説明

多心光ファイバケーブルの分岐構造体

【課題】複数の光ファイバ心線を分岐する多心光ファイバケーブルの分岐構造体を提供する。
【解決手段】多心光ファイバケーブルの分岐構造体は、複数の光ファイバ心線を有する光ファイバケーブルと、その光ファイバケーブルの一端を収容するハウジングと、金属製の保護管と、その保護管の外側に添わせた抗張力材と、保護管と抗張力材とを覆うジャケットとを有し、一端がハウジングに収容されて、分岐された複数の光ファイバ心線を保護する複数の分岐チューブと、略柱状の第1部分を有し、その第1部分の外周面である第1表面に複数の分岐チューブを配して固定する固定部材と、複数の分岐チューブを囲い、内面が第1表面と対向して配置され、複数の分岐チューブを固定部材との間で機械的に挟持する挟持部材とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の光ファイバ心線を分岐する多心光ファイバケーブルの分岐構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の光ファイバ心線を一括してケーブル化した多心光ファイバケーブルが、複数の光ファイバ心線を効率よく敷設するために多用されている。光ファイバ心線は、それぞれが独立した単心線としてもしくは複数の光ファイバ心線を並べて被覆したテープ心線として多心光ファイバケーブルに収納されている。敷設された多心光ファイバケーブルは、その一端にコネクタ等を取り付けて、配線盤や装置等に接続される。このとき、多心光ケーブルに内蔵される光ファイバをそれぞれが多心光ケーブルよりも少数の心線を内蔵した分岐コードに変換し、先端にコネクタを取り付けて各種装置や他のケーブルに接続されることがある。このような場合、ケーブルがコードに分岐される部分に分岐部を設け、そこに分岐コードを取り付けることが行われている。
【0003】
例えば特許文献1には、「光テープファイバの各心線をそれぞれ単心光ファイバ心線に分岐するための光テープファイバ心線分岐部において、光テープファイバからそれぞれ分離させた単心光ファイバ心線を、ねじり力を与えずに整列させるガイド部材に保持させて分岐する光ファイバテープ心線分岐部」が記載されている。また、特許文献2には、「分岐管の補強繊維とケーブルの補強繊維に張力が加えられたときに、分岐スペーサには圧縮応力が印加されるように構成される」光ファイバ用分岐装置が記載されている。
【0004】
一方、光ファイバは側方からの圧力が印加されたり急峻な曲げが加わったりすると、その部分で光学的な損失を生じる。このような損失を防止するために、金属製の保護管を内蔵した光ファイバコードが知られている。特許文献3には、「光ファイバと、前記光ファイバの外周を被覆するスプリングカバーと、前記スプリングカバーの外周を被覆する網状のブレードカバーと、前記ブレードカバーの外周を被覆するアウターカバーとを具備する」光ファイバコードが記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開2002−221646号公報
【特許文献2】特表2004−526209号公報
【特許文献3】WO2005/091037号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
多心光ファイバケーブルが終端される機器室等においては、その取り扱い途中や敷設後においてケーブルやコードに側圧や急峻な曲げに起因する損失を加える虞がある。従って、強度に優れた金属製の保護管を有する光ファイバコードを使用して多心光ファイバケーブルに収納されている光ファイバを終端することが望まれる。しかしながら、従来そのような光ファイバコードへ分岐する、作製が容易なケーブル分岐部が提供されていない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、複数の光ファイバ心線を有する光ファイバケーブルと、その光ファイバケーブルの一端を収容するハウジングと、金属製の保護管と、その保護管の外側に添わせた抗張力材と、保護管と抗張力材とを覆うジャケットとを有し、一端がハウジングに収容されて、分岐された複数の光ファイバ心線を保護する複数の分岐チューブと、略柱状の第1部分を有し、その第1部分の外周面である第1表面に複数の分岐チューブを配して固定する固定部材と、複数の分岐チューブを囲い、内面が第1表面と対向して配置され、複数の分岐チューブを固定部材との間で機械的に挟持する挟持部材とを備えた多心光ファイバケーブルの分岐構造体が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様による多心ケーブルの分岐構造体によれば、作製が容易な分岐構造が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、各実施形態に従って本発明を説明する。図1は本発明の一実施形態による分岐部1の分解斜視図であり、図2は分岐部の断面図、図3は分岐部に使用される固定部材20を示す斜視図である。本発明の一実施態様による多心光ファイバケーブルの分岐部1は、複数の光ファイバ心線72を内蔵する多心光ファイバケーブル70を、1又は複数の光ファイバ心線72を収容する複数の分岐チューブ50に分岐する分岐部である。分岐チューブ50は金属製の薄板を螺旋状に巻いてチューブ状に形成した保護管52と、その外周に配された抗張力材54と、保護管52と抗張力材54とを一括して被覆するジャケット56とを備える。分岐チューブ50は固定部材20に対して第1挟持部材40によって機械的に固定され、固定部材20を収容するハウジング10の一端から外部に導出されている。多心光ファイバケーブル70はハウジング10の他端で挟持され、内蔵されている光ファイバ心線72はハウジング10内部の空間で分配されて、それぞれが所望の分岐チューブの保護管52内に導入されている。
【0010】
次に本実施形態の分岐部の詳細を説明する。分岐部1には一端から多心光ファイバケーブル70が導入され、他端から複数の分岐チューブ50が導入されている。分岐部1はハウジング10と、ハウジング10に対して位置決めされ、複数の分岐チューブ50がその表面に配された固定部材20と、分岐チューブ50を固定部材20との間で挟持する複数の挟持部材40、42、44とを備える。
【0011】
固定部材20は、図3に示すように、それぞれが異なった外径を有した略円柱状の複数の部分を、直列でかつ同心状に配置したものである。固定部材20は、略円柱状の第1部分22aと、第1部分22aの一端部に隣接して配置され、第1部分22aよりも大きい外径を有する略円柱状の第2部分22bと、第2部分22bの一端部であって第1部分22aと隣接する端部とは反対側の端部に隣接して配置され、第2部分22bよりも小さい外径を有する略円柱状の第3部分22cとを備える。第1部分22a、第2部分22bおよび第3部分22cは、円柱形状の曲面に相当する外周面である第1表面24a、第2表面24b、第3表面24cをそれぞれ備える。
【0012】
第1部分22aは、その第1表面24aに断面が略半円形の整列溝26aが概略均等な間隔で複数配置されている。整列溝26は分岐チューブ50の外径とおおよそ同じ大きさであり、第1部分22aの一端部から他端部まで延在している。分岐チューブ50は、整列溝26aにそれぞれ配置される。これにより円柱状の第1部分22aにおいて複数の分岐チューブ50を所望の間隔で配置することができる。整列溝26aの表面には、溝の延在方向と交差する方向に微細な凹凸を設けても良い。このような凹凸を設けておくと、後述の挟持部材と協働して分岐チューブ50を保持するときに、分岐チューブ50と固定部材20との間の摩擦が増加し、より効果的に分岐チューブ50を保持できる。
【0013】
第2部分22bは第1部分22aの軸方向一端に隣接して、第1部分22aと略同軸状に配されている。第2部分22bは、保護チューブ50の抗張力材54を後述の挟持部材42との間で挟持できる第2表面24bを備える。第2表面24bは、抗張力材54をより効果的に挟持できるように、第2部分22bの軸方向と交差する方向に、微細な複数の溝を設けることができる。第2部分22bはその半径方向内側に、第2部分22bの軸方向一端から他端に貫通して、整列溝26aに対して整列した断面が円形の受容孔28を複数備える。受容孔28は、第2部分22bの軸方向に関して、略同一円周上に配置されている。また受容孔28は分岐チューブ50の外径とほぼ同じか若干大きい内径を有し、整列溝26aの内面と同じ半径とすることができる。受容孔28には、整列溝26aに配置された分岐チューブ50のジャケット56で被覆されている端部が挿入される。第2部分22bは、さらにハウジング10の内面と係合できるフランジ部30を備える。フランジ部30は第1部分22aと隣接する第2部分22bの一端に配置されており、第2表面24bよりも半径方向外側に突出している。フランジ部30の幅は第2表面24bの幅よりも狭く構成されている。分岐部1の小型化のためには、所望の固定強度が得られる限り、フランジ部30の幅を薄くすることが好ましい。
【0014】
固定部材20は更に、第2部分22bに隣接して略円柱状の第3部分22cを備える。第3部分22cは第3表面24c上に、第2部分22b側から延在する複数の整列溝26bを備える。整列溝26bは受容孔28の内径と同じ曲率を有しており、受容孔28に対して整列している。つまり整列溝26aとも整列して配置されている。従って、整列溝26a側から挿入された分岐チューブ50は受容孔28を通って整列溝26bに達することができる。第3部分22cは整列溝26bと連続して整列溝26cを第3表面24cに備える。整列溝26cは分岐チューブ50の保護管52と対応した大きさの溝であり、分岐チューブ50の端部で露出された保護管52を受容する。整列溝26cは整列溝26bよりも溝の幅(曲率半径)が小さくなっている。整列溝26cと整列溝26bとの境界部分には段部27があり、分岐チューブ50のジャケット56端部が段部27を超えて整列溝26c側に挿入されることを防止できる。整列溝26bおよび26cの表面にも、必要に応じて溝の延在方向に交差する微細な溝を設けることができる。
【0015】
固定部材20の中心には、軸方向の一端から他端へ延在する中心貫通孔32を設けることができる。この中心貫通孔32には、多心光ファイバケーブル70のテンションメンバ74が挿通され、テンションメンバ74は分岐部1の分岐チューブ50が取り付けられた側の端部から外部へ導出される。本実施形態ではテンションメンバ74は固定部材20に対して固定されていないが、公知の方法、例えばネジやカシメ、接着剤など、を使用して固定することもできる。固定部材20は必要な強度を有する任意の材料から構成することができ、例えば各種の樹脂、真鍮等の金属から作製することができる。
【0016】
第1挟持部材40は薄板からなるリング状の部材である。第1挟持部材40の内面40aと固定部材20との間で分岐チューブ50が挟持され、固定部材20に固定されている。その内径は、固定部材20の第1部分22aの外径よりも大きく設定されている。固定部材20の整列溝26a〜26cに所定の端末処理を行った分岐チューブ50を配置したのち、分岐チューブ50の他端を第1挟持部材40に通し、内面40aが固定部材20の第1表面22aと対向する位置まで第1挟持部材40を移動させ、図示しないカシメ工具によって第1挟持部材40を縮径させる。本実施形態に使用される分岐チューブ50の保護管52は金属製であるので、保護管52が大きくつぶれることなく第1挟持部材40と固定部材20との間で機械的に挟持される。このため、分岐チューブの保護管52と抗張力材54とジャケット56とを一括して固定することができる。また、保護管52が螺旋状であるので、保護管52のエッジ部分で抗張力材52をより強固に固定することができる。第1挟持部材40は展性を有する金属、たとえばアルミニウム、から作製することができる。
【0017】
分岐チューブ50と分岐部1との要求される固定強度によっては、さらに抗張力材54を第2挟持部材42によって固定部材20の第2表面22bに固定しても良い。抗張力材52はジャケット56の端部から所定の長さで切断されており、折り返して第2表面上22bに配置されている。第2挟持部材42はその内面42aが第2表面22bと対向するように第2部分24bにと同軸状に配置され、それを縮径することで抗張力材52を内面42aと第2表面24bとの間で挟持する。第2挟持部材42としては、第1挟持部材40と同様のものが使用でき、第2部分の外径に合わせた内径を有していれば良い。
【0018】
分岐部1は更に第3挟持部材44を更に有することができる。第3挟持部材44は第3部分22cの第3表面24cに配された整列溝26c上に配された複数の保護管52を覆って、固定部材20と同軸状に配置される。そして、第1挟持部材40や第2挟持部材42と同様に縮径されることで、第3挟持部材44の内面44aと第3表面24cとの間で保護管52を挟持する。なお、保護管52を第3部分で挟持することは、振動が加わる環境で使用される分岐部1に特に好ましい。保護管52が振動によって動くと、保護管52に挿入されている光ファイバ心線72の位置や撓み具合によっては、保護管52の端部が光ファイバ心線72と接触し、損傷を与えてしまうおそれがある。第3挟持部材44で保護管52の端部付近を挟持しておくと、振動による保護管52の動きを抑制できるので、光ファイバ心線72の損傷を防ぐことができる。また、保護管52がジャケット56端部より突出しているので、光ファイバ心線72を挿入するときに保護管52の端部が視認でき、光ファイバ心線72を保護管52に挿入する作業が容易になる。
【0019】
図1に示すように、ハウジング10は、固定部材20を内包して外部環境から保護するとともに、多心光ファイバケーブル70と分岐チューブ50とを機械的に接続している。本実施形態では、ハウジング10は、それぞれが円筒をその軸方向に平行な面で分割した形状をした一組のカバー部材10a、10bを備え、それらカバー部材10a、10bをその分割面11で合わせることで内部に固定部材20を収容できるスペースを有する円筒を構成できる。カバー部材10a、10bは、その内面に円周方向に延在する断面が矩形の溝12を備える。この溝12は固定部材20のフランジ部30と係合可能であり、これによってハウジング10に対して固定部材20が位置決めされる。また、分岐チューブ50に印加された張力を固定部材20を介してハウジング10に伝達し、光ファイバ心線72に過剰な張力が印加されることを防ぐ。
【0020】
カバー部材10a、10bはその一端側の内面にケーブル把持部13を備え、その表面にはカバー部材10a、10bの円周方向に延在する断面が切頭三角形をした複数の突条14を有している。突条14の頂面14aは略円筒状の曲面を構成し、その曲面の曲率半径は多心光ファイバケーブル70の外径よりも小さくなるように構成されている。そのため、多心光ファイバケーブル70をケーブル把持部13に配して2のカバー部材10a、10bを閉じると、突条14の先端(頂面14a)が外被76に食い込んで多心光ファイバケーブル70に分岐部1を機械的に固定する。
【0021】
カバー部材10a、10bの各々は、その分割面11に略垂直に設けられた2つの貫通孔16と、2つの螺旋孔18とを更に備える。カバー部材10a、10bを組み合わせたときに、カバー部材10aの貫通孔16の中心軸とカバー部材10b螺旋孔18の中心軸とが一致し、さらにカバー部材10aの螺旋孔18の中心軸とカバー部材10b貫通孔16の中心軸とが一致するようになっている。貫通孔16のカバー部材10a、10bの外周面側には貫通孔16よりも大きい径を有した凹所16a設けられ、カバー部材10a、10bを螺旋部材19で固定したときに螺旋部材19の頭部19aがハウジング10の外周面から外側に突出しないように構成されている。カバー部材10a、10bは、必要な強度を有する各種の材料から構成することができ、例えば樹脂や金属から作製することができる。
【0022】
次に、図2を参照し、分岐チューブ50を詳細に説明する。分岐チューブ50は、保護管52と、その外周に配された抗張力材54と、保護管52と抗張力材54とを一括して被覆するジャケット56とを備える。保護管52は金属製の薄板を螺旋状に巻いてチューブ状に形成されており、その内部空間に1または複数の光ファイバ心線72を収容できる。換言すれば、保護管52は、金属チューブに螺旋状の溝を形成したものである。螺旋状に巻かれた薄板は、隣接している薄板との間に隙間を有している。薄板を螺旋状に巻いて保護管52としているので、上述のように固定部材20の第1部分22aで挟持されたときに薄板のエッジが抗張力材52に作用し、抗張力材52の固定強度を向上できる。また、隣接する薄板間に隙間があるため、高い耐側圧性と高い屈曲性とを有することができる。なお、保護管52としては薄板を螺旋状にしたものに限られず、螺旋状の溝を有さないチューブを保護管52として使用しても良い。保護管52の外表面には、抗張力材54の固定強度を向上するために、保護管52の軸方向と交差した複数の微細な溝や凹凸を設けてもよい。
【0023】
抗張力材54は分岐チューブ50に加わる張力に抗し、光ファイバ心線72に張力が印加されて破断することを防止するための部材である。抗張力材としては公知の部材を使用することができ、例えばアラミド繊維を好適に使用することができる。ジャケット56は抗張力材54と保護管52とを被覆し、分岐チューブ50の外形を形成する。ジャケット56は公知の材料、例えばポリ塩化ビニル(PVC)やポリエチレン(PE)等の樹脂材料から製造することができ、公知の方法、例えば押出加工により、保護管52と抗張力材54の上に被覆することができる。
【0024】
本実施形態の分岐部1は、公知の各種多心光ファイバケーブル70に適用することができる。多心光ファイバケーブル70は、チューブ状に形成された被覆76の中に複数の光ファイバ心線72を有している。多心光ファイバケーブル70はそれぞれが独立した複数の光ファイバ心線72を内蔵しても良いし、複数の光ファイバ心線70を並列に並べて一括被覆したテープ心線を1または複数有しても良い。光ファイバ心線70には公知の光ファイバ、例えばプラスチック光ファイバ(POF)や石英系光ファイバ等、を使用することができる。このような光ファイバ心線70は、光を通すコアと、コアに同心状に設けられ、光をコアに閉じ込めるクラッドとを備える。そして、光ファイバ心線70は典型的にはクラッドの外周に1又は複数の樹脂層からなる被覆をクラッドと同心状に備える。コアやクラッドは、典型的には光透過性の物質、透明プラスチックや石英ガラス等、から構成される。被覆にはUV硬化型樹脂やポリアミド樹脂等を使用することができる。多心光ファイバケーブル70は必要に応じてテンションメンバ74をケーブル内部に有することができる。テンションメンバ74はワイヤ状の部材であり、多心光ファイバケーブル70に加わる張力を受け、光ファイバ心線72に過度の張力が加わることを防ぐ。テンションメンバ74は公知の材料を使用することができ、鋼やステンレス、FRP等を使用することができる。被覆76は典型的にはPVCやPEなどの樹脂材料から構成されており、光ファイバ心線72を外部環境から保護する。
【0025】
次に、必要に応じ図4から7を参照しながら本実施形態の組立工程を説明する。
a:分岐チューブ50の先端から所定長さだけジャケット56を除去し、抗張力材54を切除されたジャケット56の端部から所定の長さで切断する。
【0026】
b:分岐チューブ50先端を固定部材20の整列溝26aに配置し、ジャケット56端部が段部27に当接するまで分岐チューブ50を整列溝26aに添って移動させる。このとき、分岐チューブ50から露出している保護管52は整列溝26c上に配置されている。この作業を所望の本数の分岐チューブ50に対して繰り返す(図4)。
【0027】
c:第1挟持部材40を、その内面40aが第1表面24aと対向するように固定部材20の第1部分22aに配置し、図示しないカシメ工具により固定部材20と分岐チューブ50との上に縮径させる。これによって、分岐チューブ50が固定部材20に対して固定される(図5)。
【0028】
d:ジャケット56端部より出ている抗張力材54を第2表面24b上に折り返し、抗張力材54が第2表面24bと第2挟持部材42の内面42aとの間に位置するように、第2挟持部材42を固定部材20と同心状に配置する。図示しないカシメ工具を使用し、第2挟持部材40bを第2表面24b上に縮径させる。これによって、抗張力材54が固定部材20に対して固定される(図6)。
【0029】
e:保護管52cの端部近傍が第3挟持部材44の内面44aと第3表面との間に位置するように、第3挟持部材44を固定部材20の第3部分22cに同軸状に配置する。図示しないカシメ工具を使用し、第3挟持部材44を第3表面24c上に縮径させる。これによって、保護管52が固定部材20に対して固定される(図7)。
【0030】
f:多心光ファイバケーブル70の外被76を所定長除去し、光ファイバ心線72とテンションメンバ74とを外被76の端部から露出させる。それぞれの光ファイバ心線72を対応する保護管52に挿入し、テンションメンバ74を中心貫通孔32に挿入する。
【0031】
g:カバー部材10aの溝12に分岐チューブ50が固定された固定部材20のフランジ部30を嵌入させ、多心光ファイバケーブル70の外被76端部近傍をカバー部材10aのケーブル把持部13上に配置する。カバー部材10bをカバー部材10aに対して揃えて配置し、螺旋部材19で両カバー部材10a、10bを締め付け固定する。
【0032】
以上のようにして、本実施形態にかかる分岐部1を組み立てることができる。このように、本実施形態では予め固定部材20に分岐チューブ50を固定できるので、光ファイバ心線72の保護管52への通線作業や、分岐チューブ50のハウジング10への組み込み作業が簡易になる。また、接着剤を使用していないので組立の作業性が向上する。なお、工程dおよびeは任意工程であり、必要に応じて行えば良い。また工程c、d、e相互の順番は、任意に変更することができる。
【0033】
上記の説明は、一の実施形態について行ったが、本発明はこの実施形態に限られるものではない。図8に分岐チューブ50が固定された固定部材120の第2の実施形態を示し、図9に分岐チューブ50が固定された固定部材220の第3の実施形態を示す。
【0034】
固定部材120はフランジ部130の位置に関して、固定部材20と大きく異なる。本実施形態では、フランジ部130は第2部分122bの第3部分122c側の一端に配置されている。また、段部127は第1部分122aに設けられており、抗張力材54は第1部分122aから第2部分122bに延びている。この実施形態の変形として、段部127を第3部分122cに配置して、抗張力材54を第3部分122cから第2部分122bへ敷設することができる。この場合、フランジ部130に抗張力材54を通すために溝を設けることができる。
【0035】
第3の実施形態にかかる固定部材220は、第3部分222cが第1部分222aと第2部分222bとの間に配置されており、フランジ部230が第1部分222aの第3部分222c側の一端に配置されている。抗張力材54は第2部分222bで固定されており、光ファイバ心線72と第2挟持部材42との干渉を防ぐため、第2部分222bは第3部分222cよりも小さい外径を有している。
【0036】
挟持部材40、42、44はリング状の所謂カシメリングを例示して説明したが、これ以外でも分岐チューブ50を固定部材20との間で挟持できる部材であれば使用することができる。そのようなのもとして、例えばホースクランプのように帯状の部材でループを作製し、そのループ内で固定部材20と分岐チューブ50とを挟持してもよい。あるいは、固定部材20の表面の曲率に概略対応する挟持面(内面)を有する直方体の部材を2つ用意し、それらの部材の挟持面間で固定部材20と分岐チューブ50を挟持することもできる。
【0037】
上述の固定部材の各部分は略円柱状をしているが、多角柱等の他の形状を有していても良い。また、固定部材20とハウジング10との係止は、ハウジング10内面にフランジ様の突条を配置し、固定部材にその突条を係止する溝を設けることでも行える。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の第1の実施形態による分岐部の分解斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態による分岐部の断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態による固定部材の外観斜視図である。
【図4】本発明の第1の実施形態による分岐部の組立過程を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施形態による分岐部の組立過程を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施形態による分岐部の組立過程を示す図である。
【図7】本発明の第1の実施形態による分岐部の組立過程を示す図である。
【図8】本発明の第2の実施形態による固定部材の断面図である。
【図9】本発明の第3の実施形態による固定部材の断面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 分岐部
10 ハウジング
12 溝
13 ケーブル把持部
14 突条
20 固定部材
22 部分
24 表面
26 整列溝
28 受容孔
30 フランジ部
32 中心貫通孔
40 第1挟持部材
40a 内面
42 第2挟持部材
44 第3挟持部材
50 分岐チューブ
52 保護管
54 抗張力材
56 ジャケット
70 多心光ファイバケーブル
72 光ファイバ心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光ファイバ心線を有する光ファイバケーブルと、
前記光ファイバケーブルの一端を収容するハウジングと、
金属製の保護管と、該保護管の外側に添わせた抗張力材と、該保護管と該抗張力材とを覆うジャケットとを有し、一端が前記ハウジングに収容されて、分岐された前記複数の光ファイバ心線を保護する複数の分岐チューブと、
略柱状の第1部分を有し、該第1部分の外周面である第1表面に前記複数の分岐チューブを配して固定する固定部材と、
前記複数の分岐チューブを囲い、内面が前記第1表面と対向して配置され、該複数の分岐チューブを前記固定部材との間で機械的に挟持する挟持部材と、
を備えた多心光ファイバケーブルの分岐構造体。
【請求項2】
前記保護管が、螺旋状のチューブである請求項1に記載の多心光ファイバケーブルの分岐構造体。
【請求項3】
前記固定部材が略柱状の第2部分と、その外周面である第2表面とを備え、
内面と前記第2表面との間で前記抗張力材を機械的に挟持する第2挟持部材を更に有する請求項1又は2に記載の多心光ファイバケーブルの分岐構造体。
【請求項4】
前記固定部材が略柱状の第3部分と、その外周面である第3表面とを備え、
内面と前記第3表面との間で前記保護管を機械的に挟持する第3挟持部材を更に有する請求項3記載の多心光ファイバケーブルの分岐構造体。
【請求項5】
前記固定部材が前記ハウジングと係合する係合部をさらに備える請求項1〜4のいずれか1項に記載の多心光ファイバケーブルの分岐構造体。
【請求項6】
前記分岐チューブに対応する複数の第1の溝を前記第1表面に有し、該第1の溝と連通した複数の貫通孔を前記第2部分に有する請求項5に記載の多心光ファイバケーブルの分岐構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−294470(P2009−294470A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−148479(P2008−148479)
【出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】