説明

多孔質シリカの製造方法

【課題】コラーゲン線維を鋳型として用いて、比表面積の大きい多孔質シリカを製造する方法を提供すること。
【解決手段】コラーゲン線維及びアルコキシシランをpH0.1〜5の水溶液中で攪拌してコラーゲン線維とシリカとの複合体を形成する工程、及び該工程で得られたコラーゲン線維とシリカとの複合体を焼成又は酸処理してコラーゲン線維を除去する工程を含む多孔質シリカの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質シリカの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔質シリカは、通常、鋳型を用いることにより製造されている。例えば、多孔質シリカを合成するための鋳型として、界面活性剤を用いることが報告されている(特許文献1参照)。特許文献1には、鋳型としてカチオン性界面活性剤を用いて、1000m/g以上の比表面積を有する多孔質シリカを製造することが記載されている。しかし、カチオン性界面活性剤が高価であり、製造コストが高いことが実用化の障害となっている。
【0003】
また、鋳型としてコラーゲンを用いる方法も提案されている(特許文献2及び非特許文献1参照)。特許文献2及び非特許文献1には、鋳型であるコラーゲンとアルコキシシランとを中性条件下で反応させて多孔質シリカを合成することが記載されている。しかし、この方法では、比表面積が72m/gと非常に小さい多孔質シリカしか得られなかった。
【0004】
一方、靴、鞄等の皮革製品の製革工程では皮屑等の皮革廃棄物が大量に発生する。この皮革廃棄物は、コラーゲンが主成分であるため、現在、食品、化粧品、人工臓器、人工毛髪等に利用されているが、その使用量は多くないため、さらなる有効利用方法の開拓が期待されている。
【特許文献1】特許第3332817号公報
【特許文献2】特許第3869142号公報
【非特許文献1】Y.Ono et al.,Chem.Lett.,1999,475
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、コラーゲン線維を鋳型として用いて、比表面積の大きい多孔質シリカを製造する方法を提供することを目的とする。さらに、本発明は、皮革廃棄物のコラーゲン線維を用いて比表面積の大きい多孔質シリカを製造する方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の発明者は、皮革廃棄物の主成分がコラーゲンであることに着目し、このコラーゲンを鋳型として用いて特定の条件下で合成を行うと比表面積の大きい多孔質シリカが得られることを見出し、さらにこれに検討を重ねることにより、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の多孔質シリカの製造方法及びこの製造方法により得られる多孔質シリカを提供する。
項1. コラーゲン線維及びアルコキシシランをpH0.1〜5の水溶液中で攪拌してコラーゲン線維とシリカとの複合体を形成する工程、及び該工程で得られたコラーゲン線維とシリカとの複合体を焼成又は酸処理してコラーゲン線維を除去する工程を含む多孔質シリカの製造方法。
項2.前記コラーゲン線維が、皮革を粉砕したものである項1に記載の製造方法。
項3.前記水溶液のpHが0.5〜3である項1又は2に記載の製造方法。
項4.前記酸処理を、無機酸及び有機酸の少なくとも1種で行う項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
項5.前記無機酸が塩酸である項4に記載の製造方法。
項6.前記塩酸の温度が50〜70℃である項5に記載の製造方法。
項7.項1〜6のいずれかの製造方法によって得られる多孔質シリカであって、粒径5〜30nmのシリカ粒子が凝集して形成された直径120〜200nmの円柱形状のシリカを含んでおり、細孔径0.8〜4nmの細孔を有し、比表面積が600〜850m/gである多孔質シリカ。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、pH0.1〜5の条件下でコラーゲン線維とシリカとの複合体を形成し、焼成又は酸処理によりコラーゲン線維を除去するので、比表面積が600〜850m/gと大きい多孔質シリカを製造することができる。本発明の製造方法は、特殊な装置を必要としないので、多孔質シリカの大量合成に適している。さらに、コラーゲン線維として皮革廃棄物を利用することができるので、廃棄物の有効活用とともに製造コストの削減を達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0010】
本発明の多孔質シリカの製造方法は、次の2つの工程を含んでいる。
(1)コラーゲン線維及びアルコキシシランをpH0.1〜5の水溶液中で攪拌してコラーゲン線維とシリカとの複合体を形成する工程(第1工程)。
(2)得られたコラーゲン線維とシリカとの複合体を焼成又は酸処理してコラーゲン線維を除去する工程(第2工程)。
【0011】
第1工程では、鋳型となるコラーゲン線維と、シリカ源であるアルコキシシランとをpH0.1〜5の水溶液中で攪拌する。
【0012】
鋳型となるコラーゲン線維は、コラーゲン線維を含んでいればどのようなものを用いてもよく、例えば、哺乳類、爬虫類等の皮革、骨、軟骨等を使用することができる。入手しやすいことから、皮革を用いることが好ましく、コラーゲン線維にシリカを吸着しやすくするため、皮革を粉砕したものを用いることがより好ましい。皮革を使用する場合には、例えば、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、シカ等の哺乳類、ワニ、トカゲ等の爬虫類等の皮革製品の製革工程で廃棄される皮屑等の皮革廃棄物にもコラーゲン線維が含まれているので、この皮革廃棄物のコラーゲン線維を用いてもかまわない。皮革廃棄物の中でも、なめし工程前に廃棄される皮屑等が好ましい。
【0013】
シリカ源としてアルコキシシランが用いられる。アルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン等を挙げることができる。置換基が大きくなると加水分解反応が遅くなるため、コラーゲン線維とシリカとの複合体の合成に長時間要することになるので、テトラメトキシシラン又はテトラエトキシシランが好ましく用いられる。
【0014】
アルコキシシランは、コラーゲン線維の重量に対して、通常、5〜20倍程度、好ましくは8〜15倍程度用いられる。
【0015】
水としては、精製水、イオン交換水等が使用される。水は、コラーゲン線維の重量に対して、通常、100〜200倍程度、好ましくは110〜150倍程度用いられる。
【0016】
水のpHは、0.1〜5程度に調整する。pHをこの範囲にすると、より粒径の小さい球状シリカ粒子がコラーゲン線維の周りに凝集しやすくなる。好ましいpHは、0.5〜3程度である。
【0017】
pHは、塩酸、硫酸、酢酸等の酸により調整することができる。酸の添加量は、pHが0.1〜5程度になるように適宜調整すればよい。
【0018】
攪拌は、通常室温(25℃)で行われる。反応時間は、通常1〜200時間程度であり、好ましくは20〜120時間である。
【0019】
攪拌後、常法によって処理することにより、コラーゲン線維とシリカとの複合体(以下、コラーゲン線維/シリカ複合体ともいう)が得られる。
【0020】
第2工程は、第1工程で得られたコラーゲン線維/シリカ複合体からコラーゲン線維を除去する工程である。
【0021】
コラーゲン線維を除去する方法として、焼成又は酸処理が用いられる。
【0022】
焼成は、コラーゲン線維が完全に熱分解される条件で行うことができる。例えば、600〜700℃程度において空気中で1〜10時間程度加熱すればよい。
【0023】
酸処理は、酸をコラーゲン線維/シリカ複合体に接触させてコラーゲン線維を除去することができれば、どのような処理を行ってもよい。例えば、コラーゲン線維/シリカ複合体に酸を塗布又はスプレーする、コラーゲン線維/シリカ複合体を酸溶液中に浸漬する等により行うことができる。
【0024】
酸としては無機酸及び有機酸の少なくとも1種を使用することができる。無機酸としては、例えば、塩酸、硫酸等が挙げられる。有機酸としては、ギ酸、酢酸等が挙げられる。これらの酸は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。好ましくは、塩酸が用いられる。
【0025】
酸処理としては、コラーゲン線維を効率よく除去することができることから、コラーゲン線維/シリカ複合体を酸溶液中に浸漬することが好ましい。この場合、コラーゲン線維の溶解速度を速めるために、酸溶液を温めたり、攪拌させたりしてもよい。
【0026】
酸処理として、50〜70℃程度に加熱した塩酸水溶液中でコラーゲン線維/シリカ複合体を攪拌させることが好ましい。温度をこの範囲にすれば、コラーゲン線維が溶解しやすくなる。この場合の塩酸濃度は、例えば、5〜15vol%程度、好ましくは10vol%程度とすることができる。攪拌は、コラーゲン線維が除去されるまで行えばよく、例えば、10時間〜48時間、好ましくは20〜30時間程度行えばよい。
【0027】
酸処理後は、常法によって処理することにより、多孔質シリカを得ることができる。
【0028】
コラーゲン線維の除去は、上述した焼成又は酸処理のいずれの方法で行ってもよいが、より大きな比表面積を有する多孔質シリカが得られることから、酸処理の方が好ましい。これは、酸処理は焼成のように高温で行われないので、形成された細孔の崩壊又は収縮が起こりにくいことがその要因であると考えられる。
【0029】
以上の製造方法によって得られる多孔質シリカは、粒径5〜30nmのシリカ粒子が凝集して形成された直径120〜200nmの円柱形状のシリカを含んでおり、細孔径0.8〜4nmの細孔を有し、比表面積が600〜850m/g程度である。この多孔質シリカは、600〜850m/g程度の大きい比表面積を有しているので、吸着剤、調湿剤、貴金属微粒子触媒担体等に利用することができる。さらに、二酸化チタンと複合化して、高活性な光触媒を形成することも可能であり、また、多孔質二酸化チタンを製造する際の鋳型材料として利用することができる。
【0030】
このように、本発明の方法を用いれば、比表面積が600〜850と大きい多孔質シリカを製造することができる。特に、コラーゲン線維/シリカ複合体を酸処理してコラーゲン線維を除去した場合には、800を超える比表面積を有する多孔質シリカを製造することができる。本発明の製造方法は、特殊な装置を必要とせず、通常の装置で行うことができるので、多孔質シリカの大量合成に適している。さらに、この製造方法は、鋳型のコラーゲン線維に皮革廃棄物を使用することができるので、廃棄物を有効活用することができる方法でもある。皮革廃棄物のコラーゲン線維を鋳型として用いた場合には、製造コスト、特に原料コストを削減することができる。
【実施例】
【0031】
以下、本発明の具体例(実施例)を示すが、これにより本発明が限定されるものではない。
【0032】
実施例1
(1)多孔質シリカの合成
鋳型となるコラーゲン線維は、牛革のバット部を粉砕した皮粉を使用した。イオン交換水115mlに皮粉1.0gを加え、塩酸でpHを0.5に調整し、pH0.5の水溶液中で10分間攪拌した後、テトラエトキシシラン(TEOS)9mlを加え、室温(25℃)で24時間攪拌した。その後、濾過してイオン交換水で洗浄し、室温で一晩乾燥させることにより、コラーゲン線維/シリカ複合体を得た。
【0033】
得られたコラーゲン線維/シリカ複合体を600℃で5時間焼成してコラーゲン線維を除去することにより、実施例1の多孔質シリカを得た。
【0034】
(2)多孔質シリカの細孔構造特性評価
上記(1)で製造した実施例1の多孔質シリカについて、前処理として300℃で3時間真空排気を行った後、ユアサアイオニクス(株)製のAUTOSORB−1を用い、以下の測定条件で窒素吸着等温線測定を行うことにより、細孔構造特性を評価した。その結果を図1(a)に示す。
(測定条件)
測定温度:液体窒素温度(77K)
試料量:30mg
吸着ガス:窒素
図1(a)は、IUPAC I型の窒素吸着等温線を示している。このことから、実施例1の多孔質シリカは、ミクロ孔(細孔径が2nm未満)のみが存在する多孔質シリカであることが示唆された。実際にt−plot解析により求めた細孔径は、約0.9nmであった。また、実施例1の多孔質シリカについてB.E.T法で比表面積を求めたところ、720m/gであった。
【0035】
(3)多孔質シリカの走査型電子顕微鏡(SEM)観察
実施例1の多孔質シリカについて、SEMとして日立ハイテク社製のS−4800を用いて、多孔質シリカの形状を観察した。SEM写真を図2(a)に示す。
【0036】
図2(a)の左の写真を見ると、円柱形状のシリカが束になった線維束が観察される。それを拡大した真ん中の写真から、シリカの線維束は、直径が120〜200nm程度の円柱形状のシリカが集まって形成されていることがわかる。それをさらに拡大した右の写真から、円柱形状のシリカは、粒径5〜30nmの球状シリカ微粒子が凝集して形成されていることがわかる。鋳型であるコラーゲン線維が、直径約1.5nm、長さ約280nmのコラーゲン分子が約7000本集合して形成された、直径が約100nmの円柱形状であることを考慮すると、コラーゲン分子間隙でシリカが合成されるとともに、コラーゲン線維の周りに球状のシリカ微粒子が沈着したと考えられる。
【0037】
実施例2
酢酸でpHを3に調整し、pH3の水溶液中でコラーゲン線維/シリカ複合体を形成したこと以外は、上記(1)と同様にして、実施例2の多孔質シリカを製造し、同様の条件で窒素吸着等温線測定を行った。その結果を図1(b)に示す。また、実施例1と同様に、SEM観察を行った。SEM写真を図2(b)に示す。
【0038】
図1(b)をみると、相対圧力が0.5付近に立ち上がりが観測され、IUPAC I型とIV型の窒素吸着等温線が重なった型であることがわかる。これより、実施例2の多孔質シリカには、ミクロ孔とメソ孔(細孔径が2〜50nm)とが存在することが示唆された。BJH法により求めたメソ孔の細孔径は約4nmであった。また、実施例2の多孔質シリカについてB.E.T法で比表面積を求めたところ、629m/gであった。
【0039】
図2(b)から、実施例2の多孔質シリカも、粒径5〜30nmの球状シリカ微粒子が凝集して形成された、直径が150nm程度の円柱形状のシリカで構成されていることがわかる。
【0040】
比較例1
塩酸を添加せず、pH7の水溶液中でコラーゲン線維/シリカ複合体を形成したこと以外は、上記(1)と同様にして、比較例1の多孔質シリカを製造し、同様の条件で窒素吸着等温線測定を行った。その結果を図1(c)に示す。
【0041】
図1(c)をみると、わずかではあるが、相対圧力が0.5付近に立ち上がりが観測された。比較例1の多孔質シリカについてB.E.T法で比表面積を求めたところ、548m/gであった。
【0042】
ここで、コラーゲン線維/シリカ複合体の好ましい酸処理時間を検討した。
(A)試料の作成
(i)上記実施例1(1)と同様に、塩酸でpH=0.5に調整した水溶液中で24時間攪拌して形成したコラーゲン線維/シリカ複合体0.25gを10vol%の塩酸水溶液200ml中に入れ、60℃で3時間攪拌を行い、濾過及び洗浄した後、105℃で約10分間乾燥した。
(ii)乾燥した粉末を同濃度の塩酸水溶液で2時間攪拌を行い、濾過、洗浄及び乾燥(105℃で約10分間)を行った。
(iii)得られた粉末をイオン交換水100ml中に入れ、50℃で1時間攪拌して水洗した。その後、濾過及び乾燥(105℃で約10分間)を行った。なお、この(iii)の操作は3回繰り返して行った。これにより得られた多孔質シリカの粉末を試料(a)とした。
【0043】
上記(i)において、60℃の塩酸水溶液中での攪拌時間を5時間にしたこと以外は、上記(i)〜(iii)と同様にして、試料(b)を調製した。
【0044】
上記(i)において、60℃の塩酸水溶液中での攪拌時間を24時間にしたこと以外は、上記(i)〜(iii)と同様にして、試料(c)を調製した。
【0045】
さらに、参考として、酸処理していないコラーゲン線維/シリカ複合体を試料(d)とし、コラーゲン線維を試料(e)とした。
【0046】
(B)熱重量分析(TG)
試料(a)〜(e)について、装置としてセイコーインスツルメント社製のTG/DTA 320 Uを用い、以下のような測定条件で熱重量分析を行った。その結果を図3に示す。
(測定条件)
測定温度範囲:約50〜約700℃
昇温速度:10℃/分
試料量:2.5mg
試料容器:Pt製試料容器
雰囲気:空気中
流量:200ml/分
図3の結果から、試料(e)(コラーゲン線維)は、600℃付近で完全に分解されることがわかる。また、試料(a)〜(d)のTG曲線を比較することにより、酸処理の時間を長くすると、コラーゲン線維の熱分解に帰属される重量減少の割合が減ることがわかる。特に、24時間酸処理した試料(c)では、コラーゲン線維の熱分解はほとんど起こっていないことがわかる。
【0047】
実施例3
(1)多孔質シリカの合成
上記実施例1(1)と同様に、塩酸でpH=0.5に調整した水溶液中で24時間攪拌してコラーゲン線維/シリカ複合体を合成した。このコラーゲン線維/シリカ複合体0.25gを10vol%の塩酸水溶液200ml中に入れ、60℃で24時間攪拌を行い、濾過及び洗浄した後、105℃で約10分間乾燥した。生成物を同濃度の塩酸水溶液で2時間攪拌を行い、上記と同様に濾過、洗浄及び乾燥(105℃で約10分間)し、得られた粉末をイオン交換水100ml中に入れ、50℃で1時間攪拌して水洗した。その後、濾過及び乾燥(105℃で約10分間)を3回繰り返して行うことにより、実施例3の多孔質シリカを得た。
【0048】
(2)多孔質シリカの細孔構造特性評価
この実施例3の多孔質シリカについて、前処理として300℃で3時間真空排気を行った後、ユアサアイオニクス(株)製のAUTOSORB−1を用い、実施例1(2)と同様の測定条件で窒素吸着等温線測定を行うことにより、細孔構造特性を評価した。その結果を図4に示す。
【0049】
図4から、実施例3の多孔質シリカは、IUPAC I型の窒素吸着等温線を示すが、相対圧力が0.5付近に若干ヒステリシスが観測されることから、メソ細孔も存在すると考えられる。B.E.T法で求めた比表面積は、836m/gであり、焼成によりコラーゲン繊維を除去した実施例1の多孔質シリカの比表面積よりもさらに大きいことがわかった。このように非常に大きい比表面積の多孔質シリカが得られたのは、高温での焼成を行わないため、細孔の崩壊又は収縮が起こらなかったためであると考えられる。
【0050】
(3)走査型電子顕微鏡(SEM)観察
実施例3の多孔質シリカについて、実施例1と同様に、SEMとして日立ハイテク社製のS−4800を用いて、多孔質シリカの形状を観察した。SEM写真を図5に示す。
【0051】
図5のSEM写真から、実施例3の多孔質シリカも、上記の実施例1及び2の多孔質シリカと同様に、コラーゲン線維の形状を反映した、直径が150nm程度の円柱形状のシリカを形成していることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】(a)は実施例1の多孔質シリカの窒素吸着等温線であり、(b)は実施例2の多孔質シリカの窒素吸着等温線であり、(c)は比較例1の多孔質シリカの窒素吸着等温線である。
【図2】(a)は実施例1の多孔質シリカのSEM写真であり、(b)は実施例2の多孔質シリカのSEM写真である。
【図3】試料(a)〜(e)の熱重量分析測定の結果を示す図である。
【図4】実施例3の多孔質シリカの窒素吸着等温線である。
【図5】実施例3の多孔質シリカのSEM写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コラーゲン線維及びアルコキシシランをpH0.1〜5の水溶液中で攪拌してコラーゲン線維とシリカとの複合体を形成する工程、及び該工程で得られたコラーゲン線維とシリカとの複合体を焼成又は酸処理してコラーゲン線維を除去する工程を含む多孔質シリカの製造方法。
【請求項2】
前記コラーゲン線維が、皮革を粉砕したものである請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記水溶液のpHが0.5〜3である請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記酸処理を、無機酸及び有機酸の少なくとも1種で行う請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記無機酸が塩酸である請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記塩酸の温度が50〜70℃である請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかの製造方法によって得られる多孔質シリカであって、
粒径5〜30nmのシリカ粒子が凝集して形成された直径120〜200nmの円柱形状のシリカを含んでおり、細孔径0.8〜4nmの細孔を有し、比表面積が600〜850m/gである多孔質シリカ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−70406(P2010−70406A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−237774(P2008−237774)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り ▲1▼研究集会名 大阪府立産業技術総合研究所実用化技術発表会 主催者名 大阪産業創造館 大阪府立産業技術総合研究所 公開日 平成20(2008)年3月18日 ▲2▼研究集会名 日本セラミックス協会2008年年会 主催者名 社団法人 日本セラミックス協会 公開日 平成20(2008)年3月20日
【出願人】(000205627)大阪府 (238)
【Fターム(参考)】