説明

多層型光情報媒体およびその製造方法

【課題】従来の多層型光情報媒体では、ディスクのクランプ精度と偏芯精度を両立しつつ、高い生産性を確保することが困難であった。
【解決手段】n層(nは2以上の整数)以上の情報層を有する多層型光情報媒体において、凹凸パターンが形成された第1の基板上に情報の記録または再生が可能な層を設けた第1の基板と、第1の基板と同じ内径でナノインプリント法で凹凸が形成されたシート状の第2から第nの基板上に情報の記録または再生が可能な層を設けた第2から第nの基板を貼合わせ、その後、第1の基板のクランプエリアの内径以上に前記第2から第nの基板の内径を切断し、第1の基板面をクランプエリアとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、片側あるいは両側から光ビームを入反射することにより、情報の記録または再生が可能な2以上の層を備えてなる光情報媒体を製造する多層型光情報媒体およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光情報媒体の大容量化の要求に対して、従来はレーザ光を短波長化することにより記録密度を高めて光情報媒体の記録容量を大きくしてきた。しかし、光情報媒体や光学部品の耐光性の観点などから、レーザの短波長化も限界に来ている。そのため、従来のレーザ光を短波長化して記録密度を高めて光情報媒体の容量を大きくする方法にかえて、情報の記録または再生が可能な層を多層化することにより光情報媒体の容量を大きくする方法が注目されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
情報の記録または再生が可能な層を多層化する手法には、情報の記録または再生が可能な層を有する第1の基板上にPhoto Polymer法を使用して第2の凹凸を有する基板を作製し、その上に情報の記録または再生が可能な層を作製し、同じ操作を繰り返して第n層まで作製する方法(2P法)があり、例えば、特許文献2に開示されている。また、別の方法として、第2から第n層までを個別に、ナノインプリント法などで凹凸を形成したシート状の基板を作製し、その上に記録または再生が可能な層を形成した基板を貼り合せて作製する方法(シート貼合法)があり、例えば、特許文献3に開示されている。以下、個別にシート状の基板を作製して貼合わせた多層型光情報媒体を、シート貼合多層型光情報媒体とする。
【0004】
シート貼合法では、多層型光情報媒体の内径の精度、偏芯の精度の確保、およびクランプエリアの平面性や平行性などの確保が課題となっている。
【0005】
2P法では内径精度とクランプエリアの精度は第1の基板の作製精度で達成している。また、第2から第n層の多層型基板の偏芯精度は、凹凸を転写させる透明スタンパと第1の基板を貼り合わせる時の位置精度を内径で合わせることにより可能としている。
【0006】
しかしながら、シート貼合法ではクランプエリアの精度を第1の基板の作製精度で確保すると、第2から第n層の基板の内径はクランプエリア径より大きくなるため、第1の基板と第2から第n層基板の偏芯精度を向上させることは困難である。また、第1の基板と同じ内径の第2から第n層の基板を貼り合わせれば、第1の基板と第2から第n層の基板の偏芯精度を高めることが可能であるが、光入射面が第n層側の場合には、クランプエリアは第2から第n層のシート状基板を貼り合わせた上面、あるいはその上に保護層やカバー層を設けた上面になる。この場合、シート状基板を貼り合わせた影響で、平面性や平行性などの確保の問題が起こる。
【0007】
これらの問題を解決する例として、例えば、特許文献3では、クランプエリアを第1の基板に設け、各基板の偏芯精度は、シート状の基板の位置を合わせて貼り合わせるために、シートにアライメントマークを付け、アライメントマークを合わせて貼り合せているが、位置合わせの工程が複雑なため、生産装置が高価になり、生産性が高いとは考えられない。
【0008】
本発明の目的は、前記の従来技術の課題を解決することにより、ディスクのクランプ精度および偏芯精度に優れた多層型光情報媒体を提供することにある。また、シート貼合法による製造コストの低く、生産性の高い多層型光情報媒体の製造方法を提供することにある。
【0009】
【特許文献1】特開2005−332493号公報
【特許文献2】特開平08−306067号公報
【特許文献3】特開2006−331566号公報
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した問題を解決するために、本発明者は鋭意検討した結果、以下に示す発明を完成した。
【0011】
即ち、本発明に係る多層型光情報媒体は、少なくとも片面から光を照射することにより情報の記録または再生が可能なn層(nは2以上の整数)以上の情報層を有する多層型光情報媒体であって、凹凸パターンが形成された第1の基板の内径が、凹凸が形成された第2から第nの基板の内径より小さく、かつドライブにディスクをクランプするときのクランプエリアが第1の基板面に形成され、中間層がシート状の熱可塑性基板と接着剤から形成されている多層型光情報媒体である。また、上記多層型光情報媒体は、情報の記録または再生が可能な第2から第n層の内径がほぼ同じである。
【0012】
上記多層型光情報媒体の製造方法において、凹凸パターンが形成された第1の基板上に情報の記録または再生が可能な層を設けた第1の基板と、第1の基板と同じ内径でナノインプリント法で凹凸が形成されたシート状の第2から第nの基板上に情報の記録または再生が可能な層を設けた第2から第nの基板を貼り合わせ、その後、第1の基板のクランプエリアの内径以上の大きさに、前記第2から第nの基板の内径を切断し、第1の基板面がクランプエリアになる多層型光情報媒体の製造方法である。
【0013】
また、上記多層型光情報媒体において、第1から第nの基板を貼合わせたディスクを回転させながら外周縁の凹凸を平滑加工する多層型光情報媒体の製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
以上の本発明に従えば、ディスクのクランプ精度および偏芯精度に優れた多層型光情報媒体を高い生産性で製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、発明の実施の形態)について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。また、使用する図面は本実施の形態を説明するためのものであり、実際の大きさを表すものではない。
【0016】
図1は、本発明に従う多層型光情報媒体の一例として、片面光入射のブルーレイディスクタイプを用いて4層型光情報媒体を模式的に示した説明図である。
【0017】
光入射側から見た光情報媒体の平面模式図によれば、当該4層型光情報媒体1は、少なくとも中心穴2、クランピングエリア3および情報領域4を備えている。また、光情報媒体の断面模式図によれば、凹凸パターンが形成された第1の基板の内径が、凹凸が形成された第2から第nの基板の内径より大きく、かつドライブにディスクをクランプするときのクランプエリアが第1の基板面に形成されている。
【0018】
図2は、本実施の4層型光情報媒体の構造を詳細に説明するために、情報領域の断面を模式的に示した説明図である。
【0019】
光入射側の反対側から、第1の基板21、第1の情報の記録または再生が可能な層22、第1の接着層23、第2のシート状基板24、第2の情報の記録または再生が可能な層25、第2の接着層26、第3のシート状基板27、第3の情報の記録または再生が可能な層28、第3の接着層29、第4のシート状基板30、第4の情報の記録または再生が可能な層31、第4の接着層32、及びカバー層33で構成される。なお、図2に示した片面4層型の多層型光情報媒体は、カバー層33側からレーザ光を入反射して、情報の記録または再生が行われる。
【0020】
本発明に係る多層型光情報媒体の製造方法のうち、まず第1の基板21の製造方法について説明する。第1の基板にはクランプエリアを設けるため、ある程度の強度を有する板厚が必要であり、少なくともクランプエリアに十分な強度を持たせるために、第1の基板の板厚は0.2mm以上であることが好ましい。第1の基板の基板厚が0.2mm以上である場合には、基板自体に十分な剛性があるので、第1の基板は、凹凸を持つスタンパを使用して射出成形で作製することが好ましい。射出成形に使用される材料としては、成形性、コスト、形状安定性、低吸湿性などに優れた材料が好ましい。具体的にはポリカーボネート樹脂、アモルファスポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂等が例示できるがこれらに限定されるものではない。一方、第1の基板の基板厚が0.2mm未満である場合には、基板自体に十分な剛性がないので、第2から第4のシート状基板24、27、30の作製に記述する方法で作製することが好ましい。
【0021】
第2から第4のシート状基板は、個々の記録あるいは再生可能な層を保持する基板であると同時に、個々の記録あるいは再生可能な層を分離するための中間層の機能を担っている。したがって、第2から第4のシート状基板の板厚は中間層の膜厚よりも薄くなければならない。シート厚は5μmから40μmであることが好ましい。第2から第4のシート状基板は、所定の膜厚のシートに凹凸を持つスタンパを加熱加圧して凹凸を転写させる熱ナノインプリント法で凹凸を形成して作製することが好ましい。あるいは、シートに紫外線硬化樹脂をコートした後、凹凸を有するスタンパを押し当てて、スタンパ越しに紫外線を照射して凹凸を転写させる光ナノイインプリント法で凹凸を形成して作製してもよい。円盤状へのシートの加工は、内径を打ち抜いてからナノプリント装置にセットして凹凸転写加工を行い、その後に外形を打ち抜いても良いし、適当な形状のシートをナノプリント装置にセットし、内外形の打ち抜きと凹凸転写加工を同時に行っても良い。
【0022】
第2から第4のシート状基板の内径は、第1の基板の内径と同じほうが好ましい。内径が同じであれば、記録あるいは再生可能な層を設けた第1の基板に、記録あるいは再生可能な層を設けた第2から第nの基板を貼り合わせる場合、同じピンにそれらを設置して貼り合わせるので、第1の基板とその上に貼り合わせる第2から第4のシート状基板の偏芯を精度良く合わせることができる。第1の基板と第2から第4のシート状基板を貼り合わせる工程において、第2から第4のシート状基板を円盤上の保持基板に静電気などを利用して保持し、貼り合わせを行っても良い。
【0023】
シートとして使用される材料としては、光透過性、コスト、形状安定性、低吸湿性などに優れた熱可塑性材料が好ましい。具体的にはポリカーボネート樹脂、アモルファスポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂等が例示できるがこれらに限定されるものではない。
【0024】
次に、基板上に設けられる情報の記録または再生が可能な層の製造方法について説明する。第1から第4の記録または再生が可能な層22、25、28、31はレーザ光によって記録または再生できるものなら特に限定されないが、光入射側に近い第2から第4の記録または再生が可能な層は、適度な光の反射と透過を両立するために、反射材料からなる半透明膜を少なくとも含むことが望ましい。また、光入射側に最も遠い第1の記録または再生が可能な層は、光を反射するために、反射材料からなる反射膜を少なくとも含むことが望ましい。具体的には、色素と反射材料からなる記録層、誘電体と相変化材料と反射材料を積層した記録層、シリコンと金属と反射材料を積層した記録層などを挙げることができる。また、再生専用の光情報媒体の場合は基板の凹凸としてピットを形成した上に反射材料からなる再生層を形成することにより作製することができる。
【0025】
色素としては、具体的にはシアニン色素、メロシアニン色素、スクアリウム色素、アントラキノン系色素、トリアリールメタン色素、ピリリウム色素、アゾ色素、含金属アゾ色素、フタロシアニン色素、ポリフィリン色素、トリアリールアミン色素、スクアリリウム色素、ピロメテン系色素、ホルマザン金属錯体系色素、アヌレン系色素等が例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
これらの色素は1種類のみを用いても2種類以上の色素を混ぜて使用しても良い。また、クエンチャーや他の色素、添加剤、高分子(例えばニトロセルロース等の熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー)、金属微粒子等を含んでいても良い。上記の色素および任意の添加剤を公知の有機溶媒(たとえばテトラフルオロプロパノール、ケトンアルコール、アセチルアセトン、メチルセルロブ、トルエン等)で溶解・溶媒和したものを、基板上にスピンコート法、スクリーン印刷、キャスト法などの方法により塗布するが、この中でもスピンコート法が好ましい。スピンコート法は、色素溶液の粘度、基板の回転数、および回転時間を調整することで、基板上の色素の膜厚を容易にかつ均一に形成することができるからである。色素と塗布後、所定の乾燥条件により乾燥して、色素を含む記録層を形成する。
【0027】
反射材料は、光を反射する材料ならどのようなものでもかまわないが、耐食性のある材料が望ましい。金、銀、アルミニウムなどの金属、あるいはこれらを含む合金、SiO、Alなどの金属酸化物、Siなどの窒化物、ZnS−SiOなどの複合化合物などを挙げることができる。特に、例えば、金、銀、アルミニウム或いはこれらを含む合金は反射率が高いので好ましく、スパッタ法等の手段により形成することができる。Agを主成分としているものはコストが安い点、反射率が高い点から特に好ましい。反射材料は膜の結晶粒が大きいと再生ノイズの原因となるため、結晶粒が小さい材料を用いるのが好ましい。純銀は結晶粒が大きい傾向があるためAgは合金として用いるのが好ましい。中でもAgを主成分とし、Ti、Zn、Cu、Pd、Au、Ca、In及び希土類金属よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を0.1原子%〜5原子%含有することが好ましい。Ti、Zn、Cu、Pd、Au、Ca、In及び希土類金属のうち2種以上含む場合は、各々0.1原子%〜5原子%でもかまわないが、それらの合計が0.1原子%〜5原子%であることが好ましい。具体的には、AgPdCu、AgCuAu、AgCuAuNd、AgCuNd、AgCaCu、AgCaCu、AgIn等である。
【0028】
半透明膜は、光の透過と反射をバランスさせるために、銀合金を5nm〜20nmの膜厚の範囲で調整することが好ましい。
【0029】
反射膜は、高い反射率を有する反射膜にするために、銀合金を50nm〜150nmの膜厚の範囲で調整することが好ましい。膜厚が薄いと反射率が低くなり、一方、膜厚が厚いとディスクの反りが大きくなり、材料コストも増加するからである。
【0030】
次に、基板上に設けられる接着層について説明する。
【0031】
第1から第4の接着層23、26、29、32に用いられる材料は、接着力が高く、硬化接着時の収縮率が小さく、かつ環境に対する保存安定性が高い材料が好ましい。さらに、接着層の材料は、情報の記録または再生が可能な層にダメージを与えない材料であることが望ましい。あるいは、接着層の材料が情報の記録または再生が可能な層にダメージを与えないように、接着層と情報の記録または再生が可能な層の間に公知の無機系または有機系の保護層を形成してもよい。
【0032】
以上の観点から、接着層の材料としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂(遅延硬化型を含む)、感圧式両面テープ等を挙げることができる。これらの中でも、無溶剤タイプの紫外線硬化性樹脂が環境性と生産性に優れるため好適である。紫外線硬化性樹脂は、10℃〜40℃において、粘度が10mPa・s〜200mPa・sであるものが好ましい。この条件を満たせば、溶媒を用いることなく塗布できるからである。なお、無溶剤タイプの紫外線硬化性樹脂には様々な種類があるが、透明であればいずれも用いることができる。
【0033】
これら条件を満たす紫外線硬化性樹脂としては、ラジカル系紫外線硬化性樹脂とカチオン系紫外線硬化性樹脂があり、いずれも使用可能である。ラジカル系紫外線硬化性樹脂としては、公知の全ての組成物を用いることができ、紫外線硬化性化合物と光重合開始剤を必須成分として含む組成物が用いられる。紫外線硬化性化合物としては、単官能アクリレート、単官能メタアクリレート、多官能アクリレート、多官能メタアクリレートを重合性モノマー成分として、各々、単独または2種類以上を併用できる。
【0034】
接着層は紫外線硬化性樹脂を塗布し、紫外光を照射して硬化させることによって形成できる。塗布方法としては、色素の記録膜と同様にスピンコート法、スクリーン印刷、キャスト法等の塗布法等の方法が用いられるが、この中でもスピンコート法が好ましい。スピンコート法は、紫外線硬化樹脂の粘度、基板の回転数、および回転時間を調整することで、基板上の紫外線硬化樹脂の膜厚を容易にかつ均一に形成することができるからである。
【0035】
次に、基板上に設けられるカバー層の製造方法について説明する。
【0036】
カバー層33の材料は、レーザ光に対して、透過性があり、コスト、形状安定性、低吸湿性などに優れた材料が好ましい。具体的には、ポリカーボネート樹脂、アモルファスポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、上記接着層の材料等が例示できるがこれらに限定されるものではない。
【0037】
図3は、本発明に係る多層型光情報媒体の製造方法の実施形態の一例として、片面4層型の記録再生が可能な多層型光情報媒体の製造プロセスを説明するための模式図である。以下、この模式図を使用して製造方法を説明する。
(3−1)
公知の方法を用いて情報の記録または再生が可能な層が設けられた第1の基板41に、クランプエリア以外に紫外線硬化型接着剤を塗布する。接着剤のコートはスピンコート法などの公知の方法を用いる。接着剤の塗布時に、接着剤がクランプエリア内に入らないように、クランプエリアより大きな径の溝を第1の基板の接着面に設けても良い。この第1の基板の中心穴を貼り合わせ装置のディスク固定台43にあるピンに通して真空チャックなどの方式により固定する。
(3−2)
(1)と同様に、情報の記録または再生が可能な層が設けられた第2の基板44をディスク固定台43のピンを通して、空気が噛み込まないように貼り合わせる。第1の基板と第2の基板の位置決めは、高精度に加工されたピンの内径と、高精度に加工された第1の基板と第2の基板の中心穴の内径により、高精度に制御される。また、第2の基板はシート状のため、中心穴がたわんで位置決め精度が良くない場合、第1の基板と貼り合わせる第2の基板の反対側の面に、たわみを防ぐ円盤状の保持具を使用しても良い。貼り合わせ時に空気の噛み込みを防ぐため、この工程を真空状態で行なう装置の構造にするほうが好ましい。
(3−3)
紫外線を照射して、情報の記録または再生が可能な層が設けられた第1の基板と情報の記録または再生が可能な層が設けられた第2の基板間の接着層42を硬化させる。
(3−4)
第3と第4の基板47、48とカバー層49について、(3−2)と(3−3)の工程を繰り返して、第2の基板の上に、情報の記録または再生が可能な層が設けられた第3と第4の基板とカバー層を貼り合わせる。第3と第4の基板とカバー層については、接着剤をクランプエリアの外径以内に塗布しても良い。
(3−5)
情報の記録または再生が可能な層が設けられた第1の基板上に、それぞれ情報の記録または再生が可能な層が設けられた第2の基板、第3の基板、第4の基板、およびカバー層が貼り合わされた片側4層の情報記録媒体を示す。各基板の位置は、中心穴の径をピンの径に合わせることにより、偏芯位置の仕様内で位置が合わされている。しかし、わずかな位置のずれや貼り合わせに使用した接着剤のはみ出しにより、この情報記録媒体の外周縁には凹凸が発生する。光情報媒体を高速で回転させると、このわずかな凹凸により発生する振動により、記録再生特性が悪くなる可能性が高い。また、内周のクランピングエリアは第2から第4の基板とカバー層を貼り合せているため、わずかなうねりや傾きが発生しているため、このままでは高精度にディスクをクランプするためには好ましくない。
(3−6)
片側4層の光情報媒体について、第1の基板のクランプエリアの外径より大きく、情報の記録または再生が可能な層が設けられた第2の基板から第4の基板とカバー層を切断する。また、この光情報媒体の外周縁の凹凸を除去する。内周の切断方法はどのような方法を使用してもかまわないが、例えば、光情報媒体を回転させながら、高出力レーザ、ダイヤモンドカッターにより切断する方法、切断形状に加工した歯を持つ打ち抜き機で切断する方法がある。外周縁の凹凸を平滑加工する方法としては、内周の切断に使用した方法に加えて、光情報媒体を回転させながら、ラッピングテープで凹凸を除去する方法や高温の治具を接触させて凹凸部分を溶融させて均一にする方法などがある。これらの方法の中で、高出力レーザで凹凸部分を切断する方法は、塵埃の発生が少なく、メンテナンスが容易であるので好ましい。
【実施例】
【0038】
以下、本発明に係る多層型光情報媒体およびその製造方法の実施形態をより具体的に説明する。尚、本発明の形態は実施例に限定されない。
【0039】
トラックピッチ0.32μm、溝幅180nm、溝深さ30nmのスタンパを使用し、ポリカーボネート樹脂の射出成形により厚み1.1mm、外径φ120mmの第1の基板1を作製した。この第1の基板にAgを主成分とするAg合金反射膜とSi/Cu系の記録膜から構成される記録再生可能な層を形成した。
【0040】
打ち抜き装置付き熱ナノインプリント装置にトラックピッチ0.32μm、溝幅180nm、溝深さ30nmのスタンパを取り付け、膜厚15μmのポリカーボネート製シートに所定の熱と圧力を加えて、スタンパの形状を転写させると同時に、冷却後に内径15mm、外径120mmの円盤状になるようにシートを打ち抜き、第2のシート状基板を作製した。同様に、第3と第4のシート基板を作製した。それぞれのシート状基板に、Agを主成分とするAg合金反射膜とシリコン/銅系の記録膜から構成される記録再生可能な層を形成した。また、カバー層として、膜厚50μmのポリカーボネートシートを内径15mm、外径120mmの円盤状になるようにシートを打ち抜いた。
【0041】
記録再生層を設けた第1の基板に紫外線硬化樹脂をスピンコートで塗布し、図3(3−1)、(3−2)、(3−3)にしたがって、記録再生層を設けた第1の基板に、記録再生層を設けた第2の基板を貼り合せた。図3(3−4)と同様に、第3の基板と第4の基板とカバー層を貼り合わせ、図3(3−5)のような、切断前の光情報媒体を作製した。
【0042】
図3(3−6)のように、第1基板の内径を中心にして回転させながら、第4の基板側から半径22.5mmと半径60mmにレーザ光を照射して、クランプエリアに当たる第2から第4基板とカバー層の切断、および外周縁の凹凸の平坦処理を行なった。ここでレーザ光照射装置としては、SUNX製のCOガスレーザー発生装置を使用した。これにより、半径16.5mmから22mmの平坦なクランプエリアを作製することができた。また、各層の偏芯は35μm以下であった。
【0043】
本発明によって、ディスクのクランプ精度および偏芯精度に優れた多層型光情報媒体を低い製造コストで製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本実施の形態が適用される片面4層の多層型光情報媒体の実施形態の模式図である。
【図2】本実施の形態が適用される片面4層光情報媒体の情報領域の断面模式図である。
【図3】本発明に係る多層型光情報媒体の製造方法の実施形態を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0045】
1 光情報媒体
2 中心穴
3 クランピングエリア
4 情報領域
5 第1基板
6 第1の基板上の設けられた情報の記録または再生が可能な層と接着層
7 情報の記録または再生が可能な層が設けられた第2の基板と接着層
8 情報の記録または再生が可能な層が設けられた第3の基板と接着層
9 情報の記録または再生が可能な層が設けられた第4の基板と接着層
10 カバー層
11 クランピングエリア
21 第1の基板
22 第1の記録または再生可能な層
23 第1の接着層
24 第2のシート状基板
25 第2の記録または再生可能な層
26 第2の接着層
27 第3のシート状基板
28 第3の記録または再生可能な層
29 第3の接着層
30 第4のシート状基板
31 第4の記録または再生可能な層
32 第4の接着層
33 カバー層
34 レーザ光
41 情報の記録または再生が可能な層が設けられた第1の基板
42 接着層
43 貼合装置のディスク固定台
44 情報の記録または再生が可能な層が設けられた第2の基板
45 紫外線
46 情報の記録または再生が可能な層が設けられた第2の基板
47 情報の記録または再生が可能な層が設けられた第3の基板
48 情報の記録または再生が可能な層が設けられた第4の基板
49 カバー層
50 切断用レーザ光
51 クランピングエリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも片面から光を照射することにより情報の記録または再生が可能なn層(nは2以上の整数)以上の情報層を有する多層型光情報媒体において、
凹凸パターンが形成された第1の基板の内径が、凹凸が形成された第2から第nの基板の内径より小さく、かつドライブにディスクをクランプするときのクランプエリアが第1の基板面に形成され、
中間層がシート状の熱可塑性基板と接着剤から形成されていることを特徴とする多層型光情報媒体。
【請求項2】
上記多層型光情報媒体において、情報の記録または再生が可能な第2から第n層の内径がほぼ同じであることを特徴とする請求項1記載の多層型光情報媒体。
【請求項3】
上記多層型光情報媒体の製造方法において、
凹凸パターンが形成された第1の基板上に情報の記録または再生が可能な層を設けた第1の基板と、第1基板と同じ内径でナノインプリント法で凹凸が形成されたシート状の第2から第nの基板上に情報の記録または再生が可能な層を設けた第2から第nの基板を貼合わせ、その後、第1の基板のクランプエリアの内径以上に前記第2から第nの基板の内径を切断し、第1の基板面がクランプエリアになるように製造することを特徴とする請求項1および2記載の多層型光情報媒体の製造方法。
【請求項4】
上記多層型光情報媒体の製造方法において、
第1から第nの光情報媒体を貼り合せたディスクを回転させながら外周縁の凹凸を平滑加工することを特徴とする請求項2記載の多層型光情報媒体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−104705(P2009−104705A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−274853(P2007−274853)
【出願日】平成19年10月23日(2007.10.23)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】