説明

多段式ビームコンベア

【課題】 搬送枚数が多く、大型ワークが搬送でき、装置の設置面積を縮小でき、発塵無くクリーンルームで稼動可能な搬送装置を実現する。
【解決手段】 ウォーキングビーム動作を行う2組の搬送ビームA,Bを用い、等速運動区間をオーバーラップさせることにより上下運動とワークとの摩擦をなくし、かつ多段に搬走路を構成して搬送容量を大きくする。2台の搬送装置を並列に配置し、搬送ビームを掛け渡せば、精度の高い搬送平面が維持でき、大型ワークに対応する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを上下動なく静粛に搬送するビームコンベアに関し、特に、多段に搬送面を構成して処理能力を増大し、また、無発塵の搬送特性を活かしクリーンルームでの搬送に用いられるビームコンベアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のビームコンベアは、単一の搬送面上で搬送を行う。また、既存の多段搬送装置ではローラコンベアを多段に構成するものが存在するが、高さ方向に狭ピッチで搬送面を設置できず、回転対偶が介在するため清浄度を維持できない。
【特許文献1】 特開平06−072521号公報
【特許文献2】 特開平7−196125号公報
【特許文献3】 特開平7−196125号公報
【特許文献4】 特開平11−193120号公報
【実用新案文献】
実登第3039213号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
搬送されるワークが平板状で大面積である場合、枚葉搬送によるとワーク幅より幅の広い搬送機構を持つ処理装置が必要であり、装置費用に加えてクリーンルームのように単位面積あたりの維持費用が高い場所に設置すると、多額のランニングコストを発生し続ける。ワークがマガジン等に収納されている時点の、多段に層をなした状態のまま、塵埃を発生せず静粛に振動なく搬送され処理されることが望ましい。
【0004】
本出願にかかる発明では、搬送平面が多段に構成されかつ大きな搬送幅に対応するため、ワークと搬送ビームの総重量が大きくなり、荷重と運動に対する剛性を高める必要がある。なお、本出願では、ビームとは長尺状のワーク支持体を意味するものとする。
【0005】
本出願のウォーキングビーム動作は、リフトA,リフトB,ストロークA,ストロークBの4動作から成るので、それぞれにアクチュエータを用いると電気制御が煩雑になり、センサとの信号のやり取りが複雑でコスト高となるばかりでなく、変速や停止の際、変更や復旧にダウンタイムが発生する。1台の回転原動機のみで全体が協調動作することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
搬送ビームのリフト上昇位置である搬送平面を多段に構成し、各段において同一軌跡で2組の搬送ビームが180度位相をずらしてウォーキングビーム動作することにより、各段のワークを同時に搬送する。
【0007】
ワークと搬送ビームの総重量が1機の搬送装置の可搬重量を超える場合、もしくは十分な剛性が得られない場合、もしくはワーク直下に機構が配置できない場合には搬送装置を搬送路の下面に2機並列に配置し、同期駆動して搬送を行う。
【0008】
1台の回転原動機により駆動軸を回転させ、カム・異形歯車等の機械要素により機械機構で結合し搬送ビームを同期動作させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、搬送ビームの幅と段数に比例して多数のワークを搬送できるので、処理の能力を著しく高めることができる。また、この多段式ビームコンベアを採用すれば、現行の枚葉搬送に比し装置の設置面積をおよそ1/2〜1/25に縮小することが可能になり、枚様物や薄型トレイ等の処理装置において設置面積を著しく減少させる効果がある。搬送ビームに回転対偶がなく、また摩擦も起きず発塵が無く清浄度を維持できるので、クリーンルーム内で稼動する大型基板の搬送装置にも適合する。
【0010】
搬送路の両側に搬送方向と平行して2台の本発明の搬送装置を配置し、搬送ビームを掛け渡して同期駆動により搬送すると、大型ワークを撓み最少で搬送でき、搬送ビームとワークの重量に耐える機構が実現できる。
【0011】
一台の回転原動機で一組または複数組の搬送機構を駆動すれば、電気制御が簡略化でき、加速・減速制御が容易になり変速も無調整で行え、必要なセンサ数も少なくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1に搬送ビームA,Bの等速搬送における運動ダイアグラムを示す。ビームAのダイアグラムはビームBのダイアグラムと同一であり、位相が180度異なる。図中オーバーラップと記入した区間でビームA,Bが共に等速運動しながらワークを支持しており、この作用によりワークは摩擦あるいはこすれなく受け渡され、発塵せずクリーンな搬送が行える。
【0013】
図2に前記駆動ダイアグラムによる搬送ビームA,Bの軌跡を示す。図1の駆動ダイアグラムにおける0度位置を黒点で示す。
【0014】
図3に各段の搬送ビーム配置の中で、請求項4に関する搬送方向と平行な配置を示す。配置する組数は必要に応じて増減し、トレイによる搬送では撓みを考慮する必要がないので、両端の2組を配置すれば目的を達する。原動ビームA,B(1,2)上に固定された原動コラムA,B(3,4)は多段に配置されたタイバーA,B(5,6)によりそれぞれが結合され、搬送ビームA,B(7,8)を支持する。
【0015】
図4に各段の搬送ビーム配置の中で、請求項5に関する搬送方向と直角な配置を示す。この配置では搬送ビームが運動しない区間が搬送方向と直角に存在するので、チャンバー内に設置してゲートあるいはシャッターにより環境条件が異なる空間を連続して搬送できる。
【0016】
図5にワークを多くの支持点で支える補助サポートの手法を示す。こ方法により、大型基板が撓み最少の状態で搬送でき、あるいは小さなワークを一段に並列して多数個搬送できる装置が実現する。搬送方向と直角に配置した搬送ビームについて図示したが、この手法は搬送装置と平行して配置した搬送ビームについても利用できる。
【0017】
また、支持点に吸着パッドを用いることにより、垂直方向・横姿勢・吊り下げ姿勢での搬送が可能である。
【実施例1】
【0018】
図6に1機の搬送装置による搬送の駆動機構と多段搬送ビームの概要を示す。駆動機構(32)の出力端である原動ビームA,B(33,34)に原動コラムA,B(34,35)が固定されており、その上に搬送コラムA,B(35,36)が等間隔で配置されている。コラムを繋いで搬送ビームA,B(37,38)が多段に配置され、載置されたワーク(W)は、搬送ビームA,Bの交互の作用により移送される。本図の搬送ビームの構成は請求項5の搬送方向に直交する搬送ビームを表す。
【実施例2】
【0019】
図7により、2機の駆動装置による搬送を説明する。駆動モータ(41)の回転運動はウォームギア(42)によって減速され、連結軸(43)によりベベルギアユニット(44)を介して駆動機構1,2(45,46)に伝達される。これにより、駆動機構1,2はウォーキングビーム動作により作動する。
【00020】
本発明を従来の装置を2機並列して用い、搬送ビームを多段式に変更する方法で実施した。搬送幅を300mmから900mmに拡大し、段数を1段から5段に変更した。結果として、従来に比し搬送数量としては15倍、設置面積当りでは約5倍の搬送能力が得られた。
【0021】
搬送ビームをチャンバー内に設置し、搬送方向に直交する1以上の隔壁を設けてチャンバー内を複数の区画に仕切り、スリットからワークを通過させて移送することにより、各隔壁間の環境を制御し雰囲気処理や化学処理等を行うことが可能である。請求項4の搬送ビーム構成では隔壁部の搬送ビームを隔壁前後に分断して配置する。請求項5の搬送ビーム構成ではA,B2つの搬送ビームのストローク運動がともに存在しない区間があるので、この区間に隔壁を設ける。隔壁間の気密性を高める目的でワーク通過のためのスリットを上下するシャッターにより遮断することが可能である。
【実施例3】
【0022】
運動ダイアグラムに従って搬送ビームを駆動し搬送を行う機構の一例を図8により説明する。駆動モータ(101)により、軸受(102)で支持された駆動軸(103)が回転運動を行い、リフトカムA,B(104,105)が図1に示すリフト動作を行う。ストロークカム(106)には断面Pに示すように、対向してスライド動作を取り出すカムフォロアが配置され、180度位相をずらした図1によるストローク運動を行う。結果として、対を成すR及びSのヨークA,B(107,108)に取り付けられた搬送ビームがウォーキングビーム動作による等速直進搬送動作を行う。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明によれば、搬送運動のビーム軌跡が存在しない区間があり、その区間に固定梁を通し、各種機能装置を取り付けることにより様々の機能を持つ製造設備で搬送に用いることができる。
【0023】
本発明に紫外線ランプを取り付けることにより紫外線洗浄装置が、遠赤外線発生装置を取り付けることにより遠赤外線加熱炉が、超音波発生装置を取り付けることにより乾式超音波洗浄装置が実現できる。
【0024】
搬送ビームに耐熱素材を用い、断熱パネルを原動コラムの基部に設置すれば、各種熱処理装置に利用できる。焼成炉・冷凍設備・カラーフィルタベーキング装置・塗装焼付炉等が実現できる。
【0025】
また、低速運転により菌類・キノコ・植物等の成長装置が構成できる。
【0026】
特徴的には、ワークの上下両面を同時に処理できる装置を構成できる。各段の間に排気ダクトを設ければ有害雰囲気を集合させ集中排気することが可能となる。
【0027】
上記の他に、ワークをリフトアップする機構を搬送方向に滞留ワークの数だけ配置し、先頭ワークから順次待機させれば、先詰バッファとして有効な装置が構成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】搬送ビームA,Bの運動ダイアグラム。
【図2】搬送ビームA,Bの運動軌跡。
【図3】搬送方向と平行な搬送ビーム配置を示す平面図。
【図4】搬送方向と直交する搬送ビーム配置を示す平面図。
【図5】補助サポートを示す平面図。
【図6】多段搬送装置の正面図(a)、および側面図(b)。
【図7】2機の搬送装置による正面図(a)、および平面図(b)。
【図8】本発明のウォーキングビーム機構の一例の説明図。
【符号の説明】
1・・・原動ビームA
2・・・原動ビームB
3・・・原動コラムA
4・・・原動コラムB
5・・・搬送ビームA
6・・・搬送ビームB
7・・・タイバーA
8・・・タイバーB
W・・・ワーク
11・・・原動ビームC
12・・・原動ビームD
13・・・原動コラムC
14・・・原動コラムD
15・・・搬送ビームC
16・・・搬送ビームD
W・・・ワーク
21・・・原動ビームE
22・・・原動ビームF
23・・・原動コラムE
24・・・原動コラムF
25・・・搬送ビームE
26・・・搬送ビームF
27・・・補助サポートE
28・・・補助サポートF
W・・・ワーク
31・・・駆動モータ
32・・・駆動機構
33・・・駆動ビームA
34・・・駆動ビームB
35・・・搬送コラムA
36・・・搬送コラムB
37・・・搬送ビームA
38・・・搬送ビームB
W・・・ワーク
41・・・駆動モータ
42・・・ウォームギア減速機
43・・・駆動軸
44・・・ベベルギアユニット
45・・・駆動機構1
46・・・駆動機構2
47・・・駆動ビーム1A
48・・・駆動ビーム1B
49・・・駆動ビーム2A
50・・・駆動ビーム2B
51・・・搬送ビームA
52・・・搬送ビームB
53・・・枠体
W・・・ワーク
101・・・駆動モータ
102・・・軸受
103・・・駆動軸
104・・・リフトカムA
105・・・リフトカムB
106・・・ストロークカム
107・・・ヨークA
108・・・ヨークB
109・・・スライドA
110・・・スライドB
111・・・搬送ビームA
112・・・搬送ビームB
113・・・ハウジング
R・・・搬送ビームA取付け部
S・・・搬送ビームB取付け部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウォーキングビーム動作と呼ばれる押し上げ動作・送り動作・引き下げ動作・早戻り動作からなる近似四辺形の軌跡運動を用い、180度位相をずらせて2組の搬送ビームを運動させることにより、同一平面でワークの移載を交互に繰り返して搬送物を搬送方向に対し直交する方向の移動を伴わずに同一平面上を直進移送する搬送装置において、搬送ビームを多段に構成することにより各平面上のワークを同時に同一の搬送運動特性で移送することを特徴とする多段式ビームコンベア。
【請求項2】
多段式ビームコンベアにおいて、2組のビームコンベアを1台とし、該当装置を2台平行して配置し、その間に搬送ビームを掛け渡すことにより搬送幅を大きく設定し可搬重量と剛性が大きいことを特徴とする多段式ビームコンベア。
【請求項3】
多段式ビームコンベアにおいて、単一の回転原動機により2台のウォーキングビーム機構を機械的動力伝達により同期して駆動し、電子的制御装置によらずに等速直進搬送運動を行うことを特徴とする多段式ビームコンベア。
【請求項4】
多段式ビームコンベアにおいて、各段の搬送ビームを搬送方向と平行に設置し、スペーサを介してタイバーにより原動ビームに固定されたコラムに締結して搬送動作を行うことを特徴とする多段式ビームコンベア。
【請求項5】
多段式ビームコンベアにおいて、各段の搬送ビームを搬送方向と直交する方向に配置し、原動ビームに固定されたコラムに締結して搬送動作を行うことを特徴とする多段式ビームコンベア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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