説明

多条刈コンバイン

【課題】刈幅が走行車体幅より広く構成された刈取部を、前方移動並びに左右にローリングさせ、直立状に姿勢変更させて走行車体幅内に収めるようにし、狭い道路での走行やトラック輸送が容易に行え、且つ、メンテナンスも容易に行えるものとする。
【解決手段】刈取部(4)の刈幅が走行車体(1)の幅よりも広く構成された多条刈コンバインにおいて、刈取部(4)は、該刈取部(4)を昇降可能に支持する刈取懸架台(13)と共に走行車体(1)に対して前後方向に移動可能で、且つ前後方向の軸芯(22)回りに回動可能に装着し、刈取部(4)を前方に移動させた状態で、該刈取部(4)を前後方向の軸芯(22)を回動支点として略直立姿勢に姿勢変更できる構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、多条刈の刈取部で穀稈を刈り取り、脱穀部に搬送供給して脱穀する多条刈コンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1に示されているように、フィーダハウスとその前方に連設するヘッダとで構成される刈取搬送装置を車体の前方部に昇降自在に装備してなる汎用コンバインにおいて、フィーダハウスの前端にヘッダを車体進行方向の軸芯回りと、車体進行方向の軸芯に対して直交する横軸芯回りとに回動可能に装着し、刈取搬送装置を上昇させた状態で、ヘッダを車体進行方向の軸芯と横軸芯回りに回動させてフィーダハウスの上部に折り畳み収納できるようにしたものが開示されている。
【特許文献1】特開平9−140243号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一般に、刈取部の刈幅が走行車体幅より幅広く構成された多条刈コンバインにあっては、狭い道路での運行やトラック輸送が困難であり、特に、トラック輸送に際しては刈取部をコンバイン本体から取り外して別個に積み込まなければならない問題があった。
【0004】
本発明の課題は、上記問題点を解消し、同時にメンテナンスも容易にできる多条刈コンバインを具現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
すなわち、穀稈を刈り取って脱穀部(3)に搬送供給する刈取部(4)の刈幅が走行車体(1)の幅よりも広く構成された多条刈コンバインにおいて、前記刈取部(4)は、該刈取部(4)を昇降可能に支持する刈取懸架台(13)と共に走行車体(1)に対して前後方向に移動可能で、且つ前後方向の軸芯(22)回りに回動可能に装着し、刈取部(4)を前方に移動させた状態で、該刈取部(4)を前後方向の軸芯(22)を回動支点として略直立姿勢に姿勢変更できる構成としたことを特徴とする多条刈コンバインとする。
【0006】
刈取部(4)を刈取懸架台(13)と共に前方に移動させれば、刈取部(4)の刈取搬送終端部が脱穀部(3)のフィードチェン始端部から離間する。そして、刈取部(4)を所定高さまで上昇させた状態で前後方向の軸芯(22)を支点として回動させると、刈取部(4)が左右横方向の水平姿勢から略直立姿勢に姿勢変更されて、刈取部(4)全体が走行車体(1)の幅内に収められる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、刈取部(4)を前方に移動させ、前後方向の軸芯(22)回りに回動させることによって刈取部(4)が左右横方向の姿勢から直立姿勢に姿勢変更されることになるので、刈幅が走行車体幅よりも広く構成された多条刈のコンバインでありながら、刈取部(4)を走行車体(1)の幅内に収めることができ、狭い道路での走行やトラック輸送が容易に行える。しかも、刈取懸架台(13)を前方に移動させることによって脱穀部(3)の前部のメンテナンスは勿論、横側部のエンジンやその他周辺のメンテナンスも容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
この発明の実施例を図面に基づき説明する。
図1は、コンバインの側面図を示すものであり、この走行車体1には、左右一対の走行クローラ2,2を備え、後部に搭載した脱穀装置(脱穀部)3の前方部に刈取部4を設置し,刈取部4の横側部には運転席5や操作ボックス6等を有する運転操作部を備え、更に、その運転操作部の後方には脱穀粒を一時的に貯留するグレンタンクGを装備している。
【0009】
刈取部4は、立毛する穀稈を左右に分草する分草体7、分草後の穀稈を引き起す引起し装置8、引起し後の穀稈を刈り取るバリカン式の刈取装置9、刈取後の穀稈を後方の脱穀部3まで揚上搬送して脱穀フィードチェン11に受け継がせる刈取穀稈搬送装置10等からなり、走行フレーム12上に装備した刈取懸架台13に対して上下に昇降可能で前後方向に沿わせて設けた刈取縦フレーム16及び該刈取縦フレームの先端に左右横方向に沿わせて設けた刈取横フレーム17に装備している。なお、この実施例における刈取装置9の刈幅は、7条以上の穀稈を刈り取ることのできる刈幅を保有してあり、走行車体幅Dよりも広くなっている。
【0010】
刈取縦フレーム16は、刈取懸架台13上において左右横方向に架設された刈取入力軸14を支点として上下回動する構成であり、刈取昇降シリンダ19の伸縮作動によって刈取部4が昇降するようになっている。
【0011】
刈取懸架台13は、上下13aと13bとに分割されており、走行フレーム12に対してこれに形成されたスライド溝20に沿って前後方向移動自在に支持されている。刈取懸架台の前後移動手段は、モータの駆動によって前後動させるものであってもよいが、図例では前後シリンダ21の伸縮作動によって行うように構成している。刈取懸架台の前方への移動距離は、刈取穀稈搬送終端部とフィードチェン始端部との引継ぎ部が重複しない位置まで移動させる距離とすれば、ローリング時の干渉を防止することができる。なお、懸架台下部13bとスライド溝20との間にはローラを設けて懸架台が軽くスライド移動するように構成しておくとよい。
【0012】
刈取懸架台13の下部13b側には、前後方向に沿うローリング軸22を架設してあり、このローリング軸芯22を支点として刈取懸架台13の上部13a側が左又は右回り(本例では右回りとすることで、刈取部の運転操作部側が運転席やキャビン等に干渉しないようにしている。)に回動するよう連結構成してある。そして、この刈取懸架台上に架設支持された刈取部4が左右横方向の水平姿勢から上下方向の直立姿勢に姿勢変更されるように刈取ローリングシリンダ(モータでも良い)23の伸縮作動によって行う構成としている。このように刈取部を水平姿勢から直立姿勢に姿勢変更した場合には、図5に示すように、刈取部が走行車体の左右横幅D内へ完全に収納されることになる。
【0013】
運転席5の下方に搭載されたエンジンからの回転動力が走行ミッションケースに入力され、走行ミッションケースに入力された駆動力はHSTによって変速されてミッション出力軸から出力され、ミッション出力軸からの駆動力は、出力ギヤ18、刈取入力ギヤ15を介して刈取入力軸14に伝達されるようになっている。このようなギヤ伝動による場合は、刈取部の前後移動、ローリング時にあってもベルト伝動のようにベルトをいちいち取り外す必要がなくなる。
【0014】
また、図7に示すように、前後シリンダ21の移動開始位置と移動終了位置とに位置センサS1,S2を設け、更に、刈取ローリングシリンダ23の張出・収納位置とに位置センサS3,S4を設け、運転席5近くに設けた自動張出・収納スイッチ25を「収納」側に切換ON操作すると、前後シリンダ21が位置センサS1から位置センサS2まで伸長作動して刈取部が前方に移動する。そして、次に、刈取ローリングシリンダ23が位置センサS3から位置センサS4まで作動して刈取部が水平姿勢から直立姿勢にローリング制御され、車幅内に自動収納されるように自動化することもできる。なお、前記自動張出・収納スイッチ25を「収納」側から「張出」側に切換ON操作した場合には、刈取ローリングシリンダ23、前後シリンダ21が自動的に作動し、これにより刈取部が所定の張出位置(元位置)へ自動復帰するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】コンバインの側面図
【図2】コンバイン要部の側面図
【図3】同上要部の側面図
【図4】同上要部の斜視図
【図5】同上要部の正面図
【図6】同上一部の正面図
【図7】コンバイン要部の側面図
【符号の説明】
【0016】
1 走行車体
3 脱穀部
4 刈取部
13 刈取懸架台
22 前後軸芯(ローリング軸)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀稈を刈り取って脱穀部(3)に搬送供給する刈取部(4)の刈幅が走行車体(1)の幅よりも広く構成された多条刈コンバインにおいて、前記刈取部(4)は、該刈取部(4)を昇降可能に支持する刈取懸架台(13)と共に走行車体(1)に対して前後方向に移動可能で、且つ前後方向の軸芯(22)回りに回動可能に装着し、刈取部(4)を前方に移動させた状態で、該刈取部(4)を前後方向の軸芯(22)を回動支点として略直立姿勢に姿勢変更できる構成としたことを特徴とする多条刈コンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−29131(P2010−29131A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−196542(P2008−196542)
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】