説明

多孔性微粒子および使用方法

【課題】生理活性剤を患者の気道へ送達するため操作された粒子を提供すること。
【解決手段】この粒子は、乾燥粉末の形態または非水性連続相を含む安定した分散形態で使用され得る。特に好ましい実施態様では、この粒子は、乾燥粉末吸入器、定用量吸入器または噴霧器のような吸入デバイスとともに使用され得る。本発明はまた、肺送達のための医薬の製造における生理活性剤の使用であって、該医薬は、該生理活性剤を含むエアロゾル化医薬を提供するための吸入デバイスを使用してエアロゾル化された複数の多孔性微細構造を含み、該エアロゾル化医薬は、少なくとも該エアロゾル化医薬を必要とする患者の鼻または肺の気道の一部分への投与形態である、使用を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は活性剤を含む多孔性微細構造物の生成のための処方物および方法に関する。特に好ましい実施態様では、この活性剤は生理活性剤を含む。多孔性微細構造物は、好ましくは、肺経路または経鼻経路を経る局所投与および全身投与の両方のために定用量吸入器、乾燥粉末吸入器または噴霧器と組み合わせて使用される。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
標的化薬物送達手段は、薬学的化合物の毒性またはバイオアベイラビリティーが問題となる場合に特に所望される。作用部位において化合物を効果的に沈着させる特定の薬物送達方法および化合物は、毒性の副作用の最小化、要求投薬量の低減および治療コストの削減に潜在的に貢献する。この点については、肺への薬物送達のためのこのようなシステムの開発は、永く製薬産業の目的となっている。
【0003】
肺気道への局所的な薬物送達のために現在使用される3つの最も一般的なシステムは、乾燥粉末吸入器(DPI)、定用量吸入器(MDI)および噴霧器である。MDIは最もポピュラーな吸入投与の方法であり、可溶化形態または分散物として医薬を送達するために使用され得る。代表的には、MDIは、エアロゾル化した医薬をデバイスの活性化における呼吸器経路に処すFreon(フロン)または他の比較的に高い蒸気圧の発泡剤を含む。MDIとは異なり、DPIは、一般に乾燥粉末形態の医薬を肺へ導入するために、患者の吸息の努力に完全に依存する。最終的には、噴霧器は液体溶液にエネルギーを供給することにより吸入される医薬のエアロゾルを形成する。つい最近、液体の換気またはフルオロケミカル媒体を使用する肺洗浄の間の薬物の肺送達もまた調査されている。これらの方法および関連するシステムのそれぞれは、選択された状況において有効であると証明され得るが、固有の欠点(処方の限界を含む)が、それらの使用を制限し得る。
【0004】
MDIは、その製造において使用される推進系の推進力に依存する。伝統的には、この推進系は、所望される蒸気圧および懸濁安定性を提供するために選択されるクロロフルオロカーボン(CFC)の混合物からなっていた。現在、フレオン11、フレオン12およびフレオン114のようなCFCが、吸入投与のためのエアロゾル処方物において最も広範に使用される発泡剤である。このようなシステムが可溶化薬物を送達するために使用される一方で、選択された生理活性剤が、分散物を提供するために微細粒子の形態で代表的には取り込まれる。このようなシステムにおける凝集の問題を最小化または阻止するために、界面活性剤がしばしば生理活性剤の表面をコートするためにしばしば使用され、そして粒子のエアロゾル噴霧での湿潤を補助するために使用される。実質的に均一である分散を維持するための、この方法における界面活性剤の使用は、懸濁物を「安定させる」といわれる。
【0005】
残念ながら、伝統的なクロロフルオロカーボン発泡剤は、成層圏のオゾンを枯渇すると現在考えられ、そしてその結果として段階的に廃止されつつある。次いでこれは、いわゆる環境に良好な発泡剤を使用する肺薬物送達のエアロゾル処方物の開発を促してきた。CFCと比較してオゾン枯渇能力が僅かであると考えられる発泡剤のクラスは、過フルオロ化合物(PFC)およびヒドロフルオロアルカン(HFA)である。これらのクラスにおける選択された化合物が生体適合性発泡剤として有効に機能し得る一方で、CFCにおける薬物懸濁物を安定化させるのに有効であった多くの界面活性剤は、これらの新規の発泡剤のシステムにおいてはもはや有効ではない。HFA中の界面活性剤の可溶性が低下するにつれ、薬物粒子とHFAとの間の界面に対する界面活性剤の拡散が非常に遅くなり、医薬粒子の貧弱な湿潤と懸濁安定性の損失を引き起す。HFA発泡剤における界面活性剤についてのこの減少した溶解性は、任意の取り込まれた生理活性剤についての効力を減少させるようである。
【0006】
より一般的には、液体フルオロケミカル(HFAを含む)中の薬物懸濁物は、使用前の再分散を通常は必要とする不均質な系を含む。なお、患者のコンプライアンスのような因子のために、薬学的化合物の比較的均質な分散を得ることは、いつも容易または成功するわけではない。さらに、微小化された粒子を含む先行技術の処方物は、薬物の不適切な送達を生じ得る、粒子を凝集させる傾向があり得る。オストワルド成熟を経る懸濁物の結晶成長はまた、粒子のサイズの不均一性を導き得、そして処方物の保存期限を有意に短くし得る。微小化分散剤を含む従来の分散物の別の問題は粒子が粗いことである。粗さは、凝結、融合、分子の拡散および結合のようないくつかの機構を経て生じ得る。比較的短い時間にわたって、これらのプロセスは、もはや使用不可能であるという点にまで処方物を粗くし得る。それ自体は、MDIまたは液体の換気のためのフルオロケミカル懸濁物が確実に、従来技術の非フルオロカーボン送達ビヒクルを確実に超える実質的な改良である一方で、この薬物懸濁物を改良して、所望される部位においてより効率的かつ正確な投薬もまた提供する改良された安定性を有する処方物を可能とし得る。
【0007】
同様に、DPIにおいての使用のための従来の粉末調整物は、長期にわたる正確で再現性のある投薬をしばしば提供しない。この観点において、当業者は、従来の(例えば、微粒子化された)粉末が、細密な粉末間の疎水性または静電気的な相互作用に起因して凝集する傾向があることを理解する。経時的な粒子のサイズのこれらの変化および凝集力の増加は、デバイスの作動において所望されない肺分配プロフィールを与える傾向がある。より詳細には、細密粒子の凝集はその粉末の空気力学的特性を混乱させ、その結果、最も効果的な場合においては多量のエアロゾル化医薬の肺の気道深部への到達を阻止する。
【0008】
凝集力の所望ではない増加を克服するために、先行技術の処方物は代表的には、細密な薬物粒子の凝集を阻止するラクトースを含む大きなキャリア粒子を使用してきた。このようなキャリア系は、少なくとも幾つかの薬物粒子がラクトース表面に緩く結合し、そして吸入において開放することを可能にさせる。しかし、実質的な量の薬物は、大きなラクトース粒子からの開放をせず、そして喉で沈着される。それ自体、これらのキャリア系は、DPIの作動によって提供される細密粒子の比について比較的に非効率的である。粒子を凝集に対する別の溶液は、WO98/31346において提唱されており、ここで、比較的大きな幾何学的な直径(すなわち、好ましくは10μmよりも大きい)が粒子相互作用の量を減少させるために使用され、その結果粉末の流動性を保持する。先行技術のキャリア系では、大型粒子の使用は、流出性および微粒子比の改善をもたらすことが報告されている粉末調製物の全体の表面積を明らかに減少させる。残念なことに、比較的大型の粒子の使用は、標準的なDPIにおいて使用される場合に用量の制限を生じ得、そして潜在的に長期間の溶解時間に起因して最適ではない投薬を提供し得る。それ自体、凝集に抵抗し、そして得られた粉末の流動性および分散性を保持する標準的なサイズの粒子の必要性がなおも残されている。
【0009】
従って、本発明の目的は、比較的に高い微細粒子比を有する粉末の鼻および肺への投与を有利に可能にさせる方法および調製物を提供することである。
【0010】
本発明のさらなる目的は、エアロゾル化および安定した調製物を必要とする患者の肺気道へのその後の投与に適切な安定化調製物を提供することである。
【0011】
本発明のなお別の目的は、安定した分散物を提供するために使用され得る粉末を提供することである。
【0012】
本発明のなおもさらなる目的は、乾燥粉末吸入器の使用について適合する比較的低い凝集力を示す粉末を提供することである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
(発明の要旨)
これらおよび他の目的が、本明細書において開示されそして請求される発明により提供される。これを成し遂げるために、本発明の方法および関連する組成物が、広範な局面において、所望される部位への生理活性剤の改良された送達を提供する。より詳細には、本発明は多孔性微細構造粉末を使用する選択された生理学的標的部位への生理活性剤の送達を提供する。好ましい実施態様においては、この生理活性剤は、生理活性剤を必要とする患者の肺気道の少なくとも一部分への投与のための形態である。これを成し遂げるために、本発明は、多孔性微細構造物の形成および使用ならびにこのような粉末を含む送達系、ならびにそれら個々の成分を提供する。開示される粉末は、安定した分散物を提供するために選択された懸濁媒体でさらに分散され得る。薬物送達のための先行技術の粉末または分散物とは異なり、本発明は、粒子間の引力を低減させるために新規の技術を好ましくは使用する。それ自体、開示される粉末は改善された流動性および分散性を示すが、開示される分散物は凝結、沈降または発泡による減少した分解を示す。さらに、本発明の安定した調製物は、取り込まれた生理活性剤についての分解速度を低減させるようにさらに作用する懸濁媒体(例えば、フルオロケミカル)を好ましくは含む。従って、本発明の分散物または粉末は、効果的な薬物送達を提供するために、定用量吸入器、乾燥粉末吸入器、噴霧器または液体用量注入(LDI)技術とともに使用され得る。
【0014】
特に好ましい実施態様については、中空および/または多孔性微細構造物は、ファンデルワールス力のような分子間力を実質的に減少させ、先行技術の粉末化調製物および分散物を凌ぐ。この点においては、粉末化組成物は、吸入療法について所望される特徴を提供しながらその調製物の流動性に寄与する比較的小さなかさ密度を代表的には有する。より詳細には、比較的小さなかさ密度の多孔性(すなわち多孔性(Cporous))微細構造物または微粒子は比較粒子間の引力を有意に減少させ、その結果せん断力を減少させ、そして得られた粉末の流動性を増加させる。この比較的に低密度の多孔性微細構造はまた、吸入療法で使用される場合において優れた空気力学的特性を提供する。分散物において使用される場合では、この粉末の物理学的特性は、安定した調製物の形成を提供する。さらに、本明細書の教示に従う分散成分の選択によって、粒子間引力は、増強された安定性を有する処方物を提供するためにさらに減少され得る。
【0015】
従って、本発明の好ましい実施態様は、約0.5g/cm3未満のかさ密度を有する複数の多孔性微細構造物を含む、増加された分散能力を有する粉末を提供し、この多孔性微細構造粉末は活性剤を含む。
【0016】
多孔性微細構造に関しては、当業者は、これらが所望される物理的特徴または形態を提供する任意の生体適合性物質を形成し得ることを認識する。この点については、多孔性微細構造は好ましくは、表面相互作用を最小化し、そしてせん断力を減少させることにより引力を減少させるように作用する細孔、空隙、欠損または他の際間の空間を含む。さらに、これらの制約を考慮すると、任意の物質または形状が、微細構造マトリクスを形成するために使用され得ることが認識される。選択される物質については、この微細構造は、少なくとも1つの界面活性剤を組み込むことが所望される。好ましくは、この界面活性剤は、リン脂質または肺に使用するために改良された他の界面活性剤を含む。同様に、この微細構造物は、生理活性剤であり得る少なくとも1つの活性剤を組み込むことが好ましい。立体配置については、本発明の特に好ましい形状は、大きな内部空隙を規定する比較的薄い多孔壁を有する噴霧乾燥化中空微粒子を組み込むが、他の空隙含有または多孔性構造もまた意図される。好ましい実施態様では、この多孔性微細構造は生理活性剤をさらに含む、
従って、本発明は肺送達のための医薬の製造において生理活性剤の使用を提供し、それによりこの医薬は上記の生理活性剤を含むエアロゾル化医薬を提供するために吸入デバイスを使用してエアロゾル化された複数の多孔性微細構造を含み、ここでこのエアロゾル化医薬は、これを必要とする患者の鼻または肺気道の少なくとも一部に投与される。
【0017】
選択された実施態様では、本発明は改良された分散性を示す多孔性微細構造物を形成するための方法を提供することがさらに認識される。この点については、開示された多孔性微細構造物はファンデルワールス力のような分子間引力を低減し、これは先行技術である粉末調製物より優れる。つまり、比較的高密度である固体粒子または非多孔性粒子(例えば、微粒子化された)を含む先行技術の調製物とは異なり、本発明の粉末化組成物は低いせん断力に起因する増加した流出能力および分散能力を示す。部分的に、凝集力におけるこの減少は、所望される粉末を提供するために使用される新規の生成方法の結果である。
【0018】
現実には、本発明の好ましい実施態様は、以下の工程を含む多孔性微細構造物を形成するための方法を提供する:
活性剤を含む液状供給ストックを提供する工程;
上記の液状供給ストックを微粒子化して分散化液滴を生成する工程;
上記の液状供給ストックを乾燥させて予め決定された条件下で上記の活性剤を含む多孔性微細構造物を形成する工程;および
上記の多孔性微細構造物を収集する工程。
【0019】
多孔性微細構造の形成については、好ましい実施態様において、この粒子は入手可能な装置を使用して噴霧乾燥化されることが認識される。この点については、供給ストックは、好ましくはフッ化化合物および非フッ化油から選択され得る発泡剤を含む。好ましくは、このフッ化化合物は約60℃より高い沸点を有する。本発明の状況内において、フッ化発泡剤は、得られた粉末の分散性をさらに増加させるため、またはその粉末を組み込む分散物の安定性をさらに改良するために多孔性微細構造物中で維持され得る。さらに、非フッ化油は、供給ストック中で選択された生理活性剤(例えば、ステロイド)の安定性を増加させるために使用され得、多孔性微細構造物中の生理活性剤の濃度の上昇を生じる。
【0020】
上記で議論されたように、多孔性微細構造粉末の分散性は、多孔性微細構造物の成分間のファンデルワールス引力を低減または最小化することにより増加され得る。この点については、本発明は、以下の工程を含む粉末の分散性を増加させるための方法をさらに提供する:
活性剤を含む液状供給ストックを提供する工程;および
上記の液状供給ストックを噴霧乾燥化させて約0.5g/cm3未満の容積密度を有する多孔性微細構造粉末を生成する工程であって、この粉末は同様の組成の比較的非多孔性である粉末と比較した場合に低減されたファンデルワールス力を示す、工程。特に好ましい実施態様では、この多孔性微細構造物は、中空の多孔性微粒子を含む。
【0021】
発泡剤は、超音波処理、機械的混合または高圧ホモジナイゼーションのような、均質である分散物を生成するための当該分野で公知の技術を使用してキャリア内において分散され得る。供給溶液中の発泡剤の分散のために意図される他の方法は、二重噴霧技術について記載されるような微粒子化に先行する2つの液体の同時混合を含む。当然だが、噴霧器は、粒子サイズのような所望される粒子の特徴を最適化するために改変され得ることが理解される。特定のクラスでは、二重液体ノズルが使用され得る。別の実施態様では、発泡剤は、この薬剤を窒素ガスまたは二酸化炭素ガスの場合での高圧下で溶液中に導入することにより分散され得る。
【0022】
多孔性微細構造粉末または安定化分散物の送達については、本発明の別の局面は1以上の生理活性剤を患者に投与するための吸入システムに関する。現実には、本発明は生理活性剤の患者への肺投与のための以下を含むシステムを提供する:
リザーバを含む吸入デバイス;および
上記のリザーバ中の粉末、ここで、この粉末は約0.5g/cm3未満のかさ密度を有する複数の多孔性微細構造を含み、この多孔性微細構造粉末は生理活性剤を含み、それによって、上記の吸入デバイスは、その生理活性剤を必要とする患者の肺気道の少なくとも一部分に上記の粉末をエアロゾル化投与を提供する。上記に暗示されるように、吸入デバイスは、アトマイザー、噴霧器(sprayer)、乾燥粉末吸入器、定用量吸入器または噴霧器(nebulizer)を含み得る。さらに、リザーバは単位用量容器または 大容量リザーバであり得る。
【0023】
他の実施態様では、多孔性微細構造粉末は、選択された薬剤の送達のための安定化分散物を提供するための適切な懸濁媒体中で分散され得る。このような分散物は、用量表示吸入器および噴霧器において特に有用である。この点については、特に好ましい懸濁媒体は、室温で液体であるフルオロケミカル(例えば、過フルオロカーボンまたはフルオロカーボン)を含む。上記で議論したように、多くのフルオロケミカルが、肺における安全性および生体適合性の証明された記録を有することが良好に確立されている。さらに、水溶液とは対照的に、フルオロケミカルはガス交換にネガティブには影響しない。さらに、これらに独特な湿潤性の特徴のおかげで、フルオロケミカルは肺内部のより奥深への粒子の分散を提供し得、その結果、全身送達を改良する。最終的には、多くのフルオロケミカルはまた静菌性であり、それにより適合した調製物中の微生物増殖の可能性を減小させる。
【0024】
乾燥粉末または安定化分散物の形態のいずれで投与されようと、本発明は生理活性剤の効果的な送達を提供する。本明細書において使用される用語「生理活性剤」とは、患者における障害の存在もしくは非存在を診断するための方法、および/または患者における障害を処置するための方法のような、通常において治療的または診断的な適用と関連して使用される物質をいう。適合可能な生理活性剤については、当業者は、任意の治療用薬剤または診断用薬剤が本発明の安定化分散物中に組み込まれ得ることを認識する。例えば、生理活性剤は、抗アレルギー剤、気管支拡張剤、気管支収縮剤、肺性肺界面活性物質、鎮痛剤、抗生物質、ロイコトリエンインヒビターまたはアンタゴニスト、抗コリン作用剤、マスト細胞インヒビター、抗ヒスタミン剤、抗炎症剤、抗腫瘍剤、麻酔薬、抗結核剤、画像化剤、心血管剤、酵素、ステロイド、遺伝物質、ウイルスベクター、アンチセンス剤、タンパク質、ペプチドおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される。好ましい実施態様では、生理活性剤は、全身(すなわち、患者の全身循環に対して)投与されるべきである化合物(例えば、ペプチド、タンパク質またはポリヌクレオチドを含む)を含む。より詳細に以下で開示されるように、この生理活性剤は多孔性微細構造物に組み込まれ、混和され、コートされ、または他の方法で結合され得る。
【0025】
従って、本発明は以下の工程を含む1以上の生理活性剤の肺送達についての方法を提供する:
約0.5g/cm3未満のかさ密度を有する複数の多孔性微細構造物を含む粉末を提供する工程であって、ここで上記の多孔性微細構造粉末は生理活性剤を含む、工程;
上記の多孔性微細構造粉末をエアロゾル化してエアロゾル化医薬を提供する工程;および
治療有効量の上記のエアロゾル化医薬を、それを必要とする患者の鼻または肺気道の少なくとも一部分に投与する工程。
【0026】
本明細書で使用される用語「エアロゾル化」は、状況の制限により他の方法で言及されない限り、微細な固体または液体粒子のガス状懸濁物を意味するとされる。つまり、エアロゾルまたはエアロゾル化医薬が、例えば、乾燥粉末吸入器、定用量吸入器またはアトマイザーまたは噴霧器により生成され得る。
【0027】
開示された粉末について、選択された活性剤または生物活性剤は、もしくは活性剤が、多孔性微細構造物の唯一の構造成分として使用され得る。逆に、多孔性微細構造物は、取り込まれた生物活性剤に加えて、1つ以上の成分(すなわち、構造物質、界面活性剤、賦形剤など)を含み得る。特に好ましい実施態様において、懸濁された粒子または多孔性微細構造物は、取り込まれた生物活性剤とともに、比較的高濃度(約10重量%以上)の界面活性剤を含む。最後に、粒子または多孔性微細構造は、非結合性の様式で、生物活性剤でコートされ得るか、それと連結されるか、または他の様式で結合され得ることが理解されるべきである。どのような構造が選択されたとしても、結合された生物活性剤は、天然の形態で、または当該分野において公知の1つ以上の塩として使用され得る。
【0028】
本発明の粉末または安定化分散剤が生理活性剤の肺投与について特に適切である一方で、これらはまた、体の任意の位置への化合物の局所的または全身的投与について使用され得る。従って、好ましい実施態様において、この処方物は、胃腸管、気道、局所的に、筋肉内に、腹腔内に、鼻内に、膣内に、直腸内に、耳内に、経口的にまたは眼球内を含むがこれらに限定されない多くの異なる経路を使用して投与され得る。
【0029】
本発明の他の目的、特徴、および利点は、その好ましい例示的な実施態様の以下の詳細な説明の考慮から明らかである。
【0030】
例えば、本発明は以下を提供する:
(項目1) 肺送達のための医薬の製造における生理活性剤の使用であって、該医薬は、該生理活性剤を含むエアロゾル化医薬を提供するための吸入デバイスを使用してエアロゾル化された複数の多孔性微細構造を含み、該エアロゾル化医薬は、少なくとも該エアロゾル化医薬を必要とする患者の鼻または肺の気道の一部分への投与形態である、使用。
(項目2) 前記吸入デバイスが定用量吸入器、乾燥粉末吸入器または噴霧器を含む、項目1に記載の使用。
(項目3) 前記多孔性微細構造が乾燥粉末形態である、項目1に記載の使用。
(項目4) 前記多孔性微細構造が非水性懸濁媒体中に分散される、項目1に記載の使用。
(項目5) 前記多孔性微細構造が界面活性剤を含む、項目1から4のいずれか1項に記載の使用。
(項目6) 前記界面活性剤が、リン脂質、非イオン性界面活性剤、非イオン性ブロックコポリマー、イオン性界面活性剤、生体適合性フッ化界面活性剤およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目5に記載の使用。
(項目7) 前記界面活性剤がリン脂質である、項目5または6に記載の使用。
(項目8) 前記リン脂質が、ジラウロイルホスファチジルコリン、ジオレイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステロイルホスファチジルコリン、ジベヘノイルホスファチジルコリン、ジアラキドイルホスファチジルコリンおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目7に記載の使用。
(項目9) 前記多孔性微細構造の平均の空気力学的直径が0.5μm〜5μmの間である、項目1から8のいずれか1項に記載の使用。
(項目10) 前記多孔性微細構造が約0.5g/cm3未満のかさ密度を有する、項目1から9のいずれか1項に記載の使用。
(項目11) 前記多孔性微細構造が約5μm未満の平均幾何学的直径を有する、項目1から10のいずれか1項に記載の使用。
(項目12) 前記生理活性剤が、抗アレルギー剤、気管支拡張剤、肺性肺界面活性物質、鎮痛剤、抗生物質、ロイコトリエンインヒビターまたはアンタゴニスト、抗ヒスタミン剤、抗炎症剤、抗腫瘍剤、抗コリン作用剤、麻酔薬、抗結核剤、画像用薬剤、心血管剤、酵素、ステロイド、遺伝物質、ウイルスベクター、アンチセンス剤、タンパク質、ペプチドおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目1から11のいずれか1項に記載の使用。
(項目13) 多孔性微細構造を形成する方法であって、以下の工程:
活性剤を含む液状供給ストックを提供する工程;
該液体供給ストックを微粒子化して分散型の液体小滴を生成する工程;
予め決定された条件下で該液体小滴を乾燥させて該活性剤を含む多孔性微細構造を形成する工程;および
該多孔性微細構造を収集する工程、
を含む、方法。
(項目14) 前記供給ストックが発泡剤を含む、項目13に記載の方法。
(項目15) 前記発泡剤が非フッ化油を含む、項目14に記載の方法。
(項目16) 前記発泡剤がフッ化化合物を含む、項目14に記載の方法。
(項目17) 前記フッ化発泡剤が約60℃よりも高い沸点を有する、項目16に記載の方法。
(項目18) 前記供給ストックがコロイド系を含む、項目13から17のいずれか1項に記載の方法。
(項目19) 前記供給ストックが界面活性剤を含む、項目13から18のいずれか1項に記載の方法。
(項目20) 前記界面活性剤が、リン脂質、非イオン性界面活性剤、非イオン性ブロックコポリマー、イオン性界面活性剤、生体適合性フッ化界面活性剤およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目19に記載の方法。
(項目21) 前記界面活性剤がリン脂質である、項目19または20に記載の方法。
(項目22) 前記リン脂質が、ジラウロイルホスファチジルコリン、ジオレイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステロイルホスファチジルコリン、ジベヘノイルホスファチジルコリン、ジアラキドイルホスファチジルコリンおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目21に記載の方法。
(項目23) 前記収集した多孔性微細構造が中空多孔性ミクロスフェアを含む、項目13〜22のいずれか1項に記載の方法。
(項目24) 前記回収した多孔性微細構造の平均の空気力学的直径が0.5μm〜5μmの間である、項目13〜23のいずれか1項に記載の方法。
(項目25) 前記多孔性微細構造が約5μm未満の平均幾何学的直径を有する、項目13〜24のいずれか1項に記載の方法用。
(項目26) 前記活性剤が生理活性剤を含む、項目13〜25のいずれか1項に記載の方法。
(項目27) 前記生理活性剤が、抗アレルギー剤、気管支拡張剤、肺性肺界面活性物質、鎮痛剤、抗生物質、ロイコトリエンインヒビターまたはアンタゴニスト、抗ヒスタミン剤、抗炎症剤、抗腫瘍剤、抗コリン作用剤、麻酔薬、抗結核剤、画像用薬剤、心血管剤、酵素、ステロイド、遺伝物質、ウイルスベクター、アンチセンス剤、タンパク質、ペプチドおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目26に記載の方法。
(項目28) 前記微粒子化工程が噴霧乾燥機を使用して達成される、項目13〜27のいずれか1項に記載の方法。
(項目29) 項目13〜28のいずれか1項に従って形成される多孔性微細構造。
(項目30) 粉末の分散性を増加させる方法であって、以下の工程:
活性剤を含む液状供給ストックを提供する工程;および
該液体供給ストックを噴霧乾燥して、約0.5g/cm3未満のかさ密度を有する多孔性微細構造の粉末を生成する工程であって、該粉末は、同じ組成物の比較的に非多孔性な粉末と比較した場合において減少したファンデアワールス力を示す、工程
を含む、方法。
(項目31) 前記液状供給ストックが発泡剤を含む、項目30に記載の方法。
(項目32) 前記発泡剤が非フッ化油を含む、項目31に記載の方法。
(項目33) 前記発泡剤がフッ化化合物を含む、項目31に記載の方法。
(項目34) 前記フッ化発泡剤が約60℃よりも高い沸点を有する、項目33に記載の方法。
(項目35) 前記供給ストックが界面活性剤を含む項目30〜34に記載の方法。
(項目36) 前記界面活性剤が、リン脂質、非イオン性界面活性剤、非イオン性ブロックコポリマー、イオン性界面活性剤、生体適合性フッ化界面活性剤およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目35に記載の方法。
(項目37) 前記界面活性剤がリン脂質である、項目35または36に記載の方法。。
(項目38) 前記リン脂質が、ジラウロイルホスファチジルコリン、ジオレイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステロイルホスファチジルコリン、ジベヘノイルホスファチジルコリン、ジアラキドイルホスファチジルコリンおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目37に記載の使用。
(項目39) 前記多孔性微細構造が中空多孔性ミクロスフェアを含む、項目30〜38のいずれか1項に記載の方法。
(項目40) 前記活性剤が生理活性剤を含む、項目30〜39のいずれか1項に記載の方法。
(項目41) 前記生理活性剤が、抗アレルギー剤、気管支拡張剤、肺性肺界面活性物質、鎮痛剤、抗生物質、ロイコトリエンインヒビターまたはアンタゴニスト、抗ヒスタミン剤、抗炎症剤、抗腫瘍剤、抗コリン作用剤、麻酔薬、抗結核剤、画像用薬剤、心血管剤、酵素、ステロイド、遺伝物質、ウイルスベクター、アンチセンス剤、タンパク質、ペプチドおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目40に記載の使用。
(項目42) 項目30〜41のいずれか1項に従って形成される多孔性微細構造粉末。
(項目43) 約0.5g/cm3未満のかさ密度を有する複数の多孔性微細構造を含む増加した分散性を有する粉末であって、該多孔性微細構造粉末が活性剤を含む、粉末。
(項目44) 前記粉末が中空多孔性ミクロスフェアを含む、項目43に記載の粉末。
(項目45) 前記多孔性微細構造の平均の空気力学的直径が0.5μm〜5μmの間である、項目43または44に記載の粉末。
(項目46) 前記多孔性微細構造が約5μm未満の平均幾何学的直径を有する、項目43〜45のいずれか1項に記載の粉末。
(項目47) 前記多孔性微細構造が界面活性剤を含む、請求孔43〜46のいずれか1項に記載の粉末。
(項目48) 前記界面活性剤が、リン脂質、非イオン性界面活性剤、非イオン性ブロックコポリマー、イオン性界面活性剤、生体適合性フッ化界面活性剤およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目47に記載の粉末。
(項目49) 前記界面活性剤がリン脂質である、項目47または48に記載の粉末。
(項目50) 前記リン脂質が、ジラウロイルホスファチジルコリン、ジオレイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステロイルホスファチジルコリン、ジベヘノイルホスファチジルコリン、ジアラキドイルホスファチジルコリンおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目49に記載の粉末。
(項目51) 前記活性剤が生理活性剤である、項目43〜50のいずれか1項に記載の粉末。
(項目52) 前記生理活性剤が、抗アレルギー剤、気管支拡張剤、肺性肺界面活性物質、鎮痛剤、抗生物質、ロイコトリエンインヒビターまたはアンタゴニスト、抗ヒスタミン剤、抗炎症剤、抗腫瘍剤、抗コリン作用剤、麻酔薬、抗結核剤、画像用薬剤、心血管剤、酵素、ステロイド、遺伝物質、ウイルスベクター、アンチセンス剤、タンパク質、ペプチドおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目51に記載の粉末。
(項目53) 患者への生理活性剤の肺投与のための吸入システムであって、以下:
リザーバを含む吸入デバイス;および
該リザーバ中の粉末であって、該粉末は約0.5g/cm3未満のかさ密度有する複数の多孔性微細構造を含み、該多孔性微細構造の粉末は生理活性剤を含み、それにより該吸入デバイスは、少なくとも該粉末を必要とする患者の鼻または肺の気道の一部分への該粉末のエアロゾル化投与を提供する、吸入システム。
(項目54) 前記吸入デバイスが、乾燥粉末吸入器、定用量表示吸入器または噴霧器を含む、項目53に記載のシステム。
(項目55) 前記多孔性微細構造が非水性懸濁媒体中に分散される、項目53に記載のシステム。
(項目56) 前記非水性懸濁媒体がフッ化化合物を含む、項目55に記載のシステム。
(項目57) 前記多孔性微細構造が界面活性剤を含む、項目54から56のいずれか1項に記載のシステム。
(項目58) 前記界面活性剤が、リン脂質、非イオン性界面活性剤、非イオン性ブロックコポリマー、イオン性界面活性剤、生体適合性フッ化界面活性剤およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目57に記載のシステム。
(項目59) 前記界面活性剤がリン脂質である、項目57または58に記載のシステム。
(項目60) 前記生理活性剤が、抗アレルギー剤、気管支拡張剤、肺性肺界面活性物質、鎮痛剤、抗生物質、ロイコトリエンインヒビターまたはアンタゴニスト、抗ヒスタミン剤、抗炎症剤、抗腫瘍剤、抗コリン作用剤、麻酔薬、抗結核剤、画像用薬剤、心血管剤、酵素、ステロイド、遺伝物質、ウイルスベクター、アンチセンス剤、タンパク質、ペプチドおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目54から59のいずれか1項に記載のシステム。
(項目61) 1以上の生理活性剤を肺へ送達するための方法であって、以下の工程:
約0.5g/cm3未満のかさ密度を有する複数の多孔性微細構造を含む粉末を提供する工程であって、該多孔性微細構造粉末は生理活性剤を含む、工程;
該多孔性微細構造粉末をエアロゾル化してエアロゾル化薬剤を提供する工程;および
該エアロゾル化医薬を必要とする患者の鼻または肺気道の少なくとも1部分に治療有効量の該エアロゾル化薬剤を投与する工程
を含む、方法。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1−1】図1A1〜1F2は、供給される噴霧乾燥におけるフルオロカーボン発泡剤対リン脂質の比(PFC/PC)の変動の関数としての、粒子形態学における変化を示す。走査電子顕微鏡および透過電子顕微鏡を用いて作製された顕微鏡写真は、FCの非存在下、または低いPFC/PC比で、硫酸ゲンタマイシンを含む生じる噴霧乾燥した微細構造物は、特に、中空性でも多孔性でもないことを示す。逆に、高PFC/PC比で、粒子は、多くの孔を含み、そして実質的に薄い壁に関して中空である。
【図1−2】図1A1〜1F2は、供給される噴霧乾燥におけるフルオロカーボン発泡剤対リン脂質の比(PFC/PC)の変動の関数としての、粒子形態学における変化を示す。走査電子顕微鏡および透過電子顕微鏡を用いて作製された顕微鏡写真は、FCの非存在下、または低いPFC/PC比で、硫酸ゲンタマイシンを含む生じる噴霧乾燥した微細構造物は、特に、中空性でも多孔性でもないことを示す。逆に、高PFC/PC比で、粒子は、多くの孔を含み、そして実質的に薄い壁に関して中空である。
【図2】図2は、処方物PFC/PC比または粒子の空隙率の関数としてのペルフルブロン(Perflubron)におけるゲンタマイシン粒子の懸濁安定性を示す。この粒子の空隙率は、PFC/PC比の増加を伴って増加した。最大安定性は3〜5の間のPEC/PC比で観察され、ペルフルブロン懸濁媒体についての好ましい形態を例示する。
【図3】図3は、好ましい中空/多孔性形態を例示するクロモリンナトリウムを含む多孔性微細構造物の走査型電子顕微鏡画像である。
【図4】図4Aは、市販のクロモリンナトリウム処方物(Intal(登録商標)、Rhome−Poulenc−Rorer)と比較して本発明の分散物により提供される経時的に増強された安定性を例示する写真である。この写真において、右側の市販の処方物は迅速に分離し、一方、右側の分散物(本明細書における教示に従って調製された)は延長時間にわたって安定したままだった。図4Bは、市販のクロモリンナトリウム処方物(Intal(登録商標)、Rhome−Poulenc−Rorer)と比較して本発明の分散物により提供される経時的に増強された安定性を例示する写真である。この写真において、右側の市販の処方物は迅速に分離し、一方、右側の分散物(本明細書における教示に従って調製された)は延長時間にわたって安定したままだった。図4Cは、市販のクロモリンナトリウム処方物(Intal(登録商標)、Rhome−Poulenc−Rorer)と比較して本発明の分散物により提供される経時的に増強された安定性を例示する写真である。この写真において、右側の市販の処方物は迅速に分離し、一方、右側の分散物(本明細書における教示に従って調製された)は延長時間にわたって安定したままだった。図4Dは、市販のクロモリンナトリウム処方物(Intal(登録商標)、Rhome−Poulenc−Rorer)と比較して本発明の分散物により提供される経時的に増強された安定性を例示する写真である。この写真において、右側の市販の処方物は迅速に分離し、一方、右側の分散物(本明細書における教示に従って調製された)は延長時間にわたって安定したままだった。
【図5】図5は、HFA−134aにおけるMDIを経て由来されるか、または例示的なDPI由来の同様の中空多孔性のアルブテロール処方物を含むインビトロのAndersenカスケード衝突器の研究の結果を示す。効率的な粒子の送達は、両方のデバイスから観察された。この粒子のMDI送達は、上部気道送達に対応するプレート4において最大化された。粒子のDPI送達は、改良された全身性インビボ送達に対応する衝突器の後期段階で実質的な沈着を生じた。
【発明を実施するための形態】
【0032】
(好ましい実施態様の詳細な説明)
本発明が多くの異なる形態で具体化され得るが、本発明の原理を例示するその特定の例示的な実施態様が本明細書中に開示される。本発明は、例示される特定の実施態様に限定されないことが強調されるべきである。
【0033】
上記で議論されるように、本発明は、好ましい実施態様において、生理活性剤の送達について有利に使用され得る多孔性微細構造物を含む方法、システムおよび組成物を提供する。特に好ましい実施態様では、開示された多孔性微細構造粉末は、乾燥状態(例えば、DPI中であるように)において、または安定化分散物の形態(例えば、MDI、LDIまたは噴霧器の処方物の形態であるように)において、患者の鼻または肺気道へ生理活性剤を送達するために使用され得る。本明細書中で開示される多孔性微細構造は、空隙、孔、欠損、中空、空間、間質性空間、開口部、穴または孔を示すか、規定するかまたは含む構造的マトリクスを含む。この多孔性微細構造物の絶対的な形状(形態に相対するような)、一般には重要ではなく、そして所望の特性を提供する任意の全体的な構成が、本発明の範囲内であるように意図される。従って、好ましい実施態様は、ほぼミクロスフェア形状を含み得る。しかし、崩壊し、変形しまたは破砕された粒子もまた適合性である。この警告では、本発明の特に好ましい実施態様が、噴霧乾燥化された中空、多孔性微粒子を含むことがさらに理解される。任意の場合において、多孔性微細構造の開示された粉末は、懸濁物の安定性の増加、改良された分散能力、優れたサンプリング特徴、キャリア粒子の除去および増強された空気力学的特性を含むがこれらに限定されない幾つかの利点を提供する。
【0034】
当業者は、これらの局面の多くが乾燥粉末吸入の適用についての特定の使用であることを認識する。先行技術の処方物とは異なり、本発明は、乾燥粉末間の吸引引力を減少させるための独自の方法および化合物を提供し、その結果改良された送達効率を生じ得る粒子の凝集を最小化させる。それ自体、この開示された調製物は、高度に流動性であって、効率的にエアロゾル化され、肺または鼻通過において均一に送達され、そして徹底的に透過し得る乾燥粉末を提供する。さらに、本発明の多孔性微細構造物は、投与において驚くほど低量な喉への沈着を生じる。
【0035】
好ましい実施態様では、この多孔性微細構造粉末は、比較的小さなかさ密度を有し、その粉末が当該分野で公知である組成物よりも優れたサンプリング特性を提供することを可能にする。現在、上記で説明したように、多くの市販されている乾燥粉末処方物は、それらの表面上で凝集した微紛化薬物を有する大型のラクトース粒子を含む。これらの先行技術の処方物について、ラクトース粒子は活性剤のキャリアおよびバルクとして作用し得、その結果このデバイスから送達される微細粒子用量を部分的に制御するための手段を提供する。さらに、ラクトース粒子は、投薬形態に重量および容積を付加することにより乾燥粉末を単位用量容器に充填する商業的能力についての手段を提供する。
【0036】
対照的に、本発明は異様に小さなかさ密度を有する粉末処方物を入手し、その結果、乾燥粉末吸入デバイスにおける使用のために商業的に実現可能である最小充填重量を減少する。つまり、DPIについて設計された大半の単位用量容器は、固定された体積または重量測定技術を使用して充填される。先行技術の処方物とは反対に、本発明は粉末を提供し、ここで、活性剤または生理活性剤ならびに開始剤またはバルク剤は、吸入される粒子全体を形成する。本発明に従う組成物は、代表的に0.5g/cm3または0.3g/cm3未満、好ましくは0.1g/cm3未満および最も好ましくは0.05g/cm3未満のかさ密度の粉末を得る。非常に低いかさ密度を有する粒子を提供することにより、単位用量容器に充填され得る最小の粉末の重量は減少され、これはキャリア粒子の必要性を除去する。つまり、本発明の比較的に低濃度の粉末は、比較的に小さな用量である薬学的化合物の再現性のある投与を提供する。さらに、キャリア粒子の排除は、大型ラクトース粒子が、これらのサイズに起因して咽頭および上部気道に影響することから、咽頭への沈着および任意の「かん口(カンコウ)」効果を潜在的に最小化させる。
【0037】
本明細書の教示に従って、多孔性微細構造は、好ましくは「乾燥」形態で提供される。微粒子は、その粉末が周囲温度での保存の間、化学的かつ物理的な安定に残存し、そして容易に分散性であることを可能にする水分量を有する。それ自体、微粒子の水分量は、代表的には6重量%未満、そして好ましくは3重量%未満である。幾つかの例では、水分量は1%重量%と同程度である。当然のことながら、水分量は、少なくとも一部において、処方物により影響を受け、そして使用されるプロセス条件(例えば、吸込み温度、供給濃度、注入速度および発砲剤のタイプ、濃度および後乾燥)により制御される。
【0038】
多孔性微細構造を規定する構造マトリクスの組成物について、これらは、任意の組み込まれる活性剤と適合性である物理的特性および化学的特性を有する任意の物質を形成し得る。広範で様々な物質が粒子を形成するために使用され得る一方で、特に好ましい薬学的実施態様において、構造マトリクスはリン脂質またはフッ化界面活性剤のような界面活性剤と会合するかまたは含む。必要ではないが、適合する界面活性剤の組み込みは、粉末流動性を改良し得、エアロゾル効率を増加させ、分散安定性を改良し、そして懸濁物の調製を容易にし得る。本明細書で使用されるような、用語「構造マトリクス」または「微細構造マトリクス」は等価であり、そして所望される特徴を提供する複数の空隙、開口部、中空、欠損、細孔、孔、亀裂などを規定する多孔性微細構造を形成する任意の固体物質を意図することとする。好ましい実施態様では、構造マトリクスにより規定される多孔性微細構造は、少なくとも1つの界面活性剤を組み込む噴霧乾燥化中空多孔性ミクロスフェアを含む。マトリクス成分を変更することにより、構造マトリクスの蜜度は調整され得ることがさらに理解される。最終的には、以下でさらに詳細に議論されるように、多孔性微細構造は、好ましくは少なくとも1つの活性剤または生理活性剤を含む。
【0039】
示されるように、本発明の多孔性微細構造物は、必要に応じて1つ以上の界面活性剤と会合され得るか、または含み得る。さらに、混和性界面活性剤が、必要に応じて微粒子が懸濁媒体の液相において処方される場合において合わせられ得る。界面活性剤の使用は、本発明を実行するために必要とはされない一方で、分散安定性、粉末流動性をさらに増加し得、処方手順を単純化し得、または送達効率を増加し得ることが当業者により理解される。当然ながら、液相中での1以上の使用、および多孔性微細構造と会合する1以上の界面活性剤を含む界面活性剤の組み合わせは、本発明の範囲内にあるように意図される。「会合するまたは含む」により、構造的マトリクスまたは多孔性微細構造は、界面活性剤を組み込むか、吸着するか、吸収するか、界面活性剤でコートされるかまたは界面活性剤により形成され得ることが意味される。
【0040】
広範な意味において、本発明においての使用のために適切な界面活性剤は、多孔性微細構造物の形成において介助し、または増強された懸濁物安定性、改良された粉末分散性または減少した粒子凝集を提供する任意の化合物または化合物を含む。この界面活性剤は、単一の化合物または任意の化合物の組み合わせ(例えば、共界面活性剤の場合のような)を含み得る。特に好ましい界面活性剤は、非フッ化物であり、そして飽和または不飽和脂質、非イオン性界面活性剤、非イオン性ブロックコポリマー、イオン性界面活性剤およびそれらの組み合わせから選択される。安定化分散剤を含むこれらの実施態様において、このような非フッ化界面活性剤は、懸濁媒体において好ましくは比較的不溶性である。前述の界面活性剤に加えて、適切なフッ化界面活性剤が本明細書における教示と適合し、そして所望の調製物を提供するために使用され得ることが強調されるべきである。
【0041】
天然供給源または合成供給源の両方に由来のリン脂質を含む脂質は、本発明ととりわけ適合性であり、そして構造マトリクスを形成するための濃度変化において使用され得る。一般的に適合性脂質は、約40℃よりも高いゲル−液晶の相転移を有する脂質を含む。好ましくは、組み込まれる脂質は比較的長鎖(例えば、C1622)の飽和脂質であり、そしてより好ましくはリン脂質を含む。開示される安定化調製物において有用な例示的なリン脂質は、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステロイルホスファチジルコリン、ジアラキドイルホスファチジルコリン、ジベヘノイルホスファチジルコリン、短鎖のホスファチジルコリン、長鎖の飽和ホスファチジルエタノールアミン、長鎖の飽和ホスファチジルセリン、長鎖の飽和ホスファチジルグリセロール、長鎖の飽和ホスファチキルイノシトール、糖脂質、ガングリオシドGM1、スフィンゴミエリン、ホスファチジン酸、カルジオルピン;ポリマー鎖を保有する脂質(例えば、ポリエチレングリコール、キチン、ヒアルロン酸またはポリビニルピロリドン);スルホン化モノ−、ジ−およびポリサッカリドを保有する脂質;パルミチン酸、ステアリン酸およびオレイン酸のような脂肪酸;コレステロール、コレステロールエステルおよびコレステロールヘミスクシナートを含む。これらの良好な生体適合性特徴に起因して、リン脂質ならびにリン脂質ポロキサマーとの組み合わせは、本明細書に開示される薬学的実施態様における使用について特に適切である。
【0042】
適合性の非イオン性界面活性剤は以下を含む:ソルビタンエステル(ソルビタントリオレエート(Span(登録商標)85)を含む)、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートを含むおよびポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート)、オレイルポリオキシエチレン(2)エーテル、ステアリルポリオキシエチレン(2)エーテル、ラウリルポリオキシエチレン(4)エーテル、グリセロールエステルおよびスクロースエステル。他の適切な非イオン性界面活性剤は、本明細書においてその全体が援用されるMcCutcheon’s Emulsifier’s and Detergents(McPublishing co.,Glen Rock、New Jersey)を使用して容易に同定され得る。好ましいブロックコポリマーは、ポリオキシエチレンおよびポリオキシプロピレンのジブロックおよびトリブロックコポリマー(ポロキサマー188(Pluronic(登録商標)F−68)、ポロキサマー407(Pluronic(登録商標)F−127)およびポロキサマー338を含む)を含む。スルホスクシネートナトリウムのようなイオン性界面活性剤および脂肪酸セッケンもまた適用され得る。好ましい実施態様では、微細構造は、オレイン酸またはそのアルカリ塩を含み得る。
【0043】
前述の界面活性剤に加えて、陽イオン性界面活性剤または脂質が、RNAまたはDNA送達の場合においてとりわけ好ましい。適切な陽イオン性脂質の例として:DOTMA、N−〔1−(2、3ジオレイルオキシ)プロピル〕−N、N、N−トリメチルアンモニウムクロリド;DOTAP、1、2−ジオレイルオキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロパン;およびDOTB、1、2−ジオレイル−3−(4’−トリメチルアンモニオ)ブタノイル−sn−グリセロールを含む。ポリリジンおよびポリアルギニンのようなポリ陽イオン性アミノ酸もまた意図される。
【0044】
上記で列挙されるこれらの界面活性剤に加えて、必要に応じて広範な範囲の界面活性剤が本発明と組み合わされて使用され得る。さらに、所定の適用について最適な界面活性剤またはその組み合わせは、不当な実験法を要求しない経験的な研究により容易に決定され得る。最終的には、以下でより詳細に議論されるように、構造マトリクスを含む界面活性剤はもまた多孔性微細構造物を形成するためのプロセシング中で使用される前駆体のエマルジョン(例えば、噴霧乾燥供給ストック)の形成において有用であり得る。
【0045】
先行技術の処方物とは異なり、比較的に高レベルの界面活性剤(例えば、リン脂質)の組み込みは、粉末分散性を改良し、懸濁安定性を増加させ、そして開示される適用の粉末の凝集を減少させるために使用され得ることが、以外にも見出された。つまり、重量比で、多孔性微細構造の構造マトリクスは、比較的高レベルの界面活性剤を含み得る。この点については、多孔性微細構造は、約1重量%、5重量%、10重量%、15重量%、18重量%よりも多くの、または20重量%さえも超える界面活性剤を含む。より好ましくは、多孔性微細構造は、約25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、または50重量%よりも多い界面活性剤を含む。なお他の例示的な実施態様は、多孔性微細構造を含み、ここで界面活性剤は、約55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、75重量%、80重量%、85重量%、90重量%よりも多く、または95重量%さえよりも多く存在する。選択された実施態様では、多孔性微細構造は、実質的に100重量%のリン脂質のような界面活性剤を含む。当業者は、このような場合では、構造マトリクス(ここで適用可能な場合)の平衡は、生理活性剤または非界面活性賦形剤または添加物を含むようであることを理解する。
【0046】
このような界面活性剤のレベルが多孔性微細構造において好ましく使用される一方で、これらは比較的に非多孔性であるかまたは実質的に固体である粒子を含む安定化システムを提供するために使用され得る。つまり、好ましい実施態様が高レベルの界面活性剤と関連する多孔性微細構造物を含む一方で、許容性のミクロスフェアが、同じ界面活性剤の濃度(例えば、約20重量%よりも高い)の比較的低い空隙率の粒子を使用して形成され得る。この点については、このような高い界面活性剤の実施態様は、本発明の範囲内であることが特に意図される。
【0047】
本発明の他の好ましい実施態様では、多孔性微細構造を規定する構造マトリクスは、必要に応じて合成または天然のポリマーかあるいはそれらの組み合わせを含む。この点については、有用なポリマーは、ポリ乳酸、ポリ乳酸−グリコライド、シクロデキストリン、ポリアクリルレート、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリ無水物、ポリラクタム、ポリビニルピロリドン、ポリサッカリド(デキストラン、デンプン、キチン、キトサンなど)、ヒアルロン酸、タンパク質(アルブミン、コラーゲン、ゼラチンなど)を含む。多孔性のインク微粒子の調製について有用であるポリマー性樹脂の例は:スチレン−ブタジエン、スチレン−イソプレン、スチレン−アクリロニトリル、エチレン−酢酸ビニル、エチレン−アクリレート、エチレン−アクリル酸、エチレン−メチルアクリレート、エチレン−エチルアクリレート、ビニル−メチルメタクリレート、アクリル酸−メチルメタクリレートおよび塩化ビニル−酢酸ビニルを含む。当業者は、適切なポリマーの選択により、多孔性微細構造物の効率的な送達および/または分散物の安定性、活性剤または生理活性剤の有効性を最適化し得ることを理解する。
【0048】
前述のポリマー物質および界面活性剤の他に、粒子の剛性、産物収量、送達を改変して効率および沈着、保管期限および患者の受容性を改善するためにミクロスフェア処方物に他の賦形剤を添加することが所望され得る。このような最適な賦形剤は:着色剤、味覚マスキング剤、緩衝剤、吸湿剤、抗酸化剤および化学安定剤を含むがこれらに限定されない。さらに、様々な賦形剤が、構造を提供し、そして多孔性微細構造物(すなわち、ラテックス粒子のようなミクロスフェア)を形成するために組み込まれ得るかまたは添加され得る。この点については、剛性成分は、選択的な溶媒抽出のような生成後の技術を使用して除去され得る。
【0049】
他の剛性賦形剤には、モノサッカリド、ジサッカリドおよびポリサッカリドを含む炭水化物を含み得るがこれらに限定されない。例えば、デキストロース(無水物および一水和物)、ガラクトース、マンニトール、D−マンノース、ソルビトール、ソルボースなどのようなモノサッカリド;ラクトース、マルトース、スクロース、トレハロースなどのようなジッサカリド;ラフィノースなどのようなトリサッカリド;およびデンプン(ヒドロキシエチルデンプン)、シクロデキストリンおよびマルトデキストリンのような他の炭水化物。アミノ酸もまた、適切な賦形剤でありグリシンが好ましい。さらに炭水化物とアミノ酸の混合物も、本発明の範囲内であるされる。無機塩(例えば、塩化ナトリウム、塩化カルシウムなど)、有機塩(例えば、酢酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、グルコン酸マグネシウム、グルコン酸ナトリウム、塩酸トロメタミンなど)両方の含有および緩衝剤もまた意図される。塩および有機塩(例えば、炭酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、塩化アンモニウムまたはカンフル)の含有もまた意図される。
【0050】
なお他の好ましい実施態様は、接触の残留時間を延長するか、または粘膜を介して浸透を増強する荷電種を含み得るかまたはそれでコートされ得る多孔性微細構造を含む。例えば、陰イオン電荷は粘膜接着に好ましいことが公知であるが、陽イオン電荷が負に荷電した生理活性剤(例えば、遺伝物質)で形成された微粒子と会合するために使用され得る。この電荷は、ポリアクリル酸、ポリリジン、ポリ乳酸およびキトサンのようなポリ陰イオン性物質またはポリ陽イオン性物質の会合または結合を介して与えられ得る。
【0051】
上記で議論された成分に加えて、またはこれの代わりに、多孔性微細構造物は、好ましくは少なくとも1つの活性剤または生理活性剤を含む。本明細書で使用される用語「活性剤」とは、単に、多孔性微細構造が所望の機能を遂行することを可能にする物質をいう。さらに、用語「活性剤」は、他に前後関係上の制限により指示されない限りは、用語「生理活性剤」を含めて適用される。用語「生理活性剤」については、患者の疾患、状態または生理的異常の診断または処置と関連して使用される任意の物質を含むように適用される。特に好ましい本発明に従う使用についての生理活性剤は、吸入治療による喘息のような呼吸性障害の処置においての使用のための抗アレルギー剤、ペプチドおよびタンパク質、肺性(pulmonary)肺界面活性剤、気管支拡張剤および抗炎症用ステロイドを含む。本発明に従う使用についての好ましい活性剤は、色素、染料、インク、絵具、洗剤、食物甘味料、香料、吸着剤、吸収剤、触媒、核形成剤、濃化剤、ポリマー、樹脂、断熱材、賦形剤、肥料、植物ホルモン、昆虫フェロモン、愛玩動物駆散薬、汚染防止剤、殺虫剤、殺菌剤、消毒薬、香料、防臭剤およびそれらの組み合わせを含む。
【0052】
本発明の多孔性微細構造は、1以上の活性剤または生理活性剤を独占的に(すなわち100重量%)含むことが認識される。しかし、選択された実施態様においては、多孔性微細構造物はその活性に依存して、はるかに少ない量の生理活性剤を組み込み得る。従って、より高度な活性物質については、多孔性微細構造物は、ほんの0.001重量%含むが、約0.1重量%よりも高い濃度が好ましい。本発明のたの実施態様は、約5重量%、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%よりも高い、または40重量%よりも高い活性剤または生理活性剤を含み得る。なおもより好ましくは、多孔性微細構造物は、約50重量%、60重量%、70重量%、75重量%、80重量%よりも高い、または90重量%よりも高い活性剤または生理活性剤を含み得る。本発明の多孔性微細構造中に取り込まれる正確な量の活性剤または生理活性剤は、薬剤の選択、要求用量および取り込みについて実際に使用される薬剤の形態に依存する。当業者は、このような決定が、本発明の教示と組み合わされて周知の薬理学的技術を使用することによりなされ得ることを認識する。
【0053】
薬学的調製物については、開示される多孔性微細構造物で処方され得る任意の生理活性剤が、本発明の範囲内にあるように明確に適用される。特に好ましい実施態様においては、選択された生理活性剤がエアロゾル化医薬物の形態で投与され得る。従って、特に適合性の生理活性剤は、流動性の可能な乾燥粉末として処方され得るか、または選択された分散媒体中で比較的可溶性である任意の薬物を含む。さらに、処方された薬剤は生理的有効量での肺または気道での摂取に供されることが好ましい。適合性の生理活性剤は、親水性かつ親油性である呼吸器薬剤、肺界面活性物質、気管支拡張剤、抗生物質、抗ウイルス剤、抗炎症剤、ステロイド、抗ヒスタミン剤、ロイコトリエンインヒビターまたはアンタゴニスト、抗コリン作用剤、抗腫瘍剤、麻酔薬、酵素、心血管剤、DNAおよびRNAを含む遺伝物質、ウイルスベクター、免疫活性剤、画像化剤、ワクチン、免疫抑制剤、ペプチド、タンパク質およびそれらの組み合わせを含む。吸入療法について特に好ましい生理活性剤は、マスト細胞インヒビター(抗アレルギー)、気管支拡張剤および抗炎症ステロイド(例えば、クロモグリケート(例えば、ナトリウム塩)およびアルブテロール(例えば、硫酸塩))を含む。
【0054】
より具体的には、例示的な医薬または生理活性剤は、例えば以下から選択され得る:鎮痛薬(例えば、コデイン、ジヒドロモルヒネ、エルゴタミン、フェンタニルまたはモルヒネ);狭心症調製物(例えば、ジルチアゼム);マスト細胞インヒビター(例えば、クロモリンナトリウム);抗感染剤(例えば、セファロスポリン、マクロライド、キノリン、ペニシリン、ストレプトマイシン、スルフォンアミド、テトラサイクリンおよびペンタミジン);抗ヒスタミン剤(例えば、メタピリレン);抗炎症剤(例えば、フルチカソンプロピオン酸塩、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、フルニソリド、ブデソニド、トリペダン、コルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン(prednizilone)、デキサメタソン、ベタメタゾンまたはトリアムシノロンアセトニド);鎮咳薬(例えば、ノスカピン);気管支拡張剤(例えば、エフェドリン、アドレナリン、フェノテロール、ホルモテロール、イソプレナリン、メタプロテレノール、サルブタロール、アルブタロール、サルメテロール、テルブタリン);利尿剤(例えば、アミロライド);抗コリン作用剤(例えば、イパトロピウム、アトロピンまたはオキシトロピウム);肺の界面活性物質(例えば、surfaxin、Exosurf、survanta);キサンチン(例えば、アミノフィリン、テオフィリン、カフェイン);治療用タンパク質およびペプチド(例えば、DNアーゼ、インスリン、グルカゴン、LHRH、ナファレリン、ゴセレリン、ロイプロリド、インターフェロン、rhu IL−1レセプター、マクロファージ活性化因子(例えば、リンホカインおよびムラミルジペプチド)、オピオイドペプチドおよび神経ペプチド(例えば、エンケファリン(enkaphaline)、エンドフィン)、レニンインヒビター、コレシストキニン、DNアーゼ、成長ホルモン、ロイコトリエンインヒビターなど。さらに、RNA配列またはDNA配列、特に遺伝子治療、遺伝的ワクチン接種、遺伝的寛容化またはアンチセンス適用に有用である配列を含む生理活性剤は、本明細書で開示されるような開示される分散物中に組み込まれ得る。代表的なDNAプラスミドは、pCMVβ(Genzyme Corp、Framington、MAから入手可能)およびpCMV−β−gal(β−ガラクトシダーゼをコードするE.coliのLac−Z遺伝子に連結されたCMVプロモーター)を含むがこれらに限定されない。
【0055】
任意の事象において、選択された活性剤または生理活性剤は、所望される効力を提供し、そして選択された生成技術と適合する任意の形態における多孔性微細構造と会合し得、または組み込まれ得る。本明細書で使用される用語「会合」または「会合する」は、構造マトリクスまたは多孔性微細構造が、活性剤または生理活性剤を含み得、組み込み得、吸収し得、コートし得、または活性剤または生理活性剤により形成され得ることを意味する。適切である場合、活性剤は塩の形態(例えば、アルカリ金属またはアミン塩または酸添加塩)で、エステルとして、または溶媒(水和物)として使用され得る。この点については、活性剤または生理活性剤の形態は、活性状態の活性および/もしくはは安定性を最適化するために、ならびに/または懸濁媒体中での薬剤の溶解度を最小化するために、ならびに/または粒子の凝集を最小化するために選択され得る。
【0056】
本発明に従う多孔性微細構造物は、所望される場合、2つ以上の活性成分の組み合わせを含み得ることがさらに認識される。この活性剤は、多孔性微細構造物の単一種中で組み合わされるか、または多孔性微細構造物の別々の種中で個別に組み合わされて提供され得る。例えば、2つ以上の活性剤または生理活性剤が、単一の供給ストック調製物中に組み込まれ得、そして複数の活性剤を含む単一の微細構造物の種を提供するために噴霧乾燥され得る。逆に、個々の活性剤はストックを分離するために添加され得、そして多数の異なる組成物を有する微細構造物種を提供するために別々に噴霧乾燥され得る。これらの個々の種は、任意の所望される割合で懸濁媒体または乾燥粉末分散区画に添加され得、そして以下に記載されるようなエアロゾル送達システムに配置される。さらに、上記で暗に示されたように、多孔性微細構造物(会合剤を伴うかまたは伴わない)が、所望される分散安定性または粉末分散性を提供するために1つ以上の従来の(例えば、微粒子化薬物)活性剤または生理活性剤と組み合わされ得る。
【0057】
前述に基づいて、当業者は、広範で様々な活性剤または生理活性剤が、開示される多孔性微細構造物中に組み込まれ得ることを認識する。従って、上記の好ましい活性剤のリストは例示的のみであり、そして限定することは意図されない。適切な量の生理活性剤および投薬のタイミングは、すでに存在する情報に従って、そして過度の実験なく処方物について決定され得ることが当業者に理解される。
【0058】
上記の一節に見られるように、様々な成分が本発明の多孔性微細構造物中で会合され得るかまたは組み込まれ得る。同様に、いくつかの技術が所望される形態(例えば、多孔性、または中空/多孔性の形態)、分散性および密度を提供するために使用され得る。とりわけ、本発明に適合される多孔性微細構造粒子は、噴霧乾燥、吸引乾燥、溶媒抽出、乳化または凍結乾燥およびそれらの組み合わせを含む技術により形成され得る。多くのこれらの技術の基本的概念は当該分野で周知であり、そして本明細書に鑑みて、所望される多孔性微細構造物を提供できるように、これらに適合するための過度な実験を必要とはしないことがさらに認識される。
【0059】
いくつかの手順が本発明と一般に適合する一方で、特に好ましい実施態様は、代表的に噴霧乾燥により形成される多孔性微細構造物を含む。周知であるように、噴霧乾燥は、液体供給物を乾燥粒子形態に変える1工程プロセスである。薬学的適用については、噴霧乾燥は、吸入を含む様々な投与経路についての粉末物質を提供するために使用されてきたことが認識される。例えば、M.SacchettiおよびM.M.Van Oortの:Inhalation Aerosols:Physical and Biological Basic for Therapy,A.J.Hickey編,Marcel Dekkar、New York、1996、これは本明細書で参考として援用される。
【0060】
一般には、噴霧乾燥は以下の工程からなる:高度に分散した液体および充分な体積の高温気体を集めて蒸気を生成する工程およびこの液滴を乾燥させる工程。噴霧乾燥される調製物または供給物(または供給ストック)は、任意の溶液得、粗い懸濁物、スラリー、コロイド状分散物または選択された噴霧乾燥装置を使用して微粒化され得るペーストであり得る。好ましい実施態様では、供給ストックはエマルジョン、逆エマルジョン、微粒化エマルジョン、複数のエマルジョン、粒状分散物またはスラリーのようなコロイド状の系を含む。代表的には、供給物は、溶媒を蒸発させる高温のフィルター通過空気中に噴霧され、そして乾燥した産物をコレクターへ運ぶ。次いで、使用した空気は溶媒で蒸気される。幾つかの異なる型の装置が所望される生成物を提供するために使用され得ることを当業者は認識する。例えば、市販の噴霧乾燥機は、Buchi Ltd.またはNiro Corpにより製造され、所望のサイズの粒子を効果的に生成する。
【0061】
これらの噴霧乾燥機および特定のこれらの噴霧器が、特別な適用(すなわち、二重ノズル技術を使用する2つの溶液の同時噴霧)について改変または改造され得ることがさらに認識される。より具体的には、油中水エマルジョンは、1つのノズルから微粒子化され、そしてマンニトールのような抗粘着剤を含む溶液が第2のノズルから同時に微粒子化され得る。他の場合では、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)ポンプを使用して、特別に設計されたノズルを通じて供給溶液を押し出すために所望され得る。正確な形態および/または組成物を含む微細構造物が生成されるのであれば、装置の選択は決定的ではなく、そして本明細書における教示に鑑みて当業者に明らかである。
【0062】
得られた噴霧乾燥粉末化粒子は、代表的には形状がおよそ球状でそしてサイズもほぼ均一で、そして頻繁に中空である一方で、組み込まれた医薬および吹き付け乾燥の条件に依存する形状におけるある程度の不規則性があり得る。多くの場合において、多孔性微細構造物の分散の安定性および分散性は、膨張剤(または発泡剤)がそれらの生成に使用される場合において改善されるようである。特に好ましい実施態様は、分散相または連続相として膨張剤とエマルジョンを含み得る。膨張剤は、好ましくは、例えば、市販の微小流動測定装置を5000〜15,000psiの圧力で使用して界面活性剤の溶液と分散される。このプロセスはエマルジョンを形成し、好ましくは組み込まれた界面活性剤により安定化され、代表的には水性連続相中に分散された水混和性発泡剤のミクロン未満の小滴を含むエマルジョンを含む。この技術および他の技術を使用するそのような分散液の形成は、当業者に一般的であり、そして周知である。発泡剤は、好ましくはフッ化化合物(例えば、過フルオロヘキサン、過フルオロオクチルブロミド、過フルオロデカリン、過フルオロブチルエタン)であり、これは、一般に中空多孔性の空気力学的に軽いミクロスフェアを残したまま、噴霧乾燥プロセス間に蒸発する。以下でより詳細に議論されるように、他の適切な液体発泡剤は、非フッ化油、クロロホルム、フレオン、酢酸エチル、アルコールおよび炭化水素を含む。窒素ガスおよび二酸化炭素はまた、適切な発泡剤であることが意図される。
【0063】
前述の化合物に加えて、生成後の工程における昇華による減圧下で除去され得る無機物質および有機物質もまた、本発明に適合される。これらの昇華した化合物は、噴霧乾燥供給溶液中で溶解され得るかまたは微小化結晶として分散され得、そして炭酸アンモニウムおよびカンフルを含む。本発明に適合する他の化合物は、供給溶液中で分散され得るか、またはインサイチュで調製され得る剛性の固体構造物を含む。次いで、これらの構造は、生成後の溶媒抽出工程を使用して最初の粒子生成後に抽出される。例えば、ラテックス粒子は、他の壁形成化合物と分散され、そして引き続いて乾燥され、次いで適切な溶媒と一緒に抽出される。
【0064】
多孔性微細構造物は、好ましくは蒸気の発泡剤を使用して形成されるが、いくつかの場合において、さらなる発泡剤は必要とされず、そして医薬および界面活性剤の水性分散液が直接的に噴霧乾燥されることが理解される。そのような場合において、処方物は、中空な、比較的多孔性の微粒子を一般に生じるプロセス条件(例えば、上昇した温度)に従い得る。さらに、医薬は、そのような技術における使用に特に適切にする特別な物理化学的特性(例えば、高い結晶度、上昇した融点、表面活性など)を有し得る。
【0065】
発泡剤が使用される場合、多孔性微細構造物の多孔性の程度は、発泡剤の性質、供給ストックにおける濃度(すなわち、エマルジョンとして)、および噴霧乾燥条件に少なくとも一部には依存するようである。多孔性の制御および懸濁物中の分散性に関して、驚くべきことに、これまで発泡剤として認められていない化合物の使用が、特に望ましい特徴を有する粒子または多孔性微細構造物を提供し得ることが見出された。より詳細には、本発明のこの新規かつ予測不能な局面において、比較的高い沸点(すなわち、約40℃を超える)を有するフッ化化合物の使用が、特に多孔性である粒子を生成するために使用され得ることが見出された。このような多孔性微細構造は吸入治療に特に適切であるかこの点において、40℃を超える、50℃を超える、60℃超える、約70℃を超える、約80℃を超える、約90℃を超える、または約95℃を超える沸点さえ有するフッ化または部分的フッ化発泡剤を使用することが可能である。特に好ましい発泡剤は、水の沸点(すなわち、100℃)を超える沸点を有する(例えば、perflubron、過フルオロデカリン)。さらに、比較的低い水の溶解性(<10-6M)を有する発泡剤が好ましい。なぜなら、それらは0.3μm未満の加重平均粒子直径を有する安定なエマルジョン分散液を生成可能にするからである。
【0066】
上記のように、これらの発泡剤は、好ましくは、噴霧乾燥前に乳化供給ストックにおいて取り込まれる。本発明の目的のために、この供給ストックはまた、好ましくは1つ以上の活性剤または生物活性剤、1つ以上の界面活性剤、または1つ以上の賦形剤を含む。当然のことながら、上記の成分の組み合わせもまた、本発明の範囲内である。高沸点(>100℃)のフッ化発泡剤は、本発明の1つの好ましい局面を含むが、類似の沸点(>100℃)を有する非フッ化発泡剤が多孔性微細構造物を提供するために使用され得ることが認識される。本発明における使用について適切である例示的な非フッ化発泡剤は以下の式を含む:
1−X−R2またはR1−X
ここで:R1またはR2は水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、芳香性環、環状またはそれらの組み合わせであり、Xは、炭素、硫黄、窒素、ハロゲン、リン、酸素およびそれらの組み合わせを含むいずれかの基である。
【0067】
いずれの方法でも本発明を限定しないが、水性供給成分が噴霧乾燥間に蒸発するので、それは粒子の表面で薄いクラストを残すことが仮定される。噴霧乾燥の最初の瞬間に形成される、得られる粒子壁またはクラストは、何百ものエマルジョン小滴(約200〜300nm)として任意の高い沸点の発泡剤をトラップするようである。乾燥プロセスが続くにつれ、粒子内の圧力が増加し、それによって取り込まれる発泡剤の少なくとも一部を蒸発させ、そしてそれに比較的薄いクラストを通させる。この通気またはガス放出は、明らかに、孔形成または他の微細構造物の欠陥の形成を導く。同時に、残りの粒子成分(いくつかの発泡剤を含む可能性がある)は、粒子が凝固するにつれ内部から表面に移動する。この移動は、明らかに、増加した内部粘性によって引き起こされる質量移動に対する増加した耐性の結果として、乾燥プロセス間に明らかに遅くなる。一旦移動が止まると、その粒子は個化し、空隙、空胞、欠損、空間、内部空間、開口部、多孔または穴が残る。孔および欠損の数、それらのサイズ、および得られる壁の厚さは、その処方物および/または選択された発泡剤の性質(例えば、沸点)、エマルジョンにおけるその濃度、総固体濃度、および噴霧乾燥条件の性質に大部分は依存する。粒子形態のこの型は、改良された粉末分散性、懸濁物の安定性および空力特性に部分的に貢献することが極めて認識され得る。
【0068】
驚くべきことに、これらの比較的高い沸点の発泡剤の実質的な量が、得られる噴霧乾燥産物において保持され得ることが見出された。すなわち、本明細書中に記載される噴霧乾燥多孔性微細構造物は、1重量%、3重量%、5重量%、10重量%、20重量%、30重量%、または40重量%ほどの発泡剤を多くさえ含み得る。そのような場合において、より高い産生収率は、残りの発泡剤によって引き起こされる増加した粒子密度の結果として得られた。この保持されたフッ化発泡剤が、多孔性微細構造物の表面特徴は改変し得、その結果、プロセシングの間の粒子の凝集を最小化し、そして分散安定性をさらに増加させることが当業者により認識される。粒子中に残留するフッ化発泡剤もまた、バリアを提供することにより、または製造の間に生成される引力(静電力)を減弱させることにより粒子間の凝集力を減少させ得る。凝集力におけるこの減少は、乾燥粉末吸入器に関して開示される微細構造を使用する場合に特に有利であり得る。当業者は、本明細書中の実施例に記載されるものに類似の技術を用いて不当な実験を伴わない。
【0069】
さらに、残留発泡剤の量は、プロセスの条件(例えば、出口温度)、発泡剤の濃度または沸点を介して減弱され得る。出口温度が沸点以上である場合、発泡剤は粒子を漏出させ、そして収量が減少する。好ましい出口温度は、発布剤の沸点より20℃、30℃、40℃、50℃、60℃、70℃、80℃、90℃または100℃低いで一般には操作される。より好ましくは、出口温度と沸点の間の温度差は、50〜150℃の範囲である。粒子の空隙率、生成収量、静電荷および分散性が、選択された活性剤および/または賦形剤に適切であるプロセス条件(例えば、出口温度)の範囲を最初に同定することにより最適化され得る。次いで、好ましい発泡剤が、温度差が少なくとも20℃〜150℃であるような最高出口温度を使用して選択され得る。いくつかの場合では、温度差は,例えば、臨界超過条件下で、または凍結乾燥技術を使用して粒子を生成する場合において範囲外であり得る。当業者は、本明細書中の実施例に記載されるものに類似の技術を用いて不当な実験を伴わずに実験的に、好ましい発泡剤濃度が決定され得ることをさらに理解する。
【0070】
残留発泡剤が、選択された実施態様において有利である一方で、すべての発泡剤が噴霧乾燥生成物から実質的に除去されることが所望され得る。この点については、残留発泡剤は、減圧オーブンにおける生成後の蒸発工程で容易に除去され得る。さらに、このような生成後の技術は、粒子中の穿孔処理を提供するために使用され得る。例えば、孔は、減圧下で形成される粒子から除去され得る生理活性剤および賦形剤を噴霧乾燥させることにより形成され得る。
【0071】
任意の事象において、供給ストックの発泡剤の代表的な濃度は、2%〜500%v/vの間であり、より好ましくは約10%〜45%v/vの間である。他の実施態様において、発泡剤濃度は、好ましくは、約5%以上、約10%以上、約15%v/vを超える、約20%v/vを超える、約25%v/vを超える、約30%v/vでさえも超える。なお他の供給ストックエマルジョンは、選択された高い沸点の化合物の35%v/v、40%v/v、45%v/v、または50%v/vでさえ含み得る。
【0072】
好ましい実施態様において、供給物において使用される発泡剤の濃度を同定する別の方法は、前駆体または供給エマルジョンにおける発泡剤の濃度対安定化界面活性剤(例えば、ホスファチジルコリンまたはPC)の濃度の比として提供することである。ペルフルオロオクチルブロミドおよびホスファチジルコリンのようなフルオロカーボン発泡剤について、そして実験の目的について、この比は、ペルフルオロカーボン/ホスファチジルコリン比(またはPFC/PC比)と呼ばれ得る。より一般には、適合性の適合性界面活性剤および/または、界面活性剤、本発明の範囲外にならずに例示の化合物と置換され得ることが理解される。任意の事象において、代表的なPFC/PC比は、代表的には約1〜約60の範囲に及び、そしてより好ましくは約10〜約50の範囲に及ぶ。好ましい実施態様のために、この比は、一般に約5、約10、約20、約25、約30、約40、または約50すらを超える。この点において、図1は、種々の量の過フルオロオクチルブロミド(PFC)(発泡剤として比較的高い沸点のフルオロカーボン)を使用する、ホスファチジルコリン(PC)から形成される多孔性微細構造物からとられる一連の図を示す。PFC/PC比は、図の各サブセット(すなわち、1A〜1F)下で提供される。形成および画像化条件は、以下の実施例IおよびIIにおいてより詳細に議論される。顕微鏡写真に関して、左側の行は、右側の行が同じ調製物から破壊された微細構造物の横断面図を示す。
【0073】
図1において容易に理解されるように、より高いPFC/PC比の使用は、より中空かつ多孔性性質の構造を提供する。より詳細には、より約4.8を超えるPFC/PC比を使用する方法は、本明細書中において開示される分散液と特に適合性である構造を提供する傾向があった。同様に、図3(以下の実施例XIIにおいてより詳細に議論される顕微鏡写真)は、より高い沸点発泡剤を使用する(この場合において、過フルオロデカリン)ことによって得られた好ましい多孔性形態学を示す。
【0074】
比較的高い沸点発泡剤は、本発明の1つの好ましい局面を含むが、より慣用的および非慣用的な発泡剤または膨張剤はまた、適合性多孔性微細構造物を提供するために使用され得る。この発泡剤は、任意の揮発性物質を含み、これは、得られる乾燥ミクロスフェアにおける多孔性発泡様構造を生成する目的のために供給溶液に取り込まれ得る。発泡剤は、最初の噴霧乾燥または生成後工程(例えば真空乾燥または溶媒抽出)間に除去され得る。適切な薬剤は以下を含む:
1.溶液を飽和するために使用される水性溶液(例えば、塩化メチレン、アセトン、および二硫化炭素)との混和性を有する溶解した低沸点(100℃未満)の薬剤。
2.高圧で使用される気体(例えば、CO2またはN2)または液体(フレオン、CFC、HFA、PFC、HFC、HFB、フルオロアルカンおよび炭化水素)。
3.本発明での使用に適切である混合不能な低沸点(100℃未満)液体のエマルジョンは、一般に以下の式:
1−X−R2またはR1−X
ここで:R1またはR2は水素、アルキル、アルケニル、アルキニル(alkynl)、芳香性、環状またはそれらの組み合わせであり、Xは、炭素、硫黄、窒素、ハロゲン、リン、酸素およびそれらの組み合わせを含む任意の基であり、こもような液体は:フレオン、CFC、HFA、PFC、HFC、HFB、フルオロアルカンおよび炭化水素を含む。
4.生成後の工程における昇華による減圧下で除去され得る溶解されたまたは分散された塩または有機物(例えば、アンモニウム塩、カンフルなど)。
5.生成後の溶媒抽出工程を使用して最初の粒子生成後に抽出され得る分散固体(例えば、粒子はラテックスを含むなど)。
【0075】
これらのより低い沸点膨張剤に関して、それらは、代表的には、界面活性剤溶液の約1%〜40%v/vの量で供給ストックに添加される。約15%v/vの膨張剤は、本発明の安定化分散液を形成するために使用され得る噴霧乾燥粉末を生じることが見出された。
【0076】
どの発泡剤が最終的に選択されるかに拘らず、適合性の多孔性微細構造物が、Buchieミニ噴霧乾燥器(モデルB−191、Switxerland)を使用して、特に効率的に生成され得ることが見出された。当業者に理解されるように、噴霧乾燥器の入口温度および出口温度は重要ではないが、所望の粒子サイズを提供し、そしてその医薬の所望の活性を有する産物を生じるようなレベルである。この点に関して、入口温度および出口温度は、供給ストックの処方物成分および組成物に特徴的な融点に依存して調整される。従って、入口温度は、60℃〜170℃の間であり得、出口温度は、供給物の組成および所望の粒子特徴に依存して約40℃〜120℃である。好ましくは、これらの温度は、入口について90℃〜120℃であり、そして出口について60℃〜90℃である。噴霧乾燥装置において使用される流速は、一般に1分あたり約3ml〜1分あたり約15mlである。噴霧器空気流速は、1分あたり25リットル〜1分あたり約50リットルの間の値で変動し得る。市販の噴霧乾燥器が当業者に周知であり、そして任意の特定の分散液についての適切な設定は、以下の実施例を参照して標準的な経験的試験を介して容易に決定される。当然のことながら、この条件は、タンパク質またはペプチドのようなより大きな分子において生物学的活性を保存するように調整され得る。
【0077】
多孔性微細構造物は、好ましくはエマルジョンの形態のフッ化発泡剤を使用して形成され得るが、非フッ化油が、微細構造を損なわずに活性剤または生理活性剤の充填能力を増加させるために使用され得る。この場合においては、非フッ化油の選択は、活性剤、生理活性剤の溶解度、水溶性、沸点および引火点に基づく。活性剤または生理活性剤は油中で溶解され、そして供給溶液中で引き続いて乳化される。好ましくは、この油は、選択された薬剤についての実質的な可溶化能、低水溶性(10-3M未満)、水よりも高い沸点および乾燥出口温度よりも高い引火点を有する。可溶化能を増大させるための非フッ化油への界面活性剤および共通溶媒の添加もまた、本発明の範囲内にある。
【0078】
特に好ましい実施態様において、非フッ化油が、薬剤または水性組成物中での制限された可溶性を有する生理活性剤を可溶化させるために使用され得る。非フッ化油の使用は、ベクロメタゾンジプロピオネートおよびトリアムシノロンアセトニドのようなステロイドの充填能力を増加させるために特別の使用の一部である。好ましくは、これらのクラスレート形成ステロイドを可溶化させるための油または油混合物(例えば、エチルブチレート、炭酸ブチル、ジブチルエーテル)は、1.36〜1.41の間の屈折率を有する。さらに、温度および圧力のようなプロセス条件は、選択された薬剤の可溶性を増強するために調整され得る。適切な油または油混合物および薬剤の充填能力を最大化するためのプロセシング条件の選択は、本明細書の教示に鑑みて当業者の十分な範囲内にあり、そして過度な実験なしで達成され得ることが認識される。
【0079】
本発明の特に好ましい実施態様は、リン脂質のような界面活性剤および少なくとも1つの生物活性剤を含む、噴霧乾燥調製物を含む。他の実施態様において、噴霧乾燥調製物は、さらに、任意の選択された界面活性剤に加えて、例えば炭水化物(すなわち、グルコース、ラクトース、またはデンプン)のような親水性部分を含む賦形剤を含み得る。この点において、種々のデンプンおよびデンプン誘導体は、本発明における使用のために適切である。他の随意の成分は、従来の粘性改変剤、緩衝液(例えば、リン酸緩衝液もしくは他の従来の生体適合性緩衝液、またはpH調整剤(例えば、酸または塩基)、および(等張性、過浸透圧性、または低浸透圧性を提供するための)浸透圧剤を含み得る。適切な塩の例は、リン酸ナトリウム(1塩基および2塩基の両方)、塩化ナトリウム、リン酸カルシウム、塩化カルシウムおよび他の生理的に受容可能な塩を含む。
【0080】
どの成分が選択されても、粒子生成における第1の工程は、代表的には供給ストック調製物を含む。好ましくは、選択された薬物は、濃縮溶液を生成するために水中に溶解される。薬物はまた、特に水不溶性剤の場合において特に、エマルジョン中に直接的に分散され得る。あるいは、薬物は、固体粒子分散液の形態で取り込まれ得る。使用される活性剤または生理活性剤の濃度は、最終的な粉末において必要とされる薬物の量、ならびに使用される送達デバイス(例えば、MDIまたはDPIについての微細粒子の用量)の性能に依存する。必要とされる場合、共界面活性剤(例えば、ポロキサマー188またはスパン80)が、この添加の溶液に添加され得る。さらに、糖およびデンプンのような賦形剤もまた添加され得る。
【0081】
次いで、選択された実施態様において、水中油エマルジョンは、別々の容器に形成される。使用される油は、好ましくはフルオロカーボン(例えば、過フルオロオクチルブロミド、過フルオロデカリン)であり、これは、長鎖飽和リン脂質のような界面活性剤を使用してエマルジョン形成される。例えば、1グラムのリン脂質は、適切な高せん断機械式ミキサー(例えば、Ultra−TurraxモデルT−25ミキサー)を8000rpmで2〜5分間使用して、150gの熱蒸留水中(例えば、60℃)にホモジナイズされ得る。代表的には、5〜25gのフルオロカーボンが、混合間に分散界面活性剤溶液に滴下される。次いで、得られる水中過フルオロカーボンエマルジョンは、粒子サイズを小さくするための高圧ホモジナイザーを使用して処理される。代表的には、エマルジョンは、12,000〜18,000psi(5つの別個の通路)で処理され、そして50〜80℃で保持される。
【0082】
次いで、活性剤もしくは生理活性剤溶液および過フルオロカーボンのエマルジョンが合わされ、そして噴霧乾燥器の中に供給される。代表的には、2つの調製物は混和性である。なぜなら、エマルジョンは好ましくは水性連続相を含むからである。生理活性剤は、本議論の目的のために別々に溶解されるが、他の実施態様において、活性剤または生理活性剤はエマルジョン中に直接的に溶解(または分散)され得ることが理解される。そのような場合において、活性剤または生理活性剤のエマルジョンは、別々の薬物調製物を合わせることなしに、単に噴霧乾燥される。
【0083】
任意の事象において、作動条件(例えば、入口温度および出口温度、供給速度、噴霧圧、乾燥空気の流速、ならびにノズル構造)は、得られる乾燥微細構造物の必要とされる粒子サイズおよび生成収量を生成するために、製造業者のガイドラインに従って調整され得る。例示的な設定は、以下のとおりである:空気入口温度、60℃〜170℃;空気出口温度、40℃〜120℃;供給速度、1分あたり3ml〜約15ml;吸引設定、300L/ml、および噴霧空気流速、25〜50L/分。適切な装置および処理条件の選択は、本明細書中の教示を考慮して、当業者に周知であり、そして過度な実験なしに達成され得る。任意の事象において、これら、および実質的に等価な方法の使用は、肺へのエーロゾル沈着に適切な粒子直径を有する、中空、多孔性の、空気力学的に軽いミクロスフェアの形成を提供する。中空および多孔性の両方であり、外観上ほとんど蜂の巣または泡状である微細構造。特に好ましい実施態様においては、多孔性微細構造物は、中空で多孔性の噴霧乾燥ミクロスフェアを含む。
【0084】
噴霧乾燥と並んで、本発明において有用な粒子または多孔性微細構造物は、凍結乾燥によって形成され得る。当業者は、凍結乾燥は、組成物が凍結された後に水が組成物から昇華される凍結乾燥プロセスであることを理解する。凍結乾燥プロセスと関連する特定の利点は、水溶液において比較的不安定である生理活性剤および医薬が、上昇した温度なしに乾燥され得(それによって、有害な熱効果を除去する)、次いで安定性の問題がほとんどない乾燥状態に保存され得ることである。本発明に関して、そのような技術は、生理学的活性を損なうことなしに、粒子または多孔性微細構造物へのペプチド、タンパク質、遺伝物質、ならびに他の天然高分子および合成高分子の取り込みと特に適合性である。凍結乾燥した粒子を提供するための方法は、当業者に公知であり、そして本明細書中の教示に従って分散液適合可能高分子を提供するために、過度な実験を明らかに必要としない。微細な気泡様構造を含む凍結乾燥ケーキは、3〜10μmにサイズ化された粒子を提供するために当該分野で公知の技術を使用して微小化され得る。従って、凍結乾燥プロセスが、所望の多孔性およびサイズを有する微細構造物を提供するために使用され得る程度で、それらは、本明細書中の教示に従い、そして本発明の範囲内にあることが明示的に意図される。
【0085】
上記の技術に加えて、本発明の多孔性微細構造物または粒子はまた、壁形成剤を含む供給溶液(エマルジョンまたは水性のいずれか)が加熱された油(例えば、ペルフルブロンまたは他の高沸点FC)のリザーバに迅速に減圧下で添加される方法を使用して形成され得る。供給溶液の水および揮発性溶媒は迅速に沸騰し、そして蒸発する。このプロセスは、パフトライスまたはポップコーンに類似の壁形成剤から微細構造を提供する。好ましくは、壁形成剤は加熱された油中では不溶性である。次いで、得られた粒子は濾過技術を使用して加熱された油から分離し得、そして減圧下で連続的に乾燥される。
【0086】
さらに、本発明の多孔性微細構造物はまた、二重エマルジョン法を使用して形成され得る。二重エマルジョン法において、最初に医薬は、超音波またはホモジナイゼーションによって、有機溶媒(例えば、塩化メチレン)に溶解されるポリマーに分散される。次いで、この1次エマルジョンは、ポリビニルアルコールのようなエマルジョン剤を含む連続水相中に複数のエマルジョン形成することによって安定化される。次いで、有機溶媒は、従来技術よび装置を使用してエバポレーションまたは抽出によって除去される。得られるミクロスフェアは、本発明に従って、懸濁物媒体への分散前に、洗浄され、濾過され、そして凍結乾燥される。
【0087】
どの生成方法が多孔性微細構造物の生成について最終的に選択されても、得られた粉末は、吸入療法のためのデバイスにおける使用のためにそれらをとりわけ適合可能にさせる多くの数の有利な特性を有する。特に、多孔性微細構造の物理的特徴は、乾燥粉末吸入器において、そして定量吸入器と組み合わせて使用され得る安定化分散剤の形成において、噴霧器および液体用量滴下法における使用についてそれらを非常に効果的にさせる。それ自体、多孔性微細構造物は、生理活性剤の効果的な肺投与を提供する。
【0088】
分散能力、分散安定性および投与における最適な分布を最大にするために、多孔性微細構造物の平均的な幾何学的形状の粒子サイズは、好ましくは約0.5〜50mであり、より好ましくは1〜30mである。大型の粒子(すなわち、50mよりも大きい)は、バルブまたは小型開口部が使用される適用においては好ましくないかもしれない。なぜなら大型粒子は、デバイスを潜在的に塞ぎ得る懸濁物を凝集させるかまたは分離する傾向にあるからである。特に好ましい実施態様において、多孔性微細構造物の平均的な幾何学的粒子サイズ(または直径)は、20m未満かまたは10m未満である。より好ましくは、平均的な幾何学的直径は、約7mまたは5m未満、そしてなおより好ましくは2.5m未満である。他の好ましい実施態様は調製物を含み、ここで多孔性微細構造物の平均的な幾何学的直径は約1m〜5mの間である。特に好ましい実施態様において、多孔性微細構造物は、殻の厚さが約0.1m〜約0.5mである、直径が約1〜10mまたは1〜5mの中空で、多孔性で、多孔微小球体の殻を含む。本発明の特定の利点は、分散物および構造マトリクス成分の粒子性濃度が選択された粒子サイズの送達の特徴を最適化するために調節され得る。
【0089】
本明細書を通じて暗に示されるように、有意な役割を果たし得る微細構造物の空隙率は、分散性(例えば、DPIにおいて)または分散安定性(例えば、MDIまたは噴霧器について)の確立である。この点について、多孔性微細構造物の平均的な空隙率は、現代の画像技術を組み合わせた電子顕微鏡を通じて決定され得る。より具体的には、多孔性微細構造物の代表的なサンプルの電子顕微鏡写真が入手され得、そしてその調製物の空隙率を定量するためにデジタル分析される。このような方法論は、当該分野で周知であり、そして過度の実験なしで行われ得る。
【0090】
本発明の目的について、多孔性微細構造物の平均的な空隙率(すなわち、内部に開かれる粒子の表面領域および/または中心の気泡の割合)は、約0.5%から約80%の範囲であり得る。より好ましい実施態様においては、平均的な空隙率は、約2%〜約40%の範囲である。選択された生成パラメーターに基づいて、平均的な空隙率は、微細構造物の表面領域の約2%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、または約30%よりも大きくあり得る。他の実施態様では、微細構造物の平均空隙率は、約40%、50%、60%、70%または80%よりも大きくあり得る。細孔そのものについては、これらは、代表的には約5nm〜約400nmの範囲の平均細孔サイズ、好ましくは約20nm〜約200nmの範囲である。特に好ましい実施態様では、平均細孔サイズは、約50nm〜約100nmの範囲である。図1A1〜図1F2で理解され得るように、そして以下でより詳細に議論されるように、細孔サイズおよび空隙率は、組み込まれた化合物および生成パラメーターの慎重な選択により厳密に制御され得る。
【0091】
この点については、粒子形態および/または多孔性微細構造物の中空部の設計もまた、本明細書に開示される乾燥粉末処方物の分散性または粘着性において重要な役割を果たす。つまり、微細粉末に固有の粘着性の特徴は、ファンデルワールス力、静電引力および乾燥粉末間に代表的に存在する液体架橋力を低減させることにより克服し得ることが驚くべきことに発見された。より具体的には、本明細書での教示に従って、改善された粉末分散性は、粒子形態およひ密度の操作および湿気および電荷の操作により提供され得る。その目的のため、本発明の多孔性微細構造物は、粒子間の表面接触領域を減少させ、その結果粒子間引力を最小化させる細孔、空泡、中空、欠損または間質性空間を含む。さらに、本明細書の教示に従うリン脂質のような界面活性剤およびフッ化発泡剤は、静電荷力および水分量の電荷および強度を緩和することにより粉末の流入特性の改良に寄与する。
【0092】
大半の粉末(例えば、5μm未満)は、送達、エアロゾルおよび/または粉末のパッケージ意図する場合では問題であり得る貧弱な分散性を示す。この点については、粒子相互作用を制御する主要な力は、遠隔力には近接力に分類され得る。遠隔力は、重力(引力)および静電気力を含み、相互作用は分離力または粒子直径の平方として変動する。乾燥粉末についての重要な近接力は、ファンデルワールス相互作用、水素結合および液体架橋を含む。後者の2つの近接力は、それらがすでに粒子間で接触されていることが他者とは異なる。これら引力が、本明細書に記載される多孔性微細構造物の使用を通じて実質的に減弱または低減され得ることが、本発明の主要な利点である。
【0093】
これらの引力を克服するための努力において、DPIについての代表的な先行技術の乾燥粉末処方物は、ラクトースまたは純粋な薬物粒子の凝集単位またはラクトース粒子と純粋薬物との凝集物のような大型のキャリア粒子(例えば、30〜90μm)に沈着される微小化薬物粒子を含む。なぜなら、それらはしっかりした薬物粒子よりもより容易に流動化されるからである。さらに、作動ごとに必要とされる薬物の質量は、代表的には100μg未満であり、従って驚くほど小さいので測定できない。それゆえ、先行技術の処方物におけるより大型のラクトース粒子は、エアロゾル適用についてのキャリア粒子および測定のためのバルク薬物の両方として機能する。これらの処方物における大型粒子の使用は、粉末分散性およびエアロゾル適用の効率が減少した粒子間引力の結果として粒子を増加させることから、使用される(French、D.L.,Edwards,D,A.,および Niven,R.W.,J.Aerosol Sci.27,769−783,1996(これは本明細書において参考として援用される))。つまり、先行技術の処方物は、粒子間に存在するファンデルワールス力、液体架橋および静電力のような分散性を制御する主要な引力を克服するための大型粒子またはキャリアを使用する。
【0094】
当業者は、ファンデルワールス(VDW)力が近接距離で生じ、そして少なくとも一部で、相互作用する粒子間の表面接触に依存することを認識する。2つの乾燥粉末が互いに接近する場合、VDW力は接触領域において増加する。2つの乾燥粉末について、VDW相互作用力であるF0WDWの規模は、以下の式を使用して計算される:
【0095】
【化1】

【0096】
ここで、hはプランク定数であり、ωは角振動数であり、d0は最大の付着力にける距離であり、そしてr1およびr2は2つの相互作用粒子の半径である。従って、乾燥粉末についてのVDW力の規模および強度を最小化させる1つの方法は、粒子間の接触表面を減少させることが認識される。規模であるd0は、この接触領域の反映であることは注記することは重要である。2つの対立する物体の最小接触領域は、粒子が完全な形状である場合に生じる。さらに、接触領域は、粒子が高度に多孔性である場合にはさらに最小化される。従って、本発明の多孔性微細構造物は、粒子間相互作用を低減させるために作用し、そしてVDW引力に対応する。このVDW引力における低減の大半は、形状的な幾何学的直径よりもむしろ本発明の粉末独自の粒子形態の結果であることを注記することは重要である。この点について、本発明の特に好ましい実施態様は、比較的に低いVDW引力を示す平均的なまたは小型の粒子(例えば、幾何学的直径平均が10μm未満である)を有する粉末を提供する。逆に、同じサイズの従来の微粒子化薬物のような固体、非球状粒子が、それらの間のより強力な粒子間引力を示し、従って弱い粉末分散性を示す。
【0097】
さらに、上記で示されたように、粉末に影響を及ぼす静電気力は、それぞれの粒子または両方の粒子が電気的に荷電される場合に生じる。この現象は、荷電の類似性または非類似性に依存する粒子間の引力または斥力のいずれかを生じる。最も単純な場合においては、静電気的荷電は、クーロンの法則を使用して記載され得る。粒子間の静電気力を調節または減少させるための1つの方法は、いずれかの粒子または両方の粒子が非伝導性表面を有する場合である。従って、好ましい微細構造粉末が、比較的に非伝導性である賦形剤、界面活性剤または活性剤を含む場合、そのときは、粒子中で生成される任意の変化が界面活性剤に渡って偏在して分布している。結果として、非伝導性成分を含む粉末の電荷の半減期は比較的に短い。なぜなら、増加した電荷の保持は、物質の低効率により影響されるからである。抵抗性または非伝導性の成分は、効果的な電子ドナーまたはアクセプターのいずれについても機能しない物質である。
【0098】
Derjaguinら(Muller,V.M.,Yushchenko,V.S.,およびDerjaguin,B.J.,Colloid Interface Sci.1980,77,115−119)(これは本明細書において参考として援用される)は、電子を受容するまたは付与する能力についての分子基のランキングのリストを提供する。この点について、例示的な基が以下のように並べられ得る:
ドナー:−NH2>−OH>−OR>−COOR>−CH3>−C65
−ハロゲン>−COOH>−CO>−CN アクセプター:
本発明は、議論されている粉末における静電効果を減少させるが、比較的な非伝導性物質の使用を提供する。上記で並べられたものを使用して、好ましい非伝導性物質は、ハロゲン化および/または水素化成分を含む。リン脂質およびフッ化発泡剤(これは噴霧乾燥粉末においていくつかの範囲を保持する)が好ましい。なぜなら、これらは粒子の荷電を保持するために規定し得るからである。粒子中での残留発泡剤(例えば、フルオロケミカル)の保持は、比較的低いレベルであっても、噴霧乾燥および遠心分離の間に代表的に与えられるように、多孔性微細構造物の荷電の最小化を介助し得る。一般的な静電気的原理および本明細書中の教示は、当業者が、過度の実験を行うことなく、開示される粉末の静電気力を低減させるために有用であるさらなる物質を同定し得る。さらに、必要ならば、静電気力はまた、帯電技術および荷電技術を使用して操作され得、そして最小化され得る。
【0099】
上記の驚くべき利点に加えて、本発明は水素結合および液体結合の減弱または減少をさらに提供する。当業者に公知であるように、水素結合および液体結合の両者は粉末により吸収される水分から生じ得る。一般には、より高い湿気が親水性表面についてのより高い粒子間力を生成する。これは、ラクトースのような比較的親水性である化合物を使用する傾向にある吸入治療のための先行技術の薬学的処方物における実質的な問題である。しかし、本明細書での教示に従って、吸収された水に起因する接着力は、接触表面の疎水性の増加により、調製され得るかまたは減少され得る。当業者は、粒子の疎水性の増加が、賦形剤の選択を通じて達成され得、そして/あるいは流動床と使用して採用されるような、生成後の噴霧乾燥コーティング技術を使用することを認識する。従って、好ましい賦形剤は、リン脂質、脂肪酸セッケンおよびコレステロールのような疎水性の界面活性剤を含む。本明細書での教示に鑑みて、当業者は、過度に実験をすることなく類似の所望される特性を示す物質を同定し得る。
【0100】
本発明に関して、安息角またはせん断率のような方法が、乾燥粉末の流入特性を評価するために使用され得る。安息角は、錐体粉末が平らな表面上に細孔される場合では形成された角度として規定される。45°〜20°の範囲の安息角を有する粉末が好ましく、そして適切な粉末流出を示す。より特別には、33°〜20°の間の安息角を包含する粉末が、比較的低いせん断力を示し、そして吸入治療(例えば、DPI)における使用のための薬学的調製物において特に有用である。せん断力の指標は、安息角よりも測定に時間を費やすが、より信頼性が高いと考えられ、そして決定が容易である。当業者は、AmidonおよびHoughton(G.E.AmidonおよびM.E.Houghton、Pharm.Manuf.,2、20、1985、これは本明細書において参考として援用される)により概説される実験手順が、本発明の目的のためのせん断率を推定するために使用され得ることを認識する。S.KocovaおよびN.Pilpel、Pharm.Pharmacol.8、33−55、1973もまた、本明細書中で参考として援用され、せん断率が、降状応力、内部摩擦の有効角度、張力の強度および特定の粘着力から推定される。本発明において、約0.98未満のせん断の指標を有する粉末が所望される。より好ましくは、開示された組成物において使用される粉末、方法およびシステムが、約1.1未満のせん断の指標を有する。特別の好ましい実施態様では、せん断の指標は、約1.3未満か、または約1.5未満である。当然ながら、異なるせん断の指標が、目的の一部における活性剤または生理活性剤の効果的な沈着の結果を提供するために使用され得る。
【0101】
粉末の流動特性は、かさ密度の測定と良好に相関することが示されてきたこともまた認識される。この点について、従来の先行技術の思索(C.F.Harwood、J.Pharm.Sci.,60,161−163、1971)は、かさ密度の増加は、その物質のせん断の指標により予測されるような改良された流動特性と相関する。逆に、本発明の多孔性微細構造物については、優れた流動特性が、比較的小さなかさ密度を有する粉末により示されるという驚くべきことが見出された。つまり、本発明の中空多孔性粉末は、細孔を実質的に欠くという粉末上の優れた流動特性を示した。その目的のために、特に都合の良い流動特性を示す約0.5g/cm3未満のかさ密度を有する多孔性微細構造粉末を提供する可能性が見出された。さらに驚くべきことに、素晴らしい流動特性を示す役0.3g/cm3未満、または約0.1g/cm3未満ものかさ密度を有する多孔性微細構造粉末を提供する可能性が見出された。優れた流動特性を有する低容積密度の粉末を生成する能力は、本発明の新規かつ予期しない性質をさらに強調する。
【0102】
さらに、多孔性微細構造物により提供される低減した引力(例えば、ファンデルワールス結合、静電気結合、水素結合および溶液結合など)および素晴らしい流動能力は、それらを吸入治療(例えば、DPI、MDI、噴霧器)についての処方物において有用にさせることが理解される。優れた流動特性と共に、微細構造物の多孔性(すなわち)および/または中空の設計もまた、発出された場合において粉末の得られるエアロゾル特性の生成において重要な役割を果たす。この現象は、MDIもしくは噴霧器、またはDPIの場合のような乾燥形態における多孔性微細構造物の送達についてもあてはまる。この点については、多孔性微細構造および分散された微粒子の比較的高い表面積は、匹敵するサイズの非多孔性粒子よりもより長い距離についてかなり容易に吸入間の気体の流出に沿って搬送を可能にする。
【0103】
より詳細には、これらの高い空隙率により、粒子の密度が1.0g/cm3未満、代表的には0.5g/cm3未満、よりしばしば0.1g/cm3に類似して、そして0.01g/cm3までも優意に低い。幾何学的な粒子サイズとは異なり、空気力学的な粒子サイズは、daerであり、多孔性微細構造物は実質的に粒子濃度に依存して、ρ:daer=dgeoρであり、ここでdgeoは幾何学的な直径である。0.1g/cm3の粒子直径について、daerはdgeoよりもおおまかには3倍小さく、肺の抹消組織への粒子の沈着の増加を導き、従って喉への沈着を僅かに導く。この点について、多孔性微細構造物の平均的な空気力学的な直径は、好ましくは約5μm未満であり、より好ましくは約3μm未満であり、そして特に好ましい実施態様では、約2μm未満である。このような粒子の分布は、DPI、MDIまたは噴霧器を使用して投与されるか否かにより生理活性剤の肺深部の沈着を増加させるように作用する。さらに、空気力学的直径よりもより大きな幾何学的な直径を有することにより、肺胞壁に対して粒子をより接近させ、従って小型の空気力学的直径の粒子を増加させる。
【0104】
実施例において引き続いて示されるように、本発明のエアロゾル化処方物の粒子サイズの分布は、例えば、カスケード衝突または飛行時間分析方法のような従来の技術により計測可能である。さらに、吸入デバイスから発せられる用量の決定は、奨唱される米国薬局方の方法(Pharmacopeial Previews、22(1996)3065)(これは本明細書において参考として援用される)に従う用量である。これらおよび関連する技術は、エアロゾルの「微細粒子化」し(これは肺に効果的に沈着されるようであるこれらの粒子に対応する)の計算を可能にする。本明細書で使用される、句「微細粒子比」とは、8段階のAndersonカスケード衝突器のプレート2〜7上へDPI、MDIまたは噴霧器からの作動1回あたりで送達される活性薬物の総量の割合をいう。このような測定に基づいて、本発明の処方物は、好ましくは約20重量%以上の多孔性微細構造物(W/W)を有し、より好ましくは、これらは約25重量%〜80重量%、およびさらにより好ましくは約30重量%〜70重量%の微細粒子の比を示す。選択された実施態様において、本発明は好ましくは約30重量%、約40重量%、約50重量%、約60重量%、約70重量%または約80重量%よりも高い微細粒子比を含む。
【0105】
さらに、本発明の処方物は、先行技術の調製物と比較した場合、衝突器の誘導口上ならびにプレート0および1上で、比較的低い沈着速度を示すこともまた見出された。これらの化合物での沈着は、ヒトの喉における沈着と関連する。より具体的には、大半の市販のMDIおよびDPIは、本発明の処方物が代表的には約20重量%未満を沈着する一方で、総用量の約40〜70%(w/w)の喉への沈着を擬態する。従って、本発明の好ましい実施態様は、約40重量%、約35重量%、約30重量%、約25重量%、約20重量%、15重量%または10重量%の喉への沈着を擬態する。当業者は、本発明により提供される喉への沈着における有意な減少が、喉経の刺激およびカンジダ症のような関連される局所的な副作用の対応した減少をもたらすことを認識する。
【0106】
本発明により提供される有利な沈着プロファイルについて、MDI発泡剤が、代表的には懸濁された粒子を喉の後部の方へ高速でデバイス外部に押し出すことが周知である。先行技術の処方物は、代表的には有意な割合の大型粒子および/または凝集物を含むので、発せられた用量の2/3以上が喉に影響し得る。さらに、従来の粉末処方物の所望されない送達プロフィールもまた、DPIデバイスで生じるような低い粒子速度の条件下で示される。一般には、この問題は、凝集に共される固体で、高密度な粒子をエアロゾルする場合に固有である。なおも、上記で議論されるように、本発明の安定化分散物の新規かつ予期しない特性は、DPI、MDI噴霧器または噴霧器のような吸入デバイスからの投与において驚くべき低さの喉への沈着を生じる。
【0107】
任意の特定の理論によって拘束されることを切望しないが、本発明により提供される減少された喉への沈着は、粒子の凝集の減少が生じ、そして組み込まれた微細構造物の中空および/または多孔性の形態から生じるようである。つまり、分散された微細構造物の中空および多孔性の性質は、野球の球よりも速く中空/多孔性ホイッフルボールが減速するように、発泡剤の流れ(またはDPIの場合におけるガスの流れ)における粒子の速度を減速させる。従って、喉の後部に影響し、そして固着するよりもむしろ、比較的遅延な移動性粒子が患者による吸入で共される。さらに、この粒子の高度に多孔性の性質が、微細構造物内部の発泡剤が迅速に離れることを許容し、そして喉に影響する前に粒子密度が落下することを可能にする。従って、実質的に高い割合の投与される生理活性剤が、効率的に吸収され得る肺気道において沈着される。
【0108】
吸入治療については、当業者は、本発明の多孔性微細構造物がDPIにおいて特に有用であることを認識する。従来のDPIまたは乾燥粉末吸入器は粉末化処方物を含み、そして予め決定された医薬の投薬量のデバイスは、単独またはラクトースキャリア粒子と混和されるかのいずれかで、吸入のために乾燥粉末の微細な噴霧物またはエアロゾルとして送達される。医薬は、0.5〜20μm間の範囲のサイズの分散した粒子中の容易に分散するように処方される。この粉末は吸気によるかまたはいくつかの外部送達力(例えば、圧縮空気)によるかのいずれかで作動される。DPI処方物は、代表的には単回用量単位でパッケージされるかまたはこれらはデバイスへの用量の手動移動で多様な用量を計測し得るリザーバのシステムを使用する。
【0109】
DPIは、一般に使用される投薬送達システムに基づいてクラス分けされる。この点については、2つの主要な型のDPIは、投薬送達デバイスおよび大型リザーバ送達システムを含む。本明細書で使用される、用語「リザーバ」は、一般的な意味で使用され、そして前後関係の制限により指示されない限りは両方の構成を包含するように適用する。任意の事象においては、単位投薬送達システムは単回単位としてデバイスに存在する粉末処方物の投薬を必要とする。このシステムについては、処方物は、ホイルにパッケージされ得る投薬口へ前もって充填されるかまたは水分が侵入するのを阻止するためにブリスターストリップに置かれる。他の単位投薬パッケージは硬質ゼラチンカプセルを含む。DPIについて設計された大半の単位投薬容器は、固定容積技術を使用して充填される。結果として、単位パッケージへ測定され得る最小限の投薬の物理的な制限(ここでは密度)があり、これは粉末流動性およびかさ密度により支配される。現在、単位投薬コンテナに充填され得る乾燥粉末の範囲は、投与量あたり25〜500μgの範囲での薬物充填に対応する5〜15mgの範囲にある。逆に、大型リザーバ送達システムは、約200投薬量までの個別の送達において測定されるべき粉末の正確な量を提供する。単位投薬システムと同様に、粉末は、粉末が充填される固定型容積セルまたはチャンバーを使用して測定される。従って、粉末の密度は、このデバイスで送達され得る最小限の用量を制限する主要な因子である。最近の大型リザーバタイプのDPIは、作動あたり200μg〜20mgの粉末の間を測定し得る。
【0110】
DPIは、それらがカプセル/ブリスターをこじ開けるように操作されるように、または作動の間に大型粉末を充填し、ついで患者の吸気に起因するマウスピースまたは衝動から分散されるように設計される。先行技術の処方物がDPIデバイスから作動される場合、ラクトース/薬物の凝集体がエアロゾル化され、そして患者は乾燥粉末の噴霧物を吸引する。吸入プロセスの間は、そのキャリア粒子はせん断力と対抗し、その結果いくつかの微紛化薬物粒子がラクトース粒子の表面から分離される。薬物粒子は、引き続いて肺へ搬送される。大型のラクトース粒子は、サイズおよび慣性力の制約に起因して喉および上部気道に影響する。薬物粒子の送達の効果は、キャリア粒子の粘着およびこれらの空気力学的特性のこれらの程度により支配される。
【0111】
脱凝集(deaggregation)は、処方、プロセスおよびデバイスの設計の改良を通じて増加され得る。例えば、微細粒子ラクトース(FPL)は、粗いラクトースキャリアとしばしば混合され、FPLはキャリア粒子上の高エネルギー結合部位を占有する。このプロセスは、微粒化薬物粒子の付着のためのより受動的な部位を提供する。薬物のこの三次のブレンドは、微細粒子比において統計学的に有意な増加を提供することが示された。他のストラテジーは、薬物粒子が、粒子沈着をさらに増加させるために、多くDPIを、その投薬形態をバフルを通過することにより、または流動特性を破壊する蛇行チャネルを介して脱凝集を提供するように設計する。流出特性を崩壊する蛇行性チャネルを通じてFPLと混合されて凝集単位を生成する特別なプロセス条件を含む。
【0112】
FPLの添加、FPLの凝集および特別なデバイス設計が、処方物の脱凝集における改良を提供するが、臨床学的に重要なパラメーターは、患者が受ける粒子の用量である。脱凝集における改良が提供され得るが、主要な問題が最新のDPIデバイスにおいて、増加した吸気努力により呼吸可能な投与量の増加があるという点でなおも存在する。これは、気流が、呼吸努力の増加につれて吸入器を介して増加するにつれ、粒子の集塊物の増加した脱凝集に対応する増加した微細粒子比の結果である。結果として、投薬精度が保証され、そのデバイスが感受性の集団(例えば、小児、青年および高齢者)に対する高度に効果的な薬物を投与するために使用される場合には厄介な問題を生じる。さらに、従来の調製物と関連する投薬の不正確さは、当局の承認を複雑にし得る。
【0113】
非常に対照的に、本発明の多孔性微細構造粉末は、先行技術のキャリア粒子に関連する多くの困難を除去する。つまり、DPI実施における改良は、粒子、サイズ、空気力学、形態および密度の操作、ならびに湿度および電荷を制御することにより提供され得る。この点について、本発明は処方物を提供し、ここで、医薬および賦形剤またはバルク剤が、好ましくは多孔性微細構造物と会合され得るか、またはそれに含有され得る。上記で示されたように、本発明に関連する好ましい組成物は、代表的にかさ密度が0.1g/cm3未満、およびしばしば0.05g/cm3未満である粉末を得る。従来のDPI処方物よりも一桁低い、かさ密度を有する粉末を提供すると、単位投薬容器中に充填されるか、またはリザーバを基本とするDPIを介して計量される選択された生理活性剤のはるかにより少ない投薬量を許容にする。有効に少量を計測する能力は、DPI送達に提案される低用量のステロイド、長期間作用する気管支拡張剤および新規のタンパク質またはペプチド薬物について特に重要である。さらに、キャリア粒子に関連しない粒子を効果的に送達する能力は、生成物処方、充填を単純化し、そして所望されない副作用を低減させる。
【0114】
上記で議論されたように、本発明の中空多孔性粉末は、実質的に細孔を欠く等価な粉末については、本明細書に記載される安息角またはせん断率について、測定されるように、優れた流動特性を示す。つまり、優れた粉末の流動は、かさ密度および粒子の形態の関数であるようであり、粉末が0.5g/cm3未満のかさ密度を有する場合に観察される。好ましくは、この粉末は約0.3g/cm3、0.1g/cm3未満あるいは約0.05g/cm3未満ものかさ密度を有する。この点については、細孔、気泡、中空、欠損または他の間質性空間を含む多孔性微細構造物は、粒子間の表面接触面積を減少させることにより粉末の流動特性に寄与すると理論づけられる。さらに、好ましい実施態様におけるリン脂質の使用およびフッ化発泡剤の保持もまた、静電気力の強度および水分含有量の変化を低減することにより粉末の流動特性の改良に寄与し得る。
【0115】
前述の利点に加えて、開示された粉末は、それらをDPIにおける使用について特に効果的にさせる有利な空気力学的特性を示す。より具体的には、多孔性微細構造および比較的高い微細粒子の表面積は、匹敵するサイズの比較的比多孔性の粒子よりも、それらをよりはるかに容易にかつより長距離で吸入の間、気体の流動に沿って、輸送され得るようにさせ得る。これらの高い空隙率および低密度のため、DPIでの多孔性微細構造物の投与は、肺の末梢領域および喉への増加された粒子の沈着および喉において対応して、より低い沈着を提供する。このような粒子の分布は、全身投与について好ましい投与された薬剤の肺深部への沈着を増加させるように作用する。さらに、先行技術のDPI調製物を超える実質的な改良において、本発明の低密度、高い多孔性の粉末は、好ましくはキャリア粒子の必要性を削除する。大型のラクトースキャリア粒子は、それらのサイズに起因して喉および上部気道に影響することから、このような粒子の削除は、喉への沈着および従来のDPIに関連する任意の関連する「かん口」効果を最小化させる。
【0116】
乾燥粉末構成における使用と共に、本発明の多孔性微細構造物は、安定化分散物を提供するために懸濁媒体中に組み込まれ得ることが認識される。とりわけ、安定化分散物は、MDI、噴霧器または液体投薬注入(LDI技術)を使用して、患者の肺気道への生理活性剤の効果的な送達を提供する。
【0117】
DPI実施態様については、MDI、ネブライザーまたはLDI技術を使用する生理活性剤の投与は、穏やかな、適度なもしくは重要な、急性もしくは慢性症状の処置について、または予防的な処置について示され得る。さらに、生理活性剤は、局所性または全身性状態または障害を処置するために投与され得る。正確に投与される用量は、患者の年齢および状態、使用される特定の医薬および投与の頻度に依存し、そして主治医の裁量に最終的には依存する。生理活性剤の組み合わせが使用される場合、組み合わせの各々の成分の投薬量は、一般に単独で使用される場合での使用される各々の成分の量である。
【0118】
当業者は、開示された分散物または懸濁物の増強された安定性が、懸濁された粒子間のファンデルワールス引力を低下させることにより、および懸濁媒体および粒子間の密度の差異を低減させることにより大部分は達成されることを認識する。本明細書の教示に従って、懸濁物の安定性の増加は、適合性の懸濁媒体中で次いで分散される多孔性微細構造物を操作することにより与えられ得る。上記で議論されるように、多孔性微細構造物は、液体懸濁媒体が自由に浸透し、または粒子の境界を拡散すことを可能にする細孔、気泡、中空、欠損または他の間質性空間を含む。特に好ましい実施態様は、中空および多孔性の両方、大半の蜂の巣状または泡様である多孔性微細構造物を含む。特に好ましい実施態様においては、多孔性微細構造物は、中空、細孔の噴霧乾燥ミクロスフェアを含む。
【0119】
多孔性微細構造物が懸濁媒体(すなわち、発泡剤)中に配置される場合、この懸濁媒体は、粒子を浸透し得、その結果「ホモ分散」を生成し、ここで、連続相および分散相の両方は識別不可能である。規定されたまたは「仮想的な」粒子(すなわち、微粒子マトリクスにより限局された容積を含む)が、これらが懸濁される媒体に、ほとんど完全に形成されることから、粒子の凝集(凝結)を駆動する引力が最小化される。さらに、規定される粒子と連続相と間の密度の差異が媒体で満たされた微細構造物を有することにより最小化され、その結果、効果的に遅延する粒子は乳濁するかまたは沈降する。それ自体、本発明の多孔性ミクロスフェアおよび安定化懸濁物は、多くのエアロゾル化技術(例えば、MDIおよび噴霧)に特に適合可能である。さらに、安定化分散物は、液体投薬注入の適用において使用され得る。
【0120】
代表的な先行技術の懸濁物(例えば、MDIについて)は、粒子の相互作用を立体的に減少させるために、粒子間またはポリマー間の静電気的斥力を増加させるために、大部分の固体粒子および少量(1重量%未満)の界面活性剤(例えば、レシチン、Span−85、オレイン酸)を含む。非常に対照的に、本発明の粒子懸濁液は、粒子間の引力を増加しないが、むしろ粒子間の引力を減少するように設計される。非水性媒体における凝結を駆動する主な力は、ファンデルワールス力である。上記のように、ファンデルワールス力は、本来は量子学的であり、そして変動双極子間の引力(すなわち、誘導される双極子誘導双極子相互作用)として可視化され得る。分散力は、非常に短い範囲であり、そして原子間の距離の6番目の力と同じ力である。2つの巨視的体が互いに接近する場合、原子間の分散引力は総計になる。得られる力は、かなりより長い範囲であり、そして相互作用対の幾何学に依存する。
【0121】
より詳細には、2つの球状粒子について、VDW力VAの大きさが以下:
【0122】
【数1】

【0123】
によって近似され、ここでAeffは、粒子および媒体の性質の説明をする有効Hamaker定数であり、HOは、粒子間の距離であり、そしてR1およびR2は、球状粒子1および2の半径である。有効Hamaker定数は、以下分散した粒子および懸濁物媒体の分極率における差異に比例し:
【0124】
【数2】

【0125】
ここで、ASMおよびAPARTは、それぞれ、懸濁物媒体および粒子についてのHamaker定数である。懸濁された粒子および分散液媒体は、性質において類似するようにと、ASMおよびAPARTは、大きさがより近くなり、そしてAeffおよびVAはより小さくなる。すなわち、懸濁物媒体と関連するHamaker定数と、分散された粒子と関連するHamaker定数との間の差異を低減することによって、有効Hamaker定数(および対応するファンデルワールス引力)は低減され得る。
【0126】
Hamaker定数における差異を最小化する1つの方法は、「ホモ分散液」を作製することであり、すなわち上で議論されるように本質的に区別不可能な連続相および分散相の両方を作製することである。有効Hamaker定数を低減するために粒子の形態学を開発することに加えて、(多孔性微細構造物を規定する)構造的マトリクスの成分は、好ましくは選択された懸濁物媒体のHamaker定数に比較的近いHamaker定数を示すように選択される。この点において、懸濁物媒体および粒子成分のHamaker定数の実際の値を使用して、分散液成分の適合性を決定し、そして調製物の安定性に関する良好な指標を提供し得る。あるいは、測定可能なHamaker定数と一致するが、より容易に認識可能な特徴的な物理学的値を使用して、比較的適合性な多孔性微細構造成分および懸濁物媒体を選択し得る。
【0127】
この点において、多くの化合物の屈折率値が、対応するHamaker定数とともに増加する傾向があることが見出された。従って、容易に測定可能な屈折率値は、懸濁物媒体および粒子賦形剤のどの組み合わせが、比較的低い有効Hamaker定数および関連する安定性を有する分散液を提供するかに関するかなり良好な指標を提供するために使用され得る。化合物の反射率は、広範に利用可能であるか、または容易に誘導されるので、そのような値の使用は、過度な実験なしに本発明に従う安定化分散液の形成を可能にすることが理解される。例示のみの目的のために、開示される懸濁液と適合性のいくつかの化合物の反射率を、すぐ下の表1に提供する:
【0128】
【表1】

【0129】
上記の適合性分散物成分と一致して、当業者は、成分が約0.5未満の屈折率差異を有する分散物の形成が好ましいことを理解する。すなわち、懸濁媒体の屈折率は、好ましくは、多孔性粒子または多孔性微細構造物に関し、約0.5の屈折率内である。懸濁媒体および粒子の屈折率が、直接的に測定され得るか、または各それぞれの相における主要な成分の屈折率を使用して近似され得ることがさらに理解される。粒子または多孔性微細構造物について、主要な成分は、重量パーセントに基づいて決定され得る。懸濁媒体について、主要な成分は、代表的には、容量パーセントに基づいて誘導される。本発明の選択された実施態様において、屈折率差異値は、好ましくは、約0.45未満、約0.4未満、約0.35未満、または約0.3未満でさえある。より低い屈折率差異が、より大きな分散物安定性を意味すると仮定すると、特に好ましい実施態様は、約0.28未満、約0.25未満、約0.2未満、約0.15未満、または約0.1未満の率差異さえ含む。本開示が与えられると、当業者は、どの賦形剤が特に適合性であるかを過度な実験なしに決定し得ることと考えられる。好ましい賦形剤の究極の選択はまた、他の因子(生体適合性、規制状態、製造の容易さ、費用を含む)によって影響される。
【0130】
上記のように、粒子と連続相との密度差の最小化は、微細構造の多孔性および/または中空性質に大部分依存し、その結果、その懸濁媒体は、粒子体積のほとんどを構成する。本明細書において使用される場合、用語「粒子容積」は、それらが固体、すなわち、粒子境界によって規定される容積であった場合、取り込まれた中空/多孔性粒子によって置換された懸濁媒体の体積に対応する。説明のために、そして上記のように、微粒子容積によって充填されたこれらの液体は、「仮想粒子」と呼ばれ得る。好ましくは、生理活性剤/賦形剤シェルまたはマトリクスの平均容積(すなわち、多孔性微細構造によって実際に置き換えられた媒体の容積)は、平均粒子溶液の70%未満(または仮想粒子の70%未満)を含む。より好ましくは、微粒子マトリクスの容量は、平均粒子容量の約50%未満、約40%未満、約30%未満、または約20%未満さえ含む。さらにより好ましくは、シェル/マトリクスの平均容量は、平均粒子容量の約10%未満、約5%未満、または約3%未満を含む。当業者は、そのようなマトリクスまたはシェル容量が、代表的には、中に見出される懸濁媒体によって圧倒的に示される実質的な粒子密度にほとんど寄与しないことを理解する。当然のことながら、選択された実施態様において、多孔性微細構造を形成するために使用される賦形剤または生物活性剤は、得られるマトリクスまたはシェルの密度が、周囲の懸濁媒体の密度に近似するように選択され得る。
【0131】
そのような微細構造物の使用は、実質的粒子の見かけの密度が、懸濁媒体の密度に接近し、引力であるファンデルワールス力を実質的に除去するのを可能にすることがさらに理解される。さらに、先に議論されるように、微粒子マトリクスの成分は、好ましくは、他の考慮が多く与えられる場合にはできる限り、懸濁媒体の密度に近似するように選択される。従って、本発明の好ましい実施態様において、実質的粒子および懸濁媒体は、約0.6g/cm3未満の密度差異を有する。すなわち、実質的粒子(マトリクスの境界によって規定される)の平均密度は、懸濁媒体の約0.6g/cm3の内である。より好ましくは、実質的粒子の平均密度は、選択された懸濁媒体の0.5、0.4、0.3、または0.2g/cm3の内である。さらにより好ましい実施態様において、密度差異は、約0.1未満、約0.05未満、約0.01未満、または約0.005g/cm3未満でさえある。
【0132】
上記の利点に加えて、中空多孔性粒子の使用は、懸濁液中に非常に高い容量の粒子比を含む自由流れ(free−flowing)分散の形成を可能にする。密接なパッキングに接近する容量比での先行技術の分散物の処方は、一般的に分散物粘弾性挙動における劇的な増加を生じることが理解されるべきである。このタイプの流体力学的挙動は、MDI適用には適切ではない。当業者は、粒子の容量比が、粒子の見かけの容量(すなわち、粒子容量)とシステムの総容量との比として規定され得ることを理解する。各システムは、最大の容量比またはパッキング比を有する。例えば、単純な立方体配置での粒子は、0.52という最大のパッキング比に達するが、面心立方/六方細密構造の粒子は、約0.74の最大パッキング比に達する。非球形粒子または多分散システムについて、誘導される値は異なる。従って、最大パッキング比は、頻繁に、所定のシステムについて経験的変数であると考えられる。
【0133】
ここで、驚くべきことに、本発明における多孔性構造の使用が、細密構造に接近する高容量比でさえ、望ましくない粘弾性挙動を示さないことが見出された。対照的に、それらは依然として、固体微粒子を含む類似の懸濁液と比較して、ほとんどまたは全く降伏応力を有さない、自由流れの低粘性懸濁物のままである。開示される好ましい懸濁液の低粘性は、液体充填中空多孔性粒子間の比較的低いファンデルワールス引力に、少なくとも大部分には起因すると考えられる。このように、選択された実施態様において、開示された分散物の容量比は、約0.3を超える。他の実施態様は、0.3〜約0.5のオーダー、または0.5〜約0.8のオーダーでパッキング値を有し得、より高い値は、密接なパッキング状態に接近する。さらに、粒子沈澱は、容量比が密接なパッキングに接近する場合に自然に減少する傾向にあるので、比較的濃縮された分散物の形成は、さらに処方の安定性を増大し得る。
【0134】
本発明の方法および組成物は、比較的濃縮された懸濁液を形成するために使用され得るが、安定化因子は、かなり低いパッキング容量で等しく作用し、そしてそのような分散物は、本開示の範囲内にあることが意図される。この点において、低い容量比を含む分散物は、先行技術を使用して安定化することが非常に困難であることが理解される。逆に、本明細書中に記載されるような生物活性剤を含む多孔性微細構造を取り込む分散物が、低い容量比でさえ特に安定である。従って、本発明は、安定化分散物、特に呼吸性分散物が、0.3未満の容量比で形成され、そして使用されることを可能にする。いくつかの好ましい実施態様において、容量比は、約0.0001〜0.3、またはより好ましくは0.001〜0.01である。さらに他の好ましい実施態様は、約0.01〜約0.1の容量比を有する安定化懸濁液を含む。
【0135】
本発明の多孔性微細構造はまた、微小化生理活性剤の希釈懸濁物を安定化するために使用され得る。このような実施態様において、この多孔性微細構造を添加して懸濁物における粒子の用量の割合を増加することによって、クリーム化または沈降に対する懸濁物の安定性を増加させ得る。さらに、これらの実施態様において、組み込まれた微細構造はまた、微小化薬物粒子の密接な接近(凝集)を防止するにおいて作用し得る。このような実施態様において組み込まれた多孔性微細構造は、必ずしも、生理活性剤を含まないことを理解するべきである。むしろ、それらは、界面活性剤を含む、種々の賦形剤のみから形成され得る。
【0136】
当業者はさらに、本発明の安定化された懸濁物または分散剤が選択された懸濁媒体における微細構造の分散によって調製され得、これは、次いで、容器またはリザーバ中に入れられ得ることを理解する。この点に関して、本発明の安定化された調製物は、最終的な所望の分散物の濃度を生成するのに充分な量においてそれらの成分を単に合わせることによって作製され得る。微細構造は、力学エネルギーなく容易に分散するが、分散を補助するための力学エネルギーの適用(例えば、超音波処理の補助を用いる)が、安定なエマルジョンまたは逆エマルジョンの処方物のために特に意図される。あるいは、その成分は、単純な振盪または他の型の攪拌によって混合され得る。このプロセスは好ましくは、無水条件下で行われて、水分の懸濁物安定性に対する副作用を回避する。一旦形成されると、この分散物は、凝集および沈澱に対する感受性が減少する。
【0137】
本明細書を通して示されるように、本発明の分散物は、好ましくは安定化される。広い意味において、用語「安定化分散物」は、生物活性剤の効果的な送達を提供するために必要とされる程度まで、凝集、フロキュレーション、またはクリーム化に耐える任意の分散物を意味することが理解される。当業者は、所定の分散物の安定性を評価にするために使用され得るいくつかの方法が存在することを理解するが、本発明の目的のための好ましい方法は、クリーム化時間または沈澱時間の決定を含む。実施例IXおよび図2において理解されるように、好ましい方法は、遠心力に対して懸濁粒子を供する工程および時間の関数としてその懸濁物の球高度を測定する工程を包含する。吸光度の迅速な減少は、貧弱な安定性を有する懸濁物を示す。当業者は、過度の実験することなく特定の懸濁物に対してこの手順を適合させ得ることを理解する。
【0138】
本発明の目的のために、クリーム化時間は、懸濁された薬物粒子が、懸濁媒体の容量の1/2までクリーム化する時間として規定される。同様に、沈澱時間は、微粒子が液体媒体の容量の1/2で沈澱するのにかかる時間として規定され得る。調製物のクリーム化時間を決定するための1つの比較的単純な方法は、封をしたガラスバイアル中に微粒子懸濁物を提供することである。このバイアルは、攪拌または振盪されて比較的均質の分散物を提供し、この分散物は、次いで別にされて、適切な器具を用いるか、または可視的検査によって観察される。次いで、懸濁された微粒子が、懸濁媒体の容量の1/2までクリーム化する(すなわち、懸濁媒体の上方半分に昇る)のに必要な時間、または容量の1/2内で沈澱する(すなわち、媒体の下方1/2に落ち着く)のに必要な時間が記録される。1分より長いクリーム化時間を有する懸濁液処方物が好ましく、そして適切な安定性を示す。より好ましくは、安定化分散物は、約1分を超え、約2分を超え、5分を超え、10分を超え、15分を超え、20分を超え、または30分を超えるのクリーム化時間を含む。特に好ましい実施態様において、安定化分散物は、約1、1.5、2、2.5、または3時間よりも長いクリーム化時間を示す。沈澱時間について実質的に等価な時間は、適合性分散物を示す。
【0139】
本明細書において議論されるように、本明細書において開示される安定化分散物は、好ましくは、エアロゾル化を介する患者の鼻孔または肺気道に対して、例えば定用量吸入器を用いて投与され得る。このような安定化調製物の使用は、上記のように優れた投与再現性および改善された肺沈着を提供する。MDIは、当該分野において周知であり、そして過度の実験を行うことなく本発明の分散物の投与のために容易に用いられ得る。呼吸はMDIを活性化し、そして開発されたか、またはこれから開発される他の改善を含むものもまた、安定化分散物および本発明に適合しており、そしてそれ自体は、本発明の範囲内であることが意図される。しかし、好ましい実施態様において、安定化分散物は多数の異なる経路(局所、経鼻、肺または経口を含むがそれらに限定されない)を用いてMDIとともに投与され得る。当業者は、このような経路が周知であり、そして投薬および投与手順が本発明の安定化分散物について容易に誘導させ得ることを理解する。
【0140】
MDIキャニスター(canister)は、一般に、使用される噴霧剤の蒸気圧に抵抗し得る容器またはリザーバ(例えば、プラスチックまたはプラスチックコートガラス瓶または好ましくは金属缶または例えば、必要に応じてアノード化され得る、ラッカーコートされ得る、および/またはプラスチックコートされ得るアルミニウム缶(ここで、この容器は定量バルブを用いて閉じられている))を含む。定量バルブは、作動(actuation)を介して処方物の測定された量を送達するように設計される。そのバルブは、そのバルブを通して噴霧剤の漏れを予防するガスケットを取り込む。このガスケットは、例えば、低密度ポリエチレン、クロロブチル、黒および白ブタジエンアクリロニトリルゴム、ブチルゴムおよびネオプレンのような任意の適切な弾性材料を含み得る。適切なバルブは、エアロゾル工業において周知の製造業者から市販されている(例えば、Valois、France(例えば、DF10、DF30、DF31/50 ACT、DF60)、Bespak plc、LTK(例えば、BK300、BK356)、および3M Neotechnic Ltd、LIK(例えば、Spraymiser))。
【0141】
各充填キャニスターは、それを使用して患者の肺または鼻孔への医薬の投与のための定用量吸入器を形成する前に、適切なチャネリングデバイスへ簡便に装着される。適切はチャネリングデバイスは、例えば、バルブアクチュエーターおよび円柱または円錐状の経路(ここを通って医薬が定量バルブを介して充填キャニスターから、患者の鼻または口へと送達され得る)(例えば、マウスピースアクチュエーター))を含む。定用量吸入器は、1作動あたり医薬の一定単位投薬量(例えば、1作動あたり10〜5000μgの範囲の生理活性剤)を送達するように設計される。代表的に、単一充填キャニスターは、10〜数百までものショットすなわち用量を提供する。
【0142】
MDIに関して、本発明の利点は、噴霧剤として作用するに適切な作動蒸気圧を有する生体適合性懸濁媒体が使用され得る。特に好ましい懸濁媒体は、定用量吸入器における使用に適合している。すなわち、それらは、定量バルブの作動または関連する圧力放出においてエアロゾルを形成し得る。一般的に、選択された懸濁媒体は、生体適合性(すなわち、比較的非毒性)であるべきであり、そして生理活性剤を含む懸濁された多孔性微細構造に関して非反応性であるべきである。好ましくは、この懸濁媒体は、多孔性ミクロスフェアにおいて取り込まれた任意の成分に対して実質的な溶媒としては作用しない。本発明の選択された実施態様は、フルオロカーボン(他のハロゲンで置換されたものを含む)、ヒドロフルオロアルカン、過フルオロカーボン、炭化水素、アルコール、エーテルまたはそれらの組合せからなる群より選択される懸濁媒体を含む。この懸濁媒体は、特定の特徴を付与するように選択された種々の化合物の混合物を含み得る。
【0143】
本発明のMDI懸濁媒体における使用に特に適した噴霧剤は、室温での圧力で液化し得、そして吸入または局所使用において、安全で、毒性学的に無害で、そして副作用がないそれら噴霧剤気体である。この点に関して、適合性の噴霧剤は、定用量吸入器の作動の際にエアロゾルを効率的に形成するのに充分な蒸気圧を有する任意の炭化水素、フルオロカーボン、水素含有フルオロカーボン、またはそれらの混合物を含み得る。これらの噴霧剤は、代表的に、ヒドロフルオロアルカンまたはHFAと称され、特に適合性である。適切な噴霧剤は、例えば、短鎖炭化水素、C1-4水素含有クロロフルオロカーボン(例えば、CH2ClF、CCl22CHClF、CF3CHClF、CHF2CClF2、CHClFCHF2、CF3CH2ClおよびCClF2CH3);C1-4水素含有フルオロカーボン(例えば、HFA)(例えば、CHF2CHF2、CF3CH2F、CHF2CH3およびCF32FCF3);ならびに過フルオロカーボン(例えば、CF3CF3およびCF3CF2CCF3)を含む。好ましくは、単一の過フルオロカーボンまたは水素含有フルオロカーボンが噴霧剤として使用される。噴霧剤として特に好ましいのは、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(CF3CH2F)(HFA−134a)および1,1,1,2,3,3,3、−ヘプタフルオロ−n−プロパン(CF3CHFCF3)(HFA−227)、過フルオロエタン、モノクロロジフルオロメタン、1,1−ジフルオロエタン、およびそれらの組合せをである。この処方物は、成層圏オゾンを涸渇させる成分は含まないことが所望される。特に、クロロフルオロカーボン(例えば、CCl3F、CCl22およびCF3CCl3)を実質的に含まないことが所望される。
【0144】
懸濁媒体において有用である、特定のフルオロカーボンまたはフッ化化合物のクラスは、フルオロヘプタン、フルオロシクロヘプタン、フルオロメチルシクロヘプタン、フルオロヘキサン、フルオロシクロヘキサン、フルオロペンタン、フルオロシクロペンタン、フルオロメチルシクロペンタン、フルオロジメチルシクロペンタン、フルオロメチルシクロブタン、フルオロジメチルシクロブタン、フルオロトリメチルシクロブタン、フルオロブタン、フルオロシクロブタン、フルオロプロパン、フルオロエーテル、フルオロポリエーテルおよびフルオロトリエチルアミンを含むがこれらに限定されない。これらの化合物は、単独またはより揮発性の噴霧剤と組み合わせて用いられ得ることが理解される。このような化合物は、一般的に環境に優しくそして生物学的に非反応性であることが顕著な利点である。
【0145】
前述のフルオロカーボンおよびヒドロフルオロアルカンに加えて、種々のクロロフルオロカーボンおよび置換されたフッ化化合物もまた、本明細書における教示に従って懸濁媒体として使用され得る。この点では、FC−11(CCl3F)、FC−11B1(CBrCl2F)、FC−11B2(CBr2ClF)、FC12B2(CF2Br2)、FC21(CHCl2F)、FC21B1(CHBrClF)、FC−21B2(CHBr2F)、FC−31B1(CH2BrF)、FC113A(CCl3CF3)、FC−122(CClF2CHCl2)、FC−123(CF3CHCl2)、FC−132(CHClFCHClF)、FC−133(CHClFCHF2)、FC−141(CH2ClCHClF)、FC−141B(CCl2FCH3)、FC−142(CHF2CH2Cl)、FC−151(CH2FCH2Cl)、FC−152(CH2FCH2F)、FC−1112(CClF=CClF)、FC−1121(CHCl=CFCl)およびFC−1131(CHCl=CHF)は、すべて、環境問題を伴う可能性があるものの、本明細書における教示に適合する。それ自体、これらの化合物の各々は、単独または他の化合物(すなわち、より低く揮発性であるフルオロカーボン)と組み合わせて用いられて、本発明の安定な呼吸器分散物を形成し得る。
【0146】
前述の実施態様とともに、本発明の安定化分散物はまた、噴霧器とともに使用されて、それを必要としている患者の肺気道に投与され得るエアロゾル化医薬を提供し得る。噴霧器は、当該分野で周知であり、そして過度の実験を伴わずに本発明の分散物投与に容易に使用され得る。開発されたかまたはこれから開発される呼吸作動型噴霧器および他の型の改善点を含むものもまた、安定化分散物および本発明に適合性であり、そして本発明の範囲内にあることが意図される。
【0147】
噴霧器は、エアロゾルを形成させることによって作動し、これは、バルクの液体を呼吸可能な気体中に懸濁された小滴へと変換する。ここで、(好ましくは、肺気道へ)投薬される、エアロゾル化された医薬生理活性剤を含む多孔性微細構造を伴う懸濁媒体の小滴を含む。このような実施態様において、本発明の安定化分散物は、代表的に、噴霧器と作動可能につなげられた液体リザーバ中に入れられる。提供される調製物の特定の容量、リザーバの充填手段などは、個々の噴霧器の選択に大いに依存し、そして充分当業者の範囲内である。当然、本発明は、単回用量噴霧器および多数回用量噴霧器すべての適合する。
【0148】
伝統的な従来技術の噴霧器調製物は、代表的に、選択された薬学的化合物の少なくとも水溶液を含む。このような従来技術の噴霧器調製物を用いて、早くから、取り込まれた治療化合物の腐敗が効力を劇的に減少させ得ることが確立されていた。例えば、従来の水性多数回用量噴霧器調製物を用いて、細菌の混入が常に問題である。さらに、可溶化した医薬が析出され得るか、または時を経てに分解し得、送達プロフィールに有害に影響する。これは、酵素または他の型のタンパク質のようなより大きくより不安定な生体高分子の場合特に当てはまる。取り込まれた生理活性剤の沈澱は、粒子の成長をもたらし得、これは、肺透過の実質的な減少をもたらし、そして対応するバイオアベイラビリティーの減少をもたらす。このような用量の不一致は、任意の処置の有効性を顕著に減少させる。
【0149】
本発明は、これらおよび他の困難を、フッ化化合物(すなわち、フルオロケミカル、フルオロカーボン、または過フルオロカーボン)を好ましくは含む懸濁媒体を用いて安定分散物を提供することによって克服する。本発明の特に好ましい実施態様は、室温で液体であるフルオロケミカルを含む。上記のように、このような化合物の使用は、連続相としてまたは懸濁媒体としてであれ、従来技術の液体吸入調製物に対していくつかの利点を提供する。この点に関して、多くのフルオロケミカルが、肺において安全かつ生体適合性であるという証明された歴史を有することが充分に確立されている。さらに、水溶液とは対照的に、フルオロケミカルは、肺投与後の気体交換に負に影響を与えない。対照的に、それらは、気体交換を実際に改善し得、そしてそれらの独特な湿潤性の特徴に起因して、肺においてより深く、粒子のエアロゾル化流を運搬することによって所望の薬学的化合物の全身送達を改善し得る。さらに、フルオロケミカルの比較的非反応性の性質は、取り込まれた生理活性剤のいかなる分解を遅延させるように作用する。最後に、多くのフルオロケミカルはまた静菌性であり、それによって、適合性噴霧器デバイスにおける微生物の増殖についての可能性を減少させる。
【0150】
いずれにせよ、噴霧器が媒介するエアロゾル化は、代表的に、小滴の表面面積の増加をもたらすため、およびいくつかの場合、微粒子化またはエアロゾル化した医薬の輸送を提供するのにエネルギーの入力を必要とする。1つの一般的な態様のエアロゾル化は、液体流がノズルから排出されるようにさせ、それにより、小滴が形成される。噴霧投与に関して、通常、肺の深部へ輸送されるに充分に小さい小滴を提供するようにさらなるエネルギーが付与される。従って、さらなるエネルギー、例えば、高速の気流または圧電結晶によって提供されるもののようなエネルギーが必要である。2つの汎用される型の噴霧器であるジェット噴霧器および超音速噴霧器は、微粒子化の間に液体へさらなるエネルギーを適用する上述の方法に依存する。
【0151】
噴霧による生理活性剤の全身循環への肺送達に関しては、最近の研究は、携帯型の超音波噴霧器(これはまた、定量溶液ともいわれる)の使用に焦点を当てていた。一般的に単回ボーラス噴霧器として知られるこれらのデバイスは、1回または2回の呼吸で肺の深くへの送達について効率よい粒子経を伴って、水溶液中で医薬の単回ボーラスをエアロゾル化する。これらのデバイスは、3つの広いカテゴリーに入る。第一のカテゴリーは、Muetterleinら(J.Aerosol Med.1988;1:231)に記載されるような純粋の電圧単回ボーラス噴霧器を含む。別のカテゴリーにおいて、所望のエアロゾル曇は、米国特許第3,812,854号に記載されるもののような微小チャンネル押し出し単回ボーラス噴霧器によって生成され得る。最後に、第三のカテゴリーは、Robertsonら(WO92/11050)によって例示されるようなデバイスを含む。この文献は、環状加圧単回ボーラス噴霧器を記載する。上述の参考文献の各々は、本明細書において参考として援用する。殆どのデバイスは、手動で作動されるが、呼吸によって作動するデバイスもいくつか存在する。呼吸で作動するデバイスは、そのデバイスが患者の吸入を循環を介して感知するときにエアロゾルを放出することによって作用する。呼吸で作動する噴霧器はまた、人工呼吸器循環におけるインラインに入れられて、患者のための吸入気体を含む気流へとエアロゾルを放出し得る。
【0152】
使用する噴霧器に関係なく、生体適合性非水性化合物は、懸濁媒体として使用され得ることは、本発明の利点である。好ましくは、それらは、それらへのエネルギーの適用の際にエーロゾルを形成し得る。一般に、選択された懸濁媒体は、生物活性剤を含む懸濁された多孔性微細構造物に関して生体適合性(すなわち、比較的非毒性)および非反応性であるべきである。好ましい実施態様は、フルオロケミカル、フルオロカーボン(他のハロゲンで置換されたものを含む)、過フルオロカーボン、フルオロカーボン/ヒドロカーボンジブロック、炭化水素、アルコール、エーテル、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される懸濁媒体を含む。懸濁媒体は、特定の特徴を与えるように選択された種々の化合物の混合物を含み得ることが理解される。多孔性微細構造物は、好ましくは懸濁媒体に不溶性であり、それによって安定化医薬粒子を提供し、そして水溶液中で長い保存の間に生じ得るような、選択された生物活性剤を分解から有効に保護することもまた理解される。好ましい実施態様において、選択された懸濁媒体は、静菌性である。懸濁物処方物はまた、噴霧器投与プロセスの間に、生物活性剤を分解から保護する。
【0153】
上記のように、懸濁媒体は、炭化水素、フルオロカーボン、または炭化水素/フルオロカーボンジブロックを含む多くの異なる化合物のいずれか1つを含み得る。一般に、意図される炭化水素、または高度にフッ化またはペルフッ化の化合物は、直鎖、分枝または環式、飽和または不飽和化合物であり得る。これらのフルオロケミカルおよび炭化水素の従来の構造的誘導体もまた、同様に、本発明の範囲内にあることが意図される。これらの全体的または一部フッ化の化合物を含む選択された実施態様は、1つ以上のヘテロ原子および/または臭素もしくは塩素の原子を含み得る。好ましくは、これらのフルオロケミカルは、1〜16の炭素原子を含み、そして直鎖、環式、または多環式の過フルオロアルカン、ビス(過フルオロアルキル)アルケン、過フルオロエーテル、過フルオロアミン、過フルオロアルキルブロミド、および過フルオロアルキルクロリド(例えば、ジクロロオクタン)を含むがこれらに限定されない。懸濁媒体における使用のための特に好ましいフッ化化合物は、過フルオロクチルブロミドC817Br(PFOBまたはperflubron)、ジクロロフルオロオクタンC8152、およびヒドロフルオロアルカン、過フルオロオクチルエタンC81725(PFOE)を含み得る。別の実施態様に関して、過フルオロヘキサンまたは過フルオロペンタンの懸濁媒体としての使用が、特に好ましい。
【0154】
より一般には、本発明における使用について意図される例示的なフルオロケミカルは、ハロゲン化フルオロケミカル(すなわち、Cn2n+1X、XCn2nX、ここでn=2〜10、X=Br、Cl、またはI)、および特に、1−ブロモ−F−ブタンn−C49Br、1−ブロモ−F−ヘキサン(n−C513Br)、1−ブロモ−F−ヘプタン(n−C715Br)、1,4−ジブロモ−F−ブタン、および1,6−ジブロモ−F−ヘキサンを一般に含む。他の有用なブロモ化フルオロケミカルは、Longの米国特許第3,975,512号に開示され、そして本明細書中に参考として援用される。塩化置換物を有する特定のフルオロケミカル、例えば、過フルオロオクチルクロリド(n−C917Cl)、1,8−ジクロロ−F−オクタン(n−ClC816Cl)、1,6−ジクロロ−F−ヘキサン(n−ClC612Cl)、および1,4−ジクロロ−F−ブタン(n−ClC48Cl)もまた好ましい。
【0155】
他の結合基(例えば、エステル、チオエーテル、およびアミン)を含むフルオロカーボン、フルオロカーボン−炭化水素化合物、およびハロゲン化フルオロケミカルもまた、本発明における懸濁媒体としての使用に適切である。例えば、一般式Cn2n+1OCm2m+1、またはCn2n+1CH=CHCm2m+1(例えば、C49CH=CHC49(F−44E)、i−C39CH=CHC613(F−i36E)、およびC613CH=CHC613(F−66E))、ここでnおよびmは、同じかまたは異なり、そしてnおよびmは、約2〜約12の整数のnおよびmが、本明細書中の教示と適合性である。有用なフルオロケミカル炭化水素ジブロックおよびトリブロック化合物は、一般式Cn2n+1−Cm2m+1およびCn2n+1−Cm2m+1を有する化合物(ここで、n=2〜12;m=2〜16)、またはCp2p+1−Cn2n−Cm2m+1(ここでp=1〜12、m=1〜12、およびn=2〜12)を含む。この型の好ましい化合物は、C81725、C6131021、C817817、C613CH=CHC613、およびC817CH=CHC1021を含む。置換エーテルまたはポリエーテル(すなわち、XCn2nOCm2mX、XCFOCn2nOCF2X、ここでnおよびm=1〜4、X=Br、Cl、またはI)、およびフルオロケミカル炭化水素エーテルジブロックまたはトリブロック(すなわち、Cn2n+1−O−Cm2m+1、ここでn=2〜10;m=2〜16、またはCp2p+1−O−Cn2n−O−Cm2m+1、ここでp=2〜12、m=1〜12、およびn=2〜12)もまた、Cn2n+1−O−Cm2mOCp2p+1(ここでn、m、およびpは、1〜12である)と同様に使用され得る。さらに、適用に依存して、過フルオロアルキル化エーテルまたはポリエーテルは、本願分散液と適合性であり得る。
【0156】
多環式および環式フルオロケミカル、例えばC1018(F−デカリンまたは過フルオロデカリン)、過フルオロペルヒドロフェナントレン、過フルオロテトラメチルシクロヘキサン(AP−144)、および過フルオロn−ブチルデカリンもまた、本発明の範囲内である。さらなる有用なフルオロケミカルは、ペルフッ化アミン、例えばF−トリプロピルアミン(「FTPA」)およびF−トリブチルアミン(「FTBA」)、F−4−メチルオクタヒドロキノリジン(「FMOQ」)、F−N−メチル−デカヒドロイソキノリン(「FMIQ」)、F−N−メチルデカヒドロキノリン(「FHQ」)、F−N−シクロヘキシルピロリジン(「FCHP」)、およびF−2−ブチルテトラヒドロフラン(「FC75」または「FC−77」)を含む。なお、他の有用なフッ化化合物は、過フルオロフェナントレン、過フルオロメチルデカリン、過フルオロジメチルエチルシクロヘキサン、過フルオロジメチルデカリン、過フルオロジエチルデカリン、過フルオロメチルアダマンタン、過フルオロジメチルアダマンタンを含む。過フルオロオクチルヒドリドのような非フッ素置換を有する他の意図されるフルオロケミカル、および異なる数の炭素原子を有する類似の化合物もまた有用である。当業者はさらに、他の様々に改変されたフルオロケミカルが、本適用において使用されるような、本発明における使用に適切なフルオロケミカルの広い定義内に含まれることを理解する。このように、上記の化合物の各々は、単独または他の化合物と組み合わせて、本発明の安定化分散液を形成するために使用され得る。
【0157】
懸濁媒体として有用であり得る特定のフルオロカーボンまたはフッ化化合物のクラスは、フルオロヘプタン、フルオロシクロヘプタン、フルオロメチルシクロヘプタン、フルオロヘキサン、フルオロシクロヘキサン、フルオロペンタン、フルオロシクロペンタン、フルオロメチルシクロペンタン、フルオロジメチルシクロペンタン、フルオロメチルシクロブタン、フルオロジメチルシクロブタン、フルオロトリメチルシクロブタン、フルオロブタン、フルオロシクロブタン、フルオロプロパン、フルオロエーテル、フルオロポリエーテル、およびフルオロトリエチルアミンを含むがこれらに限定されない。このような化合物は、一般に環境的に安全であり、そして生物学的に非反応性である。
【0158】
エネルギーの適用の際にエーロゾルを生成し得る任意の液体化合物が、本発明と組み合わせて使用され得るが、選択された懸濁媒体は、好ましくは約5気圧未満、そしてより好ましくは約2気圧未満の蒸気圧を有する。他に特定しない限り、本明細書中に引用されるすべての蒸気圧は25℃で測定される。他の実施態様において、好ましい懸濁媒体化合物は、約5トル〜約760トルのオーダーの蒸気圧を有し、より好ましい化合物は、約8トル〜約600トルのオーダーの蒸気圧を有するが、なおより好ましい化合物は、約10トル〜約350トルのオーダーの蒸気圧を有する。そのような懸濁媒体は、圧縮された空気噴霧器、超音波噴霧器とともに使用され得るか、機械的噴霧器で使用され得、有効な通気治療を提供し得る。さらに、より揮発性の化合物は、より低い蒸気圧の成分とともに混合され、安定性をさらに改善するか、または分散された生物活性剤のバイオアベイラビリティーを増強するように選択された特定の物理学的特徴を有する懸濁媒体を提供し得る。
【0159】
本発明の他の実施態様は、周囲条件下(すなわち、1atm)で選択された温度で沸騰する懸濁物媒体を含む。例えば、好ましい実施態様は、0℃より高い、5℃より高い、10℃より高い、15℃より高い、または20℃より高い温度で沸騰する懸濁物媒体化合物を含む。他の実施態様において、懸濁物媒体化合物は、25℃以上または30℃以上で沸騰し得る。なお他の実施態様において、選択された懸濁物媒体化合物は、ヒトの体温(すなわち、37℃)以上で、45℃より高い、55℃より高い、65℃より高い、75℃より高い、85℃より高い、または100℃より高い温度で沸騰し得る。
【0160】
MDIおよび噴霧器とともに、本発明の安定化分散物が液体用量滴下注入すなわちLDI技術とともに使用され得ることもまた理解される。液体用量滴下注入は、安定化分散物の肺への直接投与を伴う。この点に関して、生理活性化合物の肺への直接投与は、肺の疾患部分の貧弱な血管循環が静脈内薬物投与の効力を減少させる場合特に、疾患の処置において特に有効である。LDIに関して、安定化分散物は、好ましくは、部分的液体換気と共にかまたは全液体換気とともに使用される。さらに、本発明は、生理学的に受容可能な気体(例えば、一酸化窒素または酸素)の治療的有効量を、投与の前、間または後に薬学的微小分散物へ導入する工程をさらに包含し得る。
【0161】
LDIについて、本発明の分散物は、肺送達導管を用いて肺に投与され得る。当業者は、用語「肺送達導管」は、本明細書において使用される場合、任意のデバイスまたは装置あるいはそれらの成分を含む広い意味において解釈され、これは、肺への液体の注入または投与を提供することを理解する。これに関して、肺送達導管または送達導管は、そのような必要のある患者の肺気道の少なくとも一部に開示された分散物の投与または注入を提供する、任意の孔(bore)、管(lumen)、カテーテル、チューブ、導管、シリンジ、アクチュエータ、マウスピース、気管内チューブまたは気管支鏡を意味するとされる。送達導管は、液体人工呼吸器または気体人工呼吸器を伴ってもよく伴わなくてもよい。特に好ましい実施態様において、送達導管は、気管内チューブ気管支鏡を含む。
【0162】
ここで、本発明の分散物は換気された(例えば、機械的人工呼吸器に接続されたもの)または換気されていない患者(例えば、自発的呼吸を行うもの)に投与され得ることが協調されねばならない。したがって、好ましい実施態様において、本発明の方法およびシステムは、機械的人工呼吸器の使用または包含を含み得る。さらに、本発明の安定化分散物はまた、洗浄剤として使用されて、肺における残渣を除去し得るか、または診断の洗浄手順として使用され得る。いずれの場合でも、液体特にフルオロケミカルの、患者の肺への導入は周知であり、そして当業者により、本発明の発明の詳細を用いて、過度の実験を行うことなく達成され得る。
【0163】
当業者は、LDI技術と適合性である懸濁媒体が噴霧器と組み合わせた使用について上記に示されるものと類似することを理解する。従って、本願の目的のために、LDIと適合性である分散物について、懸濁媒体は、噴霧器における使用と共に上記に列挙したものと等価である。いずれにせよ、特に好ましいLDI実施態様において、選択された懸濁媒体は、周囲条件下で液体であるフルオロケミカルを含む。
【0164】
本発明に関して、好ましくは、開示された分散物を哺乳動物の肺気道の少なくとも一部へ直接投与することが理解される。本明細書において使用される場合、用語「直接注入」または「直接投与」とは、哺乳動物の肺腔への安定化分散物の導入を意味するとされる。すなわち、この分散物は好ましくは、患者の気管支を通ってそして肺へ、送達導管を通ってそして肺気道へと通過する比較的自由に流れる液体として、投与される。この点に関して、分散物の流れは、重力に補助され得るか、またはポンプを通じて導入された圧力もしくはシリンジプランジャの圧縮によって可能にされ得る。いずれにせよ、投与される分産物の量は、流量計のような機械的デバイスまたは肉眼検査によってモニターされ得る。
【0165】
安定化分散物は患者の肺機能的残気量まで投与され得るが、選択された実施態様は、はるかにより少ない容量(例えば、ミリリットルのオーダーまたはそれ未満)の肺投与を含むことが理解される。例えば、処置される障害に依存して、投与される容量は、1、3、5、10、20、50、100、200、または500ミリリットルのオーダーであり得る。好ましい実施態様において、液体容量は、0.25未満または0.5%未満のFRCである。特に好ましい実施態様について、液体容積は、0.1%FRC以下である。比較的小容量の安定化分散物の投与に関して、懸濁媒体(特にフルオロケミカル)の湿潤性および拡散特性が肺における生理活性剤の均等な分配を容易にすることが理解される。しかし、他の実施態様において、0.5%、0.75%または0.9%のFRCよりも大きな容量、懸濁物を投与することが好ましくあり得る。いずれにせよ、本明細書において開示されるLDI処置は、機械的人工呼吸器における危篤状態の患者についての新たな代替法を示し、そして気管支鏡投与を用いた、あまり重くない疾患の患者の処置についてチャンスを与える。
【0166】
他の成分が、本発明の薬学的組成物に含まれ得ることもまた理解される。例えば、浸透圧剤、安定化剤、キレート剤、緩衝液、粘性改変剤、塩、および糖は、最大の寿命および投与の容易さのために安定化分散液を微妙に調整するために添加され得る。そのような成分は、懸濁物媒体に直接的に添加され得るか、または多孔性微細構造物と会合させられ得るか、またはそれに取り込まれ得る。滅菌性、等張性、および生体適合性を考慮して、開示された組成物への従来の添加剤の使用が提供され得る。そのような薬剤の使用は、当業者に理解され、そして薬剤の特定の量、比率、および型が、過度な実験なしに実験的に決定され得る。
【0167】
さらに、本発明の安定化分散物は、生理活性剤の肺投与に特に適切であるが、それらはまた、身体の任意の場所への化合物の局所投与または全身投与について使用され得る。従って、好ましい実施態様において、処方物は、胃腸管、呼吸器管、局所的、筋肉内、腹腔内、鼻孔内、膣内、直腸内、耳内、経口または眼内を含むがそれらに限定されない多数の異なる経路を用いて投与され得ることが強調されるべきである。より一般的に、本発明の安定化分散物は局所的または、肺ではない身体の腔への投与によって薬剤を送達するのに使用され得る。好ましい実施態様において、身体の腔は、腹腔、洞腔、直腸、尿道、胃腸管、鼻孔、膣、耳の通路、口腔、頬嚢および胸膜からなる群より選択される。とりわけ、適切な生理活性剤(例えば、抗生物質または抗炎症剤)を含む安定化分散物は、眼の感染、静脈洞炎、耳管の感染および胃腸管の感染または障害でさえ処置するために使用され得る。後者に関して、本発明の分散物は、H.pylori感染または他の潰瘍関連障害の処置のために胃の裏打ちに薬学的化合物を選択的に送達するために使用され得る。
【0168】
本明細書において開示された多孔性微細構造粉末および安定化分散物に関して、当業者は、それらが有利には内科医または他の健康管理職の者に対して、滅菌され予備包装したかまたはキットの形態で供給され得ることを理解する。より詳細には、その処方物は、患者の投与について用意された、安定な粉末または予備形成した分散物として供給され得る。逆に、それらは、分離した、成分を混合するに容易のできたものとして提供され得る。使用に準備できた形態で提供される場合、その粉末または分散物は、単一の使用容器またはリザーバ中に、ならびに多数回使用容器またはリザーバ中に包装され得る。いずれの場合でも、その容器またはリザーバは、選択された吸入または投与のデバイスを伴い得、そして本明細書に記載されるように使用され得る。個々の成分(例えば、粉末ミクロスフェアおよびきちんとした懸濁媒体として)提供される場合、次いで、その安定化調製物は、使用の前にいずれかの時点で、指向されるように容器の内容物を単に合わせることによって形成され得る。さらに、このようなキットは、その使用者が次にそれらを必要に応じて投与し得るように、多数の、混合の準備がされているかまたは予備包装投与単位を含み得る。
【0169】
本発明の好ましい実施態様は、薬学的適用における使用のために、粉末または安定化分散物を含むが、多孔性微細構造および開示された分散物が、多数の非薬学的適用について使用され得ることが理解される。すなわち、本発明は、粉末が懸濁および/またはエアロゾル化されている場合、広汎な適用を有する多孔性微細構造を提供する。特に、本発明は、活性成分または生理活性成分が、できる限り速く溶解、懸濁、または可溶化しなければならない場合、特に有効である。多孔性微細構造の表面面積を増加させることによるかまたは本明細書において記載されるような適切な賦形剤を取り込むことによって、分散性および/または分散物安定性において改善をもたらす。この点に関して、迅速な分散の投与は、界面活性剤、ディッシュウォッシャー界面活性剤、食品甘味料、香辛料、スパイス、ミネラル浮揚界面活性剤、濃化剤、葉の肥料、植物ホルモン、昆虫フェロモン、防虫剤、ペット駆除剤、農薬、殺真菌剤、消毒薬、香水、脱臭剤などを含むがそれらに限定されない。
【0170】
非水性懸濁媒体(すなわち、個体、液体または気体)において精密に分割された粒子を必要とする投与はまた、本発明の範囲内であることが意図される。本明細書において説明されるように、多孔性微細構造を使用して「ホモ分散剤」を提供することによって、粒子間の相互作用を最小化する。それ自体、本発明の多孔性ミクロスフェアおよび安定化懸濁物は、以下を必要とする適用と特に適合性である:無機色素、色素、インク、ペンキ、爆薬、花火、吸着剤、吸収剤、触媒、核生成剤、ポリマー、樹脂、絶縁体、賦形剤など。本発明は、エアロゾル化または微粒子化を必要する投与における使用のための従来技術の調製物に対して利点を提供する。このような非薬学的使用において、その調製物は、液体懸濁物(例えば、忌避剤とともに)の形体でまたは乾燥粉末の形態であり得る。本明細書において記載される多孔性微細構造を含む好ましい実施態様は、インクジェットプリント処方物、粉末コーティング、噴霧ペンキ、噴霧農薬などを含むがそれらに限定されない。
【0171】
上記の説明は、以下の実施例を参照にしてより十分に理解される。しかし、そのような実施例は、本発明を実施する好ましい方法の単なる例示であり、そして本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【実施例】
【0172】
(実施例)
(I:硫酸ゲンタマイシンの中空多孔性粒子の噴霧乾燥による調製)
40〜60mlの以下の溶液を、噴霧乾燥のために調製した:
50重量% 水素化ホスファチジルコリン、E−100−3(Lipoid KG, Ludwigshafen Germany)
50重量% 硫酸ゲンタマイシン(Amresco, Solon, OH)
過フルオロオクチルブロミド、ペルフルブロン(perflubron)(NMK, Japan)
脱イオン水。
【0173】
硫酸ゲンタマイシンを含む多孔性微細構造を、B−191 Mini Spray−Drier(Buechi, Flawil, Switzerland)を用いる噴霧乾燥技術によって、以下の条件で調製した;吸入:100%、入口温度:85℃;出口温度:61℃;供給ポンプ:10%;N2流:2,800 L/時間。粉末多孔性におけるバリエーションを、発泡剤濃度の関数として実験した。
【0174】
1:1 w/w比のホスファチジルコリン(PC)を含む過フルオロオクチルブロミドの水中フルオロカーボンエマルジョン、および硫酸ゲンタマイシンを、PFC/PC比のみを変化させて調製した。1.3gの水素化卵ホスファチジルコリンを、Ultra−Turraxミキサー(T−25型)を用いて、8000rpmにて2〜5分間(T=60〜70℃)、25mlの脱イオン水中に分散した。0〜40gの範囲のペルフルブロンを、混合の間に滴下した(T=60から70℃)。添加を完了した後、水中フルオロカーボンエマルジョンを、さらに4分以上の間混合した。次いで、得られた粗調製エマルジョンを、Avestin(Ottawa, Canada)ホモジナイザーを用いて高圧化で、15,000 psiにて5回通過させてホモジナイズした。硫酸ゲンタマイシンを、約4〜5mLの脱イオン水に溶解し、続いて、噴霧乾燥プロセスの直前にペルフルブロンエマルジョンと混合した。次に、ゲンタマイシン粉末を、上記の条件を用いて、噴霧乾燥によって得た。遊離の流出した淡黄色粉末を、処方物を含む全てのペルフルブロンについて得た。種々の処方物の各々についての収率は、35%〜60%の範囲であった。
【0175】
(II:硫酸ゲンタマイシン噴霧乾燥粉末の形態学)
粉末形態学、多孔性の程度、および生成収率の強力な依存性が、走査型電子顕微鏡(SEM)によって、PFC/PC比の関数として観察された。これらの観察を例示する一連の6つのSEM顕微鏡写真(1A1〜1F1と標識した)を、図1の左カラムに示す。これらの顕微鏡写真において見られるように、多孔性および表面粗度は、発泡剤の濃度に非常に依存することが見出され、ここで孔の表面粗度、数およびサイズは、増加するPFC/PC比とともに増加した。例えば、過フルオロオクチルブロミドを欠く処方物は、非常に凝集されかつ容易にガラスバイアルの表面に接着するようである微細構造を生成した。同様に、平滑で球状の形状をした微粒子を、比較的少量(PFC/PC比=1.1または2.2)の発泡剤を使用した場合に得た。PFC/PC比が増加するにつれて、多孔性および表面粗度は劇的に増加した。
【0176】
図1の右カラムに示されるように、微細構造の中空性質もまた、さらなる発泡剤の取り込みによって増強した。より詳細には、1A2〜1F2と標識した一連の6つの顕微鏡写真は、透過型電子顕微鏡(TEM)によって明らかにされたように、破砕した微細構造の断面を示す。これらの画像の各々を、左カラムの対応するSEM顕微鏡写真を生成するために使用したのと同じ微細構造調製物を用いて生成した。得られた多孔性微細構造の中空性質および壁厚の両方は、選択した発泡剤の濃度に大きく依存するようであった。すなわち、調製物の中空性質は増加するようであり、そして粒子壁の厚さは、PFC/PC比が増加するにつれて減少するようであった。図1A2〜1C2において見られ得るように、実質的に、固体の構造を、フルオロカーボン発泡剤をわずかに含むかまたは全く含まない処方物から得た。逆に、約45の比較的高いPFC/PC比を用いて生成した多孔性微細構造(図1F2に示した)は、約43.5〜261nmの範囲の比較的薄い壁を有する非常に中空であることが判明した。両方のタイプの粒子は、本発明における使用に適合する。
【0177】
(III:種々の発泡剤を使用した噴霧乾燥した硫酸ゲンタマイシン粒子の調製)
40mlの以下の溶液を噴霧乾燥のために調製した:
50重量%水素化ホスファチジルコリン、E100−3
(Lipoid KG、Ludwigshafen、Germany)
50重量% 硫酸ゲンタマイシン(Amresco、Solon Ohio)
脱イオン水。
【0178】
(発泡剤)
過フルオロデカリン、FDC(Air products、Allenton
PA)
過フルオロオクチルブロミド、Perflubron(Atochem、Paris,France)
ペルフルオルヘキサン、PFH(3M、St.Paul、MN)
1,1,2−トリクロロトリフルオロエタン、Freon 113(Baxter、McGaw Park,IL)。
【0179】
モデルの親水性薬物(例えば、硫酸ゲンタマイシン)を有する中空多孔ミクロスフェアを、噴霧乾燥によって調製した。これらの処方物における発泡剤は、乳化フルオロケミカル(FC)油からなった。エマルジョンを、以下のFCを用いて調製した:PFH、Freon113、PerflubronおよびFDC。1.3グラムの水素化した卵ホスファチジルコリンを、25mLの脱イオン水中に、Ultra−Turrax混合機(モデルT−25)を8000rpmで2〜5分間(T=60〜70℃)で用いて調製した。この添加が終了した後、水中FCエマルジョンを、合計で4分以上混合した。次いで、得られたエマルジョンをAvestin(Ottawa,Canada)高圧ホモジナイザーを、15,000psiおよび5回通過で用いてさらに処理した。硫酸ゲンタマイシンを、約4〜5mlの脱イオン水中に溶解し、次いでFCエマルジョンと混合した。ゲンタマイシン粉末を、噴霧乾燥によって得た(Buechi、191 Mini Spray Dryer)。各エマルジョンを、2.5mL/分の速度で供給した。噴霧乾燥器の入口および出口の温度は、それぞれ85℃および55℃であった。噴霧空気および吸引流は、それぞれ2800L/時間および100%であった。
【0180】
遊離の流出した青白黄色乾燥粉末が、全ての処方物について得られた種々の処方物の収率は35〜60%であった。種々の硫酸ゲンタマイシン粉末は、1.52〜4.91μmの範囲の加重平均容積粒子径を有した。
【0181】
(IV:硫酸ゲンタマイシン噴霧乾燥粉末の形態に対する発泡剤の効果)
粉末形態、多孔性、および生成物の収率(遠心分離において捕捉された粉末量)の強力な依存性が、発泡剤の沸点の関数として観察された。この点に関して、実施例IIIにおいて生成された粉末を、走査型電子顕微鏡を用いて観察した。55℃の出口温度未満の沸点を有するフルオロケミカル(FC)エマルジョン(例えば、過フルオロヘキサン(PFH)またはFreon 113)を噴霧乾燥することで、ほとんどまたは全く孔を含まない無定形形状の(縮んだかまたは収縮した)粉末が得られた。他方、高沸点のFC(例えば、ペルフルブロン、過フルオロデカリン、FDC)を用いて処方したエマルジョンは、球形の多孔性粒子を生じた。高沸点の発泡剤を用いて生成した粉末はまた、比較的低い沸点の発泡剤を用いて生成した粉末の約2倍の生成収率を有した。選択した発泡剤およびそれらの沸点を表IIに示す。
【0182】
【表2】

【0183】
実施例IVは、発泡剤の物理的特徴(すなわち、沸点)が、多孔性微粒子を提供する能力に多大に影響することを例示する。本発明の特定の利点は、発泡剤の条件および性質を改変することによって微細構造形態学および多孔性をを変更する能力である。
【0184】
(V:種々の発泡剤を用いた噴霧乾燥したアルブテロール硫酸粒子の調製)
約185mlの以下の溶液を噴霧乾燥のために調製した:
49重量%水素化ホスファチジルコリン、E100−3
(Lipoid KG、Ludwigshafen、Germany)
50重量% 硫酸アルブテロール(Accurate Chemical、Westbury、NY)
1重量% ポロキサマー188、NF級(Mount Olive、NJ)
脱イオン水。
【0185】
(発泡剤)
過フルオロデカリン、FDC(Air products、Allenton
PA)
過フルオロオクチルブロミド、Perflubron(Atochem、Paris)
過フルオロブチルエタン、F4H2(F−Tech、Japan)
過フルオロトリブチルアミン、FTBA(3M、St.Paul、MN)。
【0186】
硫酸アルブテロール粉末を、B−191 Mini Spray Drier(Buechi,Flawil、Switzerland)を以下の条件で用いる噴霧乾燥技術によって調製した:
吸引:100%
入口温度:85℃
出口温度:61℃
供給ポンプ:2.5ml/分
2流:47L/分。
【0187】
供給溶液を、噴霧乾燥の前に溶液Aおよび溶液Bを混合することによって調製した。
【0188】
溶液A:20グラムの水を使用して1.0グラムの硫酸アルブテロールおよび0.021グラムのポロキサマー188を溶解した。
【0189】
溶液Bは、水中のフルオロカーボンのエマルジョンを代表した。これは、リン脂質によって安定化され、そして以下の方法で調製した。水素化ホスファチジルコリン(1.0グラム)を、150グラムの熱脱イオン水(T=50〜60℃)中で、Ultra−Turrax混合機(モデルT−25)を8000rpmで、2〜5分間(T=60〜70℃)用いてホモジナイズした。25グラムのPerflubron(Atochem,Paris,France)を混合中に滴下して加えた。添加が完了した後、水中フルオロケミカルを少なくとも4分間に亙って混合した。次いで、得られたエマルジョンを、Avestin(Ottawa,Canada)高圧ホモジナイザーを、18,000psiおよび5回通過で用いて処理した。溶液Aおよび溶液Bを合わせ、そして上記に記載の条件下で噴霧乾燥器に供給した。遊離の流出した白色粉末を遠心分離機で、この噴霧乾燥機についての標準であるのと同様に収集した。硫酸アルブテロール粉末は、Aerosizer(Amherst Process Instruments,Amherst、MA)によって決定した場合、1.28〜2.77μmの範囲の加重平均用量粒子径を有した。SEMによって、硫酸アルブテロール/リン脂質噴霧乾燥粉末は、球形で高度に多孔性であった。
【0190】
実施例Vは、広汎な種々の発泡剤を使用して、多孔性微粒子を提供し得ることをさらに実証する。本発明の特定の利点は、処方物および噴霧乾燥条件を操作することによって微細構造形態および多孔性を変更する能力である。さらに、実施例Vは、本発明によって達成された粒子の多様性およびそこにおける広汎な種々の薬学的薬剤を有効に取り込む能力を実証する。
【0191】
(VI:油中水エマルジョンを噴霧乾燥することによる中空多孔性PVA粒子の調製)
100mlの以下の溶液を噴霧乾燥のために調製した:
80重量%のビス−(2−エチルへキシル)スルホコハク酸ナトリウム塩(Aerosol OT、Kodak、Rochester,NY)
20重量%ポリビニルアルコール、平均分子量=30,000〜70,000(Sigma Chemicals、St.Louis、MO)
四塩化炭素(Aldrich Chemicals,Milwaukee,WI)
脱イオン水
エアロゾルOT/ポリビニルアルコール粒子を、B−191 Mini Spray−Drier(Buechi、Flawil、Switzerland)を以下の条件で用いた噴霧乾燥技術によって調製した:
吸引:85%
入口温度:60℃
出口温度:43℃
供給ポンプ:7.5ml/分
2流:36L/分。
【0192】
溶液A:20グラムの水を使用して500ミリグラムのポリビニルアルコール(PVA)を溶解した。
【0193】
溶液Bは、水中の四塩化炭素のエマルジョンを代表した。これは、エアロゾルOTによって安定化され、そして以下の方法で調製した。2gのエアロゾルOTを、80グラムの四塩化炭素中で、Ultra−Turrax混合機(モデルT−25)を用いて8000rpmで2〜5分間(T=15〜20℃)分散させた。20グラムの2.5%w/v PVAを、混合中に滴下して加えた。添加が完了した後、油中水エマルジョンを全体で4分間以上に亙って混合した(T=15〜20℃)。次いで、得られたエマルジョンを、Avestin(Ottawa,Canada)高圧ホモジナイザーを、12,000psiおよび2回通過で用いて処理した。次いで、エマルジョンを上記に記載の条件下で噴霧乾燥器に供給した。遊離の流出した白色粉末を遠心分離機で、この噴霧乾燥機についての標準であるのと同様に収集した。エアロゾルOT/PVA粉末は、Aerosizer(Amherst Process Instruments,Amherst、MA)によって決定した場合、5.28±3.27μmの範囲の加重平均容量粒子径を有した。
【0194】
実施例VIは、種々のエマルジョン系(ここでは、反転油中水)、処方物および条件を使用して、多孔性微粒子を提供し得ることをさらに実証する。本発明の特定の利点は、処方物および/またはを変更して、選択されたたこ旺盛を伴う微細構造を有する組成物を生成する能力である。この原理を、以下の実施例においてさらに例示する。
【0195】
(VII:中空多孔性ポリカプロラクトン粒子の油中水エマルジョンを噴霧乾燥することによる調製)
100mlの以下の溶液を噴霧乾燥のために調製した:
80重量%の一ステアリン酸ソルビタン、Span60(Aldrich Chemicals、Milwaukee、WI)
20重量%ポリカプロラクトン、平均分子量=65,000(Aldrich
Chemicals,Milwaukee、WI)
四塩化炭素(Aldrich Chemicals,Milwaukee,WI)
脱イオン水。
【0196】
Span60/ポリカプロラクトン粒子を、B−191 Mini Spray−Drier(Buechi、Flawil、Switzerland)を以下の条件で用いた噴霧乾燥技術によって調製した:
吸引:85%
入口温度:50℃
出口温度:38℃
供給ポンプ:7.5ml/分
2流:36L/分。
【0197】
四塩化炭素中水エマルジョンを、以下の方法で調製した。2gのSpan60を、80グラムの四塩化炭素中で、Ultra−Turrax混合機(モデルT−25)を用いて8000rpmで2〜5分間(T=15〜20℃)分散させた。20グラムの脱イオン水を、混合中に滴下して加えた。添加が完了後、油中水エマルジョンを全体で4分以上の間に亙って混合した(T=15〜20℃)。次いで、得られたエマルジョンを、Avestin(Ottawa,Canada)高圧ホモジナイザーを、12,000psiおよび2回通過で用いてさらに処理した。500ミリグラムのポリカプロラクトンをエマルジョンに直接添加し、そして完全に溶解するまで混合した。次いで、エマルジョンを上記に記載の条件下で噴霧乾燥器に供給した。遊離の流出した白色粉末を遠心分離機で、この噴霧乾燥機についての標準であるのと同様に収集した。得られたSpan60/ポリカプロラクトン粉末は、3.15±2.17μmの範囲の加重平均容量粒子径を有した。再度、本実施例は、所望の多孔性微細構造を提供するために使用される供給ストックに関する本発明の多能性を実証する。
【0198】
(VIII:水中気体エマルジョンを噴霧乾燥することによる中空多孔性粉末の調製)
以下の溶液を、注射のために水を用いて調製した:
溶液1:
3.9%w/v m−HESヒロドキシエチルデンプン(Ajinomoto、Tokyo,Japan)
3.25%w/v 塩化ナトリウム(Mallinckrodt、St.Louis、MO)
2.83%w/v リン酸ナトリウム、二塩基性(Mallinckrodt、St.Louis、MO)
0.42%w/v リン酸ナトリウム、一塩基性(Mallinckrodt、St.Louis、MO)
溶液2:
0.45%w/v ポロキサマー188(BASF、Mount Olive、NJ)
1.35%w/v 水素化した卵ホスファチジルコリン、EPC−3(Lipoid KG、Ludwigshafen、Germany)
溶液1の成分を、攪拌プレートを用いて温湯中で溶解した。溶液2における界面活性剤を、高剪断混合機を用いて水中に分散させた。これらの溶液を乳化後に合わせ、そして噴霧乾燥に前に窒素飽和した。
【0199】
得られた、乾燥した自由流の中空球生成物は、2.6±1.5μmの平均粒子径を有した。この粒子は、SEMによって決定した場合、球かつ多孔性であった。
【0200】
この実施例は、広汎な発泡剤(ここでは窒素)が、所望の形態を示す微細構造を提供するのに使用され得る点を例示する。実際、本発明の主な利点の一つは、生物学的活性(すなわち、タンパク質を有する)を保存するか、または選択された多孔性を有する微細構造を生成するように、形成条件を変更する能力である。
【0201】
(IX:硫酸ゲンタマイシン噴霧乾燥粉末の懸濁安定性)
懸濁安定性を、動的光沈澱方法を用いて非水性媒体中のクリーム化に対する粉末の抵抗性と定義した。各サンプルを、Perflubron中で0.8mg/mlの濃度で懸濁した。クリーム化の速度を、Horiba CAPA−700光沈降粒子径分析機(Irvine、CA)を、以下の条件で用いて測定した。
【0202】
D(max):3.00μm
D(min):0.30μm
D(Div):0.10μm
ローター速度:3000rpm
X:10mm。
【0203】
懸濁した粒子を、遠心力に供し、そして懸濁物の吸光度を時間の関数として測定した。吸光度の迅速な減少は、貧弱な安定性を伴う懸濁物を示す。吸光度のデータを、時間に対してプロットし、そして曲線下の面積を、0.1〜1分の間で積分し、これを、安定性の相対的な測定とした。図2は、PFC/PC比または多孔性の関数として懸濁安定性をグラフで示す。この場合、粉末の多孔性は、PFC/PCの増加につれて増加することが見い出された。最大懸濁安定性は、3〜15のPC/PFC比を有する処方物で観察された。殆どの部分について、これらの処方物は、肉眼検査技術を用いて、30分を超える期間の間安定であるようであった。この比を超える点において、この懸濁物は、迅速に凝結し、安定性の減少を示す。類似の結果が、クリーム層比方法を用いて観察された。この方法では、3〜15のPFC/PC比を有する懸濁物では、クリーム層厚が減少したことが観察され、このことは、好ましい懸濁安定性を示す。
【0204】
(X:硫酸アルブテロールの中空多孔性粒子の噴霧乾燥による調製)
中空多孔性硫酸アルブテロール粒子を、B−191 Mini Spray−Drier(Buechi, Flawil, Switzerland)を用いる噴霧乾燥技術によって、以下の噴霧条件で調製した;吸入:100%、入口温度:85℃;出口温度:61℃;供給ポンプ:10%;N2流;2,800 L/hr。供給溶液を、噴霧乾燥の直前に、2つの溶液AおよびBを混合することによって調製した。
【0205】
溶液A:20gの水を使用して、1gの硫酸アルブテロール(Accurate Chemical, Westbury, NY)および0.021gのポロキサマー188NFグレード(BASF, Mount Olive, NJ)を溶解した。
【0206】
溶液B:リン脂質によって安定化した水中フルオロカーボンエマルジョンを、以下の様式で調製した。1gのリン脂質EPC−100−3(Lipoid KG, Ludwigshafen, Germany)を、150gの温脱イオン水(T=50〜60℃)中で、Ultra−Turrax ミキサー(T−25型)を用いて、8000rpmにて2〜5分間(T=60〜70℃)ホモジナイズした。25gの過フルオロオクチルブロミド(Atochem, Paris, France)を、混合の間に滴下した。フルオロカーボンを添加した後、エマルジョンを4分以上の間混合した。次いで、得られた粗調製エマルジョンを、高圧ホモジナイザー(Avestin, Ottawa, Canada)に、18,000psiにて5回通過した。
【0207】
溶液AおよびBをあわせ、そして上記の条件下で噴霧ドライヤーにかけた。遊離の流出した白色粉末を、遠心分離機にて回収した。中空多孔性硫酸アルブテロール粒子は、飛行時間分析法(Aerosizer, Amherst Process Instruments, Amherst, MA)によって決定されたように、1.18±1.42μmの加重平均容量空気力学的直径を有した。走査型電子顕微鏡(SEM)分析は、粉末が球状かつ高度に多孔性であることを示した。粉末のタップ密度が、0.1g/cm3未満であることを決定した。
【0208】
この前述の実施例は、多数の薬学的薬剤のいずれか1つを有効に取り込み得る薬物送達プラットフォームとして、本発明の固有の多様性を例示するのに役立つ。この原理は、次の実施例においてさらに例示される。
【0209】
(XI:噴霧乾燥によるBDPの中空多孔性粒子の調製)
ベクロメタゾンジプロピオネート(BDP)粒子を含む多孔性微細構造を、B−191 Mini Spray−Drier(Buechi、Flawil、Switzerland)を以下の噴霧条件下で用いて噴霧乾燥技術によって調製した:吸入:100%、入口温度:85℃;出口温度:61℃;供給ポンプ:10%;N2流;2,800 L/時間。供給溶液を、噴霧乾燥の直前に、水中フルオロカーボンエマルジョンとラクトース0.11gとを混合することによって調製した。このエマルジョンを以下に記載する技術によって調製した。
【0210】
74mgのBDP(Sigma、 Chemical Co.St.Louis,MO)、0.5gのEPC−100−3(Lipoid KG, Ludwigshafen, Germany)、15mgのオレイン酸ナトリウム(Sigma)、および7mgのポロキサマー 188(BASF、Mount Olive、NJ)を、2mlの熱メタノールに溶解した。次いで、このメタノールをエバポレートして、リン脂質/ステロイド混合物の薄フィルムを得た。次いで、リン脂質/ステロイド混合物を、64gの温脱イオン水(T=50〜60℃)中で、Ultra−Turrax ミキサー(T−25型)を用いて、8000rpmにて2〜5分間(T=60〜70℃)分散させた。8gのperflubron(Atochem, Paris, France)を、混合の間に滴下した。添加が完了した後、エマルジョンを4分以上の間混合した。次いで、得られた粗調製エマルジョンを、高圧ホモジナイザー(Avestin, Ottawa, Canada)に、18,000psiにて5回通過させた。次いで、このエマルジョンを使用して、上記に記載のように噴霧ドライした供給ストックを形成した。遊離の流出した白色粉末を、遠心分離機にて収集した。中空多孔性BDP粒子は、0.1g/cm3未満のタップ密度を有した。
【0211】
(XII:クロモリンナトリウムの中空多孔性粒子の噴霧乾燥による調製)
クロモリンナトリウムを含む多孔性微細構造を、B−191 Mini Spray−Drier(Buechi, Flawil, Switzerland)を用いる噴霧乾燥技術によって、以下の噴霧条件下で調製した;吸入:100%、入口温度:85℃;出口温度:61℃;供給ポンプ:10%;N2流;2,800 L/時間。供給溶液を、噴霧乾燥の直前に、2つの溶液AおよびBを混合することによって調製した。
【0212】
溶液A:20gの水を使用して、1gのクロモリンナトリウム(Sigma Chemical Co, St.Louis, MO)および0.021gのポロキサマー188NFグレード(BASF, Mount Olive, NJ)を溶解した。
【0213】
溶液B:リン脂質によって安定化した水中フルオロカーボンエマルジョンを、以下の様式で調製した。1gのリン脂質EPC−100−3(Lipoid KG, Ludwigshafen, Germany)を、150gの温脱イオン水(T=50〜60℃)中で、Ultra−Turrax ミキサー(T−25型)を用いて、8000rpmにて2〜5分間(T=60〜70℃)ホモジナイズした。27gの過フルオロデカリン(Air Products, Allentown, PA)を、混合の間に滴下した。フルオロカーボンを添加した後、エマルジョンを少なくとも4分の間混合した。次いで、得られた粗調製エマルジョンを、高圧ホモジナイザー(Avestin, Ottawa, Canada)に、18,000psiにて5回通過させた。
【0214】
溶液AおよびBをあわせ、そして上記の条件下で噴霧ドライヤーにかけた。遊離の流出した淡黄色粉末を、遠心分離機にて回収した。中空多孔性クロモリンナトリウム粒子は、飛行時間分析法(Aerosizer, Amherst Process Instruments, Amherst, MA)によって決定されたように、1.23±1.31μmの加重平均容量空気力学的直径を有した。図3に示すように、走査型電子顕微鏡(SEM)分析は、粉末が中空かつ多孔性の両方であることを示した。粉末のタップ密度が、0.1g/cm3未満であることを決定した。
【0215】
(XIII:DNaseIの中空多孔性粒子の噴霧乾燥による調製)
中空多孔性DNaseI粒子を、B−191 Mini Spray−Drier(Buechi, Flawil, Switzerland)を用いる噴霧乾燥技術によって、以下の条件で調製した:吸引:100%、入口温度:80℃;出口温度:61℃;供給ポンプ:10%;N2流;2,800 L/時間。供給物を、噴霧乾燥の直前に、2つの溶液AおよびBを混合することによって調製した。
【0216】
溶液A:20gの水を使用して、0.5gのヒト膵臓DNaseI(Calbiochem, San Diego CA)および0.012gのポロキサマー188NFグレード(BASF, Mount Olive, NJ)を溶解した。
【0217】
溶液B:リン脂質によって安定化した水中フルオロカーボンエマルジョンを、以下の様式で調製した。リン脂質として0.52gのEPC・100・3(Lipoid KG, Ludwigshafen, Germany)を、87gの温脱イオン水(T=50〜60℃)中で、Ultra−Turrax ミキサー(T−25型)を用いて、8000rpmにて2〜5分間(T=60〜70℃)ホモジナイズした。13gのペルフルブロン(Atochem, Paris, France)を、混合の間に滴下した。フルオロカーボンを添加した後、エマルジョンを少なくとも4分間混合した。次いで、得られた粗調製エマルジョンを、高圧ホモジナイザー(Avestin, Ottawa, Canada)に、18,000psiにて5回通過した。
【0218】
溶液AおよびBをあわせ、そして上記の条件下で噴霧ドライヤーにかけた。遊離の流出した淡黄色粉末を、遠心分離機にて回収した。中空多孔性DNaseI粒子は、飛行時間分析法(Aerosizer, Amherst Process Instruments, Amherst, MA)によって決定されたように、1.29±1.40μmの加重平均容量空気力学的直径を有した。走査型電子顕微鏡(SEM)分析は、粉末が中空かつ多孔性の両方であることを示した。粉末のタップ密度が、0.1g/cm3未満であることを決定した。
【0219】
上述の実施例は、種々の生理活性剤との本発明の並外れた適合性をさらに例示する。すなわち、比較的小さな硬い化合物(例えば、ステロイド)に加えて、本発明の調製物は、タンパク質および遺伝物質のようなより大きく、脆い分子を効果的に取り込むように処方され得る。
【0220】
(XIV:噴霧乾燥による多孔性インクポリマー粒子の調製)
以下の仮説的な実施例において、色素、染料などの発色材料を含み得る細かく分割された多孔性球樹脂粒子を、本明細書における教示に従って、以下の処方物を用いて形成する。
【0221】
処方物:
ブタジエン 7.5g コモノマー
スチレン 2.5g コモノマー
水 18.0g キャリア
脂肪酸石鹸 0.5g 乳化剤
n−ドデシルメルカプタン 0.050g 改変剤
過硫酸カリウム 0.030g 開始剤
炭素黒 0.50g 色素
この反応を、50℃で8時間進行させる。次いで、この反応を、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)ポンプを用いてエマルジョンを噴霧乾燥させることによって終結させる。このエマルジョンを、200×内径0,030インチのステンレス鋼チューブを通して、以下の設定を使用して2つの液体ノズル(内径0.01インチ)を備えたNiroアトマイザー噴霧乾燥機(Niro Atomize Copenhagen,Denmark)へと吸引する。
【0222】
熱気流速: 39.5CFM
入口気温: 180℃
出口気温: 80℃
アトマイザー窒素流: 45L/分、1,800psi
液体供給速度: 33mL/分。
【0223】
反応していないモノマーは、発泡剤として作用し、多孔性微細構造を作製することが理解される。記載された処方物および条件は、インク処方物において使用され得る、0.1〜100μmの範囲の自由流多孔性ポリマー粒子を得る。本明細書における教示に従って、微小粒子は、ポリマーマトリクスヘ直接色素を取り込む利点を有する。このプロセスは、異なる粒子径の生成を、その成分、およびコポリマー樹脂粒子の直径によって大きく支配される色素粒子径を用いて噴霧乾燥条件を改変することによって可能にする。
【0224】
(XV:MDIおよびDPI性能を評価するためのAndersen Impactor試験)
MDIおよびDPIを、一般的に受容された薬学的手順を用いて試験した。利用した方法は、米国薬局方(USP)手順(Pharmacopeial Previews(1996)22:3065−3098)(本明細書において参考として援用される)と適合していた。廃棄5ショットの後、試験MDIからの20ショットを、Andersen Impactorへと行った。DPI処方物を評価するために使用されたショット数は、薬物濃度によって支配され、そして10〜20作動の範囲であった。
【0225】
抽出手順。全てのプレート、導入部分、およびアクチュエータからの抽出を、10mLの適切な溶媒を用いて密封バイアル中で実施した。フィルターを装着したが、アッセイしなかった。なぜなら、ポリアクリル結合剤が分析を妨害したからである。質量平衡および粒子径分布傾向は、そのフィルターへの沈着が無視し得るほどに小さいことを示した。メタノールをベクロメタゾンジプロピオネートの抽出のために使用した。脱イオン水を、硫酸アルブテロールおよびクロモリンナトリウムのために使用した。アルブテロールMDIについては、0.5mlの1N水酸化ナトリウムを、プレート抽出物に添加し、これを使用して、アルブテロールをフェノレート形態へと変換した。
【0226】
定量手順。全ての薬物を、吸収分光比色(Beckman DU640分光光度計)によって、ブランクとして抽出溶媒を用いた外部標準曲線と比較して定量した。ベクロメタゾンジプロオピネートを、238nmでのプレート抽出物の吸収を測定することによって定量した。アルブテロールMDIを、243nmでの抽出物の吸収を測定することによって定量し、他方、クロモリンナトリウムを、326nmでの吸収ピークを用いて定量した。
【0227】
計算手順。各MDIについて、幹(成分−3)、アクチュエータ(−2)、導入口(−1)、およびプレート(0−7)における薬物の質量を上記のように定量した。段階−3および−2は、DPIについて定量しなかった。なぜなら、このデバイスは、原型のみであったからである。主な興味は、このデバイスを離れる粉末の空気力学的な特性を評価することであった。Fine Particle DoseおよびFine Particle Fractionを、上記で参照したUSP方法に従って計算した。喉の沈着物を、導入口ならびにプレート0および1において見い出した薬物質量と定義した。平均質量空気力学径(MMAD)および幾何的標準径(GSD)を、実験的に累積した関数を、2パラメータ適合ルーチンを用いることによって対数正規分布と適合させることによって評価した。これらの実験の結果を、以下の実施例において示す。
【0228】
(XVI:中空多孔性粒子を含む定量注入器の調製)
実施例I、X,XIおよびXIIにおいて調製した中空多孔性粒子の予備秤量した量を、10mlのアルミニウム缶に入れ、そして真空オーブン中で窒素流の下で3〜4時間40℃で乾燥させた。缶に充填した粉末量を、治療効果について必要とされる薬物量によって決定した。このあと、この缶を、DF31/50act 50 Iバルブ(Valois of America、Greenwich,CT)を用いて圧着密封し、そしてHFA−134a(DuPont、Wilmington、DE)噴霧剤を、幹を通した過剰圧力によって充填した。噴霧剤のこの缶における量を、充填の前および後に缶を秤量することによって決定した。
【0229】
(XVII:MDI性能に対する粉末多孔性の効果)
粉末多孔性が懸濁安定性および空気力学径に対して有する効果を試験するために、MDIを、実施例XVIにおけるように調製し、ゲンタマイシン処方物を含む多孔性微細構造の種々の調製を実施例Iに記載されるよう行った。0.48重量%の噴霧乾燥粉末をHFA−134a中に含むMDIを研究した。実施例Iに示されるように、噴霧乾燥粉末は、種々の多孔性を示す。この処方物は、透明のガラスバイアルに充填されて肉眼検査を可能とした。
【0230】
懸濁安定性および容量加重平均空気力学径の強力な依存性が、PFC/PC比および/または多孔性の関数として観察された。多孔性が増加するにつれて、容量加重平均空気力学的径(VMAD)が減少し、そして懸濁安定性が増加した。SEMおよびTEM技術によって固形でかつ平滑であるように見えた粉末は、最悪の懸濁安定性および最大の平均空気力学径を有した。高度の多孔性および中空多孔性微細構造を伴って処方されたMDIは、クリームに対して最大の抵抗性および最小の空気力学径を有した。実施例Iにおいて生成された乾燥粉末について測定されたVMAD値を、直ぐ下の表IIIに示す。
【0231】
【表3】

【0232】
(XVIII:クロモリンナトリウム処方物におけるクリーム速度の比較)
市販のIntal処方物(Rhone−Poulenc、Rorer)および実施例XIIに従ってHFA−134a中で処方された噴霧乾燥中空多孔性粒子(すなわち、図3を参照のこと)のクリーム速度比較を図4A〜4Dに示す。各図において、振盪後0秒、30秒、60秒、および2時間で採取し、市販の処方物は、左側にあり、そして本発明に従って形成された多孔性微細構造分散物は右側にある。市販のIntal処方物は、30秒間の混合内に発泡するが、噴霧乾燥粒子は、2時間後でもクリームは殆ど認められない。さらに、4時間後の多孔性微細構造処方物において発泡は殆どなかった(示さず)。この実施例は、中空多孔性粒子に懸濁媒体が充填されたとき(すなわち、同質分散の形成において)達成され得る密度における平衡を明白に示す。
【0233】
(XIX:クロモリンナトリウムMDI処方物についてのAndersen Cascade Impactorの結果)
市販の製品(Intal(登録商標)Rhone−Poulenc Rorer)および実施例XIIおよびXVIに従って調製されたHFA−134a中の類似の噴霧乾燥中空多孔性粉末についてのカスケード衝突器(cascade impactor)試験の結果を、以下の表IVに示す。この試験を、実施例XVに示されるプロトコルを用いて実施した。
【0234】
【表4】

【0235】
多孔性微細構造を有して処方されたMDIは、Intal(登録商標)と比較して優れたエアロゾル性能を有することが見い出された。匹敵する微細粒子用量で、噴霧乾燥したクロモリン処方物は、実質的により高い微細粒子比(約67%)、および喉沈着物(6倍)の有意な減少を、より小さなMMAD値とともに有した。本発明によって提供される有効な送達は、投与された多孔性微細構造の量(300μg)が投与されたIntal(登録商標)用量(800μg)の約3分の1であったにもかかわらず、従来技術の市販の処方物とほぼ同様であった微細な粒子用量を可能にしたことに留意することが重要である。
【0236】
(XX:DPIおよびMDIから送達された硫酸アルブテロールミクロスフェアについてのAndersen Cascade Impactor結果の比較)
実施例Xにおいて調製された中空多孔性硫酸アルブテロールミクロスフェアのインビトロ空気力学特性を、Andersen Mark II Cascade Impactor(Andersen Sampler、Atlanta GA)およびAmherst Arerosizer(Amherst Instruments、Amherst、MA)を用いて特徴付けた。
【0237】
DPI試験。約300μgの噴霧乾燥ミクロスフェアを、本発明の吸入デバイスに充填した。乾燥粉末の活性化および次の流出の生成を、長い誘導チューブを通して50μlの加圧HFA−134aを作動することによって達成した。加圧HFA 134aは、サンプルチャンバーに向けて誘導チューブを通して空気を押し、次いで、乾燥粉末の流出を空気に向けてエアロゾル化した。次いで、乾燥粉末流出を、カスケード衝突器中に、試験デバイスを通して引かれた気流によって入れた。単一の作動を、粒子径分析のためにエアロ整流化サンプルチャンバーへと流出させた。10の作動をデバイスから衝突器へ流出させた。30秒間の間隔を各作動の間で使用した。結果を、実施例XVにおいて示すように定量した。
【0238】
MDI試験。硫酸アルブテロールミクロスフェアのMDI調製物を実施例XVIにおけるように調製した。単一の作動を、粒子径分析のためにエアロ整流化サンプルチャンバーと流出させた。20の作動をデバイスから衝突器へと流出させた。30秒間の間隔を各作動の間に使用した。再度結果を、実施例XVにおいて示すように定量した。
【0239】
きれいな硫酸アルブテロール粉末とDPIもしくはMDIのいずれかから流出した硫酸アルブテロール粉末との粒子径分析を比較した結果を、以下の表Vに示す。DPIから送達された硫酸アルブテロール粉末は、きれいな粉末とは識別不可能であった。このことは、作動の間ほとんどまたは全く凝集を生じなかったことを示す他方、いくらかの凝集が、そのデバイスから送達された粒子のより大きな空気力学径によって実証されるようにMDIを用いて観察された。
【0240】
【表5】

【0241】
Andersen Cascade Impactorを用いた2つの投薬形態を比較した場合、類似の結果が観察された(図5)。DPIから送達された噴霧乾燥硫酸アルブテロール粉末は、MDIと比較した場合、肺の奥での沈着を増強し、そして喉の沈着が最小化された。MDI処方物は、79%の微細粒子比(FPF)および77μg/作動の微細粒子用量(FPD)を有したが、DPIは、87%のFPFおよび100μg/作動のFPDを有した。
【0242】
図5および上記の実施例は、DPIから送達された本明細書に記載された噴霧乾燥粉末の優れた流れおよび空気力学的な特性を例示する。実際に、本発明の主要な利点の一つは、容易にエアロゾル化し、そして優れた吸入特性を有する小さな空気力学的に軽い粒子を生成する能力である。これらの粉末は、それらがMDIまたはDPIのいずれかから有効にかつ効率的に送達され得る独特な特性を有する。この原理を、次の実施例においてさらに例示する。
【0243】
(XXI:DPIおよびMDIから送達されたベクロメタゾンジプロピオネートミクロスフェアについてのAndesen Cascade Impactorの結果の比較)
実施例XIにおいて調製されるような中空多孔性ベクロメタゾンジプロピオネート(BDP)ミクロスフェアのインビトロ空気力学的特性を、Andersen Mark II Cascade Impactor(Andersen Sampler、Atlanta、GA)およびAmherst Aerosizer(Amherst Instruments,Amherst,MA)を用いて特徴付けた。
【0244】
DPI試験。およそ300μgの噴霧乾燥ミクロスフェアを、本発明の吸入デバイスに充填した。乾燥粉末の活性化および次いでの流出の生成を、長い誘導チューブを通した50μlの加圧HFA 134aの作動によって達成した。加圧HFA 134aは、サンプルチャンバーに向けて誘導チューブを通して空気を押し、次いで、乾燥噴霧粉末の流出を空気に向けてエアロゾル化した。次いで、乾燥粉末流出を、カスケード衝突器中に、試験デバイスを通して引かれた気流によって入れた。単一の作動を、粒子径分析のためにエアロ整流化サンプルチャンバーへと流出させた。20の作動をデバイスから衝突器へ流出させた。30秒間の間隔を各作動の間で使用した。
【0245】
MDI試験。ベクロメタゾンジプロピオネート(BDP)ミクロスフェアのMDI調製物を実施例XVIにおけるように調製した。単一の作動を、粒子径分析のためにエアロ整流化サンプルチャンバーと流出させた。20の作動をデバイスから衝突器へと流出させた。30秒間の間隔を各作動の間に使用した。
【0246】
きれいなBDP粉末およびDPIまたはMDIのいずれかから流出したBDP粉末の粒子径分析を比較した結果を、直ぐ下の表VIに示す。
【0247】
【表6】

【0248】
実施例XXと同様に、DPIから送達されたBDP粉末は、きれいな粉末とは識別不可能であった。このことは、作動の間にほとんどまたは全く凝集が起こらなかったことを示す。他方、いくらかの凝集が、そのデバイスから送達された粒子のより大きな空気力学径により実証されるようにMDIを用いて観察された。
【0249】
DPIから送達された噴霧乾燥BDP粉末は、MDIと比較した場合、肺深くの沈着を増強し、そして喉沈着を最小化した。MDI処方物は、79%の微細粒子比(FPF)および77μg/作動の微細粒子用量(FPD)を有した。他方、DPIは、87%のFPFおよび100μg/作動のFPDを有した。
【0250】
この上記の実施例は、多くの薬学的薬剤のいずれか1つを有効に取り込み得、そして薬学的領域において現在使用される種々の型の送達デバイス(ここではMDIおよびDPI)から有効に送達される、薬物送達プラットフォームとしての本発明の固有の多様性を例示する役割をする。前の実施例に示された乾燥粉末の優れた流れおよび空気力学的特性を、次の実施例でさらに例示する。
【0251】
(XXII:Rotahalerデバイスからの硫酸アルブテロールミクロスフェアおよびVentolin RotocapsについてのAndersen
Cascade Impactor結果の比較)
以下の手順に従って、Ventorolin Rotocaps(市販の処方物)と、本発明に従って形成された硫酸アルブテロール中空多孔性ミクロスフェアとの吸入特性を比較した。両方の調製物を、Rotohaler(登録商標)デバイスを、60L/分の流れで操作される8ステージのAndersen Mark IIカスケード衝突器へと流出させた。硫酸アルブテロールミクロスフェアの調製は、実施例Xに記載され、カスケード衝突器における硫酸アルブテロール沈着は実施例XVに記載されるように分析した。およそ300μgの硫酸アルブテロールミクロスフェアを、手で、空のVentolin Rotocapゼラチンカプセルに充填した。Rotohalerデバイスへの薬物カプセルの充填および作動についてのパッケージインサートに記載される手順に従った。10の作動を、デバイスから衝突器に向けて流出させた。30秒間の間隔を各作動の間に使用した。
【0252】
Rotohaler(登録商標)デバイスから流出されたVentolin Rotocaps(登録商標)および中空多孔性硫酸アルブテロールミクロスフェアのカスケード衝突器分析を比較した結果を、直ぐ下の表VIに示す。
【0253】
【表7】

【0254】
Rotohaler(登録商標)デバイスから送達された中空多孔性硫酸アルブテロール粉末は、Ventolin Rotocaps(登録商標)と比較して、有意により高い微細粒子比(3倍)およびより小さいMMAD値を有した。この点に関して、市販のVentolin Rotocaps(登録商標)処方物は、20%の微細粒子比(FPF)および15μg/作動の微細粒子用量(FPD)を有した。他方、中空多孔性硫酸アルブテロールミクロスフェアは、63%のFPFおよび60μg/作動のFPDを有した。
【0255】
この上記の実施例は、Rotahaler(登録商標)デバイスから送達される噴霧乾燥粉末の優れた流れおよび空気力学的特性を例示する。さらに、個の実施例は、微細粉末がキャリア粒子を伴わずに有効に送達され得ることを示す。
【0256】
(XXIII:過フルオロオクチルエタン中にリン脂質およびクロモリンナトリウムを含む多孔性微粒子構造のMicroMist噴霧器を用いる噴霧)
50重量%のクロモリンナトリウムを含む40ミリグラムの脂質ベースのミクロスフェア(実施例XIIから)を、10mlの過フルオロオクチルエタン(PFOE)中に振盪して分散し、懸濁物を形成した。懸濁物を、フルオロカーボン液体が送達されるか、または蒸発までPulmoAide(登録商標)空気圧縮機(DeVilbiss)を用いてMicro Mist(DeVilbiss)使い捨て噴霧器を用いて噴霧化した。実施例XVにおいて上述したように、Anderson Cascade Inpacterを使用して、得られた粒子径分布を測定した。より詳細には、クロモリンナトリウム含有量を、326nmのUV吸収によって測定した。微細粒子比は、衝突器の全ての段階において沈着したものに対する段階2から7において沈着した粒子の比である。微細な粒子の質量は、段階2から7において沈着した物質の重量である。肺深部の比は、全ての段階において沈着したものに対する衝突器の段階5から7において沈着した粒子(これは肺胞に相関する)の比である。肺深部の質量は、段階5から7において沈着した物質の重量である。すぐ下の表VIIIは、結果の要約を提供する。
【0257】
【表8】

【0258】
(XXIV:過フルオロオクチルエタン中にリン脂質およびクロモリンナトリウムを含む多孔性微粒子構造のRaidrop(登録商標)噴霧器を用いる噴霧)
40mgを秤量した50%クロモリンナトリウムを含む脂質ベースのミクロスフェア(実施例XIIから)の量を、10mlの過フルオロオクチルエタン(PEOE)中に、振盪することによって分散し、それにより懸濁物を形成した。懸濁物を、フルオロカーボン液が送達されるか、または蒸発するまで、PulmoAide(登録商標)空気圧縮機(DeVilbiss)に接続したRaindrop(登録商標)使い捨て噴霧器(Nellcor Puritan Bennet)を用いて噴霧化した。実施例XVおよびXXIIIに記載される様式で、Anderson Cascade Impactorを使用して、得られた粒子径分布を測定した。すぐ下の表IXは、結果の要約を提供する。
【0259】
【表9】

【0260】
(XXV:クロモリンナトリウム水溶液の噴霧)
2mlの精製水中の20mgのクロモリンナトリウム(Dey Laboratories)の単回用量吸入溶液を含むプラスチックバイアルの内容物を、MicroMist使い捨て噴霧器(DeVilbiss)を用いて、PulmoAide(登録商標)空気圧縮機(Devilbiss)を用いて噴霧した。クロモリンナトリウム溶液を、30分間噴霧した。Andersen Cascade Impactorを使用して、噴霧された粒子の得られた径分布を、上記実施例XVにおいて上述した方法により測定した。直ぐ下の表Xは,結果のまとめを示す。
【0261】
【表10】

【0262】
この結果に関して、実施例XXIIIおよびXXIVにおいてフルオロカーボン懸濁媒体から噴霧された処方物は、水溶液よりも高い割合の肺深くの沈着を提供したことが理解される。肺深くのこのような高い沈着率は、薬剤を患者の全身循環へ送達する場合に特に所望される。
【0263】
当業者は、本発明が他の特定の形態において、本発明の精神または中心的な性質から逸脱することなく具体化され得ることをさらに理解する。本発明の上述の記載は本発明の例示的な実施態様のみを開示する点において、他の改変が本発明の範囲であるように意図されることが理解されるべきである。従って、本発明は、本明細書において詳述された特定の実施態様に限定されない。むしろ、本発明の範囲および内容の示すような添付の請求の範囲が参照されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書中に記載される発明。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図1−1】
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【図1−2】
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【公開番号】特開2011−116788(P2011−116788A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−58608(P2011−58608)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【分割の表示】特願2000−513557(P2000−513557)の分割
【原出願日】平成10年9月29日(1998.9.29)
【出願人】(500138043)ネクター セラピューティックス (32)
【Fターム(参考)】