説明

多層膜フィルタ

【課題】パルス幅を広げることなく光の切り分けが出来、また、可視光の反射帯域を広くすることが出来る多層膜フィルタを提供する。
【解決手段】少なくとも2種類以上の異なる屈折率の層を交互に積層した誘電体多層膜を1つのスタックとし、スタックを基板上に少なくとも2つ以上積層した構成を備え、基板から離れるにつれてスタックの群遅延分散が順次小さくなる。積層したスタックとスタックの間、基板とスタックの間、及び、基板から最も遠いスタック上、のいずれか又は複数の位置に調整層を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層膜フィルタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
フェムト秒(fs)オーダーのパルス幅を有するレーザ光を発する短パルスレーザ発振器は、医療、測定、加工、生態観察機器などに使用されている。この短パルスレーザ発振器は、モード同期と呼ばれる動作によりレーザ光を発生する。通常、レーザ光は単一波長の光の共振によって発振されるが、モード同期では、波長の異なるいくつかの光の位相をすべて同期させることにより、すなわち相対位相差を0にすることにより、レーザ光を発振させる。このため、モード同期は、縦モード間のマルチモード干渉により、同期している時間が短く、時間領域では極めて短いパルスとなる現象である。
【0003】
このように発生した短パルス幅のレーザ光は、それぞれが波長成分を持つ単一波長のパルス光の集まりと考えられ、光学部品や空気中において、各波長における進行速度が異なる。このため、光が進行するにしたがってパルス幅が広がる現象が生じる。
【0004】
パルス幅が広がった光は、進行速度が速い波長の光が長い距離を進むように設計されたミラーで反射することにより、パルス幅を圧縮することが出来る。このようなミラーは負分散ミラーと呼ばれ、例えば特許文献1に記載されている。この特許文献1は、2枚の負分散ミラー間を何回か反射させることによって、パルス幅を圧縮することが出来ることを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4142179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図20は、従来の多光子吸収顕微鏡の概略構成を示す図である。
生態観察用の多光子吸収顕微鏡のように、励起波長と異なる波長帯域において観察を行うような装置では、短パルスレーザ発振機からの多光子励起光を観察対象に照射することによって励起光を発生させ、発生した励起光を観察する。このような装置では、例えば、図20に示すように、レーザ光源101で発振させた短パルスレーザ光を多層膜フィルタ102で反射させ、観察台103上に置いた観察対象Sに照射する。このレーザ光の照射によって観察対象Sで発生した励起光は、多層膜フィルタ102を透過して観察者Bによる観察が可能となる。多層膜フィルタ102の特性としては、短パルスレーザ光の波長を含む反射帯域においてはパルス幅が広げることがなく、可視領域においては、観察対象Sで発生した励起光を観察のために透過させることが求められる。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載されている負分散ミラーでは、波長により光を透過する帯域と反射する帯域に、明確に切り分けることが出来ない。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、パルス幅を広げることなく光の切り分けが出来、また、可視光の反射帯域を広くすることが出来る多層膜フィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る多層膜フィルタは、少なくとも2種類以上の異なる屈折率の層を交互に積層した誘電体多層膜を1つのスタックとし、スタックを基板上に少なくとも2つ以上積層した構成を備え、基板から離れるにつれてスタックの群遅延分散が順次小さくなることを特徴としている。
【0010】
本発明に係る多層膜フィルタにおいては、積層したスタックとスタックの間、基板とスタックの間、及び、基板から最も遠いスタック上、のいずれか又は複数の位置に調整層を有することが好ましい。
【0011】
本発明に係る多層膜フィルタにおいては、基板上に積層した複数のスタックの中心波長が互いに異なることが好ましい。
【0012】
本発明に係る多層膜フィルタにおいて、複数のスタックの少なくとも一つは、全て同数の層からなる複数のブロックからなり、かつ、複数のブロックの光学膜厚が基板から離れるにつれて順次増加することが好ましい。
【0013】
本発明に係る多層膜フィルタにおいては、スタック内の複数のブロックの光学膜厚の変化が回帰直線から±2.6%以内の範囲内にあることが好ましい。
【0014】
本発明に係る多層膜フィルタにおいては、透過率が5%以下の範囲であり、群遅延分散が±8000fs以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る多層膜フィルタによれば、パルス幅を広げることなく光の切り分けが出来、また、可視光の反射帯域を広くすることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例1の多層膜フィルタにおける波長に対する透過率の変化を示す図である。
【図2】実施例1の多層膜フィルタにおける波長に対する群遅延分散の変化を示す図である。
【図3】実施例1の第2スタックにおける積層ブロック数に対する1ブロック膜厚を示す図である。
【図4】実施例1の第1スタックにおける波長に対する透過率の変化を示す図である。
【図5】実施例1の第2スタックにおける波長に対する透過率の変化を示す図である。
【図6】実施例1の第1スタックにおける波長に対する群遅延分散の変化を示す図である。
【図7】実施例1の第2スタックにおける波長に対する群遅延分散の変化を示す図である。
【図8】実施例2の多層膜フィルタにおける波長に対する透過率の変化を示す図である。
【図9】実施例2の多層膜フィルタにおける波長に対する群遅延分散の変化を示す図である。
【図10】実施例2の第2スタック及び第3スタックにおける積層ブロック数に対する1ブロック膜厚を示す図である。
【図11】実施例2の第1スタックにおける波長に対する群遅延分散の変化を示す図である。
【図12】実施例2の第2スタックにおける波長に対する群遅延分散の変化を示す図である。
【図13】実施例2の第3スタックにおける波長に対する群遅延分散の変化を示す図である。
【図14】実施例3の多層膜フィルタにおける波長に対する透過率の変化を示す図である。
【図15】実施例3の多層膜フィルタにおける波長に対する群遅延分散の変化を示す図である。
【図16】実施例3の第2スタックにおける積層ブロック数に対する1ブロック膜厚を示す図である。
【図17】実施例3の第1スタックにおける波長に対する群遅延分散の変化を示す図である。
【図18】実施例3の第2スタックにおける波長に対する群遅延分散の変化を示す図である。
【図19】実施例3の第3スタックにおける波長に対する群遅延分散の変化を示す図である。
【図20】従来の多光子吸収顕微鏡の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明に係る多層膜フィルタの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
まず、本発明に係る多層膜フィルタによる作用・効果について説明する。
【0018】
本発明の多層膜フィルタにおいては、以下のような膜構成とすることで、上述の課題を解決している。
(1)少なくとも2種類以上の異なった屈折率の層を交互に積層した誘電体多層膜を1つのスタックとし、このスタックを基板上に少なくとも2つ以上積層した構成を備え、基板から離れるにつれてスタックの群遅延分散(GDD)が順次小さくなるように、各スタックを配置する構成としている。
この構成によると、光が群遅延分散の変化が大きくなる部分まで届かなくなるため、群遅延分散の値を大きく変化することを無くすことができる。以下の実施例1、2、3において群遅延分散の値を0に近づけることが出来る薄膜構成のスタックを空気側に置くようにしている。
【0019】
(2)積層したスタックとスタックの間、基板とスタックの間、基板から最も遠いスタック上、のいずれか又は複数の位置に調整層を有する構成が好ましい。
この構成によると、透過帯、反射帯で急激の光学特性の変化を無くすことができる。例えば、後述の実施例1、2、3のように、各スタックの間に2〜4層の調整層を入れることで図1、図8、図14に示すように、ある一定の値以上の透過率を保ち、反射帯ではある一定以下の透過率となる。実施例1の図1で言えば波長範囲400nm〜670nmの光を90%以上透過し、波長範囲715nm〜1000nmで5%以下の透過率を実現している。実施例2、3についても同様である。
【0020】
(3)基板上に積層した複数のスタックの中心波長が互いに異なることが好ましい。
この構成によると、反射帯域の波長幅を広げることができる。スタックの中心波長が単一の場合反射帯域の幅を200nm程度までしか設けることが出来ない。しかし、中心波長を長波長、又は短波長にずらしたスタックを重ねることで200nm以上の反射帯域を設けることが出来る。図1、図8、図14に示す反射帯域はいずれも200nmより広くなっている。
【0021】
(4)複数のスタックの少なくとも一つは、全て同数の層からなる複数のブロックからなり、かつ、複数のブロックの光学膜厚(nd)が基板から離れるにつれて順次増加することが好ましい。
この構成によると、群遅延分散の値を0に近づけることが出来る。図3、図10、図16に示すように基板側から空気側に向かい1ブロック毎の光学膜厚が増加している。
【0022】
(5)スタック内の複数のブロックの光学膜厚の変化が回帰直線から±2.6%以内の範囲内にあることが好ましい。
この構成によると、光学特性の反射帯域、透過帯域を明確に分けることが出来、かつ群遅延分散を0に近づけることが出来る。実施例3の図16で示すように、基板側から空気側にかけての前ブロックと比較した際の光学膜厚の変化率は増減がある。しかし、その変化率は回帰直線化から±2.6%以内である。
(5)における「スタック」は複数のスタックのうちの1つであることが好ましく、「複数のブロック」はすべてのブロックであることが好ましい。
【0023】
(6)透過率が5%以下の範囲であり、群遅延分散が±8000fs以下であることが好ましい。これらの透過率及び群遅延分散の範囲は、反射帯域における範囲であることが好ましい。
この構成によると、レーザのパルス幅の広げることなく光の切り分けが出来る。図2、図9、図15で示すように反射帯域での群遅延分散は0±8000fs以内に収まっている。
【0024】
(実施例1)
以下に、実施例1に係る多層膜フィルタの数値データを示す。
この数値データに示すように、実施例1の多層膜フィルタは、屈折率が1.52の光学ガラス基板上に、高屈折率物質H(Ta:屈折率2.15)と低屈折率物質L(SiO:屈折率1.48)の薄膜を交互に形成している。より具体的には、この多層膜フィルタは、50層の薄膜からなる多層膜フィルタであり、基板側から1〜4層、21〜24層、及び47〜50層を調整層とし、基板側から5〜20層を第1スタック、25〜46層を第2スタックとして構成している。したがって、調整層は、基板と第1スタックの間、第1スタックと第2スタックの間、及び、基板から最も遠い第2スタック上に形成されている。また、2層を1ブロックとして、第2スタックを複数のブロックで構成し、基板側から空気側に向かって徐々にブロック毎の光学膜厚が厚くなる構成としている。
【0025】
実施例1
層番号 材料 膜厚(nm)
基板
1 Ta 0.2707
2 SiO 0.2745
3 Ta 0.2295
4 SiO 0.2579
5 Ta 0.2225
6 SiO 0.2528
7 Ta 0.2225
8 SiO 0.2528
9 Ta 0.2225
10 SiO 0.2528
11 Ta 0.2225
12 SiO 0.2528
13 Ta 0.2225
14 SiO 0.2528
15 Ta 0.2225
16 SiO 0.2528
17 Ta 0.2225
18 SiO 0.2528
19 Ta 0.2225
20 SiO 0.2528
21 Ta 0.2238
22 SiO 0.2585
23 Ta 0.2237
24 SiO 0.2636
25 Ta 0.2300
26 SiO 0.2613
27 Ta 0.2359
28 SiO 0.2680
29 Ta 0.2418
30 SiO 0.2747
31 Ta 0.2477
32 SiO 0.2814
33 Ta 0.2536
34 SiO 0.2881
35 Ta 0.2595
36 SiO 0.2948
37 Ta 0.2653
38 SiO 0.3015
39 Ta 0.2712
40 SiO 0.3082
41 Ta 0.2772
42 SiO 0.3149
43 Ta 0.2830
44 SiO 0.3215
45 Ta 0.2889
46 SiO 0.3283
47 Ta 0.2700
48 SiO 0.2973
49 Ta 0.2818
50 SiO 0.1549

層番号
1〜4 調整層
5〜20 第1スタック
21〜24 調整層
25〜46 第2スタック
47〜50 調整層
【0026】
薄膜の形成は、イオンガンによるアシストをしながら薄膜を形成するIAD(Ion Assisted Deposition)の手法を用いて行なった。この手法によれば、酸素イオンを基板に向けて照射することにより高密度に形成することが可能である。
【0027】
図1は、実施例1の多層膜フィルタにおける波長(単位nm)に対する透過率(%)の変化を示す図である。図2は、実施例1の多層膜フィルタにおける波長(単位nm)に対する群遅延分散(fs)の変化を示す図である。図3は、実施例1の第2スタックにおける積層ブロック数に対する1ブロック膜厚を示す図である。図4は、実施例1の第1スタックにおける波長(単位nm)に対する透過率(%)の変化を示す図である。図5は、実施例1の第2スタックにおける波長(単位nm)に対する透過率(%)の変化を示す図である。図6は、実施例1の第1スタックにおける波長(単位nm)に対する群遅延分散(fs)の変化を示す図である。図7は、実施例1の第2スタックにおける波長(単位nm)に対する群遅延分散(fs)の変化を示す図である。
【0028】
図1、図4、図5、図8、図14において、P−Transmittance(%)はP偏波透過率、S−Transmittance(%)はS偏波透過率、Mean−Transmittance(%)はこれらの透過率の平均である。
図2、図6、図7、図9、図11〜13、図15、図17〜19において、P−Reflectance GDD(fs)はP偏波反射群遅延分散、S−Reflectance GDD(fs)は、S偏波反射群遅延分散である。
なお、光学膜厚は「屈折率×物理膜厚」の値であり、各層の膜厚は「光学膜厚/設計波長」で記載している。また、設計波長は900nmとした。
【0029】
図1に示すように、光学ガラス基板上に形成した多層膜フィルタに45°で入射する光に対して、多層膜フィルタの分光特性として、波長範囲400nm〜670nmの光を透過し、波長範囲715nm〜1000nmまでの光を反射している。また、群遅延分散については、図2に示すように、反射帯域である715nm〜1000nmで群遅延分散が0±2000fs以内となっている。
【0030】
膜構成に関しては、図3に示すように、2層を1ブロックとしたときのブロックごとの光学膜厚が、基板側から空気側に向けてブロック数が増えるにつれて順次厚くなっている。図3に示すブロック数は、0側が基板側を表し、数字が大きくなるにつれ空気側に近づくことを表している。ここで、「空気側」は基板から離れる側であり、層番号が大きな層側である。
【0031】
さらに、図4と図5から分かるように、第1スタックと第2スタックとで互いに中心波長が異なっている。図4と図5に示す例では、第1スタックの中心波長は780nm、第2スタックの中心波長は940nmである。
また、図6と図7から分かるように、基板に近い第1スタック(図6)よりも、第2スタック(図7)の方が群遅延分散が小さくなっている。
【0032】
なお、実施例1では、イオンガンによるアシストをしながら薄膜を形成する手法を用いたが、薄膜の形成は、この手法に限定せず、例えば、イオンガンを使用しない真空蒸着、スパッタリング、イオンビームスパッタリングを用いることができ、特に手法は限定しない。
【0033】
(実施例2)
以下に、実施例2に係る多層膜フィルタの数値データを示す。
この数値データに示すように、実施例2の多層膜フィルタは、屈折率が1.52の光学ガラス基板上に、高屈折率物質H(Ta:屈折率2.15)と低屈折率物質L(SiO:屈折率1.48)の薄膜を交互に形成している。より具体的には、この多層膜フィルタは、150層の薄膜からなる多層膜フィルタであり、基板側から1〜4層、97〜102層、及び147〜150層を調整層とし、基板側から5〜96層を第1スタック、103〜126層を第2スタック、127〜146層を第3スタック、として構成している。したがって、調整層は、基板と第1スタックの間、第1スタックと第2スタックの間、及び、基板から最も遠い第3スタック上に形成されている。また、2層を1ブロックとして、第2スタック及び第3スタックを複数のブロックでそれぞれ構成し、基板側から空気側に向かって徐々にブロック毎の光学膜厚が厚くなる構成としている。
【0034】
実施例2
層番号 材料 膜厚(nm)
基板
1 Ta 0.0596
2 SiO 0.0653
3 Ta 0.0677
4 SiO 0.3523
5 Ta 0.0386
6 SiO 0.0694
7 Ta 0.0386
8 SiO 0.3085
9 Ta 0.0386
10 SiO 0.0694
11 Ta 0.0386
12 SiO 0.3085
13 Ta 0.0386
14 SiO 0.0694
15 Ta 0.0386
16 SiO 0.3085
17 Ta 0.0386
18 SiO 0.0694
19 Ta 0.0386
20 SiO 0.3085
21 Ta 0.0386
22 SiO 0.0694
23 Ta 0.0386
24 SiO 0.3085
25 Ta 0.0386
26 SiO 0.0694
27 Ta 0.0386
28 SiO 0.3085
29 Ta 0.0386
30 SiO 0.0694
31 Ta 0.0386
32 SiO 0.3085
33 Ta 0.0386
34 SiO 0.0694
35 Ta 0.0386
36 SiO 0.3085
37 Ta 0.0386
38 SiO 0.0694
39 Ta 0.0386
40 SiO 0.3085
41 Ta 0.0386
42 SiO 0.0694
43 Ta 0.0386
44 SiO 0.3085
45 Ta 0.0386
46 SiO 0.0694
47 Ta 0.0386
48 SiO 0.3085
49 Ta 0.0386
50 SiO 0.0694
51 Ta 0.0386
52 SiO 0.3085
53 Ta 0.0386
54 SiO 0.0694
55 Ta 0.0386
56 SiO 0.3085
57 Ta 0.0386
58 SiO 0.0694
59 Ta 0.0386
60 SiO 0.3085
61 Ta 0.0386
62 SiO 0.0694
63 Ta 0.0386
64 SiO 0.3085
65 Ta 0.0386
66 SiO 0.0694
67 Ta 0.0386
68 SiO 0.3085
69 Ta 0.0386
70 SiO 0.0694
71 Ta 0.0386
72 SiO 0.3085
73 Ta 0.0386
74 SiO 0.0694
75 Ta 0.0386
76 SiO 0.3085
77 Ta 0.0386
78 SiO 0.0694
79 Ta 0.0386
80 SiO 0.3085
81 Ta 0.0386
82 SiO 0.0694
83 Ta 0.0386
84 SiO 0.3085
85 Ta 0.0386
86 SiO 0.0694
87 Ta 0.0386
88 SiO 0.3085
89 Ta 0.0386
90 SiO 0.0694
91 Ta 0.0386
92 SiO 0.3085
93 Ta 0.0386
94 SiO 0.0694
95 Ta 0.0386
96 SiO 0.3085
97 Ta 0.0386
98 SiO 0.0574
99 Ta 0.0414
100 SiO 0.2922
101 Ta 0.2401
102 SiO 0.2629
103 Ta 0.2320
104 SiO 0.2637
105 Ta 0.2328
106 SiO 0.2646
107 Ta 0.2335
108 SiO 0.2653
109 Ta 0.2342
110 SiO 0.2661
111 Ta 0.2349
112 SiO 0.2669
113 Ta 0.2356
114 SiO 0.2677
115 Ta 0.2364
116 SiO 0.2686
117 Ta 0.2371
118 SiO 0.2694
119 Ta 0.2378
120 SiO 0.2702
121 Ta 0.2385
122 SiO 0.2710
123 Ta 0.2392
124 SiO 0.2719
125 Ta 0.2400
126 SiO 0.2727
127 Ta 0.2638
128 SiO 0.2997
129 Ta 0.2660
130 SiO 0.3022
131 Ta 0.2682
132 SiO 0.3047
133 Ta 0.2703
134 SiO 0.3072
135 Ta 0.2725
136 SiO 0.3096
137 Ta 0.2746
138 SiO 0.3121
139 Ta 0.2768
140 SiO 0.3146
141 Ta 0.2790
142 SiO 0.3170
143 Ta 0.2812
144 SiO 0.3195
145 Ta 0.2834
146 SiO 0.3220
147 Ta 0.2775
148 SiO 0.2996
149 Ta 0.2548
150 SiO 0.1640

層番号
1〜4 調整層
5〜96 第1スタック
97〜102 調整層
103〜126 第2スタック
127〜146 第3スタック
147〜150 調整層
【0035】
薄膜の形成は、実施例1と同様に、イオンガンによるアシストをしながら薄膜を形成する手法を用いて行なった。
【0036】
図8は、実施例2の多層膜フィルタにおける波長(単位nm)に対する透過率(%)の変化を示す図である。図9は、実施例2の多層膜フィルタにおける波長(単位nm)に対する群遅延分散(fs)の変化を示す図である。図10は、実施例2の第2スタック及び第3スタックにおける積層ブロック数に対する1ブロック膜厚を示す図である。図11は、実施例2の第1スタックにおける波長(単位nm)に対する群遅延分散(fs)の変化を示す図である。図12は、実施例2の第2スタックにおける波長(単位nm)に対する群遅延分散(fs)の変化を示す図である。図13は、実施例2の第3スタックにおける波長(単位nm)に対する群遅延分散(fs)の変化を示す図である。
【0037】
図8に示すように、光学ガラス基板上に形成した多層膜フィルタに45°で入射する光に対して、波長範囲400nm〜685nmまでの光を透過し、波長範囲710nm〜1000nmまでの光を反射している。群遅延分散に関しては、図9に示すように、反射帯域である715nm〜1000nmにおいて0±8000fs以内となっている。
【0038】
第2スタックと第3スタックの膜構成に関しては、図10に示すように、2層を1ブロックとしたときのブロックごとの光学膜厚が、基板側から空気側に向けてブロック数が増えるにつれて順次厚くなっている。図10に示すブロック数は、0側が基板側を表し、数字が大きくなるにつれ空気側に近づくことを表している。
【0039】
さらに、図11〜13から分かるように、基板に最も近い第1スタック(図11)から、第2スタック(図12)、基板から最も遠い第3スタック(図13)の順に群遅延分散が小さくなっている。
また、第1スタック、第2スタック、及び第3スタックとで中心波長が互いに異なっていることが好ましい。
【0040】
実施例2では、IADの手法を用いたが、この手法に限定せず、例えば、イオンガンを使用しない真空蒸着、スパッタリング、イオンビームスパッタリングを用いることができ、特に手法は限定しない。
【0041】
(実施例3)
以下に、実施例3に係る多層膜フィルタの数値データを示す。
この数値データに示すように、実施例3の多層膜フィルタは、屈折率が1.52の基板上に高屈折率物質H(Ta:屈折率2.15)と低屈折率物質L(SiO2:屈折率1.48)の薄膜を交互に形成したものである。具体的には、この多層膜フィルタは、140層からなる多層膜フィルタであり、基板側から1〜4層、37〜38層、73〜74層、及び137〜140層の調整層と、5〜36層の第1スタックと、39〜72層の第2スタックと、75〜136層の第3スタックと、によって構成されている。したがって、調整層は、基板と第1スタックの間、第1スタックと第2スタックの間、第2スタックと第3スタックの間、及び、基板から最も遠い第3スタック上に形成されている。また、2層を1ブロックとして、第2スタック及び第3スタックを複数のブロックでそれぞれ構成し、基板側から空気側に向かって徐々にブロック毎の光学膜厚が厚くなる構成としている。
【0042】
実施例3
層番号 材料 膜厚(nm)
基板
1 Ta 0.0272
2 SiO 0.0565
3 Ta 0.2591
4 SiO 0.2736
5 Ta 0.2352
6 SiO 0.2588
7 Ta 0.2221
8 SiO 0.2548
9 Ta 0.2205
10 SiO 0.2515
11 Ta 0.2190
12 SiO 0.2520
13 Ta 0.2173
14 SiO 0.2502
15 Ta 0.2184
16 SiO 0.2503
17 Ta 0.2166
18 SiO 0.2499
19 Ta 0.2170
20 SiO 0.2494
21 Ta 0.2178
22 SiO 0.2496
23 Ta 0.2164
24 SiO 0.2512
25 Ta 0.2184
26 SiO 0.2507
27 Ta 0.2176
28 SiO 0.2498
29 Ta 0.2172
30 SiO 0.2501
31 Ta 0.2178
32 SiO 0.2511
33 Ta 0.2197
34 SiO 0.2511
35 Ta 0.2198
36 SiO 0.2543
37 Ta 0.2221
38 SiO 0.2573
39 Ta 0.2265
40 SiO 0.2603
41 Ta 0.2312
42 SiO 0.2658
43 Ta 0.2334
44 SiO 0.2673
45 Ta 0.2345
46 SiO 0.2658
47 Ta 0.2320
48 SiO 0.2625
49 Ta 0.2295
50 SiO 0.2636
51 Ta 0.2323
52 SiO 0.2677
53 Ta 0.2394
54 SiO 0.2744
55 Ta 0.2436
56 SiO 0.2792
57 Ta 0.2467
58 SiO 0.2780
59 Ta 0.2467
60 SiO 0.2810
61 Ta 0.2496
62 SiO 0.2837
63 Ta 0.2509
64 SiO 0.2846
65 Ta 0.2510
66 SiO 0.2848
67 Ta 0.2549
68 SiO 0.2890
69 Ta 0.2569
70 SiO 0.2883
71 Ta 0.2551
72 SiO 0.2868
73 Ta 0.2509
74 SiO 0.2810
75 Ta 0.0402
76 SiO 0.0187
77 Ta 0.2137
78 SiO 0.0352
79 Ta 0.0347
80 SiO 0.2769
81 Ta 0.0347
82 SiO 0.0352
83 Ta 0.2229
84 SiO 0.0352
85 Ta 0.0347
86 SiO 0.2656
87 Ta 0.0347
88 SiO 0.0352
89 Ta 0.2229
90 SiO 0.0352
91 Ta 0.0347
92 SiO 0.2656
93 Ta 0.0347
94 SiO 0.0352
95 Ta 0.2229
96 SiO 0.0352
97 Ta 0.0347
98 SiO 0.2656
99 Ta 0.0347
100 SiO 0.0352
101 Ta 0.2229
102 SiO 0.0352
103 Ta 0.0347
104 SiO 0.2656
105 Ta 0.0347
106 SiO 0.0352
107 Ta 0.2310
108 SiO 0.0352
109 Ta 0.0347
110 SiO 0.2743
111 Ta 0.0347
112 SiO 0.0352
113 Ta 0.2310
114 SiO 0.0352
115 Ta 0.0347
116 SiO 0.2743
117 Ta 0.0347
118 SiO 0.0352
119 Ta 0.2310
120 SiO 0.0352
121 Ta 0.0347
122 SiO 0.2743
123 Ta 0.0347
124 SiO 0.0352
125 Ta 0.2310
126 SiO 0.0352
127 Ta 0.0347
128 SiO 0.2743
129 Ta 0.0347
130 SiO 0.0352
131 Ta 0.2310
132 SiO 0.0352
133 Ta 0.0347
134 SiO 0.2743
135 Ta 0.0347
136 SiO 0.0352
137 Ta 0.2310
138 SiO 0.0352
139 Ta 0.0347
140 SiO 0.1396

層番号
1〜4 調整層
5〜36 第1スタック
37〜38 調整層
39〜72 第2スタック
73〜74 調整層
75〜136 第3スタック
137〜140 調整層
【0043】
薄膜の形成は、実施例1、2と同様に、イオンガンによるアシストをしながら薄膜を形成するIADの手法を用いて行なった。
【0044】
図14は、実施例3の多層膜フィルタにおける波長(単位nm)に対する透過率(%)の変化を示す図である。図15は、実施例3の多層膜フィルタにおける波長(単位nm)に対する群遅延分散(fs)の変化を示す図である。図16は、実施例3の第2スタックにおける積層ブロック数に対する1ブロック膜厚を示す図である。図17は、実施例3の第1スタックにおける波長(単位nm)に対する群遅延分散(fs)の変化を示す図である。図18は、実施例3の第2スタックにおける波長(単位nm)に対する群遅延分散(fs)の変化を示す図である。図19は、実施例3の第3スタックにおける波長(単位nm)に対する群遅延分散(fs)の変化を示す図である。
【0045】
図16において、「+2.6%」で示す破線は、回帰直線に対して+2.6%の範囲を示す直線であり、「−2.6%」で示す実線は、回帰直線に対して−2.6%の範囲を示す直線である。
なお、光学膜厚は「屈折率×物理膜厚」の値であり、各層の膜厚は「光学膜厚/設計波長」で記載している。また、設計波長は900nmとした。また、自動設計により各層の光学膜厚の微調整を行なっている。
【0046】
図14に示すように、光学ガラス基板上に形成した多層膜フィルタに45°で入射する光に対して、波長範囲350nm〜665nmまでの光を透過し、波長範囲700nm〜1100nmまでの光を反射している。群遅延分散に関しては、図15に示すように、反射帯域である波長範囲700nm〜1100nmにおいて0±8000fs以内となっている。
【0047】
第2スタックの膜構成については、図16に示すように、2層を1ブロックとしたときのブロックごとの光学膜厚が、概ね基板側から空気側に向かってブロック数が増えるにつれて順次厚くなっている。正確には、ブロックごとの光学膜圧は、回帰直線y=0.038x+0.4829に対して、±2.6%以下の構成になっている。
【0048】
さらに、図17〜19から分かるように、基板に最も近い第1スタック(図17)から、第2スタック(図18)、基板から最も遠い第3スタック(図19)の順に群遅延分散が小さくなっている。
また、第1スタック、第2スタック、及び第3スタックとで中心波長が互いに異なっていることが好ましい。
【0049】
なお、実施例3においても、イオンガンによるアシストをしながら薄膜を形成する手法を用いたが、この手法に限定せず、例えば、イオンガンを使用しない真空蒸着、スパッタリング、イオンビームスパッタリングを用いることができ、特に手法は限定しない。
【産業上の利用可能性】
【0050】
以上のように、本発明に係る多層膜フィルタは、パルス幅を広げることなく光の切り分けが出来、可視光の反射帯域を広くすることが必要なフィルタに有用である。
【符号の説明】
【0051】
101 レーザ光源
102 多層膜フィルタ
103 観察台
S 観察対象

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2種類以上の異なる屈折率の層を交互に積層した誘電体多層膜を1つのスタックとし、前記スタックを基板上に少なくとも2つ以上積層した構成を備え、
前記基板から離れるにつれて前記スタックの群遅延分散が順次小さくなることを特徴とする多層膜フィルタ。
【請求項2】
積層した前記スタックと前記スタックの間、前記基板と前記スタックの間、及び、前記基板から最も遠い前記スタック上、のいずれか又は複数の位置に調整層を有することを特徴とする請求項1に記載の多層膜フィルタ。
【請求項3】
前記基板上に積層した複数の前記スタックの中心波長が互いに異なることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の多層膜フィルタ。
【請求項4】
前記複数のスタックの少なくとも一つは、全て同数の層からなる複数のブロックからなり、かつ、前記複数のブロックの光学膜厚が前記基板から離れるにつれて順次増加することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の多層膜フィルタ。
【請求項5】
前記スタック内の前記複数のブロックの光学膜厚の変化が回帰直線から±2.6%以内の範囲内にあることを特徴とする請求項4に記載の多層膜フィルタ。
【請求項6】
透過率が5%以下の範囲であり、群遅延分散が±8000fs以下であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の多層膜フィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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