説明

多段コネクタ

【課題】 コネクタ前端側におけるハウジング相互の係止部あるいはハウジングとカバーとの係止部を外部に突出させない形状として、ハウジング相互あるいはハウジングとカバーとの固定作業を容易なものとする。
【解決手段】 第1,第2の各ハウジング37,39には、端子収容室49が露出する開口部45が形成されている。各ハウジング37,39の前端側の上面には係合突起51が形成され、各係合突起51は、第2のハウジング39の背面に形成された係合孔およびカバー41に形成された係合孔55にそれぞれ係合する。各ハウジング37,39の後端側の側壁上部には、上係合爪57が形成され、各上係合爪57は、第2のハウジング39の背面に形成された下係合爪59およびカバー41に形成された下係合爪61にそれぞれ係合する。カバー41の上面には、誤結防止リブ63およびロック片63が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、ハウジングの一方の面に、端子収容室が露出する開口部が形成され、この開口部を他のハウジングの他方の面にて閉塞するようにハウジング相互を重ね合わせるとともに、開口部が他のハウジングによって閉塞されない位置のハウジングについては開口部をカバーによって閉塞するように構成された多段コネクタに関する。
【0002】
【従来の技術】図10は、実開平2−115252号公報に記載された従来の多段コネクタの分解斜視図である。この多段コネクタは、雄コネクタ1が二つのハウジング3,5とカバー7とから構成されている。二つのハウジング3,5は、上面に開口部がそれぞれ形成されて、端子金具9,11が収容される端子収容室13,15が露出している。これらハウジング3,5およびカバー7は、各ハウジング3,5の開口部を覆うように重ね合わされた状態で、超音波溶着などにより一体化される。
【0003】一方、雌コネクタ17は、ハウジング本体19とフード21とからなり、ハウジング本体19は、二つのハウジング23,25およびカバー27相互が超音波溶着などにより一体化され、さらにこの一体化されたハウジング本体19に、フード21をストッパフランジ29に当接するまで挿入した状態で、両者を超音波溶着などにより一体化する。
【0004】雄コネクタ1側の端子金具9,11は、雌コネクタ17との嵌合時に雌コネクタ17側のハウジング23,25の端子収容室31,33に収容される図示しないピン端子と接触して電気的導通がなされる。また、雄コネクタ1のカバー7には、ロックアーム35が設けられ、雄コネクタ1をフード21内に挿入したとき、ロックアーム35の上面に形成されたロック突起35aがフード21側の図示しない係止凹部に係止されて両コネクタ1,17相互が固定される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記した従来の多段コネクタは、雄コネクタ1および、雌コネクタ17のハウジング本体19いずれについても、例えば雄コネクタ1側でみれば、ハウジング3,5およびカバー7が、互いに超音波溶着で固定する構造であるため、固定作業が面倒である。溶着固定に代えて、係止爪と係止凹部とからなる係止部により着脱可能として固定作業を容易にすることも考えられるが、この場合の係止部は、端子金具9,11がハウジング3,5内に収容されていることから、ハウジング3,5の幅方向両側部に設けたり、外部に突出する形状となりやすく、特にフード21に挿入されるコネクタ前端側の係止部が、このような形状となる場合には、フード21の形状を上記突出した係止部に合わせて複雑化したり、あるいは突出した係止部が組立て作業中にフード21への挿入以前にて周辺部に引掛け外れてしまうなど作業性の悪化を招く。
【0006】そこで、この発明は、コネクタ前端側におけるハウジング相互の係止部あるいはハウジングとカバーとの係止部を外部に突出させない形状として、ハウジング相互あるいはハウジングとカバーとの固定作業を容易なものとすることを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するために、この発明は、ハウジングの一方の面に、端子収容室が露出する開口部が形成され、この開口部を他のハウジングの他方の面にて閉塞するようにハウジング相互を重ね合わせるとともに、開口部が他のハウジングによって閉塞されない位置のハウジングについては開口部をカバーによって閉塞するように構成された多段コネクタにおいて、前記ハウジング同士を係合する係合部および、ハウジングとカバーとを係合する係合部を、相手側コネクタと嵌合する側のコネクタ前端側と、コネクタ後端側とにそれぞれ設け、前記コネクタ前端側の係合部は、ハウジング同士あるいは、ハウジングとカバーとが相互に対向する面の一方側に設けた係合突起と、他方側に設けられ、前記係合突起が挿入されて係合するた係合孔とで構成されている構成としてある。
【0008】このような構成の多段コネクタによれば、ハウジング同士あるいは、ハウジングとカバーとが、コネクタ前端側および後端側にそれぞれ設けた係合部により係合して固定されるので、固定作業が容易である上、コネクタ前端側の係合部については、ハウジング同士あるいは、ハウジングとカバーとが相互に対向する面の一方側に設けた係合突起と、他方側に設けた係合孔とで構成されているので、これら両者の係合により相互に対向する面が重ね合わされると、この前端側の係合部は外部に突出しないばかりか、露出部も最小限に抑えられる。
【0009】また、相手側コネクタとの嵌合時に、嵌合すべき正規の相手側コネクタにのみ係合してコネクタ相互の嵌合が可能となる誤結防止リブと、前記嵌合時にコネクタ相互をロック固定するロック手段とを、ハウジングと別体のカバー側にそれぞれ設けた構成とすることで、カバーおよびハウジングを標準化でき、標準化したカバーおよびハウジングの組合わせによるコネクタの極数展開が図れて金型起工点数が低減する。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0011】図1は、この発明の実施の一形態を示す多段コネクタの分解斜視図、図2は同多段コネクタの組立て状態での側面断面図、図3は図2の左側面図、図4は図2の右側面図である。図1に示す多段コネクタは、雄側のコネクタであり、第1のハウジング37と第2のハウジング39とカバー41とを備えている。第1,第2の各ハウジング37,39は、互いにほぼ同一構造で、前端面に図示しない相手側の雌コネクタの雄端子が挿入される挿入口43が形成され、一方の面となる上面のコネクタ後方側には、開口部45が形成されている。開口部45が形成されることで、隔壁47によって仕切られた複数の端子収容室49が外部に露出している。
【0012】上記した端子収容室49に、図2に二点鎖線で示された圧接端子Tが収容され、収容された圧接端子Tに対して圧接治具を用いて被覆電線Wを押込み圧接し、圧接端子Tの圧接刃により被覆電線Wの被覆を切込んで内部の芯線に圧接刃に接触させ、電気的導通を図る。
【0013】第1,第2の各ハウジング37,39のコネクタ前端側の上面には、それぞれ四つの係合突起51が形成され、第2のハウジング37の上記係合突起51に対応する背面(図1中で下面)には、第1のハウジング37の係合突起51が係合して入込む係合孔53(図2R>2参照)が形成されている。また、カバー41のコネクタ前端側には、第1のハウジング39の係合突起51が係合して入込む係合孔55が形成されている。上記した係合突起51および係合孔53,55は、コネクタ前端側の係合部を構成し、これらの係合部は、端子収容室49に対しコネクタの幅方向側方にずれた位置に形成されている。
【0014】第1,第2の各ハウジング37,39の開口部45における側壁後端の上部には、図4に示すように、上係合爪57が形成され、第2のハウジング39の上記上係合爪57に対応する背面(図1中で下面)には、第1のハウジング37の上係合爪57に係合する下係合爪59が形成されている。また、カバー41のコネクタ後端側の幅方向両端には、第2のハウジング39の上係合爪57に係合する下係合爪61が形成されている。上記した上係合爪57および下係合爪59,61は、コネクタ後端側の係合部を構成している。
【0015】上記カバー41の幅方向中央部の上面には、相手側の雌コネクタとの嵌合時にロック固定するロック手段としてのロック片63が設けられている。ロック片63は、図2に示されるように、接続部63aによりカバー41の本体側と接続され、この接続部63aを支点として先端側の押圧操作部63b側が上下方向に弾性変形移動可能であり、中央上面に設けたロック爪63cにより相手側の雌コネクタに係合する。
【0016】また、カバー41の幅方向両側部の上面には、相手側コネクタとの嵌合時に、嵌合すべき正規の相手側コネクタにのみ係合してコネクタ相互の嵌合が可能となる誤結防止リブ65が設けられている。誤結防止リブ65は、コネクタの嵌合方向に沿って延長される凸条で構成され、相手側コネクタは、図5に示すように、図2R>2の組立て状態の雄コネクタが挿入されるフード部67を有し、このフード部67の内面に誤結防止リブ65が挿入して係合する凹状の溝69が設けられている。また、フード部67の上部内面には、カバー41における二つの誤結防止リブ65相互間のロック片63などの形状に合わせて凹部71などが形成されている。
【0017】図1に示した多段コネクタは、図3に示すように、第2のハウジング39を第1のハウジング37に対してその開口部45を覆うように重ね合わせ、さらにカバー41を第2のハウジング39に対してその開口部45を覆うように重ね合わせる。
【0018】このとき、コネクタ前端側においては、第1のハウジング37の係合突起51が第2のハウジング39の係合孔53に、第2のハウジング39の係合突起51がカバー41の係合孔55に、それぞれ係合して固定される。一方コネクタ後端側については、第1のハウジング37の上係合爪57が第2のハウジング39の下係合爪59に、第2のハウジング39の上係合爪57がカバー41の下係合爪61に、それぞれ係合して固定される。これにより、第1,第2の各ハウジング37,39およびカバー41が相互に結合されて雄側の多段コネクタの組立てが完了する。
【0019】上記した多段コネクタは、前端側が係合突起51と係合孔53,55からなる係合部で、後端側が上係合部57と下係合部59,61とからなる係合部で、それぞれ係合固定されるので、従来のように超音波溶着で固定する作業に比べて作業が容易である。また、前端側の係合部については、係合突起51が係合孔53,55に入込む構成であることから、外部への突出部がなく、露出部としてもカバー41における係合孔55およびこの係合孔55に入込んでいる係合突起51の先端のみであるので、相手側コネクタのフード部67の形状を係合部に合わせて複雑化させる必要がないとともに、組立て作業中に相手側コネクタとの嵌合以前にて周辺部に引掛け外れてしまうなど作業性の悪化が防止され、また外観品質も向上したものとなる。
【0020】また、第1,第2の各ハウジング37,39と別体のカバー41側に誤結防止リブ65およびロック片63を設けたので、カバー41およびハウジング37,39を標準化でき、標準化したカバー41およびハウジング37,39の組合わせによるコネクタの極数展開(例えば図3に相当する図6のように、図1の第2のハウジング39を使用せず、第1のハウジング37にカバー41を装着するなど)が図れて金型起工点数の低減ができ、製造コストの低下が達成される。
【0021】なお、カバー41の誤結防止リブ65および、フード部67の凹状の溝69は、図7ないし図9に示すように、適宜変化させることで、異種の多段コネクタとすることができる。
【0022】
【発明の効果】以上説明してきたように、この発明によれば、ハウジング同士あるいは、ハウジングとカバーとが、コネクタ前端側および後端側にそれぞれ設けた係合部により係合して固定されるので、固定作業が容易である上、コネクタ前端側の係合部については、ハウジング同士あるいは、ハウジングとカバーとが相互に対向する面の一方側に設けた係合突起と、他方側に設けた係合孔とで構成されているので、これら両者の係合により相互に対向する面が重ね合わされると、この前端側の係合部は外部に突出しないばかりか、露出部も最小限に抑えられ、係合部を設けることによる相手側コネクタの形状複雑化が回避されるともに、前端側の係止部が、組立て作業中に相手側コネクタとの嵌合以前にて周辺部に引掛け外れてしまうなど作業性の悪化が防止され、外観品質も向上する。
【0023】また、ハウジングと別体のカバー側に誤結防止リブおよびロック手段を設けることで、カバーおよびハウジングを標準化でき、標準化したカバーおよびハウジングの組合わせによるコネクタの極数展開が図れて金型起工点数の低減ができ、製造コストの低下を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の一形態を示す多段コネクタの分解斜視図である。
【図2】図1の多段コネクタの組立て状態での側面断面図である。
【図3】図2の左側面図である。
【図4】図2の右側面図である。
【図5】図1の多段コネクタに対する相手側コネクタのフード部の斜視図である。
【図6】図1における第2のハウジングを使用しない場合の図3に相当するコネクタ正面図である。
【図7】カバーの誤結防止リブおよび、フード部の凹状の溝の他の形状例を示す斜視図である。
【図8】カバーの誤結防止リブおよび、フード部の凹状の溝のさらに他の形状例を示す斜視図である。
【図9】カバーの誤結防止リブおよび、フード部の凹状の溝のさらに他の形状例を示す斜視図である。
【図10】従来の多段コネクタの分解斜視図である。
【符号の説明】
37 第1のハウジング
39 第2のハウジング
41 カバー
45 開口部
49 端子収容室
51 係合突起(係合部)
53,55 係合孔(係合部)
57 上係合爪(係合部)
59,61 下係合爪(係合部)
63 ロック片(ロック手段)
65 誤結防止リブ
67 フード部
69 凹状の溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ハウジングの一方の面に、端子収容室が露出する開口部が形成され、この開口部を他のハウジングの他方の面にて閉塞するようにハウジング相互を重ね合わせるとともに、開口部が他のハウジングによって閉塞されない位置のハウジングについては開口部をカバーによって閉塞するように構成された多段コネクタにおいて、前記ハウジング同士を係合する係合部および、ハウジングとカバーとを係合する係合部を、相手側コネクタと嵌合する側のコネクタ前端側と、コネクタ後端側とにそれぞれ設け、前記コネクタ前端側の係合部は、ハウジング同士あるいは、ハウジングとカバーとが相互に対向する面の一方側に設けた係合突起と、他方側に設けられ、前記係合突起が挿入されて係合するた係合孔とで構成されていることを特徴とする多段コネクタ。
【請求項2】 カバーに、相手側コネクタとの嵌合時に、嵌合すべき正規の相手側コネクタにのみ係合してコネクタ相互の嵌合が可能となる誤結防止リブと、前記嵌合時にコネクタ相互をロック固定するロック手段とをそれぞれ設けたことを特徴とする請求項1記載の多段コネクタ。
【請求項3】 誤結防止リブは、カバーの表面に、コネクタの嵌合方向に沿って延長される凸条で構成され、相手側コネクタは、ハウジングにカバーが装着された状態で挿入されるフード部を有し、このフード部の内面に、誤結防止リブが挿入されて係合する凹状の溝が設けられていることを特徴とする請求項2記載の多段コネクタ。

【図6】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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