説明

多孔性製品を緻密化する装置及び方法

【課題】本発明は、膜沸騰プロセスを使用して、多孔性基材の緻密化を改良する多孔性製品を緻密化する装置及び方法を提供する。特に、基材(すなわち、基材の表面に近い部分の緻密化)のより完全な緻密化を行う方法及び装置を開示する。
【解決手段】カーボンなどの緻密化する材料の比較的冷たい沸騰液体の前駆物質と接触することによって、緻密化される基材(プリフォーム)110の表面の冷却を減少するバリア100を選択的に提供することによって、基材110のより完全な緻密化を行う。特に、一つ又は二つの物理的バリア(例えば、メッシュ材料)100、又は基材110と液状前駆物質(例えば、多孔性基材の表面から間隔を開けて離れているプレート)の間の絶縁ガス層の形成を進める構造を使用して、基材110と液状前駆物質との接触を低減する。適用される出力レベルが膜沸騰緻密化プロセスの最後の段階で急に高くなる前に、バリア100は任意の位置に移動可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔性製品を緻密化することに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、摩擦材料の分野において、摩擦ブレーキディスクなどの摩擦部材を製造するために多孔性材料で作られた基材を使うことは知られている。このような摩擦部材の製造は、多孔性で、通常は繊維状のプリフォーム、例えば環状のプリフォームの製造から始まるのが一般的である。
【0003】
環状のプリフォームは、幾つかの異なる周知の方法を使用して製造できる。例えば、カーボン繊維パイルは、尖ったもので孔を開けられ、環状の予備プリフォームが積層された材料から切り出される。パイルは、例えば、エアレイド繊維又は織物繊維から製造することができる。また、ニア・ネット・シェイププリフォームは、例えば、カーボン繊維を所望の形状に編むことによって形成することができる。ある種のカーボン繊維織物は、繊維を容易に螺旋形にする編み方を有していることが知られている。ここで、”ニアネット”は、環状ブレーキディスクなどの最終製品の所望の形状に近い形を有する構造を形成することを意味する。
【0004】
酸化ポリアクリロニトリド(”PAN”)又はピッチ系繊維が、この種のタイプの適用において使用される出発繊維の一般的な例である。続いて、これらの繊維は、高温処理工程でカーボン化される。他の一般的な方法において、出発繊維は、樹脂又はピッチを使用して形成される。その後、合成物は、窒素ガスなどの反応ガスで処理される。このようにして、処理された部分は、半剛性プリフォームを得るためにカーボン化される。
【0005】
いずれにしても、所望の摩擦特性及び機械的特性が得られるように、多孔性プリフォーム(特に、炭素質の材料を含む)をさらに緻密化することが望まれている。
【0006】
化学蒸着浸透法(”CVI”)は、炭素/炭素(”C/C”と表すこともある)合成材料を得るための一般的な緻密化技術である。CVIは、多孔性プリフォームに浸透させるためにハイドロカーボンを含むガスを使用する。CVIガスは、プリフォームの繊維構造に被覆する炭素をそのまま残すために高温下で浸透し、それによって、製品の密度を高める。
【0007】
ガス状前駆物質を使用するCVIは、所定の密度特性及び機械的特性を有する炭素/炭素構造を得るために、数100時間の処理を必要とする。例として、典型的なCVIプロセスは、約300〜500時間又はそれ以上の時間行われる第1のガス浸透サイクルを含む。
【0008】
しかしながら、一般的なCVIは、プリフォームの内側部分が十分に緻密化される前にプリフォームの面の孔の急速な閉塞を引き起こす。面の孔を”再開”するために(製品の内側部分に到達し続けるガス状前駆物質を許容するために)、中間の加工ステップが必要になる。一般に、この中間の加工(ミリング(milling)などの周知の方法を使用する)は、プリフォームの孔を開放するために、炭素をブロックした孔を有するプリフォームの表面層を取り除く。そうして、ハイドロカーボンが再びプリフォーム構造に浸透する。数百のプリフォームを典型的な方法で緻密化することを考慮すると、中間の加工ステップは、CVI緻密化プロセスに対して48時間程度実施される。
【0009】
部分的に緻密化された製品の中間の加工が終了すると、第2のCVIプロセスが、プリフォームの再開した面の孔を使用するために実施され、例えば、300〜500時間又はそれ以上の時間続けられる。このプロセスで緻密化プロセスが終了する。
【0010】
多孔性プリフォームを緻密化する他の方法は、ガス状のハイドロカーボン前駆物質の代わりに液状のハイドロカーボン前駆物質を使用する。この緻密化の方法は、”膜沸騰”又は”急速緻密化”という。
【0011】
緻密化のために液状前駆物質を使用することは、例えば、特許文献1〜7で開示されている。個々の特許文献及び全ての特許文献は、参照番号によって組み込まれることが許容される法域において、参照番号を参照することによって全体として組み込まれている。
【0012】
一般に、膜沸騰緻密化は、反応チャンバに保持された液体中、特に液状のハイドロカーボン中に多孔性プリフォームを浸すことを含む。こうして、液体はプリフォームの孔及び隙間に浸透する。その後、漬けられたプリフォームは、液状のハイドロカーボンの分解温度(典型的には、1000℃又はそれ以上)を越える温度まで誘導的に加熱される。より特別には、誘導的に加熱されたプリフォーム構造の近傍にある液状のハイドロカーボンは、プリフォームの孔内で種々のガス層の種に分離する。さらに、ガス層の種の熱分解は、多孔性材料の開放領域で内面に熱分解炭素を形成する。
【0013】
液状のハイドロカーボン前駆物質は、シクロペンタン、シクロヘキサン、1−ヘキセン、ガソリン、トルエン、メチルシクロヘキサン、n−ヘキサン、ケロシン、水素脱硫ケロシン、ベンゼン、又はそれらの結合でもよい。さらに、液状前駆物質は、メチルトリクロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルジクロロシラン又はトリス−n−メチル・アミノシランなどのオルガノシランを含んでもよい。ある場合には、液状前駆物質は、オルガノシランとハイドロカーボンの混合物であってもよい。
【0014】
液状前駆物質は、周知の方法で考案することもでき、組合せ分解生成物を得る。例えば、分解生成物は、シリコンカーバイド、シリコンナイトライド又はカーボン/シリコンカーバイド又はカーボン/シリコンナイトライドを備える。
【0015】
プリフォームの周囲の沸騰液のため、強い熱勾配が、ディスクの内側(すなわち、コア)と外側(すなわち、外周)部分との間に生じる。一般的に、緻密化は、外側表層部よりも相対的に温度が高いため、コア領域で始まる。したがって、多孔性製品は、製品の孔をふさぎ、ガスの浸透を防ぐ一つ緻密化プロセスステップにおいて、実質的に完全に緻密化される。これは、通常のアイソバーCVI(”I−CVI”)プロセスを使用するときよりも早い。液状前駆物質の動きは、ガス浸透ステップを使用するより100倍早い。
【0016】
しかしながら、プリフォームは、沸騰しているにもかかわらず、相対的に冷たい液体に浸されているため、液状前駆物質の破壊温度より高いプリフォームの最高温度を保つために高出力を必要とする。例えば、前駆物質としてシクロヘキサンを使用する緻密化の場合において、緻密化中の多孔性製品の内部温度は、周囲の液体シクロヘキサン温度が約80℃から約82℃であるのに対して、約900℃と約1200℃との間にある。この結果、全体の電気消費量は、標準的なI−CVIプロセスに比べて高くなる。
【0017】
緻密化領域が多孔性プリフォームの外周のエッジ/面の方に動くとき、出力は除々に増加し、緻密化領域に必要とされる温度を維持する。したがって、緻密化サイクルの最後に、出力レベルは初期の出力レベルの5倍又はそれより大きくなる。これは、電気消費量を増加させ、必要な加熱を行う高費用の電源を必要とする。
【0018】
これらの問題に対する解決方法の従来の一例は、特許文献8及び特許文献6で提案されている。例えば、プリフォームを大きめのサイズに作り、緻密化領域が多孔性製品の表面から僅かに(例えば、数ミリメータ)離れるときに、緻密化を停止する。このアプローチは、プリフォームがそれ自身効果的な断熱材として機能するため、プリフォームのコアを加熱するのに必要とされる出力を減少する。より厚いプリフォームは、上述した温度勾配に関してその内側をより効果的に断熱するように機能する。また、緻密化を達成するために必要とされる最終的な出力は、材料の厚さ(すなわち、プリフォームの表面上で緻密化されない材料の深さ)に応じて低くなる。しかしながら、この方法は、厚いプリフォームの外側部分から加工による材料の廃棄を生じるものと思われる。さらに、より厚いプリフォームが使用されるとき、浸透は相対的に難しくなる。これは、前駆物質がプリフォーム内側に到達することを難しくするため、プリフォームのコアの部分を不十分に緻密化するものとなる。
【0019】
他の方法は、沸騰している液状前駆物質とプリフォームとの間で物理的な境界を形成するために、他の材料でプリフォームを覆う方法である。使用する材料の性質に応じて、異なる結果を生じる。特許文献6では、カーボンフェルトの層が、ディスクのエッジの緻密化を改良するために提案されている。カーボンフェルトは、緻密化領域を小さい出力でプリフォームのエッジの近くに移動する。カーボンフェルトは、プリフォームの面に接近するときに、緻密化領域の高温に耐える。しかしながら、一定の状態において、この方法は使用できない。例えば、プリフォームが、電磁結合によって誘導的に加熱されるとき、カーボンフェルトは、(プリフォームのように)誘導的に加熱され、緻密化サイクル中に緻密化される。これにより、製品の孔が閉鎖され、前駆物質がプリフォームの内側部分に到達することを防止し、一般に知られているように、ディスクの適度な緻密化をもたらす。
【0020】
特許文献8は、ポリテトラフルオロエチレン(”PTFE”)の繊維の一つ以上の層を使用することを開示する(登録商標ゴアテックスとして知られている)。この特許は、プリフォームに対する液状前駆物質の浸透がPTFEによって制限され、材料を緻密化するために必要な電力が大幅に減少し、緻密化速度が増加する。しかしながら、PTFE繊維(例えば、カーボンフェルトの浸透性に比べて)の低い浸透性のため、プリフォームの内側部分への前駆物質の移動が妨げられる。従って、緻密化される製品が相対的に厚くなるとき、プリフォームのコア部分における液状前駆物質の減少又は欠乏を生じる。これは、不十分に緻密化されたコアをもたらす(”筒(hollow)”コアということもある)。
【0021】
例えば、25mmの厚みのカーボンブレーキディスクが緻密化されるとき、プリフォームを断熱するゴアテックス(登録商標)PTFE繊維の使用は、筒コアを回避するために、緻密化を遅くする(すなわち、より遅い緻密化を生じる)。したがって、特許文献8で開示されているようにPTFEを使用することの利点は、サイクルタイムの増加に対してバランスするものでなければならない。
【0022】
カーボンフェルトやゴアテックス(登録商標)PTFE繊維のような断熱層を加えることは、プリフォームの内側で温度プロフィールの平坦化をもたらし、プリフォームの内側への前駆物質の移動及び浸透を減少する。これらのパラメータの両方は、コアの緻密化に含まれている。ゴアテックス(登録商標)PTFE繊維に関し、繊維の低い許容性が、液状前駆物質がプリフォームに入ることを防止し、少なくとも妨げる。そうして、プリフォームの内側部分への液状前駆物質の浸透を、劇的に遅くする。析出が通常の範囲に保たれるとき、ガス層の種の欠乏が、続いて起こる。すなわち、コアへの液状前駆物質の浸透が減少し、必要なガス層の種の生成を十分にサポートすることができない。一般に、PTFE繊維の通常の使用では、緻密化の均一性を得るために、緻密化が低い温度で行われる。そして、緻密化のサイクルタイムが減少する。
【0023】
カーボンフェルトが、上術した通常の方法で使用されるとき、前駆物質の移動における悪影響は、PTFE繊維を使用したときほど大きくない。しかしながら、緻密化領域を作るために出力をあげるとき、カーボンフェルトが、誘導領域において、誘導的に加熱されることもある。こうして、カーボンフェルトが緻密化される。フェルトの内側で緻密化が始まるとすぐに、プリフォームの孔が閉じ始め、プリフォームの幾つかの領域がサイクル終了時にフェルトに近づく。
【0024】
特許文献9(米国公開特許出願第2009/087588号、2009年4月2日公開)は、ポリテトラフルオロエチレン(”PTFE”又はテフロン(登録商標)という)メッシュを使用することに向けられており、ポリテトラフルオロエチレンメッシュは、従来技術で知られているように、カーボンフェルトの代わりに緻密化されるプリフォームを覆うために、30%から60%の孔を有している。表面の緻密化が改善されているが、緻密化される部分の幾何学形状に依存することが観察され、緻密化領域の部分は、ディスクの半径方向内側と外側のエッジ(内径及び外径ということもある)に到達する前に緻密化領域(ブレーキディスクの場合において、特に、摩耗面)の面に到達する。このような状態において、緻密化領域が実際にその部分の面に達する位置における緻密化領域の温度は、前駆物質が緻密化領域に浸透する機会を持つ前に、ディスクに近い液状ハイドロカーボン前駆物質を熱的に分解(クラック(crack))するのに十分に高い。これは、液状前駆物質に分散した炭素粒子を作る。カーボンがブレーキディスクを緻密化するためにプリフォーム内に析出しないという意味で、カーボンは”無駄”になっている。液状前駆物質の消費は、早すぎるハイドロカーボンクラッキングのために望ましくはないが増加し、生産コストを高くする。
【0025】
特許文献9で開示されている代替的な特徴は、緻密化プロセス中に固定された距離でプリフォームを挟む壁又は仕切りを提供する。緻密化サイクルの最後に出力が上がったとき、緻密化領域はその部分の外周又は表層部に接近し、液体/ガスの境界が壁のためにプリフォーム表面から離れ、外周の緻密化を改善する。しかし、実際に、プリフォームと壁構造との間で一定の間隔を保持することは難しい。これは、環境が沸騰前駆物質の存在で非常に乱れるためと、壁とプリフォームとの間のギャップが好ましくは多くても約5mmのためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】米国特許第4472454号
【特許文献2】米国特許第5389152号
【特許文献3】米国特許第5397595号
【特許文献4】米国特許第5733611号
【特許文献5】米国特許第5477717号
【特許文献6】米国特許第5981002号
【特許文献7】米国特許第6726962号
【特許文献8】米国特許第6994886号
【特許文献9】米国公開特許出願第12/210228号
【特許文献10】国際出願PCT/EP2007/058193号明細書
【特許文献11】国際出願PCT/EP2007/058195号明細書
【特許文献12】国際出願PCT/EP2007/058197号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
本発明は、多孔性製品を緻密化する周知のアプローチにおいて用いられる液状前駆物質を使用して多孔性製品を緻密化する装置及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明によれば、多孔性基材を緻密化する方法であって、反応室において、液状前駆物質が多孔性基材中の孔に浸透するように、液状前駆物質中に多孔性基材を浸すステップと、第1の出力レベルを使用して、多孔性基材を緻密化するために、液状前駆物質を熱分解し、基材のポア内に分解生成物を析出するのに十分な温度まで浸漬した多孔性基材を誘導的に加熱するステップと、多孔性基材内の緻密化領域が多孔性基材の外面に近づくとき、第1の出力レベルよりも出力レベルを高くするステップと、を備え、第1の出力レベルよりも出力レベルを高くしたとき、多孔性基材の表面の少なくとも近傍までバリアを動かし、液状前駆物質と多孔性基材との間で接触するように、バリアを構成し、配置することを特徴とする多孔性基材を緻密化する方法を提供する。
また、本発明によれば、液状前駆物質を使用して多孔性基材を緻密化するリアクターであって、反応室と、反応室に配置された組立体を加熱する少なくとも一つの誘導コイルと、緻密化される多孔性基材を支えるバリア組立体であって、平行なバリアの間で支持される多孔性基材に向かう方向及び離れる方向に選択的に移動可能に構成され、配置された二つの実質的に平行なバリアを備えるバリア組立体と、を備えたことを特徴とするリアクターを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】環状のフレーム上に設けられた開放した多孔性メッシュの平面図である。
【図2A】本発明の第1の実施形態による膜沸騰緻密化プロセスの一つのステージを示す側面図である。
【図2B】本発明の第1の実施形態による膜沸騰緻密化プロセスの別のステージを示す側面図である。
【図2C】本発明のこの実施形態による要素の位置関係を示す方向IICに沿って見た平面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態による移動可能なバリアとして使用される孔を開けたプレートの平面図である。
【図4A】本発明の第2の実施形態の第1の変形例による膜沸騰緻密化プロセスの一つのステージを示す側面図である。
【図4B】本発明の第2の実施形態の第1の変形例による膜沸騰緻密化プロセスの別のステージを示す側面図である。
【図5A】本発明の第2の実施形態の第2の変形例による膜沸騰緻密化プロセスの一つのステージを示す側面図である。
【図5B】本発明の第2の実施形態の第2の変形例による膜沸騰緻密化プロセスの別つのステージを示す側面図である。
【図6】本発明の第1の実施形態又は第2の実施形態に適用可能で、環状プリフォームの支持構造の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図示されている全ての特徴は、一つの図においてでさえ、必ずしも拡大・縮小されているものではなく、また、図示されている幾つかの特徴は、図の中の他の特徴と同じスケールではないということに留意されたい。
【0031】
上述したように、また、一般に従来から知られているように、緻密化プロセスにおいて出来るだけ完全に製品を緻密化することが望まれている。従って、緻密化がコア又は緻密化される製品の内側から始まる膜沸騰を使用する緻密化の場合において、緻密化が製品の最外表面に到達することが要求されている。一般的な膜沸騰プロセスにおいては、膜沸騰中、特に、緻密化サイクルの最後において、高出力を必要とする。例えば、20インチ(508cm)カーボンブレーキディスクを緻密化することは(すなわち、結果として、緻密化領域が実質的にブレーキディスクの表面まで移動する)、部品がダイレクトカップリングして加熱されるとき、サイクルの最後において、70W/cm2より高出力を必要とする。出力が高くなると生産コストが上げる。
【0032】
出力消費を減らす一つの方法は、この問題に対する従来の説明の中で述べたように、プリフォームを物理的に絶縁することである。しかしながら、プリフォームを絶縁することは、しばしば緻密化の均質性に影響を与える。すなわち、プリフォームは、体積全体が均一に緻密化されない。特に、特許文献6や特許文献8に記載されているように、カーボンフェルトやPTFE繊維などの絶縁材でプリフォームを覆うことは、コアの緻密化に悪影響をもたらす。
【0033】
一般に知られているように、周囲の沸騰液によって保持された高い温度勾配は、急速な緻密化を可能にする。すなわち、プリフォームのコアは、最も高温の部分であり、緻密化はプリフォームの体積の中間位置又は内部で始まる。これは、標準の等温CVIプロセス(プリフォーム構造の内側へガス状前駆物質を浸透させるために材料に孔を再開する、時間を消費する中間の加工ステップを必要とする)中に生じる表面シーリングの問題を回避する。
【0034】
しかしながら、この温度勾配は、プリフォームコアの不十分な緻密化を必ずしも回避できない。プリフォーム材料の熱特性、緻密化される材料の孔の分散性、許容性、最大温度などの幾つかのパラメータが、制限なしで、含まれる。短時間の緻密化サイクル、低出力消費、均質の緻密化及び適切なプリフォーム構造(この最後の一つは、部品の最終的な用途に依存する)に関して、最高の妥協点を得るために、複数のパラメータ間で優れたバランスを見つける必要がある。
【0035】
例えば、緻密化の均質性を改善する方法は、プロセス温度を低くすることであるが、しかし、同時に、これはサイクルタイムを増加するという問題がある。緻密化の均質性を改善する他の方法は、短い緻密化サイクル時間、高い緻密化レベルを最適化するように、プリフォームを改良することである。しかし、これは、製品の最終的な用途に関して、必ずしも最適な特性に導くものではない。さらには、個々のプリフォームを改良することは、個々のプリフォームが所定の方法で変更されなければならないため、生産を複雑化することもある。
【0036】
飛行機のブレーキとしてのカーボンプリフォームディスクの場合において、プリフォームの構造は、上記において強調した基準にしたがって膜沸騰に関して最適化される。最適化したプリフォームと比較すると、”飛行機”のプリフォームは、サイクル(より長いサイクルタイムを意味する)を開始するために、一般に低い緻密化温度を必要とし、出力をより多く使用し、最終的にはより低い比重をもたらす。
【0037】
従って、方法及び装置は、コアの緻密化を妥協することなく、又はサイクルタイムを増加することなく、膜沸騰によって緻密化されるプリフォームのエッジの緻密化を改良するために提供される。
【0038】
以下の記載において、ブレーキディスク用の環状プリフォームが示されているが、一例にすぎず、本発明を制限するものではない。本発明は、一般的には、多孔性製品の緻密化に適用されるものである。
【0039】
上述したように、特許文献9は、環状プリフォームの対向する摩耗面に大きな開放孔を有するPTFEメッシュを固定することを開示する。メッシュは、例えば、糸により結ばれることによって、緻密化プロセス中は固定されている。代替案において、特許文献9で緻密化されるプリフォームは、二つのバリア又は同種のものの間で固定距離で取り付けられている。プリフォームと一対の壁の組合せは、一般に膜沸騰プロセスで使用されるように、一対のパンケーキ(pancake)型の誘導コイルの間で取り付けられている。
【0040】
本発明では、上述した開放多孔性のPTFEメッシュ又はバリアは、液体緻密化プロセスの端の近くで選択的に使用され、緻密化プロセス後、製品の外周面が緻密化され、緻密化が50%〜80%完成する。一般に、この方法は、特許文献9に記載された方法で留意された技術的問題を小さくし、その一方で、膜沸騰プロセスで緻密化される製品を絶縁することによって効果をもたらす。
【0041】
1.フレームに取り付けられたメッシュ
本発明の第1の実施形態において、第1及び第2のPTFEメッシュ部分は、それぞれ剛性を有する周辺フレームに取り付けられる。メッシュ部分をプリフォームに結合又は直接的に固定する代わりに、特許文献9で説明されているように、最初は個々のメッシュ部分をプリフォームから相対的に離して保持し、緻密化プロセス(図2A)の相対的に低い出力部分、及びプリフォームのそれぞれの側で平行に配置されたメッシュ部分は、プリフォームの面を絶縁するのに十分な間隔を設けるためにプリフォームの方にスライドする(通常は約5mm以下)。これにより、プリフォームの外周面のより近くで、優れた最後の緻密化が進む。図2Bを参照されたい。
【0042】
図1に示すように、メッシュ組立体100は、開放多孔性のメッシュ部分102(比較的可撓性を有する)を含み、メッシュ部分102は、多少剛性を有するフレーム104によってメッシュ組立体100の外周に装着される。例えば、メッシュ部分102及びフレーム104は、特に、ブレーキディスク用の環状プリフォームの場合には、一般的に丸いが、本発明の範囲には他の幾何学的形状も含まれる。例えば、フレーム104は二つの同一で平らなリング部分を含み得る。二つのリング部分は、その間でメッシュ部分102の外周エッジと共に、ボルト106を使用して共に固定される。他の適切な固定手段をボルト106の代わりに使用することができる。
【0043】
フレーム104は、外周エッジの回りに一つ以上(必ずしも必要ではないが、好ましくは2つ以上)の支持点108を有している。それによって、メッシュ組立体100は膜沸騰チャンバに支持され、プリフォームに向かう方向又はプリフォームから離れる方向に移動する(図1では符号100で示されている)。支持点108は、スリーブ又はブッシングなどであってもよく、個々の支持棒はそこを通過し、手動で動くプッシュロッドなどによって、メッシュ組立体100はそれに沿ってスライドする。別の方法では、支持点108は、支持棒の個々の支持点を(例えば、制限するものではないが、溶接や、熱抵抗接着や、ボルトによって)取り付ける点であってもよい。これにより、メッシュ組立体100を所望の位置へ押されたり、引っ張られたりする。図2A及び図2Bに示す支持棒の一例において、個々の支持点108は(200bは図2A,2Bには示されていない)のそれぞれのグループと関連付けられている。支持棒200a,200cは、中心点において、一つの主支持棒200’と連結する。主支持棒200’は、メッシュ組立体100を動かすために反応室の外側へ延びている。同様の配置構成ついては、本発明の第2の実施形態に関して、以下でより詳細に説明する。なお、以下の説明は、本実施形態において適用可能である。
【0044】
一般に、第1及び第2のメッシュ組立体は、若干の修正だけで、一般に知られている膜沸騰装置で使用されている。図2A,2Bで示すように、第1及び第2のメッシュ組立体100は、環状プリフォーム110の対向面に設けられている。環状プリフォーム110は、従来から知られている一対の誘導コイル205の間で、膜沸騰プロセスを使用して緻密化される。第1及び第2のメッシュ組立体100は、一対の誘導コイル205の内側で、通常は、プリフォームと平行に配置される。図1,図2A及び図2Bで示す実施形態において、フレーム104を横切るメッシュ組立体100の直径は、通常は、パンケーキ型誘導コイル205の直径よりも大きい。従って、サポートアーム機構(主支持棒)200,200’は、パンケーキ誘導コイル205の領域の回り又は外側に配置される。
【0045】
図2Cは、図2Aに示すIIC方向から見た、プリフォーム110、パンケーキ型誘導コイル205、メッシュ組立体100の間の位置関係を示す図である。図2Cから分かるように、メッシュ組立体110の直径は、最も大きく、パンケーキ型誘導コイル205の直径が僅かに小さい。パンケーキ型誘導コイル205の半径方向のコイル幅、内径から外径までの寸法は、符号111で示している。内径から外径までのプリフォームの半径方向の寸法は、符号110で示している。
【0046】
本発明の実施形態及び以下で説明する第2の実施形態で適用される環状のプリフォームの取り付け位置は、より詳細には図6を参照して後述する。
【0047】
メッシュ部分102は、通常使用されるゴアテックス(登録商標)PTFE繊維よりも大きな開放孔(例えば、約30%と約60%の間)を有するメッシュ材料で作られている。メッシュ材料は、好ましくは以下の特性の幾つか又は全てを有している。その特性は、すなわち、沸騰前駆物質中における化学的安定性を有すること、緻密化領域が緻密化される材料の表面に作られ、絶縁物がそのまま残るときに温度に耐えうること、プリフォームと絶縁材料との間で実質的に一定の接触をもたらすために十分な剛性を有すること(十分な剛性はフレーム104によってもたらされるけれども)であり、プリフォームの加熱が電磁的ダイレクトカップリングによって行われるときには電気的に絶縁される。
【0048】
適当なPTFEメッシュ材料の例は、ET8700であり、インターネットで入手可能である。メッシュは、6mm(0.236インチ)の大きい寸法と3mm(0.118インチ)の小さい寸法の孔を有している。別のメッシュ材料は、同一寸法のメッシュを規定するために周知の方法を使用して、ガラス繊維材料で作ることができる。
【0049】
フレーム104は、ボルト106がそうであるように、G10合成材料からつくることができる。メッシュ組立体100を支持し、動かすために使用される支持棒は、G10又は膜沸騰反応室の作動中の環境に適する他の材料から作ることができる。
【0050】
本発明の実施形態において、膜沸騰によって作られた508mm(20インチ)の飛行機のブレーキディスクの緻密化が行われ、プリフォームは、電磁的ダイレクトカップリングによって加熱される。プリフォームは、周知の方法でカーボン繊維から作られる。液体ピロカーボン前駆物質はシクロヘキサンである。膜沸騰は、一つ以上の特許文献1〜7により方法で、これらの特許文献に記載されている互いに平行なパンケーキ型誘導コイルを使用して実施される。これらの特許文献は、引用補充が許容される全ての法域において、全体が引用補充される。
【0051】
ブレーキディスクは、例えば、特許文献1〜7及び特許文献10〜12の一つ以上で知られているように、膜沸騰プロセスによって緻密化される。これらの特許文献は、引用補充が許容される全ての法域において、全体が引用補充される。
【0052】
緻密化サイクルが完成すると、メッシュ組立体100は、選択されたメッシュ材料102の摩耗及び耐久性に応じて使用される。
【0053】
2.液体/ガス境界絶縁
特許文献9は、乱れている液体前駆物質からプリフォームを絶縁したり、分離したりすることを開示する。これは、緻密化領域が、任意の形態のバリヤを使用しない場合と比較して、緻密化される製品の面に近い前側へ動くようにする。ガスの形態における比較的安定した、又は変化しない層は、サイクルの最後において、緻密化領域が液状前駆物質に対して製品の面に近づいてくるときに、緻密化されるディスク(又は別の製品)の面に形成される。これは、ディスクの表面から約1mm〜約5mmの距離で緻密化する部品の近くに壁又はプレート部材を設けることによって行われる。緻密化サイクルの最後に、緻密化される部品から放出された熱は、液体前駆物質が壁の後ろ(すなわち、壁の他方の側で)にある部品の面から離れて押されるため、非常に高くなる。ガス層(前駆物質蒸気と生成物によるガスで構成される)だけが部品を囲む。ガス層は、絶縁層のように機能し、部品面の冷却を減らす(比較的冷たい液体前駆物質が部品と接触するときに生じる)。そうして、緻密化領域は、面により近いときでさえ前に動く。
【0054】
本発明の実施形態によると、特許文献9とは異なり、始めは壁がプリフォームから離れて引っ込み、一方で出力は緻密化の最小の段階では相対的に低く、プリフォームが液体前駆物質によって囲まれる。最後に、緻密化を終えるために出力を非常に高く上げている間、壁はプリフォームのそれぞれの側の近くに(例えば、約1mmと約5mmの間)動く。
【0055】
より詳細に、図3は第2の実施形態で使用される孔あきプレート300の平面図である。プレート300は丸くなっているが、プレートの形態は、他の構造的要件に対して適切であることが必要であり、緻密化装置で使用する誘導加熱コイルの形状や大きさなどによって、緻密化を制約する。
【0056】
プレート300の大きさ及び範囲に対する緻密化される環状プリフォームの位置は、点線302で示されている。一つの態様において、プレート300の直径は、プリフォーム302の外径よりも大きく、プレート300とプリフォーム302は互いに同軸に配置されている。
【0057】
プレート300の部分は、複数の孔304又はプレート300の一方の面から他方に貫通する開口によって孔明けされている。孔304は、例えば、周知の方法であるレーザ又はウォータジェット切削によって形成される。一般的な問題としては、孔が余りにも小さいと、液体前駆物質中に存在する固体粒子物質によって塞がれる傾向があり、逆に、孔が余りに大きいと、大きい孔の位置と対応して緻密化の差が目立つという制約の下で、より小さい直径の孔304が好ましい。特に、孔304の大きさと密度は、20%から40%の開放気孔率を提供できるように、調整される。
【0058】
プレート300を作るために使用される材料は、膜沸騰プロセスにおいて、化学的にも熱的に沸騰前駆物質に耐えうるものでなければならない。緻密化される製品が、電磁的ダイレクトカップリングによって加熱されるとき、使用される材料は、電気的に非導電性を有しなければならない。G10ガラス、PTFE、コンクリート、及びセラミック材料は、この出願において適切な材料の一例である。
【0059】
一例において、プレート300は、中心点において固定具又は固定点306を備える。以下で示すように、プレート300は固定具306を介して固定され、支持されている。そうして、プレート300は、選択的に、本発明の第2の実施形態にしたがって緻密化されるプリフォームに向かう方向及び離れる方向に動く。
【0060】
図4A、4B、5A及び5Bは、プリフォーム302に向かう方向及び離れる方向にプレート300を動かすために、二つの異なる機械的設備を使用する、第2の実施形態の第1及び第2の変形例を示す。
【0061】
図4A,4Bにおいて、第2の実施形態により膜沸騰緻密化の装置を示す。一対のパンケーキ誘導コイル400は、例えば、螺旋誘導コイルは、それらの間にプリフォーム302(又は緻密化される他の製品)を設けるために十分な間隔を開けて平行に配置されている。
【0062】
上述したように一対の開放多孔性のプレート300は、一対の誘導コイルの内側に設けられている。すなわち、開放多孔性のプレート300は、プリフォーム302の近くの誘導コイル400の側に備わっている。突出する固定具306はプレート300の外側に設けられている。固定具306は、誘導コイル400の対向する外側に延びるように、誘導コイル400の孔の開いた中心部分を通って軸方向に延びている。上述したように、プリフォームと一対のプレート300は、同軸になるように配置されている。
【0063】
図4Bに示すように、本発明によれば、所望のタイミングで(緻密化の終了時の出力の増加と対応する)、個々のプレート300は、プリフォーム302の面の緻密化の改善に役立つように、プリフォームの方へ固定具306の軸に沿って動く。この点において、緻密化は、特許文献9に記載されているように進行する。ここでは、詳細な説明を省略する。
【0064】
第2の実施形態の第1の変形例において、ベベルギアドライブアセンブリは、所望するときに、プレート300を動かすために使用する。図4A、4Bに示すように、個々のプレートは、その端部において、第1のベベルギア407を有する第1の回転可能な駆動軸405と連携する。駆動軸405の反対側の端部は、直接又は間接(例えば、ギアを介して)に、電気モータなどの通常の回転可能な駆動源につながっている。特に、モータは、所定の精度でON/OFFを切り換えることができる。個々のシャフト405は、個々の駆動源又は同じ駆動源に接続している。
【0065】
軸方向に突出する固定具306の外側(すなわち、プリフォーム302から離れて)に延出する端部は、ベベルギア407と係合し、協働する第2のベベルギア409を備えている。駆動される駆動軸405は、ベベルギア409を回転させるベベルギア407を回転する。第2のベベルギア409は、例えば、通常のボールねじ装置に連結してもよいが、一般的には、軸方向に突出する固定具306内で周知の方法で露出している。また、周知であるように、ベベルギア409の回転は、ボールネジによって直線変位に変換される。固定具306の軸に沿うボールネジによって生じた直線変位は、プレート300をプリフォーム302に向かう方向及び離れる方向に動かす。
【0066】
シャフト405を駆動する駆動源は、コンピュータ制御したり、手動でON/OFFを切り換える。好ましくは、通常の保護手段は、プレート300がプリフォーム302に近づき過ぎて押すことを防止し、オーバートルクを回避するために設けている。例えば、駆動軸405は、閾値トルクを越えたときに、駆動源に対して滑ることができるようになっている。
【0067】
ベベルギア407,409の図示された構成は、一例である。この変形例の異なる態様では、ボールネジ組立体は、開放多孔性のプレート300を上述したように直線移動させるために、直接的に回転する。
【0068】
図5A、5Bにおいて、プレート300は、図4A,4Bに示されている方法と略同様の方法で装着されている。しかしながら、固定具306には、プリフォーム302,プレート300,パンケーキ型誘導コイル400の中心軸Xに沿って外側に延びるプッシュロッド500が取り付けられている。プッシュロッド500は、適当な直動駆動源によって膜沸騰反応室の外側から駆動される。
【0069】
詳細には図示されていないが、プッシュロッド500は、滑りによって緻密化装置の反応室の壁を通って延びることができる。これは、プッシュロッド500が反応室の壁を通る点において、プッシュロッド500の回りにシールを必要とする。このようなシールは、シールに対するロッド500の荷重と動作環境を考えると、液状前駆物質の漏れを十分にシールする材料から選択するものであることは、当業者に明らかである。同様にプッシュロッド500は、膜沸騰緻密化装置の動作環境に耐えうる材料から作る必要がある。G10又は他のセラミックス又は複合材料は、これに関して好ましい材料である。
【0070】
この方法は、開放多孔性のメッシュ材料などのように、ディスクの周囲を直接的に覆う絶縁層を使用するときと同様の効果を有する。例えば、その部分を完全に緻密化するのに必要な最大出力が減少する。また、緻密化される部分のコア領域の緻密化に対して悪影響がなく、緻密化される製品の表面を相対的に均質に緻密化する。最後に、緻密化プロセスの前にその部分の特別な準備が必要とされない。同様に構成された緻密化装置は、複数の部品に使用することができる。これは、緻密化プロセスの効果的な実施において、時間と費用の削減をもたらす。
【0071】
この方法は、特許文献9に記載されている方法の改良であり、開放多孔性のプレート300は、出力レベルが上昇したときに、緻密化プロセスの最後に配置される。その時、緻密化領域は、緻密化される製品の外周面に近づき、上述したガス状前駆物質層が多孔性のプレート300と緻密化されるプリフォームの表面との間に保持され、プリフォームの表面に向かって緻密化を進める。プリフォームの表面と多孔性プレートとの間の距離は、プリフォームと開放多孔性のプレートとの間に配置されるセラミックス製のピンやロッドなどのスぺーサを使用して保持される。
【0072】
開放多孔性のプレートは、一例として記載されている。プレート300は、また、無垢(すなわち、孔を有しない)でもよく、また、単位面積当たり一定の数の孔又は開口を有するように孔を開けてもよく(メッシュ又はスクリーンの形態)、また、所定の領域にのみ孔を開けてもよい。しかしながら、好ましい例は、図3に示すように孔を開けることである。
【0073】
実験では、開放多孔性のプレートとプリフォームとの間の最大距離が約5mmであり、それ以上では、開放多孔性を有するプレートの効果は70W/cm2の最大出力まで観察されないことを示す。
【0074】
プリフォーム表面から3mm離れると、70W/cm2では、周囲の液体/ガスによる開放多孔性のプレート300の冷却が、開放多孔性のプレート300を作るために使用されるG10に対して十分とは言えない(G10は最も低い温度に評価される)。
【0075】
最初に述べたように、本発明の第1の実施形態及び第2の実施形態において、緻密化サイクルのほとんどは、プリフォームが相対的に冷たい液状前駆物質からプリフォームのコア又は内側部分を絶縁するため、比較的に低出力で実施する。緻密化領域がディスクのエッジに接近するときは(数mm)、出力を大幅に増加する必要がある(初期の出力レベルの4倍から5倍)。
【0076】
従って、本発明は緻密化サイクルの二つのステップから構成されている。すなわち、”低出力”での緻密化の第1のステップでは、絶縁材が磨耗面で使用されず、緻密化領域が摩耗面の数ミリメータの深さまで形成され、体積の50〜80%の緻密化を完成する。摩耗面を本発明の第1又は第2の実施形態のどちらかを使用して絶縁する”最終”の緻密化のステップでは、適当な体積の緻密化が終わるまで出力を増加する。
【0077】
絶縁材をプリフォームに設ける点は、出力制御技術に関係し、例えば特許文献12で開示されている。低出力緻密化の上述した第1のステップでは、出力は最小の変動を有している。一般に、僅かに出力が増加する(通常、0.2W/min-1)。第2の最終ステップでは、出力割合の増加はより大きくなり、約0.2W/min-1から約1.5W/min-1となる。絶縁材料、すなわち、第1の実施形態のメッシュ組立体100又は第2の実施形態の開放多孔性のプレート300を動かすことは、これら二つのステップの間で行われる。
【0078】
図6は、本発明の第1又は第2の実施形態で使用可能なプリフォームのクレードル(cradle)の一例を示す。一般に、クレードル組立体600は脚604で支持された下部602を備えている。脚は、膜沸騰反応室(図示せず)の下部まで延びており、プリフォーム(符号605で示す)を実質的に安定して機械的支持する寸法を有している。
【0079】
クレードル組立体600は、プリフォーム605を支持するため、下部602に対応する寸法の上部606を含んでいる。上部606は、ここでは図示しないクランプ、ねじ、ボルトなどの一般的方法で下部602と係合し、フランジ部材602a及び606aと共に固定する。フランジ部材602aは、また、脚604は、クレードルの残りと連結する点にあってもよい。
【0080】
上部606及び下部602の一方又は両方は、それらの間で保持溝を規定するように、その軸方向のエッジに半径方向の内側に延びているリップ又はフランジを備えてもよい。プリフォーム605の半径方向外側のエッジは、プリフォーム605を保持し、支持するために、クレードル組立体600に支えられている。プリフォームの軸方向外側にあるリップ又はフランジは、プリフォームから僅かに離れた距離(数mm)にあり、本発明の第1及び第2の実施形態におけるメッシュ組立体100又は開放多孔性のプレート300のどちらかを保持するためのスぺーサとして機能する寸法であってもよい。この構成を理解するために、図2B、4B及び5Bを参照されたい。
【0081】
上部606及び下部602の一方又は両方は、コンクリートで強化された繊維(特にガラス繊維)、又は他の複合材料又は膜沸騰反応室内の動作条件に適する非合成材料で作ることができる。上部606及び下部602の一方又は両方は、緻密化中に、プリフォーム605の外周エッジ達するように、周知の加工方法を使用して孔を開けることができる(例えば、約20%から約40%の開放領域)。
【0082】
図2A,2A,4A,4B,5A,5Bは、本発明を明確にするために、ドライブロッドやプッシュロッドのサポートなどの構成を省略しているが、これは当業者にとって明らかである。これらの特徴は、従来例で知られており、本発明の部分を形成しない。
【0083】
本発明は、発明の図示及び説明のために、特別の例について説明されているが、本発明はこれらの例によって制限されるものでないことが理解される。より特別には、請求項に規定する発明の範囲から逸脱することなく、変更や改善が成されることは、当業者にとって容易に理解され得る。
【符号の説明】
【0084】
100 メッシュ組立体
102 メッシュ部分
104 フレーム
300 プレート
110,302 プリフォーム
304 孔
306 固定具
400 誘導コイル
500 プッシュロッド
600 クレードル組立体
604 脚
602 下部
606 上部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性基材を緻密化する方法であって、
反応室において、液状前駆物質が多孔性基材中の孔に浸透するように、液状前駆物質中に多孔性基材を浸すステップと、
第1の出力レベルを使用して、多孔性基材を緻密化するために、液状前駆物質を熱分解し、基材の孔内に分解生成物を析出するのに十分な温度まで浸漬した多孔性基材を誘導的に加熱するステップと、
多孔性基材内の緻密化領域が多孔性基材の外面に近づくとき、第1の出力レベルよりも出力レベルを高くするステップと、を備え
第1の出力レベルよりも出力レベルを高くしたとき、多孔性基材の表面の少なくとも近傍までバリアを動かし、液状前駆物質と多孔性基材との間で接触するように、バリアを構成し、配置することを特徴とする、多孔性基材を緻密化する方法。
【請求項2】
バリアが多孔性メッシュ材料層であることを特徴とする、請求項1に記載の多孔性基材を緻密化する方法。
【請求項3】
多孔性メッシュ材料層が、約30%〜約60%の開放孔を有することを特徴とする、請求項2に記載の多孔性基材を緻密化する方法。
【請求項4】
多孔性メッシュ材料層が、ポリテトラフルオロエチレン(”PTFE”)メッシュ材料であることを特徴とする、請求項3に記載の多孔性基材を緻密化する方法。
【請求項5】
多孔性メッシュ材料層の外周が、剛性を有するフレームによって支持されていることを特徴とする、請求項2〜4の何れかに1項に記載の多孔性基材を緻密化する方法。
【請求項6】
バリアが、多孔性基材の面に平行となるように、少なくとも一つのプレート部材を備えていることを特徴とする、請求項1に記載の多孔性基材を緻密化する方法。
【請求項7】
バリアが、多孔性基材の両側で二つの実質的に平行なプレート部材を備えていることを特徴とする、請求項1に記載の多孔性基材を緻密化する方法。
【請求項8】
二つの実質的に平行な部材間の外周領域が、液状前駆物質に対して開放していることを特徴とする、請求項6に記載の多孔性基材を緻密化する方法。
【請求項9】
液状前駆物質がハイドロカーボンであることを特徴とする、請求項7に記載の多孔性基材を緻密化する方法。
【請求項10】
分解生成物がカーボンであることを特徴とする、請求項1に記載の多孔性基材を緻密化する方法。
【請求項11】
ハイドロカーボンが、シクロペンタン、シクロヘキサン、1−ヘキセン、ガソリン、トルエン、メチルシクロヘキサン、n−ヘキサン、ケロシン、水素脱硫ケロシン、ベンゼン、又はそれらの結合であることを特徴とする、請求項9に記載の多孔性基材を緻密化する方法。
【請求項12】
液状前駆物質がオルガノシランを含んでいることを特徴とする、請求項1に記載の多孔性基材を緻密化する方法。
【請求項13】
オルガノシランが、メチルトリクロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルジクロロシラン又はトリス−n−メチル・アミノシランからなるグループから選択されることを特徴とする、請求項12に記載の多孔性基材を緻密化する方法。
【請求項14】
分解生成物が、シリコンカーバイド及びシリコンナイトライドを含むことを特徴とする、請求項12に記載の多孔性基材を緻密化する方法。
【請求項15】
液状前駆物質がオルガノシランとハイドロカーボンの混合物であることを特徴とする、請求項1に記載の多孔性基材を緻密化する方法。
【請求項16】
分解生成物が、カーボン/シリコンカーバイド又はカーボン/シリコンナイトライドであることを特徴とする、請求項14に記載の多孔性基材を緻密化する方法。
【請求項17】
液状前駆物質を使用して多孔性基材を緻密化するリアクターであって、
反応室と、
反応室に配置された組立体を加熱する少なくとも一つの誘導コイルと、
緻密化される多孔性基材を支えるバリア組立体であって、平行なバリアの間で支持される多孔性基材に向かう方向及び離れる方向に選択的に移動可能に構成され、配置された二つの実質的に平行なバリアを備えるバリア組立体と、
を備えたことを特徴とするリアクター。
【請求項18】
二つの実質的に平行なバリアは、平行なバリアの間で支持される多孔性基材から1mmと5mmの間で選択的に移動可能に構成され、配置されていることを特徴とする、請求項17に記載のリアクター。
【請求項19】
個々のバリアは多孔性メッシュ材料層であることを特徴とする、請求項17又は18に記載のリアクター。
【請求項20】
多孔性メッシュ材料層が、約30%〜約60%の開放孔を有することを特徴とする、請求項19に記載のリアクター。
【請求項21】
多孔性メッシュ材料層がPTFEメッシュ材料であることを特徴とする、請求項19又は20に記載のリアクター。
【請求項22】
個々のバリアが多孔性のプレート部材であることを特徴とする、請求項17又は18に記載のリアクター。
【請求項23】
バリアの外周領域が開放していることを特徴とする、請求項17に記載のリアクター。
【請求項24】
多孔性基材を支えるクレードル組立体をさらに備え、
クレードル組立体は、
複数の脚に支持される下部と、
下部に対応する大きさで、多孔性基材を支える上部と、を備え、
上部と下部の一方又は両方が、その保持溝を規定するためにその両側で半径方向内側に延びるリップを備えることを特徴とする、請求項17又は18に記載のリアクター。
【請求項25】
半径方向内側に延びるリップが、実質的に平行なバリアから多孔性基材を分離するためのスぺーサとして機能することを特徴とする、請求項24に記載のリアクター。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−255174(P2010−255174A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−100123(P2010−100123)
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【出願人】(591131361)メシエ−ブガッティ (64)
【氏名又は名称原語表記】MESSIER BUGATTI
【Fターム(参考)】