説明

多層支持基板を有する焦電検出器

【目的】 ノイズ低減効果のよい比較的安価でコンパクトな焦電検出器を提供する。
【構成】 焦電素子2を支持するための支持基板1を、少なくとも三層に積層されたプリント配線板1a,1b,1c,…により構成する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は複数層に積層されたプリント配線板よりなる多層支持基板を有する焦電検出器に関する。
【0002】
【従来の技術】侵入者警報装置等として広く用いられている焦電検出器では、外部からのノイズの侵入を防ぐために、焦電素子やその支持基板は金属製のステムやキャップでシールドされ、外部との接続は、ハーメチックシールされたリードピンを介しておこなわれることが多い。
【0003】しかるに、そのリードピンは高周波に対して大きなインダクタンスを持っているため、周囲に強力な高周波電界がある場合、そのリードピンに誘導起電力が発生し、雑音として出力に重畳される。そのため、このような焦電検出器を侵入者警報器として用いた場合、近くに自動車無線やトランシーバあるいは携帯電話等の高周波発生源がある場合には、誤報を発生させることもあった。
【0004】そこで、このような問題点を解消するために、例えば特開昭60−125530号公報には、FET(焦電効果トランジスタ)のドレイン電極およびソース電極のうち少なくとも一方の電極とアース電位との間に比較的容量の大きなバイパスコンデンサを接続して高周波に対する増幅度を減ずるようにした赤外線センサが提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、バイパスコンデンサを設ける場合、別途、支持基板に導体パターンを形成しなければならず、構成が複雑化し、コスト高になる等の難点があり、しかも、高周波そのものが強力である場合には、充分なノイズ低減効果を得られないこともあった。
【0006】本発明はこのような実情に鑑みてなされ、ノイズ低減効果のよい比較的安価でコンパクトな焦電検出器を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、上述の課題を解決するための手段を以下のように構成している。すなわち、焦電素子を支持するための支持基板が、少なくとも三層に積層されたプリント配線板よりなることを特徴としている。
【0008】
【作用】二層目以下に例えばグランドパターンと電源パターンとを形成し、かつそのパターンを、それぞれ各独立に形成したプリント基板に導電性材料を全面に被着したベタパターンに形成し、これらをそれぞれ別の層に配置して積層すると、高周波に対するインピーダンスを効果的に低下させることができ、かつ最上層の高インピーダンス部分の浮遊容量の安定化を図ることができる。これにより、良好な高周波のノイズ低減効果を得られる。
【0009】
【実施例】以下に本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。図1(A)〜(D)は支持基板1の積層構成を示し、符号1aは第1層目、1bは第2層目、1cは第3層目、1dは第4層目の各プリント配線板をそれぞれ示し、これらが図3に示すように積層される。
【0010】上述の第1層目のプリント配線板1aの表面には、焦電素子2(図3参照)、FET3,3、ゲートバイアス抵抗R,Rが設けられ、四隅に形成されたスルーホールHV ,HG ,HS1,HS2には、電源供給端子VD ,アース接続端子GND、信号出力端子S1 ,S2 がそれぞれ形成され、その焦電素子2はPZTやLiTaO3 等の強誘電体結晶によりペレット状(4×4×0.1mm)に形成され、その表面には互いに同一形状、同一受光面積かつ受光感度の等しい2対の受光エレメント5,6および7,8が、Cr,Ni,AlやNi−Cr等の金属を蒸着やスパッタリングすることにより被着形成されている。
【0011】第2層目と第4層目のプリント配線板1b,1dは、第1層目のプリント配線板1aのアース接続端子GNDに接続されるグランドパターンで、アース接続端子GND以外の各端子VD ,S1 ,S2 に対応するスルーホールHV ,HS1,HS2のまわりを残して基板の全面にわたり導電性材料例えば銅箔Cを被着させたいわゆるベタパターンに形成されている。
【0012】そして、第3層目のプリント配線板1cは、第1層目のプリント配線板1aの電源供給端子VD に接続される電源パターンであり、電源供給端子VD 以外の各端子S1 ,S2 ,GNDに対応するスルーホールHS1,HS2,HG のまわりを残して基板の全面にわたり導電性材料Cを被着したベタパターンに形成されている。
【0013】このように構成される焦電検出器10の等価回路は、図2に示され、例えば隣り合う受光エレメント5と6および7と8とがそれぞれ互いに逆極に接続されて、両受光エレメント対E1 (5と6)とE2 (7と8)とからFET3,3を介して両信号出力端子S1 ,S2 から圧電信号を取り出せるようになっている。なお、図示は省略するが、両受光エレメント対E1 ,E2 には不要な可視光を遮断する機能を有する赤外多層膜干渉フィルタを介して移動体からの赤外線を入射させるようにしている。
【0014】このような構成では、振動や衝撃が作用しても各受光エレメントの振動特性が相等しいことから、各受光エレメントからは絶対値の等しい圧電信号が発生し、各受光エレメント対E1 (5と6)、E2 (7と8)内で相殺される。また、赤外多層膜干渉フィルタから強い可視光が洩れ込むことがあっても各受光エレメント5,6,7,8での受光量が相等しいので、各受光エレメント対E1 ,E2 内で出力差が生じることがなく相殺され、いわゆるコモンモードのノイズを効果的に除去することができる。
【0015】そして、特にFET3のゲート端子から焦電素子2、ゲートバイアス抵抗Rに至る部分に高インピーダンス部分が形成される第1層目のプリント配線板1aに対して、GNDパターンをなす第2層目と第4層目のプリント配線板1bと1dおよび電源パターンをなす第3層目のプリント配線板1cをインピーダンスの低いいわゆるベタパターンに形成してそれぞれ別々の層に積層したので、第2層目以下により、インピーダンスを効果的に低下させて第1層目のプリント配線板1aの高インピーダンス部分の浮遊容量を安定化することができ、これにより外部から侵入する高周波ノイズを効果的に低減することができる。
【0016】また、このような多層化により、いわゆる部品集積度が向上し、焦電検出器10のコンパクト化を実現することができ、かつ各層がいわゆるベタパターンに形成されるので安価に得ることができる。
【0017】なお、第4層目のプリント配線板1dに代えて、図4に示すように、高周波に対して低インピーダンスであり、かつ高周波損失の少ないセラミックコンデンサ等よりなる3つのバイパスコンデンサ11,…を設けたプリント配線板12を採用することもできる。この場合にも、低インピーダンス化された第2層目と第3層目のプリント配線板1bと1cおよびバイパスコンデンサ11,…による良好なノイズ低減効果を得ることができる。また、本発明はプリント配線板の積層数を実施例のものに限定されることなく、適宜な積層数に設定されてよいことはいうまでもない。
【0018】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の多層支持基板を有する焦電検出器は、焦電素子を支持するための支持基板を、少なくとも三層に積層されたプリント配線板により構成したので、二層目以下にそれぞれベタパターンに形成したグランドパターンと電源パターンを積層配置し、高周波に対するインピーダンスを効果的に低減させ、かつ第1層目の高インピーダンス部分の浮遊容量の安定化を図ることができ、これにより良好な高周波ノイズ低減効果を得ることができ、信頼性が向上する。
【0019】また、多層化したことによって、部品集積度が向上し焦電検出器のコンパクト化を実現することができ、かつ各層がいわゆるベタパターンに形成されるので安価に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)は本発明の多層支持基板を有する焦電検出器の一実施例における第1層目、(B)は第2層目、(C)は第3層目、(D)は第4層目の各プリント配線板をそれぞれ示している。
【図2】同等価回路図である。
【図3】同プリント配線板の積層状態を示す斜視図である。
【図4】同異なる実施例の第4層目のプリント配線板の平面図である。
【符号の説明】
1…支持基板、1a,1b,1c,1d…プリント配線板、2…焦電素子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 焦電素子を支持するための支持基板が、少なくとも三層に積層されたプリント配線板よりなることを特徴とする多層支持基板を有する焦電検出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開平6−117926
【公開日】平成6年(1994)4月28日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−289683
【出願日】平成4年(1992)10月3日
【出願人】(000155023)株式会社堀場製作所 (638)