説明

多層配線構造の形成方法

【目的】 多層配線構造を形成する際に塗布材料を用いるとその塗布膜15に盛り上がり部Pが生じこれが密着露光法に悪影響を与える。これを除去できる方法を提供する。
【構成】 塗布法により形成した層間絶縁膜形成用の膜15であって盛り上がり部Pを有する膜15上にポジ型レジスト層17を形成する(図1(B))。このレジスト層17及び層間絶縁膜形成用の膜15の盛り上がり部Pに当たる部分を露光法やエッチング手段により選択的に除去する(図1(C)〜(D))。盛り上がり部の除去の済んだレジストパターン17xにホトマスク密着させて配線形成のための露光をする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、多層配線構造の形成方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】例えば、半導体集積回路(IC)をはじめとする種々の電子部品が実装されるプリント基板や、このようなプリント基板に実装されるICにおいては、配線を層間絶縁膜を介し何層にも重ね、これら配線間は層間絶縁膜に設けた貫通孔を利用して接続する、いわゆる多層配線構造が多用される。そうすることにより、プリント基板や半導体基板に部品や個別素子を高密度に実装若しくは形成でき、また、電子装置やICの動作速度の向上が図れるからである。
【0003】このような多層配線構造の各配線を形成する際には、密着露光法によって形成したレジストパターンが多用される。また、近年、層間絶縁膜を樹脂、特に耐熱性熱硬化性樹脂で構成することが行われている。樹脂は多層配線構造を形成したい下地上にスピンコート法、バーコート法、或いはロールコート等の好適な塗布法によって容易に塗布でき、そしてこの塗布膜を硬化させることで容易に層間絶縁膜が得られるからである。
【0004】樹脂で構成された層間絶縁膜を有する多層配線構造を形成する場合、従来は一般に以下に説明するような方法がとられていた。図6〜図9はその説明に供する工程図である。いずれの図も多層配線構造を形成する工程中の主な工程での試料をその厚さ方向と平行な方向に沿って切った断面で示したものである。
【0005】先ず、第1層目の配線11が形成されている例えばセラミック基板13上に、ワニス状の例えばポリイミド前駆体が例えば回転塗布法により塗布され、さらにこれが乾燥されて、層間絶縁膜形成用の膜としてのポリイミド樹脂膜15が形成される(図6(A))。
【0006】次に、このポリイミド樹脂膜15上に例えばポジ型のホトレジストが例えば回転塗布法により塗布されこれが乾燥されて、レジスト層17が形成される(図6(B))。次に、このレジスト層17に所定のホトマスク19が密着され、次いで、このレジスト層17が選択的に露光される(図6(C))。
【0007】次に、この露光済みのレジスト層の現像が行われレジストパターン17aが形成される。次に、このレジストパターン17aをマスクとしてポリイミド樹脂層15が例えばドライエッチング法等の好適な方法により選択的に除去されポリイミド樹脂層15にビアホール21が形成される(図7(A))。なお、ポリイミド樹脂がレジストの現像液に溶解可能な類のものの場合は、レジストパターン17aを得るための現像工程でポリイミド樹脂の不要部分も共に除去することもできる。
【0008】次に、レジストパターン17aが除去され(図7(B))、次に、ポリイミド樹脂層15が硬化されポリイミド樹脂から成る層間絶縁膜15aが得られる(図7(C))。
【0009】次に、この試料上に導電性の薄膜23が例えばスパッタ法などの方法で形成される(図8(A))。
【0010】次に、この導電性の薄膜23上に、例えばポジ型のホトレジストが例えば回転塗布法により塗布されこれが乾燥されレジスト層25が形成される(図8(B))。次に、このレジスト層25に所定のホトマスク27が密着され、次いで、このレジスト層25が選択的に露光される(図8(C))。次に、この露光済みのレジスト層の現像が行われレジストパターン25aが形成される(図9(A))。
【0011】次に、導電性の薄膜23の、このレジストパターン25aで覆われていない部分上に、電解めっき或いは無電解めっき法により第2層目の配線29が形成される(図9(B))。次に、レジストパターン25aが除去される(図9(C))。次に、導電性の薄膜23の不要部分が除去される(図9(D))。その後、必要な層数に応じて図6(A)〜図9(D)を用いて説明した手順を繰り返すことにより所望の層数の多層配線構造が得られる。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、樹脂やレジストなどのように、塗布法により下地上に形成される材料では、それを塗布した後に下地上に盛り上り部が生じる。例えば塗布法が回転塗布法の場合は下地の縁部に当たる塗布膜部分に盛り上がり部が生じる(図6(C)中のP部分参照)。このような盛り上り部が生じている試料を密着露光法によって露光する場合、ホトマスクはこの盛り上り部に接触することになるのでレジスト層の本来のパターンを形成したい領域にホトマスクを密着させることができなくなるため、露光光の回折がおき、この結果、パターン解像度が低下してしまうという問題が生じる。このような問題は、多層配線構造の層数が増加するに従い盛り上がり部が累積的に高くなるのでますます顕著になるため、多層配線構造を形成する場合大きな問題となる。なお、このような問題は層間絶縁膜形成用材料として樹脂を用いる場合に限られず例えばSOG(スピンオングラス)など他の塗布材料を用いる場合も生じると考えられる。また、回転塗布法以外の方法(バーコート法やロールコート法など)でも同様に生じると考えられる。
【0013】この発明はこのような点に鑑みなされたものであり、従ってこの発明の目的は、多層配線構造を形成する際に塗布材料を用いるとその塗布膜に盛り上がり部が生じこれが密着露光法に悪影響を与えることを、除去できる方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】この目的の達成を図るため、この発明によれば、塗布法により塗布可能な絶縁性材料を下地上に塗布し該下地上に層間絶縁膜形成用の膜を形成する工程と、レジスト層を密着露光法を用いて露光し配線形成用のレジストパターンを形成する工程とを含む多層配線構造の形成方法において、前述の層間絶縁膜形成用の膜及び前述のレジスト層にそれらを形成した塗布法に起因して生じる盛り上がり部のうちの少なくとも層間絶縁膜形成用の膜の盛り上り部を除去した後に、前述の密着露光を行うことを特徴とする。
【0015】なお、少なくとも層間絶縁膜形成用の膜の盛り上り部を除去するとしたのは、レジスト層の膜厚に比べ層間絶縁膜形成用の膜の方が一般に膜厚が大きいため、盛り上がり部の悪影響が大きいと考えられるからである。レジスト層での盛り上がり部も支障になる場合は層間絶縁膜用塗布膜及びレジスト層それぞれの盛り上がり部を除去する。
【0016】また、この発明において、下地とは、層間絶縁膜を形成したい各種の下地であることができる。例えば、ガラスエポキシ基板、セラミックス基板、ガラス基板、若しくは半導体基板などの種々の基板、これら基板に1層若しくは何層かの多層配線構造が既に形成されたものなどである。
【0017】
【作用】この発明の構成によれば、塗布膜の盛り上り部が除去された後に、所望のパターン形成のための密着露光が行われる。したがって、ホトマスクはレジスト層に所望の通り密着する。
【0018】
【実施例】以下、図1〜図5を参照してこの発明の多層配線構造の形成方法の実施例について説明する。これら図は多層配線構造を形成する工程中の主な工程での試料をその厚み方向と平行な方向に沿って切った断面で示したものである。しかしながら、いずれの図もこの発明を理解できる程度に各構成成分の寸法、形状及び配置関係を概略的に示してあるにすぎない。また、各図において同様な構成成分については同一の番号を付して示す。また、図6〜図9において示した構成成分と同様な構成成分については同一の番号若しくは記号を付して示す。
【0019】先ず、下地として、第1層目の配線11が形成されている例えばセラミックス基板13上に、ワニス状の例えばポリイミド前駆体を例えば回転塗布法により塗布し、その後、これを乾燥して層間絶縁膜形成用の膜としてのポリイミド樹脂膜15を形成する(図1(A))。このポリイミド樹脂膜15ではそれの基板の縁に当たる部分に盛り上り部Pが生じる。
【0020】次に、このポリイミド樹脂膜15上に例えばポジ型のホトレジストを例えば回転塗布法により塗布しこれを乾燥してレジスト層17を形成する(図1(B))。次に、このレジスト層17に、盛り上がり部Pと対向する部分が光透過部31aとされそれ以外の部分が遮光部31bとされたホトマスク31を密着させ、その後このレジスト層17を選択的に露光する(図1(C))。
【0021】次に、この露光済みレジスト層17を現像してレジストパターン17xを得、次に、このレジストパターン17xをマスクとしてポリイミド樹脂層15を例えばドライエッチング法等の好適な方法により選択的に除去する。この工程においてポリイミド樹脂層15の縁部にあった盛り上がり部Pを除去できる(図1(D))。以下の各図では、盛り上がり部の除去の済んだポリイミド樹脂層は15xを付して示す。なお、ポリイミド樹脂がレジストの現像液に溶解可能な類のものの場合は、レジストパターン17xを得るための現像工程でポリイミド樹脂の不要部分を共に除去することもできる。
【0022】次に、盛り上がり部の除去が済んだ試料のレジストパターン17xに今度はビアホール形成用のホトマスク19を密着させる。従来はこの工程において盛り上り部があったたためホトマスクとレジストとの密着に支障を来していたが、この発明の方法では上述のごとく盛り上がり部を除去したので、ホトマスク19とレジストパターン17xとの密着を所望の通りに行える。次に、この状態でレジストパターン17xをホトマスク19を介し選択的に露光する(図2(A))。
【0023】次に、露光済みのレジストパターン17xを現像してビアホール形成用のレジストパターン17aを得る。次に、このレジストパターン17aをマスクとしてポリイミド樹脂層15xを例えばドライエッチング法により選択的に除去してポリイミド樹脂層15xにビアホール21を形成する(図2(B)))。なお、このビアホール形成工程の場合も、ポリイミド樹脂がレジストの現像液に溶解可能な類のものの場合は、レジストパターン17aを得るための現像工程でポリイミド樹脂の不要部分を共に除去することもできる。
【0024】次に、レジストパターン17aを除去し(図2(C))、次に、ポリイミド樹脂層15xを硬化させ層間絶縁膜15aを得る(図2(D))。
【0025】次に、この試料上に導電性の薄膜23を例えばスパッタ法などの方法で形成する(図3(A))。
【0026】次に、この導電性の薄膜23上に、例えばポジ型のホトレジストを例えば回転塗布法により塗布しこれを乾燥してレジスト層25を形成する(図3(B))。この例では、このレジスト層25の基板の縁に当たる部分にも盛り上り部Pが生じる例を示している。そこで、図1(C)を用いて説明したと同様な手順で、このレジスト層25に、盛り上がり部Pと対向する部分が光透過部31aとされそれ以外の部分が遮光部31bとされたホトマスク31を密着させ、その後このレジスト層25を選択的に露光する(図3(C))。次に、この露光済みレジスト層25を現像する。この現像工程ではレジスト層25の盛り上り部となっている部分のみ選択的に除去できるので、レジスト層25は盛り上がり部を持つことがない表面が平坦なレジスト層25xになる(図4(A))。
【0027】次に、このレジスト層25Xに所定のホトマスク27を密着させる。レジスト層25xが、盛り上がり部を持つことがない表面が平坦なレジスト層であるので、ホトマスク27とレジスト層25xとを所望の通りに密着させることができる(図4(B))。次いで、このレジスト層25Xを選択的に露光する。次に、この露光済みのレジスト層の現像を行ないレジストパターン25aを得る(図4(C))。
【0028】次に、導電性の薄膜23の、このレジストパターン25aで覆われていない部分上に、電解めっき或いは無電解めっき法により第2層目の配線29を形成する(図5(A))。次に、レジストパターン25aを除去する(図5(B))。次に、導電性の薄膜23の不要部分を除去する(図5(C))。その後、必要な層数に応じて図1(A)〜図5(C)を用いて説明した手順を繰り返すことにより所望の多層配線構造を得ることができる。
【0029】上述においてはこの発明の多層配線構造の形成方法の実施例について説明したが、この発明は上述の実施例に限られない。
【0030】例えば、上述の実施例ではポリイミド樹脂として感光性を有していないものを用いる例を示し、そして、その塗布膜の盛り上り部を別途にエッチング手段等により除去する例を説明したが、ポリイミド樹脂として感光性を有したものを用いる場合はその盛り上がり部の除去、またビヤホール21の形成をそれぞれ露光及び現像のみで行なうことも可能である。
【0031】また、上述の実施例では塗布可能な絶縁性材料がポリイミド樹脂である場合にこの発明を適用していたが、この発明を適用できる材料はもちろんこれに限られない。塗布法により無用な盛り上がり部が生じる材料に広く適用できる。
【0032】また、上述の実施例では塗布法が回転塗布法である場合で盛り上がり部が塗布膜の、下地の縁部に当たる部分に、出来る場合にこの発明を適用していたが、塗布方法、盛り上がり部の形成場所はこれらに限られない。
【0033】
【発明の効果】上述した説明から明らかなようにこの発明によれば、塗布膜の盛り上り部が除去された後に、所望のパターン形成のための密着露光を行える。したがって、多層配線構造の各配線層形成のための各露光を、ホトマスクとレジスト層とを所望の通り密着させた状態でそれぞれ行なえる。このため、各露光を密着露光法本来の解像度で行なえるので、盛り上がり部を有していたまま露光をしていた従来方法に比べ、解像度良く配線パターン形成が行なえる。このため、所望の配線パターンを有する多層配線構造の形成を従来より容易にできるので、例えば、高速な信号伝送を達成するために微細なパターン形成が必要な高速半導体素子実装用多層配線プリント基板の性能を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の説明に供する工程図である。
【図2】実施例の説明に供する図1に続く工程図である。
【図3】実施例の説明に供する図2に続く工程図である。
【図4】実施例の説明に供する図3に続く工程図である。
【図5】実施例の説明に供する図4に続く工程図である。
【図6】従来技術の説明に供する工程図である。
【図7】従来技術の説明に供する図6に続く工程図である。
【図8】従来技術の説明に供する図7に続く工程図である。
【図9】従来技術の説明に供する図8に続く工程図である。
【符号の説明】
11:第1層目の配線 13:下地
15:層間絶縁膜形成用の膜(樹脂層) 15a:層間絶縁膜
15x:盛り上がり部を除去した樹脂層 P:盛り上がり部
17:レジスト層
17a:ビアホール形成用レジストパターン
17x:レジストパターン 19:ホトマスク
21:ビアホール 23:導電性の薄膜
25:レジスト層 25a:レジストパターン
25x:盛り上がり部の除去されたレジスト層
27:ホトマスク 29:第2層目の配線
31:盛り上り部除去のために使用するホトマスク
31a:光透過部 31b:遮光部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 塗布法により塗布可能な絶縁性材料を下地上に塗布し該下地上に層間絶縁膜形成用の膜を形成する工程と、レジスト層を密着露光法を用いて露光し配線形成用のレジストパターンを形成する工程とを含む多層配線構造の形成方法において、前記層間絶縁膜形成用の膜及び前記レジスト層にそれらを形成した塗布法に起因して生じる盛り上がり部のうちの少なくとも層間絶縁膜形成用の膜の盛り上り部を除去した後に、前記密着露光を行うことを特徴とする多層配線構造の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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