多接点型端子金具
【課題】一方に設けられた平板状のタブの外周面に、他方に設けられた複数の弾性接触片を接触させるものにおいて、複数の弾性接触片の接触圧を均等にすることが可能な多接点型端子金具を提供する。
【解決手段】一方10に設けられた平板状のタブ11の外周面に、他方20に設けられた複数の弾性接触片40を接触させる多接点型端子金具Tであって、前記複数の弾性接触片40は、角筒状をなす基部25から延びて形成され、そのうち相対的に前記基部25の剛性が大きい部分から延びるものは幅寸法が小さくされ、相対的に剛性が小さい部分から延びるものは幅寸法が大きくされている。
【解決手段】一方10に設けられた平板状のタブ11の外周面に、他方20に設けられた複数の弾性接触片40を接触させる多接点型端子金具Tであって、前記複数の弾性接触片40は、角筒状をなす基部25から延びて形成され、そのうち相対的に前記基部25の剛性が大きい部分から延びるものは幅寸法が小さくされ、相対的に剛性が小さい部分から延びるものは幅寸法が大きくされている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多接点型端子金具に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車等に用いられる大電流用の接続端子として、多数の接点で端子金具を接触させ、接触抵抗を低減して発熱量を低く抑えることが可能な、多接点型端子金具が知られている。
多接点型端子金具の一例として、例えば特許文献1に記載された端子金具が知られている。この端子金具は、一方に設けられた断面円形の棒状をなす丸ピンの外周面に、他方に設けられた複数の弾性接触片を接触させるものである。複数の弾性接触片は、円筒状をなす基端部の端縁から延出して設けられている。
また、多接点型端子金具の一例として、例えば特許文献2に記載された端子金具が知られている。この端子金具は、一方に設けられた平板状のタブの外周面に、他方に設けられた複数の弾性接触片を接触させるものである。複数の弾性接触片は、タブが挿入される角筒状の本体部に形成され、両端が本体部に支持された形態をなしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−157525号公報
【特許文献2】特開2005−166300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記した多接点型端子金具のうち先に述べた端子金具は、丸ピンが切削加工により形成されるものであるから、製造コストが高いという問題がある。
これに対し、後に述べた端子金具は、タブをプレス加工により形成することができるので、先に述べた端子金具よりも安価に製造することができる。しかし、この端子金具において、弾性接触片が形成された本体部は、タブの形状にあわせて角筒状をなしているため、角部が他の部分に比して高剛性になる傾向がある。このため、複数の弾性接触片を本体部の周方向に並べて形成すると、相対的に高剛性の部位から延出する弾性接触片と、相対的に低剛性の部位から延出する弾性接触片とで、タブへの接触圧が異なってしまい、接触抵抗がばらついて局部的な発熱を生ずる虞がある。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、一方に設けられた平板状のタブの外周面に、他方に設けられた複数の弾性接触片を接触させるものにおいて、複数の弾性接触片の接触圧を均等にすることが可能な多接点型端子金具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の多接点型端子金具は、一方に設けられた平板状のタブの外周面に、他方に設けられた複数の弾性接触片を接触させる多接点型端子金具であって、前記複数の弾性接触片は、角筒状をなす基部から延びて形成され、そのうち相対的に前記基部の剛性が大きい部分から延びるものは幅寸法が小さくされ、相対的に剛性が小さい部分から延びるものは幅寸法が大きくされている。
このような構成によれば、相対的に、付け根部分の剛性が大きい弾性接触片の剛性は小さく、付け根部分の剛性が小さい弾性接触片の剛性は大きくなるから、複数の弾性接触片のタブへの接触圧を均等にすることができる。
【0007】
また、前記基部は、角筒状に折り曲げられて、その端縁同士が係止されることで開き止めされているものとしてもよい。このような構成によれば、基部が開いて弾性接触片の接触圧が低下してしまうことを防ぐことができ、確実に所定の接触圧を確保することができる。
【0008】
また、前記複数の弾性接触片を覆うカバーが装着されているものとしてもよい。このような構成によれば、弾性接触片を保護することができる。
また、前記弾性接触片は、前記基部から片持ち状をなして延出するものであり、前記弾性接触片の自由端側には、前記弾性接触片よりも外側に位置して前記カバーの内側に接するカバー支持部が設けられているものとしてもよい。このような構成によれば、カバーが弾性接触片に接触することを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、一方に設けられた平板状のタブの外周面に、他方に設けられた複数の弾性接触片を接触させるものにおいて、複数の弾性接触片の接触圧を均等にすることが可能な多接点型端子金具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態における多接点型端子金具の断面図
【図2】雌端子金具の正面図
【図3】雌端子金具の側面図
【図4】雌端子金具の平面図
【図5】雌端子金具の底面図
【図6】雌端子金具の展開図
【図7】カバーの側面図
【図8】カバーの平面図
【図9】カバー付き雌端子金具の正面図
【図10】カバー付き雌端子金具の側面図
【図11】カバー付き雌端子金具の平面図
【図12】カバー付き雌端子金具の底面図
【図13】カバー付き雌端子金具の断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施形態>
以下、本発明を具体化した一実施形態について、図1〜図13を参照しつつ詳細に説明する。
本実施形態では、多接点型端子金具Tとして、電気自動車やハイブリッド自動車等の電力供給線等に用いられる大電流端子金具を例示する。多接点型端子金具Tは、図1に示すように、互いに接続される雄端子金具10(一方)と雌端子金具20(他方)とを有して構成されている。この多接点型端子金具Tは、雄端子金具10に設けられた平板状のタブ11の外周面に、雌端子金具20に設けられた複数の弾性接触片40を接触させるものである。以下、各構成部材において、相手との接続方向を前方とし、また、図1の上側を上方、下側を下方として説明する。
【0012】
雄端子金具10は、銅合金等の導電性に優れた金属板をプレス加工することによって形成され、その一端は図示しない電線に接続され、他端側にタブ11が備えられている。タブ11の先端部は、プレス機の上下の型の間で圧潰されることにより、先端に向かって厚さ寸法(上下方向の寸法)が次第に小さくなる形状に形成されている。
【0013】
雌端子金具20は、銅合金等の導電性に優れた金属板をプレス加工することによって形成され、図示しない電線に接続される電線接続部21と、雄端子金具10のタブ11に接続する本体部22とが、繋ぎ部23を介して前後に連なった形態をなしている。また、雌端子金具20には、複数の弾性接触片40を覆うカバー50が装着されている。
【0014】
繋ぎ部23の底板27には、雌端子金具20が雌側のハウジング(図示せず)に収容された際の抜け止めとして用いられるランス孔24が開口されている。ランス孔24は略方形をなし、繋ぎ部23の幅方向における中央位置に形成されている。
【0015】
本体部22は、後側に設けられた基部25と、前側に設けられたカバー支持部26と、その間に設けられた弾性接触片40とを有してなる。
基部25は、扁平な角筒状に折り曲げられて、その折り曲げ方向の端縁同士が係止されることで開き止めされている。基部25は、底板27と、底板27の両側に立ち上がる一対の側板28A,28Bと、一対の側板28A,28Bのうち一方の側板28Aの上端から底板27と略平行をなすように屈曲されて他方の側板28Bの上端部に係止する天井板29とを有している。
【0016】
基部25には、その折り曲げ方向の端縁同士を開き止めするための係止部30が設けられている(図3参照)。係止部30は、基部25の前後の2か所に設けられている。係止部30は、天井板29に形成された係止凸部30Aと、他方の側板28Bに形成された係止凹部30Bとからなる。係止凸部30Aは、略長方形状をなして天井板29の端縁から天井板29の板面に沿う方向に突出し、係止凹部30Bは、略長方形状をなして他方の側板28Bの上端部を板厚方向(基部25における内外方向)に貫通して形成されている。そして、天井板29の端縁を他方の側板28Bの板面に突き当てるようにして、係止凸部30Aを係止凹部30Bに突入させた状態にし、他方の側板28Bの上端縁を叩くことで、係止凸部30Aが上方から押さえ込まれて係止凹部30Bに押し付けられる。このようにして、係止凸部30Aと係止凹部30Bとをかしめ付けて係止させることで、基部25の端縁の開き止めがなされる。
【0017】
他方の側板28Bの上端部(天井板29よりも上側に突出する部分)は、スタビライザ31とされている。スタビライザ31は、図示しない雌側のハウジングに対する雌端子金具20の誤挿入(上下反転挿入)を防ぐとともに、雌端子金具20の挿入姿勢を安定化するものである。
【0018】
カバー支持部26は、基部25と同様に、扁平な角筒状に折り曲げられて、その端縁同士が係止されることで開き止めされている。カバー支持部26は、基部25(スタビライザ31を除く部分)と同じ断面形状をなし、前後方向の寸法は基部25よりも小さくされている。カバー支持部26は、前底板32と、前底板32の両側に立ち上がる一対の前側板33A,33Bと、一対の前側板33A,33Bのうち一方の前側板33Aの上端から前底板32と略平行をなすように屈曲されて他方の前側板33Bの上端部に係止する前天井板34とを有している(図2参照)。
【0019】
基部25とカバー支持部26とは、連結部35により連結されている。連結部35は、基部25の一対の側板28A,28Bとカバー支持部26の一対の前側板33A,33Bとを繋ぐものであり、その両端部が、側板28A,28Bおよび前側板33A,33Bの上下方向の中間部分に連なっている。なお、連結部35の上下方向の寸法は、基部25およびカバー支持部26の上下方向の寸法の3分の1程度とされている。
【0020】
カバー支持部26には、その折り曲げ方向の端縁同士を開き止めするための前係止部36が設けられている。前係止部36は、前天井板34に形成された前係止凹部36Bと、他方の前側板33Bに形成された前係止凸部36Aとからなる(図3および図4参照)。前係止部36は、カバー支持部26の前後方向の中間位置に設けられている。前係止凹部36Bは、前天井板34の端縁を凹ませてなり、前係止凸部36Aは、他方の前側板33Bの上端縁から上方に突出して形成されている。そして、前天井板34の端部を、他方の前側板33Bの上端縁に当接させるようにして、前係止凹部36Bと前係止凸部36Aとを嵌合させることで、カバー支持部26の端縁の開き止めがなされる。
【0021】
弾性接触片40は、基部25の前縁から片持ち状をなして延出するものである。複数の弾性接触片40は、天井板29および底板27に同数ずつ(本実施形態では4本ずつ)、並べて設けられている。弾性接触片40の軸線の間隔は、基部25の幅方向に一定となっている。天井板29に設けられた弾性接触片40と、底板27に設けられた弾性接触片40とは、同ピッチで上下方向に向き合う位置に設けられ、同じ大きさおよび同じ形状で上下方向に対称となっている。なお、基部25の前端縁のうち弾性接触片40の間の部分は、R形状に形成されている。
【0022】
弾性接触片40は、基部25の前端縁から本体部22の内側へ向かって斜め前方に延びている。弾性接触片40の長さ寸法は、基部25の前後方向の寸法よりも大きくされている。各弾性接触片40は、自由端の手前の位置から、その先端部分が斜め外側に向かうように、屈曲した形状とされている(図1参照)。弾性接触片40のうち内側に最も膨出した部分は、タブ11に接触する接点部41とされている。弾性接触片40の接点部41は、弾性接触片40が自然状態にあるときには、連結部35の上縁または下縁よりも上下方向中央寄りに位置している(図3参照)。また、弾性接触片40の先端は、弾性接触片40が自然状態にあるときには、天井板29および底板27の位置よりも内側の位置に留まり、弾性接触片40がタブ11との接触により弾性変形した状態においても天井板29および底板27から突出しない位置に留まる。上下に対向する弾性接触片40の接点部41の間隔は、タブ11の平坦部分における厚さよりも所定寸法小さい設定となっている。全ての弾性接触片40において、屈曲形状(断面形状)、厚さ寸法および長さ寸法は同じとされている。
【0023】
そして、全ての弾性接触片40のうち基部25の幅方向の両端に位置する弾性接触片40(第1弾性接触片40Aと称する)と、中央に位置する弾性接触片40(第2弾性接触片40Bと称する)とで、幅寸法が異なるものとされている(図4および図5参照)。第1弾性接触片40Aは、基部25の角部に近い部分(相対的に基部25の剛性が大きい部分であって上下方向に撓みにくい部分)から延びるものであり、第2弾性接触片40Bは、基部25の中間部分(相対的に剛性が小さい部分であって上下方向に撓みやすい部分)から延びるものである。第1弾性接触片40Aの幅寸法は、第2弾性接触片40Bの幅寸法よりも小さくされている。
【0024】
全ての弾性接触片40は、基部25よりも自由端側が幅狭とされ、基部25側から自由端側に向かって一定の割合で幅が狭くなる設定とされている。これにより、全ての弾性接触片40は、基部25側から自由端側に向かって少しずつ剛性が低下している。また、第1弾性接触片40Aの基部25側と自由端側との幅寸法の差は、第2弾性接触片40Bの基部25側と自由端側との幅寸法の差よりも大きくされている。具体的には、本実施形態では、第1弾性接触片40Aの幅寸法は、基部25側の端部において2.15mm、自由端側の端部において1.85mmとされ、第2弾性接触片40Bの幅寸法は、基部25側の端部において2.5mm、自由端側の端部において2.45mmとされている。
上記のような雌端子金具20は、プレス成型機によって、金属板材を、図6に示すような展開形状に打ち抜いた後、曲げ工程を実行することで所定形状に形成される。
【0025】
カバー50は、所定形状に打ち抜いた導電性を有する金属板材を曲げ加工して成形したものであり、雌端子金具20の本体部22を内側に収容可能な、扁平な角筒状に折り曲げられて、その端縁同士が係止されることで開き止めされている。カバー50は、下板51と、下板51の両側に立ち上がる一対の縦板52A,52Bと、一対の縦板52A,52Bのうち一方の縦板52Aの上端から下板51と略平行をなすように屈曲されて他方の縦板52Bの上端に至る上板53とを有している(図9参照)。カバー50の下板51は、雌端子金具20のカバー支持部26の前底板32および基部25の底板27に接触し、縦板52A,52Bは、雌端子金具20のカバー支持部26の前側板33A,33Bおよび基部25の側板28A,28Bに接触し、上板53は、雌端子金具20のカバー支持部26の前天井板34および基部25の天井板29に接触する。カバー50は、他方の縦板52Bの上下方向の中央位置にて、端縁同士が付き当てられて開き止めされている(図10参照)。
【0026】
カバー50には、その端縁同士を開き止めするためのカバー係止部54が設けられている。カバー係止部54は、カバー50の端縁を挟んで上下に設けられたカバー係止凸部54Aと、カバー係止凹部54Bとからなる。カバー係止部54は、カバー50の前端寄りの位置と、後端寄りの位置との2か所に設けられている。カバー係止凹部54Bは、他方の縦板52Bに、他の部分よりも外側に浮き上がる形状をなす掛り部55を設けることで形成されている。掛り部55は、上下両端縁が他の部分から切り離されることで形成されている。カバー係止凸部54Aは、片持ち状をなして上方に立ち上がる形態をなしている。そして、他方の縦板52Aの上側部分と下側部分との端縁同士を当接させ、カバー係止凹部54Bにカバー係止凸部54Aを下方から差し入れた後、掛り部55を内側に押し付けてカバー係止凸部54Aの中間部分をへこませる。このようにして、カバー係止凸部54Aとカバー係止凹部54Bとをかしめ付けて係止させることで、カバー50の端縁の開き止めがなされる。
【0027】
カバー50は、本体部22の前端から繋ぎ部23にわたる長さ寸法を有している(図13参照)。詳しくは、カバー50の上板53は本体部22の後端までの長さ寸法を有している。また、カバー50の下板51は、上板53よりも後方に突出し、繋ぎ部23に至る長さ寸法を有している。下板51の後端は、ランス孔24よりもわずかに後側の位置に至っている。また、一対の縦板52A,52Bの後端部は、上側の部分が上板53の後端位置まで切り欠かれ、下側の部分が下板51の後端位置まで突出する形状とされている(図10参照)。
【0028】
カバー50の上板53には、スタビライザ31を逃がす第1逃がし部56が形成されている(図11参照)。第1逃がし部56は、上板53の後端から前方に向かって切り欠かれてなる。また、カバー50の下板51には、雌端子金具20のランス孔24を開放する第2逃がし部57が形成されている(図12参照)。第2逃がし部57は、下板51の後端部に形成され、ランス孔24よりも若干大きい略方形に切り欠かれて形成されている。第2逃がし部57は、後方に開放されている。
【0029】
カバー50の前端には、雌端子金具20の前方への抜け出しを防ぐ、前ストッパ部58が設けられている。前ストッパ部58は、上板53および下板51に設けられ、その前端縁から前方へ突出するとともに内側へ折り返されてなる(図7および図8参照)。前ストッパ部58は、上板53または下板51に対して略垂直をなす前壁58Aと、上板53または下板51に略平行をなす内壁58Bとを有している。前ストッパ部58の前壁58Aには、雌端子金具20のカバー支持部26の前端縁が当接し、前ストッパ部58の内壁58Bの間の部分は、雄端子金具10のタブ11が挿入されるタブ挿入口59とされている(図1参照)。タブ11は、両内壁58Bの壁面に接触した状態で、雌端子金具20に挿入される。
【0030】
カバー50の後端部には、雌端子金具20の後方への抜け止めを規制する後ストッパ部61が設けられている。後ストッパ部61は、カバー50の上板53の後端縁に、突出して設けられている(図7および図8参照)。後ストッパ部61は、カバー50の幅方向の中央に設けられ、その幅方向に長い略長方形をなし、長手方向の寸法は、雌端子金具20のランス孔24の幅寸法と同等の寸法とされている。後ストッパ部61は、雌端子金具20にカバー50を装着したのち、雌端子金具20の基部25の天井板29の後端縁に沿って(上板53に対して垂直方向に)折り曲げられる(図13参照)。
【0031】
また、カバー50の後端部には、雌端子金具20の繋ぎ部23を上側から押さえて、雌端子金具20の浮き上がりを防止する押さえ部62が設けられている。押さえ部62は、カバー50の縦板52A,52Bの上端縁に延出して設けられている。押さえ部62は、前後方向に若干長い略長方形をなし、カバー50を雌端子金具20に装着した後に、繋ぎ部23の側板28A,28Bの上端縁に沿って(縦板52A,52Bに対して垂直方向に)折り曲げられる。
【0032】
次に、雄端子金具10と雌端子金具20との接続動作について説明する。
雄端子金具10のタブ11は、カバー50のタブ挿入口59から雌端子金具20の本体部22内に挿入される。タブ11は、全ての弾性接触片40を弾性変位させつつ上下両側の接点部41の間に割って入り、正規量挿入されると、接点部41の間で弾性的に挟持される。これにより、雄雌の端子金具10,20の間が電気的に接続される。このとき、第1弾性接触片40Aと第2弾性接触片40Bとの、タブ11に対する接触圧は同等のものとなっている。
【0033】
上記のように構成された実施形態によれば、以下の効果を奏する。
本実施形態の多接点型端子金具Tは、雄端子金具10に設けられた平板状のタブ11の外周面に、雌端子金具20に設けられた複数の弾性接触片40を接触させるものであり、複数の弾性接触片40は、角筒状をなす基部25から延びて形成され、そのうち相対的に基部25の剛性が大きい部分から延びる第1弾性接触片40Aは幅寸法が小さくされ、相対的に剛性が小さい部分から延びる第2弾性接触片40Bは幅寸法が大きくされている。
【0034】
これにより、相対的に、付け根部分の剛性が大きい第1弾性接触片40Aの剛性は小さくなり、付け根部分の剛性が小さい第2弾性接触片40Bの剛性は大きくなるから、全ての弾性接触片40のタブ11への接触圧を均等にすることができる。また、雄端子金具10に設けられたタブ11は、プレス加工により形成することができるから、これが切削加工を要する丸ピンである場合に比べて、安価に製造することができる。すなわち、本実施形態の構成によれば、多接点型端子金具Tを安価に製造することができ、かつ全ての弾性接触片40の接触圧を均等にすることができる。
【0035】
また、従来のように、弾性接触片の幅寸法が全て同じである場合には、相対的に付け根部分の剛性が大きい弾性接触片と、付け根部分の剛性が小さい弾性接触片とで、タブ11に対する接触圧が異なる。このような場合には、接触圧が小さい弾性接触片において、必要最低限の接触圧を確保するべく、全ての弾性接触片の幅寸法を設定する必要がある。このため、全ての弾性接触片のトータルの接触圧が過大になり、雄端子金具10と雌端子金具20とを接続する際に必要な嵌合力が、その分大きくなってしまうという問題がある。しかしながら、本実施形態の多接点型端子金具Tによれば、全ての弾性接触片40の接触圧を均等にすることができるから、そのような問題は生じず、雄端子金具10と雌端子金具20とを接続する際の嵌合力を低く抑えることができる。
【0036】
また、雌端子金具20の基部25は、角筒状に折り曲げられて、その端縁同士が係止されることで開き止めされている。これにより、基部25が開いて弾性接触片40の接触圧が低下してしまうことを防ぐことができ、確実に所定の接触圧を確保することができる。
【0037】
また、雌端子金具20には、全ての弾性接触片40を覆うカバー50が装着されているから、弾性接触片40を保護することができる。
また、弾性接触片40は、基部25から片持ち状をなして延出するものであり、弾性接触片40の自由端側には、弾性接触片40よりも外側に位置してカバー50の内側に接するカバー支持部26が設けられている。これにより、カバー50が弾性接触片40に接触することを防ぐことができる。
【0038】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0039】
(1)上記実施形態では、弾性接触片40は、基部25から片持ち状をなして延出するものとされているが、これに限らず、弾性接触片を、両持ち状をなすものとしてもよい。
(2)上記実施形態では、弾性接触片40の幅寸法は、第1弾性接触片40Aと第2弾性接触片40Bとの2段階で異なるものとされているが、これに限らず、弾性接触片の幅寸法を、3段階以上で異なるものとしてもよい。例えば、幅方向に5本の弾性接触片が並んでいる場合には、その両端に位置する一対の第1弾性接触片と、その内側に位置する一対の第2弾性接触片と、中央に位置する一の第3弾性接触片とで、段階的に幅寸法が異なるものとしてもよい。
(3)上記実施形態では、弾性接触片40は、基部25の天井板29および底板27のみに設けられているが、これに限らず、例えば側板に設けてもよく、このような場合には、側板に設けた弾性接触片も含めて、幅寸法を適宜設定するのがよい。
(4)上記実施形態では、雌端子金具20の基部25は、その折り曲げ方向の端縁同士が係止部30により開き止めされているが、必ずしもこのような開き止めを行わなくてもよい。
【0040】
(5)上記実施形態では、雌端子金具20の基部25の折り曲げ方向の端縁同士は、係止部30をかしめ付けることにより開き止めされているが、これに限らず、例えば溶接等により開き止めしてもよい。
(6)上記実施形態では、基部25の角部に近い部分の剛性が相対的に大きく、中間部分の剛性が相対的に小さい部分となっているが、基部の相対的な剛性は、基部の形状等により適宜決まるものであるから、一律に角部の剛性が大きく、中間部分の剛性が小さいといえるものではない。例えば、基部の角部の近傍に開口が形成される等により、角部の剛性が中間部分の剛性よりも低くなるような場合には、中間部分から延出する弾性接触片の幅寸法を、角部から延出する弾性接触片の幅寸法より小さくするのがよい。
(7)上記実施形態によれば、弾性接触片40は、基部25側よりも自由端側が幅狭とされているが、これに限らず、弾性接触片は、その長さ方向の全体にわたり幅寸法を一定としてもよく、また、基部側よりも自由端側を幅広としてもよい。
(8)上記実施形態によれば、弾性接触片40は、基部25側から自由端側まで一定の割合で幅が狭くなる設定とされているが、これに限らず、例えば、弾性接触片を、一定の割合で幅寸法が変化する部分と、幅寸法が変化しない部分とを併せ持つ形状としてもよい。
【符号の説明】
【0041】
T…多接点型端子金具
10…雄端子金具(一方)
11…タブ
20…雌端子金具(他方)
25…基部
26…カバー支持部
40…弾性接触片
50…カバー
【技術分野】
【0001】
本発明は、多接点型端子金具に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車等に用いられる大電流用の接続端子として、多数の接点で端子金具を接触させ、接触抵抗を低減して発熱量を低く抑えることが可能な、多接点型端子金具が知られている。
多接点型端子金具の一例として、例えば特許文献1に記載された端子金具が知られている。この端子金具は、一方に設けられた断面円形の棒状をなす丸ピンの外周面に、他方に設けられた複数の弾性接触片を接触させるものである。複数の弾性接触片は、円筒状をなす基端部の端縁から延出して設けられている。
また、多接点型端子金具の一例として、例えば特許文献2に記載された端子金具が知られている。この端子金具は、一方に設けられた平板状のタブの外周面に、他方に設けられた複数の弾性接触片を接触させるものである。複数の弾性接触片は、タブが挿入される角筒状の本体部に形成され、両端が本体部に支持された形態をなしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−157525号公報
【特許文献2】特開2005−166300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記した多接点型端子金具のうち先に述べた端子金具は、丸ピンが切削加工により形成されるものであるから、製造コストが高いという問題がある。
これに対し、後に述べた端子金具は、タブをプレス加工により形成することができるので、先に述べた端子金具よりも安価に製造することができる。しかし、この端子金具において、弾性接触片が形成された本体部は、タブの形状にあわせて角筒状をなしているため、角部が他の部分に比して高剛性になる傾向がある。このため、複数の弾性接触片を本体部の周方向に並べて形成すると、相対的に高剛性の部位から延出する弾性接触片と、相対的に低剛性の部位から延出する弾性接触片とで、タブへの接触圧が異なってしまい、接触抵抗がばらついて局部的な発熱を生ずる虞がある。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、一方に設けられた平板状のタブの外周面に、他方に設けられた複数の弾性接触片を接触させるものにおいて、複数の弾性接触片の接触圧を均等にすることが可能な多接点型端子金具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の多接点型端子金具は、一方に設けられた平板状のタブの外周面に、他方に設けられた複数の弾性接触片を接触させる多接点型端子金具であって、前記複数の弾性接触片は、角筒状をなす基部から延びて形成され、そのうち相対的に前記基部の剛性が大きい部分から延びるものは幅寸法が小さくされ、相対的に剛性が小さい部分から延びるものは幅寸法が大きくされている。
このような構成によれば、相対的に、付け根部分の剛性が大きい弾性接触片の剛性は小さく、付け根部分の剛性が小さい弾性接触片の剛性は大きくなるから、複数の弾性接触片のタブへの接触圧を均等にすることができる。
【0007】
また、前記基部は、角筒状に折り曲げられて、その端縁同士が係止されることで開き止めされているものとしてもよい。このような構成によれば、基部が開いて弾性接触片の接触圧が低下してしまうことを防ぐことができ、確実に所定の接触圧を確保することができる。
【0008】
また、前記複数の弾性接触片を覆うカバーが装着されているものとしてもよい。このような構成によれば、弾性接触片を保護することができる。
また、前記弾性接触片は、前記基部から片持ち状をなして延出するものであり、前記弾性接触片の自由端側には、前記弾性接触片よりも外側に位置して前記カバーの内側に接するカバー支持部が設けられているものとしてもよい。このような構成によれば、カバーが弾性接触片に接触することを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、一方に設けられた平板状のタブの外周面に、他方に設けられた複数の弾性接触片を接触させるものにおいて、複数の弾性接触片の接触圧を均等にすることが可能な多接点型端子金具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態における多接点型端子金具の断面図
【図2】雌端子金具の正面図
【図3】雌端子金具の側面図
【図4】雌端子金具の平面図
【図5】雌端子金具の底面図
【図6】雌端子金具の展開図
【図7】カバーの側面図
【図8】カバーの平面図
【図9】カバー付き雌端子金具の正面図
【図10】カバー付き雌端子金具の側面図
【図11】カバー付き雌端子金具の平面図
【図12】カバー付き雌端子金具の底面図
【図13】カバー付き雌端子金具の断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施形態>
以下、本発明を具体化した一実施形態について、図1〜図13を参照しつつ詳細に説明する。
本実施形態では、多接点型端子金具Tとして、電気自動車やハイブリッド自動車等の電力供給線等に用いられる大電流端子金具を例示する。多接点型端子金具Tは、図1に示すように、互いに接続される雄端子金具10(一方)と雌端子金具20(他方)とを有して構成されている。この多接点型端子金具Tは、雄端子金具10に設けられた平板状のタブ11の外周面に、雌端子金具20に設けられた複数の弾性接触片40を接触させるものである。以下、各構成部材において、相手との接続方向を前方とし、また、図1の上側を上方、下側を下方として説明する。
【0012】
雄端子金具10は、銅合金等の導電性に優れた金属板をプレス加工することによって形成され、その一端は図示しない電線に接続され、他端側にタブ11が備えられている。タブ11の先端部は、プレス機の上下の型の間で圧潰されることにより、先端に向かって厚さ寸法(上下方向の寸法)が次第に小さくなる形状に形成されている。
【0013】
雌端子金具20は、銅合金等の導電性に優れた金属板をプレス加工することによって形成され、図示しない電線に接続される電線接続部21と、雄端子金具10のタブ11に接続する本体部22とが、繋ぎ部23を介して前後に連なった形態をなしている。また、雌端子金具20には、複数の弾性接触片40を覆うカバー50が装着されている。
【0014】
繋ぎ部23の底板27には、雌端子金具20が雌側のハウジング(図示せず)に収容された際の抜け止めとして用いられるランス孔24が開口されている。ランス孔24は略方形をなし、繋ぎ部23の幅方向における中央位置に形成されている。
【0015】
本体部22は、後側に設けられた基部25と、前側に設けられたカバー支持部26と、その間に設けられた弾性接触片40とを有してなる。
基部25は、扁平な角筒状に折り曲げられて、その折り曲げ方向の端縁同士が係止されることで開き止めされている。基部25は、底板27と、底板27の両側に立ち上がる一対の側板28A,28Bと、一対の側板28A,28Bのうち一方の側板28Aの上端から底板27と略平行をなすように屈曲されて他方の側板28Bの上端部に係止する天井板29とを有している。
【0016】
基部25には、その折り曲げ方向の端縁同士を開き止めするための係止部30が設けられている(図3参照)。係止部30は、基部25の前後の2か所に設けられている。係止部30は、天井板29に形成された係止凸部30Aと、他方の側板28Bに形成された係止凹部30Bとからなる。係止凸部30Aは、略長方形状をなして天井板29の端縁から天井板29の板面に沿う方向に突出し、係止凹部30Bは、略長方形状をなして他方の側板28Bの上端部を板厚方向(基部25における内外方向)に貫通して形成されている。そして、天井板29の端縁を他方の側板28Bの板面に突き当てるようにして、係止凸部30Aを係止凹部30Bに突入させた状態にし、他方の側板28Bの上端縁を叩くことで、係止凸部30Aが上方から押さえ込まれて係止凹部30Bに押し付けられる。このようにして、係止凸部30Aと係止凹部30Bとをかしめ付けて係止させることで、基部25の端縁の開き止めがなされる。
【0017】
他方の側板28Bの上端部(天井板29よりも上側に突出する部分)は、スタビライザ31とされている。スタビライザ31は、図示しない雌側のハウジングに対する雌端子金具20の誤挿入(上下反転挿入)を防ぐとともに、雌端子金具20の挿入姿勢を安定化するものである。
【0018】
カバー支持部26は、基部25と同様に、扁平な角筒状に折り曲げられて、その端縁同士が係止されることで開き止めされている。カバー支持部26は、基部25(スタビライザ31を除く部分)と同じ断面形状をなし、前後方向の寸法は基部25よりも小さくされている。カバー支持部26は、前底板32と、前底板32の両側に立ち上がる一対の前側板33A,33Bと、一対の前側板33A,33Bのうち一方の前側板33Aの上端から前底板32と略平行をなすように屈曲されて他方の前側板33Bの上端部に係止する前天井板34とを有している(図2参照)。
【0019】
基部25とカバー支持部26とは、連結部35により連結されている。連結部35は、基部25の一対の側板28A,28Bとカバー支持部26の一対の前側板33A,33Bとを繋ぐものであり、その両端部が、側板28A,28Bおよび前側板33A,33Bの上下方向の中間部分に連なっている。なお、連結部35の上下方向の寸法は、基部25およびカバー支持部26の上下方向の寸法の3分の1程度とされている。
【0020】
カバー支持部26には、その折り曲げ方向の端縁同士を開き止めするための前係止部36が設けられている。前係止部36は、前天井板34に形成された前係止凹部36Bと、他方の前側板33Bに形成された前係止凸部36Aとからなる(図3および図4参照)。前係止部36は、カバー支持部26の前後方向の中間位置に設けられている。前係止凹部36Bは、前天井板34の端縁を凹ませてなり、前係止凸部36Aは、他方の前側板33Bの上端縁から上方に突出して形成されている。そして、前天井板34の端部を、他方の前側板33Bの上端縁に当接させるようにして、前係止凹部36Bと前係止凸部36Aとを嵌合させることで、カバー支持部26の端縁の開き止めがなされる。
【0021】
弾性接触片40は、基部25の前縁から片持ち状をなして延出するものである。複数の弾性接触片40は、天井板29および底板27に同数ずつ(本実施形態では4本ずつ)、並べて設けられている。弾性接触片40の軸線の間隔は、基部25の幅方向に一定となっている。天井板29に設けられた弾性接触片40と、底板27に設けられた弾性接触片40とは、同ピッチで上下方向に向き合う位置に設けられ、同じ大きさおよび同じ形状で上下方向に対称となっている。なお、基部25の前端縁のうち弾性接触片40の間の部分は、R形状に形成されている。
【0022】
弾性接触片40は、基部25の前端縁から本体部22の内側へ向かって斜め前方に延びている。弾性接触片40の長さ寸法は、基部25の前後方向の寸法よりも大きくされている。各弾性接触片40は、自由端の手前の位置から、その先端部分が斜め外側に向かうように、屈曲した形状とされている(図1参照)。弾性接触片40のうち内側に最も膨出した部分は、タブ11に接触する接点部41とされている。弾性接触片40の接点部41は、弾性接触片40が自然状態にあるときには、連結部35の上縁または下縁よりも上下方向中央寄りに位置している(図3参照)。また、弾性接触片40の先端は、弾性接触片40が自然状態にあるときには、天井板29および底板27の位置よりも内側の位置に留まり、弾性接触片40がタブ11との接触により弾性変形した状態においても天井板29および底板27から突出しない位置に留まる。上下に対向する弾性接触片40の接点部41の間隔は、タブ11の平坦部分における厚さよりも所定寸法小さい設定となっている。全ての弾性接触片40において、屈曲形状(断面形状)、厚さ寸法および長さ寸法は同じとされている。
【0023】
そして、全ての弾性接触片40のうち基部25の幅方向の両端に位置する弾性接触片40(第1弾性接触片40Aと称する)と、中央に位置する弾性接触片40(第2弾性接触片40Bと称する)とで、幅寸法が異なるものとされている(図4および図5参照)。第1弾性接触片40Aは、基部25の角部に近い部分(相対的に基部25の剛性が大きい部分であって上下方向に撓みにくい部分)から延びるものであり、第2弾性接触片40Bは、基部25の中間部分(相対的に剛性が小さい部分であって上下方向に撓みやすい部分)から延びるものである。第1弾性接触片40Aの幅寸法は、第2弾性接触片40Bの幅寸法よりも小さくされている。
【0024】
全ての弾性接触片40は、基部25よりも自由端側が幅狭とされ、基部25側から自由端側に向かって一定の割合で幅が狭くなる設定とされている。これにより、全ての弾性接触片40は、基部25側から自由端側に向かって少しずつ剛性が低下している。また、第1弾性接触片40Aの基部25側と自由端側との幅寸法の差は、第2弾性接触片40Bの基部25側と自由端側との幅寸法の差よりも大きくされている。具体的には、本実施形態では、第1弾性接触片40Aの幅寸法は、基部25側の端部において2.15mm、自由端側の端部において1.85mmとされ、第2弾性接触片40Bの幅寸法は、基部25側の端部において2.5mm、自由端側の端部において2.45mmとされている。
上記のような雌端子金具20は、プレス成型機によって、金属板材を、図6に示すような展開形状に打ち抜いた後、曲げ工程を実行することで所定形状に形成される。
【0025】
カバー50は、所定形状に打ち抜いた導電性を有する金属板材を曲げ加工して成形したものであり、雌端子金具20の本体部22を内側に収容可能な、扁平な角筒状に折り曲げられて、その端縁同士が係止されることで開き止めされている。カバー50は、下板51と、下板51の両側に立ち上がる一対の縦板52A,52Bと、一対の縦板52A,52Bのうち一方の縦板52Aの上端から下板51と略平行をなすように屈曲されて他方の縦板52Bの上端に至る上板53とを有している(図9参照)。カバー50の下板51は、雌端子金具20のカバー支持部26の前底板32および基部25の底板27に接触し、縦板52A,52Bは、雌端子金具20のカバー支持部26の前側板33A,33Bおよび基部25の側板28A,28Bに接触し、上板53は、雌端子金具20のカバー支持部26の前天井板34および基部25の天井板29に接触する。カバー50は、他方の縦板52Bの上下方向の中央位置にて、端縁同士が付き当てられて開き止めされている(図10参照)。
【0026】
カバー50には、その端縁同士を開き止めするためのカバー係止部54が設けられている。カバー係止部54は、カバー50の端縁を挟んで上下に設けられたカバー係止凸部54Aと、カバー係止凹部54Bとからなる。カバー係止部54は、カバー50の前端寄りの位置と、後端寄りの位置との2か所に設けられている。カバー係止凹部54Bは、他方の縦板52Bに、他の部分よりも外側に浮き上がる形状をなす掛り部55を設けることで形成されている。掛り部55は、上下両端縁が他の部分から切り離されることで形成されている。カバー係止凸部54Aは、片持ち状をなして上方に立ち上がる形態をなしている。そして、他方の縦板52Aの上側部分と下側部分との端縁同士を当接させ、カバー係止凹部54Bにカバー係止凸部54Aを下方から差し入れた後、掛り部55を内側に押し付けてカバー係止凸部54Aの中間部分をへこませる。このようにして、カバー係止凸部54Aとカバー係止凹部54Bとをかしめ付けて係止させることで、カバー50の端縁の開き止めがなされる。
【0027】
カバー50は、本体部22の前端から繋ぎ部23にわたる長さ寸法を有している(図13参照)。詳しくは、カバー50の上板53は本体部22の後端までの長さ寸法を有している。また、カバー50の下板51は、上板53よりも後方に突出し、繋ぎ部23に至る長さ寸法を有している。下板51の後端は、ランス孔24よりもわずかに後側の位置に至っている。また、一対の縦板52A,52Bの後端部は、上側の部分が上板53の後端位置まで切り欠かれ、下側の部分が下板51の後端位置まで突出する形状とされている(図10参照)。
【0028】
カバー50の上板53には、スタビライザ31を逃がす第1逃がし部56が形成されている(図11参照)。第1逃がし部56は、上板53の後端から前方に向かって切り欠かれてなる。また、カバー50の下板51には、雌端子金具20のランス孔24を開放する第2逃がし部57が形成されている(図12参照)。第2逃がし部57は、下板51の後端部に形成され、ランス孔24よりも若干大きい略方形に切り欠かれて形成されている。第2逃がし部57は、後方に開放されている。
【0029】
カバー50の前端には、雌端子金具20の前方への抜け出しを防ぐ、前ストッパ部58が設けられている。前ストッパ部58は、上板53および下板51に設けられ、その前端縁から前方へ突出するとともに内側へ折り返されてなる(図7および図8参照)。前ストッパ部58は、上板53または下板51に対して略垂直をなす前壁58Aと、上板53または下板51に略平行をなす内壁58Bとを有している。前ストッパ部58の前壁58Aには、雌端子金具20のカバー支持部26の前端縁が当接し、前ストッパ部58の内壁58Bの間の部分は、雄端子金具10のタブ11が挿入されるタブ挿入口59とされている(図1参照)。タブ11は、両内壁58Bの壁面に接触した状態で、雌端子金具20に挿入される。
【0030】
カバー50の後端部には、雌端子金具20の後方への抜け止めを規制する後ストッパ部61が設けられている。後ストッパ部61は、カバー50の上板53の後端縁に、突出して設けられている(図7および図8参照)。後ストッパ部61は、カバー50の幅方向の中央に設けられ、その幅方向に長い略長方形をなし、長手方向の寸法は、雌端子金具20のランス孔24の幅寸法と同等の寸法とされている。後ストッパ部61は、雌端子金具20にカバー50を装着したのち、雌端子金具20の基部25の天井板29の後端縁に沿って(上板53に対して垂直方向に)折り曲げられる(図13参照)。
【0031】
また、カバー50の後端部には、雌端子金具20の繋ぎ部23を上側から押さえて、雌端子金具20の浮き上がりを防止する押さえ部62が設けられている。押さえ部62は、カバー50の縦板52A,52Bの上端縁に延出して設けられている。押さえ部62は、前後方向に若干長い略長方形をなし、カバー50を雌端子金具20に装着した後に、繋ぎ部23の側板28A,28Bの上端縁に沿って(縦板52A,52Bに対して垂直方向に)折り曲げられる。
【0032】
次に、雄端子金具10と雌端子金具20との接続動作について説明する。
雄端子金具10のタブ11は、カバー50のタブ挿入口59から雌端子金具20の本体部22内に挿入される。タブ11は、全ての弾性接触片40を弾性変位させつつ上下両側の接点部41の間に割って入り、正規量挿入されると、接点部41の間で弾性的に挟持される。これにより、雄雌の端子金具10,20の間が電気的に接続される。このとき、第1弾性接触片40Aと第2弾性接触片40Bとの、タブ11に対する接触圧は同等のものとなっている。
【0033】
上記のように構成された実施形態によれば、以下の効果を奏する。
本実施形態の多接点型端子金具Tは、雄端子金具10に設けられた平板状のタブ11の外周面に、雌端子金具20に設けられた複数の弾性接触片40を接触させるものであり、複数の弾性接触片40は、角筒状をなす基部25から延びて形成され、そのうち相対的に基部25の剛性が大きい部分から延びる第1弾性接触片40Aは幅寸法が小さくされ、相対的に剛性が小さい部分から延びる第2弾性接触片40Bは幅寸法が大きくされている。
【0034】
これにより、相対的に、付け根部分の剛性が大きい第1弾性接触片40Aの剛性は小さくなり、付け根部分の剛性が小さい第2弾性接触片40Bの剛性は大きくなるから、全ての弾性接触片40のタブ11への接触圧を均等にすることができる。また、雄端子金具10に設けられたタブ11は、プレス加工により形成することができるから、これが切削加工を要する丸ピンである場合に比べて、安価に製造することができる。すなわち、本実施形態の構成によれば、多接点型端子金具Tを安価に製造することができ、かつ全ての弾性接触片40の接触圧を均等にすることができる。
【0035】
また、従来のように、弾性接触片の幅寸法が全て同じである場合には、相対的に付け根部分の剛性が大きい弾性接触片と、付け根部分の剛性が小さい弾性接触片とで、タブ11に対する接触圧が異なる。このような場合には、接触圧が小さい弾性接触片において、必要最低限の接触圧を確保するべく、全ての弾性接触片の幅寸法を設定する必要がある。このため、全ての弾性接触片のトータルの接触圧が過大になり、雄端子金具10と雌端子金具20とを接続する際に必要な嵌合力が、その分大きくなってしまうという問題がある。しかしながら、本実施形態の多接点型端子金具Tによれば、全ての弾性接触片40の接触圧を均等にすることができるから、そのような問題は生じず、雄端子金具10と雌端子金具20とを接続する際の嵌合力を低く抑えることができる。
【0036】
また、雌端子金具20の基部25は、角筒状に折り曲げられて、その端縁同士が係止されることで開き止めされている。これにより、基部25が開いて弾性接触片40の接触圧が低下してしまうことを防ぐことができ、確実に所定の接触圧を確保することができる。
【0037】
また、雌端子金具20には、全ての弾性接触片40を覆うカバー50が装着されているから、弾性接触片40を保護することができる。
また、弾性接触片40は、基部25から片持ち状をなして延出するものであり、弾性接触片40の自由端側には、弾性接触片40よりも外側に位置してカバー50の内側に接するカバー支持部26が設けられている。これにより、カバー50が弾性接触片40に接触することを防ぐことができる。
【0038】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0039】
(1)上記実施形態では、弾性接触片40は、基部25から片持ち状をなして延出するものとされているが、これに限らず、弾性接触片を、両持ち状をなすものとしてもよい。
(2)上記実施形態では、弾性接触片40の幅寸法は、第1弾性接触片40Aと第2弾性接触片40Bとの2段階で異なるものとされているが、これに限らず、弾性接触片の幅寸法を、3段階以上で異なるものとしてもよい。例えば、幅方向に5本の弾性接触片が並んでいる場合には、その両端に位置する一対の第1弾性接触片と、その内側に位置する一対の第2弾性接触片と、中央に位置する一の第3弾性接触片とで、段階的に幅寸法が異なるものとしてもよい。
(3)上記実施形態では、弾性接触片40は、基部25の天井板29および底板27のみに設けられているが、これに限らず、例えば側板に設けてもよく、このような場合には、側板に設けた弾性接触片も含めて、幅寸法を適宜設定するのがよい。
(4)上記実施形態では、雌端子金具20の基部25は、その折り曲げ方向の端縁同士が係止部30により開き止めされているが、必ずしもこのような開き止めを行わなくてもよい。
【0040】
(5)上記実施形態では、雌端子金具20の基部25の折り曲げ方向の端縁同士は、係止部30をかしめ付けることにより開き止めされているが、これに限らず、例えば溶接等により開き止めしてもよい。
(6)上記実施形態では、基部25の角部に近い部分の剛性が相対的に大きく、中間部分の剛性が相対的に小さい部分となっているが、基部の相対的な剛性は、基部の形状等により適宜決まるものであるから、一律に角部の剛性が大きく、中間部分の剛性が小さいといえるものではない。例えば、基部の角部の近傍に開口が形成される等により、角部の剛性が中間部分の剛性よりも低くなるような場合には、中間部分から延出する弾性接触片の幅寸法を、角部から延出する弾性接触片の幅寸法より小さくするのがよい。
(7)上記実施形態によれば、弾性接触片40は、基部25側よりも自由端側が幅狭とされているが、これに限らず、弾性接触片は、その長さ方向の全体にわたり幅寸法を一定としてもよく、また、基部側よりも自由端側を幅広としてもよい。
(8)上記実施形態によれば、弾性接触片40は、基部25側から自由端側まで一定の割合で幅が狭くなる設定とされているが、これに限らず、例えば、弾性接触片を、一定の割合で幅寸法が変化する部分と、幅寸法が変化しない部分とを併せ持つ形状としてもよい。
【符号の説明】
【0041】
T…多接点型端子金具
10…雄端子金具(一方)
11…タブ
20…雌端子金具(他方)
25…基部
26…カバー支持部
40…弾性接触片
50…カバー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方に設けられた平板状のタブの外周面に、他方に設けられた複数の弾性接触片を接触させる多接点型端子金具であって、
前記複数の弾性接触片は、角筒状をなす基部から延びて形成され、そのうち相対的に前記基部の剛性が大きい部分から延びるものは幅寸法が小さくされ、相対的に剛性が小さい部分から延びるものは幅寸法が大きくされている多接点型端子金具。
【請求項2】
前記基部は、角筒状に折り曲げられて、その端縁同士が係止されることで開き止めされている請求項1に記載の多接点型端子金具。
【請求項3】
前記複数の弾性接触片を覆うカバーが装着されている請求項1または請求項2に記載の多接点型端子金具。
【請求項4】
前記弾性接触片は、前記基部から片持ち状をなして延出するものであり、
前記弾性接触片の自由端側には、前記弾性接触片よりも外側に位置して前記カバーの内側に接するカバー支持部が設けられている請求項3に記載の多接点型端子金具。
【請求項1】
一方に設けられた平板状のタブの外周面に、他方に設けられた複数の弾性接触片を接触させる多接点型端子金具であって、
前記複数の弾性接触片は、角筒状をなす基部から延びて形成され、そのうち相対的に前記基部の剛性が大きい部分から延びるものは幅寸法が小さくされ、相対的に剛性が小さい部分から延びるものは幅寸法が大きくされている多接点型端子金具。
【請求項2】
前記基部は、角筒状に折り曲げられて、その端縁同士が係止されることで開き止めされている請求項1に記載の多接点型端子金具。
【請求項3】
前記複数の弾性接触片を覆うカバーが装着されている請求項1または請求項2に記載の多接点型端子金具。
【請求項4】
前記弾性接触片は、前記基部から片持ち状をなして延出するものであり、
前記弾性接触片の自由端側には、前記弾性接触片よりも外側に位置して前記カバーの内側に接するカバー支持部が設けられている請求項3に記載の多接点型端子金具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−164486(P2012−164486A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23124(P2011−23124)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】
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