説明

多孔質材料を有する鋼製矢板

【目的】 景観性や生物の生息環境を向上させる。
【構成】 鋼矢板や鋼管矢板等の鋼製矢板1の河川側の表面に、ロックウール、グラスウール等の鉱物繊維、あるいは多孔質コンクリートなどの多孔質材料2を付着させる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、河川や湖沼等において使用する多孔質材料を有する鋼製矢板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、河川などの鋼製矢板護岸として鋼矢板や鋼管矢板を使用している。この護岸の景観性を良好にし、生物の生息環境を向上させるために植物を利用した技術が、特開平4−49305号公報、実開平4−22510号公報、実開平4−22511号公報に開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】鋼製矢板そのままでは、錆の発生や凹凸形状によって景観性を損なうという問題点がある。また、河川側と陸側とが遮断されているため護岸面には植物が生育しない。植物の利用によって、景観性や生物の生息環境の向上を図ることを提案した前記公開特許公報や公開実用新案公報に開示されているものでは、護岸表面や凹部にケーシングやガイドレールを取付け、そこに植物を植えたり、植生ポットを設けている。このため、現場でのケーシングやガイドレール取り付け作業が発生する。前記ケーシングや植生ポット内の植物への水分補給の問題、鉄面が見える、人工的で不自然さが残る等の問題点がある。
【0004】
【課題を解決するための手段】前述の問題を有利に解決するために、本発明の多孔質材料を有する鋼製矢板においては、鋼矢板や鋼管矢板等の鋼製矢板1の河川側の表面に、ロックウール、グラスウール等の鉱物繊維、あるいは多孔質コンクリートなどの多孔質材料2を付着させる。
【0005】次に本発明の作用について説明する。鋼製矢板における河川側の表面に、多孔質材料2を付着させたので、その多孔質材料2の毛細管現象によって河の水がしみ込み、かつその多孔質材料2の表面において、水苔等の植物の生育が図れる。また、これによって、景観性や生物の生息環境の向上が図れる。
【0006】
【実施例】図1は本発明の第1実施例に係る多孔質材料を有する鋼製矢板を示すものであって、溝形の鋼矢板からなる鋼製矢板1に河川の表面に、ロックウールを布状にした多孔質材料2が、接着剤により固着され、かつ前記多孔質材料2を固着した多数の鋼製矢板1は、継手3が相互に噛み合わされた状態で、水底地盤4に打設されている。
【0007】前記ロックウール布からなる多孔質材料2を、鋼製矢板1における河川側の表面に固定する手段としては、接着剤により貼り付けないで、リベットやボルト等の機械的手段により固定してもよい。
【0008】また前記ロックウール布に養分や植物の種子を入れておくことにより、植物の生育を早めることもできる。さらにまた、鋼製矢板1に通水用の開口部(図示を省略した)を設けることにより、地下水の流れなどを、陸側と河川側との流れの連続性を保つことができ、植物の根が開口部を通って陸側に張り出すこともできる。
【0009】また、図2に示す本発明の第2実施例のように、ロックウール板体からなる多孔質材料2が、溝形の鋼製矢板1の河川側における縦方向の凹部5の開口縁部に接着剤により固定され、前記溝形の鋼製矢板1と多孔質材料2との間に水室が設けられている。
【0010】なお、ロックウールは人造鉱物繊維で、農業用として水稲育苗用マットや園芸用・育苗用培地等、土壌の代替え材として使用されている。前記多孔質材料2を工場で取付けておくことにより、鋼製矢板打設現場での多孔質材料2の取付け作業は不要であり、毛細管現象によって水分は補給され、鉄面が見えないまま、鋼製矢板1における河川側の表面に、植物が生育するので自然な感じを与える。
【0011】
【発明の効果】本発明によれば、鋼矢板や鋼管矢板等の鋼製矢板1の河川側の表面に、ロックウール、グラスウール等の鉱物繊維、あるいは多孔質コンクリートなどの多孔質材料2を付着させたので、鋼製矢板1における河川側の表面に植物の生育を図ることができ、かつ景観性や生物の生息環境が向上する。また、鋼製矢板1の縦方向の凹部5を閉塞するように多孔質材料2を取付けておくことにより、河川側の護岸面の凹凸形状が緩和された状態で植物が生育するので、景観性をさらに向上させることができる。さらにまた、多孔質材料2の毛細管現象によって水分は補給され、鉄面が見えないまま、鋼製矢板1における河川側の表面に、植物が生育するので自然な感じを与える。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例に係る複数の鋼製矢板を水底地盤に打設した状態を示す斜視図である。
【図2】本発明の第2実施例に係る複数の鋼製矢板を噛み合せた状態を示す平面図である。
【符号の説明】
1 鋼製矢板
2 多孔質材料
3 継手
4 水底地盤
5 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 鋼矢板や鋼管矢板等の鋼製矢板1の河川側の表面に、ロックウール、グラスウール等の鉱物繊維、あるいは多孔質コンクリートなどの多孔質材料2を付着させたことを特徴とする多孔質材料を有する鋼製矢板。

【図1】
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【図2】
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