説明

多官能性ポリオキシアルキレン化合物、その製造方法及び中間体

【課題】安定な結合で形成され、一本鎖に分解しにくく、コア骨格に不斉炭素のない多官能性ポリオキシアルキレン化合物を提供する。
【解決手段】下記式(1)で示される、多官能性ポリオキシアルキレン化合物。


(式中、L及びLは、エステル結合等をアルキレン鎖中又は末端に有していてもよいアルキレン基、Xは化学反応可能な官能基を示す。m、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数でmは5〜1000、nは0〜1000を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体関連物質を修飾する用途に使用される多官能性ポリオキシアルキレン化合物、その製造方法、及び該ポリオキシアルキレン化合物の中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
ドラッグデリバリーシステムは、理想的な薬剤の投与形態として様々な疾患に対する治療応用が進められている。中でも、ポリエチレングリコールによって薬剤を修飾することにより、血中滞留性を向上させる開発は幅広く為されており、インターフェロンやGCSFといったサイトカインをポリエチレングリコール修飾した薬剤も上市され、幅広く使用されている。
一般的に体内に投与された薬剤の消失経路としては、腎糸球体からのろ過排泄やクッパー細胞に代表される細網内皮系(RES系)による処理が挙げられる。糸球体はサイズ依存的なろ過膜として機能しているため、薬剤をポリオキシアルキレン修飾し、サイズを大きくすることでろ過排泄経路を回避することができる。また、RES系においては、非特異的な相互作用(オプソニン作用)によるRES認識により貪食されてしまうが、ポリオキシアルキレン修飾体は生体成分との相互作用が低いためにRES認識を回避することができる。このような理由から、ポリオキシアルキレン誘導体は、血中滞留性を長期化するためのDDS素材として広く用いられている。
従来、ポリオキシアルキレン誘導体においては、メトキシポリエチレングリコールの末端に反応性官能基を1個有するタイプの誘導体が一般的であったが、近年、近位の反応性官能基を2個有するポリオキシアルキレン誘導体が開発されている。当該誘導体は、近位に官能基を2個有することで、金属原子をキレートさせたり、抗体フラグメントをそれぞれに結合させて擬似抗体として作用させたり、また、低分子薬物の結合量を増やすことができる効果がある。
【0003】
特許文献1には下式で表される、3級炭素を介し、2つの反応性官能基、1つのポリオキシアルキレン鎖が結合した化合物が開示されている。
POLY−Y−CHXX‘ (X、X’は反応性官能基)
ポリオキシアルキレン修飾体の特徴である血中滞留性は、分子量が大きいほど向上することが知られている一方、分子量が数万のレベルになると薬剤溶液の粘度が上昇してしまい、製剤設計が困難となるという問題点があった。
また、開示されている合成法では、メトキシポリエチレングリコールの末端水酸基へ2つの官能基を導入している。この方法の場合、ポリマー末端への導入反応になるため、官能基導入率が低くなり、ポリオキシアルキレン誘導体の純度が低下する恐れがある。
また、3級炭素についた水素は酸性度が高く、塩基によって3級カチオンが生成、副反応を引き起こしやすくなるという問題点があった。
特許文献2には、ポリエチレングリコールの両末端にアミド結合を介して分岐鎖、薬剤を導入した構造が開示されている。
特許文献3、4には、メトキシポリエチレングリコール末端を活性化後、1、3―ジアミノプロパノールのようなアミノ基含有コア骨格化合物と反応させてウレタン結合を介してポリエチレングリコール鎖を導入後、残った水酸基へ複数の官能基を導入した化合物が開示されている。
特許文献5でも同様に、メトキシポリエチレングリコール末端を活性化後、コア骨格化合物と反応させてウレタン結合を介してポリエチレングリコール鎖を導入後、残った官能基へ複数の官能基を導入した化合物が開示されている。
これらに開示されている誘導体は、ポリオキシアルキレン鎖とリジンのようなコア骨格化合物をアミド結合やカーバメート結合、エステル結合で結合させており、これらの結合は保存中、あるいはアルカリ条件下での反応中に加水分解を受けやすく、結果ポリオキシアルキレン鎖が解離してしまう問題点があった。
また、これらの製造においては、リジンのようなコア骨格化合物に反応性ポリオキシアルキレン誘導体を反応させる工程を経由するため、ポリオキシアルキレン鎖の導入数が異なる不純物が発生してしまう問題点があった。このような高分子化合物同士の精製は工業的に困難である。
また、開示されている化合物においては、コア骨格に不斉炭素が存在しており、これは薬物への結合、医薬品への展開を考慮した場合、均一でないという問題点があった。
このような背景から、安定性が高く、分子内に不斉炭素が無いため均一性が得やすく、分子量が大きくなっても低粘度である多官能性ポリオキシアルキレン化合物が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第99/45964号パンフレット
【特許文献2】米国特許第6153655号公報
【特許文献3】米国特許第6251382号公報
【特許文献4】米国特許第6824766号公報
【特許文献5】国際公開第2005/061005号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、安定な結合で形成され、一本鎖に分解しにくく、コア骨格に不斉炭素のない多官能性ポリオキシアルキレン化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題につき鋭意研究の結果、特定の化学構造を有する多官能性ポリオキシアルキレン化合物が、不斉炭素を持たないために均一性に優れ、安定性が高く、分子量増大によっても粘度上昇を来さないことを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は以下のとおりのものである。
(A)下記式(1)で示される、多官能性ポリオキシアルキレン化合物
【0007】
【化1】

【0008】
(式中、Zはペンタエリスリトール又はジペンタエリスリトールの脱水酸基残基を示し、Rは炭素数1〜24の炭化水素基、OA及びOAは炭素数2〜4のオキシアルキレン基、L及びLは、エステル結合、ウレタン結合、アミド結合、エーテル結合、カーボネート結合、2級アミノ基、ウレア結合、チオエーテル結合、もしくはチオエステル結合をアルキレン鎖中又は末端に有していてもよいアルキレン基、Xは化学反応可能な官能基を示す。R、OA、OA、L、Lは一分子中で互いに同一又は異なっており、m、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数でmは5〜1000、nは0〜1000を示す。p、qは0又は1を示す。r+r=4又は6であり、r及びrは2以上の整数である。)
(B)下記式(2)で表される、式(1)の化合物の中間体であるポリオキシアルキレン化合物。
【0009】
【化2】

【0010】
(式中、Zはペンタエリスリトール又はジペンタエリスリトールの脱水酸基残基を示し、Rは炭素数1〜24の炭化水素基、OA及びOAは炭素数2〜4のオキシアルキレン基、Lは、エステル結合、ウレタン結合、アミド結合、エーテル結合、カーボネート結合、2級アミノ基、ウレア結合、チオエーテル結合、もしくはチオエステル結合をアルキレン鎖中又は末端に有していてもよいアルキレン基を示す。R、OA、OA、Lは一分子中で互いに同一又は異なっており、m、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数でmは5〜1000を示し、nは0〜1000を示し、qは0又は1を示す。r+r=4又は6であり、r及びrは2以上の整数である。)
【発明の効果】
【0011】
本発明による新規な多官能性ポリオキシアルキレン化合物(1)は、骨格がすべてエーテル結合で形成されており、ポリオキシアルキレン鎖の分岐点が4級炭素で形成されているため、1本鎖に分解しにくく化学構造上の安定性が高い。また、ポリオキシアルキレン鎖を複数本有するため、分子量が大きくなった場合でも粘度が上昇しにくく、コア骨格に不斉炭素がないため、均一性にも優れる。さらに、ポリオキシアルキレン鎖をアルキレンオキシドの付加重合で合成するため、反応性官能基をもった高分子不純物が生成しにくい。
したがって、本発明の化合物を生体関連物質と結合させた薬剤は、高分子量としても粘度上昇し難く、均一性に優れ、不純物も低減されるため、ドラッグデリバリーシステムにおける製剤設計上極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の式(1)におけるZはペンタエリスリトール、又はジペンタエリスリトールの脱水酸基残基であり、Zがペンタエリスリトールの場合、r+r=4であり、好ましくはr=r=2の2官能の誘導体である。Zがジペンタエリスリトールの場合、r+r=6であるが、好適な実施形態においてはr=2、r=4の2官能誘導体、又はr=4、r=2の4官能誘導体である。
式(1)のポリオキシアルキレン化合物におけるRは、炭素数1〜24の炭化水素基であり、具体的な炭化水素基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、第三ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、ヘンエイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、ベンジル基、クレジル基、ブチルフェニル基、ドデシルフェニル基等が挙げられ、好ましくは炭素数1〜10の炭化水素基、より好ましくはメチル基、エチル基であり、更に好ましくはメチル基である。
【0013】
OA1、OA2は、炭素数2〜4のオキシアルキレン基を示す。具体的には、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシテトラメチレン基などが挙げられる。OA1とOA2は同一であっても異なっていてもよく、また2種以上のオキシアルキレン基からなる場合、ランダム状に付加していてもブロック状に付加していてもよい。オキシアルキレン基の炭素数の少ない方がより親水性が高く、好ましくはオキシエチレン基、オキシプロピレン基であり、より好ましくはオキシエチレン基である。m、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数である。mは5〜1000であり、好ましくは10〜1000、更に好ましくは50〜800であり、最も好ましくは100〜800である。nは0〜1000であり、好ましくは0〜500である。好適な実施形態としては、nは0が好ましい。他の好適な実施形態においては1〜500であり、更に好適な実施形態として、nは100〜500である。
式中、p、qは0又は1を示す。
【0014】
式中、Xは生体関連物質と化学結合可能な基を示し、求電子性官能基、もしくは求核性官能基であり、生体関連物質と共有結合を形成可能な基であれば特に制限されない。例えば、J. Milton Harris著 “POLY(ETYLENE GLYCOL)
CHEMISTRYや、”Greg T. Hermanson著“Bioconjugate
Techniques second edition”(2008)や、Francesco M. Veronese著“Pegylated Protein
Drug:basic Science and Clinical Application”(2009)などに記載されている官能基が挙げられる。
生体関連物質とは、生体に関連した物質を意味する。生体に関連した物質とは、生理活性を有するタンパク質、酵素、遺伝子、核酸、ポリペプチド、オリゴペプチド、アミノ酸、サイトカイン、ホルモン、抗体やそれらの誘導体を示す。また、リン脂質誘導体や抗癌剤などの薬剤も含む。
Xの好ましい例を挙げれば、上記に挙げた生体関連物質のアミノ基、メルカプト基、アルデヒド基、不飽和結合又はアジド基と化学反応可能な官能基であれば特に制限されない。
更に具体的には、活性エステル、活性カーボネート、アルデヒド、イソシアネート、イソチオシアネート、エポキシド、チオール、マレイミド、ヒドラジド、ジチオピリジン、スルホン、アミン、オキシアミン、α―ハロアセチル、カルボン酸、不飽和結合、アジドなどを含む官能基が挙げられる。
さらに言えば、生体関連物質のアミノ基と反応可能な官能基は、活性エステル、活性カーボネート、アルデヒド、イソシアネート、イソチオシアネート、エポキシド、マレイミド、ジチオピリジン、スルホン、カルボン酸、不飽和結合であり、生体関連物質のメルカプト基と反応可能な官能基は、活性エステル、活性カーボネート、アルデヒド、イソシアネート、イソチオシアネート、エポキシド、チオール、マレイミド、ジチオピリジン、スルホン、ヨードアセトアミド、カルボン酸、不飽和結合であり、生体関連物質のカルボキシル基、アルデヒド基と反応可能な官能基は、チオール、アミン、オキシアミン、生体関連物質の不飽和結合と反応可能な官能基は、アミン、チオール、アジドであり、生体関連物質のアジド基と反応可能な官能基は、不飽和結合である。
活性エステルとは−CO−(EW1)で表されるカルボン酸が活性化された化合物であり、好ましい活性エステルとしては群(I)の(a)や、(EW1)成分として1-ヒドロキシベンゾトリアゾールやカルボニルイミダゾールを有する化合物が挙げられる。活性カーボネートとは−OCOO(EW2)で表される、(EW2)に電子吸引基を有するカーボネート化合物であり、好ましい活性カーボネートとしては群(I)の(b)が挙げられる。
【0015】
好適な実施形態においては、Xは、群(I)、群(II)、群(III)、群(IV)、群(V)で示される基である。
群(I) 生体関連物質のアミノ基と反応可能な官能基
下記の(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(h)、(i)、(j)
群(II) 生体関連物質のメルカプト基と反応可能な官能基
下記の(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、(h)、(i)、(j)
群(III) 生体関連物質のカルボキシル基、アルデヒド基と反応可能な官能基
下記の(g)、(k)、(l)、(m)
群(IV) 生体関連物質の不飽和結合と反応可能な官能基
下記の(g)、(k)、(m)、(n)
群(V) 生体関連物質のアジド基と反応可能な官能基
下記の(j)
【0016】
【化3】

【0017】
は水素原子又は炭素数1〜5の炭化水素基、Yは水素原子又は炭素数1〜5の炭化水素基を示す。具体的な炭化水素基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、第三ブチル基、ペンチル基が挙げられる。
は炭素数1〜10のハロゲン原子を含んでも良い炭化水素基を示し、具体的な炭素数1〜10のハロゲン原子を含んでも良い炭化水素基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、第三ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、ベンジル基、4−メチルフェニル基、トリフルオロメチル基、2,2,2―トリフルオロエチル基、4−(トリフルオロメトキシ)フェニル基、ビニル基、クロロエチル基、ブロモエチル基、ヨードエチル基等の基が挙げられるが、好ましくはメチル基、ビニル基、4−メチルフェニル基、2,2,2―トリフルオロエチル基である。
WはCl、Br、Iから選択されるハロゲン原子である。
は水素原子又はスルホニル基を示し、好ましくは水素原子である。
【0018】
式(1)におけるLは官能基Xとポリオキシアルキレン鎖間のリンカーであり、また式(1)、(2)におけるLはペンタエリスリトール、あるいはジペンタエリスリトールの脱水酸基残基とポリオキシアルキレン鎖間のリンカーであり、これらは共有結合であれば特に制限は無く、リンカーとして通常用いられる結合であればいずれでもよいが、好ましくはアルキレン基単独、又はエステル結合、ウレタン結合、アミド結合、エーテル結合、カーボネート結合、2級アミノ基、ウレア結合、チオエーテル結合、もしくはチオエステル結合をアルキレン鎖中又は末端に有するアルキレン基が挙げられる。アルキレン基の炭素数は、好ましくは1〜24である。アルキレン基の好ましい例としては、(z1)のような構造が挙げられる。エーテル結合を有するアルキレン基の好ましい例としては、(z2)、(z3)のような構造が挙げられる。エステル結合を有するアルキレン基の好ましい例としては、(z4)のような構造が挙げられる。ウレタン結合を有するアルキレン基の好ましい例としては、(z5)のような構造が挙げられる。アミド結合を有するアルキレン基の好ましい例としては、(z6)のような構造が挙げられる。2級アミノ基を有するアルキレン基の好ましい例としては、(z7)のような構造が挙げられる。ウレア結合を有するアルキレン基の好ましい例としては、(z8)のような構造が挙げられる。チオエーテル結合を有するアルキレン基の好ましい例としては、(z9)のような構造が挙げられる。チオエステル結合を有するアルキレン基の好ましい例としては、(z10)のような構造が挙げられる。
各式において、sは0〜12の整数である。(z2)、(z4)、(z5)、(z7)、(z8)、(z9)、(z10)における好ましいsの範囲は、0、又は1〜12であり、例えばタンパク質内部のような疎水性環境で結合させたい場合は、sは大きい方が好ましく、親水性環境で結合させたい場合はsは小さい方が好ましい。(z1)、(z3)、(z6)における好ましいsの範囲は、1〜12であり、結合させる環境でsを選択する。(z6)、(z7)、(z8)、(z9)、(z10)におけるsは同一であっても異なっていても良い。
【0019】
【化4】

【0020】
式(2)で表される中間体において、R、OA1、OA2、L、m、n、q、r、rは前述と同じである。
【0021】
【化5】

【0022】
本発明のポリオキシアルキレン化合物(2)は、例えば次のようにして製造することができる。
Zがペンタエリスリトール脱水酸基残基の場合、次のようにして製造することができる。非プロトン性溶媒中、酸触媒存在下、ペンタエリスリトールに2,2−ジメトキシプロパンを反応させ、2つの水酸基だけが環状アセタール化した2,2−ジメチル−5,5−ビス(ヒドロキシメチル)−1,3−ジオキサンを得ることができる。
反応溶媒は非プロトン性溶媒であれば特に制限されないが、ペンタエリスリトールが溶解しにくいため、N,N’−ジメチルホルムアミドなどの高極性溶媒が好ましい。酸触媒については、特に制限されないが、一般的なケタール化反応で用いられるp−トルエンスルホン酸が好ましい。
仕込みモル比については、ペンタエリスリトール1モルに対して2,2−ジメトキシプロパンが0.8〜1.2モルであり、好ましくは等モルである。仕込み方法は、ペンタエリスリトールと溶媒、酸触媒を混合して加温、均一状態で2,2-ジメトキシプロパンを反応させても良いし、ペンタエリスリトールを細かい結晶として溶媒へ分散させてから反応させても良い。
【0023】
反応後の粗生成物には4つの水酸基すべてが環状アセタール化した化合物や原料ペンタエリスリトールなどの不純物が存在するが、固液抽出、吸着剤、カラムクロマトグラフィーなどで精製することができる。固液抽出については、粗生成物を目的物が溶解しない非極性溶媒に分散、洗浄することで、4つの水酸基すべてが環状アセタール化した化合物を除去することができる。非極性溶媒については、目的物が溶解しない溶媒であれば特に制限されないが、ヘキサン、ヘプタンが好ましい。また、粗生成物を極性溶媒に溶解させることで、目的物のみ溶解させて原料ペンタエリスリトールをろ別することができる。極性溶媒については、目的物が溶解し、ペンタエリスリトールが不溶である溶媒であれば特に制限されないが、酢酸エチルが好ましい。固液抽出については、ソックスレー抽出器を用いても良い。
また、吸着剤については特に制限されないが、水酸基との相互作用のある無機系吸着剤は、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、アルミニウムとケイ素からなる複合酸化物であり、好ましい具体例としては、活性アルミナ、シリカゲル、協和化学工業(株)製のキョーワードシリーズのキョーワード200B、キョーワード700が挙げられる。
さらに、カラムクロマトグラフィーを用いても精製可能である。
上記のような手段で精製し、水酸基2個が選択的に保護された目的物を得ることができるが、アルキレンオキシド重合前の原料中に不純物が残存したままでアルキレンオキシド付加、官能基化を行うと、低分子の反応性不純物や4本鎖の非反応性不純物となり、これらは最終薬剤のポリオキシアルキレン修飾体の純度、均一性を著しく低下させる。
【0024】
このようにして、水酸基2個が選択的に保護された2,2−ジメチル−5,5−ビス(ヒドロキシメチル)−1,3−ジオキサンを得ることができる。2つの水酸基保護基に関しては特に限定されないが、イソプロピリデン基やベンジリデン基で水酸基2個を同時に保護しても良いし、ベンジル基やt−ブチル基などの公知の保護基で水酸基を2個選択的に保護しても良い。得られたアルキレンオキシド重合前の原料はシリカゲルカラムなどで精製しても良い。残った2つの水酸基へアルキレンオキシドを5〜1000モル重合させ、末端をアルキルエーテル化する。次いで、保護基を脱保護し、新たに生成した水酸基へアルキレンオキシドを0〜1000モル重合させて得ることができる。
保護基をイソプロピリデン基とした場合の化合物(2)の製造経路を下記に示す。
【0025】
【化6】

【0026】
また、化合物(2)は次のような方法でも製造することができる。
例えば2,2−ジメチル−5,5−ビス(ヒドロキシメチル)−1,3−ジオキサンのようなペンタエリスリトールの2つの水酸基を同時に保護した化合物へアルキレンオキシドを5〜1000モル重合させ、末端をアルキルエーテル化した後に脱保護する。新たに生成した2個の水酸基をp-ニトロフェニルカーボネートやN−ヒドロキシスクシンイミジル基等の官能基で活性化後、片末端をベンジル基やt-Bu基等で保護したアミノポリオキシアルキレン化合物と反応させ、次いで、ベンジル基やt-Bu基等の保護基を脱保護し、式(2)の化合物を得ることができる。
【0027】
【化7】

【0028】
上記にはZがペンタエリスリトール脱水酸基残基の例を挙げたが、Zがジペンタエリスリトール脱水酸基残基の場合、例えば下記のような方法で4つの水酸基を有する化合物(2)を得ることができる。ジペンタエリスリトールの水酸基を2つのイソプロピリデン基などの保護基で保護し、残った水酸基へアルキレンオキシドを5〜1000モル重合させて、末端をアルキルエーテル化する。イソプロピリデン基を脱保護し、新たに生成した4つの水酸基へアルキレンオキシドを0〜1000モル重合させて、化合物(2)を得ることができる。
【0029】
【化8】

【0030】
また、下記にはZがジペンタエリスリトール脱水酸基残基の場合において、2つの水酸基を有する化合物(2)の合成方法を示す。ジペンタエリスリトールの水酸基を2つのイソプロピリデン基などの保護基で保護し、残った水酸基へアルキレンオキシドを0〜1000モル重合させて、末端をベンジル基等の水酸基保護基で保護する。イソプロピリデン基を脱保護し、新たに生成した4つの水酸基へアルキレンオキシドを5〜1000モル重合させ、末端をアルキルエーテル化する。次いでベンジル基を脱保護し、化合物(2)を得ることができる。
【0031】
【化9】

【0032】
この様に、コア骨格化合物へポリマーであるポリオキシアルキレン誘導体を反応させる従来技術の製造方法に対し、本願のようなアルキレンオキシド付加重合反応を用いることで、高収率、かつ工業的に適した方法で、高純度の多官能性ポリオキシアルキレン化合物を製造することができる。
このようにして得られた式(2)の化合物は、抽出、再結晶、吸着処理、再沈殿、カラムクロマトグラフィー、超臨界抽出等の精製手段にて精製してもよい。
【0033】
ついで、化合物(2)の水酸基を、生体関連物質と化学反応可能な基へ官能基化することで、本発明の式(1)の多官能性ポリオキシアルキレン化合物を製造することができる。
以下の記載において、官能基Xが(a)〜(n)である式(1)の化合物を、それぞれ、(a)体、・・・(n)体、又は官能基名を付して「アミン体(k)」等と表記することがある。
以下に官能基(a)〜(n)の導入方法を詳細に説明する。(a)〜(n)の導入に関しては、(a)〜(n)体自体を中間体として、更に他の化合物と反応させて、本発明の化合物(1)を得ることもできる。例えば、(k)の官能基を有する中間体を原料とし、(a)や(d)の官能基を有する化合物を得ることができる。
以下、本発明の化合物(1)の合成方法を詳細に説明する。
【0034】
[Xが(b)又は(e)である化合物(1)の製造方法]
化合物(2)とトルエン、ベンゼン、キシレン、アセトニトリル、酢酸エチル、ジエチルエーテル、t−ブチルーメチルエーテル、テトラヒドロフラン、クロロホルム、塩化メチレン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等の非プロトン性溶媒、もしくは無溶媒中、トリエチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン等の有機塩基、もしくは炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム等の無機塩基と下記一般式(b1)、(e1)で示される化合物のいずれかと反応させることで、それぞれ(b)体、(e)体を導入することができる。また、上記有機塩基、無機塩基は用いなくとも良い。有機塩基、無機塩基の使用割合は、特に制限はないが、化合物(2)に対して等モル以上が好ましい。また、有機塩基を溶媒として用いてもよい。(b1)、(e1)におけるWはCl、Br、Iより選択されるハロゲン原子であり、好ましくはClである。
一般式(b1)、(e1)で示される化合物の使用割合は、特に制限はないが、化合物(2)に対して等モル以上が好ましく、更に好ましくは等モル〜50モルの範囲で反応させるのが好ましい。反応温度としては、0〜300℃が好ましく、更に好ましくは、20〜150℃である。反応時間は10分〜48時間が好ましく、更に好ましくは30分〜24時間である。生成した化合物は、抽出、再結晶、吸着処理、再沈殿、カラムクロマトグラフィー、超臨界抽出等の精製手段にて精製してもよい。
【0035】
【化10】

【0036】
(WはCl、Br、Iより選択されるハロゲン原子を示す。Yは炭素数1〜10の、ハロゲン原子が置換されていてもよい炭化水素基を示す。)
また、トルエンなどの非プロトン性溶媒中、強塩基存在下、化合物(2)とジビニルスルホンを反応させることで、官能基(e)を導入することができる。強塩基については、無機塩基、有機塩基いずれでも良く、特に制限はない。強塩基の使用割合は、特に制限はないが、化合物(2)に対して等モル以上が好ましい。ジビニルスルホンの使用割合に特に制限はないが、化合物(2)に対して等モル以上が好ましく、ダイマーの副生を防止するため、10当量以上の過剰量を用いるのが好ましい。反応温度としては、0〜100℃が好ましく、更に好ましくは、20〜40℃である。反応時間は10分〜48時間が好ましく、更に好ましくは30分〜24時間である。生成した化合物は、抽出、再結晶、吸着処理、再沈殿、カラムクロマトグラフィー、超臨界抽出等の精製手段にて精製してもよい。
【0037】
[Xが(f)である化合物(1)の製造方法]
化合物(2)や後述するアミン体(k)を無水コハク酸や無水グルタル酸等のジカルボン酸無水物と反応させることで、カルボキシル体(f)を得ることができる。
化合物(2)やアミン体(k)とジカルボン酸無水物との反応は、上述の非プロトン性溶媒、もしくは無溶媒中で行う。ジカルボン酸無水物の使用割合は、特に制限はないが、化合物(2)に対して等モル以上が好ましく、更に好ましくは等モル〜5モルである。反応温度としては、0〜200℃が好ましく、更に好ましくは、20〜150℃である。反応時間は10分〜48時間が好ましく、更に好ましくは30分〜12時間である。
反応にはトリエチルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジン等の有機塩基や炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム等の無機塩基を触媒として用いてもよい。触媒の使用割合は化合物(2)に対して0.1〜50質量%が好ましく、さらに好ましくは0.5〜20質量%である。このようにして生成したカルボキシル体(f)は、抽出、再結晶、吸着処理、再沈殿、カラムクロマトグラフィー、超臨界抽出等の精製手段にて精製してもよいし、縮合反応の原料として用いる場合は、そのまま用いても良い。
【0038】
化合物(2)を、6-ブロモヘキサン酸エチルや7-ブロモヘプタン酸エチル等のハロゲン置換カルボン酸エステルと反応させることで、カルボキシル体(f)を得ることができる。化合物(2)とハロゲン置換カルボン酸エステルとのエーテル化反応は、上述の非プロトン性溶媒、もしくは無溶媒中で行う。ハロゲン置換カルボン酸エステルの使用割合は、特に制限はないが、化合物(2)に対して等モル以上が好ましく、更に好ましくは等モル〜30モルである。反応温度としては、0〜200℃が好ましく、更に好ましくは、20〜150℃である。反応時間は10分〜48時間が好ましく、更に好ましくは30分〜12時間である。反応にはトリエチルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジン等の有機塩基や炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム等の無機塩基を触媒として用いてもよい。触媒の使用割合は化合物(2)に対して0.1〜500質量%が好ましく、さらに好ましくは0.5〜300質量%である。エーテル化後、有機塩基の場合は水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等の水溶液を、無期塩基の場合は、水を追加してエステルの加水分解を行う。反応温度としては、0〜100℃が好ましく、更に好ましくは、20〜100℃である。反応時間は10分〜48時間が好ましく、更に好ましくは30分〜12時間である。反応後、塩酸や硫酸等で中和を行う。このようにして生成したカルボキシル体(f)は、抽出、再結晶、吸着処理、再沈殿、カラムクロマトグラフィー、超臨界抽出等の精製手段にて精製してもよいし、縮合反応の原料として用いる場合は、そのまま用いても良い。
【0039】
[Xが(a)である化合物(1)の製造方法]
カルボキシル体(f)を、DCC、EDC等の縮合剤存在下、N−ヒドロキシコハク酸イミドと縮合反応させることで、コハク酸イミド体(a)を得ることができる。縮合反応も同様に上記非プロトン性溶媒中、もしくは無溶媒中で行う。縮合剤としては、特に制限は無いが、好ましくはDCCである。DCCの使用割合はカルボキシル体(f)に対して等モル以上が好ましく、更に好ましくは等モル〜5モルである。N−ヒドロキシコハク酸イミドの使用割合はカルボキシル体(f)に対して等モル以上が好ましく、更に好ましくは等モル〜5モルである。反応温度としては、0〜100℃が好ましく、更に好ましくは、20〜80℃である。反応時間は10分〜48時間が好ましく、更に好ましくは30分〜12時間である。生成した化合物は抽出、再結晶、吸着処理、再沈殿、カラムクロマトグラフィー、超臨界抽出等の精製手段にて精製してもよい。
また化合物(a)は、化合物(2)とN,N’−ジスクシンイミドカーボネートとを反応させることでも得ることができる。反応は、上記の反応と同様に非プロトン性溶媒中、もしくは無溶媒中で行う。N,N’−ジスクシンイミドカーボネートの使用割合は化合物(2)に対して等モル以上が好ましく、更に好ましくは等モル〜5モルである。反応温度としては、0〜100℃が好ましく、更に好ましくは、20〜80℃である。反応時間は10分〜48時間が好ましく、更に好ましくは30分〜12時間である。生成した化合物は抽出、再結晶、吸着処理、再沈殿、カラムクロマトグラフィー、超臨界抽出等の精製手段にて精製してもよい。
【0040】
[Xが(k)である化合物(1)の製造方法]
化合物(2)を水、アセトニトリル等の溶媒中、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基を触媒とし、アクリロニトリル等を付加させてニトリル体を得たあと、オートクレーブ中でニッケルやパラジウム触媒下でニトリル基の水添反応を行うことでアミン体(k)を得ることができる。ニトリル体を得る際の無機塩基の使用割合は、特に制限はないが、化合物(2)に対して0.01〜50質量%が好ましい。アクリロニトリル等の使用割合は、特に制限はないが、化合物(2)の質量に対して0.5〜5倍質量が好ましく、更に好ましくは1〜4倍質量の範囲で反応させるのが、より好ましい。また、アクリロニトリルを溶媒として用いても良い。反応温度としては、−50〜100℃が好ましく、更に好ましくは、−20〜60℃である。反応時間は10分〜48時間が好ましく、更に好ましくは30分〜24時間である。続くニトリル体の水添反応における反応溶媒は、反応に関与しない溶媒であれば特に制限は無いが、好ましくはトルエンである。ニッケル、もしくはパラジウム触媒の使用割合は、特に制限は無いが、ニトリル体に対して0.05〜30質量%であり、好ましくは0.5〜20質量%である。反応温度は20〜200℃が好ましく、更に好ましくは、50〜150℃である。反応時間は10分〜48時間が好ましく、更に好ましくは30分〜24時間である。水素圧は2〜10MPaが好ましく、更に好ましくは3〜8MPaである。また、2量化を防ぐために反応系中にアンモニアを加えてもよい。アンモニアを加える場合のアンモニア圧は特に制限はないが、0.1〜10MPaであり、更に好ましくは0.3〜2MPaである。生成した化合物は前述の精製手段にて精製してもよい。
【0041】
上記アミン体(k)は、(e)体をアンモニア水と反応させることでも得ることができる。反応は、アンモニア水中で行い、アンモニアの濃度は特に制限は無いが、好ましくは10〜40質量%の範囲である。アンモニア水の使用割合は、(e)体の質量に対して1〜300倍であるのが好ましい。反応温度としては、0〜100℃が好ましく、更に好ましくは、20〜80℃である。反応時間は10分〜72時間が好ましく、更に好ましくは1〜36時間である。
また、アミン体(k)は、オートクレーブ中、(e)体をアンモニアと反応させても得ることができる。反応溶剤については、特に制限はないが、好ましくはメタノール、エタノールが挙げられる。アンモニア量は(e)体に対して10〜300質量%が好ましく、更に好ましくは20〜200質量%である。反応温度としては、50〜200℃が好ましく、80〜150℃が更に好ましい。反応時間については、10分〜24時間が好ましく、更に好ましくは30分〜12時間である。生成した化合物は前述の精製手段にて精製してもよい。
また、アミン体(k)は非プロトン性溶媒中、光延反応で化合物(2)とフタルイミドを結合させ、多官能アミンで脱保護することで得ることもできる。光延反応の反応条件は特に制限は無いが、反応溶媒としては、クロロホルム、ジクロロメタンが好ましい。また、トリフェニルホスフィンを化合物(2)に対して等モル以上、好ましくは等モル〜50モル、アゾジカルボン酸ジイソプロピルを化合物(2)に対して等モル以上、好ましくは等モル〜50モル使用するのが好ましい。反応温度としては、0〜100℃が好ましく、更に好ましくは、10〜50℃である。反応時間は10分〜72時間が好ましく、更に好ましくは30分〜6時間である。
脱保護については、ヒドラジン、もしくはエチレンジアミンのような多官能アミンを化合物(2)に対して等モル以上、好ましくは等モル〜500モル使用するのが好ましい。反応溶媒としては特に制限は無いが、メタノールが好ましい。反応温度としては、0〜100℃が好ましく、更に好ましくは、20〜80℃である。反応時間は10分〜72時間が好ましく、更に好ましくは1〜10時間である。生成した化合物は抽出、再結晶、吸着処理、再沈殿、カラムクロマトグラフィー、超臨界抽出等の精製手段にて精製してもよい。
【0042】
[Xが(l)である化合物(1)の製造方法]
カーボネート体(b)を、トリエチルアミンやピリジン等のアルカリ触媒存在下、化合物(l1)と反応させることで、フタルイミド体(l2)を得ることができる。
反応溶媒は、無溶媒もしくは極性溶剤であれば特に制限はないが、好ましくはメタノールである。アルカリ触媒の使用割合は、特に制限はないが、(b)体に対して等モル以上が好ましく、更に好ましくは等モル〜20モルの範囲で反応させるのが、より好ましい。化合物(l1)の使用割合は、(b)体に対して等モル以上が好ましく、更に好ましくは等モル〜20モルである。反応温度としては、0〜100℃が好ましく、更に好ましくは、20〜80℃である。反応時間は10分〜48時間が好ましく、更に好ましくは30分〜12時間である。生成した化合物は抽出、再結晶、吸着処理、再沈殿、カラムクロマトグラフィー、超臨界抽出等の精製手段にて精製してもよいし、精製せず次の工程に進めても良い。
【0043】
【化11】

【0044】
(Qは炭素数1〜7の二価炭化水素基を示す。)
フタルイミド体(l2)を、ヒドラジンやエチレンジアミン等の多官能アミン存在下で反応させることで、オキシアミン体(l)を得ることができる。
反応溶媒には、特に制限はないが、N,N’−ジメチルホルムアミドや塩化メチレンが好ましい。多官能アミン存在下の使用割合は、特に制限はないが、フタルイミド体
(l2)に対して等モル以上が好ましく、更に好ましくは等モル〜50モルの範囲で反応させるのが、より好ましい。反応温度としては、0〜100℃が好ましく、更に好ましくは、20〜80℃である。反応時間は10分〜48時間が好ましく、更に好ましくは30分〜12時間である。生成した化合物は抽出、再結晶、吸着処理、再沈殿、カラムクロマトグラフィー、超臨界抽出等の精製手段にて精製してもよい。
【0045】
[Xが(d)である化合物(1)の製造方法]
前述の手法により得られたアミン体(k)を、前述の非プロトン性溶媒、もしくは無溶媒中、無水マレイン酸と反応させてマレアミド体を得たあと、無水酢酸及び酢酸ナトリウムを触媒として、閉環反応させることでマレイミド体(d)を得ることができる。マレアミド化反応における無水マレイン酸の使用割合は、特に制限はないが、化合物(k)に対して等モル以上が好ましく、更に好ましくは等モル〜5モルである。反応温度としては、0〜200℃が好ましく、更に好ましくは、20〜120℃である。反応時間は10分〜48時間が好ましく、更に好ましくは30分〜12時間である。生成したマレアミド体は、前述の精製手段にて精製してもよいし、そのまま次の閉環反応に用いても良い。
続く閉環反応における反応溶媒は特に限定されないが、非プロトン性溶媒又は無水酢酸が好ましい。酢酸ナトリウムの使用割合は、特に制限はないが、マレアミド体に対して等モル以上が好ましく、更に好ましくは等モル〜50モルである。反応温度としては、0〜200℃が好ましく、更に好ましくは、20〜150℃である。反応時間は10分〜48時間が好ましく、更に好ましくは30分〜12時間である。生成した化合物は前述の精製手段にて精製してもよい。
上記マレイミド体(d)は、下記一般式で表される化合物(d1)と、上述のアミン体(k)を反応させることでも得ることができる。反応は、前述の非プロトン性溶媒、もしくは無溶媒中で行い、化合物(d1)をアミン体(k)に対して等モル以上加えて反応させる。(d1)の使用割合はアミン体(k)の等モル以上が好ましく、更に好ましくは等モル〜5モルである。反応温度としては、0〜200℃が好ましく、更に好ましくは、20〜80℃である。反応時間は10分〜48時間が好ましく、更に好ましくは30分〜12時間である。反応時は遮光してもよい。生成した化合物は前述の精製手段にて精製してもよい。
【0046】
【化12】

【0047】
(Qは炭素数1〜7の二価炭化水素基を示す。Yは水素原子又は炭素数1〜5の炭化水素基を示す。)
[Xが(c)である化合物(1)の製造方法]
(e)体をアセタール化合物(c1)と反応させてアセタール体を得た後、酸性条件にて加水分解を行うことで、アルデヒド体(c)を得ることができる。化合物(e)の製造は上述の通りである。アセタール化反応は前述の非プロトン性溶媒中、もしくは無溶媒中、(e)体と等モル以上、好ましくは等モル〜50モルの(c1)を反応させることで得ることができる。(c1)は相当するアルコールから、金属ナトリウム、金属カリウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、ナトリウムメトキシド、カリウム−t−ブトキシド等を用いて調製することができる。反応温度としては、0〜300℃が好ましく、更に好ましくは、20〜150℃である。反応時間は10分〜48時間が好ましく、更に好ましくは30分〜24時間である。
【0048】
化合物(c2)を用いる場合は、化合物(2)の水酸基を上述の方法でアルコラートとした後、前述の非プロトン性溶媒中、もしくは無溶媒中、(c2)を等モル以上、好ましくは等モル〜100モルの割合で反応を行うことでアセタール体を得ることができる。反応温度としては、0〜300℃が好ましく、更に好ましくは、20〜150℃である。反応時間は10分〜48時間が好ましく、特に好ましくは30分〜24時間である。
【0049】
化合物(c3)を用いる場合は、(a),(b),(e),もしくは(f)体と(c3)を反応させることでアセタール体を得ることができる。(a),(b),(e),もしくは(f)の製造については前述の通りである。(c3)との反応では、溶媒は特に制限されないが、好ましくは前述の非プロトン性溶媒中で行う。(a),(b),(e),もしくは(f)体に対する(c3)の仕込み割合は、等モル以上が好ましく、更に好ましくは等モル〜10モルである。反応温度としては、−30〜200℃が好ましく、更に好ましくは、0〜150℃である。反応時間は10分〜48時間が好ましく、更に好ましくは30分〜24時間である。(f)体を用いる場合は、適宜DCC、EDC等の縮合剤を用いても良い。いずれのアセタール化反応も遮光して行っても良い。このようにして得られたアセタール体は前述の精製手段にて精製してもよいし、精製を行わずにそのまま次のアルデヒド化反応に用いても良い。
【0050】
アルデヒド化は、アセタール体を0.1〜50%の水溶液とし、酢酸、リン酸、硫酸、塩酸等の酸にてpH1〜4に調整した水溶液中で加水分解させ、製造することができる。反応温度としては、−20〜100℃が好ましく、更に好ましくは、0〜80℃である。反応時間は10分〜24時間が好ましく、更に好ましくは30分〜10時間である。反応は遮光して行っても良い。生成した化合物は前述の精製手段にて精製してもよい。
【0051】
【化13】

【0052】
(式中、R7、R8は炭素数1〜3の炭化水素基であり、それぞれ同一であっても、異なっていても良い。また相互に環を形成していても良い。Mはナトリウムもしくはカリウムであり、WはCl、Br、Iより選択されるハロゲン原子であり、tは1〜12の整数である。)
【0053】
[Xが(g)である化合物(1)の製造方法]
メルカプト体(g)は、(e)体とチオウレア等のチア化剤と反応させることで得ることができる。(e)体の製造は前述の通りである。チア化反応は水、アルコール、アセトニトリル等の溶媒中もしくは無溶媒中で行う。チオウレアの使用割合は、(e)体に対して等モル以上が好ましく、更に好ましくは等モルから50モルの範囲である。反応温度としては、0〜300℃が好ましく、更に好ましくは、20〜150℃である。反応時間は10分〜48時間が好ましく、更に好ましくは30分〜24時間である。反応後、生成したチアゾリウム塩をアルカリ加水分解し、メルカプト体を得ることができる。生成した化合物は前述の精製手段にて精製してもよい。
【0054】
また、上記メルカプト体(g)は、(e)体を下記化合物(g1)と反応させ、1級アミンにて分解させることでも得ることができる。(e)体と(g1)との反応は、前述の非プロトン性溶媒中、もしくは無溶媒中で行う。(g1)の使用割合は、(e)体に対して等モル以上が好ましく、更に好ましくは等モルから50モルの範囲である。反応温度としては、0〜300℃が好ましく、更に好ましくは、20〜80℃である。反応時間は10分〜48時間が好ましく、更に好ましくは30分〜24時間である。続く1級アミンによるアルカリ分解は、前述の非プロトン性溶媒、もしくは無溶媒中で行う。用いる1級アミンとしては特に制限は無いが、好ましくはアンモニア、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、エタノールアミン、プロパノールアミン、ブタノールアミン等が挙げられる。当然、これらの1級アミンを溶媒として用いても良い。生成した化合物は前述の精製手段にて精製してもよい。
【0055】
【化14】

【0056】
[Xが(h)である化合物(1)の製造方法]
(h)体は、(g)体を2,2−ジピリジルジスルフィドと反応させることで得ることができる。反応では、溶媒は特に制限されないが、好ましくはメタノール、エタノール、2−プロパノール等のアルコール溶媒中で行う。(g) 体に対する2,2−ジピリジルジスルフィドの仕込み割合は、等モル以上が好ましく、更に好ましくは等モル〜50モルである。反応温度としては、−30〜100℃が好ましく、更に好ましくは、0〜60℃である。反応時間は10分〜48時間が好ましく、更に好ましくは30分〜24時間である。このようにして得られたアセタール体は前述の精製手段にて精製しても良い。
【0057】
[Xが(i)である化合物(1)の製造方法]
前述の通りの手法で得られたアミン体(k)を、前述の非プロトン性溶媒、もしくは無溶媒中、ヨード酢酸無水物と反応させることで(i)体を得ることができる。ヨード酢酸無水物の使用割合は、特に制限はないが、アミン体(k)に対して等モル以上が好ましく、更に好ましくは等モル〜5モルである。反応温度としては、0〜200℃が好ましく、更に好ましくは、20〜120℃である。反応時間は10分〜48時間が好ましく、更に好ましくは30分〜12時間である。生成した(i)体は、抽出、再結晶、吸着処理、再沈殿、カラムクロマトグラフィー、超臨界抽出等の精製手段にて精製しても良い。
また、(i)体は、アミン体(k)を、DCC、EDC等の縮合剤存在下、ヨード酢酸と縮合反応させることで、得ることができる。縮合反応も同様に前述の非プロトン性溶媒中、もしくは無溶媒中で行う。縮合剤としては、特に制限は無いが、好ましくはDCCである。DCCの使用割合はアミン体(k)に対して等モル以上が好ましく、更に好ましくは等モル〜5モルである。ヨード酢酸の使用割合はアミン体(k)に対して等モル以上が好ましく、更に好ましくは等モル〜5モルである。反応温度としては、0〜100℃が好ましく、更に好ましくは、20〜80℃である。反応時間は10分〜48時間が好ましく、更に好ましくは30分〜12時間である。生成した化合物は前述の精製手段にて精製してもよい。
【0058】
[Xが(m)である化合物(1)製造方法]
(a)、(b)、(c)、もしくは(e)体を、前述の非プロトン性溶媒、もしくは無溶媒中、カルバジン酸tert-ブチルと反応させ、tert-ブチルカルボニル基を脱保護することで(m)体を得ることができる。カルバジン酸tert-ブチルの使用割合は、特に制限はないが、(a)体に対して等モル以上が好ましく、更に好ましくは等モル〜10モルである。反応温度としては、0〜200℃が好ましく、更に好ましくは、20〜80℃である。反応時間は10分〜48時間が好ましく、更に好ましくは30分〜12時間である。生成した(m)体は、前述の精製手段にて精製してもよい。
【0059】
[Xが(j)である化合物(1)の製造方法]
化合物(a)、(b)、(c)、もしくは(e)体を(j1)で示されるアセチレン化合物と反応させることで、アセチレン体(j)を得ることができる。化合物(a)、(b)、(c)、(e)体の製造は前述の通りである。アセチレン化反応はプロトン性溶媒中、もしくは無溶媒中、化合物(a)、(b)、(c)、もしくは(e)体に対して等モル以上、好ましくは等モル〜50モルの(j1)を反応させることで得ることができる。反応温度としては、0〜300℃が好ましく、更に好ましくは、20〜150℃である。反応時間は10分〜48時間が好ましく、更に好ましくは30分〜24時間である。生成した化合物は前述の精製手段にて精製してもよい。
【0060】
【化15】

【0061】
(式中、tは1〜5の整数である。Yは水素原子又は炭素数1〜5の炭化水素基を示す。)
[Xが(n)である化合物(1)の製造方法]
化合物(e)をアジド化ナトリウムで反応させることで、アジド体(n)を得ることができる。アジド化反応はプロトン性溶媒中、もしくは無溶媒中、化合物(e)と等モル以上、好ましくは等モル〜50モルのアジド化ナトリウムを反応させることで得ることができる。反応温度としては、0〜300℃が好ましく、更に好ましくは、20〜150℃である。反応時間は10分〜48時間が好ましく、更に好ましくは30分〜24時間である。生成した化合物は前述の精製手段にて精製してもよい。
【実施例】
【0062】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
なお、例中の化合物の分析、同定には1H-NMR及びTOF−MSを用いた。
1H-NMRの分析方法>
1H-NMR分析では、日本電子データム(株)製JNM−ECP400及びJNM−ECA600を用いた。NMR測定における積分値には、理論値を記載した。
<TOF−MSの分析方法>
分子量測定にはTOF−MS(Bruker製、autoflexIII)を用い、マトリクスとしてDithranol、塩としてトリフルオロ酢酸ナトリウムを用いて測定を行った。解析はFlexAnalysisを用い、Polytoolsにて分子量分布解析を行った。得られた重心値を分子量の値として記載した。
<粘度の測定方法>
粘度計は東機産業株式会社製E型粘度計RC105Aを用いた。
【0063】
(実施例1)
化合物(2)の合成(Z=ペンタエリスリトール脱水酸基残基、R=メチル基、OA1=オキシエチレン基、n=0、r=2、r=2、q=0、分子量約5000(実施例1−6)、40000(実施例1−7))
(実施例1−1)
温度計、窒素吹き込み管、攪拌機を付した5L丸底フラスコへ、ペンタエリスルトール254g、N,N-ジメチルホルムアミド2500gを仕込み、80℃で加温溶解した。25℃まで冷却後、2,2-ジメトキシプロパン195g、p-トルエンスルホン酸・1水和物3.6gを入れ、窒素を吹き込みながらそのまま25℃で反応を行った。トリエチルアミン9.5gを加えて中和、反応液を濃縮した。濃縮後、得られた粉体をヘキサン1kg中で分散させ、攪拌、ろ過した。このヘキサン洗浄工程は4回繰り返した。得られたケーキを酢酸エチル1kgに50℃で溶解、不溶分をろ過した後、ろ液へキョーワード200Bを250g加えて50℃で1時間吸着処理を行った。ろ液を濃縮し、2,2-ジメチル-5,5-ビス(ヒドロキシメチル)-1,3-ジオキサンを得た。
1H-NMR(D2O,内部標準H2O=4.65ppm) δ(ppm):1.40(6H、s、-CH3)、2.69、3.64(4H、4H、s、s、-O-CH2-C-、-CH2OH)
(実施例1−2)
実施例1−1で得た2,2-ジメチル-5,5-ビス(ヒドロキシメチル)-1,3-ジオキサン34.8g、ナトリウムメトキシド28%メタノール溶液13.5g、脱水トルエン350gを5Lオートクレーブへ仕込み、系内を窒素置換した。50℃まで昇温後、温度を保ったまま徐々に減圧し、窒素を吹き込みながらメタノール及びトルエンを留去した。1時間留去を続けた後、再度系内を窒素置換、100℃に昇温し、100〜150℃、1MPa以下の圧力でエチレンオキシド970gを加えた後、更に1時間反応を続けた。減圧にて未反応のエチレンオキシドガスを除去後、60℃に冷却し、釜内から737g抜き出し、下記化合物(p1)を得た。
1H-NMR(CDCl3 , 内部標準TMS) δ(ppm):1.40(6H、s、-CH3
、2.69(2H、t、-CH2OH) 、3.40〜3.90( 440H、m、-(CH2CH2O)m-、-O-CH2-C-、C-CH2-O-)
TOF-MS分析値(分子量重心値):4956
【0064】
【化16】

【0065】
m=約54 (p1)
(実施例1−3)
実施例1−2にて、釜内に残存した反応液約250gに脱水トルエン2330gを加え、窒素置換を行った。釜温115℃にて窒素を吹き込みながら340gのトルエンを留去した後、釜内を窒素置換した。120℃に昇温し、100〜150℃、1MPa以下の圧力でエチレンオキシド1750gを圧入し、更に4時間反応を続けた。反応終了後、70℃に冷却、下記化合物(p2)を得た。
1H-NMR(CDCl3 , 内部標準TMS) δ(ppm):1.40(6H、s、-CH3
、2.69(2H、t、-CH2OH) 、3.40〜3.90( 3504H、m、-(CH2CH2O)m-、-O-CH2-C-、C-CH2-O-)
TOF-MS分析値(分子量重心値):38680
【0066】
【化17】

【0067】
m=約437 (p2)
(実施例1−4)
温度計、窒素吹き込み管、攪拌機、Dean−stark管、及び冷却管を付した1L丸底フラスコへ、式(p1)の化合物200g、トルエン600gを仕込み、加熱還流させ、トルエン52gと水分を共沸除去した。室温へ冷却後、トリエチルアミン16.2gを加えて40℃に加温、メタンスルホニルクロリド11.9gを滴下し、40℃にて3時間反応させた。反応終了後、ナトリウムメトキシド28%メタノール溶液54.2gを反応液に加え、40℃で7時間反応させた。反応液を40℃に保ちながら減圧し、メタノール/トルエン混合液を102g留去した。トルエン600gを加えて希釈後、ろ過にて塩を除去した。ろ液へヘキサン600gを加えて晶析し、結晶を濾取した。得られた結晶を酢酸エチル600gに加温溶解し、室温まで冷却後、ヘキサン800gを加えて再度晶析を行った。得られた結晶を濾取、乾燥し、下記化合物(p3)を得た。
1H-NMR(CDCl3 , 内部標準TMS) δ(ppm):1.40(6H、s、-CH3
、3.38(6H、s、-OCH3) 、3.40〜3.90( 440H、m、-(CH2CH2O)m-、-O-CH2-C-CH2-)
【0068】
【化18】

【0069】
m=約54 (p3)
(実施例1−5)
温度計、窒素吹き込み管、攪拌機、Dean−stark管、及び冷却管を付した1L丸底フラスコへ、式(p2)の化合物147g、トルエン680g、2,6−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−メチルフェノール0.15gを仕込み、加熱還流させ、トルエン30gと水分を共沸除去した。室温へ冷却後、トリエチルアミン1.40gを加えて40℃に加温、メタンスルホニルクロリド1.30gを滴下し、40℃にて3時間反応させた。反応終了後、ナトリウムメトキシド28%メタノール溶液5.03gを反応液に加え、40℃で3時間反応させた。反応液を40℃に保ちながら減圧し、メタノール/トルエン混合液を188g留去した。トルエン1500gを加えて希釈後、ろ過にて塩を除去した。ろ液を液量が約800mlとなるまで濃縮し、温度計、窒素吹き込み管、攪拌機、Dean−stark管、及び冷却管を付した2L丸底フラスコへ仕込んだ。反応液を加熱還流させ、トルエン200gと水分を共沸除去した。室温へ冷却後、トリエチルアミン1.40gを加えて40℃に加温、メタンスルホニルクロリド1.29gを再度滴下し、40℃にて3時間反応させた。反応終了後、ナトリウムメトキシド28%メタノール溶液5.01gを反応液に加え、40℃で3時間反応させた。反応液を40℃に保ちながら減圧し、メタノール/トルエン混合液を約200g留去した。トルエン1500gを加えて希釈後、ろ過にて塩を除去した。ろ液を50℃に加温し、25%食塩水を750g加え、攪拌後、静置分層し、下層の水層を除去した。この水洗操作は2回繰り返した。上層のトルエン層を硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過し、ろ液に酢酸エチル1L加え、ヘキサンを結晶が析出するまで加えた。結晶をろ取、乾燥し、下記化合物(p4)を得た。
1H-NMR(CDCl3 , 内部標準TMS) δ(ppm):1.40(6H、s、-CH3
、3.38(6H、s、-OCH3) 、3.40〜3.90( 3504H、m、-(CH2CH2O)m-、-O-CH2-C-CH2-)
【0070】
【化19】

【0071】
m=約437 (p4)
(実施例1−6)
1Lビーカーへ化合物(p3)を15g、イオン交換水300gを仕込んだ。撹拌して溶解後、85%リン酸を加えてpHを1.86に調整した。室温条件下、窒素を吹き込みながら反応液をマグネティックスターラーで2時間10分撹拌した。反応終了後、400g/L水酸化ナトリウム水溶液で反応液のpHを6.86に調整した。食塩60gを反応液に溶解後、再度pHを7.10に調整した。pH調整後、BHT100mgをあらかじめ溶解させたクロロホルム200gを加えて抽出した。得られたクロロホルム層をエバポレーターにて約20mlまで濃縮後、酢酸エチル300ml、無水硫酸マグネシウム5gを加えて反応液から水分を除去した。硫酸マグネシウムをろ別後、ヘキサン400mlを加えて晶析後、結晶を濾取、乾燥し、下記化合物(p5)を得た。
1H-NMR(CDCl3 , 内部標準TMS) δ(ppm): 3.07(2H、s、CH2OH
) 3.38(6H、s、-OCH3) 、3.40〜3.90( 440H、m、-CH2O(CH2CH2O)m-、CH2OH)
【0072】
【化20】

【0073】
m=約54 (p5)
(実施例1−7)
化合物(p4)を用い、実施例1−6と同じ方法にて下記化合物(p6)を得た。
1H-NMR(CDCl3 , 内部標準TMS) δ(ppm):3.07(2H、s、CH2OH
) 3.38(6H、s、-OCH3)、3.40〜3.90( 3504H、m、-CH2O(CH2CH2O)m-、CH2OH)
【0074】
【化21】

【0075】
m=約437 (p6)
(実施例2)
化合物(1)の合成(Z=ペンタエリスリトール脱水酸基残基、R=メチル基、OA1=オキシエチレン基、n=0、r=2、r=2、q=0、p=1X=アミノ基、分子量約40000)
(実施例2−1)
500mlの四つ口フラスコへ化合物(p6)を30g、イオン交換水30g、8NのKOH水溶液3.0gを仕込み、40℃で加温した。溶解後、反応液を10℃以下に冷却した。反応液を10℃以下に保ちながら、アクリロニトリル100gを滴下し、滴下終了後、0〜10℃で更に2時間反応させた。反応終了後、反応液を85%リン酸でpH7.0に調整し、反応液へイオン交換水60gを追加した。この溶液へ酢酸エチル100gを加えて撹拌、静置し、上層の有機層を除去した。この抽出操作は6回繰り返した。水層へクロロホルム300gを加えて撹拌、静置し、クロロホルム層を分取した。クロロホルム溶液を約60mlまで濃縮し、酢酸エチル400ml、無水硫酸マグネシウム10gを仕込んで有機層を乾燥させた。有機層を濾過後、ろ液へヘキサン400mlを加えて晶析した。得られた結晶を濾取、乾燥し、下記ニトリル体(p7)を得た。
1H-NMR(CDCl3 , 内部標準TMS) δ(ppm):2.60(4H、t、CH2CH2CN) 3.38(6H、s、-OCH3)、3.40〜3.90( 3508H、m、-CH2O(CH2CH2O)m
-、C-CH2-O-CH2CH2CN)
【0076】
【化22】

【0077】
m=約437 (p7)
(実施例2−2)
1Lオートクレーブに式(p7)のニトリル体10g、トルエン500g、ニッケル触媒(エヌ・イー・ケムキャット社製5136p)1gを加え、60℃まで昇温した。アンモニアで内圧1.0MPaになるまで加圧し、その後、水素を内圧4.5MPaとなるまで加圧し、130で3時間反応させた。反応後、反応液を70℃に冷却し、アンモニア臭が消えるまで窒素パージを繰り返した。反応液を全量抜き取り、ろ過して触媒を除去後、ろ液を室温まで冷却し、ヘキサンを結晶が析出するまで加えた。結晶をろ取、乾燥し、下記アミン体(p8)を得た。
1H-NMR(D2O , 内部標準H2O=4.6ppm) δ(ppm):1.58(4H、m、CH2CH2CH2NH2 )2.60(4H、t、CH2CH2CH2NH2 ) 3.17(6H、s、-OCH3)、3.40〜3.90( 3508H、m、-CH2O(CH2CH2O)m
-、CH2-O-CH2CH2CH2NH2
)
【0078】
【化23】

【0079】
m=約437 (p8)
(実施例3)
化合物(1)の合成(Z=ペンタエリスリトール脱水酸基残基、R=メチル基、OA1=オキシエチレン基、n=0、r=2、r=2、q=0、p=1、X=マレイミド基、分子量約40000)
温度計、窒素吹き込み管、攪拌機、及び冷却管を付した100ml丸底フラスコへN−Succinimidyl 3−maleimidopropionate82mg、アセトニトリル15gを加えて溶解させた。反応容器へ式(p8)の化合物3gをアセトニトリル6mlに溶解させた溶液を1時間かけて滴下し、そのまま室温で3時間反応させた。反応液を約10mlに濃縮後、濃縮液に酢酸エチル500mlを加え、ヘキサンを結晶が析出するまで加えた。結晶をろ取、乾燥し、下記(p9)の化合物を得た。
1H-NMR(CDCl3 , 内部標準TMS) δ(ppm):1.72(4H、m、CH2CH2CH2NH) 2.49(4H、t、CH2CH2N<) 3.38(6H、s、-OCH3)、3.40〜3.90( 3516H、m、-CH2O(CH2CH2O)m
-、C-CH2-O-CH2CH2CH2NH、CH2CH2N<) 6.42(2H、s、-NHCO-) 6.71(4H、s、-CH=CH-)
【0080】
【化24】

【0081】
m=約437 (p9)
(比較例1)
特許文献1(WO99/45964)の実施例3記載の方法に従い、分子量約5000の下記化合物(p10)、分子量約40000の下記化合物(p11)を得た。
【0082】
【化25】

【0083】
m=約115 (p10)
【0084】
【化26】

【0085】
m=約954 (p11)
(実施例4)
化合物(p5)、(p6)について、イオン交換水で10%水溶液を調整し、40℃で粘度測定を行った。
化合物(p10)、(p11)についても同様に10%水溶液を調整、40℃で粘度測定を行った。
結果を表1に示す。
【0086】
【表1】

【0087】
この結果から、同じ分子量のものであれば、特許文献1記載の1本鎖の2官能ポリオキシアルキレン化合物よりも本発明化合物の方が低粘度であり、とくに、血中滞留性の効果が高い高分子量体となるほど粘度低減効果が高いことが明らかとなった。
化合物(p5)及び(p6)は、本発明の化合物(1)の製造中間体であり、当該化合物に、所望によりリンカー及び/又はオキシアルキレン基を介して官能基を導入することによって、目的とする化合物(1)が得られる(p8など)。官能基は、生体関連物質との結合基であって、化合物(1)の粘度を制御する要素ではないから、実施例4によって得られた中間体p5及びp6の粘度に係る性質は、目的物質である化合物(1)の粘度にかかわる性質をも表している。
【0088】
(実施例5)
化合物(2)(式(2)で表される化合物)の合成(Z=ペンタエリスリトール脱水酸基残基、R=メチル基、OA1=オキシエチレン基、OA2=オキシエチレン基、n=1、r=2、r=2、q=0、分子量約20000(実施例5−6)、40000(実施例5−7)の場合)
(実施例5−1)
温度計、窒素吹き込み管、攪拌機を付した5L丸底フラスコへ、実施例1−1で得た2,2-ジメチル-5,5-ビス(ヒドロキシメチル)-1,3-ジオキサン150g、脱水N,N-ジメチルホルムアミド2250g、臭化テトラブチルアンモニウム22.0gを仕込み、室温にて溶解した。メタンスルホン酸2−ベンジルオキシエチル588gを仕込んだ後、水素化ナトリウム111gを徐々に加え、50℃にて反応を行った。エタノール55gでクエンチした後、イオン交換水2250g、酢酸エチル2250g、ヘキサン2250gを加えて撹拌、静置し、上層の有機層を分取した。イオン交換水3000gを加えて撹拌、静置し、上層の有機層を分取した後、無水硫酸マグネシウム75gを仕込んで乾燥させた。有機層を濾過後、減圧下濃縮した。
得られた残渣100gをテトラヒドロフラン1500gに溶解した後、イオン交換水1375g、濃塩酸125gを加え室温にて反応を行った。20%水酸化ナトリウム水溶液252gで中和した後、減圧下濃縮した。酢酸エチル200gを加えて撹拌、静置し、上層の有機層を分取した後、無水硫酸マグネシウム30gを仕込んで乾燥させた。有機層を濾過後、減圧下濃縮し、得られた残渣にヘキサン40gを加え、撹拌、静置し、上層のヘキサン層を除去した。
得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(wako gel-C200、ヘキサン/酢酸エチル=3/1→0/1)で精製を行い、2,2-ビス{2-(ベンジロキシ)エトキシメチル}-1,3-プロパンジオールを得た。
1H-NMR(CDCl3,内部標準TMS=0.00ppm) δ(ppm):2.95
(2H、t、-CH2OH)、3.50〜3.70 (16H、m、-CH2OH、-CH2O-CH2CH2-OBn)、4.05 (4H、s、-OCH2Ph)、7.20〜7.40 (5H、m、-OCH2C6H5)
【0089】
(実施例5−2)
(実施例5−1)で得られた2,2-ビス{2-(ベンジロキシ)エトキシメチル}-1,3-プロパンジオール0.73kg、ナトリウムメトキシド28%メタノール溶液72.5g、脱水トルエン45kgを100L反応釜へ仕込み、系内を窒素置換した。50℃まで昇温後、温度を保ったまま徐々に減圧し、窒素を吹き込みながらメタノール及びトルエンを約9kg留去した。1時間留去を続けた後、再度系内を窒素置換、100℃に昇温し、100〜150℃、1MPa以下の圧力でエチレンオキシド8.5kgを加えた後、更に3時間反応を続けた。釜内から30kg抜き出した後、釜内に残存した反応液約15kgを120℃に昇温し、100〜150℃、1MPa以下の圧力でエチレンオキシド9.0kgを圧入し、更に4時間反応を続けた。釜内から12kg抜き取り、下記化合物(p12)を得た。
1H-NMR(CDCl3 , 内部標準TMS) δ(ppm):2.74
(2H、t、-(CH2CH2O)m-H)、3.44〜3.48 (8H、m、C-(CH2)4)、3.50〜3.80 (1793H、m、-(CH2CH2O)m-H、-OCH2CH2OBn)、4.55 (4H、s、-OCH2Ph)、7.20〜7.35 (10H、m、-OCH2C6H5)
TOF-MS分析値(分子量重心値):20045
【0090】
【化27】

【0091】
m=約223 (p12)
(実施例5−3)
(実施例5−2)にて、釜内に残存した反応液約12kgを120℃に昇温し、100〜150℃、1MPa以下の圧力でエチレンオキシド6.2kgを圧入し、更に8時間反応を続けた。反応終了後、70℃に冷却、下記化合物(p13)を得た。
1H-NMR(CDCl3 , 内部標準TMS) δ(ppm):2.71
(2H、t、-(CH2CH2O)m-H)、3.44〜3.48 (8H、m、C-(CH2)4)、3.50〜3.80 (3688H、m、-(CH2CH2O)m-H、-OCH2CH2OBn)、4.55 (4H、s、-OCH2Ph)、7.20〜7.35 (10H、m、-OCH2C6H5)
TOF-MS分析値(分子量重心値):40929
【0092】
【化28】

【0093】
m=約460 (p13)
(実施例5−4)
温度計、窒素吹き込み管、攪拌機、Dean−stark管、及び冷却管を付した2L丸底フラスコへ、式(p12)の化合物140g、トルエン750g、2,6-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-メチルフェノール0.15gを仕込み、加熱還流させ、トルエン50gと水分を共沸除去した。室温へ冷却後、カリウム
t-ブトキシド4.7gを加えて40℃に加温、トルエンスルホン酸メチル13.0gを滴下し、40℃にて3時間反応させた。トルエン560gを加えて希釈後、ろ過にて塩を除去した。ろ液へキョーワード2000
28gを加え、40℃にて30分吸着処理した後、ろ過にて吸着剤を除去した。ヘキサン560gを加えて晶析し、得られた結晶を濾取、乾燥し、下記化合物(p14)を得た。
1H-NMR(CDCl3 , 内部標準TMS) δ(ppm):3.38
(6H、s、-OCH3)、3.44〜3.48 (8H、m、C-(CH2)4)、3.50〜3.80 (1793H、m、-(CH2CH2O)m-Me、-OCH2CH2OBn)、4.55 (4H、s、-OCH2Ph)、7.20〜7.35 (10H、m、-OCH2C6H5)
【0094】
【化29】

【0095】
m=約223 (p14)
(実施例5−5)
温度計、窒素吹き込み管、攪拌機、Dean−stark管、及び冷却管を付した2L丸底フラスコへ、式(p13)の化合物200g、トルエン450gを仕込み、加熱還流させ、トルエン60gと水分を共沸除去した。室温へ冷却後、カリウム
t-ブトキシド1.7gを加えて40℃に加温、トルエンスルホン酸メチル4.5gを滴下し、40℃にて3時間反応させた。トルエン500gを加えて希釈後、ろ過にて塩を除去した。ろ液へキョーワード2000
10gを加え、40℃にて30分吸着処理した後、ろ過にて吸着剤を除去した。ヘキサン800gを加えて晶析し、結晶を濾取、乾燥し、下記化合物(p15)を得た。
1H-NMR(CDCl3 , 内部標準TMS) δ(ppm):3.38
(6H、s、-OCH3)、3.44〜3.48 (8H、m、C-(CH2)4)、3.50〜3.80 (3688H、m、-(CH2CH2O)m-Me、-OCH2CH2OBn)、4.55 (4H、s、-OCH2Ph)、7.20〜7.35 (10H、m、-OCH2C6H5)
【0096】
【化30】

【0097】
m=約460 (p15)
(実施例5−6)
温度計、窒素吹き込み管、攪拌機、及び冷却管を付した1L丸底フラスコへ、式(p14)の化合物50g、5%Pdカーボン25gを仕込み、窒素置換した。メタノール500mL、シクロヘキセン83.5mLを加えて55℃にて3時間反応させた。30℃に冷却後、濾過にて触媒を除去した。濾過ケーキをクロロホルム400gで洗浄し、濾液に2,6-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-メチルフェノール0.05gを加えた後減圧下濃縮した。残渣にトルエン350g、無水硫酸マグネシウム25gを仕込んで有機層を乾燥させた。有機層を濾過後、ろ液へヘキサン250gを加えて晶析した。得られた結晶を濾取、乾燥し、下記化合物(p16)を得た。
1H-NMR(CDCl3 , 内部標準TMS) δ(ppm):2.95
(2H、t、-CH2OH)、3.38 (6H、s、-OCH3)、3.44〜3.48 (8H、m、C-(CH2)4)、3.50〜3.80 (1793H、m、-(CH2CH2O)m-Me、-OCH2CH2OH)
【0098】
【化31】

【0099】
m=約223 (p16)
(実施例5−7)
温度計、窒素吹き込み管、攪拌機、及び冷却管を付した2L丸底フラスコへ、式(p15)の化合物90g、5%Pdカーボン45gを仕込み、窒素置換した。メタノール900mL、シクロヘキセン150mLを加えて55℃にて3時間反応させた。30℃に冷却後、濾過にて触媒を除去した。濾過ケーキをクロロホルム720gで洗浄し、濾液に2,6-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-メチルフェノール0.09gを加えた後減圧下濃縮した。残渣にトルエン630g、無水硫酸マグネシウム45gを仕込んで有機層を乾燥させた。有機層を濾過後、ろ液へヘキサン450gを加えて晶析した。得られた結晶を濾取、乾燥し、下記化合物(p17)を得た。
1H-NMR(CDCl3 , 内部標準TMS) δ(ppm):2.93
(2H、t、-CH2OH)、3.38 (6H、s、-OCH3)、3.44〜3.48 (8H、m、C-(CH2)4)、3.50〜3.80 (3688H、m、-(CH2CH2O)m-Me、-OCH2CH2OH)
【0100】
【化32】

【0101】
m=約460 (p17)
(実施例6)
化合物(1)(式(1)で表される化合物)の合成(Z=ペンタエリスリトール脱水酸基残基、R=メチル基、OA1=オキシエチレン基、OA2=オキシエチレン基、n=1、r=2、r=2、p=0、q=0、X=アミノ基、分子量約20000(実施例6−1)、40000(実施例6−2)の場合)
(実施例6−1)
温度計、窒素吹き込み管、攪拌機、Dean−stark管、及び冷却管を付した200mL丸底フラスコへ、式(p16)の化合物20g、トルエン60gを仕込み、加熱還流させ、トルエン30gと水分を共沸除去した。室温へ冷却後、ジクロロメタン100g、フタルイミド0.9g、トリフェニルホスフィン1.6g、ジイソプロピルアゾジカルボキシレート1.0gを順次仕込み、室温にて1時間反応させた。メタノールでクエンチした後、減圧下濃縮した。トルエンで希釈し、減圧下再濃縮した後、メタノール60g、エチレンジアミン一水和物16gを順次仕込み、40℃にて4時間反応させた。反応終了後、イオン交換水100g、食塩25gを順次加えた後、ジクロロメタン300gを加えて撹拌、静置し、クロロホルム層を分取した。クロロホルム溶液を約40mLまで濃縮し、酢酸エチル120g、無水硫酸マグネシウム6gを仕込んで有機層を乾燥させた。有機層を濾過後、濾液へヘキサン80gを加えて晶析し、結晶を濾取、乾燥し、下記化合物(p18)を得た。
1H-NMR(CDCl3 , 内部標準TMS) δ(ppm):2.81
(4H、t、-OCH2CH2NH2)、3.38 (6H、s、-OCH3)、3.40〜3.80 (1801H、m、C-{CH2O(CH2CH2O)mMe}2、C-(CH2OCH2 CH2NH2)2)
【0102】
【化33】

【0103】
m=約223 (p18)
(実施例6−2)
温度計、窒素吹き込み管、攪拌機、Dean−stark管、及び冷却管を付した200mL丸底フラスコへ、式(p17)の化合物30g、トルエン75gを仕込み、加熱還流させ、トルエン30gと水分を共沸除去した。室温へ冷却後、ジクロロメタン150g、フタルイミド0.6g、トリフェニルホスフィン1.2g、ジイソプロピルアゾジカルボキシレート0.7gを順次仕込み、室温にて1時間反応させた。メタノールでクエンチした後、減圧下濃縮した。トルエンで希釈し、減圧下再濃縮した後、メタノール90g、エチレンジアミン一水和物11gを順次仕込み、40℃にて4時間反応させた。反応終了後、イオン交換水150g、食塩38gを順次加えた後、ジクロロメタン300gを加えて撹拌、静置し、クロロホルム層を分取した。クロロホルム溶液を約60mLまで濃縮し、酢酸エチル180g、無水硫酸マグネシウム10gを仕込んで有機層を乾燥させた。有機層を濾過後、濾液へヘキサン120gを加えて晶析し、結晶を濾取、乾燥し、下記化合物(p19)を得た。
1H-NMR(CDCl3 , 内部標準TMS) δ(ppm):2.81
(4H、t、-OCH2CH2NH2)、3.38 (6H、s、-OCH3)、3.40〜3.80 (3696H、m、C-{CH2O(CH2CH2O)mMe}2、C-(CH2OCH2 CH2NH2)2)
【0104】
【化34】

【0105】
m=約460 (p19)
(実施例7)
化合物(1)(式(1)で表される化合物)の合成(Z=ペンタエリスリトール脱水酸基残基、R=メチル基、OA1=オキシエチレン基、OA2=オキシエチレン基、L=アミド結合を有するアルキレン基、n=1、r=2、r=2、p=1、q=0、X=マレイミド基、分子量約20000(実施例7−1)、40000(実施例7−2)の場合)
(実施例7−1)
温度計、窒素吹き込み管及び攪拌機を付した200mL丸底フラスコへ、式(p18)の化合物10g、アセトニトリル60gを仕込み溶解させた。反応容器へ3−マレイミドプロピオン酸スクシンイミド0.5gを仕込み、室温で3時間反応させた。反応液を濾過し濾液を約20mLに濃縮後、濃縮液に酢酸エチル100g、ヘキサン50gを加え晶析した。結晶を濾取、乾燥し、下記化合物(p20)を得た。
1H-NMR(CDCl3 , 内部標準TMS) δ(ppm):2.51
(4H、t、C(O)CH2CH2N<)、3.35〜3.85 (1805H、m、-CH2O(CH2CH2O)mCH3、-CH2OCH2CH2NHC(O)CH2CH2N<)2、6.46 (2H、t、-NHCO-)、6.71 (4H、s、-CH=CH-)
【0106】
【化35】

【0107】
m=約223 (p20)
(実施例7−2)
温度計、窒素吹き込み管及び攪拌機を付した200mL丸底フラスコへ、式(p19)の化合物10g、アセトニトリル60gを仕込み溶解させた。反応容器へ3−マレイミドプロピオン酸スクシンイミド0.3gを仕込み、室温で3時間反応させた。反応液を濾過し濾液を約20mLに濃縮後、濃縮液に酢酸エチル100g、ヘキサン50gを加え晶析した。結晶を濾取、乾燥し、下記化合物(p21)を得た。
1H-NMR(CDCl3 , 内部標準TMS) δ(ppm):2.51
(4H、t、C(O)CH2CH2N<)、3.35〜3.85 (3700H、m、-CH2O(CH2CH2O)mCH3、-CH2OCH2CH2NHC(O)CH2CH2N<)2、6.47 (2H、t、-NHCO-)、6.71 (4H、s、-CH=CH-)
【0108】
【化36】

【0109】
m=約460 (p21)
(実施例8)
化合物(1)(式(1)で表される化合物)の合成(Z=ペンタエリスリトール脱水酸基残基、R=メチル基、OA1=オキシエチレン基、OA2=オキシエチレン基、L=アミド結合を有するアルキレン基、p=1、n=1、r=2、r=2、q=0、X=活性エステル基、分子量約40000の場合)
(実施例8−1)
温度計、窒素吹き込み管及び攪拌機を付した100mL丸底フラスコへ、式(p19)の化合物3g、トルエン18g、3,6-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-メチルフェノール3.0mg及び酢酸ナトリウム0.03gを仕込み55℃にて溶解させた。反応容器へグルタル酸無水物50mgを仕込み、55℃で3時間反応させた。40℃に冷却した後、N−ヒドロキシスクシンイミド104mg及びジシクロヘキシルカルボジイミド180mgを仕込み40℃にて4時間反応させた。反応液を濾過し濾液にヘキサン15gを加え晶析した。結晶を濾取、乾燥し、下記化合物(p22)を得た。
1H-NMR(CDCl3 , 内部標準TMS) δ(ppm):2.09
(4H、quint、-CH2CH2CH2-)、2.31 (4H、t、-NHC(O) CH2CH2CH2-)、2.69 (2H、t、- CH2CH2CH2CO2N<)、2.85 (8H、s、-CH2CH2-)、3.35〜3.85 (3692H、m、-CH2O(CH2CH2O)mCH3、-CH2OCH2CH2NHC(O)-)、6.43 (2H、t、-NHCO-)
【0110】
【化37】

【0111】
m=約460 (p22)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で示される、多官能性ポリオキシアルキレン化合物。
【化1】

(式中、Zはペンタエリスリトール又はジペンタエリスリトールの脱水酸基残基を示し、Rは炭素数1〜24の炭化水素基、OA及びOAは炭素数2〜4のオキシアルキレン基、L及びLは、エステル結合、ウレタン結合、アミド結合、エーテル結合、カーボネート結合、2級アミノ基、ウレア結合、チオエーテル結合、もしくはチオエステル結合をアルキレン鎖中又は末端に有していてもよいアルキレン基、Xは化学反応可能な官能基を示す。R、OA、OA、L、Lは一分子中で互いに同一又は異なっており、m、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数でmは5〜1000、nは0〜1000を示す。p、qは0又は1を示す。r+r=4又は6であり、r及びrは2以上の整数である。)
【請求項2】
Rがメチル基であり、OA及びOAがオキシエチレン基である、請求項1記載の多官能性ポリオキシアルキレン化合物。
【請求項3】
n、qが0であり、mが100〜800である、請求項1記載の多官能性ポリオキシアルキレン化合物。
【請求項4】
nが1〜500であり、mが100〜800である、請求項1記載の多官能性ポリオキシアルキレン化合物。
【請求項5】
Xがアミノ基、カルボキシル基、メルカプト基、アルデヒド基、不飽和結合又はアジド基と化学結合可能な官能基である、請求項1記載の多官能性ポリオキシアルキレン化合物。
【請求項6】
Xが、活性エステル、活性カーボネート、アルデヒド、イソシアネート、イソチオシアネート、エポキシド、チオール、マレイミド、ヒドラジド、ジチオピリジン、スルホン、アミン、オキシアミン、α―ハロアセチル、カルボン酸、不飽和結合、アジドを含む官能基である、請求項1記載の多官能性ポリオキシアルキレン化合物。
【請求項7】
Xが、以下より選択される官能基である、請求項1記載の多官能性ポリオキシアルキレン化合物。
【化2】

(式中、Yは水素原子又は炭素数1〜5の炭化水素基、Yは水素原子又は炭素数1〜5の炭化水素基を示す。Yは炭素数1〜10のハロゲン原子を含んでも良い炭化水素基を示す。Yは水素原子又はスルホニル基、WはCl、Br、Iから選択されるハロゲン原子を示す。)
【請求項8】
Zがペンタエリスリトールの脱水酸基残基であり、r=r=2である、請求項1記載の多官能性ポリオキシアルキレン化合物。
【請求項9】
Zがジペンタエリスリトールの脱水酸基残基であり、r=2、r=4である、請求項1記載の多官能性ポリオキシアルキレン化合物。
【請求項10】
Zがジペンタエリスリトールの脱水酸基残基であり、r=4、r=2である、請求項1記載の多官能性ポリオキシアルキレン化合物。
【請求項11】
下記式(2)で表される、請求項1記載の中間体であるポリオキシアルキレン化合物。
【化3】

(式中、Zはペンタエリスリトール又はジペンタエリスリトールの脱水酸基残基を示し、Rは炭素数1〜24の炭化水素基、OA及びOAは炭素数2〜4のオキシアルキレン基、Lは、エステル結合、ウレタン結合、アミド結合、エーテル結合、カーボネート結合、2級アミノ基、ウレア結合、チオエーテル結合、もしくはチオエステル結合をアルキレン鎖中又は末端に有していてもよいアルキレン基を示す。R、OA、OA、Lは一分子中で互いに同一又は異なっており、m、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数でmは5〜1000を示し、nは0〜1000を示し、qは0又は1を示す。r+r=4又は6であり、r及びrは2以上の整数である。)



【公開番号】特開2011−225860(P2011−225860A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75867(P2011−75867)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000004341)日油株式会社 (896)
【Fターム(参考)】