説明

多孔質膜複合構造体および多孔質体における微細孔の製造方法

【課題】長期に渡って汚染物質が除去できる等、初期の機能が長期に渡って維持できる多孔質膜複合構造体
【解決手段】多孔質材料を中空部を有して円筒状に成形した筒状多孔質体2と、当該筒状多孔質体2の内周面を被覆するように設けられ、前記筒状多孔質体2とは少なくとも気孔率を異ならせた多孔質膜で成る筒状多孔質膜3とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸送機器分野、建築・土木分野、空調機器、医療機器、薬品、水処理その他産業機械分野において、液分離、汚染物質除去等に用いられる多孔質膜複合構造体および多孔質体における微細孔の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔質セラミックスは、細孔径がnmからmm単位の広い範囲に渡り、主に粒子径を制御した骨材粒子を焼結して得られる。多孔質セラミックスにはゼオライトのように結晶構造内の空隙を細孔とするものと、アルミナなどの微粒子結合体の粒子間隙を細孔とするものがあり、工業的に広く利用されている。
【0003】
代表的な用途例として、フィルタをあげることができる。浄水場では河川や貯水池などの水源から原水を取水し、凝集、フロック形成、沈殿、ろ過および殺菌の5つの単位プロセスによって、懸濁質とコロイド質の除去、および細菌等を無害化し、清澄な水道水として需要家に供給している。平成8年10月に厚生省(現厚生労働省)より通達された「水道におけるクリプトスポリジウム暫定対策指針」によって、ろ過池出口の濁度を常時把握し、ろ過池出口の濁度を0.1度以下に維持することが制定され、浄水場における濁度管理が重要な課題となった。このような背景のもと、精密ろ過膜や限外ろ過膜に関する研究開発が進み、我が国の浄水場において膜ろ過が急速に普及し始めており、海外においては既に日量数十万トン規模の膜ろ過浄水場が稼動している状況にある。
【0004】
多孔質ガラスは、1940年頃に米国の特殊ガラスメーカーであるコーニング社により開発された。この多孔質ガラスを高温で処理し、無孔化したものは96%の高ケイ酸質で「バイコールガラス」の商標で知られており、多孔質ガラスは「バイコールガラス」の中間製品として得られたものであったが、均一な径の貫通細孔を持ち、最大で数百m2/gの比表面積を持つことから、多孔体としての応用が研究されている。
【0005】
金属についても、同様の多孔質材料が広く利用されている。スポンジに代表される樹脂発泡体と同じ構造(3次元網目状構造)を持つもの、金属状繊維を絡み合わせた構造のもの、などが代表的なものである。
【特許文献1】特開2001−259323号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、セラミックス/金属の多孔質体は、多様な目的に使用されているが、フィルタ機能を目的とする場合には、一般的に多孔質体の表面だけでなく、その内部でも除外目的物質を捕捉する構造となっているため、表面では捕捉できない微小な粒子や懸濁物質を内部で捕捉できるメリットがある一方で、内部に入り込んだ微粒子・懸濁物質が通常の洗浄で除去できず、運転時間の経過とともに透過流束が低下しやすいという問題がある。
【0007】
また、構造に起因したろ過通路のサイズにより、処理物・分離サイズが決定されているため、特に金属多孔質体では、運転時の流体圧力や、運転時間の経過に伴う流体圧力の不均一化が原因で構造が変化し、運転時間の経過とともに処理物・分離サイズが大きな方に変わってしまう、分離サイズ精度の低下という問題がある。また、細孔が複雑にネットワークを形成する構造のため、初期特性においても圧力損失が比較的大きい問題がある。
【0008】
本発明は上述した課題を解決するためになされたものであり、長期に渡って汚染物質が除去できる等、初期の機能が長期に渡って維持できる多孔質膜複合構造体を提供すること、および高い分画精度、流体透過能を確保しつつ、洗浄性、熱伝導性、耐熱性、耐薬品性、耐久性にも優れた多孔質体における微細孔の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために本発明に係る多孔質膜複合構造体は、多数の微細孔が形成された多孔質材料を中空部を有して円筒状に成形した筒状多孔質体と、当該筒状多孔質体の内周面を被覆するように設けられ、前記筒状多孔質体に形成された微細孔よりも小さな気孔径を持つ多孔質膜で形成された筒状多孔質膜とを備えたことを特徴としている。
【0010】
筒状多孔質体を構成する材料としてアルミナ、ジルコニア、シリカ、マグネシア、チッ化ケイ素、炭化ケイ素、あるいは、これらのセラミックスを主体とした複合セラミックスとする。また、筒状多孔質体を構成する材料として炭素鋼、ステンレス鋼、アルミ合金、銅合金、ニッケル基合金、コバルト基合金、チタン合金、あるいはこれらの金属材料を主体とする。
【0011】
また、筒状多孔質膜を構成する材料としてアルミナ、シリカ、あるいは、これらのセラミックスを主体とした複合セラミックスとする。また、筒状多孔質体を構成する材料として、気孔率が30%から80%とした単一体、あるいは、複数の気孔率が変化した積層体からなることとする。筒状多孔質膜を構成する材料として、気孔径が1nmから100nmの範囲であり、厚さが5μmから500μmの範囲とする。
【0012】
筒状多孔質体の内面に筒状多孔質膜を挿入するにあたり、筒状多孔質体と筒状多孔質体の熱膨張差を利用する。
【0013】
また、筒状多孔質体の孔および/または筒状多孔質膜の孔は、直行孔である。
【0014】
筒状多孔質膜の孔において、孔が直行孔とする。
【0015】
筒状多孔質体において、表面部がコーティングされていることとする。表面部のコーティングが、鍍金、PVDによることとする。
【0016】
本発明に係る多孔質膜複合構造体は、液体中の固体または気体中の固体を分離する膜として、また、複数成分の液体または複数種類の気体から選択的に特定の液体成分、気体を分離する膜として、用いて好適である。
【0017】
一方、本発明に係る多孔質体における微細孔の製造方法は、成形時にセラミックス基体、または金属基体の所定の位置に繊維を配置し、一体化した後に、前記繊維を除去することにより前記微細孔を形成することを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
以上、本発明によれば、長期に渡って汚染物質が除去できる等、初期の機能が長期に渡って維持できる多孔質膜複合構造体を提供することができる。また、高い分画精度、流体透過能を確保しつつ、洗浄性、熱伝導性、耐熱性、耐薬品性、耐久性にも優れた多孔質体における微細孔の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1、図2に本発明の多孔質膜複合構造体の実施形態を示す。
【0020】
同図に示す多孔質膜複合構造体1は、多孔質材料を中空部を有して円筒状に成形した筒状多孔質体2と、この筒状多孔質体2の内周面を被覆するように設けられ、筒状多孔質体2とは少なくとも気孔率を異ならせた多孔質膜で成る筒状多孔質膜3とから構成されている。筒状多孔質膜3は、フィルタ機能の他、主として筒状多孔質体2を内周面側から支える保護膜として機能する。
【0021】
筒状多孔質体2の内周面に筒状多孔質膜3を挿入するにあたっては、筒状多孔質体2と筒状多孔質膜3との熱膨張差を利用して、多孔質膜複合構造体1が構成されている。筒状多孔質体2および筒状多孔質膜3ともに、筒状側面には多数の微細な貫通孔(微細孔)が形成されている。
【0022】
筒状多孔質体2は、アルミナ、ジルコニア、シリカ、マグネシア、チッ化ケイ素、炭化ケイ素、あるいは、これらのセラミックスを主体とした複合セラミックスからなる材料で構成されている。または、炭素鋼、ステンレス鋼、アルミ合金、銅合金、ニッケル基合金、コバルト基合金、チタン合金、あるいはこれらの金属材料を主体とした複合材料から構成されている。筒状多孔質体の材料は、用途、使用条件、使用環境によって選択され同様の効果をもたらす。たとえば、使用環境が高温で酸素雰囲気下ではセラミックスを主体とした複合セラミックスを選択、また多孔質膜複合構造体に強度が要求される場合には、金属材料を主体とした複合材料を選択というように使用環境に応じて筒状多孔質体の材料を選択する。
【0023】
図3に示すように、筒状多孔質体2の孔および/または筒状多孔質膜3の孔は、入口側の口径と出口側の口径とは同じ直行孔とする。直行孔は、図3(b)に示すような垂直な直行孔から成るもの、(c)に示すような傾斜方向がランダムな直行孔が混在して成るもの、および(d)に示すような傾斜方向が揃った直行孔から成るものがある。このように、微細孔を直行孔で形成すると、入口側の口径が広く、出口側の口径が狭い微細孔に比較して孔の目詰まり少なく、その結果、洗浄までのサイクルを長くすることができ、寿命も延ばすことができる。
【0024】
また、図4に示すように筒状多孔質体2の側面に存在する孔の気孔率は30%から80%である。気孔率が大きいと圧損を小さくすることができるが、筒状多孔質体自身の構造強度が低下するため、気孔率は30%から80%が望ましい。あるいは、図4に示す筒状多孔質体2のように、異なる気孔率を有した複数(図4では3層の場合を記述)の積層体から構成される筒状多孔質体2とする。例えば、図4に示す複数の積層体の気孔率を、例えば、一番内周側の層の気孔率Aが80%、次の層の気孔率Bが50%、最外周層の気孔率Cが30%と変化させて積層する構成である。この場合、内周側の気孔率が外周側の気孔率よりも高いので、被処理物は内周側から外周側に流すようにすれば、効率の良いフィルタ機能を発揮することができる。逆に、外周側の気孔率が内周側の気孔率よりも高い場合には、被処理物は外周側から内周側に流すようにすれば良い。このように、積層される層の気孔率の選定、組み合わせは、用途、使用条件、使用環境により選択される。
【0025】
筒状多孔質膜3は、アルミナ、シリカ、あるいは、これらのセラミックスを主体とした複合セラミックスからなる材料で構成されている。筒状多孔質膜3は、気孔径が1nmから100nmの範囲であり、厚さが5μmから500μmの範囲である。筒状多孔質膜3の孔は直行孔である。筒状多孔質膜の気孔径および厚さは、多孔質膜複合構造体の用途、使用条件によって選択される。例えば、気孔径が大きく、気孔率も高い場合は、筒状多孔質膜の強度的な観点より厚くする。また筒状多孔質膜の孔の直径は用途により選択する。
【0026】
図2に示すように、液体中の固体または気体中の固体を分離する膜として、多孔質膜複合構造体1を用いた場合、左から異物を含んだ流体が入り、多孔質膜複合構造体1により流体と流体中の異物を分離するようにしている。この場合、上述したように、流体は気孔率の高い筒状多孔質体2から気孔率の低い筒状多孔質膜3に流れる。但し、逆に、流体が筒状多孔質膜3から筒状多孔質体2に流れる場合、すなわち、図の右から異物を含んだ流体が入り、多孔質膜複合構造体1により流体と流体中の異物が分離されて左の出口に流体が流れる場合でも同様の効果が得られる。
【0027】
また、複数成分の異物を含んだ液体または複数種類の気体から選択的に特定の液体中の異物成分、気体を分離する膜として、本発明の多孔質膜複合構造体1を用いることもできる。
【0028】
図5に従来の多孔質材料と本発明の多孔質膜複合構造体との比較データを示す。
【0029】
同量の孔径と空隙率を有した多孔質材料において、気体中の汚染物質の除去を行った結果である。Y軸には使用前の通過量を100%とした場合の気体の通過量の比較値を示す。X軸には繰返し数を示す。
【0030】
図5に示すように、本発明は、長期に渡って処理能力の低下は見られないが、従来の多孔質材料においては、繰返し回数が増加するとともに処理量は低下しているのが理解できる。これは、多孔質材料表面部に汚染物質がトラップされている場合、汚染物質の除去が可能であるものの、多孔質材料内部に汚染物質がトラップされて孔径が塞がって小さくなっていることを意味している。孔径が塞がってしまうと、洗浄等では汚染物資の除去が困難となり、内部での残留量がさらに多くなると、多孔質材料の交換が必要となる。
【0031】
これに対して本発明の多孔質膜複合構造体では、繰り返し使用しても殆ど処理能力の低下は見られないことが分かった。
【0032】
《他の実施形態》
図1に示す多孔質膜複合構造体において、銅合金材料の筒状多孔質体から構成される多孔質膜複合構造体を高温・酸素(または大気中)雰囲気下で使用する場合、銅合金材料の筒状多孔質体表面部をコーティングして使用する。筒状多孔質体2の表面部のコーティングは、鍍金、PVDによるプロセスである。筒状多孔質膜3は、内周面をコーティングした後に、挿入される。
【0033】
このように、筒状多孔質体2の表面部をコーティングすることにより孔径をさらに小さくしたり、使用環境に応じて筒状多孔質体の耐腐食性を向上させることができ、長期に渡って汚染物質の除去、選択分離ができる。筒状多孔質体2の表面部へのコーティングは、用途、使用条件、使用環境に応じて適宜行われる。
【0034】
《多孔質体における微細孔の製造方法》
次に、本発明に係る筒状多孔質体2、筒状多孔室膜3を構成する多孔質体における微細孔の製造方法に付いて説明する。
【0035】
本発明に係わるセラミックス/金属微細孔は、セラミックス基体、または金属基体の所定の位置に繊維を配置し、一体化した後に、繊維を除去することにより得られた微細孔である。
【0036】
すなわち、図6に概略工程を示すように、セラミックスまたは金属等のマトリックス材料と繊維状物質とを複合成型した後、繊維状物質の除去処理をし、その後マトリックス固化処理によって微細孔を形成するようにしている(工程P1〜P3)。このように、一度、所定位置に配置した繊維を一体化した後に、繊維を除去する工程を経ることにより、精度の高い細孔サイズや形状、所定の分布、直線性、などの他の方法に無い特徴が得られる。
【0037】
また、セラミックス基体は、アルミナ、ジルコニア、シリカ、マグネシア、窒化ケイ素、炭化ケイ素、あるいは、これらのセラミックスを主体とした複合セラミックスを選定することができる。これらのセラミックスは、細孔を形成した場合にも、目的に十分な緻密で堅牢な構造体が得られ、また、強度、耐食・耐熱性も高く好適である。
【0038】
さらに、金属基体としては、炭素鋼、ステンレス鋼、アルミ合金、銅合金、ニッケル基合金、コバルト基合金、チタン合金、あるいはこれらの金属材料を主体とした複合材料を選定することができる。上述のセラミックスと同様に、これらのセラミックスは、細孔を形成した場合にも、目的に十分な緻密で堅牢な構造体が得られる。また十分な機械的、化学的、熱的特性が得られ、好適である。
【0039】
基体に配置する繊維としては、有機繊維、炭素繊維、あるいは、これらを主体とした繊維を用いることができる。これらは工業的に入手可能なものが多くあり、使用目的に応じた繊維径を広範囲に選定できる利点がある。
【0040】
さらに、製造後のセラミックスまたは金属基体に形成される微細孔の直径は、10nmから1mmの範囲である。これは、基体に配置する繊維径に対応したもので、10nm以下の繊維状物質は得にくく、また、1mm以上では本方法以外の製造法が適する。
【0041】
製造後のセラミックスまたは金属基体に形成される微細孔の直径と深さの比(アスペクト比)は、50以上である。これ以下では、微細孔としての特徴的な性状が発現しづらい。
【0042】
当該発明の微細孔の用途として、粉体、液体、あるいは気体を流すノズルとして使用することを特記しておく。当該発明の微細孔で、微細孔に異方性があるものについては、その用途はフィルタ、異方向性断熱材、異方向性構造材料、異方向性伝熱材料、異方向性導電材料、整流材料をあげることができる。さらに、微細孔が特別な方向性を持たない場合には、記載するように、その用途はフィルタ、ヒートシンク材料、熱交換材料、断熱材、伝熱材料、導電材料、をあげることができる。
【0043】
以下、本発明に関する実施例、および比較例を説明する。
【0044】
[実施例1]
以下、図7に基づいて、本発明の実施例を説明する。
【0045】
実施例1の微細孔は、微細孔の配列が一次元異方性のセラミックス微細孔である。カーボン連続繊維(モノフィラメント径:φ8μm)にアルミナ粉末スラリーを含浸させながら8角柱状のドラムに巻取り、これを切断することで繊維が一方向に配列したシートを成形した(工程P11,P12)。
【0046】
次に、このシートを積層しプレス成形によりバルク成形体とした後、平板同士の間に挟んで重りを置いた状態で、大気中40℃の温度の乾燥器に入れ、20時間乾燥した。この中間乾燥体に、さらにアルミナのゲルキャスト成形用スラリーを含浸し、アルミナ部分の成形体密度を十分に向上させた後、成形体の硬化を行ない、引続き大気中25℃の乾燥器中で72時間乾燥させた(工程P14,P15)。
【0047】
得られた最終乾燥体について、空気流中700℃で48時間保持することで、カーボン繊維を燃焼除去し、その後大気中1300℃で4時間保持することでアルミナを焼結した(工程P17)。その後、所定の形状、例えば、図1に示すような、筒状に成形したものを、中心部をくり抜いて筒状多孔質体2を形成することができる(工程P18)。
【0048】
上記工程におけるより詳細な製造条件は、以下の通りである。8角柱状の巻取りドラムは、一面の寸法が約60×100mmのサイズとした。アルミナ粉末は大明科学(株)製易焼結性アルミナ(商品名:タイミクロン)を使用し、これを40vol%含有した水系のスラリー(分散剤;1wt%、バインダー;2wt%)を調整した。開線処理を施したカーボンの連続繊維をこのスラリーに浸漬し、アルミナスラリーを含浸させた繊維束を定速で巻取り成形した。巻取りにはトラバース機構を付け、扁平なシート状に成形した。巻取りは、約1.2mmの厚さになるまで重ねて行なった。これから、アルミナスラリーが含浸した繊維が一方向に配向した平板(50×50×1.2mm)を切出し、寸法を合わせた金型の中で300kg/cm2の圧力でプレス成形した。これを金属メッシュ板で挟み、全体の形状を崩さないように中間乾燥体を作製した。金属メッシュ版で挟んだままの中間乾燥体に、アルミナのゲルキャスト成形用スラリーを重ねて含浸した。成形体の硬化反応が進行した後、保形用の金属メッシュをはずし、引続き大気中25℃の乾燥器中で72時間乾燥させて最終乾燥体とした。その後のカーボン粉末除去、マトリックスの焼結については、上述の条件で実施した。
【0049】
得られた焼結体には、一方向に配列した約φ5.5μmの微細孔が形成された。マトリックスのアルミナ焼結体は、開気孔のほぼ存在しない緻密なものであった。また、見かけ密度から求めた微細孔の体積含有率は52vol%であった。
【0050】
[実施例2]
実施例2に示す微細孔は、微細孔の配列が一次元異方性の金属微細孔である。カーボン連続繊維(モノフィラメント径:φ8μm)8角柱状のドラムに巻取り、これを切断することで繊維が一方向に配列したシートを成形した。次に、このシートを耐火性レンガからなる型内にセットし、アルミ溶湯を加圧鋳込み成形した。これを型から取り外した後、大気流中600℃で72時間加熱し、カーボン繊維を酸化除去した。
【0051】
得られた金属体には、一方向に配列した約φ8.0μmの微細孔が形成された。
【0052】
[実施例3]
実施例3に示す微細孔は、微細孔の配列が三次元ランダムなセラミックス微細孔である。カーボンナノファイバー(径:φ100nm)を、塩化アルミニウム、シリカゾル、およびγ−アルミナ粉末からなる水系スラリーに添加し、ボールミルにより湿式混合した。これを、乾燥後、解砕・通篩し、得られた粉末をプレス成形によりバルク成形体とした。大気中25℃の乾燥器中で72時間乾燥させた後、空気流中700℃で48時間保持することで、カーボン繊維を燃焼除去し、その後大気中1100℃で4時間保持することでアルミナ−シリカ系マトリックスを焼結した。
【0053】
得られた焼結体には、約φ60nmの微細孔がランダム方向に形成された。マトリックスのアルミナ−シリカ系焼結体は、開気孔のほぼ存在しない緻密なものであった。
【0054】
[実施例4]
実施例4に示す微細孔は、微細孔の配列が三次元ランダムな金属微細孔である。カーボンナノファイバー(径:φ100nm)を、金型内でプレス成形し、予備成形体を作製した。次に、この予備成形体を耐火性レンガからなる型内にセットし、アルミ溶湯を加圧鋳込み成形した。これを型から取り外した後、大気流中600℃で72時間加熱し、カーボン繊維を酸化除去した。
【0055】
得られた金属体には、一方向に配列した約φ100nmの微細孔が形成された。
【0056】
[実施例5]
実施例5に示す微細孔は、微細孔の配列が一次元異方性のセラミックス微細孔である。ポリエチレン連続繊維(モノフィラメント径:φ2μm)を用いる他は、実施例1と同様にした。
【0057】
得られた焼結体には、一方向に配列した約φ1.5μmの微細孔が形成された。マトリックスのアルミナ焼結体は、開気孔のほぼ存在しない緻密なものであった。
【0058】
[比較例1]
比較例1では、カーボンナノファイバー(径:φ100nm)を添加しないこと以外は、実施例3と同様にした。
【0059】
得られたアルミナ−シリカ系焼結体は、開気孔のほぼない緻密なもので、微細孔は存在しなかった。
【0060】
以上、説明したように、本願発明の実施例によれば、高い分画精度、流体透過能を確保しつつ、洗浄性、熱伝導性、耐熱性、耐薬品性、耐久性にも優れた、セラミックス/金属細孔、およびその製造方法を提供することが可能となる。また、その用途は多岐に渡るものとなるが、その代表的なものとして、高精度で大量の分離処理が可能で、また洗浄性にも優れるなど、秀でた諸特性を合わせ持つ各種フィルタや、体積当たりの熱交換効率が飛躍的に優れ、また流体抵抗によるエネルギー損失を大幅に低減した熱交換器、等を挙げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明に係る多孔質膜複合構造体の実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示す多孔質膜複合構造体の断面図である。
【図3】筒状多孔質体
【図4】筒状多孔質体
【図5】多孔質膜複合構造体と従来の多孔質材料とを比較して示す説明図である。
【図6】本願発明に係る多孔質体における微細孔の製造方法の概要を示す工程図である。
【図7】本発明に係る多孔質体における微細孔の製造方法の実施例を示す工程図である。
【符号の説明】
【0062】
1 多孔質膜複合構造体
2 筒状多孔質体
3 筒状多孔質膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の微細孔が形成された多孔質材料を中空部を有して円筒状に成形した筒状多孔質体と、
当該筒状多孔質体の内周面を被覆するように設けられ、前記筒状多孔質体に形成された微細孔よりも小さな気孔径を持つ多孔質膜で形成された筒状多孔質膜と、
を備えたことを特徴とする多孔質膜複合構造体。
【請求項2】
請求項1に記載の多孔質膜複合構造体において、
前記筒状多孔質体は、アルミナ、ジルコニア、シリカ、マグネシア、チッ化ケイ素、炭化ケイ素、もしくはこれらのセラミックスを主体とした複合セラミックスのいずれか1の材料、または炭素鋼、ステンレス鋼、アルミ合金、銅合金、ニッケル基合金、コバルト基合金、チタン合金、もしくはこれらの金属材料を主体とした複合材料のいずれか1の材料から構成されることを特徴とする多孔質膜複合構造体。
【請求項3】
請求項1または2に記載の多孔質膜複合構造体において、
前記筒状多孔質膜は、アルミナ、シリカ、またはこれらのセラミックスを主体とした複合セラミックスのいずれか1の材料から構成されることを特徴とする多孔質膜複合構造体。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の多孔質膜複合構造体において、
前記筒状多孔質体は、気孔率が30%から80%である単一体、または複数の気孔率が変化した積層体から構成されることを特徴とする多孔質膜複合構造体。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の多孔質膜複合構造体において、
前記筒状多孔質膜は、気孔径が1nmから100nmの範囲であり、厚さが5μmから500μmの範囲であることを特徴とする多孔質膜複合構造体。
【請求項6】
請求項1に記載の多孔質膜複合構造体において、
前記筒状多孔質体の内面を被覆するように設けられる筒状多孔質膜は、筒状多孔質体との熱膨張差を利用して当該筒状多孔質体の内面に挿入されて成ることを特徴とする多孔質膜複合構造体。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の多孔質膜複合構造体において、
前記筒状多孔質体の孔および/または筒状多孔質膜の孔は、直行孔であることを特徴とする多孔質膜複合構造体。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の多孔質膜複合構造体において、
前記筒状多孔質体は、外周面および前記内周面を含む表面部がコーティングされていることを特徴とする多孔質膜複合構造体。
【請求項9】
請求項8に記載の多孔質膜複合構造体において、
前記筒状多孔質体の表面部のコーティングが、鍍金、PVDにより形成されることを特徴とする多孔質膜複合構造体。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の多孔質膜複合構造体において、
液体中の固体もしくは気体中の固体を分離する膜として、または複数成分の液体もしくは複数種類の気体から選択的に特定の液体成分もしくは気体を分離する膜として用いることを特徴とする多孔質膜複合構造体。
【請求項11】
多数の微細孔が形成された多孔質体における微細孔の製造方法において、
成形時にセラミックス基体、または金属基体の所定の位置に繊維を配置し、一体化した後に、前記繊維を除去することにより前記微細孔を形成することを特徴とする多孔質体における微細孔の製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載の多孔質体における微細孔の製造方法において、
前記セラミックス基体は、アルミナ、ジルコニア、シリカ、マグネシア、窒化ケイ素、炭化ケイ素、またはこれらのセラミックスを主体とした複合セラミックスのいずれかであることを特徴とする多孔質体における微細孔の製造方法。
【請求項13】
請求項11に記載の多孔質体における微細孔の製造方法において、
前記金属基体は、炭素鋼、ステンレス鋼、アルミ合金、銅合金、ニッケル基合金、コバルト基合金、チタン合金、またはこれらの金属材料を主体とした複合材料のいずれかであることを特徴とする多孔質体における微細孔の製造方法。
【請求項14】
請求項11乃至13のいずれか1項に記載の多孔質体における微細孔の製造方法において、
前記セラミックス基体または金属基体に配置される繊維は、有機繊維、炭素繊維、またはこれらを主体とした繊維のいずれかであることを特徴とする多孔質体における微細孔の製造方法。
【請求項15】
請求項11乃至14のいずれか1項に記載の多孔質体における微細孔の製造方法において、
製造後のセラミックスまたは金属基体に形成される微細孔の直径が、10nmから1mmの範囲であることを特徴とする多孔質体における微細孔の製造方法。
【請求項16】
請求項11乃至15のいずれか1項に記載の多孔質体における微細孔の製造方法において、
製造後のセラミックスまたは金属基体に形成される微細孔の直径と深さの比が、100以上であることを特徴とする多孔質体における微細孔の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−220039(P2009−220039A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−68200(P2008−68200)
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】