説明

多層多値記録型光記録媒体

【課題】
従来の記録層も多層であるが、各層での2ビット以上の多値記録は実現しておらず、記録の高密度化には限界がある。そこで、各記録層で2ビット以上の多値記録を実現することが望まれている。
【解決手段】
多層の記録層の組が反射率または透過率の違いにより2ビット以上の多値記録が可能な光相変化記録材料から構成され、その各記録層間には、奥の層に到達するレーザ強度を弱くすると同時に原子拡散や熱伝導をコントロールする反射層、熱拡散調整層、フィルター層、偏光層又は保護層を設け、レーザ強度、偏向方向又は色に応じて、複数の記録層の記録をコントロールすることを特徴とする多層多値記録型光記録媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
反射率または透過率の異なるアモルファス相と結晶相との相間における変化を利用する光相変化記録材料はすでに幅広く使用されているが、より大きな記録容量を持つ記録媒体が必要とされている。本発明は、記録層の枚数を増やすだけでなく、一組の記録層の反射率が、例えば、10%、20%、30%等とデジタル値を取ることを利用して、各組の記録を2ビット以上の多値記録とすることで、より記録密度をあげる光記録媒体を提供するものである。
【0002】
上記複数の反射率については、高出力のレーザ光を多層構造の記録層に照射すると、奥の層まで溶かして透明になり、その照射を止めると全て透明層になるが、次に、徐々に光源出力を段階的に下げながらアニールすると、全てが反射するようになる。このアニール条件を変えることで容易に様々な反射率を記録層に持たせることが可能となる。
【背景技術】
【0003】
従来の多層記録型光記録媒体は、反射率が異なる2つの値をとることを利用した2ビットだけの記録層が多層になっていた。
【0004】
即ち、基板上に複数組の記録媒体を積層し、その記録媒体が記録或いは再生を行う多層構成型光記録媒体において、その記録媒体内に溝を形成し、隣接記録媒体の互いの溝列をレーザ光の光軸に対して1列ずつずらすことが知られている(例えば、特許文献1)。又、多層光情報記録媒体において、各光情報記録層の下部に、低屈折率層と高屈折率層の積層体及びレーザ照射によって屈折率の変化する屈折率変化膜からなる誘電体多層反射膜を設け、この反射膜はレーザが集光照射され、読み書がなされる部位で反射率が高く、それ以外の部位で透過率が高いものとすることが知られている(例えば、特許文献2)。
【特許文献1】特開2004−342283号公報
【特許文献2】特開2005−25848号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記両特許文献でも記録層が多層であるが、各層での2ビット以上の多値記録は実現していない。この手法による記録の高密度化には限界があることから、本発明は、各記録層で2ビット以上の多値記録を実現する記録媒体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するものとして、これまでの各記録層間に他の層を介在させることによりさらに多層化することで、その多層化された各記録層の組で2ビット以上の多値記録を実現しようとする多層多値記録型光記録媒体である。
【0007】
したがって、この記録媒体内の各記録層はより薄く、その各記録層間には、奥の層に到達するレーザ強度を弱くすると同時に原子拡散や熱伝導をコントロールする反射層、熱拡散調整層、フィルター層、偏光層又は保護層を設ける。このことで、レーザ強度、偏向方向や色に応じて、奥の複数の記録層の記録をコントロールする。
【0008】
次に、本発明においては、この多層多値記録層を有する一組の多層多値記録型光記録媒体の奥にさらに同様な複数の多層多値記録型光記録媒体の組を置くこともできる。このことで、更に高い高密度記録を可能にする記録媒体を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によって、光相変化記録材料で多値記録が可能になることから、これまでの記録密度限界を超えた記録が可能となり、記録容量が増大することで、高容量のデータ量の保存だけでなく、より高精細な画質の映画などをこれまでと同じサイズの一枚のディスクに収めることが可能になる。
【0010】
又、本発明においては、複数の記録層が隣接しているので、複数の記録層のデータを一度に消去することも可能になる。偏光層を入れれば、光源の偏光特性に合わせて、隣接する記録溝列の偏光特性を変えることで、一方では光が透過し加熱により記録を行い、隣接するもう一方では光が反射することを利用して、より隣接した溝で選択的に記録することができる。このことでも記録密度を上げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、本発明の多層多値記録型光記録媒体の一実施例の一組の断面図であり、実際には、この記録媒体の何組かが積層された構造となる。この各記録媒体中の各相変化記録層2は厚さや組成が異なってもよく、各記録層の記録状態との関連で、反射率または透過率の違いにより、多値記録が実現されるように調整される。本発明における記録層は、例えば、GeSbTe1+1.5x等のように組成xによって融点が異なる2種類以上の化合物を厚さを変えて作製する(xが大きなものが低融点化合物となる)。
【0012】
又、その記録層の間にある反射層、熱拡散調整層、フィルター層又は保護層等の層1は、互いに位置を変えることが可能であり、何層かで各機能を担っても良い。積層された記録媒体の各組みに関してはレーザ照射方向から見て奥側の組はレーザの集光の位置調整をすることで記録が行われる。
【0013】
本発明の記録層は、例えばGeSbx+δ1Te1+1.5x+δ2(δ1,δ2は正負どちらでもよい)等からなる。又、本発明の反射層は、例えばAg合金からなり、熱拡散調整層は、例えばGeCrN等からなり、フィルター層および偏光層は、例えばポリマー膜等からなり、又保護層は、例えばZnS-20mol%SiO2等からなる。
【実施例】
【0014】
本発明の多層多値記録型光記録媒体を図1に従って説明する。本発明の一組の記録媒体は、図1に示すような、反射層、熱拡散調整層、フィルター層、偏光層及び/又は保護層からなる層1と、相変化記録層2と、基板又は中間層からなる層3との層状構造をとるが、記録層としては、レーザ照射側に低融点記録層を蒸着し、遠い方の側には高融点記録層を蒸着することで、各記録層が2ビット以上の多値記録を実現する。例えば、GeSbTe1+1.5xなどの化合物では、xが大きなものが低融点化合物となる。この記録層の枚数は4枚に限られることはないが、ここでは4層を1組としている。
【0015】
更に同様な記録媒体の複数の組を組合わせることで、多値記録の多層化も可能である。そのためには、各記録層に形成された互いの溝列をずらすなど、効果的な方法が考えられる。多値記録の多層化には透過率が重要であり、効率的な多値化を行うには、それぞれの記録媒体における記録層の反射率と厚さを調整する。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明の多層多値記録型光記録媒体は、一般家庭でのテレビ番組や映画の録画再生用レコーダー、パソコン用のデータ保存用レコーダー、測定機器のデータ保存用レコーダーなどの交換型記録媒体として、幅広く使用される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の多層多値記録方法が用いられる記録層の一例の断面を示す図である。
【符号の説明】
【0018】
1:反射層、熱拡散調整層、フィルター層、偏光層又は保護層
2:光相変化記録材料からなる記録層
3:基板又は中間層




【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層の記録層からなり、その各記録層が反射率の異なる2つ以上の値をとることを利用した2ビット以上の多値記録をとることを利用した高密度光記録を行う多層多値記録型光記録媒体。
【請求項2】
多層の記録層が反射率と透過率との違いにより2ビット以上の多値記録が可能な光相変化記録材料から構成され、その各記録層間には、奥の層に到達するレーザ強度を弱くすると同時に原子拡散や熱伝導をコントロールする反射層、熱拡散調整層、フィルター層、偏光層又は保護層を設け、レーザの強度、偏向方向又は色に応じて、複数の記録層の記録をコントロールすることを特徴とする多層多値記録型光記録媒体。
【請求項3】
多層の記録層からなり、その各記録層間に反射層、熱拡散調整層、フィルター層、偏光層又は保護層を設けて構成された一組の多層多値記録型光記録媒体を複数組積層したことを特徴とする積層型多層多値記録型光記録媒体。
【請求項4】
記録層が、多値記録の可能な光相変化記録材料から構成される請求項1から請求項3までのいずれかに記載の光記録媒体。




【図1】
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【公開番号】特開2007−287254(P2007−287254A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−114488(P2006−114488)
【出願日】平成18年4月18日(2006.4.18)
【出願人】(505374783)独立行政法人 日本原子力研究開発機構 (727)
【Fターム(参考)】