説明

多探針AFMナノプローバとそれを用いた測定方法

【課題】多探針を用いたAFMナノプローバで、ステージ側のスキャンを行う構造にして、試料と探針の位置関係の補正を迅速に行い、探針同士の衝突を回避して、サブミクロン領域での電気測定を容易にできるようにする。
【解決手段】それぞれの探針によるAFMイメージを同時に取得する。この際、重複領域があるようにする。AFMイメージから、その重複領域を探索し、それぞれの相対位置を見出し、さらに、それぞれの探針位置を導出する。また、その探針位置から、測定用にあらためて探針位置を設定し、被測定物に探針を圧接して電気的測定を行う。最初に探針間が近接していることを検出するようにして、探針が近接状態にあるところから開始することで、重複領域を小さくすることができ、迅速な測定を行うことができる。上記スキャンは、ラスタスキャンまたはスパイラルスキャンである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、高集積半導体デバイスの露出したスルーホールやコンタクトホールのメタルに直接探針を当てて電気測定を行うことができる多探針AFMナノプローバとそれを用いた測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの故障解析において、多探針AFM(原子間力顕微鏡)式のナノプローバによる電気測定が普及している。トランジスター動作を通常のDC(直流)測定として行う前に、欠陥位置の絞込みとしてAFM動作をしながら背面のアースに流れる電流像をとることで、リークしている電極などのデバイス故障が発見する方法がある。しかし、SOI(シリコンオンインシュレータ)基板など、背面から電流を取り出すことが難しいデバイスも増えてきている。さらに、インラインでのウエーハでの測定では、プロセス状況によっては、背面から電流信号を取ることが難しい場合も多い。
【0003】
ナノプローバには、SEM(操作型電子顕微鏡)で観測しながらプロービングするものと、AFMで探針自身で像をとりながらプロービングするものがある。ナノプローバを用いて高集積半導体デバイスの故障解析を行う場合、例えばサブミクロン以下の露光ルールに微細化した最先端デバイスでは、AFM式が有利であると考えられている。これは、SEMを用いる場合には、電子線損傷によるデバイス特性の劣化や、残留炭化水素による絶縁層の形成などの問題を伴うためである。
【0004】
通常用いるAFMの探針(プローブ)は、それぞれが独自に移動可能なものである。通常、AFMの探針は個々にカンチレバーに固定された状態で4本から6本使用され、それぞれが独立にXYZ方向にナノメートル(nm)の分解能で移動可能である。この移動はカンチレバーを介してピエゾ素子駆動で行われる。また、通常用いられる探針は、先端半径数十nm(先端デバイス用)であり、その先端で電極に直接コンタクトできる。また、先端から60度以下の角度の中にAFMに必要な全ての機構が収まる。
【0005】
ここで、特許文献1(米国特許第6668628 B2号明細書)に、SPM(Scanning probe microscope)やAFM(Atomic force microscope)などのスキャニングプローブ装置が開示されており、また、複数の探針を所定の構造をもつ一体ものとして、半導体プロセス等で作り込むことが記載される。しかし、先端半導体デバイスの微細化電極間は100nm以下に達しており、この距離まで近接した複数の探針もつ構造を作り込むことは不可能に近い。さらに、AFMのスキャニング(走査)で、この探針先端は摩耗していくため、頻繁に探針を交換する必要があり、この探針は、低コストで製造することが求められる。
【0006】
上記のように高集積半導体デバイスの故障解析を行う場合は、所定のそれぞれの箇所に各探針を当てることが必要である。この場合、数十nmの間隔にまで近づけることが求められる場合が度々あり、AFMの探針の相互位置を、正確に把握する必要がある。このためには、それぞれAFMイメージをとることによって、そのイメージの相関から、探針の相互位置を確認することを行う。
【0007】
探針の相互位置を確認には、より具体的には、例えば、アライメントマークなどの特徴的なパターンについてそれぞれの探針でAFM像をとり、相互位置を確認する。また、相互位置を記憶しておき、探針全体を測定したいデバイスの位置まで平行移動し、再度全探針でAFMイメージをとり、そのイメージをもとに目的の電極にそれぞれコンタクトすることになる。
【0008】
しかし、一回のアプローチで電気的接触が充分に取れることは少なく、再度、AFMイメージをとって位置の補正を行う必要がある場合がある。その時、なるべく接近させておくことが望ましいが、各カンチレバーの駆動系のばらつきなどが考慮され、各探針先端の間隔を1ミクロン以内に設定してスキャンすることが望ましい。
【0009】
実際の例として、従来のナノプローバによる電気測定のプロービングの動作画面を図2に示す。ここでは、図2(a)の配置から得られる4枚のAFMイメージによりコンタクトを取るべき電極を認識し、プロービングを行う。すなわちAFMイメージングでのnNレベルの力での表面観察から、スキャンを止めて、指定の電極に数百nNで探針を押し付ける。しかし、スキャン時の探針と電極の位置関係が、温度変化やピエゾ駆動素子のクリーブ等で変化してしまい、一回で目的のコンタクトをとることは難しい。通常クローズドループ(Closed loop)と呼ばれる静電容量をモニターすることで、ピエゾ駆動系のクリーブ等のずれを絶対値として評価フィードバックをかけているが、数nmのずれによって、コンタクトが微妙にとれないことが良く起こる。ここで、コンタクトの確認には、例えば、探針から電極を通じて試料裏面に流れる電流をモニターすることで、その電流−電圧曲線から確認することができる。この段階での調整には、探針に印加する圧力を変えたり、探針の位置を変化したりする。しかし、実際には、1μm程度離れた位置から、nmオーダーで制御して所定の電極にコンタクトをとることになるが、これは上記の様にその探針自身のAFMイメージをもとにしているにもかかわらず難しい。
【0010】
ここでコンタクトにおいては、図2の例では、4枚のAFMイメージから相互位置を判断し、それぞれの探針が交差しないようにする事が肝要である。コンタクト時は、力のフィードバックを行わず、スキャン時より2桁程度強い力で探針を電極(ここでは導電性プラグ18)に押し付ける。この場合、カンチレバーの撓みを含めても数100nN程度の力でコンタクトを得ることができ、これはSEM式のナノプローバに比べて弱い力であり、探針先端部を損傷することが少ない。
【0011】
従来の多探針AFMナノプローバでは、上記のように、複数のプローブを備え、そのプローブを動かして被検査物の所定の部分をスキャンするものである。
【0012】
例えば、特許文献2(米国特許第6880389 B2号明細書)には、AFMのカンチレバーに取り付けられた複数のスキャニングプローブを用いて極狭い領域でスキャニングを行う方法とSPM装置が開示されている。これは、部分的に重複した領域をスキャンする際に衝突を避けるように各プローブを制御する制御装置を備えるものである。また、特許文献3(米国特許第6951130 B2号明細書)には、AFMのカンチレバーに取り付けられた複数のスキャニングプローブを用いて極狭い領域でスキャニングを行う方法とSPM装置が開示されている。これは、プローブを動かして所定の領域をスキャンする際にプローブが交叉しそうな場合は、衝突を避けるように一方のプローブをその所定の領域から後退させる制御をする制御装置を備えるものである。また、特許文献4(米国特許第7444857 B2号明細書)には、それぞれ独自の座標系をもったAFMのカンチレバーに取り付けられた複数のスキャニングプローブを用いてスキャニングを行うSPM装置とそのプローブの制御方法が開示されている。これは、プローブが互いに干渉しないように、その座標系のもとでオフセットを維持してスキャンするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第6668628 B2号明細書
【特許文献2】米国特許第6880389 B2号明細書
【特許文献3】米国特許第6951130 B2号明細書
【特許文献4】米国特許第7444857 B2号明細書
【特許文献5】特開平06−300557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
複数の探針を用いたAFMナノプローバにおいて、試料と探針の位置関係の補正を迅速に行えるようにするために試料スキャンを実現する。また、探針同士の衝突を回避できるようにして、高集積半導体デバイスの故障解析での極狭い領域での測定等に使用できるようにする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、可動ステージ上の被測定物の電気的測定を行うための複数の探針を備え外部からの制御で前記探針位置を変えることが可能な多探針AFMナノプローバに関するものであり、次の手段を備える。
探針それぞれにAFMイメージを取得する手段があり、これは同時に稼動することができる。このためには、既によく知られたAFMイメージング装置を用いることができる。
また、取得した上記AFMイメージの相対位置を探索するイメージ探索手段がある。この探索手段としては、例えば、探索プログラムを備えたコンピュータを使用することができる。これは、例えば、重複したイメージを作成して、その重複部分を見出すものである。その重複部分でそれぞれのイメージを連結することで、上記イメージの相対位置を探索することができる。
上記相対位置から、それぞれの探針位置を導出する位置導出手段を備える。具体的には、位置導出手段としては、位置導出プログラムと上記のコンピュータを使用すればよい。
また、導出されたそれぞれの上記探針位置から、所定の位置関係になるようにそれぞれの上記探針位置を設定する位置設定手段を備える。通常のAFMイメージング装置では探針位置を所定の範囲で自由に設定することができ、また、プロービング装置では試料を乗せるステージ位置を所定の範囲で自由に設定することができる。
電気的測定に際しては、上記被測定物に上記探針を圧接して電気的測定を行う。
【0016】
多探針AFMナノプローバは、上記可動ステージをスキャンするための掃引手段を備える。このスキャンの際、探針の水平位置は固定しておくことが望ましい。もしくは、前述したクローズドループと呼ばれる絶対値測定によるフィードバックをかけて固定を維持する。
【0017】
上記スキャンは、ラスタスキャンまたはスパイラルスキャンである。
【0018】
上記スキャン中に、上記探針のそれぞれは、上記ラスタスキャン方向と直交する方法に位置制御を行う垂直位置制御を備える。この垂直位置制御には、通常のAFMと同様の機構を用いることができる。
【0019】
また、探針間の衝突で探針先端が損傷することを防止するため、上記探針間の電気的導通特性から近接状態にあることを電気的に確認する近接確認手段を備える。探針間にトンネル電流が流れた時点で探針位置の調整を即座に停止することが望ましい。
【0020】
また上記と同様に、探針間の衝突で探針先端が損傷することを防止するため、複数の上記探針間の原子間力から近接状態にあることを確認する近接確認手段を備える。このためには、通常のAFMと同様の機構を用いることができる。
【0021】
上記多探針AFMナノプローバを用いた上記被測定物の電気的測定は、次のように行う。
1) 探針を所定の距離に離間する。
2) 上記可動ステージをラスタスキャンして、重なり領域のあるそれぞれのAFMイメージを取得する。
3) 取得したイメージにおける上記重なり領域を見出して、上記探針のそれぞれの位置を読み取る。
4) 上記探針のそれぞれを所定の位置に設定する。
5) 上記被測定物の測定を行う。
以上を順に行って測定する。
【0022】
また、上記の多探針AFMナノプローバを用いた測定方法の前に、
1) 探針間の導通特性から該探針間が近接位置であることを示すように該探針のそれぞれの位置を設定する。
2) 上記探針を所定の距離をおいて離間する。
を順に含むようにしてもよい。
【発明の効果】
【0023】
この発明では上記の様に試料側をスキャンさせる。このため探針だけを動かしてAFMイメージを得る場合に比べて駆動系が冗長になるが、被測定物に対する各探針の相対位置の変化が自動的に同期させることができる。つまり、従来の装置では衝突防止のためのソフトウェアが必要であったが、本発明では必要なくなる。これにより、同期の精度を考慮する必要がない。すなわち、カンチレバー間の相対距離は、被測定物の表面に平行なXY方向のピエゾ駆動体のばらつきなどの影響を受けることがなくなり、前記ばらつきのためのマージンを省いて探針を極限まで近接した状態でのスキャンも可能になり、その像を用いて位置補正を行うことで、例えば、探針の先端径程度の、例えば数十nm角のスキャンだけで、位置補正ができるようになる。従来の装置では、上記の様に、探針を相互に1μm程度引き離す必要があり、従って、0.5μm角以上の領域をスキャンする必要があった。本発明では、上記の結果、位置補正の精度が上がり、スキャン時間も短縮できる。
【0024】
また、探針間の電流や原子間力をモニターすることで、位置補正のスキャン時の誤動作による探針同士の衝突や衝突による損傷を避けることができる。また、探針同士が接触した状態から測定を始めることにすることで、探針用の位置合わせパターン(つまり、アラインメントマーク)を使用する必要がなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の多探針AFMナノプローバを示す模式図である。
【図2】プラグ状電極に探針をコンタクトする場合の(a)平面図と、(b)側面図である。
【図3】探針間の電圧電流を測定して、(a)探針間をほぼ接触する状態にする例、(b)プラグ状電極間の電気特性を測定する例、を示す図である。
【図4】(a)AFMイメージによる重複部分をもった2つのマップを示し、(b)その2つのマップから合成しマップを示す図である。
【図5】ピエゾ抵抗体を用いた本発明の多探針AFMナノプローバを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、この発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の説明においては、同じ機能あるいは類似の機能をもった装置に、特別な理由がない場合には、同じ符号を用いるものとする。
【実施例1】
【0027】
図1に本発明の多探針AFMナノプローバの模式図を示す。一般に、AFMの動作モードには、1)コンタクトモード、2)ノンコンタクトモード、3)タッピングモード、4)フォースモード、などがあることが知られている。本発明は、そのいずれの型であっても適用することができるが、代表例として図1には、コンタクトモードで動作し、2つのAFMを用いる多探針AFMナノプローバの例を示す。
【0028】
被測定物3は、例えば、故障解析を行おうとする半導体チップであり、これは、ステージ3上に置かれる。ステージ2は、その表面と平行に可動であって、X軸とY軸に沿って駆動部1によって駆動される。被測定物3は、探針4a(またはb)を備えたカンチレバー5a(またはb)でAFMイメージがとられ、電気的測定が行われる。カンチレバー5a(またはb)は、カンチレバー駆動部6a(またはb)で、X、Y、Z方向に移動することができる。また、AFMイメージの取得においては、駆動部1がコンピュータ10に指示を受けてXY面をスキャンする。このスキャンは、ラスタスキャンやスパイラルスキャンでよい。
【0029】
カンチレバー駆動部6a(またはb)は、コンピュータ10からのXY面制御とZ軸についてはフィードバック(FB)回路9a(またはb)からの制御を受ける。Z軸に関する制御は、通常のAFMと同様に行う。つまり、レーザ光源7a(またはb)からのレーザ光15a(またはb)をカンチレバー5a(またはb)に照射し、光てこ作用によって4分割光検出器8a(またはb)でその反射位置を検出して、その検出信号を増幅し、フィードバック(FB)回路9a(またはb)からカンチレバー駆動部6aにフィードバックする。ここでフィードバックするZ軸電圧は、信号線14a(またはb)を通じてコンピュータ10に送られ、XY面上にマッピングされて、AFMイメージとなる。
【0030】
また、図5に示すように、システムを簡素化するために、光てこを用いずにカンチレバー自身の撓み量をカンチレバーに内蔵されるピエゾ抵抗部19a(またはb)の抵抗変化としてフィードバックをかける方法も取れる。一般的に分解能的には劣るが、本件で要求されるnmオーダーの分解能を有し、複数のAFMを組み合わせる本件の装置としては推奨される。この様なカンチレバー例はその製造方法とともに、特許文献5(特開平06−300557号公報)に開示されている。
【0031】
電圧電流計17a(またはb)は、カンチレバー5a(またはb)と被測定物3との電圧電流特性を得るために使用する。また後述する様に、カンチレバー間の電圧電流特性を得るための電圧電流計を備える。
【実施例2】
【0032】
図1に示す本発明の多探針AFMナノプローバでは、カンチレバー5a(またはb)とステージ3間の電圧電流特性を得るための電圧電流計17a(またはb)を備えている。これは、以下に説明する様に、平坦な表面であっても電気的特性が異なる部分で構成される表面である場合に有効に機能する。
【0033】
例えば、多層配線構造の半導体製造プロセスにおいて、平坦化のためにCMP(化学的機械研磨)が使われる場合がある。通常、CMP直後のウエーハでは、完全な鏡面になっており、電極が表面から盛り上がっている状況には無い。この点で故障解析と異なっている。故障解析では、HF(沸酸)処理により電極を20nm程度表面から突出させて、プロービングしやすいように表面処理を施している。このためCMP直後のウエーハでの観測では、凹凸で電極位置を確認することはできず、電流像が、電極位置を確認する唯一の方法になる。
【0034】
さらに、半導体製造プロセス途中での検査においては、電極間の距離が判明しており、この距離に合わせて探針間の距離を設定し、カンチレバー間の電流像を取得することによって、故障解析を行うことができる。例えば、CMP直後の基板裏面は、酸化膜、固定用のワックス等でステージ側に電流を取り出せない場合も有る。さらには、SOI基板などでもステージ側に電流を取り出せない。このような場合、カンチレバーと裏面間の電流像ではなく、カンチレバー間の電流を測定し、電流量、整流特性などから故障部分を推定することができる。また、各カンチレバーの電圧をそれぞれの故障モードに合わせて設定することで、検出したい故障に合わせた測定が行える。
【0035】
さらに、例えば絶縁されているはずの配線間についても、試料スキャンを行うことで、非常に近接した配置された部分間の電流像などの表面の電気特性を測定することができる。メモリーセルなどでは、同じ構造が繰り返されるため、隣接するセルのプラグ間の距離は一定であることが多い。このため、隣接するセルにまたがって配置された複数カンチレバー間の電流像を取ることで、隣接プラグ間のリーク情報を持った電流像を得ることができる。ちなみに、隣接プラグ間のリークは、度々起こる故障モードの1つである。
【0036】
また、トランジスターの電極配置も同じ構造が繰り返されるので、機能を決定するような規定の電圧を3本もしくは4本のカンチレバーにかけた上で、電極間に流れる電流像をマッピングすることで、よりトランジスターの機能に合わせた性能のずれを発見できるようになる。
【実施例3】
【0037】
上記多探針AFMナノプローバを用いた上記被測定物3の電気的測定は、次のように行う。
1) 探針を所定の距離に離間する。この際、例えば図2(a)の所定のスキャン領域16に入るようにする。これは、アラインメントマークまたはその代用品のAFMイメージをとることで容易に行うことができる。また、比較的大きなサイズの場合、光学顕微鏡のもとでも行うことができる。探針間は、後に述べる理由からできるだけ接近して配置することが望ましい。
2) 上記可動ステージをラスタスキャンして、重なり領域のあるそれぞれのAFMイメージを取得する。ここで、ラスタスキャンの領域サイズは、迅速な測定を行うためにはできるだけ小さい領域であることが望ましいことは明らかであるが、重なり領域を見出せるサイズであることが必要である。例えば、探針4a、4bを用いて、AFMイメージである図4(a)のマップA、マップBをそれぞれ取得する。ラスタスキャンの場合、探針4a、4bのスキャン最後の位置が、それぞれのマップA、Bの端にくるので、それぞれのマップの中心付近に戻しておくことが望ましい。また、外側から内側に向かうスパイラルスキャンを行うと、スキャン最後の位置がスキャン領域のほぼ中央になる。
3) 取得したイメージにおける上記重なり領域を見出して、上記探針のそれぞれの位置を読み取る。これは、例えば図4(a)の重複部分である。重複部分を見出すことは、マップAとマップBの相対位置を少しずつ変えて相関係数を評価し、最大となるところを見出すことで行うことができる。また、この重複部分で連結することによって、図4(b)に示す合成したマップを得ることができる。これは、当然のことながら、スキャン領域よりも広い面積をカバーしている。
4) 上記探針のそれぞれを所定の位置に設定する。この段階では、上記の合成したマップを用いることができる。
5) 上記被測定物の測定を行う。この際、図2(b)に示すように、例えば探針4a、4bが、点線像から実線像の方にずれることが度々起こる。例えば、被測定物のコンタクトホールやスルーホールに埋め込まれた導電性プラグ18に圧接して電気的導通をとる場合に、圧接する際に探針が被測定物の表面を滑って、その位置がずれることが度々起こる。このため、圧接前の距離にこのずれを見込んでおくことが望ましい。
【実施例4】
【0038】
上記の例では、探針を所定の距離に離間する際、アラインメントマークまたはその代用品を用いるか、光学顕微鏡を用いた。光学顕微鏡のもとでは、比較的大きなサイズの対象物である場合であって、光学顕微鏡で確認できる限界以下のサイズにおいては、探針先端を損傷する場合が多い。そこで、次のようにすることで、探針先端を損傷することを避けることができる。
1) 探針間の導通特性から該探針間が近接位置であることを示すように該探針のそれぞれの位置を設定する。例えば、図3(a)に示すように、一方、あるいは両方の探針を、トンネル電流あるいはイオン化されたガスによるイオン電流が流れるまで移動して接近させる。ここで、電圧電流計を用いて、通常の電気的導通が得られる直前で停止することが肝要である。また、原子間力が働く程度の距離に接近させることでも、上記と同様な距離に設定することができる。
2) 上記探針を所定の距離をおいて離間する。これは、上記の様に、上記探針間が極接近した距離にあっては、互いの干渉なしに電気的測定行えないためである。また、この際の所定の距離は、なるべく小さいことが望ましい。これは、スキャン領域の面積が一定の場合に、上記のマップA、マップBの重複領域の面積割合をなるべく大きくするためである。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、半導体デバイスの故障解析、立ち上げ時の少量不良に関する詳細解析、などに容易に適用することができる。また、インラインテスト時など、ウエーハ段階での故障解析などに裏面から電気的コンタクトを取りにくい状況での電気特性検査に使用すると効果的である。
【0040】
さらに、探針、基板裏面間に流れる電流は、故障位置の絞り込みにも使える。AFM動作で、表面をなぞりながら所定の電圧をかけて、探針試料間に流れる電流をイメージングすることで、電極が、P、Nどちらの基板についているかが、区別できる。さらに、オープン、ショートしている電極は特徴的な電流像を示すため、区別ができる。これは、レビューSEM(Review SEM)における電圧コントラスト(VC:Voltage contrast)像と類似しているが、VC像が、電子線のチャージアップを見ているのに対して、内部PN接合のポテンシャルを見ているため、より詳細な故障解析に用いることができる。
【符号の説明】
【0041】
1 駆動部
2 ステージ
3 被測定物
4a、4b 探針
5a、5b カンチレバー
6a、6b カンチレバー駆動部
7a、7b レーザ光源
8a、8b 4分割光検出器
9a、9b フィードバック(FB)回路
10 コンピュータ
11 制御線
12a、12b 制御線
13a、13b 信号線
14a、14b 信号線
15a、15b レーザ光
16 スキャン領域
17a、17b 電圧電流計
18 導電性プラグ
19a、19b ピエゾ抵抗部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動ステージ上の被測定物の電気的測定を行うための複数の探針を備え外部からの制御で前記探針位置を変えることが可能な多探針AFMナノプローバであって、
それぞれの探針によるAFMイメージを同時に取得する手段と、
取得した上記AFMイメージの相対位置を探索するイメージ探索手段と、
上記相対位置から、それぞれの探針位置を導出する位置導出手段と、
導出されたそれぞれの上記探針位置から、所定の位置関係になるようにそれぞれの上記探針位置を設定する位置設定手段と、
を備え、上記被測定物に上記探針を圧接して電気的測定を行うことを特徴とする多探針AFMナノプローバ。
【請求項2】
上記可動ステージをスキャンするための掃引手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の多探針AFMナノプローバ。
【請求項3】
上記スキャンは、ラスタスキャンまたはスパイラルスキャンであることを特徴とする請求項2に記載の多探針AFMナノプローバ。
【請求項4】
上記スキャン中に、上記探針のそれぞれは、上記ラスタスキャン方向と直交する方法に位置制御を行う垂直位置制御を備えることを特徴とする請求項2または3のいずれか1つに記載の多探針AFMナノプローバ。
【請求項5】
複数の上記探針間の電気的導通特性から近接状態にあることを電気的に確認する近接確認手段を備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の多探針AFMナノプローバ。
【請求項6】
複数の上記探針間の原子間力から近接状態にあることを確認する近接確認手段を備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の多探針AFMナノプローバ。
【請求項7】
上記多探針AFMナノプローバを用いて上記被測定物の電気的測定を行う方法であって、
1) 探針を所定の距離に離間するステップと、
2) 上記可動ステージをラスタスキャンして、重なり領域のあるそれぞれのAFMイメージを取得するステップと、
3) 取得したイメージにおける上記重なり領域を見出して、上記探針のそれぞれの位置を読み取るステップと、
4) 上記探針のそれぞれを所定の位置に設定するステップと、
5) 上記被測定物の測定を行うステップと、
を順に含むことを特徴とする多探針AFMナノプローバを用いた測定方法。
【請求項8】
請求項4に記載の上記多探針AFMナノプローバを用いた測定方法の前に、
1) 探針間の導通特性から該探針間が近接位置であることを示すように該探針のそれぞれの位置を設定するステップと、
2) 上記探針を所定の距離離間するステップと、
を順に含むことを特徴とする請求項7に記載の多探針AFMナノプローバを用いた測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−215112(P2011−215112A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−86105(P2010−86105)
【出願日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(511055485)Wafer Integration株式会社 (1)