説明

多層紐状スクリーンを用いた映像照射方式

【課題】安価でかつ使用場所の制約が少ない、装飾性、芸術性の高い光学照射式のデスプレイ装置を提供する。
【解決手段】多層に配置した紐状スクリーンであり、初層スクリーンは映像を残しつつ次層スクリーン以下に映像を作れるように構成したスクリーンに、ビデオ機器あるいはパソコン画面上のあるいはフイルムの、静止画あるいは動画を光学的に照射映像させることを手段とする映像照射方式。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は屋内あるいは屋外において紐状生地に映像を照射する方式に関する。
【背景技術】
【0002】
映像照射は一般的には、ビデオ機器あるいはパソコン画面上の静止画あるいは動画を白色の壁あるいはベタ地布等の平面のスクリーン上に光学的に照射映像して、複数の人の視覚にアピールする。その目的としては、セミナー、会議、映画鑑賞、宣伝等に活用するものである。あるいは主流ではなくなったがフイルムによる静止画あるいは動画を白色の壁あるいはベタ地布等の平面のスクリーン上に光学的に照射映像して、複数の人の視覚にアピールするものもある。
【0003】
【特許文献1】特開2008−268858
【特許文献2】特開2009−265594
関係する従来技術として上記のような特許文献がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の一般的な背景技術は、静止画あるいは動画を白色の壁あるいはベタ地布等の平面のスクリーン上に光学的に照射映像する方式であり、屋内において、その目的である情報の伝達性を重視したセミナー、会議、映画鑑賞、宣伝等に活用する点では効果的である。しかしイベント性、芸術性を重視する場合、あるいは屋内の雰囲気作りに活用して、インテリア性をもたせ、立体映像効果を有した、屋内装飾等に使用する場合には、この映像照射方式においては単調、困難であった。
そして間仕切りを兼務させて使用することは人の通過に支障をきたし、その使用場所に制約があった。屋外で用いる場合においても、その問題点は同様であった。
また立体映像効果を狙うものとして、上述した2件の従来技術である特許文献がある。特許文献1は光透過性と光拡散性を有する幕を用いて、映像を立体的に見せる点はユニークであるが、その本文の段節「0017」等に、「人などが幕と幕との間に入ったり、物を幕と幕との間に置いたりすることが容易にできる」と記載がある。即ちスクリーンが幕なので、その幕面に略垂直に人が自由に通過することは困難であった。
特許文献2は二枚の板の間に多数の糸を平行に張り、それをスクリーンとして立体映像表示させるものであるが、やはり人がそのスクリーンを通過することは不可能であった。
本発明は従来の編機や織機で安価に大量生産でき、立体映像効果を有し、且つ、人等が自由に通過ができ、そのため間仕切りや通路部にも使用可能な映像照射装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明を実現するには以下の手段による。
「手段1」
上部が連結した紐状スクリーンを多層に配置し、お互いに間隔を有して吊下げ、初層スクリーンは映像を残しつつ次層スクリーン以下に映像を作れるように構成したスクリーンに、ビデオ機器あるいはパソコン画面上のあるいはフイルムの、静止画あるいは動画を光学的に照射映像させることを手段とする映像照射方式。
「手段2」
上部が連結した1枚の紐状スクリーンを、お互いに間隔を有してウエーブ状や渦巻状等に多層配置して、吊下げ構成したスクリーンに、ビデオ機器あるいはパソコン画面上のあるいはフイルムの、静止画あるいは動画を光学的に照射映像させることを手段とする映像照射方式。
「手段3」
手段1あるいは手段2において、多層スクリーン部は異なる色のものを含んでいることを手段とする映像照射方式。
「手段4」
手段1あるいは手段2において、多層スクリーンを構成する紐状スクリーンは銀やアルミ等の光沢を有する金属をその一部に使用したことを手段とする映像照射方式。
「手段5」
手段1あるいは手段2において、プロジェクターから照射された映像光線はミラーあるいはプリズムを経由して映像照射されることを手段とする映像照射方式。
【発明の効果】
【0006】
1)多層に配置した紐状スクリーンであり、初層スクリーンは映像を残しつつ次層スクリーン以下に映像を作れるように構成したスクリーンに、ビデオ機器あるいはパソコン画面上のあるいはフイルムの、静止画あるいは動画を光学的に照射映像させることを手段としているので、その使用場所は制約がなく、通路部にも使用でき、人や物が通過することを妨げることは無い。この点が先行特許技術1あるいは先行特許技術2と大きく異なるものである。また本発明は複雑で奥行き感のある、幻想的な立体的な映像を作り出す効果を有する。
2)本発明の映像照射スクリーンは紐状スクリーンを多層に使用するので、映像を初層スクリーンに残しながら、次層、また次々層に送ることが出来る。また紐状部は略円柱形状のため、光を多方向に乱反射する効果をも有し、正面だけでなく、横面あるいは背面等の多方の視角面より映像を見ることができ、幻想的な映像を作り出す効果を有するものとなる。
3)多層スクリーン部を異なる色のもので構成した場合には、色の多様性を発揮することができ、例えば光の3原色の効果や色の3原色の効果を活用することができることにより、さらに芸術性を高める効果を有するものとなる。
4)紐状スクリーンはさらに銀やアルミ等の光沢を有する金属をその一部に使用した場合には、光沢を有する金属が光を反射するため、さらに美的効果を増大させることが出来る。また金属は一般的に導電性を有しているため、人が通過した場合や、紐と紐の接触による静電気を減少する効果を有する。
5)プロジェクターから照射された映像光線はミラーあるいはプリズムを経由して映像照射させることで、スクリーンと、プロジェクター間が通路の場合でその光が人の目に悪影響を与える懸念がある場合や人の影で映像の途切れが問題になる場合でも、たとえば天井等へミラーやプリズムを設けて映像光線を反射、屈折させることで、スクリーンに映像させて、映像光が通路部を通過するのを迂回させることができる。この場合、スクリーンに映像光は垂直に照射しないが、傾斜角補正機能を有するプロジェクターを使用すれば問題はない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の構成の一例を示した天井側より見た図
【図2】本発明の構成である図1を略正面から見た図
【図3】別の本発明の構成に使用するスクリーンの立体図
【図4】本発明の更に別の構成に使用するスクリーンを天井側から見た図
【図5】本発明の更に別の構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下図面によって説明する。
【実施例】
【0009】
図1は本発明の構成の一例を示したものであり、紐状スクリーンを3層にして天井より吊るした構成を天井側より見た図である。即ち複数の紐を平面状に構成したものを縄のれん状に天井等から間仕切りや壁掛け等に吊下げて、これをスクリーンとして、ビデオ機器、パソコン画面上のあるいはフイルムの、静止または動画像をプロジェクターで光学映像させるものである。図1で(1)から(3)は、おのおの紐状スクリーンであり、それらは適度な間隔で吊下げたものを天井側から見た図であり、それにパソコン等からの映像を照射するプロジェクター(4)で映像を光学的に照射したものである。
このようにすると、照射された映像はまず(1)の紐状スクリーンで結像し、紐状の(1)の隙間から洩れた光で次層の紐状スクリーン(2)に結像し、さらにその隙間から洩れた光で次々層の紐状スクリーン(3)に結像する。この様に多層の映像を見ることができるようになる。そのため立体映像的な感じを与え、芸術性の高い幻想的な映像を作り出すことができる。
【0010】
図2は本発明の構成である図1を略正面から見た図であり、多層映像の説明の図である。紐状スクリーン(1)には映像(5)が、その裏側の紐状スクリーン(2)には映像(6)が、またさらにその裏側の紐状スクリーン(3)には映像(7)が結像して見えるものである。
また図示はしてないが(3)の後ろ側にはベタ生地のスクリーンを配置してもよい。
また紐状スクリーン(1)、(2)、(3)の色を異なる色に変えてもよい。例えば(1)〜(3)を光の3原色や色の3原色にすることで映像の多様性を増加させる効果が得られる。これは手段3に対応するものである。あるいは紐状スクリーン(1)〜(3)は銀やアルミ等の光沢を有する金属をその一部に使用することで映像の多様性を増加させる効果が得られる。導電性金属を使用することで静電気の発生を抑制する効果も有している。これは手段4に対応するものである。
従来技術としての静止画あるいは動画を白色の壁あるいはベタ地布等の平面に光学的に照射映像する方式はその目的であるセミナー、会議、映画鑑賞、宣伝等に活用する点では効果的である。
しかしこの映像を芸術性を高め、あるいは室内の雰囲気作りに活用して、インテリア性をもたせた屋内装飾等に使用するには、単純的で、その効果演出には不十分であり問題があった。これを本発明の方式にすれば投射映像の芸術性を高め、あるいは室内の雰囲気作りに活用して、インテリア性をもたせた屋内装飾や立体奥行き感を有する安価なデスプレイ装置としてに使用できる。さらに屋外で使用した場合においても同様な効果が期待できる。先行特許技術1の段節「0017」にはスクリーン部は幕を使用すると記載されているが、本発明は紐状スクリーンなのでどの位置からでもスクリーン部を容易に人等が通過することが出来る。先行特許技術1に使用されるスクリーンは幕であるので特に野外等で使用される場合、風を抱き込んで変形する場合が多いが、本発明の紐状スクリーンは風を適度に通過させるので、風による変形は少ないため、安定した映像となる。また先行特許技術2は2枚の板の間に多数の糸を平行に張るスクリーンのため、人等が容易にこれを通過することは困難である。
【0011】
図3は光を通過させる紐状スクリーンである(8)、(9)、(10)を略同心円状に3層に配置したものを示した図であり、これに図1あるいは図2と同様な手段により、側面等からビデオ機器、パソコン画面上のあるいはフイルムの、静止または動画像をプロジェクターで光学映像させる映像照射方式でもよい。また(8)、(9)、(10)は蚊取り線香状に1枚で構成しても同様な効果が得られる。また、上部が連結した紐状スクリーンを少なくとも下部も連結させて、スクリーンの真横から見た場合に、U字型に天井より吊り下げて2層スクリーン等としたものでもよい。
【0012】
図4は図3の(8)、(9)、(10)と同様な多層紐状スクリーンを別な構成にした場合であり、それらを天井側から見た図である。(a)図はウエーブ状、(b)図は3層の三角形状の例である。(c)図は紐状スクリーンがクロスしている図である。さらに映像照射のスクリーンとなる多層スクリーンは上記に限定するものではなく、それらの間隔は等間隔とは限らず、ランダムに変形した複雑な形状を有するものであってもよい。本発明の多層スクリーンとは光が初層スクリーンを通過後に少なくとも次層スクリーンをも通過できる配置構成をいうものである。紐状スクリーンは、その材料を繊維で構成した場合は、織機あるいは編機を用いて安価に生産することができる。
【0013】
図5は別の本発明である。多層スクリーンは、天井に(11)なるミラーやプリズム等を配置してプロジェクター(4)の光学映像照射を(11)に照射してその反射光や屈折光をスクリーンとなる多層スクリーンの初層(1)、次層(2)、次々層(3)に図1あるいは図2と同様に照射する方式である。このようにすれば図1の構成でプロジェクター(4)と初層スクリーン(1)の間が通路の場合で人の通過で映像が途切れることがない。また人が映像光を受ける場合でも人の目にまぶしさを与えることもない。
またプリズムを通すことでさらに映像の多様性を増すことも可能となる。この場合、スクリーンに映像光は垂直に照射されないが、傾斜角補正機能を有するプロジェクターを使用すれば問題はない。
【0014】
紐状スクリーンの場合、映像がオーロラ、滝、雨、雪、竹林、杉等の垂直の線を含むものは紐の垂直ラインにより映像に力強さや誇張を与えることができる。
また映像が、星、星座、天体、等の天空に関するものは室内を暗くして使用する場合が多いため、夜空のイメージに合うので効果大となる。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明による映像照射方式は多層紐状スクリーンを用いるため、映像が立体的に見え、芸術性、インテリア装飾に優れ、安価なデスプレイ装置が実現できる。またその使用場所は通路部にも可能であり、実用性を備え、工業的に大きな貢献が期待される。
【符号の説明】
【0016】
(1)〜(3):本発明に関するスクリーンを天井側から見た図
(4):プロジェクター
(5)、(6)、(7):映像
(8)〜(10):本発明に関するスクリーンの立体図
(11):ミラープロジェクター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部が連結した紐状スクリーンを多層に配置し、お互いに間隔を有して吊下げ、初層スクリーンは映像を残しつつ次層スクリーン以下に映像を作れるように構成したスクリーンに、ビデオ機器あるいはパソコン画面上のあるいはフイルムの、静止画あるいは動画を光学的に照射映像させることを特徴とする映像照射方式。
【請求項2】
上部が連結した1枚の紐状スクリーンを、お互いに間隔を有してウエーブ状や渦巻状等に多層配置して、吊下げ構成したスクリーンに、ビデオ機器あるいはパソコン画面上のあるいはフイルムの、静止画あるいは動画を光学的に照射映像させることを特徴とする映像照射方式。
【請求項3】
請求項1あるいは請求項2において、多層スクリーン部は異なる色のものを含んでいることを特徴とする映像照射方式。
【請求項4】
請求項1あるいは請求項2において、多層スクリーンを構成する紐状スクリーンは銀やアルミ等の光沢を有する金属をその一部に使用したことを特徴とする映像照射方式。
【請求項5】
請求項1あるいは請求項2において、プロジェクターから照射された映像光線はミラーあるいはプリズムを経由して映像照射されることを特徴とする映像照射方式。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−58705(P2012−58705A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−216054(P2010−216054)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【出願人】(593071823)株式会社黒沢レ−ス (13)
【Fターム(参考)】