説明

多室形空気調和装置

【課題】複数の室外機のうち、一部の室外機に備えた圧縮機のみを運転中、室外熱交換器の機能を凝縮器から蒸発器へ変更したとき、運転中の圧縮機を備えた室外機におけるアキュムレータのオーバーフローを防止すること。
【解決手段】圧縮機21a〜21cと室外熱交換器23a〜23cと四方弁22a〜22cとアキュムレータ24a〜24cとを備える3台の室外機2a〜2cと、室内熱交換器81a〜81eを備える5台の室内機8a〜8eと、3台の室外機2a〜2cを制御する制御手段とを設けた多室形空気調和装置1であって、制御手段は、3台の室外機2a〜2cのうち、停止している圧縮機を備えた室外機が存在するとき、四方弁22a〜22cの切換によって、室外熱交換器23a〜23cの機能を凝縮器から蒸発器へと変更した場合に、停止していた圧縮機を運転させたのち、運転していた圧縮機を停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の室外機と複数の室内機とを備える多室形空気調和装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、圧縮機と室外熱交換器と流路切換弁とアキュムレータとを備える複数の室外機と、室内熱交換器を備える複数の室内機とを、冷媒配管で接続して構成される多室形空気調和装置が知られている。この種の多室形空気調和装置の一例として、運転を行っている室内機全体の要求能力に応じて室内機の運転台数を変更する多室形空気調和装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような多室形空気調和装置では、各々の室内機の運転モードを冷房運転から暖房運転に切換えるときに室外熱交換器の機能を凝縮器から蒸発器へ変更するため、または、各々の室内機の運転モードを暖房運転から冷房運転に切換えるときに室外熱交換器の機能を蒸発器から凝縮器へ変更するため、室外機の流路切換弁により冷媒の流路の方向を切換える。
【0004】
このような多室形空気調和装置において、複数の室外機のうち、一部の室外機に備えた圧縮機のみを運転している場合(例えば、運転している室内機全体の要求能力が小さく、複数の室外機のうち、1台の室外機に備えた圧縮機のみを運転している場合)における運転中の圧縮機を備えた室外機と運転中の圧縮機が存在しない室外機との間の接続状態を説明する。室内機の運転モードの切換えに伴い、運転中の圧縮機を備えた室外機における室外熱交換器の機能を凝縮器から蒸発器へ変更するために室外機の流路切換弁を切換えたときの、運転中の圧縮機を備えた室外機と運転中の圧縮機が存在しない室外機との間の接続状態は次のようになる。
【0005】
運転中の圧縮機を備えた室外機の流路切換弁を切換えたとき、運転中の圧縮機が存在しない室外機の流路切換弁も同時に切換えられるため、運転中の圧縮機が存在しない室外機の室外熱交換器が、流路切換弁、冷媒配管を通じて運転中の圧縮機を備えた室外機のアキュムレータに連通する。このため、このアキュムレータに連通する圧縮機の冷媒吸入により、運転中の圧縮機が存在しない室外機の室外熱交換器にとどまっている冷媒が、運転中の圧縮機を備えた室外機の室外熱交換器にとどまっている冷媒とともに、運転中の圧縮機を備えた室外機のアキュムレータに流入する。このような運転中の圧縮機を備えた室外機のアキュムレータに冷媒が流入する現象が、室外機の流路切換弁の切換によって室外熱交換器の機能を凝縮器から蒸発器へ変更する毎に、同じ室外機で繰り返されると、同じアキュムレータに冷媒が集中してオーバーフローを起こすおそれがある。運転中の圧縮機を備えた室外機のアキュムレータがオーバーフローを起こすと、このアキュムレータに連通する圧縮機に液バックが発生するおそれがあった。なお、上述した運転中の圧縮機を備えた室外機の室外熱交換器にとどまっている冷媒とは、この室外熱交換器の機能を凝縮器から蒸発器として機能させるように変更したときに蒸発しきれずにとどまっている冷媒(以下の説明では、室外熱交換器にとどまっている冷媒と表記する。)を示す。また、上述した運転中の圧縮機が存在しない室外機の室外熱交換器にとどまっている冷媒とは、この室外熱交換器を凝縮器として機能させているときに圧縮機を停止した場合にとどまっている冷媒(以下の説明では、室外熱交換器にとどまっている冷媒と表記する。)を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2−126055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記問題点に鑑み、複数の室外機のうち、一部の室外機に備えた圧縮機のみを運転中、室外熱交換器の機能を凝縮器から蒸発器へ変更したとき、運転中の圧縮機を備えた室外機におけるアキュムレータのオーバーフローを防止することができる多室形空気調和装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の多室形空気調和装置は、圧縮機と室外熱交換器と流路切換弁とアキュムレータとを備える複数の室外機と、室内熱交換器を備える複数の室内機とを設け、複数の室外機と複数の室内機とを冷媒配管で接続して構成されている。この多室形空気調和装置は、複数の室外機のうち、運転中の圧縮機が存在しない室外機が存在するとき、室外機の流路切換弁の切換によって、室外熱交換器の機能を凝縮器から蒸発器へと変更した場合に、運転する圧縮機を前記運転中の圧縮機が存在しない室外機に備えられた圧縮機に変更する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の多室形空気調和装置によれば、複数の室外機のうち、運転中の圧縮機が存在しない室外機が存在するとき、室外機の流路切換弁の切換によって、室外熱交換器の機能を凝縮器から蒸発器へと変更した場合に、運転する圧縮機を前記運転中の圧縮機が存在しない室外機に備えられた圧縮機に変更することで、各室外機のアキュムレータに冷媒を分散させることができる。この結果、運転中の圧縮機が存在しない室外機の室外熱交換器および運転中の圧縮機を備えた室外機の室外熱交換器にとどまっている冷媒が、運転中の圧縮機を備えた室外機のアキュムレータへ集中するのを抑えることができる。これにより、運転中の圧縮機を備えた室外機におけるアキュムレータのオーバーフローを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明による多室形空気調和装置の冷媒回路を示す説明図である。
【図2】本発明による室外機の運転制御を示すタイミングチャートである。
【図3】本発明による室外機の運転制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づき詳細に説明する。本発明の実施形態として、3台の室外機と5台の室内機とが冷媒配管で接続され、室内機毎に冷房運転と暖房運転とを選択して運転できる、所謂冷暖房フリーの運転が行える多室形空気調和装置を例に挙げて説明する。
【0012】
図1に示すように、本実施形態における多室形空気調和装置1は、3台の室外機2a〜2cと、5台の室内機8a〜8eと、5台の分流ユニット6a〜6eと、高圧ガス管30と、低圧ガス管31と、液管32と、高圧ガス分岐器70と、低圧ガス分岐器71と、液分岐器73とを備えている。室外機2a〜2cがそれぞれ、高圧ガス分岐器70および高圧ガス管30と、低圧ガス分岐器71および低圧ガス管31とによって分流ユニット6a〜6eに接続され、液分岐器72および液管32によって室内機8a〜8eに接続されることで、多室形空気調和装置1の冷媒回路が構成される。
【0013】
この多室形空気調和装置1では、室外機2a〜2cや分流ユニット6a〜6eに備えられた各種弁類の開閉状態に応じて、様々な運転動作が可能である。図1では、多室形空気調和装置1の冷媒回路について、これら運転動作の中から、全ての室内機8a〜8eで冷房運転を行っている場合を代表例に挙げて説明する。
【0014】
図1に示すように、3台の室外機2a〜2cはそれぞれ、主として、圧縮機21a〜21cと、四方弁22a〜22cと、室外熱交換器23a〜23cと、アキュムレータ24a〜24cと、室外ファン26a〜26cと、室外膨張弁27a〜27cと、閉鎖弁40a〜40c、閉鎖弁41a〜41cおよび閉鎖弁42a〜42cとを備えている。なお、室外機2a〜2cの構成は全て同じであるため、室外機2aのみの構成について説明を行い、その他の室外機2b、2cの構成については説明を省略する。
【0015】
圧縮機21aは、インバータ回路により回転数が制御される図示しないモータによって駆動され運転容量を可変できる能力可変型圧縮機である。図1に示すように、圧縮機21aの冷媒吐出口は、室外機高圧ガス管33aで閉鎖弁40aに接続されており、室外機高圧ガス管33aから接続点Pで分岐した冷媒配管が四方弁22aに接続されている。また、圧縮機21aの冷媒吸入口は、冷媒配管でアキュムレータ24aの流出側に接続されている。
【0016】
四方弁22aは、冷媒の流れる方向を切換えるための流路切換弁であり、4つのポートa〜dを備えている。四方弁22aでは、ポートaに室外機高圧ガス管33aから接続点Pで分岐した冷媒配管が接続されている。また、四方弁22aでは、ポートbに冷媒配管である接続管36aが接続され、ポートcに冷媒配管である接続管37aが接続されている。なお、ポートdは封止されている。
【0017】
室外熱交換器23aは、アルミ材で形成された多数のフィンと、内部に冷媒を流通させる複数の銅管とから構成されている。室外熱交換器23aの一端は接続管36aを介して四方弁22aのポートbに、室外熱交換器23aの他端は室外機液管35aを介して閉鎖弁42aに、それぞれ接続されている。
【0018】
アキュムレータ24aは、流入した冷媒をガス冷媒と液冷媒とに分離し、ガス冷媒のみを圧縮機21aに吸入させる。上述したように、アキュムレータ24aの流出側は圧縮機21aの冷媒吸入口に冷媒配管で接続されており、アキュムレータ24aの流入側は四方弁22aのポートcに、接続管37aで接続されている。なお、接続管37aには接続点Qで室外機低圧ガス管34aが接続されている。
【0019】
室外ファン26aは、図示しないファンモータによって回転することで室外機2aの内部に外気を取り込み、室外熱交換器23aにおいて外気と冷媒とを熱交換させた後、室外機2aの外部へ排出する。
【0020】
室外膨張弁27aは、室外機液管35aの室外熱交換器23aと閉鎖弁42aとの間に介設されている。室外膨張弁27aは、室外熱交換器23aが凝縮器として機能する場合は、その開度が全開状態とされるか、後述する高圧センサ50aで検出された冷媒圧力と中間圧センサ52aで検出された液圧との差に応じて調整される。また、室外熱交換器23aが蒸発器として機能する場合は、その開度が室外熱交換器23aにおける冷媒の過熱度(後述する低圧センサ51aで検出した圧縮機21aの吸入圧力から算出した低圧飽和温度と、熱交温度センサ56aで検出した冷媒出口温度との差)に応じて調整される。
【0021】
室外機2aには各種のセンサが設けられている。図1に示すように、室外機高圧ガス管33aには、室外機高圧ガス管33aを流れる冷媒の圧力を検出する高圧センサ50aと、圧縮機21aから吐出される冷媒の温度を検出する吐出温度センサ53aとが設けられている。接続点Qと閉鎖弁41aとの間の室外機低圧ガス管34aには、圧縮機21aに吸入される冷媒の圧力を検出する低圧センサ51aが設けられ、圧縮機21aの冷媒吸入口とアキュムレータ24aの流出側とを接続する冷媒配管には、圧縮機21aに吸入される冷媒の温度を検出する吸入温度センサ54aが設けられている。室外膨張弁27aと閉鎖弁42aとの間の室外機液管35aには、室外機液管35aを流れる冷媒の圧力を検出する中間圧センサ52aと、室外機液管35aを流れる冷媒の温度を検出する冷媒温度センサ55aとが設けられている。
【0022】
接続管36aには、室外熱交換器23aから流出あるいは室外熱交換器23aへ流入する冷媒の温度を検出する熱交温度センサ56aが設けられている。また、室外機2aの図示しない吸込口付近には、室外機2a内に流入する外気の温度を検出する外気温度センサ57aが備えられている。
【0023】
なお、室外機2b、2cについては、上述の各構成の記号末尾をそれぞれaからbあるいはcに変更したものを図1に示している。但し、各四方弁22b、22cのポートおよび冷媒配管の接続点については記号を変えており、四方弁22aのポートa〜dに対応して、四方弁22bではポートe〜h、四方弁22cではポートj〜nとしている。また、接続点P、Qに対応して、室外機2bでは接続点S、T、室外機2cでは接続点V、Wとしている。
【0024】
図1に示すように、多室形空気調和装置1が冷房運転を行っている際の冷媒回路では、各々の室外機2a〜2cに備えられた室外熱交換器23a〜23cがそれぞれ凝縮器として機能するように、各々の四方弁22a〜22cが切換えられる。四方弁22aではポートaとポートbおよびポートcとポートdとが各々連通するように、四方弁22bではポートeとポートfおよびポートgとポートhとが各々連通するように、四方弁22cではポートjとポートkおよびポートmとポートnとが各々連通するようにそれぞれ切換えられる。図1では、四方弁22a〜22cの連通しているポート間は実線で示し、連通していないポート間は破線で示している。多室形空気調和装置1が冷房主体運転を行っている際の冷媒回路についても同様に、各々の室外機2a〜2cに備えられた室外熱交換器23a〜23cがそれぞれ凝縮器として機能するように、各々の四方弁22a〜22cが切換えられる。なお、冷房主体運転とは、冷房運転を行っている室内機全体の要求能力が暖房運転を行っている室内機全体の要求能力よりも大きくなる運転である。
【0025】
なお、多室形空気調和装置1が暖房運転を行っている際の冷媒回路(図示を省略)では、各々の室外機2a〜2cに備えられた室外熱交換器23a〜23cがそれぞれ蒸発器として機能するように、各々の四方弁22a〜22cが切換えられる。四方弁22aではポートaとポートdおよびポートbとポートcとが各々連通するように、四方弁22bではポートeとポートhおよびポートfとポートgとが各々連通するように、四方弁22cではポートjとポートnおよびポートkとポートmとが各々連通するようにそれぞれ切換えられる。また、多室形空気調和装置1が暖房主体運転を行っている際の冷媒回路についても同様に、各々の室外機2a〜2cに備えられた室外熱交換器23a〜23cがそれぞれ蒸発器として機能するように、各々の四方弁22a〜22cが切換えられる。なお、暖房主体運転とは、暖房運転を行っている室内機全体の要求能力が冷房運転を行っている室内機全体の要求能力よりも大きくなる運転である。
【0026】
以上説明してきた構成の他に、図示を省略するが、室外機2aには、室外機2aを構成する各部の動作を制御する室外機制御部が備えられている。この室外機制御部は、室外機2aの制御を行うために設けられたマイクロコンピュータや記憶部、圧縮機21aに搭載されたモータを制御するインバータ回路などを有しており、各種センサで検出した情報に応じて室外機2aを制御し、また、5台の室内機8a〜8eとの間で運転に必要な制御信号のやりとりを行っている。なお、室外機2bおよび2cにも、同様の室外機制御部を備えている。
【0027】
また、室外機2aを親機、室外機2bおよび2cを子機とし、室外機2aの室外機制御部が、室内機8a〜8eの全体の要求能力に応じて、室外機2a〜2cの運転/停止や、室外機2a〜2cに備えた圧縮機の運転台数を決定している。その上で、室外機2aの室外機制御部は、その他の室外機2bおよび2cの室外機制御部に対して、室外機2bおよび2cの運転/停止や、決定した運転台数で圧縮機を運転するように指示を行っている。室外機2aの室外機制御部は、例えば、室内機8a〜8eの全体の要求能力が小さく、1台の圧縮機のみの運転でよい場合には、室外機2a〜2cのいずれかに備える圧縮機を運転するように制御する。
【0028】
5台の室内機8a〜8eはそれぞれ、室内熱交換器81a〜81eと、室内膨張弁82a〜82eと、室内ファン83a〜83eとを備えている。なお、室内機8a〜8eの構成は全て同じであるため、室内機8aのみの構成について説明を行い、その他の室内機8b〜8eの構成については説明を省略する。
【0029】
室内熱交換器81aは、アルミ材で形成された多数のフィンと、内部に冷媒を流通させる複数の銅管とから構成されている。室内熱交換器81aの一端が室内膨張弁82aを介して液管32に、室内熱交換器81aの他端が後述する分流ユニット6aに、それぞれ接続されている。室内熱交換器81aは、室内機8aが冷房運転を行う場合は蒸発器として機能し、室内機8aが暖房運転を行う場合は凝縮器として機能する。
【0030】
室内膨張弁82aは、一端が室内熱交換器81aに接続され、他端が液管32に接続されている。室内膨張弁82aは、室内熱交換器81aが蒸発器として機能する場合は、後述する冷媒温度センサ84aで検出された冷媒の温度と、後述する冷媒温度センサ85aで検出された冷媒の温度との差が、所定の温度差になるように開度が調整される。また、室内膨張弁82aは、室内熱交換器81aが凝縮器として機能する場合は、後述する冷媒温度センサ85aで検出された冷媒の温度と、高圧センサ50aで検出された冷媒圧力から算出した高圧飽和温度との差が、所定の温度差になるように開度が調整される。
【0031】
室内ファン83aは、図示しないファンモータによって回転することで、室内機8aの内部に室内空気を取り込み、室内熱交換器81aにおいて冷媒と室内空気とを熱交換させた後、室内へ供給する。
【0032】
室内機8aには各種のセンサが設けられている。室内熱交換器81aの室内膨張弁82a側の冷媒配管には冷媒の温度を検出する冷媒温度センサ84aが、また、室内熱交換器81aの分流ユニット6a側の冷媒配管には冷媒の温度を検出する冷媒温度センサ85aが、それぞれ設けられている。また、室内機8aの図示しない室内空気の吸込口付近には、室内機8a内に流入する室内空気の温度を検出する室温センサ86aが設けられている。
【0033】
以上説明してきた構成の他に、図示を省略するが、室内機8aには、室内機8aを構成する各部の動作を制御する室内機制御部が備えられている。この室内機制御部は、室内機8aの制御を行うために設けられたマイクロコンピュータや記憶部などを有している。室内機制御部は、図示しないリモートコントローラから送信された制御情報や、各種センサで検出した情報に応じて、室内機8aと室内機8aに対応する分流ユニット6aとを制御し、また、室外機2a〜2cとの間で運転に必要な制御信号のやりとりを行っている。なお、室内機8b〜8eにも、同様の室内機制御部を備えている。
【0034】
多室形空気調和装置1には、5台の室内機8a〜8eに対応する5台の分流ユニット6a〜6eが備えられている。分流ユニット6a〜6eはそれぞれ、第1電磁弁61a〜61eと、第2電磁弁62a〜62eと、第1分流管63a〜63eと、第2分流管64a〜64eとを備えている。なお、分流ユニット6a〜6eの構成は全て同じであるため、分流ユニット6aのみの構成について説明を行い、その他の分流ユニット6b〜6eの構成については説明を省略する。
【0035】
第1分流管63aの一端は高圧ガス管30に接続されており、第2分流管64aの一端は低圧ガス管31に接続されている。また、第1分流管63aの他端と第2分流管64aの他端とが相互に接続され、この接続部と室内熱交換器81aとが冷媒配管で接続されている。第1分流管63aには第1電磁弁61aが、また、第2分流管64aには第2電磁弁62aが、それぞれ設けられている。第1電磁弁61aおよび第2電磁弁62aをそれぞれ開閉することによって、分流ユニット6aに対応する室内機8aの室内熱交換器81aが第1分流管63aを介して高圧ガス管30側に、または、第2分流管64aを介して低圧ガス管31側に接続されるように冷媒の流路が切換えられる。
【0036】
次に、図1を用いて、室外機2a〜2c、室内機8a〜8eおよび分流ユニット6a〜6eと、高圧ガス管30、低圧ガス管31および液管32との接続状態について説明する。室外機2a〜2cの閉鎖弁40a〜40cには、高圧ガス分岐管30a〜30cの一端が接続され、高圧ガス分岐管30a〜30cの他端は高圧ガス分岐器70に接続されている。この高圧ガス分岐器70に高圧ガス管30の一端が接続され、高圧ガス管30の他端は分岐して分流ユニット6a〜6eの第1分流管63a〜63eに接続される。
【0037】
室外機2a〜2cの閉鎖弁41a〜41cには、低圧ガス分岐管31a〜31cの一端が接続され、低圧ガス分岐管31a〜31cの他端は低圧ガス分岐器71に接続されている。この低圧ガス分岐器71に低圧ガス管31の一端が接続され、低圧ガス管31の他端は分岐して分流ユニット6a〜6eの第2分流管64a〜64eに接続される。
【0038】
室外機2a〜2cの閉鎖弁42a〜42cには、液分岐管32a〜32cの一端が接続され、液分岐管32a〜32cの他端は液分岐器72に接続されている。この液分岐器72に液管32の一端が接続され、液管32の他端は分岐して、室内機8a〜8eの室内膨張弁82a〜82eに接続される。また、室内機8a〜8eの室内熱交換器81a〜81eと、室内機8a〜8eに各々対応する分流ユニット6a〜6eとが冷媒配管で接続される。以上説明した接続状態によって、多室形空気調和装置1の冷媒回路が構成される。
【0039】
次に、図1を用いて、多室形空気調和装置1の運転動作について説明する。なお、図1では、室外機2a〜2cや室内機8a〜8eに備えられた各熱交換器が凝縮器として機能する場合はハッチングを付し、蒸発器として機能する場合は白抜きで図示する。また、分流ユニット6a〜6eにおける第1電磁弁61a〜61eおよび第2電磁弁62a〜62eの開閉状態については、閉じている場合を黒塗りで、開いている場合を白抜きで図示する。また、矢印は冷媒の流れを示している。
【0040】
図1に示すように、全ての室内機8a〜8eが冷房運転を行い、室内機8a〜8eの全体の要求能力が高く、全ての室外機2a〜2cが運転する場合、各々の室外機2a〜2cに備えられた室外熱交換器23a〜23cが凝縮器として機能するように、各々の四方弁22a〜22cが切り換えられる。室内機8a〜8eでは、各々に対応する分流ユニット6a〜6eの第1電磁弁61a〜61eが閉じられて第1分流管63a〜63eが遮断されるとともに、第2電磁弁62a〜62eを開いて第2分流管64a〜64eを連通させる状態とする。これにより、室内機8a〜8eの室内熱交換器81a〜81eは全て蒸発器として機能する。
【0041】
室外機2aにおいて、圧縮機21aから吐出された高圧の冷媒は、接続点Pから四方弁22aを経て室外熱交換器23aに流入し外気と熱交換を行って凝縮する。室外熱交換器23aで凝縮した冷媒は室外機液管35aに流入し、高圧センサ50aから取り込んだ冷媒圧力と、中間圧センサ52aから取り込んだ液圧との差に応じた開度とされた室外膨張弁27aを通過して中間圧の冷媒となり、閉鎖弁42aから液分岐管32aを流れて液分岐器72に流入する。室外機2bおよび室外機2cから流出した中間圧の冷媒についても同様に、各々の閉鎖弁42bおよび42cに接続された液分岐管32bおよび32cを流れてそれぞれ液分岐器72に流入する。
【0042】
各室外機2a〜2cから液分岐器72に流入した中間圧の冷媒は、液管32に流入し分岐されて各々の室内機8a〜8eへ流入する。各室内機8a〜8eへ流入した中間圧の冷媒は、室内膨張弁82a〜82eで減圧された冷媒となり室内熱交換器81a〜81eに流入する。室内熱交換器81a〜81eに流入した冷媒は、室内空気と熱交換を行って蒸発し、これにより室内機8a〜8eが設置された室内の冷房が行われる。ここで、室内膨張弁82a〜82eは、冷媒温度センサ84a〜84eで検出した冷媒温度および冷媒温度センサ85a〜85eで検出した冷媒温度とから算出される、蒸発器である室内熱交換器81a〜81eでの冷媒過熱度に応じて開度が決定されている。
【0043】
室内熱交換器81a〜81eから流出した冷媒は分流ユニット6a〜6eに流入し、開となっている第2電磁弁62a〜62eが備えられた第2分流管64a〜64eを流れて低圧ガス管31に流入する。低圧ガス管31に流入した冷媒は、低圧ガス管31内で合流後低圧ガス分岐器71に流入し、低圧ガス分岐器71から各低圧ガス分岐管31a〜31cに分岐して流れる。
【0044】
低圧ガス分岐管31aから室外機2aの閉鎖弁41aを経て室外機低圧ガス管34aに流入した冷媒は、アキュムレータ24aを介して圧縮機21aに吸入されて再び圧縮される。同様に、低圧ガス分岐管31bおよび31cから室外機2bおよび2cの閉鎖弁41bおよび41cを経て室外機低圧ガス管34bおよび34cに流入した冷媒は、アキュムレータ24bおよび24cを介して圧縮機21bおよび21cに吸入されて再び圧縮される。
【0045】
次に、図2を用いて、本発明にかかる運転制御であって、四方弁22a〜22cの切換に連係して、各室外機2a〜2cに搭載された圧縮機21a〜21cの運転を変更する制御について説明する。本発明の圧縮機21a〜21cの運転を変更する制御は、複数の室外機2a〜2cに備えられた圧縮機21a〜21cのうち、停止している圧縮機が存在するとき、四方弁22a〜22cの切換によって、室外熱交換器23a〜23cの機能を凝縮器から蒸発器へ変更する毎に、停止していた圧縮機を備えた室外機において当該圧縮機を運転させたのち、運転していた圧縮機を備えた室外機において当該圧縮機を停止させることを特徴とする。このような本発明の圧縮機21a〜21cの運転を変更する制御によって、停止していた圧縮機を備える室外機の室外熱交換器にとどまっている冷媒と、運転している圧縮機を備えた室外機の室外機熱交換器にとどまっている冷媒とが、運転している圧縮機の冷媒吸入によって、運転している圧縮機に対応する室外機のアキュムレータに流入してオーバーフローするのを防止する。
【0046】
以下の説明では、室外機2a〜2cのうち、室外機2bおよび2cに備えた圧縮機21bおよび21cが停止し、室外機2aに備えた圧縮機21aのみが運転を行っているとき、四方弁22a〜22cの切換に伴って圧縮機21a〜21cの運転を変更する制御について説明する。四方弁22a〜22cの切換は、一斉に切換られるものとし、室外機2aに備えた圧縮機21aのみが運転を行っているときとは、室内機全体の要求能力が圧縮機1台の運転で足りる程度に小さくなっている状態のときとする。また、多室形空気調和装置1が冷房運転あるいは冷房主体運転を行っている際の冷媒回路における各々の四方弁22a〜22cの切換状態をONとし、多室形空気調和装置1が暖房運転あるいは暖房主体運転を行っている際の冷媒回路における各々の四方弁22a〜22cの切換状態をOFFとして説明する。四方弁22a〜22cの切換状態がONのときとは、四方弁22aではポートaとポートbおよびポートcとポートdとが各々連通し、四方弁22bではポートeとポートfおよびポートgとポートhとが各々連通し、四方弁22cではポートjとポートkおよびポートmとポートnとが各々連通する状態である。四方弁22a〜22cの切換状態がOFFのときとは、四方弁22aではポートaとポートdおよびポートbとポートcとが各々連通し、四方弁22bではポートeとポートhおよびポートfとポートgとが各々連通し、四方弁22cではポートjとポートnおよびポートkとポートmとが各々連通する状態である。なお、説明の便宜上、本実施形態では、多室形空気調和装置1の運転時、四方弁22a〜22cの切換によって室外熱交換器23a〜23cの機能を凝縮器と蒸発器として交互に変更するごとに、圧縮機21a〜21cのうちの1台を運転させる状態について第1運転状態から第6運転状態と称して説明する。四方弁22a〜22cの一斉切換により、室外熱交換器23a〜23cの機能の変更も、一斉に変更されるものとし、室形空気調和装置1の運転中は、第1運転状態の運転状態から始まって、第6運転状態の運転状態で終了し、以降はこれを繰り返すこととする。
【0047】
まず、図2に示す第1運転状態から第6運転状態について説明する。四方弁22a〜22cの切換状態がONであって、室外機2aに備えた圧縮機21aを運転し、室外機2bおよび2cに備えた圧縮機21bおよび21cを停止する状態を第1運転状態とする。四方弁22a〜22cの切換状態がOFFであって、室外機2bに備えた圧縮機21bを運転し、室外機2aおよび2cに備えた圧縮機21aおよび21cを停止する状態を第2運転状態とする。四方弁22a〜22cの切換状態がONであって、室外機2bに備えた圧縮機21bを運転し、室外機2aおよび2cに備えた圧縮機21aおよび21cを停止する状態を第3運転状態とする。四方弁22a〜22cの切換状態がOFFであって、室外機2cに備えた圧縮機21cを運転し、室外機2aおよび2bに備えた圧縮機21aおよび21bを停止する状態を第4運転状態とする。四方弁22a〜22cの切換状態がONであって、室外機2cに備えた圧縮機21cを運転し、室外機2aおよび2bに備えた圧縮機21aおよび21bを停止する状態を第5運転状態とする。四方弁22a〜22cの切換状態がOFFであって、室外機2aに備えた圧縮機21aを運転し、室外機2bおよび2cに備えた圧縮機21bおよび21cを停止する状態を第6運転状態とする。
【0048】
本実施形態における室外機2a〜2cに備えた圧縮機21a〜21cの運転動作では、四方弁22a〜22cの切換によって室外熱交換器の機能を凝縮器から蒸発器、あるいは、蒸発器から凝縮器へ変更するごとに、第1運転状態、第2運転状態、第3運転状態、第4運転状態、第5運転状態、第6運転状態、第1運転状態、・・・の順に運転を繰り返す。第1運転状態から第2運転状態へ、第3運転状態から第4運転状態へ、第5運転状態から第6運転状態へそれぞれ移行する場合は、冷房運転を行っている室内機全体の要求能力が暖房運転を行っている室内機全体の要求能力よりも小さくなり、四方弁22a〜22cの切換によって、室外熱交換器の機能を凝縮器から蒸発器へ変更するときである。また、第2運転状態から第3運転状態へ、第4運転状態から第5運転状態へ、第6運転状態から第1運転状態へそれぞれ移行する場合は、冷房運転を行っている室内機全体の要求能力が暖房運転を行っている室内機全体の要求能力よりも大きくなり、四方弁22a〜22cの切換によって、室外熱交換器の機能を蒸発器から凝縮器へ変更するときである。
【0049】
第1運転状態から第2運転状態へ移行する場合には、四方弁22a〜22cが切換えられると、室外熱交換器23a〜23cの機能は凝縮器から蒸発器に変更され、停止していた圧縮機21bが運転されたのち、運転していた圧縮機21aを停止すると、室外熱交換器23bに冷媒が流れて室外熱交換器23が蒸発器として外気と冷媒との熱交換を行う。第3運転状態から第4運転状態へ移行する場合も上述と同様に、室外熱交換器23cに冷媒が流れて室外熱交換器23cが蒸発器として外気と冷媒との熱交換を行う。第5運転状態から第6運転状態へ移行する場合も上述と同様に、室外熱交換器23aに冷媒が流れて室外熱交換器23aが蒸発器として外気と冷媒との熱交換を行う。第2運転状態から第3運転状態へ移行する場合には、四方弁22a〜22cが切換えられ、それまで運転していた圧縮機21bを継続して運転させるため、それまで蒸発器として機能していた室外熱交換器23bが凝縮器として機能する。第4運転状態から第5運転状態へ移行する場合も上述と同様に、それまで蒸発器として機能していた室外熱交換器23cが凝縮器として機能する。第6運転状態から第1運転状態へ移行する場合も上述と同様に、それまで蒸発器として機能していた室外熱交換器23aが凝縮器として機能する。
【0050】
以上説明してきた第1運転状態から第6運転状態を順次繰り返す中で、四方弁22a〜22cの切換によって室外熱交換器の機能を凝縮器から蒸発器へ変更する毎に、室外機2a〜2cに備えた圧縮機21a〜21cが、圧縮機21a、圧縮機21b、圧縮機21c、圧縮機21a、・・・の順に1台ずつ運転される。このように、圧縮機21a〜21cを順番に運転させることにより、室外熱交換器23a〜23cにとどまっている冷媒が次のような経路で流れる。まず、圧縮機21aを運転し、圧縮機21bおよび21cを停止しているとき、四方弁22a〜22cの切換状態をOFFとすることによって、室外熱交換器の機能を凝縮器から蒸発器へ変更した場合(第1運転状態→第2運転状態)、停止していた圧縮機21bを運転させたのち、運転していた圧縮機21aを停止させる。この圧縮機の運転の変更により、圧縮機21bの冷媒吸入によって、室外熱交換器23aにとどまっている冷媒は四方弁22a、接続点Q、低圧ガス分岐器71を通じて、室外熱交換器23bにとどまっている冷媒は四方弁22b、接続点Tを通じて、室外熱交換器23cにとどまっている冷媒は四方弁22c、接続点W、低圧ガス分岐器71を通じて、それぞれアキュムレータ24bに向けて流れる。このように、室外熱交換器23a〜23cにとどまっている冷媒はアキュムレータ24bに向けて流れ、運転していた圧縮機21aに接続されたアキュムレータ24aには流れない。
【0051】
続いて、圧縮機21bを運転し、圧縮機21aおよび21cを停止しているとき、四方弁22a〜22cの切換状態をOFFとすることによって、室外熱交換器の機能を凝縮器から蒸発器へ変更した場合(第3運転状態→第4運転状態)、停止していた圧縮機21cを運転させたのち、運転していた圧縮機21bを停止させる。この圧縮機の運転の変更についても上述と同様に、圧縮機21cの冷媒吸入によって、室外熱交換器23a〜23cにとどまっている冷媒はアキュムレータ24cに向けて流れ、運転していた圧縮機21bに接続されたアキュムレータ24bには流れない。続いて、圧縮機21cを運転し、圧縮機21aおよび21cを停止しているとき、四方弁22a〜22cの切換状態をOFFとすることによって、室外熱交換器の機能を凝縮器から蒸発器へ変更した場合(第5運転状態→第6運転状態)、停止していた圧縮機21aを運転させたのち、運転していた圧縮機21cを停止させる。この圧縮機の運転の変更についても上述と同様に、圧縮機21aの冷媒吸入によって、室外熱交換器23a〜23cにとどまっている冷媒はアキュムレータ24aに向けて流れ、運転していた圧縮機21cに接続されたアキュムレータ24cには流れない。このように室外熱交換器23a〜23cにとどまっている冷媒は、室外熱交換器の機能を凝縮器から蒸発器へ変更するごとに、運転される圧縮機に接続するアキュムレータに向けて流れる。
【0052】
以上説明してきたように、室外機2a〜2cに備えた圧縮機21a〜21cを予め定めた順番で運転させることにより次のような効果が得られる。本実施形態における多室形空気調和装置1においても背景技術で記載したように、四方弁22a〜22cの切換に伴って、停止している圧縮機を備えた室外機の室外熱交換器が、四方弁、低圧ガス分岐器71を通じて、それまで運転していた圧縮機を備える室外機のアキュムレータに連通することになる。しかしながら、室外機2a〜2cに備える圧縮機21a〜21cが予め定めた順番で運転されるため、室外熱交換器23a〜23cにとどまっている冷媒が、それまで運転していた圧縮機を備える室外機のアキュムレータに流れず、新たに運転される圧縮機を備えた室外機のアキュムレータに流れることになり、運転される圧縮機の変更に伴って冷媒が流れこむアキュムレータが変更される。このため、各室外機2a〜2cのアキュムレータ24a〜24cに冷媒を分散させることができる。この結果、四方弁の切換え前に運転していた圧縮機を備えた室外機のアキュムレータへ冷媒が集中するのを抑えることができ、四方弁の切換え前に運転していた圧縮機を備えた室外機におけるアキュムレータのオーバーフローを防止することができる。また、四方弁の切換え前に運転していた圧縮機を備えた室外機におけるアキュムレータのオーバーフローを防止することで、このアキュムレータに連通する圧縮機への液バックの発生を防止することができる。なお、本実施形態では、圧縮機21a〜21cの運転動作として、第1運転状態、第2運転状態、第3運転状態、第4運転状態、第5運転状態、第6運転状態、第1運転状態、・・・の順に運転を繰り返すようにしたが、本発明はこれに限らず、第1運転状態、第4運転状態、第5運転状態、第2運転状態、第3運転状態、第6運転状態、第1運転状態、・・・の順に運転を繰り返すようにしてもよい。
【0053】
次に、図3のフローチャートを用いて、3台の室外機2a〜2cのうち、1台の室外機に備えた圧縮機のみを運転する多室形空気調和装置1において、親機である室外機2aに備えた室外機制御部が、四方弁22a〜22cの切換によって、室外機2a〜2cの室外熱交換器23a〜23cの機能を凝縮器から蒸発器へ変更する場合の圧縮機21a〜21cの運転を変更する制御について説明する。図3において、Sはステップを、数字はステップ番号をそれぞれ表す。
【0054】
室外機2aに備えた室外機制御部は、多室形空気調和装置1が運転を開始してから、運転している圧縮機が1台であるか否かを判断する(S1)。運転している圧縮機が1台であれば(S1−YES)、S2に移行し、運転している圧縮機が2台または3台であれば(S1−NO)、S8に移行する。S2では、室外機2aに備えた室外機制御部は、四方弁の切換状態(ONまたはOFF)を監視することにより室外熱交換器を蒸発器として使用しているか否かを判断する。室外熱交換器を蒸発器として使用していれば(S2−YES)、S3に移行し、室外熱交換器を凝縮器として使用していれば(S2−NO)、S5に移行する。
【0055】
S3では、室外機2aに備えた室外機制御部は、冷房運転を行っている室内機全体の要求能力が暖房運転を行っている室内機全体の要求能力よりも大きいか否かを判断する。冷房運転を行っている室内機全体の要求能力が暖房運転を行っている室内機全体の要求能力よりも大きければ(S3−YES)、S4に移行し、冷房運転を行っている室内機全体の要求能力が暖房運転を行っている室内機全体の要求能力よりも小さければ(S3−NO)、S1に戻る。S4では、室外機2aに備えた室外機制御部は、四方弁22a〜22cを切換える(OFF→ON)。S4において四方弁22a〜22cを切換えた後、S9に移行する。
【0056】
S5では、室外機2aに備えた室外機制御部は、暖房運転を行っている室内機全体の要求能力が冷房運転を行っている室内機全体の要求能力以上であるか否かを判断する。暖房運転を行っている室内機全体の要求能力が冷房運転を行っている室内機全体の要求能力以上であれば(S5−YES)、S6に移行し、暖房運転を行っている室内機全体の要求能力が冷房運転を行っている室内機全体の要求能力よりも小さければ(S5−NO)、S1に戻る。S6では、室外機2aに備えた室外機制御部は、四方弁22a〜22cを切換える(ON→OFF)。S6において四方弁22a〜22cを切換えた後、室外機2aに備えた室外機制御部は、停止していた圧縮機を運転させたのち、運転していた圧縮機を停止させることによって、運転を行う圧縮機を変更する(S7)。S7において運転を行う圧縮機を変更した後、S9に移行する。なお、運転を行う圧縮機は予め定めた順番により変更される。
【0057】
S8では、室外機2aに備えた室外機制御部は、2台または3台の圧縮機を運転しているときの各々の室外機における通常の運転に関する制御を行い、S1のステップに戻る。なお、通常の運転に関する制御とは、室外機2aに備えた室外機制御部が、使用者による設定温度や風量の指示等といった運転指示内容や、室内機や室外機に備えられた各種センサでの検出値に応じて、圧縮機の回転数制御や室外膨張弁の開度制御等の制御を行うことである。S9では、室外機2aに備えた室外機制御部は、各室内機に備えた室内機制御部からの制御信号により運転停止の指示があるか否かを判断する。運転停止の指示があれば(S9−YES)、本フローチャートによる制御を終了し、運転停止の指示がなければ(S9−NO)、S1のステップに戻る。
【0058】
以上説明してきた本発明の多室形空気調和装置1によれば、室外機2aに備えた室外機制御部は、3台の室外機2a〜2cのうち、停止している圧縮機を備えた室外機が存在しているとき、四方弁22a〜22cの切換によって、室外熱交換器23a〜23cの機能を凝縮器から蒸発器へ変更した場合に、停止していた圧縮機を運転させたのち、運転していた圧縮機を停止させる制御を行う。この運転制御によって、各室外機2a〜2cのアキュムレータ24a〜24cに冷媒を分散することができ、四方弁の切換え前に運転していた圧縮機を備えた室外機のアキュムレータへの冷媒の集中を抑えることができるため、四方弁の切換え前に運転していた圧縮機を備えた室外機のアキュムレータのオーバーフローを防止することができる。この結果、四方弁の切換え前に運転していた圧縮機を備えた室外機におけるアキュムレータに連通する圧縮機への液バックの発生を防止することができる。
【0059】
なお、本実施形態における多室形空気調和装置1では、3台の室外機2a〜2cと5台の室内機8a〜8eとを設けた冷暖房フリーの運転が行える多室形空気調和装置を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、2台または4台以上の室外機といった複数の室外機と、2〜4台または6台以上の室内機といった複数の室内機とを設けた冷暖房フリーの運転が行える多室形空気調和装置においても適用可能である。また、複数の室外機と複数の室内機とを設けた冷暖房フリーの運転が行えない、全ての室内機が冷房運転または暖房運転のいずれか一方の運転を行う多室形空気調和装置においても適用可能である。また、本実施形態における多室形空気調和装置1では、各室外機2a〜2cにそれぞれ室外機制御部を備え、親機である室外機2aに備えた室外機制御部が、子機である室外機2bおよび2cに備えた室外機制御部との間で制御信号のやりとりを行うようにしたが、本発明はこれに限らず、各室外機2a〜2cとの間で集中制御する1つの室外機制御部を設けてもよい。
【0060】
さらに、本実施形態における多室形空気調和装置1では、3台の室外機2a〜2cのうち、1台の室外機に備えた圧縮機のみを運転しているとき、四方弁22a〜22cの切換によって、室外熱交換器の機能を凝縮器から蒸発器へ変更する場合、停止していた圧縮機を運転させたのち、運転していた圧縮機を停止させるようにしたが、本発明はこれに限らない。例えば、3台の室外機2a〜2cのうち、2台の室外機に備えた各々の圧縮機を運転しているときや、5台の室外機のうち、2台の室外機に備えた各々の圧縮機を運転しているときに、四方弁22a〜22cの切換によって、室外熱交換器の機能を凝縮器から蒸発器へ変更する場合、運転させる2台の圧縮機について予めローテーションのパターンを決めておき、これに従って2台の圧縮機を運転するようにしてもよい。また、3台の室外機に備えた各々の圧縮機を運転しているときに、四方弁22a〜22cの切換によって、室外熱交換器の機能を凝縮器から蒸発器へ変更する場合、運転させる3台の圧縮機について予めローテーションのパターンを決めておき、これに従って3台の圧縮機を運転するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 多室形空気調和装置
2a〜2c 室外機
6a〜6e 分流ユニット
8a〜8e 室内機
21a〜21c 圧縮機
22a〜22c 四方弁
23a〜23c 室外熱交換器
24a〜24c アキュムレータ
26a〜26c 室外ファン
27a〜27c 室外膨張弁
31 低圧ガス管
31a〜31c 低圧ガス分岐管
34a〜34c 室外機低圧ガス管
36a〜36c 接続管
37a〜37c 接続管
61a〜61e 第1電磁弁
62a〜62e 第2電磁弁
63a〜63e 第1分流管
64a〜64e 第2分流管
71 低圧ガス分岐器
81a〜81e 室内熱交換器
82a〜82e 室内膨張弁
83a〜83e 室内ファン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機と室外熱交換器と流路切換弁とアキュムレータとを備える複数の室外機と、室内熱交換器を備える複数の室内機と、複数の前記室外機を制御する制御手段とを設け、複数の前記室外機と複数の前記室内機とを冷媒配管で接続して構成される多室形空気調和装置であって、
前記制御手段は、複数の前記室外機のうち、運転中の圧縮機が存在しない室外機が存在するとき、前記流路切換弁の切換によって、前記室外熱交換器の機能を凝縮器から蒸発器へと変更した場合に、運転する圧縮機を前記運転中の圧縮機が存在しない室外機に備えられた圧縮機に変更することを特徴とする多室形空気調和装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記流路切換弁の切換によって、前記室外熱交換器の機能を凝縮器から蒸発器へと変更する毎に、停止していた前記圧縮機を予め定めた順番で運転させることを特徴とする請求項1記載の多室形空気調和装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−79736(P2013−79736A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218602(P2011−218602)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000006611)株式会社富士通ゼネラル (1,266)
【Fターム(参考)】