説明

多官能性マクロモノマーおよび重合開始剤の熱重合可能な混合物、前記混合物の支持体の結合剤としての使用

本発明は少なくとも1個のラジカル重合可能な基を有する多官能性マクロモノマーおよび重合開始剤からなる熱重合可能な混合物に関する。本発明は更に前記混合物の、支持体の結合剤としての、特にガラス繊維、ミネラルウール、天然繊維、合成繊維の結合剤としてのおよび中子砂の結合のための使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多官能性マクロモノマーおよび重合開始剤の熱重合可能な混合物、および前記混合物の支持体の結合剤としての使用に関する。
【0002】
米国特許第5275874号はメタクリレートまたはマレエートをベースとするUV硬化結合剤と一緒に結合したガラス繊維からなるガラス繊維絶縁体の製造を記載する。結合剤の均一な硬化を達成するために、結合剤で処理したガラス繊維は長い時間にわたりUV放射線にさらされなければならない。しかし結果として放射されるガラス繊維/結合剤混合物の表面の結合剤が損傷する。
【0003】
米国特許第6221973号は耐熱性不織布、特にガラス繊維の結合剤として使用するための、ポリ酸、ポリオールおよび亜燐酸含有促進剤を含有するホルムアルデヒド不含硬化性水性組成物を記載する。
【0004】
欧州特許第0990727号は低分子ポリカルボキシポリマーおよびポリオールからなり、3.5以下のpH値を有する無機繊維結合剤を記載する。
【0005】
米国特許第5932665号は分子量およびコポリマー組成の調節によりホモポリアクリル酸をベースとする匹敵する系より低い温度で硬化するポリカルボキシポリマーをベースとする結合剤を記載する。
【0006】
WO97/31036号は塗料、含浸剤および繊維ウェブの結合剤として有用な、エチレン系不飽和酸無水物またはエチレン系不飽和ジカルボン酸およびアルカノールアミンから形成されるホルムアルデヒド不含水性結合剤を記載する。
【0007】
ドイツ特許第4410020号は繊維材料中の物質、特に絶縁目的の無機繊維材料中の結合剤の付加重合法を記載し、その際結合剤で処理された繊維材料を電子線で照射する。使用できる結合剤の例は分子中に2個以上のエチレン系不飽和二重結合を有する化合物、例えば1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリプロピレングリコールトリアクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレートまたはエトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレートである。
【0008】
ドイツ特許第4421254号は絶縁目的の無機ウール材料を製造するための繊維材料中のプレポリマーの付加重合法を記載し、その際繊維材料にプレポリマーを含浸させ、こうして被覆した繊維材料を、プレポリマーの完全な付加重合が行われ、被覆した繊維材料表面での有機物成分の分解が避けられるほど短い時間、一定の厚さで高い強度のUV放射線にさらす。有用なプレポリマーは多官能性アクリロイル化合物またはメタクリロイル化合物、例えば反応して連鎖延長および/または架橋を生じる重合可能な不飽和官能基、例えばアクリレート基、メタクリレート基、ビニル基、ビニルエーテル基、アリル基またはマレエート基を有するオリゴマーまたはポリマーを含む。
【0009】
モノマーまたはプレポリマーのような結合剤の付加重合を繊維マトリックス中で放射線硬化を用いて行う方法において、結合剤で被覆された繊維材料を、放射線が材料に浸透する程度までのみ硬化できる。しかし層厚が増加するとともに放射線強度が急激に低下するので、所定の高価な不便な手段を取らなければ、モノマーまたはプレポリマーの不均一重合が起きる。
【0010】
WOA91/10713号は特に仕上げ皮膜の被覆および連続的縁取りに使用される水性被覆組成物を記載する。組成物は2つの成分IおよびIIからなる。成分Iは少なくとも1つの水で希釈できるメラミン樹脂および/または尿素樹脂、少なくとも1つのヒドロキシル基含有ポリエステルおよび場合により顔料、一般的な助剤および添加剤成分および希釈剤からなり、成分IIは酸性硬化触媒からなる。組成物に含まれるメラミン樹脂および/または尿素樹脂は同時縮合したホルムアルデヒドからなり、被覆物が例えば熱負荷を受けた場合にこの物質がわずかに分離することがある。
【0011】
欧州特許第0279303号は(A)二価から六価までのオキシアルキル化C〜C10−アルコール1当量(B)二塩基性から四塩基性までのC〜C36−カルボン酸またはその無水物0.05〜1当量および(C)アクリル酸および/またはメタクリル酸0.1〜1.5当量の反応および引き続く過剰のカルボキシル基と当量のエポキシ化合物の反応により得られる放射線硬化性アクリレートを記載する。こうして製造したアクリレートを場合により反応性希釈剤、例えば4−t−ブチルシクロヘキシルアクリレートまたはヘキサンジオールジアクリレートと混合し、下塗りおよび上塗りとして使用する。このためにアクリレートを分散剤を使用して水に分散させ、水性分散液の形で例えば繊維ウェブに塗装し、電子線の作用によりまたは光開始剤を添加後、UV放射線で照射することにより硬化する、ドイツ特許第2853921号参照。
【0012】
アクリレートとエポキシ化合物、例えばエポキシ化オレフィン、または飽和または不飽和カルボン酸のグリシジルエステルの放射線硬化性反応生成物は欧州特許第0686632号から公知である。放射線硬化性ウレタンアクリレートも公知である、未公開のドイツ特許出願第10259673号参照。
【0013】
本発明の課題は、成形品、例えば特にマットまたはパネルを製造するための、繊維および/または粒状物支持体、例えばガラス繊維、ミネラルウール、他の合成または天然繊維および砂のためのホルムアルデヒド不含結合剤を提供することである。結合剤は高い機械的強度および寸法安定性を有する成形品を提供すべきである。
【0014】
前記課題は、本発明により、少なくとも1個のラジカル重合可能な基を有する多官能性マクロモノマーおよび重合開始剤からなる熱重合可能な混合物により解決される。マクロモノマーはラジカル重合可能な基として、例えばアクリレート基、メタクリレート基、マレエート基、ビニルエーテル基、ビニル基および/またはアリル基を含有する。
【0015】
有用な多官能性マクロモノマーは例えば前記引用文献、欧州特許第0279303号、欧州特許第0686621号、ドイツ特許第4421254号およびドイツ特許出願第10259673号から公知のプレポリマーを含む。多官能性マクロモノマーは例えばアクリレート基、メタクリレート基、マレエート基、ビニルエーテル基、ビニル基およびアリル基から選択される少なくとも1個のラジカル重合可能な基を有する。マクロモノマーの二重結合の割合は例えばマクロモノマー(100%純粋)100gにつき0.1〜1.0モル、有利に0.2〜0.8モルの範囲である。従ってマクロモノマーは例えば分子1個当たり1.5〜7.0、特に1.6〜5.0の官能価を有する。マクロモノマーが1個より多い官能基を有する場合は、これらの基は同じかまたは異なっていてもよい。マクロモノマーの分子量Mは例えば300〜30000g/モル、有利に500〜20000g/モルの範囲である。
【0016】
多官能性マクロモノマーは、例えばエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシド2〜30モルを含有することができる少なくとも二官能性ポリオールを、ポリカルボン酸および/またはカルボン酸無水物と、および/または二官能性アルコール(C〜C18)および/または分子中に少なくとも2個のOH基を有するアルカノールアミンを、エチレン系不飽和カルボン酸と縮合することにより得られる。
【0017】
エチレン系不飽和C〜Cカルボン酸の例は例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、エチルアクリル酸およびビニル酢酸、有利にアクリル酸およびメタクリル酸である。有利なポリカルボン酸は不飽和C〜C36−ジカルボン酸、例えば琥珀酸、グルタル酸、セバシン酸、アジピン酸、o−フタル酸、これらの異性体および水素化生成物、およびエステル化可能な誘導体、または前記酸のジアルキルエステル、またはトリメリト酸である。有利なカルボン酸無水物は無水マレイン酸、無水フタル酸、無水琥珀酸および無水イタコン酸である。反応生成物中の過剰の酸は中和および水で洗い落とすことにより除去するかまたは触媒作用により(第三級アミン、アンモニウム塩)エポキシドとの反応によりエポキシアクリレートを形成し、反応混合物に残留する。
【0018】
反応生成物を引き続きポリイソシアネート、例えば2,4−トルエンジイソシアネートと連鎖延長剤、例えばヒドロキシエチルアクリレートの存在または不在で反応させ、アクリレート基およびポリウレタン基を有するマクロモノマーを形成することができる。
【0019】
有利なジオールはエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、およびエチレンオキシド単位および/またはプロピレンオキシド単位を有するポリグリコールである。ポリオールの例はトリメチロールプロパン、グリセリンまたはペンタエリスリトールである。ジオールおよびポリオールは場合によりエチレンオキシドまたはプロピレンオキシドと反応させ、ポリエーテルを形成する。ジオールまたはポリオールのOH基1個当たり30モルまでのエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシド、一般に2〜30モル、有利に2〜10モルのエチレンオキシドまたはプロピレンオキシドを使用する。OH基含有ポリエステルはポリカプロラクトンジオールおよびトリオールを含む。
【0020】
ヒドロキシル基含有ポリエステルとアクリル酸および/またはメタクリル酸のエステル化はこれらの酸を、OH基含有ポリエステルを製造する出発物質、例えばジカルボン酸または無水物およびジオールもしくはポリオールと一緒に導入し、これらの出発物質をアクリル酸および/またはメタクリル酸と一緒に1つの工程で縮合することにより実施できる。
【0021】
OH基含有化合物のエステル化に使用されるアクリル酸および/またはメタクリル酸の量は有利にヒドロキシ化合物のヒドロキシル基1当量当たり0.1〜1.5当量、特に0.5〜1.4当量、きわめて有利に0.7〜1.3当量のアクリル酸および/またはメタクリル酸の範囲である。
【0022】
アクリル酸および/またはメタクリル酸とヒドロキシル基含有化合物の反応は例えば酸性エステル化触媒、例えば硫酸またはp−トルエンスルホン酸の存在で行う。エステル化は水と共沸混合物を形成する炭化水素の存在で行うことができる。エステル化の進行中に形成される水は引き続き有利に共沸蒸留により反応混合物から除去する。エステル化が終了後に溶剤を反応混合物から蒸留分離し、蒸留を有利に減圧下で実施し、反応生成物に対する熱の損失を回避する。
【0023】
有利な多官能性マクロモノマーは、例えば
a)二価から六価までのオキシアルキル化アルコール0.5〜2.0当量と
b)二塩基性から四塩基性までのC〜C16−カルボン酸および/またはその無水物0〜1当量、および
c)アクリル酸および/またはメタクリル酸0.1〜1.5当量
d)ジオール0〜1当量
を同時反応させ、こうして得られた反応生成物を引き続き少なくとも1個のエポキシ化合物と反応させることにより得られる。
【0024】
有用なエポキシ化合物は分子中に少なくとも1個、有利に少なくとも2個または3個のエポキシ基を有し、例えばエポキシ化オレフィン、飽和または不飽和カルボン酸のグリシジルエステルまたは脂肪族または芳香族ポリオールのグリシジルエーテルである。これらの生成物は市販されており、例えばビスフェノールAタイプのポリグリシジル化合物および多官能性アルコール、例えばブタンジオール、グリセリンまたはペンタエリスリトールのグリシジルエーテル、例えばエピコート(Epikote)(登録商標)(エポキシ価約0.67)、エピコート828(エポキシ価約0.53)およびエピコート162(エポキシ価約0.61)である。
【0025】
エポキシ化合物を第1工程の反応生成物に、第1工程の反応生成物に対して一般に1〜20質量%、有利に5〜15質量%の範囲で添加する。第1工程の反応生成物になお存在する当量の酸に対して等モル量のエポキシ化合物を使用することが特に有利である。反応の第2工程のエポキシ化合物との反応は、過剰の出発酸または未反応の酸、特にアクリル酸および/またはメタクリル酸、そのほかに例えば混合物中に出発物質として存在するジカルボン酸またはエポキシエステルとして遊離酸基を有する生じるジカルボン酸のモノエステルを結合するために使用する。エポキシ化合物との反応温度は有利に90〜130℃、有利に100〜110℃である。反応は反応混合物が10mgKOH/g未満、特に5mgKOH/g未満の酸価を有するまで継続する。エポキシ化合物と第1工程の反応生成物の酸基との反応は技術水準で有利に第四級アンモニウム化合物またはホスホニウム化合物の存在で行う、欧州特許第0686621号参照。これらの化合物はエポキシ化合物に対して例えば0.01〜5質量%、特に0.1〜2質量%の量で使用する。
【0026】
他の多官能性マクロモノマーは例えば前記多官能性マクロモノマーをエポキシ化合物と反応後、更にポリイソシアネート、例えば2,4−トルエンジイソシアネートと連鎖延長剤、例えばヒドロキシエチルアクリレートの存在または不在で反応させ、アクリレート基およびポリウレタン基を有するマクロモノマーを形成することにより製造できる。
【0027】
多官能性基を有するマクロモノマーは多くはモノマーの早すぎる重合を避けるために、適当な抑制剤の存在で製造する。本発明により抑制剤を熱重合開始剤と混合し、熱重合開始剤は、例えば40℃より高い温度、有利に50℃より高い温度に加熱した場合にラジカルに分解することによりエチレン系不飽和化合物の重合を開始する。本発明による多官能性マクロモノマーと重合開始剤の混合物は0.05〜15質量%、有利に0.5〜10質量%の少なくとも1種の熱重合開始剤および99.95〜85質量%、有利に99.5〜90質量%の多官能性マクロモノマーからなる(すべての%は固形物に関する)。混合物を加熱した場合にラジカルに分解することによりマクロモノマーの重合を開始する少なくとも1種の重合開始剤1.0〜5.0質量%を有する混合物が特に有利である。
【0028】
有用な重合開始剤は例えばペルオキシド、ヒドロペルオキシド、ペルオキシ二硫酸塩、過炭酸塩、ペルオキシエステル、過酸価水素およびアゾ化合物を含む。水に溶解するまたは溶解しない開始剤の例は過酸化水素、過酸化ジベンゾイル、ジシクロヘキシルペルオキシ二炭酸塩、ジラウロイルペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、アセチルアセトンペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、t−ブチルペルネオデカノエート、t−アミルペルピバレート、t−ブチルペルピバレート、t−ブチルペルネオヘキサノエート、t−ブチル−ペル−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルベンゾエート、ペルオキシ二硫酸リチウム、ペルオキシ二硫酸ナトリウム、ペルオキシ二硫酸カリウム、ペルオキシ二硫酸アンモニウム、アゾジイソブチロニトリル、2,2´−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリルおよび4,4−アゾビス(4−シアノ吉草酸)である。
【0029】
開始剤は単独でまたは互いの混合物の形で、例えば過酸化水素とペルオキシ二硫酸ナトリウムの混合物で使用できる。水性媒体中の重合は有利に水溶性開始剤を使用して実施する。
【0030】
同様に公知のレドックス開始剤系を重合開始剤として使用できる。これらのレドックス開始剤系は少なくとも1個のペルオキシド含有化合物をレドックス同時開始剤、例えば還元性硫黄化合物、例えばアルカリ金属およびアンモニウム化合物を有する重亜硫酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、亜ジチオン酸塩、および四チオン酸塩と組み合わせて含有する。例えばペルオキシ二硫酸塩とアルカリ金属またはアンモニウム重亜硫酸塩の組み合わせ、例えばペルオキシ二硫酸アンモニウムとジ亜硫酸アンモニウムを使用できる。ペルオキシド含有化合物とレドックス同時開始剤の比は例えば30:1〜0.05:1の範囲である。
【0031】
開始剤またはレドックス開始剤系は遷移金属触媒、例えば鉄、コバルト、ニッケル、銅、バナジウムおよびマンガンの塩と組み合わせて使用できる。適当な塩の例は硫酸鉄(II)、塩化コバルト(II)、硫酸ニッケル(II)、塩化銅(II)である、モノマーに対して還元性遷移金属塩を0.1ppm〜1000ppmの濃度で使用する。例えば過酸化水素と鉄(II)塩の組み合わせ、たとえば過酸化水素0.5〜30%とモール塩0.1〜500ppmを使用できる。
【0032】
同様に前記開始剤をレドックス同時開始剤および/または遷移金属触媒、例えばベンゾイン、ジメチルアニリン、アスコルビン酸および溶剤に溶解する重金属、例えば銅、コバルト、鉄、マンガン、ニッケルおよびクロムの錯体と組み合わせて使用して有機溶剤中の重合を行うことができる。ここで一般に使用されるレドックス同時開始剤または遷移金属触媒の量は一般に使用されるモノマーの量に対して約0.1〜1000ppmの範囲である。
【0033】
多官能性マクロモノマーおよび熱重合開始剤のホルムアルデヒド不含混合物は場合により更に少なくとも1個の一般的な添加剤、例えば乳化剤、顔料、充填剤、硬化剤、移動防止剤、可塑剤、殺生物剤、染料、酸化防止剤およびワックスを一般的な量で含有することができる。一般的な添加剤の量は例えば0.5〜20質量%の範囲である。
【0034】
本発明は更に支持体の結合剤としての、少なくとも1個のラジカル重合可能な基を有する多官能性マクロモノマーと重合開始剤の熱重合可能な混合物の使用に関する。適当な繊維支持体の例はガラス繊維、ミネラルウール、天然繊維、例えば綿、木材およびサイザルからなる繊維、合成繊維、例えばポリエステル、ポリアクリロニトリルおよびナイロンからなる繊維である。熱重合可能な混合物は粒状物の支持体、例えば中子砂の結合に有用である。これにより成形法に応じて種々の成形品、例えばバット、マット、スラブ、または種々の成形品を生じる。支持体は例えば混合物の溶液または分散液を噴霧することにより、または支持体を混合物の溶液または分散液に浸漬し、過剰の結合剤溶液または結合剤分散液を除去することにより熱重合可能な混合物で含浸される。被覆されたまたは含浸された支持体を本発明の混合物が重合する温度に加熱することにより団結する。この温度は混合物に存在する重合開始剤の個々の分解特性に依存する。本発明の混合物で被覆または含浸された支持体は多くの場合に160〜250℃、有利に180〜220℃の範囲の温度に加熱する。加熱時間は種々の要因、例えば層厚、マクロモノマーの特性および重合開始剤の分解温度に依存する。加熱時間は例えば2〜90分、有利に2〜30分の範囲である。
【0035】
本発明の混合物を結合剤として使用する場合に、支持体の質量に対して例えば2〜35質量%、有利に5〜25質量%の量で使用する。得られた成形品は湿った気候でも、高温でも高い機械的強度および寸法安定性を有する。
【0036】
結合したバットは例えば建築構造の分野で連続シートまたはパネルの形の断熱剤として使用する。本発明の結合剤は結合した繊維ウェブをベースとするシチュー鍋クリーナーおよびたわしの製造に有用である。
【0037】
実施例の%は他に記載されない限り質量%である。
【0038】
例1
水390gおよびポリマー分散助剤(N−ビニルピロリドン、酢酸ビニルおよびベルサチック酸ビニル単位からなるコポリマーの30%水溶液、ドイツ標準規格DINによりフォードカップ5で測定して、約80秒の流出時間を有する)180gを、攪拌機を備えた容器に入れ、欧州特許第0279303号の例1に記載されるように製造したポリエステルアクリレート(OH価630mgKOH/gを有するエトキシル化トリメチロールプロパン、無水マレイン酸およびアクリル酸の縮合および引き続くビスフェノールAのジグリシジルエーテルとの反応により製造したポリエステルアクリレート)450gと一緒に攪拌することにより混合した。
【0039】
これにより粘度250mPasを有する水性分散液1000gが得られた。分散液を2%(固体に関する)t−ブチルペルベンゾエートと混合した。
【0040】
例2
OH価480mgKOH/gを有するプロポキシル化トリメチロールプロパン/エトキシル化トリメチロールプロパンの3:1(モル比)の混合物1170g、アクリル酸900gおよび濃硫酸9g、シクロヘキサン560gを、攪拌器を備えたDean and Stark装置中でt−ブチル−p−クレゾール1.9g、トリフェニルホスファイト1.9g、次亜燐酸(水中50%)1.9g、4−メトキシフェノール5.6gおよびフェノチアジン0.2gの存在で加熱した。引き続き100℃、減圧(20ミリバール)下で溶剤を蒸留分離した。蒸留後、樹脂の酸価は約1mgKOH/gであった。樹脂はDIN53019による粘度90mPasを有した。こうして得られたポリエーテルアクリレートを引き続き2%t−ブチルペルベンゾエートと混合した。
【0041】
例3
OH価620mgKOH/gを有するエトキシル化ペンタエリスリトール470g、アクリル酸440gおよび濃硫酸2.5g、メチルシクロヘキサン300gを、攪拌器を備えたDean and Stark装置中で、t−ブチル−p−クレゾール1g、トリフェニルホスファイト1g、次亜燐酸(水中50%)1g、4−メトキシフェノール3gおよびフェノチアジン0.1gの存在で加熱した。反応時間8時間後、水84gを収集し、75%水性テトラ(n−ブチル)アンモニウムブロミド溶液14gを添加した。引き続き溶剤を112℃、減圧(20ミリバール)下で蒸留分離した。蒸留後の酸価は80mgKOH/gであった。過剰のアクリル酸を、ビスフェノールAジグリシジルエーテル200g、エポキシ含量約5.4モル/kgと、105〜110℃で6時間反応させた。得られたポリエーテルアクリレートの酸価は5mgKOH/g未満であった。樹脂のDIN53019による粘度は1.0Pasであった。樹脂を2%t−ブチルペルベンゾエートと混合した。
【0042】
例4
約15部のエトキシル化トリメチロールプロパン1039.0gを、攪拌器を備えたDean and Stark装置中でアクリル酸304.0gおよび硫酸(96%)6.1g、メチルシクロヘキサン450.0gと一緒に開始温度98〜105℃でエステル化した。t−ブチル−p−クレゾール1.2g、トリフェニルホスファイト1.2g、次亜燐酸(水中50%)1.2g、4−メトキシフェノール4.0gおよびフェノチアジン0.037gで安定化した。反応時間10時間後、75%水性テトラ(n−ブチル)アンモニウムブロミド溶液40.7gを添加し、溶剤を112℃、減圧(20ミリバール)下で蒸留分離した。蒸留後の酸価は25mgKOH/gであった。OH価は40mgKOH/gであった。過剰のアクリル酸をビスフェノールAジグリシジルエーテル106g、エポキシ含量約5.4モル/kgと、105〜110℃で2時間反応させた。得られたアクリレートの酸価は2.0mgKOH/gであった。OH価は50mgKOH/gであった。
【0043】
性能試験
結合剤形成
SilquestA−1100(γ−アミノプロピルトリエトキシシラン)、それぞれ1%(固形物に対して)
ベースウェブ
ガラスウェブ、約50g/m
ガラスウェブと例1〜4に記載されたように製造した、多官能性マクロモノマーおよびペルオキシドの混合物の団結
(a)水性結合剤との団結
長さ32cmおよび幅28cmのガラスウェブを縦方向に、PESエンドレススクリーンベルトにより、最初にそれぞれ例1〜4に記載されるように製造した(マクロモノマーおよびペルオキシドの)混合物を含有する20%水性結合剤液を通過させ、引き続き吸引装置上を通過させた。ベルト速度は0.6m/分であった。吸引強度の調節により湿潤添加を調節した。多官能性マクロモノマーおよびペルオキシドの混合物の20%液体濃度からの100%湿潤添加は乾燥添加20%±2%を生じた。
(b)アセトン溶解結合剤
ガラスウェブをそれぞれアセトン中の多官能性マクロモノマーおよびペルオキシドの例1〜4に記載されたように製造した混合物の結合剤の5%溶液に入れた。溶液を除去後、含浸した材料を60℃で5分前乾燥した。結合剤の量は水性含浸に関して20%±2%に調節した。
【0044】
含浸したウェブをPESネット支持体上でマチス乾燥機中で(熱い空気を最大に調節した)200℃で3分間硬化した。
【0045】
試験体の製造
それぞれ含浸したウェブから破断強度を検査するために5個の試験体および縦方向の曲げ強さを検査するために6個の試験体を切断した。ウェブの大きさは以下のとおりである。
【0046】
23℃で更に処理しない(乾式)破断強度に関して240×50mm
80℃で熱水中15分保存後(湿式)の破断強度に関して240×50mm
180℃(熱時)での破断強度に関して200×50mm
曲げ強さに関して70×30mm
試験
(a)破断強度
平均試験結果をN/5cmで示す。クランプ長さは乾式および湿式破断強度試験に関して200mmであり、熱時破断強度試験に関して140mmであった。延伸速度は25mm/分に調節した。熱時測定のために試料を試料室中で1分間で180℃に加熱した。破断強度は180℃で更に1分後に測定した。破断強度は60g/mに質量を補正した
(計算式;Fmax・60[g/m])/実際の質量[g/m]。
この値を表に示す。
(b)曲げ強さ
試験ストリップをそれぞれクランプに固定し、角度20°でホルダーにより10mmの距離で曲げた。試験ストリップの高さは30mmであった。測定した力は曲げ強さを示す。6個の試料全部を、それぞれ表側と裏側から測定し、平均値を測定した。得られた結果を表に示す。
【0047】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1個のラジカル重合可能な基を有する多官能性マクロモノマーおよび重合開始剤からなる熱重合可能な混合物。
【請求項2】
マクロモノマーがラジカル重合可能な基としてアクリレート基、メタクリレート基、マレエート基、ビニルエーテル基、ビニル基および/またはアリル基を含有する請求項1記載の熱重合可能な混合物。
【請求項3】
多官能性マクロモノマーの分子量Mが300〜30000である請求項1または2記載の熱重合可能な混合物。
【請求項4】
多官能性マクロモノマーの分子量Mが500〜20000である請求項1から3までのいずれか1項記載の熱重合可能な混合物。
【請求項5】
多官能性マクロモノマーが、
a)二価から六価までのオキシアルキル化アルコール0.5〜2.0当量と
b)二塩基性から四塩基性までのC〜C16−カルボン酸および/またはその無水物0〜1当量、および
c)アクリル酸および/またはメタクリル酸0.1〜1.5当量
d)ジオール0〜1当量
を同時反応させ、こうして得られた反応生成物を引き続き少なくとも1個のエポキシ化合物と反応させることにより得られる請求項1から4までのいずれか1項記載の熱重合可能な混合物。
【請求項6】
多官能性マクロモノマーがエポキシ化合物と反応した反応生成物を引き続きポリイソシアネートと連鎖延長剤の存在でまたは不在で反応させ、アクリレート基およびポリウレタン基を有するマクロモノマーを形成することにより得られる請求項5記載の熱重合可能な混合物。
【請求項7】
重合開始剤としてペルオキシド、ヒドロペルオキシド、ペルオキシ二硫酸塩、過炭酸塩、ペルオキシエステル、過酸化水素およびアゾ化合物からなる群からの少なくとも1つの開始剤を含有する請求項1から6までのいずれか1項記載の熱重合可能な混合物。
【請求項8】
それぞれ固形物に対して重合開始剤0.05〜15質量%を含有する請求項1から7までのいずれか1項記載の熱重合可能な混合物。
【請求項9】
少なくとも1個のラジカル重合可能な二重結合を有する多官能性マクロモノマーおよび重合開始剤の熱重合可能な混合物の、支持体の結合剤としての使用。
【請求項10】
熱重合可能な混合物がガラス繊維、ミネラルウール、天然繊維、合成繊維の結合剤としてのおよび中子砂の結合のために使用される請求項9記載の使用。

【公表番号】特表2007−518858(P2007−518858A)
【公表日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−549980(P2006−549980)
【出願日】平成17年1月14日(2005.1.14)
【国際出願番号】PCT/EP2005/000311
【国際公開番号】WO2005/070982
【国際公開日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【氏名又は名称原語表記】BASF Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】