説明

多層回路基板

【目的】 インピーダンスのマッチングが図れ、さらに矩形の擬似同軸構造によりクロストークが抑えられる。
【構成】 ビア付きフィルム10が信号層を挟んで2層以上の多層に積層され、隣接するフィルム10間の信号層14を挾む両フィルム10のビア13が導通され、かつ両フィルム10の他面に形成された接地層12にビア13が接続されて、信号層14を囲む断面矩形の擬似同軸構造が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は多層回路基板に関する。
【0002】
【従来の技術】信号層、電源プレーン、接地プレーンをポリイミド等の絶縁性フィルムを介在させて積層した多層リードフレームが知られている。また半導体素子を搭載するパッケージでは電気的特性に優れるセラミックパッケージが知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】前記多層リードフレームでは、信号層と別に面積の大きな電源層と接地層をもっているため、信号層に対してはストリップラインとしてクロストークを抑えられるうえ、電源系に対してはインダクタンスが低いためバウンスと呼ばれる一種の電源雑音を小さくできるメリットがある。しかしながら昨今では、クロック周波数が数GHz以上、あるいは立ち上がり時間が1ns以下のデバイスが出現しており、このような超高速、超高周波数のデバイスに対しては、上記多層のリードフレームであっても、信号の反射やロスにより信号が通らず、またクロストークが大きくなって使用できないという問題点がある。上記のように、クロック周波数が数GHz以上という超高周波数のデバイスでは、インピーダンスのマッチングがとれないと使用できないが、基本的に、通常のリードフレームでは、インナーリードとアウターリードの幅を同じくすることは強度上の点で難点があり、インピーダンス制御(Zo=50オーム)をすることは非常に難しい。またクロストーク防止のための同軸構造をとることも構造上から極めて困難である。このため、上記の超高速、超高周波数のデバイスでは、電気的特性に優れるセラミックパッケージを用いるしかなかったが、セラミックパッケージでは高価であると共に、メタライズ配線パターンによるため、多ピン化に限界があるという問題点があった。
【0004】そこで、本発明は上記問題点を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、比較的安価に形成できると共に、多ピン化が可能であり、インピーダンスのマッチングが容易に図れ、さらにクロストークを抑えることができて超高速、超高周波数のデバイスを搭載可能となる多層回路基板を提供するにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は上記目的を達成するため次の構成を備える。すなわち、ビア付きフィルムが信号層を挟んで2層以上の多層に積層され、隣接する前記フィルム間の信号層を挾む両フィルムの前記ビアが導通され、かつ該両フィルムの他面に形成された接地層に前記ビアが接続されて、前記信号層を囲む断面矩形の擬似同軸構造が形成されていることを特徴としている。また、単層リードフレームと、該単層リードフレームの、インナーリード側に積層され、搭載される半導体素子と電気的に接続される端子部を有し、かつ前記単層リードフレームのアウターリードに導通がとられる多層回路基板とを具備し、該多層回路基板が、ビア付きフィルムが信号層を挟んで2層以上の多層に積層され、隣接する前記フィルム間の信号層を挾む両フィルムの前記ビアが導通され、かつ該両フィルムの他面に形成された接地層に前記ビアが接続されて、前記信号層を囲む断面矩形の擬似同軸構造が形成されている多層回路基板であることを特徴としている。前記多層回路基板の回路パターンを信号層と、電源層および/または接地層とで構成すると好適である。また本発明では、上面に回路パターンが形成され、該回路パターンにアウターリードが接続されたメタルコアパッケージと、該メタルコアパッケージの、半導体素子が搭載されるインナー側に積層され、前記搭載される半導体素子と電気的に接続される端子部を有し、かつメタルコアパッケージに導通がとられる多層回路基板とを具備し、該多層回路基板が、ビア付きフィルムが信号層を挟んで2層以上の多層に積層され、隣接する前記フィルム間の信号層を挾む両フィルムの前記ビアが導通され、かつ該両フィルムの他面に形成された接地層に前記ビアが接続されて、前記信号層を囲む断面矩形の擬似同軸構造が形成されている多層回路基板であることを特徴としている。前記多層回路基板の回路パターンを信号層と、電源層および/または接地層とで構成すると好適である。
【0006】
【作用】本発明に係る多層回路基板によれば、比較的安価に提供できると共に、インピーダンスのマッチングが容易にとれ、さらに擬似同軸構造が形成できるのでクロストークを効果的に抑えることができ、超高速、超高周波数のデバイス用に用いることができる。
【0007】
【実施例】以下、本発明の好適な実施例を添付図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明で基本的に用いるビア付きフィルム10を示す。このビア付きフィルム10は、熱可塑性のポリイミドフィルム11にエキシマレーザー等により、微細なスルーホールを開口し、片面に銅箔12を加圧加熱することによって貼着し、電解銅めっきを行って、スルーホール内の銅箔上に銅を盛り上げ、スルーホール内に銅を充填してビア13を形成する。ビア13の上面はポリイミドフィルム11上面側に若干突出して形成される。熱可塑性のポリイミドフィルム11は加熱することによって粘着性を帯び、複数枚重ねて加熱、加圧することによって積層が可能となる。スルーホールは最小50μmピッチ程度の微細なパターンに形成でき、またスルーホールの孔径も数μmのものが可能なので、微細パターンのビア13を形成できる。また、ポリイミドフィルム11は数10〜数100μmのものが使用できる。
【0008】図2は他面に回路パターンを形成したビア付きフィルム10を示す。このビア付きフィルム10は、上記のようにビア13を形成したポリイミドフィルム11の他面側に銅箔を貼着し、この銅箔をエッチング加工して回路パターン(信号層)14を形成したものである。図3は多層回路基板16を示し、図1、図2に示すビア付きフィルム10、10のビア13、13が互いに当接するようにして重ね合わせ、加熱、加圧して2層の回路基板に形成されている。ビア付きフィルム10、10を上記のようにして重ね合わせ、加熱、加圧すると、熱可塑性のポリイミドフィルム11が軟化し、上下のビア付きフィルム10に形成したビア13、13が確実に当接した状態で、かつ信号層14がポリイミドフィルム11中に埋没した状態にて接合される。上下のビア13、13は単に当接している状態であるが、ポリイミドフィルム11、11の熱収縮が加わることから強固に当接し、電気的導通が確実に確保される。図3から明らかなように、両ビア付きフィルム10、10間の信号層14はビア13によって両側から挟まれ、また上下を銅箔12、12によって挟まれた構造となる。銅箔12、12を接地層に設定すれば、信号層14はビア13と銅箔12による断面矩形の擬似同軸構造となり、クロストークを防止できる構造となる。また、信号層14の幅、ポリイミドフィルム11の厚さ、ビア13のピッチを調整することにより、インピーダンス(Zo=50オーム)のマッチングを容易にとることができる。上記実施例では、2層の回路基板に形成したが、3層以上の多層の回路基板に形成することもできる。この場合信号層のみならず電源層や接地層等を形成することによりより電気的特性に優れる多層回路基板に構成できる。
【0009】図4は多層リードフレーム20に形成した実施例を示す。21は単層リードフレームであり、素子搭載部22、インナーリード23、アウターリード24を有する通常のリードフレーム形状に形成されている。30は多層回路基板であり、素子搭載部22近傍のインナーリード23上に搭載される。多層回路基板30は、前記実施例の多層回路基板16の例にならって形成される。すなわち、上層から接地層31、信号層32、電源層33、接地層34に構成されている。また信号層32の各信号ラインは、図3に示されるのと同様にビア13と上下の接地層31、34とで断面矩形状に囲まれる擬似同軸構造に形成されている。上記の多層回路基板30は、素子搭載部22を囲む枠状に形成され、その内壁側に半導体素子29とワイヤにより接続される、接地層31のワイヤボンディングエリア、信号層32のワイヤボンディングエリア、電源層33のワイヤボンディングエリアが階段状に露出する構造となっている。各接地層31、信号層32、電源層33、接地層34はビアを介してインナーリード23に接続される。
【0010】上記のようにして多層リードフレーム20が形成されている。この多層リードフレーム20によれば、信号層32が銅箔をエッチング加工して形成されるので、信号ラインの多ピン化が可能であり、また線幅をほぼ一定にでき、該線幅、ポリイミドフィルム11の厚さ等を選択することで、各信号ラインのインピーダンスのマッチングが図れる。さらに擬似同軸構造により各信号線路間のクロストークを効果的に抑えることができるので、超高速、超高周波数のデバイスに対応できる。もちろん、電源層33、接地層34を信号層32と別途構成して重ねた構造にしているので、前記従来の多層リードフレームの電源ノイズの排除等の特性にも優れている。
【0011】図5はメタルコアパッケージ35に多層回路基板36を搭載した多層パッケージ37の実施例を示す。メタルコアパッケージ35は金属製のヒートシンク38上に絶縁シート39を介して回路パターン40が形成され、該回路パターン40に上記の多層回路基板36が接続され、またアウターリード41が接続されてなる。図5に示す例では、多層回路基板36は図3に示す多層回路基板16、すなわち上下に接地層12、12が形成され、中間の信号層14がビア13と接地層12、12で矩形に囲まれた擬似同軸構造のものに形成されている。本実施例では、ヒートシンク38を有する放熱性に優れるパッケージに形成されているので、高速、高周波数のデバイスにより好適に対応できる。また本実施例でも、多層回路基板は上記に限られず、図4等に示される任意の構造の多層回路基板を搭載することにより、種々の電気的特性を満足できる多層パッケージを提供できる。
【0012】以上本発明につき好適な実施例を挙げて種々説明したが、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのはもちろんである。
【0013】
【発明の効果】本発明に係る多層回路基板によれば、比較的安価に提供できると共に、多ピン化が図れ、インピーダンスのマッチングが容易にとれ、さらに擬似同軸構造を形成したのでクロストークを効果的に抑えることができ、超高速、超高周波数のデバイス用に用いることができるという著効を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】ビア付きフィルムの断面説明図である。
【図2】信号層を形成したビア付きフィルムの断面説明図である。
【図3】擬似同軸構造の多層回路基板の一例を示す断面説明図である。
【図4】多層リードフレームの実施例を示す断面説明図である。
【図5】多層パッケージの一例を示す断面説明図である。
【符号の説明】
10 ビア付きフィルム
11 ポリイミドフィルム
12 銅箔
13 ビア
14 信号層
16 多層回路基板
20 単層リードフレーム
29 半導体素子
30 多層回路基板
31 接地層
32 信号層
33 電源層
34 接地層
35 メタルコアパッケージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ビア付きフィルムが信号層を挟んで2層以上の多層に積層され、隣接する前記フィルム間の信号層を挾む両フィルムの前記ビアが導通され、かつ該両フィルムの他面に形成された接地層に前記ビアが接続されて、前記信号層を囲む断面矩形の擬似同軸構造が形成されていることを特徴とする多層回路基板。
【請求項2】 単層リードフレームと、該単層リードフレームの、インナーリード側に積層され、搭載される半導体素子と電気的に接続される端子部を有し、かつ前記単層リードフレームのアウターリードに導通がとられる多層回路基板とを具備し、該多層回路基板が、ビア付きフィルムが信号層を挟んで2層以上の多層に積層され、隣接する前記フィルム間の信号層を挾む両フィルムの前記ビアが導通され、かつ該両フィルムの他面に形成された接地層に前記ビアが接続されて、前記信号層を囲む断面矩形の擬似同軸構造が形成されている多層回路基板であることを特徴とする多層リードフレーム。
【請求項3】 前記多層回路基板の回路パターンが信号層と、電源層および/または接地層とを具備することを特徴とする請求項2記載の多層リードフレーム。
【請求項4】 上面に回路パターンが形成され、該回路パターンにアウターリードが接続されたメタルコアパッケージと、該メタルコアパッケージの、半導体素子が搭載されるインナー側に積層され、前記搭載される半導体素子と電気的に接続される端子部を有し、かつメタルコアパッケージに導通がとられる多層回路基板とを具備し、該多層回路基板が、ビア付きフィルムが信号層を挟んで2層以上の多層に積層され、隣接する前記フィルム間の信号層を挾む両フィルムの前記ビアが導通され、かつ該両フィルムの他面に形成された接地層に前記ビアが接続されて、前記信号層を囲む断面矩形の擬似同軸構造が形成されている多層回路基板であることを特徴とする多層パッケージ。
【請求項5】 前記多層回路基板の回路パターンが信号層と、電源層および/または接地層とを具備することを特徴とする請求項4記載の多層パッケージ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開平6−318668
【公開日】平成6年(1994)11月15日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−106808
【出願日】平成5年(1993)5月7日
【出願人】(000190688)新光電気工業株式会社 (1,516)