説明

多導体架空送電線路

【課題】 各素導体のインピーダンスを均等化することにより、各素導体に流れる電流を均等にし、スぺ−サへの分流による可動部の発熱を防ぐこと。
【解決手段】 添線導体近傍10は、大地側の2導体11Aおよび11Bに支持部15によって長手方向に間隔をあけて支持され、本線導体11、添線導体12の端部はリアクター14を介して接続され、鉄塔引留め部21に引留められている。また、キャパシター13が大地側の2条の本線導体11A、11B間を除く本線導体11間および大地側の2条の本線導体11、11A、11Bと添線導体12の間にそれぞれ設置される。多導体送電線路のそれぞれの導体が均等なインピーダンスになるようにリアクターとキャパシター性能を決定することで、各素導体のインピーダンスが均等になり、各素導体に流れる電流が均等になり、スペーサへの分流による可動部の発熱を防ぐことが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄塔間に架設された多導体送電線路の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の多導体送電線路は、図4(a)に示すように、図示しない鉄塔の間に架設された複数条の本線導体11とこの複数条(図示のものは8条)の本線導体11のうち大地側の2条の本線導体11A,11Bの間の略中間の下方にたるみを持たせて添架された添線導体12とから成っており、図4(b)に示すように添線導体12は大地側の2条の本線導体11A,11Bに支持部15によって長手方向に間隔をあけて支持されている。
【0003】
従来の多導体送電線路においては、支持部15はクランプ付きのスペーサから成っており、添線導体はこのスペーサによって大地側の2条の本線導体に支持されているが、このスぺ−サを添線導体に電流が流れるように導電性にすると、この導電性スぺ−サを流れる電流によってスぺ−サ可動部が発熱するので、従来から絶縁性スペーサを用いて添線導体を大地側の本線導体に支持している。
この多導体送電線路は、大地側の2条の本線導体11A,11Bと大地との間で添線導体12が、大地側の本線導体11A,11Bの表面電位傾度を低下しているため、降雨時にコロナ騒音の発生が防止されるので有効な方法として、実用化されている。
【0004】
一方、上記スペーサとして導電性スペーサを用いたものが例えば特許文献1に記載されている。
図5は特許文献1に記載される多導体送電線路における大地側の2条の本線導体11A,11Bと添線導体12を示したものである。
特許文献1に記載のものは、添線導体12の両端と中間が、導電性スペーサ16A乃至16Cから成る支持部15によって大地側の2条の本線導体11A、11Bに支持されている。添線導体12は、両端の導電性スペーサ16A、16Cと中間の導電性スペーサ16Bとの間にそれぞれ支持された導体部分12A、12Bから成っている。
両端の導電性スペーサ16A、16Bは、3つのクランプ部18A乃至18Cを有し、2つのクランプ部(本線クランプ部)18A、18Bは、大地側の2条の本線導体11A、11Bをクランプし、他のクランプ部(添線クランプ部)18Cは、添線導体12の導体部分12A、12Bの外側の端部をクランプしている。
【0005】
また中間の導電性スペーサ16Bは、4つのクランプ部18A乃至18Dを有し、2つのクランプ部(本線クランプ部)18A、18Bは、大地側の2条の本線導体11A、11Bをクランプし、他のクランプ部(添線クランプ部)18C、18Dは、添線導体12の導体部分12A、12Bの内側の端部をクランプしている。
さらに上記従来の多導体送電線路は、同図に示すように、添線導体12に設置された変流器20を備えている。
上記変流器20のリアクタンスが添線導体12のインピーダンスを増大させるので、大地側の本線導体11A、11Bから添線導体12に分流する電流が抑制され、従って導電性スペーサ16A乃至16Cの発熱を有効に防止することができる。
【特許文献1】特開平6−165353号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の絶縁性スペーサを用いるものは、絶縁スペーサの絶縁材料としてがいし以外のゴム・プラスチック系絶縁材料を使用する場合、その絶縁性能が本線導体から受ける誘導電圧の作用で劣化が促進しやすい。
この絶縁材料に劣化を生じると本来の絶縁性能が保てなくなるため、絶縁スぺ−サを介して本線導体に電流が流れ込み、本線導体に使用されているスぺ−サの可動部が発熱する。
一方、特許文献1に記載されように、添線導体12に変流器20を設ければ、添線導体に電流を流しにくくすることができるので、導電スペーサへの分流による発熱を抑制することができる。しかし、大地側の2条に設置される導電スぺ−サとそれに隣り合う導電スペーサの間には必ず前記変流器が必要となる。
特許文献1に記載のものは、部分的に添線導体を施工する場合には適する方法であるものの、多導体線路全域に渡って施工する場合には使用部品が多くなるため大きな設備費用が掛かるとともに、重量増加も大きいために鉄塔強度設計の見直しが必要となる場合も考えられ、適用可能な送電線が限定される。
本発明は上記従来技術の問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、各素導体のインピーダンスを均等化することにより、各素導体に流れる電流を均等にし、スぺ−サへの分流による可動部の発熱を防ぐことである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明においては、上記課題を次のように解決する。
(1)添線導体をスペーサによって大地側の2条の本線導体に支持し、本線導体と添線導体が均等なインピーダンスになるように、複数条の各素導体の片側の鉄塔への引留部にリアクターを設け、各導体間にキャパシターを挿入にする。
(2)上記構成において、添線導体を大地側の2条の本線導体の支持部において分断し、支持装置を介して導電体で連結する。
本発明に用いられるリアクターとキャパシターの性能については、多導体送電線路のインピーダンスの大きさを予め線路定数計算によって求め、それぞれの導体が均等なインピーダンスになるために必要なリアクターとキャパシター性能を決定する。
このように施工することで、各素導体のインピーダンスが均等になり、各素導体に流れる電流が均等になり、スペーサへの分流による可動部の発熱を防ぐことが出来る。
また、上記スぺ−サを添線導体に電流が流れるように導電性にしても、リアクターとキャパシターを設けてそれぞれの導体が均等なインピーダンスになるようにしたので、スぺ−サの可動部に電流が流れず、発熱を抑えることができる。
【発明の効果】
【0008】
添線導体を有する多導体送電線路に用いられる絶縁スペーサは、その絶縁材料としてがいし以外のゴム・プラスチック系絶縁材料を使用する場合、その絶縁惟能は本線導体から受ける誘導電圧の作用で劣化が促進しやすい。このため、この絶縁材料に劣化を生じると本来の絶縁性能が保てなくなるため、絶縁スペーサを介して本線導体に電流が流れ込み、本線導体に使用されているスペーサの可動部が発熱する。
本発明においては、上記構造としたので、各素導体のインピーダンスが均等になり、各素導体に流れる電流が均等になり、スぺ−サへの分流による可動部の発熱を防ぐことが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は本発明の実施例の多導体送電線路の構成を示す図であり、同図(a)は本線導体のうち大地側の2条と添線導体との関係を示す図、同図(b)は複数条の本線導体11(同図では8導体の場合を示している)と添線導体12を導体の長手方向から見た図である。また図2は本発明の実施例の多導体送電線路の鉄塔引留め部の近傍を示す図である。
図1(a)、図2に示すように添線導体近傍10は、大地側の2導体11Aおよび11Bに支持部15によって長手方向に間隔をあけて支持され、添線導体12の端部はリアクター14を介して接続され、鉄塔引留め部21に碍子22を介して引留められている。
これと同様に大地側の2条の本線導体11A,11Bを含む本線導体11もリアクター14を介して接続され、碍子22を介して鉄塔引留め部21に引留められている。
一方、キャパシター13は、図1(b)に示すように大地側の2条の本線導体11A、11B間を除く本線導体11間および大地側の2条の本線導体11A、11Bと添線導体12の間にそれぞれ設置される。
【0010】
図3は本発明の実施例の多導体送電線路の大地側の2条の本線導体11A,11Bと添線導体12を示したものである。
添線導体12は大地側の2条の本線導体11A,11Bの支持部15において分断され、分断された添線導体12の両端が、導電性スペーサ16から成る支持部15によって大地側の2条の本線導体11A、11Bに支持されている。
添線導体12の両端の導電性スペーサ16は、4つのクランプ部16A〜16Dを有し、2つのクランプ部(本線クランプ部)16A、16Bは、大地側の2条の本線導体11A、11Bをクランプし、他の2つのクランプ部(添線クランプ部)16C、16Dは、添線導体12の導体部分の端部をクランプしている。
【0011】
このように、添線導体12を導電性スペーサ16によって大地側の2条の本線導体11A、11Bに支持することで、大地側の本線導体11A、11Bと添線導体12とは同電位に保たれる。このため、この大地側の本線導体11A、11Bの表面電位傾度が低下してコロナ騒音を有効に低減することができる。
また、本線導体11と添線導体の片側の鉄塔への引留部21にリアクター14を設けるとともに各導体間にキャパシター13を挿入し、本線導体と添線導体が均等なインピーダンスになるようにしているので、導電性スぺ−サ16への分流による可動部の発熱を防ぐことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例の多導体送電線路の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施例の多導体送電線路の鉄塔引留め部の近傍を示す図である。
【図3】本発明の実施例の多導体送電線路の大地側の2条の本線導体と添線導体を示す図である。
【図4】多導体線路の構成例を示す図である。
【図5】添線導体に変流器を設置した従来の多導体送電線路における大地側の2条の本線導体と添線導体を示す図である。
【符号の説明】
【0013】
10 大地側2条の本線導体部と添線導体部
11A、11B 大地側本線導体
12 添線導体
13 キャパシター
14 リアクター
15 添線導体支持部
16 導電性スペーサ
21 引留め部(鉄塔)
22 碍子




【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数条の本線導体と、該複数条の本線導体のうち大地側の2条の本線導体の間の略中間の下方にたるみを持たせて添架された添線導体とから成り、該添線導体は、前記大地側の2条の本線導体に支持部によって長手方向に間隔をあけて支持されている多導体架空送電線路であって、
複数条の本線導体と添線導体の片側の鉄塔への引留部にリアクターを設け、各導体間にキャパシターを挿入にした
ことを特徴とする多導体架空送電線路。
【請求項2】
添線導体が大地側の2条の本線導体の支持部において分断され、支持装置を介して導電体で連結したことを特徴とする請求項1記載の多導体架空送電線路。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−304415(P2006−304415A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−119417(P2005−119417)
【出願日】平成17年4月18日(2005.4.18)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】