説明

多孔性セラミック物品の不動態化

ここに開示されるように、マイクロクラックを含む多孔性セラミック物品を不動態化する装置および方法。本方法は、不動態化剤を含む液体を多孔性セラミック物品に通して循環させ、不動態化剤の少なくとも一部を多孔性セラミック物品上に堆積する工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【優先権の主張】
【0001】
本出願は、2007年11月29日に出願された米国特許出願第11/998,239号に優先権を主張する。この文献およびここに言及される刊行物、特許、および特許文献の全ての開示が参照により組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本開示は、多孔性セラミック物品を不動態化する装置および方法に関する。より詳細には、本開示は被覆された多孔性セラミック物品におけるマイクロクラックの保持に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本開示は、マイクロクラックを含む多孔性セラミック物品を不動態化する装置および方法を提供する。本方法は、マイクロクラックを保護し、物品の熱膨張率(CTE)を維持する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
実施の形態において、本方法は、例えば、連続作業において使用でき、作業効率を改良でき、ポリマーの使用料を少なくでき、揮発性発光を減少でき、処理工程の数を減少できる、またはそれらの組合せが可能である。触媒担持物品において、本方法は、触媒配置をよりよく方向付け、担持物品に亘って使用中の圧力低下を減少できる。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】本開示の実施の形態における、不動態化方法を実施するための装置のブロック概略図
【発明を実施するための形態】
【0006】
本開示の様々の実施の形態が、図面を参照して詳細に説明されるであろう。様々の実施の形態への言及は、本発明の範囲を制限するものではなく、本発明の範囲はここに添付される特許請求の範囲によってのみ制限される。さらに、本明細書に示される任意の実施例は、制限するものではなく、請求される発明の多くの可能な実施の形態のいくつかを単に示すものである。
【0007】
ここで用いたように、不定冠詞「a」、「an」、および対応する定冠詞「the」は、他に明示されなければ、少なくとも1つ、または1つ以上を意味する。
【0008】
「含む」等の用語は、含むがそれに限定されないことを意味する。
【0009】
本開示の実施の形態の説明に使用される、例えば、組成物中の成分の量、濃度、容量、処理温度、処理時間、収率、流速、圧力等の数値およびそれらの範囲を修飾する「約」は、例えば、標準的な測定および操作手順を通して;これらの手順における不注意による誤りを通して;方法を実施するために使用される出発物質および原料の製品、供給源または純度の違いを通して;および同様の検討材料を通して、起こり得る数量の変化を称する。「約」という用語は、例えば、特定の開始濃度、混合、トポグラフィまたは形態を有する製剤のエージングにより異なる量、および、特定の開始温度、混合、トポグラフィまたは形態を有する製剤の処理により異なる量も含む。「約」という用語により修飾されてもされなくても、ここに添付される請求項はこれらの量の等価物を含む。
【0010】
「必要に応じる」または「必要に応じて」等の用語は通常、例えば、引き続いて記載される事象または状況が起こり得るかまたは起こらないことを意味し、その事象または状況が起こる例及び起こらない例をその記載が含むことを意味する。
【0011】
実施の形態における「実質的に成る」とは、例えば、ここに定められるマイクロクラックを含む多孔性セラミック物品を不動態化する方法が、請求項に挙げられる成分または工程に加えて、選択される特定の反応物質、特定の添加剤または原料、特定の物質、特定の表面修飾剤または条件、あるいは構造、材料、処理、または計算変数のような、組成物、物品、装置、システム、および本開示を実施し使用するための方法の、基礎および新しい特性に大きな影響を与えない他の成分または工程を含んでもよいことを称する。
【0012】
実施の形態において、本発明の方法は、マイクロクラックを有する多孔性セラミック物品を不動態化する。多孔性セラミック物品は、ハニカム体を含んでもよい。本発明の方法は、液体がマイクロクラックのようなより小さい半径の開口部に運ばれる傾向に依存する。本発明の方法は、多孔性セラミック物品と液体を接触させる工程を含む。接触は、多孔質を通る、およびより好ましくは物品の内部壁および露出面を通る液体の循環を含んでもよい。物品は、例えば、ディーゼル微粒子フィルタのような触媒担持体またはフィルタでもよい。循環とは、多孔性セラミック物品中に液体を通過させることを称し、物品を通り過ぎて、物品の内部に、物品の周りに、または物品を通して、液体を循環させることを含んでもよい。循環は、多孔性セラミック物品の露出面を通って別の露出面の外に通過することを含むが、多孔性セラミック物品の表面層中に浸透することも含んでよい。
【0013】
実施の形態において、本発明の方法は、例えば凝縮成分を含む不動態化剤(passivator)を有する液体を使用または形成する工程を含んでもよい。不動態化剤は、例えば、ここに記載されるように、ウォッシュコート(washcoat)による処理の前にマイクロクラックを充填する、塞ぐまたはブロックし得る水以外の任意の材料を含む。液体は、例えば、溶液、混合物または懸濁液の形態でもよく、1つ以上の成分を含んでもよい。単一成分の液体は、例えば煮沸または噴霧により形成してもよい。液体はまた、凝縮成分のような不動態化剤およびキャリヤ液体を含む複数の成分を含んでもよい。多成分液体は、例えば、溶液、混合物、または懸濁液を含む。溶液は、例えば、適切な溶媒であるキャリヤ液体中に不動態化剤を溶解させることにより産生できる。溶解は、例えば適切な気体中に不動態化剤を蒸発させることにより行ってもよい。混合物は、例えば、別々の粒子または相の任意の組合せを含んでもよい。懸濁液は、例えば、蒸気、霧、ミスト、煙、および同様の性質、およびそれらの組合せのようなエアゾールを含んでもよい。
【0014】
物品の熱膨張率(CTE)は熱衝撃に対する耐性に影響を及ぼす。より低いCTEを有する物品は、より高いCTEを有する同様の物品よりも熱衝撃に対してより強い耐性を有する傾向がある。マイクロクラックは、セラミック物品の見かけのまたはバルク(bulk)のCTEを減少することが知られている。マイクロクラックは、物品中に意図的に導入され、膨張バッファのように作用し、バルクのCTEを減少し物品の熱衝撃耐性を改良する。マイクロクラックの大きさは、例えば、約0.1から約0.4ミクロンの幅で約30から約300ミクロンの長さでもよい。マイクロクラックは、非常に安定である傾向があり、多くの熱サイクルに亘って大きさが変化しない傾向がある。しかしながら、マイクロクラックは、組成物、処理、化学処理、および同様の条件に対して影響を受けやすい。
【0015】
例えば、マイクロクラックを有する多孔性セラミック物品は、様々の用途で触媒担持体として使用される。触媒はしばしばウォッシュコートとして塗布され、ウォッシュコートは金属触媒を含んでもよい。ウォッシュコート中の粒子は、マイクロクラックに入り、マイクロクラックが加熱中に閉じることを防止できる。これにより、物品のCTEは増加し熱衝撃耐性は減少する。多孔性セラミック物品を不動態化するいくつかの方法が既知である。不動態化は、ウォッシュコートの塗布中にマイクロクラックを保持し、マイクロクラックは物品が加熱される際に膨張バッファとして作用し得る。実施の形態において、例えば、架橋可能ポリマーのような可溶性ポリマーを含む溶液中に多孔性セラミック物品を浸漬し、過剰な溶液を飛ばし、熱乾燥させて液状媒体を蒸発させポリマーを架橋することにより、不動態化を行ってもよい。
【0016】
メチルセルロースのような有機化合物を、触媒ウォッシュコートの塗布前に物品に塗布してもよい。有機化合物は、マイクロクラックを含む物品の表面を被覆し、ウォッシュコートがマイクロクラックを充填するのを防ぐ。物品を焼成して、マイクロクラックを空のままにし、低いCTEを保持する有機化合物を焼き落とす。あるいは、水溶性で高分子量の有機プリコート(pre-coat)を物品に塗布し、その後ウォッシュコートをプリコート上に堆積してもよい。空のマイクロクラックのままで高分子量プリコートを焼き落としてもよい。
【0017】
物品は、水性バッファ溶液でプリコートし、後に例えばゲル形成剤を含むスラリーで被覆してもよい。バッファ溶液はマイクロクラックを充填し、例えば、実質的に水および緩衝剤から成ってもよい。スラリーはバッファ溶液と接触してゲルを形成し、マイクロクラック上に栓を形成する。焼成は、緩衝溶液から水を除去し、マイクロクラックを実質的に空のままにする。緩衝溶液は、特定のゲル形成剤に適合するように選択される。緩衝溶液/スラリー対の1つの例は、水、一塩基リン酸カリウム、および水酸化ナトリウムを含むpH7の緩衝溶液;およびpH3のアルミナのスラリーを含む。
【0018】
プリコートは、水のような液状媒体、および水溶性、熱架橋性、熱分解性、炭化水素ポリマーを含んでもよい。プリコートは物品に塗布されて乾燥され、液状媒体を除去してもよい。ポリマーは乾燥中に架橋する。
【0019】
物品の表面上に長持ちする連続的なポリマーコーティングを形成する蒸着技術が知られる。コーティングは、耐食性、撥水性、および生物学的適合性のような表面活性反応に影響を与える。ポリマー前駆体は、物品に塗布されて重合され、物品上に薄いポリマーフィルムを生成してもよい。ポリマーは、例えば熱または放射線開始剤を使用して形成できる。そのようなフィルムは、例えばパイプ上のエポキシコーティングのような、金属製品上の抗腐食コーティングとしての効用がある。シロキサンは、蒸発され、物品上で凝縮され、その後重合されて撥水物品を生じる。あるいは、ポリマー前駆体の蒸着を使用して、金属またはセラミック物品の生物活性または生物学的適合性が改良される。二官能性エポキシドモノマーおよび両端二官能性(telechelic)エポキシドポリマーが、ガラスのような無機基板上に蒸着され、透明保護コーティングを生成する。しばしば、コーティング蒸着は、ポリマー前駆体の蒸発を促進する真空下で行われる。ポリマー前駆体は、蒸発を促進するために加熱されてもよい。高レベルのポリマー前駆体が必要とされるかもしれない。蒸着は通常、物品の表面活性特性に影響を与えるが、物品のバルク特性に影響を与えるマイクロクラックの不動態化に影響しない。
【0020】
セラミック物品についての不動態化技術は非常に高価になり得る。この技術は、不動態化層が物品の露出面上に無差別に塗布されるバッチ処理になりがちである。
【0021】
実施の形態において、開示される不動態化方法は、例えば以下を含む1つ以上の優れた態様を提供し得る:
しばしば数秒間の、より早い不動態化剤のローディング(loading);
乾燥工程の排除;
過剰な不動態化溶液が物品から除去される「飛ばし(blow-out)」工程の排除;
より早いポリマー架橋化学反応;
前反応が不要でありしたがって不動態化剤がそのまま使用される;
真空システムが不要;
不動態化剤ローディングの減少;
焼尽(か焼)で生じる汚染および分解産物の減少;
既知の方法を使用して不動態化された物品と比較してより高いウォッシュコート/触媒ローディング;
またはそれらの組合せ。
【0022】
本開示は、マイクロクラックを有する多孔性セラミック物品を不動態化する方法を提供する。本発明の方法は、優先的にマイクロクラックにおいて不動態化材料を塗布する工程を含む。既知の不動態化技術は通常、少なくとも約3重量%までの実質的により多くのポリマーを使用し、その結果、より長い乾燥、硬化、およびか焼サイクルを必要とする;これらの態様は、資本設備のためのより高いコスト、エネルギー必要量の増加、および排気の増加を生じ得る。
【0023】
開示される方法は、例えば、液体を、マイクロクラックを含む多孔性セラミック物品に通過させることにより、液体および多孔性セラミック物品を接触させる工程を含む。液体は不動態化剤を含み、キャリヤ液体を含んでもよい。液体は、多孔性セラミック物品の第2の温度よりも高い第1の温度でもよい。温度の相違は、液体の少なくとも一部の凝縮に十分である。好ましくは、不動態化剤は液体から凝縮する。液体、すなわちキャリヤ液体および/または不動態化剤は、優先的にマイクロクラックの周りまたは中に凝縮される。キャリヤ液体は、不動態化剤について任意の溶媒でもよいが、好ましくは空気または水蒸気のような気体である。不動態化剤は、例えば、グリセリン、不飽和または凝縮モノマー、オリゴマー、またはポリマーのような有機固体または液体を含んでもよい。
【0024】
実施の形態において、溶液は、気体または液体を含むキャリヤ液体中に懸濁された不連続相の不動態化剤を含む液体を含んでもよい。不連続相の粒子は通常小さく、直径で約5ミクロン未満である。キャリヤ液体は、不動態化剤を有する溶液を形成できる。不動態化剤は、凝縮によりマイクロクラックに施栓できる任意の材料を含んでもよく、液体により輸送され高温で揮発されてマイクロクラックを実質的に空のままにすることができる不動態化剤を提供する任意の液体または固体を含んでもよい。好ましくは、液体、すなわちキャリヤ液体の大部分は、多孔性セラミック物品の中または上に残らない。
【0025】
実施の形態において、液体はキャリヤ液体溶媒および溶解した不動態化剤の溶質を含んでもよい。キャリヤ液体溶媒は、空気、不活性ガスまたは水蒸気のような気体、およびグリセリンのような蒸発性の液体を含む不動態化剤を含んでもよい。気体は、蒸発性の液体を通過し、蒸発性の液体の少なくとも一部が気体中に蒸発して溶液、すなわち液体を形成する。好ましくは、気体を加熱して蒸発性の液体の蒸発を促進してもよい。加熱された溶液は、多孔性セラミック物品に向けられその中を循環される。多孔性セラミック物品は、少なくとも最初は温かいまたは加熱された溶液よりも冷却されてもよい。冷たい物品との加熱された溶液の接触により、不動態化剤の少なくとも一部が溶液から離れて物品上に堆積する。不動態化剤は、マイクロクラックの中および周りに優先的に集まる。有利には、溶液は多孔性セラミック物品を加熱し、多孔性セラミック物品上に集まる不動態化剤の量を制限する。多孔性セラミックフィルタを通る循環の後、液体は必要に応じて多孔性セラミックフィルタを通して再循環してもよい。再循環は好ましくは、液体を再加熱し、多孔性セラミックフィルタを通る循環の前に、加熱された液体を揮発性または蒸発性液体に通過させる工程を含む。
【0026】
液体は、例えば加熱された気体を含んでもよく、不動態化剤は、例えばポリマーを含んでもよい。加熱された気体および不動態化剤の例は、水蒸気およびメチルセルロースエーテルポリマーを含む。加熱された気体は、第1のより高い温度でもよい。加熱された気体はポリマーを通過し吸収できる。気体は、ポリマーで飽和してもよいが、通常は気体中のポリマーの量は約1重量%未満である。ポリマー含有気体は、多孔性セラミック物品を通過してもよい。多孔性セラミック物品は、最初は第2のより低い温度でもよい。第1のより高い温度は、最初は第2のより高い温度よりも高い。加熱されたポリマー含有気体がより冷たいセラミック物品に接触すると、ポリマーは主としてマイクロクラックの中および周りでセラミック物品上に凝縮する。加熱された気体は最終的に、フィルタのようなセラミック物品を、凝縮に適しない温度まで加熱する。非凝縮温度に達するまで、物品は少量のポリマー、通常は約1重量%まで、を堆積する。物品を、加熱された気体から除去し、乾燥し、硬化できる。
【0027】
好ましくは、本発明の方法に使用される装置は、不動態化剤が多孔性セラミック物品上以外の任意の場所で実質的に凝縮しないように加熱されてもよい。溶媒は、溶液中に残存し物品上に凝縮していない任意の不動態化剤と共に再利用してもよい。再利用は、多孔性セラミック物品に液体を再循環させる工程を含んでもよい。
【0028】
実施の形態において、液体は噴霧(atomized)不動態化剤を含み、液体は加熱された気体または液体を噴霧不動態化剤に通過させることにより形成されてもよい。噴霧化は、任意の既知の方法により行ってもよい。次に溶液を多孔性セラミック物品を通して循環させてもよい。噴霧不動態化剤の一部はマイクロクラックで凝縮する。通常、1重量%未満の不動態化剤が効力を有するために必要である。加熱された液体が物品に近づく方向は、不動態化の効果に影響を与え得る。例えば、多孔性セラミックフィルタを含む物品は、加熱された液体をフィルタの後方から近づけさせ、熱衝撃がより問題となる後方でより大きい不動態化保護を生じさせてもよい。
【0029】
実施の形態において、不動態化剤は、モノマー、オリゴマーまたはポリマー前駆体のような化学反応性化合物を含んでもよい。反応性化合物は、1つ以上の成分を必要としてもよい。反応性化合物は、重合開始剤の存在下で重合する成分を含んでもよい。重合開始剤は別の化合物でもよく、電磁放射、電子ビーム、熱、または同様の物質でもよい。例えば、不動態化剤は、紫外線照射、すなわち光感受性または光活性重合開始剤により開始されるモノマーを含んでもよい。あるいは、不動態化剤は、熱重合開始剤、すなわち熱感受性または熱活性化開始重合剤で重合されるモノマーを含んでもよい。FTIR結果は、100℃でわずか10から45分間で反応化合物の完全な硬化が生じ得ることを示す。反対に、既知の硬化方法は、100℃で約20時間の硬化時間を必要とし得る。
【0030】
実施の形態において、本開示の方法は、反応化合物を含む液体を生成する工程を含んでもよい。化合物は、重合性または共重合性でもよい。反応化合物は、例えば、モノマー、オリゴマー、または低分子量ポリマーのような少なくとも第1反応化合物を含んでもよい。液体は、フィルタを循環し、反応化合物の一部は多孔性セラミックフィルタ中で凝縮する。第1反応成分は、反応して多孔性セラミック物品を不動態化できる。必要に応じる第2工程において、第2の反応成分を含む第2の液体は、第1の液体からの第1の反応成分の凝縮後にセラミック物品を通って循環されてもよい。第2の反応成分は、第1の反応成分と反応するように選択され、フィルタのマイクロクラックを保護するポリマーを形成してもよい。
【0031】
実施の形態において、不動態化剤は、凝縮中またはその後に重合を受ける成分を含んでもよい。実施例は、ウレタン、エポキシ、ユリアホルムアルデヒド、ビニル、アルコキシシラン、オキセタン、アジリジン、フェノール類、ビニルエーテル、ビニルエステル、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、スチリル、アリル、ビニルアミド、ビニルアミン、マレイミド、マレアート、イタコネート(itaconates)、クロトン酸、無水物、および同様のモノマー、またはそれらの組合せのポリマーおよびコポリマーを含む。別のまたは追加のポリマータイプおよび化学物質は、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテル、カルボジイミド、または同様のポリマー、およびそれらの組合せを含んでもよい。実施の形態において、不動態化剤は、例えば、アルキレングリコールジアミンおよびアルキレングリコールジグリシジルエーテルのような、有機ジアミンおよび有機エーテルから形成されるエポキシポリマーを含んでもよい。
【0032】
実施の形態において、重合性または架橋性成分のような不動態化剤は、熱または放射感受性重合開始剤を使用してもよい。重合開始剤は、反応化合物がセラミック物品上に凝縮した後に反応化合物に輸送されてもよい。あるいは、重合開始剤は、反応化合物の前に、または反応化合物と同時に、凝縮されてもよく、または重合開始剤および反応化合物を一緒に混合しその後物品上に凝縮してもよい。
【0033】
図1は、実施の形態において、第1の反応成分を含む第1の液体および第2の反応成分を含む第2の液体でセラミック未焼成体を不動態化するのに有用な装置を示す。第1および第2の反応成分は、反応して不動態化剤を形成できる。装置1は、ポンプ3および噴霧器またはエアゾール器(aerosolizer)4を含むミスト生成器、循環器5、およびホルダ10を含む。ホルダ10は、チャンバを含んでもよい。ホルダは、例えば収容することによりセラミック未焼成体11を固定する。ポンプ3は、第1の反応成分を含む第1の液体を、噴霧器4のようなエアゾール器にポンプで通し、ミストのようなエアゾールを形成する。エアゾールは、第1の反応成分およびキャリヤ液体を含んでもよい。あるいは、エアゾールは、反応成分がそのままエアゾールに形成できる場合、第1の反応成分から実質的に成ってもよい。循環器5は、ファンを含んでもよく、エアゾールをホルダ10に向けセラミック未焼成体11に通るように移動させる。
【0034】
エアゾール器またはミスト生成器は、必要に応じてネブライザー6を含んでもよい。噴霧器4により生成されるミストは、一定範囲の粒子サイズを含んでもよい。ネブライザー6は、小さい噴霧粒子サイズがくっつきより大きい噴霧粒子サイズが凝縮し得る遠回りの経路8を定める。遠回りの経路8は、複数のステージを含んでもよい。結合および凝縮の処理により、より均一な粒子サイズのミストが生じる。ミスト生成器はまた、ホモジナイザー7を含んでもよい。ホモジナイザー7は、ミストがホルダ10に入る前に、ミストを栓流(plug flow)配置に並べる。栓流とは、主要部内で剪断しない一単位としての材料の移動を称する。ミストの栓は、セラミック未焼成体11の中央および周囲を均一に通って移動する。所望であれば、セラミック未焼成体11の入口および出口端は、必要に応じて回転され液体の均一な凝縮を確実にできる。これは、大きいセラミック未焼成体で特に有用である。回転は、セラミック未焼成体を反転させホルダに上下逆に再び差し込むことにより行ってもよい。
【0035】
ホルダ10は、例えば、ホルダをミストの受取りのために調整する少なくとも1つの可動シャッター12により、ミスト生成器から分離してもよい。調整は、例えば、ホルダ10から酸素のような潜在的な危険なまたは爆発性の物質を除去する、排気または不活性ガスパージを含んでもよい。シャッター12は、ミストがホルダ中に入るように開けてもよい。ホモジナイザー7が使用される場合、ホルダが調整されホモジナイザーがミストの位置を合わせる際にシャッターが開けられてもよい。循環器5は、ミストをセラミック未焼成体11に通過させる。シャッター12は、例えば、十分な量のミストがセラミック未焼成体11上に凝縮する際に閉じられてもよい。
【0036】
必要に応じて、装置1はリサイクラー(recycler)を含んでもよい。リサイクラーは、ミストリサイクラー21および/またはドレーン22を含んでもよい。ミストリサイクラー21は、セラミック未焼成体11を通過したミストを再利用できる。ミストリサイクラー21は、ホルダ10と液体連絡できるフードマニフォールド(hood manifold)24を含む。フードマニフォールド24は、ホルダ10を出るミストを集める。ホルダ10は、ミストがホルダ10を通過して移動しない場合にホルダ10をミストリサイクラー21から分離する第2の可動シャッター13を含んでもよい。ミストリサイクラー21は、未使用のミストをホルダ10の前の位置に方向付ける。好ましくは、位置は噴霧器4の出口である。ドレーン22は、処理中にミストから凝縮した液体を再利用できる。ドレーン22は、液体を貯蔵タンク23に汲み上げる、または必要に応じてポンプ3に直接戻す。
【0037】
第1の反応成分を含む第1のミストがセラミック未焼成体上で十分に凝縮した後、装置を使用して第2の反応成分を含む第2の液体でセラミック未焼成体を被覆してもよい。反応成分を含む第2の液体を噴霧し第2のミストを形成できる。第2のミストは、第2の反応成分およびキャリヤ液体を含んでもよい。あるいは、反応成分がそのままミストに形成できる場合、第2のミストは第2の反応成分から実質的に成ってもよい。第2のミストは、第1の反応成分について使用した方法によりセラミック未焼成体上に堆積してもよい。反応成分が装置中で固体またはゲルを形成するのを防ぐために、装置は必要に応じて、第2の反応成分を入れる前に洗浄してもよい。あるいは、第2の装置を使用して第2の反応成分を入れてもよい。
【0038】
有利には、本開示は、第2の成分を有するまたは有しない、すなわち、液体はキャリヤ気体または液体を有しない反応化合物から実質的に成る、反応化合物および重合開始剤の使用を提供する。例えば、エポキシ樹脂は通常、アミン化合物と反応させてポリマーを形成してもよい。ベンジルアルコールを使用して、反応速度を増加してもよい。本開示の方法は、ベンジルアルコールの追加を可能とし、硬化時間は、例えば24時間以上から約3時間未満に減少できる。100℃において、ベンジルアルコールは、反応時間を約3倍、例えば約45分間から約15分間に減少できる。実施の形態において、本発明の方法は、成分を混合する必要がなく、そのままの材料による不動態化が可能となる。原材料を購入しまたはそのまま提供し、直接使用してもよい。
【実施例】
【0039】
実施例1
第1の2インチ(5.08cm)×6インチ(12.7cm)チタン酸アルミニウムフィルタ(フィルタA)を、2 1/8インチ(5.397cm)直径のポリメチルメタクリレート(PMMA)パイプ中に配置した。フィルタにゴムガスケットをはめ込み、管中に導入された蒸気をフィルタに通過させた。霧生成器(American DJからのMiniFog Portable Fog Machine)をPMMAパイプにつないだ。霧生成器に、81重量%トリエチレングリコールジアミン、9重量%ベンジルアルコール、および10重量%水から成るアミン溶液を満たした。アミン溶液は、標準2部エポキシ組成物の第1の部分を構成した。霧生成器は、アミン溶液の霧を生成し、霧はフィルタまでPMMA管を通過した。やがて、所望の重量のアミン溶液がフィルタ上に凝縮した。
【0040】
第2の霧生成器をエポキシ溶液で満たした。溶液は、90重量%エチレングリコールジグリシジルエーテル(CVC Specialty Chemicals, Inc.からのErisys EGDGE)、および10重量%水から成った。エポキシ溶液は、標準2部エポキシ組成物の第2の部分を構成した。エポキシ溶液の霧を、アミン溶液と同様にフィルタ上に凝縮させた。フィルタを、100℃の強制オーブンに2時間配置し、エポキシポリマー産物を硬化および乾燥させた。
【0041】
第2のフィルタ(フィルタB)および第3のフィルタ(フィルタC)を提供した。どちらも、本開示の方法による処理前の第1のフィルタと同一であった。フィルタBはエポキシで不動態化されなかった。フィルタCは、従来の浸漬およびブローアウト方法を使用して不動態化した。フィルタBおよびCを100℃において強制オーブン中で2時間乾燥させた。3つのフィルタの重さを計り、アルミナ懸濁液でウォッシュコートし、乾燥し、550℃にか焼した。各フィルタについてCTEを測定した。
【0042】
許容可能なバルクCTEは、15×10−7/℃未満である。不動態化しないフィルタBは、39.0×10−7/℃のCTEを有した。フィルタCは9.4×10−7/℃のCTEを有し、約2重量%エポキシをフィルタ中に組み込んだ。フィルタAは、フィルタCよりも低いCTEを有し、必要とするエポキシはより少なかった。
【0043】
実施例2
PMMAパイプ、ガスケット、およびフィルタを実施例1に従ってセットした。2−メチル−1,5−ジアミノペンタン(アミン)そのままおよび1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル(エポキシ)そのままを提供した。60psi(約414kPa)噴霧器を使用して、アミンのミストを生成した;しかしながら、成分の噴霧の任意の方法が適切である。これらには、例えば、加熱、真空、高剪断、高圧力、振動、超音波、昇華、極端に細かい粉末の吹き分け(blowing)等が含まれる。アミンミストを、多孔性セラミックフィルタに塗布した。次に、エポキシミストを同じフィルタに塗布した。不動態化されたフィルタを、100℃で2時間硬化した。フィルタのバルクCTEは10×10−7/℃未満であった。
【0044】
本開示の多くの修正および改変が可能である。本開示は特定の好ましい実施の形態を説明してきたが、本発明への異なる改変、修正、および追加が当業者に明らかであろう。全てのそのような修正、改変、および追加は、添付の請求項によってのみ制限される本特許の範囲内に含まれることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロクラックを有する多孔性セラミック物品を不動態化する方法であって、前記多孔性セラミック物品および不動態化剤を含む液体を接触させ、該不動態化剤の少なくとも一部を前記多孔性セラミック物品上に堆積する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
さらに、前記不動態化剤の少なくとも一部が前記多孔性セラミック物品上に堆積された後に、前記液体を前記多孔性セラミック物品に通して循環させる工程を含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
さらに、前記接触された多孔性セラミック物品にウォッシュコートを塗布し、該ウォッシュコートされた多孔性セラミック物品を加熱して前記不動態化剤を揮発させる各工程を含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
多孔性セラミック物品を不動態化する装置であって、
前記多孔性セラミック物品を保持するホルダ;および
反応成分を含む液体の懸濁液を生成するためのエアゾール器であって、前記ホルダに前記懸濁液を運ぶエアゾール器、
を含むことを特徴とする装置。
【請求項5】
前記エアゾール器が、ネブライザーおよびホモジナイザーを含むことを特徴とする請求項4記載の装置。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2011−505240(P2011−505240A)
【公表日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−535960(P2010−535960)
【出願日】平成20年11月19日(2008.11.19)
【国際出願番号】PCT/US2008/012925
【国際公開番号】WO2009/070229
【国際公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】