多孔質無機酸化物およびその製法
【課題】比誘電率、誘電正接が低く、回路基板を構成する基板または層間絶縁膜に有用である充填材を提供すること。
【解決手段】キュービック型細孔構造を有し、かつ窒素吸着により求められる比表面積が10m2/g以下である多孔質無機酸化物。
【解決手段】キュービック型細孔構造を有し、かつ窒素吸着により求められる比表面積が10m2/g以下である多孔質無機酸化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細孔構造を有する多孔質無機酸化物およびその製法に関する。
【背景技術】
【0002】
無機酸化物のゾルゲルと、テンプレートとして界面活性剤を用い、多孔質の無機酸化物を得る方法が知られている。酸化物としては二酸化珪素や酸化チタンがあげられ、低誘電損失材料・反射防止材料・低屈折率材料・フィラー・光触媒といった用途に用いられる。
例えば特許文献1は、多孔質の無機酸化物からなる低誘電率材料が記載されている。例えば特許文献2には、多孔質の無機酸化物からなる低屈折率光学材料が記載されている。例えば特許文献3には、多孔質の無機酸化物からなる遮熱・断熱材料が記載されている。例えば特許文献4には、多孔質の無機酸化物からなる軽量化材料が記載されている。
二酸化珪素多孔質体の細孔構造は用いるテンプレートの構造や調整条件に依存し、キュービック型結晶構造を有するもの、ヘキサゴナル型結晶構造(例えば、非特許文献1および2)を有するものがそれぞれ知られている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−86676号公報
【特許文献2】特開平6−3501号公報
【特許文献3】特開2009−108222号公報
【特許文献4】特開2003−165719号公報
【非特許文献1】C.T.Kresge ほか4名、Nature、359、p.710〜712(1992)
【非特許文献2】D.Zhao ほか6名、Science、279、548(1998)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように二酸化珪素や酸化チタン多孔質体は広く用いられているが、いずれも多孔質であるがゆえに比表面積が大きかった。このため、低誘電材料として用いる場合に、水分や不純物が細孔に入り込んだり吸着することにより、誘電率が上がる等の問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは鋭意検討を行い、特定の細孔構造ならびに比表面積を有する多孔質無機酸化物が前記課題を解決できることを見出した。また細孔構造を有する多孔質無機酸化物を特定温度において焼成することで、細孔構造を維持しつつも比表面積を低減し、前記課題を解決できることを見出した。
すなわち本発明の要旨は以下の通りである:
[1]キュービック型細孔構造を有し、かつ窒素吸着により求められる比表面積が10m2/g以下である多孔質無機酸化物。
[2]無機酸化物が二酸化珪素である[1]に記載の多孔質無機酸化物。
[3]キュービック型細孔構造を有する多孔質無機酸化物を、さらに800℃以上で焼成して得られる多孔質無機酸化物。
[4]無機酸化物が二酸化珪素である[3]に記載の多孔質無機酸化物。
[5]キュービック型細孔構造を有する多孔質無機酸化物を、さらに800℃以上で焼成して比表面積の減少した多孔質無機酸化物を得る方法。
[6]無機酸化物が二酸化珪素である[5]に記載の方法。
[7][5]に記載の方法で得られる多孔質無機酸化物。
【発明の効果】
【0006】
本発明の多孔質無機酸化物は、比表面積が抑えられているため水分や不純物が細孔に入り込みにくく、低誘電損失材料として優れる。また、気体の透過性が低いため、フィラーとして用いる場合の断熱性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明を以下詳細に説明する。
(多孔質無機酸化物)
多孔質無機酸化物とは、0.1 nm〜100 nm程度の微細孔を有する無機酸化物をいう。微細孔径は1nm〜50 nmが好ましい。
無機酸化物としては、二酸化珪素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛などをあげることができ、二酸化珪素であることが好ましい。
【0008】
(キュービック型細孔構造)
多孔質体の細孔構造は、小角X線回折(SAXS)及び透過型電子顕微鏡(TEM)による断面観察で確認することができる。本発明の多孔質体から得られた回折像は、複数の円環状のパターンを有し、キュービック相構造を有することを示す。
キュービック型細孔構造を持つ多孔質無機酸化物の作り方を以下に説明する。
公知の方法により、無機酸化物のゾルゲルと、テンプレートとして界面活性剤を用い、乾燥後に、テンプレートを焼成除去して多孔質の無機酸化物を得ることができる。
【0009】
(テンプレート)
テンプレートとして式(1a)または(1b)に示す化合物を用いることが好ましい。式(1a)または(1b)に示す化合物は分散液としたときに希釈濃度によらず粒子径が一定であるため、濃度に拠らずメソ孔がキュービック相を形成し、かつ平均孔径が5nm〜30nm程度の金属酸化物多孔質体を形成することができるため、好ましい。
式(1a)または(1b)に示す化合物は、国際公開WO2005/073282号パンフレットに記載されている方法により製造することができる。
【0010】
【化1】
【0011】
【化2】
【0012】
(式中、R4およびR5は、水素原子あるいは炭素数1〜18のアルキル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。R6およびR7は、水素原子あるいはメチル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子であり、R8およびR9は、水素原子あるいはメチル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子であり、R10およびR11は、水素原子あるいはメチル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。nは、20以上300以下の整数を表す。(1a)においてl+mは2以上300以下の整数を表す。(1b)l+m+oは3以上450以下の整数を表す。)
他の界面活性剤、例えばPluronic P123をテンプレートとして用いることもできる。ただし、5nm〜30nm程度の平均細孔径かつキュービック相構造を有するメソポーラス材料を安定的に製造するのが難しい場合がある。
(微細粒子)
【0013】
式(1a)または(1b)に示す化合物は、テンプレートとして用いる際に体積50%平均粒子径が5nm〜30nm程度の微粒子が媒体中に分散した分散液として用いることができる。なお、本発明における体積50%平均粒子径とは、全体積を100%としたときの累積体積が50%時の粒子の直径をいい、動的光散乱式粒子径分布測定装置やマイクロトラック粒度分布測定装置を使用して測定することができる。式(1a)または(1b)に示す化合物のナノサイズ微粒子が分散した分散液の調製法は、WO2009/87961号国際公開パンフレットに記載されている。例えば、式(1b)に示す化合物10重量部と溶媒の蒸留水40重量部を100mlのオートクレーブに装入し、140℃、800rpmの速度で30分間加熱撹拌の後、撹拌を保ったまま室温まで冷却することによって得られる。
このようにして、式(1a)または(1b)に示す化合物がナノサイズ粒子として媒体中に分散した分散液が得られ、多孔質無機酸化物の製造に用いることができる。
【0014】
(多孔質無機酸化物の製造方法)
本発明の酸化物多孔体は、テンプレート(好ましくは式(1)で示される末端分岐型共重合体)粒子と無機酸化物の有機無機複合体を形成した後、テンプレートを除去することにより製造される。具体的には、以下の工程を含む。
【0015】
工程(a):上述の末端分岐型共重合体粒子の存在下で、無機物を形成する元素のアルコキシド(以下、ケイ素も含めて金属アルコキシドと呼ぶことがある)および/またはその部分加水分解縮合物のゾル−ゲル反応を行う;
工程(b):前記工程(a)において得られた反応溶液を乾燥し、ゾル−ゲル反応を完結し有機無機複合体を得る;
工程(c):前記有機無機複合体からテンプレートを除去し、酸化物多孔質体を調製する。
以下、各工程を順に説明する。
【0016】
[工程(a)]
工程(a)においては、具体的に、前記テンプレート粒子(A)記金属アルコキシドおよび/またはその部分加水分解縮合物(B)、水および/または水の一部または全部を任意の割合で溶解する溶媒(C)を混合して混合組成物を調製するとともに、前記金属アルコキシドおよび/またはその部分加水分解縮合物のゾル−ゲル反応を行う。なお、混合組成物には、金属アルコキシドの加水分解・重縮合反応を促進させる目的で、ゾル−ゲル反応用触媒(D)を含んでいてもよい。
【0017】
混合組成物は、さらに具体的には、成分(B)または成分(B)を「水および/または水の一部または全部を任意の割合で溶解する溶媒(C)」に溶解した溶液に、「ゾル−ゲル反応用触媒(D)」、さらに必要に応じて水を添加して攪拌混合して、成分(B)のゾル−ゲル反応を行い、このゾル−ゲル反応を継続させながら重合体粒子(A)を添加することにより調製される。重合体粒子(A)は水性分散液として添加することができる。また、成分(B)または成分(B)を前記溶媒(C)に溶解した溶液に、重合体粒子(A)の水性分散液を添加して攪拌混合した後に、触媒(D)、さらに必要に応じて水を添加して攪拌混合することで調製することもできる。
【0018】
[金属アルコキシドおよび/またはその部分加水分解縮合物(B)]
本発明における金属ないし非金属のアルコキシドは、下記式(12)で表されるものを指す。
(R1)xM(OR2)y (12)
式中、R1は、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい不飽和基(アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基など)を表す。
Mとしては、Si、Al、Zn、Zr、Tiなどゾル−ゲル反応で無色の無機酸化物となる元素が用いられる。それらの中でもSi、Al、Zr、チタンTiなどが好ましく、Siがとりわけ好ましい
本発明の組成物において、成分(C)は、金属アルコキシドおよび/またはその部分加水分解縮合物(B)を、さらに加水分解させる目的で添加される。
【0019】
また、成分(C)は、テンプレートを用いて水性分散液を得るときに使用する溶媒と、水性分散液、成分(B)および後述するゾル−ゲル反応用触媒(D)(以下、「成分D」ということもある)を混合するときに使用する溶媒の両方を含む。 水については特に制限されず、蒸留水、イオン交換水、市水、工業用水などを使用可能であるが、蒸留水やイオン交換水を使用することが好ましい。
【0020】
水の一部または全部を任意の割合で溶解する溶媒としては、水と親和性を有する有機溶媒であって、テンプレート化合物が分散可能なものであれば特に限定されないが、例えばメタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルイミダゾリジノン、エチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−メトキシエタノール(メチルセルソルブ)、2−エトキシエタノール(エチルセルソルブ)、酢酸エチルなどが挙げられる。
中でも、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、アセ
トニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、アセトン、テトラヒドロフラン、ジオキサンは、水との親和性が高いため、好ましい。
【0021】
水を用いる場合、添加する水の量は、通常は前記成分(C)および前記成分(D)の混合物100重量部に対し、例えば1重量部以上1000000重量部以下の範囲であり、好ましくは10重量部以上10000重量部以下の範囲である。
【0022】
水の一部または全部を任意の割合で溶解する溶媒としては、添加する溶媒の量は、通常は前記成分(C)および前記成分(D)の混合物100重量部に対し、例えば1重量部以上1000000重量部以下の範囲であり、好ましくは10重量部以上10000重量部以下の範囲である。
【0023】
また、金属アルコキシド類の加水分解重縮合時の好ましい反応温度は、1℃以上100℃以下であり、より好ましくは20℃以上60℃以下であり、反応時間は10分以上72時間以下であり、より好ましくは1時間以上24時間以下である。
【0024】
[ゾル−ゲル反応用触媒(D)]
本発明で用いる混合組成物において、金属アルコキシドの加水分解・重縮合反応における反応を促進させる目的で、以下に示すような加水分解・重縮合反応の触媒となりうるものを含んでいてもよい。
金属アルコキシドの加水分解・重縮合反応の触媒として使用されるものは、「最新ゾル−ゲル法による機能性薄膜作製技術」(平島碩著、株式会社総合技術センター、29頁)や「ゾル−ゲル法の科学」(作花済夫著、アグネ承風社、154頁)等に記載されている一般的なゾル−ゲル反応で用いられる触媒である。
【0025】
触媒(D)としては、酸触媒、アルカリ触媒、有機スズ化合物、チタニウムテトライソプロポキシド、ジイソプロポキシチタニウムビスアセチルアセトナート、ジルコニウムテトラブトキシド、ジルコニウムテトラキスアセチルアセトナート、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリスアセチルアセトナート、トリメトキシボランなどの金属アルコキシド等が挙げられる。
[工程(b)]
【0026】
工程(b)においては、前記工程(a)において得られた反応溶液(混合組成物)を乾燥して有機無機複合体を得る。
工程(b)における有機無機複合体は、例えば、基材に反応溶液(混合組成物)を塗布した後、所定時間加熱して溶媒(C)を除去し、ゾル−ゲル反応を完結させることによって得られるゾル−ゲル反応物の形態で得ることができる。あるいは、前記溶媒(C)を除去しないで、さらにゾル−ゲル反応させることによって得られるゾル−ゲル反応物を、基材に塗布後所定時間加熱して溶媒(C)を除去し、該混合組成物におけるゾル−ゲル反応を完結させることによって得られるゾル−ゲル反応物の形態で得ることもできる。
【0027】
なお、ゾル-ゲル反応が完結した状態とは、理想的には全てがM−O−Mの結合を形成した状態であるが、一部アルコキシル基(M−OR2)、M−OH基を残すものの、固体(ゲル)の状態に移行した状態を含むものである。
つまり、混合組成物(反応溶液)を加熱乾燥することによりゾル−ゲル反応が完結し、成分(B)より金属酸化物が得られ、この金属酸化物を主とするマトリックスが形成される。有機無機複合体は、このマトリックス中に、テンプレートから構成される重合体微粒子が分散した構造となる。
【0028】
このゾル−ゲル反応物における金属酸化物は、有機無機複合体中において連続したマトリックス構造体となる。金属酸化物は、上記のとおり特に制限されるものではないが、コーティング膜として、機械的特性などを向上させるという観点からは、金属酸化物は連続したマトリックス構造体となる方が好ましい。そのような金属酸化物の構造体は、金属アルコキシドを加水分解及び重縮合させる、すなわちゾル−ゲル反応により得られる。
【0029】
本発明において、複合体は、その形状を、粒子状又は膜状とすることができる。また、複合体を基板上あるいは多孔質支持体上に積層して、積層複合体としたものであってもよい。
【0030】
粒子状の複合体の製造方法としては、本発明の混合分散液を所定温度で乾燥した後、得られた固体を粉砕や分級等の処理により成形する方法、あるいは凍結乾燥法のように低温度で溶媒除去して乾燥した後、得られた固体を粉砕や分級の処理により成形する方法、さらにはスプレードライヤーにより、10μm以下の複合体微粒子を噴霧乾燥装置(スプレードライヤー)により噴霧し、溶媒を揮発させることにより白色の粉体を得る方法などがある。
【0031】
膜状の複合体の製造方法は、目的とする用途、基材の種類さらに形状等に応じて、ディップコート、スピンコート、スプレーコート、流下塗布、ブレードコート、バーコート、ダイコート、その他の適宜な方法を用いることができる。基材は金属、ガラス、セラミックス、ポリマーなどの成形物、シート、フィルムなどの他、多孔質支持体を用いることができる。
【0032】
多孔質支持体と膜状の複合体の製造方法としては、多孔質支持体を本発明の混合組成物中に浸漬し、多孔質支持体を所定温度で保持して乾燥する方法を例示することができる。
本発明に用いられる多孔質支持体としては、例えば、二酸化珪素、アルミナ、ジルコニア、チタニア等のセラミックス、ステンレス、アルミニウム等の金属、紙、樹脂等の多孔質体を挙げることができる。
【0033】
ゾル−ゲル反応を完結させるための加熱温度は室温以上300℃以下であり、より好ましくは80℃以上200℃以下である。反応時間は10分以上72時間以下であり、より好ましくは1時間以上24時間以下である。
【0034】
[工程(c)]
工程(c)においては、工程(b)で得られた有機無機複合体からテンプレート粒子を除去し、金属酸化物多孔質体を調製する。
テンプレート粒子を除去する方法としては、焼成により分解除去する方法、VUV光(真空紫外光)、遠赤外線、マイクロ波、プラズマを照射して分解除去する方法、溶剤や水を用いて抽出除去する方法などが挙げられる。焼成により分解除去する場合、好ましい温度は300℃〜600℃である。
【0035】
焼成温度が低すぎる場合、テンプレート粒子が除去されず、一方高すぎる場合、金属酸化物の融点に近くなるためメソ孔が崩れる場合がある。焼成は、一定温度で行っても良いし、室温から除々に昇温しても構わない。焼成の時間は、温度に応じて変えられるが、1時間から24時間の範囲で行うのが好ましい。焼成は空気中で行ってもよいし、窒素、アルゴンなどの不活性ガス中で行ってもよい。また、減圧下、または真空中で行っても構わない
VUV光を照射して分解除去する場合、VUVランプ、エキシマレーザー、エキシマランプを使用することが出来る。空気中でVUV光を照射する際に発生するオゾン(O3)の酸化作用を併用しても構わない。マイクロ波としては、2.45GHzまたは28GHzの周波数いずれでも構わない。マイクロ波の出力は特に制限されずテンプレート粒子が除去される条件が選ばれる。
【0036】
溶剤や水を用いて抽出を行う場合、例えば、溶剤としてはエチレングリコール、テトラエチレングリコール、イソプロピルアルコール、アセトン、アセトニトリル、メタノール、エタノール、シクロヘキサン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルイミダゾリジノン、キシレン、トルエン、クロロホルム、ジクロロメタンなどを使用することができる。抽出の操作は、加温下で行っても良い。また超音波(US)処理を併用しても良い。なお、抽出操作を行った後はメソ孔に残存する水分、溶剤を取り除くため減圧下、熱処理を行うのが好ましい。
【0037】
このようにして得られる酸化物多孔質体は、メソポーラス構造体であり、キュービック構造を有する。テンプレートとして式(1)で示される末端分岐型共重合体を用いると、均一なメソ孔を有し、その平均孔径が10〜30nm、好ましくは20〜30nmである酸化物多孔質体を得ることができる。
【0038】
(比表面積)
多孔質体の比表面積は、窒素吸着によって求めることができる。粒子の窒素吸脱着測定を、オートソーブ3(カンタクローム社製)を用いて測定し、比表面積をBET(Brunauer-Emmett-Teller)法で、細孔容積をBJH(Barrett-Joyner-Halenda)法により算出した。
【0039】
(本発明の多孔質体)
本発明に係る、比表面積が10m2/g以下である多孔質無機酸化物は、以下のように調製することができる。すなわち、前述したキュービック相構造を有するメソポーラス材料は無機酸化物のゾルゲルを300〜600℃程度で焼成することにより得られるものであるが、この段階では比表面積が通常200〜1000m2/gとなっている。このような多孔質無機酸化物をさらに800℃以上、好ましくは850〜1000℃で焼成することにより、本発明の多孔質無機酸化物が得られる。
焼成温度が800℃未満では、比表面積が10m2/gを上回る場合があり、焼成温度が1000℃を超えると、無機酸化物自体の構造が変化して細孔が失われるおそれがある。
【0040】
本発明による多孔質体が10m2/g以下の比表面積を示す理由は、
キュービック相構造を有する多孔体を800℃以上で焼成することにより、キュービック相構造を形成する細孔同士を連結している貫通孔表面のシラノール基が脱水縮合を起こして閉塞するためであると考えられる。キュービック相構造を形成する細孔も貫通孔と同様に収縮すると考えられるが、径が大きい為に閉塞するまでには至らず、クローズドポアを有する多孔体となると推定される。
【0041】
焼成は、一定温度で行っても良いし、室温から除々に昇温しても構わない。焼成の時間は、温度に応じて変えられるが、1時間から24時間の範囲で行うのが好ましい。焼成は空気中で行ってもよいし、窒素、アルゴンなどの不活性ガス中で行ってもよい。また、減圧下、または真空中で行っても構わない
多孔質体の細孔がヘキサゴナル(六方晶)構造である場合には、800℃以上で焼成を行っても比表面積の変化が小さく、10m2/g以下とならないことがある。
【実施例】
【0042】
<末端分岐型共重合体の合成例>
数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)はGPCを用い、本文中に記載した方法で測定した。また、融点(Tm)はDSCを用い、測定して得られたピークトップ温度を採用した。なお、測定条件によりポリアルキレングリコール部分の融点も確認されるが、ここでは特に断りのない場合ポリオレフィン部分の融点のことを指す。1H−NMRについては、測定サンプル管中で重合体を、ロック溶媒と溶媒を兼ねた重水素化−1,1,2,2−テトラクロロエタンに完全に溶解させた後、120℃において測定した。ケミカルシフトは、重水素化−1,1,2,2−テトラクロロエタンのピークを5.92ppmとして、他のピークのケミカルシフト値を決定した。分散液中の粒子の粒子径はマイクロトラックUPA(HONEYWELL社製)にて、体積50%平均粒子径を測定した。分散液中の粒子の形状観察は、試料を200倍から500倍に希釈し、リンタングステン酸によりネガティブ染色した後、透過型電子顕微鏡(TEM/日立製作所製H−7650)で100kVの条件にて行なった。
[合成例1]
【0043】
(ポリオレフィン系末端分岐型共重合体(T)の合成)
以下の手順(例えば、特開2006−131870号公報の合成例2参照)に従って、末端エポキシ基含有エチレン重合体を合成した。
【0044】
充分に窒素置換した内容積2000mlのステンレス製オートクレーブに、室温でヘプタン1000mlを装入し、150℃に昇温した。続いてオートクレーブ内をエチレンで30kg/cm2G加圧し、温度を維持した。MMAO(東ソーファインケム社製)のヘキサン溶液(アルミニウム原子換算1.00mmol/ml)0.5ml(0.5mmol)を圧入し、次いで下記式の化合物のトルエン溶液(0.0002mmol/ml)0.5ml(0.0001mmol)を圧入し、重合を開始した。エチレンガス雰囲気下、150℃で30分間重合を行った後、少量のメタノールを圧入することにより重合を停止した。得られたポリマー溶液を、少量の塩酸を含む3リットルのメタノール中に加えてポリマーを析出させた。メタノールで洗浄後、80℃にて10時間減圧乾燥し、片末端二重結合含有エチレン系重合体を得た。
【0045】
【化31】
【0046】
500mlセパラブルフラスコに上記片末端二重結合含有エチレン系重合体(P−1)100g(Mn850として,ビニル基108mmol)、トルエン300g、Na2WO40.85g(2.6mmol)、CH3(nC8H17)3NHSO40.60g(1.3mmol)、およびリン酸0.11g(1.3mmol)を仕込み、撹拌しながら30分間加熱還流し、重合物を完全に溶融させた。内温を90℃にした後、30%過酸化水素水37g(326mmol)を3時間かけて滴下した後、内温90〜92℃で3時間撹拌した。その後、90℃に保ったまま25%チオ硫酸ナトリウム水溶液34.4g(54.4mmol)を添加して30分撹拌し、過酸化物試験紙で反応系内の過酸化物が完全に分解されたことを確認した。次いで、内温90℃でジオキサン200gを加え、生成物を晶析させ、固体をろ取しジオキサンで洗浄した。得られた固体を室温下、50%メタノール水溶液中で撹拌、固体をろ取しメタノールで洗浄した。更に当該固体をメタノール400g中で撹拌して、ろ取しメタノールで洗浄した。室温、1〜2hPaの減圧下乾燥させることにより、末端エポキシ基含有エチレン重合体の白色固体96.3gを得た(収率99%,オレフィン転化率100%)。
【0047】
得られた末端エポキシ基含有エチレン重合体は、Mw=2058、Mn=1118、Mw/Mn=1.84(GPC)であった。(末端エポキシ基含有率:90mol%)
1H-NMR : δ(C2D2Cl4) 0.88(t, 3H, J = 6.92 Hz), 1.18 - 1.66 (m), 2.38 (dd,1H, J = 2.64, 5.28 Hz), 2.66 (dd, 1H, J = 4.29, 5.28 Hz), 2.80-2.87 (m, 1H)
融点(Tm) 121℃
Mw=2058、Mn=1118、Mw/Mn=1.84(GPC)
【0048】
1000mLフラスコに、末端エポキシ基含有エチレン重合体84重量部、ジエタノールアミン39.4重量部、トルエン150重量部 を仕込み、150℃にて4時間撹拌した。その後、冷却しながらアセトンを加え、反応生成物を析出させ、固体を濾取した。得られた固体をアセトン水溶液で1回、更にアセトンで3回撹拌洗浄した後、固体を濾取した。その後、室温にて減圧下乾燥させることにより、重合体(Mn=1223、一般式(9)においてA:エチレンの重合により形成される基(Mn=1075)、R1=R2=水素原子、Y1、Y2の一方が水酸基、他方がビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ基)を得た。
1H-NMR : δ(C2D2Cl4) 0.88 (t, 3H, J = 6.6 Hz), 0.95-1.92 (m), 2.38-2.85 (m, 6H), 3.54-3.71 (m, 5H)
融点 (Tm) 121℃
【0049】
窒素導入管、温度計、冷却管、撹拌装置を備えた500mLフラスコに、重合体20.0重量部、トルエン100重量部を仕込み、撹拌しながら125℃のオイルバスで加熱し、固体を完全に溶解した。90℃まで冷却後、予め5.0重量部の水に溶解した0.323重量部の85%KOHをフラスコに加え、還流条件で2時間混合した。その後、フラスコ内温度を120℃まで徐々に上げながら、水及びトルエンを留去した。さらに、フラスコ内にわずかな窒素を供給しながらフラスコ内を減圧とし、さらに内温を150℃まで昇温後、4時間保ち、フラスコ内の水及びトルエンをさらに留去した。室温まで冷却後、フラスコ内で凝固した固体を砕き、取り出した。
【0050】
加熱装置、撹拌装置、温度計、圧力計、安全弁を備えたステンレス製1.5L加圧反応器に、得られた固体のうち18.0重量部及び脱水トルエン200重量部を仕込み、気相を窒素に置換した後、撹拌しながら130℃まで昇温した。30分後、エチレンオキシド9.0重量部を加え、さらに5時間、130℃で保った後、室温まで冷却し、反応物を得た。得られた反応物より溶媒を乾燥して除き、末端分岐型共重合体(T)(Mn=1835、一般式(1)においてA:エチレンの重合により形成される基(Mn=1075)、R1=R2=水素原子、X1、X2の一方が一般式(6)で示される基(X11=ポリエチレングリコール基)、他方が一般式(5)で示される基(Q1=Q2=エチレン基、X9=X10=ポリエチレングリコール基))を得た。
1H-NMR : δ(C2D2Cl4) 0.88(3H, t, J= 6.8 Hz), 1.06 - 1.50 (m), 2.80 - 3.20 (m), 3.33 - 3.72 (m)
融点(Tm) −16℃(ポリエチレングリコール)、116℃
【0051】
<末端分岐型共重合体水性分散体の調製例>
[調製例1]
(10重量%ポリオレフィン系末端分岐型共重合体(T)水性分散液の調製)
(A)重合粒子を構成する合成例1のポリオレフィン系末端分岐型共重合体(T)10重量部と溶媒(C)の蒸留水40重量部を100mlのオートクレーブに装入し、140℃、800rpmの速度で30分間加熱撹拌したの後、撹拌を保ったまま室温まで冷却した。得られた分散系の体積50%平均粒子径は0.018μm(体積10%平均粒子径0.014μm、体積90%平均粒子径0.022μm)であった。得られた分散系の透過型電子顕微鏡により測定した粒子径は0.015−0.030μmであった。更に、このT−1水性分散液(固形分20重量%)75重量部に対して蒸留水75重量部を加えることで10重量%水性分散液を得た。
【0052】
(ポリオレフィン系末端分岐型共重合体/TMOS脱水縮合物溶液の調製)
テトラメトキシシラン(TMOS)10重量部に溶媒のメタノール15重量部を添加し、室温で攪拌した。さらに触媒の1M―シュウ酸水溶液2重量部を滴下した後(ポリオレフィン系末端分岐型共重合体添加後のpHを3付近にするため)、室温で攪拌し、TMOSの脱水縮合物を得た。
【0053】
得られたTMOSの脱水縮合物に、ポリオレフィン系末端分岐型共重合体(T−1)の水性分散体(固形分10重量%)を73重量部滴下し、室温で攪拌し、ポリオレフィン系末端分岐型共重合体/TMOS脱水縮合物溶液を調製した。(ポリオレフィン系末端分岐型共重合体/シリカ:SiO2換算の重量比が65/35)
シリカ含有量は、複合粒子中に占めるシリカの含有の割合を示し、以下の方法で算出した。シリカ含有率は、TMOSが100重量%反応し、SiO2になったと仮定して算出した。すなわち
TMOS:Mw=152
SiO2:Mw=60 より、
SiO2/TMOS=60/152=0.395である。つまり、TMOSの添加量に0.395を掛けた値が、粒子中のSiO2含量となる。
【0054】
(ポリオレフィン系末端分岐型共重合体/シリカ複合粒子の形成)
この組成物をスプレードライヤー装置(ヤマト科学社製スプレードライヤーADL311S)に流し込み、ノズル出口温度190℃で加圧(0.2MPa)し、噴霧することで、ポリオレフィン系末端分岐型共重合体/シリカの複合微粒子を得た。
(実施例1)
【0055】
工程1:多孔質二酸化珪素粒子の形成
得られたポリオレフィン系末端分岐型共重合体/シリカ複合粒子を、電気炉を用いて、室温から600℃まで毎分5℃の速度で昇温し、さらに600℃で2時間焼成することによってポリオレフィン系末端分岐型共重合体を除去してキュービック細孔配列を有するシリカ多孔粒子を得た。
【0056】
「キュービック細孔配列を有する多孔質二酸化珪素 1000℃焼成」
工程2:独立細孔を有する多孔質二酸化珪素粒子の形成
得られた多孔質二酸化珪素粒子を、電気炉を用いて、室温から1000℃まで毎分10℃の速度で昇温し、さらに1000℃で1時間熱処理することによって、キュービック型細孔配列を有する多孔粒子の1000℃熱処理品を得た。
(比較例1)
【0057】
「キュービック細孔配列を有する多孔質二酸化珪素 600℃焼成」
実施例1の『工程1:多孔質二酸化珪素粒子の形成』と全く同様の方法で、キュービック細孔配列を有する多孔質二酸化珪素粒子を得た。工程2は行わなかった。
(比較例2)
【0058】
「キュービック細孔配列を有する多孔質二酸化珪素 1100℃焼成」
実施例1の『工程2:独立細孔を有する多孔質二酸化珪素粒子の形成』の熱処理温度を1000℃から1100℃に変えたこと以外は、実施例1と同様の方法で、キュービック型細孔配列を有する多孔粒子の1100℃熱処理品を得た。
(比較例3)
【0059】
「ヘキサゴナル相多孔質二酸化珪素」
比較例3としてヘキサゴナル細孔構造を有する多孔質二酸化珪素粒子(アドマポーラスPC700G:アドマテックス社製)を用いた。
(比較例4)
【0060】
「ヘキサゴナル相多孔質二酸化珪素 1000℃焼成」
比較例3のアドマポーラスPC700Gを電気炉を用いて、室温から1000℃まで毎分10℃の速度で昇温し、さらに1000℃で1時間熱処理することによって、ヘキサゴナル型細孔配列を有する多孔質二酸化珪素粒子の1,000℃熱処理品を得た。
(比較例5)
【0061】
比較例1と同様の製法で600℃にて焼成したキュービック細孔配列を有する多孔質二酸化珪素粒子を得た。さらにこの多孔質二酸化珪素粒子の疎水化処理を行った。
【0062】
疎水化処理はヘキサメチルジシラザン(HMDS)を用い、化学気相吸着(CVA)法により実施した。CVAは300mlPTFE製耐圧容器中に、0.3gのHMDSと多孔質二酸化珪素粒子1〜2gを入れ、50℃にて2hr反応させた。
【0063】
以上により得られた実施例1のキュービック型細孔配列を有する多孔粒子の1000℃熱処理品、比較例1のキュービック細孔配列を有する多孔質二酸化珪素粒子、比較例2のキュービック型細孔配列を有する多孔質二酸化珪素粒子の1100℃熱処理品、比較例3のヘキサゴナル細孔配列を有する多孔質二酸化珪素粒子、比較例4のヘキサゴナル細孔配列を有する多孔質二酸化珪素粒子の1000℃熱処理品および比較例5のキュービック細孔配列を有する多孔質二酸化珪素粒子の疎水処理品について、以下の評価を行った。
【0064】
(窒素吸着による比表面積・細孔径の評価)
実施例1、比較例1〜4の粒子の比表面積を以下の方法で観察した。粉体の比表面積は、窒素吸着によって求めることができる。粒子の窒素吸脱着測定を、オートソーブ3(カンタクローム社製)を用いて測定し、比表面積をBET(Brunauer-Emmett-Teller)法で、細孔径をBJH(Barrett-Joyner-Halenda)法により算出した。
【0065】
【表1】
キュービック型細孔を有する比較例1の粒子に1000℃または1100℃の熱処理を加えた実施例1、比較例2の粒子の比表面積は、1/10以下に低下した。一方、ヘキサゴナル型細孔を有する比較例3の粒子に1000℃の熱処理を加えた比較例4の粒子の比表面積の低下率は、1/5程度にとどまり、ほとんどの細孔が閉塞化していないことがわかる。
【0066】
(断面TEM観察による細孔構造の有無確認)
実施例1、比較例1〜4の粒子を樹脂で固定し、収束イオンビーム(FIB)加工によって切片を切り出した。続いて、この断面を、透過型電子顕微鏡(TEM/日立製作所製H−7650)を用い200kVの条件にて観察した。断面像を図7〜図11に示す。
【0067】
キュービック型細孔を有する比較例1の粒子に1000℃の熱処理を加えた実施例1の粒子は、キュービック型細孔が保持されていることを図7より確認した。1100℃の熱処理を加えた比較例2の粒子は、図9のように細孔が確認できなかった。高温処理により、細孔が消失したものと推定される。比較例3および比較例4の粒子はヘキサゴナル型の細孔が確認できた。
【0068】
(小角X線散乱測定による細孔構造の確認)
実施例1および比較例1の粒子の、小角X線散乱測定を行った。得られた回折像は両者ともに、複数の円環状のパターンを有し、キュービック相構造を有することが分かり、1000℃の熱処理後も細孔構造が保持されていることが確認された。
【0069】
(誘電率の測定)
実施例1および比較例5の粒子について、誘電特性を測定した。
誘電特性測定は自動平衡ブリッジ法による4端子法により行った。テフロン(登録商標)リング電極(主電極径=37mm、ガード電極/内径=39mmφ、外径=55mmφ)内にサンプルを充填し、ばね式電極にセットし4〜2000kgfの荷重を加えてサンプルの嵩密度を変化させ、各々の嵩密度において、試験機(PRECISION LCRmeter HP4282A)により、1kHz及び1MHzにおける誘電率及び誘電正接の値を測定した。測定は、試験雰囲気23℃、湿度50%RHの条件下で行った。
周波数1 kHzでの誘電率を図1、誘電正接を図2、誘電率の平方根と誘電正接の積を図3に、周波数1 MHzでの誘電率を図4、誘電正接を図5に、誘電率の平方根と誘電正接の積を図6に示す。一般的に低誘電率材料の伝送損失は、誘電率の平方根と誘電正接の積で評価され、その値が小さいほど低誘電率材料として優れているとされている。
【0070】
図3、図6から明らかなように、実施例1の独立細孔を有する多孔質粒子は非常に低い伝送損失を示している。これは、1000℃で熱処理することにより、表面の残存シラノール(Si−OH)量が低減されたことと、細孔が閉塞化されたことにより、伝送損失を悪化させる要因である水やその他の不純物の吸着が著しく抑制されたためであると考えられる。
【0071】
本発明において得られる無機酸化物多孔質体は比誘電率、誘電正接が低く、伝送損失が著しく低いため、回路基板を構成する基板または層間絶縁膜に充填して用いられる充填材として非常に有用である。さらに、本発明の無機酸化物多孔質体は、閉塞構造を取ることから粒子内部に空気が閉じ込められた状態にあり、熱の伝導率が低いことが容易に予測できる。そのため断熱材料としても有用である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】多孔質体の1 kHzでの誘電率を示すグラフである
【図2】多孔質体の1 kHzでの誘電正接を示すグラフである
【図3】多孔質体の1 kHzでの伝送損失を示すグラフである
【図4】多孔質体の1 MHzでの誘電率を示すグラフである
【図5】多孔質体の1 MHzでの誘電正接を示すグラフである
【図6】多孔質体の1 MHzでの伝送損失を示すグラフである
【図7】実施例1の多孔質体の断面TEM像である
【図8】比較例1の多孔質体の断面TEM像である
【図9】比較例2の多孔質体の断面TEM像である
【図10】比較例3の多孔質体の断面TEM像である
【図11】比較例4の多孔質体の断面TEM像である
【技術分野】
【0001】
本発明は、細孔構造を有する多孔質無機酸化物およびその製法に関する。
【背景技術】
【0002】
無機酸化物のゾルゲルと、テンプレートとして界面活性剤を用い、多孔質の無機酸化物を得る方法が知られている。酸化物としては二酸化珪素や酸化チタンがあげられ、低誘電損失材料・反射防止材料・低屈折率材料・フィラー・光触媒といった用途に用いられる。
例えば特許文献1は、多孔質の無機酸化物からなる低誘電率材料が記載されている。例えば特許文献2には、多孔質の無機酸化物からなる低屈折率光学材料が記載されている。例えば特許文献3には、多孔質の無機酸化物からなる遮熱・断熱材料が記載されている。例えば特許文献4には、多孔質の無機酸化物からなる軽量化材料が記載されている。
二酸化珪素多孔質体の細孔構造は用いるテンプレートの構造や調整条件に依存し、キュービック型結晶構造を有するもの、ヘキサゴナル型結晶構造(例えば、非特許文献1および2)を有するものがそれぞれ知られている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−86676号公報
【特許文献2】特開平6−3501号公報
【特許文献3】特開2009−108222号公報
【特許文献4】特開2003−165719号公報
【非特許文献1】C.T.Kresge ほか4名、Nature、359、p.710〜712(1992)
【非特許文献2】D.Zhao ほか6名、Science、279、548(1998)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように二酸化珪素や酸化チタン多孔質体は広く用いられているが、いずれも多孔質であるがゆえに比表面積が大きかった。このため、低誘電材料として用いる場合に、水分や不純物が細孔に入り込んだり吸着することにより、誘電率が上がる等の問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは鋭意検討を行い、特定の細孔構造ならびに比表面積を有する多孔質無機酸化物が前記課題を解決できることを見出した。また細孔構造を有する多孔質無機酸化物を特定温度において焼成することで、細孔構造を維持しつつも比表面積を低減し、前記課題を解決できることを見出した。
すなわち本発明の要旨は以下の通りである:
[1]キュービック型細孔構造を有し、かつ窒素吸着により求められる比表面積が10m2/g以下である多孔質無機酸化物。
[2]無機酸化物が二酸化珪素である[1]に記載の多孔質無機酸化物。
[3]キュービック型細孔構造を有する多孔質無機酸化物を、さらに800℃以上で焼成して得られる多孔質無機酸化物。
[4]無機酸化物が二酸化珪素である[3]に記載の多孔質無機酸化物。
[5]キュービック型細孔構造を有する多孔質無機酸化物を、さらに800℃以上で焼成して比表面積の減少した多孔質無機酸化物を得る方法。
[6]無機酸化物が二酸化珪素である[5]に記載の方法。
[7][5]に記載の方法で得られる多孔質無機酸化物。
【発明の効果】
【0006】
本発明の多孔質無機酸化物は、比表面積が抑えられているため水分や不純物が細孔に入り込みにくく、低誘電損失材料として優れる。また、気体の透過性が低いため、フィラーとして用いる場合の断熱性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明を以下詳細に説明する。
(多孔質無機酸化物)
多孔質無機酸化物とは、0.1 nm〜100 nm程度の微細孔を有する無機酸化物をいう。微細孔径は1nm〜50 nmが好ましい。
無機酸化物としては、二酸化珪素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛などをあげることができ、二酸化珪素であることが好ましい。
【0008】
(キュービック型細孔構造)
多孔質体の細孔構造は、小角X線回折(SAXS)及び透過型電子顕微鏡(TEM)による断面観察で確認することができる。本発明の多孔質体から得られた回折像は、複数の円環状のパターンを有し、キュービック相構造を有することを示す。
キュービック型細孔構造を持つ多孔質無機酸化物の作り方を以下に説明する。
公知の方法により、無機酸化物のゾルゲルと、テンプレートとして界面活性剤を用い、乾燥後に、テンプレートを焼成除去して多孔質の無機酸化物を得ることができる。
【0009】
(テンプレート)
テンプレートとして式(1a)または(1b)に示す化合物を用いることが好ましい。式(1a)または(1b)に示す化合物は分散液としたときに希釈濃度によらず粒子径が一定であるため、濃度に拠らずメソ孔がキュービック相を形成し、かつ平均孔径が5nm〜30nm程度の金属酸化物多孔質体を形成することができるため、好ましい。
式(1a)または(1b)に示す化合物は、国際公開WO2005/073282号パンフレットに記載されている方法により製造することができる。
【0010】
【化1】
【0011】
【化2】
【0012】
(式中、R4およびR5は、水素原子あるいは炭素数1〜18のアルキル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。R6およびR7は、水素原子あるいはメチル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子であり、R8およびR9は、水素原子あるいはメチル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子であり、R10およびR11は、水素原子あるいはメチル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。nは、20以上300以下の整数を表す。(1a)においてl+mは2以上300以下の整数を表す。(1b)l+m+oは3以上450以下の整数を表す。)
他の界面活性剤、例えばPluronic P123をテンプレートとして用いることもできる。ただし、5nm〜30nm程度の平均細孔径かつキュービック相構造を有するメソポーラス材料を安定的に製造するのが難しい場合がある。
(微細粒子)
【0013】
式(1a)または(1b)に示す化合物は、テンプレートとして用いる際に体積50%平均粒子径が5nm〜30nm程度の微粒子が媒体中に分散した分散液として用いることができる。なお、本発明における体積50%平均粒子径とは、全体積を100%としたときの累積体積が50%時の粒子の直径をいい、動的光散乱式粒子径分布測定装置やマイクロトラック粒度分布測定装置を使用して測定することができる。式(1a)または(1b)に示す化合物のナノサイズ微粒子が分散した分散液の調製法は、WO2009/87961号国際公開パンフレットに記載されている。例えば、式(1b)に示す化合物10重量部と溶媒の蒸留水40重量部を100mlのオートクレーブに装入し、140℃、800rpmの速度で30分間加熱撹拌の後、撹拌を保ったまま室温まで冷却することによって得られる。
このようにして、式(1a)または(1b)に示す化合物がナノサイズ粒子として媒体中に分散した分散液が得られ、多孔質無機酸化物の製造に用いることができる。
【0014】
(多孔質無機酸化物の製造方法)
本発明の酸化物多孔体は、テンプレート(好ましくは式(1)で示される末端分岐型共重合体)粒子と無機酸化物の有機無機複合体を形成した後、テンプレートを除去することにより製造される。具体的には、以下の工程を含む。
【0015】
工程(a):上述の末端分岐型共重合体粒子の存在下で、無機物を形成する元素のアルコキシド(以下、ケイ素も含めて金属アルコキシドと呼ぶことがある)および/またはその部分加水分解縮合物のゾル−ゲル反応を行う;
工程(b):前記工程(a)において得られた反応溶液を乾燥し、ゾル−ゲル反応を完結し有機無機複合体を得る;
工程(c):前記有機無機複合体からテンプレートを除去し、酸化物多孔質体を調製する。
以下、各工程を順に説明する。
【0016】
[工程(a)]
工程(a)においては、具体的に、前記テンプレート粒子(A)記金属アルコキシドおよび/またはその部分加水分解縮合物(B)、水および/または水の一部または全部を任意の割合で溶解する溶媒(C)を混合して混合組成物を調製するとともに、前記金属アルコキシドおよび/またはその部分加水分解縮合物のゾル−ゲル反応を行う。なお、混合組成物には、金属アルコキシドの加水分解・重縮合反応を促進させる目的で、ゾル−ゲル反応用触媒(D)を含んでいてもよい。
【0017】
混合組成物は、さらに具体的には、成分(B)または成分(B)を「水および/または水の一部または全部を任意の割合で溶解する溶媒(C)」に溶解した溶液に、「ゾル−ゲル反応用触媒(D)」、さらに必要に応じて水を添加して攪拌混合して、成分(B)のゾル−ゲル反応を行い、このゾル−ゲル反応を継続させながら重合体粒子(A)を添加することにより調製される。重合体粒子(A)は水性分散液として添加することができる。また、成分(B)または成分(B)を前記溶媒(C)に溶解した溶液に、重合体粒子(A)の水性分散液を添加して攪拌混合した後に、触媒(D)、さらに必要に応じて水を添加して攪拌混合することで調製することもできる。
【0018】
[金属アルコキシドおよび/またはその部分加水分解縮合物(B)]
本発明における金属ないし非金属のアルコキシドは、下記式(12)で表されるものを指す。
(R1)xM(OR2)y (12)
式中、R1は、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい不飽和基(アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基など)を表す。
Mとしては、Si、Al、Zn、Zr、Tiなどゾル−ゲル反応で無色の無機酸化物となる元素が用いられる。それらの中でもSi、Al、Zr、チタンTiなどが好ましく、Siがとりわけ好ましい
本発明の組成物において、成分(C)は、金属アルコキシドおよび/またはその部分加水分解縮合物(B)を、さらに加水分解させる目的で添加される。
【0019】
また、成分(C)は、テンプレートを用いて水性分散液を得るときに使用する溶媒と、水性分散液、成分(B)および後述するゾル−ゲル反応用触媒(D)(以下、「成分D」ということもある)を混合するときに使用する溶媒の両方を含む。 水については特に制限されず、蒸留水、イオン交換水、市水、工業用水などを使用可能であるが、蒸留水やイオン交換水を使用することが好ましい。
【0020】
水の一部または全部を任意の割合で溶解する溶媒としては、水と親和性を有する有機溶媒であって、テンプレート化合物が分散可能なものであれば特に限定されないが、例えばメタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルイミダゾリジノン、エチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−メトキシエタノール(メチルセルソルブ)、2−エトキシエタノール(エチルセルソルブ)、酢酸エチルなどが挙げられる。
中でも、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、アセ
トニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、アセトン、テトラヒドロフラン、ジオキサンは、水との親和性が高いため、好ましい。
【0021】
水を用いる場合、添加する水の量は、通常は前記成分(C)および前記成分(D)の混合物100重量部に対し、例えば1重量部以上1000000重量部以下の範囲であり、好ましくは10重量部以上10000重量部以下の範囲である。
【0022】
水の一部または全部を任意の割合で溶解する溶媒としては、添加する溶媒の量は、通常は前記成分(C)および前記成分(D)の混合物100重量部に対し、例えば1重量部以上1000000重量部以下の範囲であり、好ましくは10重量部以上10000重量部以下の範囲である。
【0023】
また、金属アルコキシド類の加水分解重縮合時の好ましい反応温度は、1℃以上100℃以下であり、より好ましくは20℃以上60℃以下であり、反応時間は10分以上72時間以下であり、より好ましくは1時間以上24時間以下である。
【0024】
[ゾル−ゲル反応用触媒(D)]
本発明で用いる混合組成物において、金属アルコキシドの加水分解・重縮合反応における反応を促進させる目的で、以下に示すような加水分解・重縮合反応の触媒となりうるものを含んでいてもよい。
金属アルコキシドの加水分解・重縮合反応の触媒として使用されるものは、「最新ゾル−ゲル法による機能性薄膜作製技術」(平島碩著、株式会社総合技術センター、29頁)や「ゾル−ゲル法の科学」(作花済夫著、アグネ承風社、154頁)等に記載されている一般的なゾル−ゲル反応で用いられる触媒である。
【0025】
触媒(D)としては、酸触媒、アルカリ触媒、有機スズ化合物、チタニウムテトライソプロポキシド、ジイソプロポキシチタニウムビスアセチルアセトナート、ジルコニウムテトラブトキシド、ジルコニウムテトラキスアセチルアセトナート、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリスアセチルアセトナート、トリメトキシボランなどの金属アルコキシド等が挙げられる。
[工程(b)]
【0026】
工程(b)においては、前記工程(a)において得られた反応溶液(混合組成物)を乾燥して有機無機複合体を得る。
工程(b)における有機無機複合体は、例えば、基材に反応溶液(混合組成物)を塗布した後、所定時間加熱して溶媒(C)を除去し、ゾル−ゲル反応を完結させることによって得られるゾル−ゲル反応物の形態で得ることができる。あるいは、前記溶媒(C)を除去しないで、さらにゾル−ゲル反応させることによって得られるゾル−ゲル反応物を、基材に塗布後所定時間加熱して溶媒(C)を除去し、該混合組成物におけるゾル−ゲル反応を完結させることによって得られるゾル−ゲル反応物の形態で得ることもできる。
【0027】
なお、ゾル-ゲル反応が完結した状態とは、理想的には全てがM−O−Mの結合を形成した状態であるが、一部アルコキシル基(M−OR2)、M−OH基を残すものの、固体(ゲル)の状態に移行した状態を含むものである。
つまり、混合組成物(反応溶液)を加熱乾燥することによりゾル−ゲル反応が完結し、成分(B)より金属酸化物が得られ、この金属酸化物を主とするマトリックスが形成される。有機無機複合体は、このマトリックス中に、テンプレートから構成される重合体微粒子が分散した構造となる。
【0028】
このゾル−ゲル反応物における金属酸化物は、有機無機複合体中において連続したマトリックス構造体となる。金属酸化物は、上記のとおり特に制限されるものではないが、コーティング膜として、機械的特性などを向上させるという観点からは、金属酸化物は連続したマトリックス構造体となる方が好ましい。そのような金属酸化物の構造体は、金属アルコキシドを加水分解及び重縮合させる、すなわちゾル−ゲル反応により得られる。
【0029】
本発明において、複合体は、その形状を、粒子状又は膜状とすることができる。また、複合体を基板上あるいは多孔質支持体上に積層して、積層複合体としたものであってもよい。
【0030】
粒子状の複合体の製造方法としては、本発明の混合分散液を所定温度で乾燥した後、得られた固体を粉砕や分級等の処理により成形する方法、あるいは凍結乾燥法のように低温度で溶媒除去して乾燥した後、得られた固体を粉砕や分級の処理により成形する方法、さらにはスプレードライヤーにより、10μm以下の複合体微粒子を噴霧乾燥装置(スプレードライヤー)により噴霧し、溶媒を揮発させることにより白色の粉体を得る方法などがある。
【0031】
膜状の複合体の製造方法は、目的とする用途、基材の種類さらに形状等に応じて、ディップコート、スピンコート、スプレーコート、流下塗布、ブレードコート、バーコート、ダイコート、その他の適宜な方法を用いることができる。基材は金属、ガラス、セラミックス、ポリマーなどの成形物、シート、フィルムなどの他、多孔質支持体を用いることができる。
【0032】
多孔質支持体と膜状の複合体の製造方法としては、多孔質支持体を本発明の混合組成物中に浸漬し、多孔質支持体を所定温度で保持して乾燥する方法を例示することができる。
本発明に用いられる多孔質支持体としては、例えば、二酸化珪素、アルミナ、ジルコニア、チタニア等のセラミックス、ステンレス、アルミニウム等の金属、紙、樹脂等の多孔質体を挙げることができる。
【0033】
ゾル−ゲル反応を完結させるための加熱温度は室温以上300℃以下であり、より好ましくは80℃以上200℃以下である。反応時間は10分以上72時間以下であり、より好ましくは1時間以上24時間以下である。
【0034】
[工程(c)]
工程(c)においては、工程(b)で得られた有機無機複合体からテンプレート粒子を除去し、金属酸化物多孔質体を調製する。
テンプレート粒子を除去する方法としては、焼成により分解除去する方法、VUV光(真空紫外光)、遠赤外線、マイクロ波、プラズマを照射して分解除去する方法、溶剤や水を用いて抽出除去する方法などが挙げられる。焼成により分解除去する場合、好ましい温度は300℃〜600℃である。
【0035】
焼成温度が低すぎる場合、テンプレート粒子が除去されず、一方高すぎる場合、金属酸化物の融点に近くなるためメソ孔が崩れる場合がある。焼成は、一定温度で行っても良いし、室温から除々に昇温しても構わない。焼成の時間は、温度に応じて変えられるが、1時間から24時間の範囲で行うのが好ましい。焼成は空気中で行ってもよいし、窒素、アルゴンなどの不活性ガス中で行ってもよい。また、減圧下、または真空中で行っても構わない
VUV光を照射して分解除去する場合、VUVランプ、エキシマレーザー、エキシマランプを使用することが出来る。空気中でVUV光を照射する際に発生するオゾン(O3)の酸化作用を併用しても構わない。マイクロ波としては、2.45GHzまたは28GHzの周波数いずれでも構わない。マイクロ波の出力は特に制限されずテンプレート粒子が除去される条件が選ばれる。
【0036】
溶剤や水を用いて抽出を行う場合、例えば、溶剤としてはエチレングリコール、テトラエチレングリコール、イソプロピルアルコール、アセトン、アセトニトリル、メタノール、エタノール、シクロヘキサン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルイミダゾリジノン、キシレン、トルエン、クロロホルム、ジクロロメタンなどを使用することができる。抽出の操作は、加温下で行っても良い。また超音波(US)処理を併用しても良い。なお、抽出操作を行った後はメソ孔に残存する水分、溶剤を取り除くため減圧下、熱処理を行うのが好ましい。
【0037】
このようにして得られる酸化物多孔質体は、メソポーラス構造体であり、キュービック構造を有する。テンプレートとして式(1)で示される末端分岐型共重合体を用いると、均一なメソ孔を有し、その平均孔径が10〜30nm、好ましくは20〜30nmである酸化物多孔質体を得ることができる。
【0038】
(比表面積)
多孔質体の比表面積は、窒素吸着によって求めることができる。粒子の窒素吸脱着測定を、オートソーブ3(カンタクローム社製)を用いて測定し、比表面積をBET(Brunauer-Emmett-Teller)法で、細孔容積をBJH(Barrett-Joyner-Halenda)法により算出した。
【0039】
(本発明の多孔質体)
本発明に係る、比表面積が10m2/g以下である多孔質無機酸化物は、以下のように調製することができる。すなわち、前述したキュービック相構造を有するメソポーラス材料は無機酸化物のゾルゲルを300〜600℃程度で焼成することにより得られるものであるが、この段階では比表面積が通常200〜1000m2/gとなっている。このような多孔質無機酸化物をさらに800℃以上、好ましくは850〜1000℃で焼成することにより、本発明の多孔質無機酸化物が得られる。
焼成温度が800℃未満では、比表面積が10m2/gを上回る場合があり、焼成温度が1000℃を超えると、無機酸化物自体の構造が変化して細孔が失われるおそれがある。
【0040】
本発明による多孔質体が10m2/g以下の比表面積を示す理由は、
キュービック相構造を有する多孔体を800℃以上で焼成することにより、キュービック相構造を形成する細孔同士を連結している貫通孔表面のシラノール基が脱水縮合を起こして閉塞するためであると考えられる。キュービック相構造を形成する細孔も貫通孔と同様に収縮すると考えられるが、径が大きい為に閉塞するまでには至らず、クローズドポアを有する多孔体となると推定される。
【0041】
焼成は、一定温度で行っても良いし、室温から除々に昇温しても構わない。焼成の時間は、温度に応じて変えられるが、1時間から24時間の範囲で行うのが好ましい。焼成は空気中で行ってもよいし、窒素、アルゴンなどの不活性ガス中で行ってもよい。また、減圧下、または真空中で行っても構わない
多孔質体の細孔がヘキサゴナル(六方晶)構造である場合には、800℃以上で焼成を行っても比表面積の変化が小さく、10m2/g以下とならないことがある。
【実施例】
【0042】
<末端分岐型共重合体の合成例>
数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)はGPCを用い、本文中に記載した方法で測定した。また、融点(Tm)はDSCを用い、測定して得られたピークトップ温度を採用した。なお、測定条件によりポリアルキレングリコール部分の融点も確認されるが、ここでは特に断りのない場合ポリオレフィン部分の融点のことを指す。1H−NMRについては、測定サンプル管中で重合体を、ロック溶媒と溶媒を兼ねた重水素化−1,1,2,2−テトラクロロエタンに完全に溶解させた後、120℃において測定した。ケミカルシフトは、重水素化−1,1,2,2−テトラクロロエタンのピークを5.92ppmとして、他のピークのケミカルシフト値を決定した。分散液中の粒子の粒子径はマイクロトラックUPA(HONEYWELL社製)にて、体積50%平均粒子径を測定した。分散液中の粒子の形状観察は、試料を200倍から500倍に希釈し、リンタングステン酸によりネガティブ染色した後、透過型電子顕微鏡(TEM/日立製作所製H−7650)で100kVの条件にて行なった。
[合成例1]
【0043】
(ポリオレフィン系末端分岐型共重合体(T)の合成)
以下の手順(例えば、特開2006−131870号公報の合成例2参照)に従って、末端エポキシ基含有エチレン重合体を合成した。
【0044】
充分に窒素置換した内容積2000mlのステンレス製オートクレーブに、室温でヘプタン1000mlを装入し、150℃に昇温した。続いてオートクレーブ内をエチレンで30kg/cm2G加圧し、温度を維持した。MMAO(東ソーファインケム社製)のヘキサン溶液(アルミニウム原子換算1.00mmol/ml)0.5ml(0.5mmol)を圧入し、次いで下記式の化合物のトルエン溶液(0.0002mmol/ml)0.5ml(0.0001mmol)を圧入し、重合を開始した。エチレンガス雰囲気下、150℃で30分間重合を行った後、少量のメタノールを圧入することにより重合を停止した。得られたポリマー溶液を、少量の塩酸を含む3リットルのメタノール中に加えてポリマーを析出させた。メタノールで洗浄後、80℃にて10時間減圧乾燥し、片末端二重結合含有エチレン系重合体を得た。
【0045】
【化31】
【0046】
500mlセパラブルフラスコに上記片末端二重結合含有エチレン系重合体(P−1)100g(Mn850として,ビニル基108mmol)、トルエン300g、Na2WO40.85g(2.6mmol)、CH3(nC8H17)3NHSO40.60g(1.3mmol)、およびリン酸0.11g(1.3mmol)を仕込み、撹拌しながら30分間加熱還流し、重合物を完全に溶融させた。内温を90℃にした後、30%過酸化水素水37g(326mmol)を3時間かけて滴下した後、内温90〜92℃で3時間撹拌した。その後、90℃に保ったまま25%チオ硫酸ナトリウム水溶液34.4g(54.4mmol)を添加して30分撹拌し、過酸化物試験紙で反応系内の過酸化物が完全に分解されたことを確認した。次いで、内温90℃でジオキサン200gを加え、生成物を晶析させ、固体をろ取しジオキサンで洗浄した。得られた固体を室温下、50%メタノール水溶液中で撹拌、固体をろ取しメタノールで洗浄した。更に当該固体をメタノール400g中で撹拌して、ろ取しメタノールで洗浄した。室温、1〜2hPaの減圧下乾燥させることにより、末端エポキシ基含有エチレン重合体の白色固体96.3gを得た(収率99%,オレフィン転化率100%)。
【0047】
得られた末端エポキシ基含有エチレン重合体は、Mw=2058、Mn=1118、Mw/Mn=1.84(GPC)であった。(末端エポキシ基含有率:90mol%)
1H-NMR : δ(C2D2Cl4) 0.88(t, 3H, J = 6.92 Hz), 1.18 - 1.66 (m), 2.38 (dd,1H, J = 2.64, 5.28 Hz), 2.66 (dd, 1H, J = 4.29, 5.28 Hz), 2.80-2.87 (m, 1H)
融点(Tm) 121℃
Mw=2058、Mn=1118、Mw/Mn=1.84(GPC)
【0048】
1000mLフラスコに、末端エポキシ基含有エチレン重合体84重量部、ジエタノールアミン39.4重量部、トルエン150重量部 を仕込み、150℃にて4時間撹拌した。その後、冷却しながらアセトンを加え、反応生成物を析出させ、固体を濾取した。得られた固体をアセトン水溶液で1回、更にアセトンで3回撹拌洗浄した後、固体を濾取した。その後、室温にて減圧下乾燥させることにより、重合体(Mn=1223、一般式(9)においてA:エチレンの重合により形成される基(Mn=1075)、R1=R2=水素原子、Y1、Y2の一方が水酸基、他方がビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ基)を得た。
1H-NMR : δ(C2D2Cl4) 0.88 (t, 3H, J = 6.6 Hz), 0.95-1.92 (m), 2.38-2.85 (m, 6H), 3.54-3.71 (m, 5H)
融点 (Tm) 121℃
【0049】
窒素導入管、温度計、冷却管、撹拌装置を備えた500mLフラスコに、重合体20.0重量部、トルエン100重量部を仕込み、撹拌しながら125℃のオイルバスで加熱し、固体を完全に溶解した。90℃まで冷却後、予め5.0重量部の水に溶解した0.323重量部の85%KOHをフラスコに加え、還流条件で2時間混合した。その後、フラスコ内温度を120℃まで徐々に上げながら、水及びトルエンを留去した。さらに、フラスコ内にわずかな窒素を供給しながらフラスコ内を減圧とし、さらに内温を150℃まで昇温後、4時間保ち、フラスコ内の水及びトルエンをさらに留去した。室温まで冷却後、フラスコ内で凝固した固体を砕き、取り出した。
【0050】
加熱装置、撹拌装置、温度計、圧力計、安全弁を備えたステンレス製1.5L加圧反応器に、得られた固体のうち18.0重量部及び脱水トルエン200重量部を仕込み、気相を窒素に置換した後、撹拌しながら130℃まで昇温した。30分後、エチレンオキシド9.0重量部を加え、さらに5時間、130℃で保った後、室温まで冷却し、反応物を得た。得られた反応物より溶媒を乾燥して除き、末端分岐型共重合体(T)(Mn=1835、一般式(1)においてA:エチレンの重合により形成される基(Mn=1075)、R1=R2=水素原子、X1、X2の一方が一般式(6)で示される基(X11=ポリエチレングリコール基)、他方が一般式(5)で示される基(Q1=Q2=エチレン基、X9=X10=ポリエチレングリコール基))を得た。
1H-NMR : δ(C2D2Cl4) 0.88(3H, t, J= 6.8 Hz), 1.06 - 1.50 (m), 2.80 - 3.20 (m), 3.33 - 3.72 (m)
融点(Tm) −16℃(ポリエチレングリコール)、116℃
【0051】
<末端分岐型共重合体水性分散体の調製例>
[調製例1]
(10重量%ポリオレフィン系末端分岐型共重合体(T)水性分散液の調製)
(A)重合粒子を構成する合成例1のポリオレフィン系末端分岐型共重合体(T)10重量部と溶媒(C)の蒸留水40重量部を100mlのオートクレーブに装入し、140℃、800rpmの速度で30分間加熱撹拌したの後、撹拌を保ったまま室温まで冷却した。得られた分散系の体積50%平均粒子径は0.018μm(体積10%平均粒子径0.014μm、体積90%平均粒子径0.022μm)であった。得られた分散系の透過型電子顕微鏡により測定した粒子径は0.015−0.030μmであった。更に、このT−1水性分散液(固形分20重量%)75重量部に対して蒸留水75重量部を加えることで10重量%水性分散液を得た。
【0052】
(ポリオレフィン系末端分岐型共重合体/TMOS脱水縮合物溶液の調製)
テトラメトキシシラン(TMOS)10重量部に溶媒のメタノール15重量部を添加し、室温で攪拌した。さらに触媒の1M―シュウ酸水溶液2重量部を滴下した後(ポリオレフィン系末端分岐型共重合体添加後のpHを3付近にするため)、室温で攪拌し、TMOSの脱水縮合物を得た。
【0053】
得られたTMOSの脱水縮合物に、ポリオレフィン系末端分岐型共重合体(T−1)の水性分散体(固形分10重量%)を73重量部滴下し、室温で攪拌し、ポリオレフィン系末端分岐型共重合体/TMOS脱水縮合物溶液を調製した。(ポリオレフィン系末端分岐型共重合体/シリカ:SiO2換算の重量比が65/35)
シリカ含有量は、複合粒子中に占めるシリカの含有の割合を示し、以下の方法で算出した。シリカ含有率は、TMOSが100重量%反応し、SiO2になったと仮定して算出した。すなわち
TMOS:Mw=152
SiO2:Mw=60 より、
SiO2/TMOS=60/152=0.395である。つまり、TMOSの添加量に0.395を掛けた値が、粒子中のSiO2含量となる。
【0054】
(ポリオレフィン系末端分岐型共重合体/シリカ複合粒子の形成)
この組成物をスプレードライヤー装置(ヤマト科学社製スプレードライヤーADL311S)に流し込み、ノズル出口温度190℃で加圧(0.2MPa)し、噴霧することで、ポリオレフィン系末端分岐型共重合体/シリカの複合微粒子を得た。
(実施例1)
【0055】
工程1:多孔質二酸化珪素粒子の形成
得られたポリオレフィン系末端分岐型共重合体/シリカ複合粒子を、電気炉を用いて、室温から600℃まで毎分5℃の速度で昇温し、さらに600℃で2時間焼成することによってポリオレフィン系末端分岐型共重合体を除去してキュービック細孔配列を有するシリカ多孔粒子を得た。
【0056】
「キュービック細孔配列を有する多孔質二酸化珪素 1000℃焼成」
工程2:独立細孔を有する多孔質二酸化珪素粒子の形成
得られた多孔質二酸化珪素粒子を、電気炉を用いて、室温から1000℃まで毎分10℃の速度で昇温し、さらに1000℃で1時間熱処理することによって、キュービック型細孔配列を有する多孔粒子の1000℃熱処理品を得た。
(比較例1)
【0057】
「キュービック細孔配列を有する多孔質二酸化珪素 600℃焼成」
実施例1の『工程1:多孔質二酸化珪素粒子の形成』と全く同様の方法で、キュービック細孔配列を有する多孔質二酸化珪素粒子を得た。工程2は行わなかった。
(比較例2)
【0058】
「キュービック細孔配列を有する多孔質二酸化珪素 1100℃焼成」
実施例1の『工程2:独立細孔を有する多孔質二酸化珪素粒子の形成』の熱処理温度を1000℃から1100℃に変えたこと以外は、実施例1と同様の方法で、キュービック型細孔配列を有する多孔粒子の1100℃熱処理品を得た。
(比較例3)
【0059】
「ヘキサゴナル相多孔質二酸化珪素」
比較例3としてヘキサゴナル細孔構造を有する多孔質二酸化珪素粒子(アドマポーラスPC700G:アドマテックス社製)を用いた。
(比較例4)
【0060】
「ヘキサゴナル相多孔質二酸化珪素 1000℃焼成」
比較例3のアドマポーラスPC700Gを電気炉を用いて、室温から1000℃まで毎分10℃の速度で昇温し、さらに1000℃で1時間熱処理することによって、ヘキサゴナル型細孔配列を有する多孔質二酸化珪素粒子の1,000℃熱処理品を得た。
(比較例5)
【0061】
比較例1と同様の製法で600℃にて焼成したキュービック細孔配列を有する多孔質二酸化珪素粒子を得た。さらにこの多孔質二酸化珪素粒子の疎水化処理を行った。
【0062】
疎水化処理はヘキサメチルジシラザン(HMDS)を用い、化学気相吸着(CVA)法により実施した。CVAは300mlPTFE製耐圧容器中に、0.3gのHMDSと多孔質二酸化珪素粒子1〜2gを入れ、50℃にて2hr反応させた。
【0063】
以上により得られた実施例1のキュービック型細孔配列を有する多孔粒子の1000℃熱処理品、比較例1のキュービック細孔配列を有する多孔質二酸化珪素粒子、比較例2のキュービック型細孔配列を有する多孔質二酸化珪素粒子の1100℃熱処理品、比較例3のヘキサゴナル細孔配列を有する多孔質二酸化珪素粒子、比較例4のヘキサゴナル細孔配列を有する多孔質二酸化珪素粒子の1000℃熱処理品および比較例5のキュービック細孔配列を有する多孔質二酸化珪素粒子の疎水処理品について、以下の評価を行った。
【0064】
(窒素吸着による比表面積・細孔径の評価)
実施例1、比較例1〜4の粒子の比表面積を以下の方法で観察した。粉体の比表面積は、窒素吸着によって求めることができる。粒子の窒素吸脱着測定を、オートソーブ3(カンタクローム社製)を用いて測定し、比表面積をBET(Brunauer-Emmett-Teller)法で、細孔径をBJH(Barrett-Joyner-Halenda)法により算出した。
【0065】
【表1】
キュービック型細孔を有する比較例1の粒子に1000℃または1100℃の熱処理を加えた実施例1、比較例2の粒子の比表面積は、1/10以下に低下した。一方、ヘキサゴナル型細孔を有する比較例3の粒子に1000℃の熱処理を加えた比較例4の粒子の比表面積の低下率は、1/5程度にとどまり、ほとんどの細孔が閉塞化していないことがわかる。
【0066】
(断面TEM観察による細孔構造の有無確認)
実施例1、比較例1〜4の粒子を樹脂で固定し、収束イオンビーム(FIB)加工によって切片を切り出した。続いて、この断面を、透過型電子顕微鏡(TEM/日立製作所製H−7650)を用い200kVの条件にて観察した。断面像を図7〜図11に示す。
【0067】
キュービック型細孔を有する比較例1の粒子に1000℃の熱処理を加えた実施例1の粒子は、キュービック型細孔が保持されていることを図7より確認した。1100℃の熱処理を加えた比較例2の粒子は、図9のように細孔が確認できなかった。高温処理により、細孔が消失したものと推定される。比較例3および比較例4の粒子はヘキサゴナル型の細孔が確認できた。
【0068】
(小角X線散乱測定による細孔構造の確認)
実施例1および比較例1の粒子の、小角X線散乱測定を行った。得られた回折像は両者ともに、複数の円環状のパターンを有し、キュービック相構造を有することが分かり、1000℃の熱処理後も細孔構造が保持されていることが確認された。
【0069】
(誘電率の測定)
実施例1および比較例5の粒子について、誘電特性を測定した。
誘電特性測定は自動平衡ブリッジ法による4端子法により行った。テフロン(登録商標)リング電極(主電極径=37mm、ガード電極/内径=39mmφ、外径=55mmφ)内にサンプルを充填し、ばね式電極にセットし4〜2000kgfの荷重を加えてサンプルの嵩密度を変化させ、各々の嵩密度において、試験機(PRECISION LCRmeter HP4282A)により、1kHz及び1MHzにおける誘電率及び誘電正接の値を測定した。測定は、試験雰囲気23℃、湿度50%RHの条件下で行った。
周波数1 kHzでの誘電率を図1、誘電正接を図2、誘電率の平方根と誘電正接の積を図3に、周波数1 MHzでの誘電率を図4、誘電正接を図5に、誘電率の平方根と誘電正接の積を図6に示す。一般的に低誘電率材料の伝送損失は、誘電率の平方根と誘電正接の積で評価され、その値が小さいほど低誘電率材料として優れているとされている。
【0070】
図3、図6から明らかなように、実施例1の独立細孔を有する多孔質粒子は非常に低い伝送損失を示している。これは、1000℃で熱処理することにより、表面の残存シラノール(Si−OH)量が低減されたことと、細孔が閉塞化されたことにより、伝送損失を悪化させる要因である水やその他の不純物の吸着が著しく抑制されたためであると考えられる。
【0071】
本発明において得られる無機酸化物多孔質体は比誘電率、誘電正接が低く、伝送損失が著しく低いため、回路基板を構成する基板または層間絶縁膜に充填して用いられる充填材として非常に有用である。さらに、本発明の無機酸化物多孔質体は、閉塞構造を取ることから粒子内部に空気が閉じ込められた状態にあり、熱の伝導率が低いことが容易に予測できる。そのため断熱材料としても有用である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】多孔質体の1 kHzでの誘電率を示すグラフである
【図2】多孔質体の1 kHzでの誘電正接を示すグラフである
【図3】多孔質体の1 kHzでの伝送損失を示すグラフである
【図4】多孔質体の1 MHzでの誘電率を示すグラフである
【図5】多孔質体の1 MHzでの誘電正接を示すグラフである
【図6】多孔質体の1 MHzでの伝送損失を示すグラフである
【図7】実施例1の多孔質体の断面TEM像である
【図8】比較例1の多孔質体の断面TEM像である
【図9】比較例2の多孔質体の断面TEM像である
【図10】比較例3の多孔質体の断面TEM像である
【図11】比較例4の多孔質体の断面TEM像である
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キュービック型細孔構造を有し、かつ窒素吸着により求められる比表面積が10m2/g以下である多孔質無機酸化物。
【請求項2】
無機酸化物が二酸化珪素である請求項1に記載の多孔質無機酸化物。
【請求項3】
キュービック型細孔構造を有する多孔質無機酸化物を、さらに800℃以上で焼成して得られる多孔質無機酸化物。
【請求項4】
無機酸化物が二酸化珪素である請求項3に記載の多孔質無機酸化物。
【請求項5】
キュービック型細孔構造を有する多孔質無機酸化物を、さらに800℃以上で焼成して比表面積の減少した多孔質無機酸化物を得る方法。
【請求項6】
無機酸化物が二酸化珪素である請求項5に記載の方法。
【請求項7】
請求項5に記載の方法で得られる多孔質無機酸化物。
【請求項8】
請求項1乃至4のいずれかに記載の多孔質無機酸化物からなる低誘電損失材料。
【請求項9】
請求項1乃至4のいずれかに記載の多孔質無機酸化物からなる断熱材料。
【請求項1】
キュービック型細孔構造を有し、かつ窒素吸着により求められる比表面積が10m2/g以下である多孔質無機酸化物。
【請求項2】
無機酸化物が二酸化珪素である請求項1に記載の多孔質無機酸化物。
【請求項3】
キュービック型細孔構造を有する多孔質無機酸化物を、さらに800℃以上で焼成して得られる多孔質無機酸化物。
【請求項4】
無機酸化物が二酸化珪素である請求項3に記載の多孔質無機酸化物。
【請求項5】
キュービック型細孔構造を有する多孔質無機酸化物を、さらに800℃以上で焼成して比表面積の減少した多孔質無機酸化物を得る方法。
【請求項6】
無機酸化物が二酸化珪素である請求項5に記載の方法。
【請求項7】
請求項5に記載の方法で得られる多孔質無機酸化物。
【請求項8】
請求項1乃至4のいずれかに記載の多孔質無機酸化物からなる低誘電損失材料。
【請求項9】
請求項1乃至4のいずれかに記載の多孔質無機酸化物からなる断熱材料。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−6783(P2012−6783A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−143303(P2010−143303)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】
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