって、
前記正極、前記負極、または前記正極と前記負極の双方が、請求項10に記載の電極であることを特徴とする、電気化学素子。
【請求項21】
前記電気化学素子がリチウム二次電池であることを特徴とする、請求項20に記載の電気化学素子。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2012−531010(P2012−531010A)
【公表日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−516000(P2012−516000)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【国際出願番号】PCT/KR2010/004215
【国際公開番号】WO2011/002205
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】