説明

多段積載型デジタル複合機

【課題】持ち出し可能なデジタル複合機を多段に積み重ねた状態で利用できるようにするとともに、電源コードを繋いだデジタル複合機よりも上の段のデジタル複合機には、読み取りや印字に必要な個所のみに電源や信号を供給することで、少ない設置スペースと必要最小限の電力で多段型デジタル複合機の利用を可能とする。
【解決手段】単体のデジタル複合機1A〜1Eを多段に積み重ねて一つの複合機として使用することができる多段積載型デジタル複合機Wであって、多段積載型デジタル複合機Wの稼働時、最上段のデジタル複合機1Aは、原稿読取部11及び操作部14に電源及び信号を供給し、最上段より下段の用紙が収納されているデジタル複合機1Cは、画像形成部12に電源及び信号を供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単体のデジタル複合機を多段に積み重ねて一つの複合機として使用することのできる多段積載型デジタル複合機に関する。
【背景技術】
【0002】
持ち出し可能なデジタル複合機は、オフィス内のあちらこちらに置かれていて、一定の場所に置かれていないのが現状である。そのため、個人使用の場合、その持ち主が使わない時は非稼働の状態となっている場合が多い。また、共用の場合は、任意のユーザーによって何れかのデジタル複合機が突然持ち出されることがあるため、誰もが常に自由に使えるという使用環境ではなかった。仮に、一か所に集めて共用した場合には、電源コードやLANケーブルを多数本接続しなければならず、配線が煩雑になるとともに、台数分の設置場所も確保する必要があった。
【0003】
このような状況に鑑み、単体のデジタル複合機を多段に積み重ねて一つの複合機として使用することのできる多段積載型デジタル複合機が提案されている(例えば、特許文献1〜3等参照)。
【0004】
特許文献1には、複数の同一記録装置をネットワーク経由で接続し、記録装置を上方に積層して使用する際、最上部の記録装置のオペレーションパネルにて下の記録装置のオペレーションが可能になるように、ネットワーク経由でプリンタの基本設定データを異なる記録装置に転送可能にし、かつ初期設置時に、全記録装置のオペレーションパネルに最上部から順に、もしくは最下段から順に、手差しトレイを開閉するように表示し、そのトレイの開閉順を認識することで、積層した順番を記録装置が認識する手段を備えた多段積載型の記録装置が記載されており、各記録装置は、ネットワークポートに接続されたネットワークケーブルをネットワークハブに接続し、このネットワークハブを介してパソコン等の外部機器と接続する構成となっている。
【0005】
また、特許文献2には、インクジェット記録装置を複数台上下に積層設置し、異なるジョブではそれぞれ単独記録装置として印字できるデータコントロール機能を有し、並行して使用可能な2台の記録装置として機能するとともに、同一データを複数部数印字する際には、同一データをそれぞれに送るコントロール機能を有し、大きなデータを高速で印字する際には、下に配置される記録装置からデータを一枚ごとに順番に送り、側面排出口に排出する手段を備えた、一台の高速記録装置として機能する多段積載型のインクジェット記録装置が記載されている。
【0006】
また、特許文献3には、電子写真プリンタを複数台重ねて使用し、電子写真プリンタは、印刷後の用紙を上側に位置する他の電子写真プリンタへと排出する第2の排紙口と、電子写真プリンタを重ねたときに、下側に位置する他の電子写真プリンタの第2の排紙口に対向する位置に、該第2の排紙口から排出された用紙を電子写真プリンタ内に受け入れる第2の給紙口とを備えると共に、印刷時には電子写真プリンタ内に用紙給紙して印刷を行い、印刷後の用紙は第2の排紙口から排出して第2の給紙口から上側に位置する電子写真プリンタへと送り印刷を行うことで、各電子写真プリンタ内で用紙に1色ずつ印刷を行う多段積載型の電子写真プリンタが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−160547号公報
【特許文献2】特開2007−160548号公報
【特許文献3】特開2000−112201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記したように、多段積載型の記録装置や電子写真プリンタ等はすでに提案されている。しかし、多段に積み重ねたときの配線構造等については何も記載されていない。そのため、単純に一か所に集めて共用した場合には、上記と同様、電源コードやLANケーブルを多数本接続しなければならず、配線が煩雑になるといった問題があった。
【0009】
また、印刷条件によっては多段に積み重ねられた全ての装置を稼動することになり、必ずしも必要でない回路部分にも電力を供給する可能性があることから、無駄な電力消費が発生するといった問題もあった。
【0010】
本発明はかかる問題点を解決すべく創案されたもので、その目的は、持ち出し可能なデジタル複合機を多段に積み重ねた状態で利用できるようにするとともに、電源コードを繋いだデジタル複合機よりも上の段のデジタル複合機には、接続ケーブルを通じて読み取りや印字に必要な箇所のみに電源や信号を供給することで、少ない設置スペースと必要最小限の電力で使用することのできる多段積載型デジタル複合機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の多段積載型デジタル複合機は、単体のデジタル複合機を多段に積み重ねて一つの複合機として使用することのできる多段積載型デジタル複合機であって、多段積載型デジタル複合機の稼働時、最上段のデジタル複合機は、画像読取部に電源と信号とを供給し、最上段より下段のデジタル複合機は、画像形成部に電源と信号とを供給することを特徴としている。
【0012】
上記構成によれば、最上段のデジタル複合機は、主に原稿読取部(スキャナー部)として使用するため、多段積載型デジタル複合機の稼働中であっても、画像形成部や給紙部への電源供給は行わない。一方、最上段より下段のデジタル複合機は、主に画像出力部として使用するため、多段積載型デジタル複合機の稼働中であっても、画像読取部への電源供給は行わない。このように、各段のデジタル複合機は、積み重ねられる位置によって自機に与えられた機能のみを動作させるように電源供給を制御するため、無駄に電力を消費することがない。
【0013】
また、本発明の多段積載型デジタル複合機では、上下に隣接するデジタル複合機は、互いの接続端子部同士を接続ケーブルで接続することで、各デジタル複合機が多段積載型デジタル複合機として動作する構成としている。
【0014】
上記構成によれば、接続ケーブルが接続されることによって、自機が多段積載型デジタル複合機の一構成要素となったことを認識することができるので、各デジタル複合機は、その接続状態に応じて自機の担当する機能を動作させることが可能となる。
【0015】
また、本発明の多段積載型デジタル複合機では、各デジタル複合機は、前記接続ケーブルを通じて前記電源と信号とが供給される構成としている。
【0016】
上記構成によれば、接続ケーブルを通じて各デジタル複合機に電源や信号を供給することで、各デジタル複合機を多段積載型デジタル複合機の構成要素として動作(連動)させることができる。
【0017】
また、本発明の多段積載型デジタル複合機では、各デジタル複合機は、原稿カバーの開閉を検知する原稿検知センサを備え、前記原稿検知センサにより原稿カバーの開閉を検知することによって自機が最上段のデジタル複合機であることを認識する構成としている。
【0018】
上記構成によれば、原稿カバーを開閉することで、画像読取部として機能させる最上段のデジタル複合機を特定することができる。
【0019】
また、本発明の多段積載型デジタル複合機では、前記最上段のデジタル複合機は、前記接続ケーブルを通じて下段のデジタル複合機に各段に関する信号を順次送信する構成としている。
【0020】
上記構成によれは、最上段から数えて2段目以降の各デジタル複合機は、上段から順次送信されてくる各段に関する信号に基づいて、自機が何段目であるかを認識することができる。より具体的には、接続ケーブルを通じて下段のデジタル複合機に各段に関する信号を順次送信することで、各デジタル複合機に対して識別番号の割り振りが可能となり、各デジタル複合機は、その割り振られた識別番号によって自機が何段目であるかを認識することができる。
【0021】
また、本発明の多段積載型デジタル複合機では、各デジタル複合機は、給紙部の用紙の有無を検知する用紙検知センサを備え、多段積載型デジタル複合機の稼働時、前記用紙検知センサにより用紙有りを検知しているデジタル複合機のうち最下段のデジタル複合機の画像形成部にのみ前記電源と信号とを供給する構成としている。
【0022】
上記構成によれば、最上段を除く2段目以降のデジタル複合機のうち、用紙を備えている1台のデジタル複合機のみを画像出力部として動作させ、その他のデジタル複合機は休止状態(電源オフ状態)を維持させることで、無駄な電力消費を抑えることができる。すなわち、多段積載型デジタル複合機の稼働時、最上段のデジタル複合機を画像読取部として機能(動作)させ、用紙を備えている最下段のデジタル複合機のみを画像出力部として機能(動作)させることで、実質的に1台のデジタル複合機の消費電力とほとんど変わらない消費電力に抑えることが可能となる。
【0023】
また、本発明の多段積載型デジタル複合機では、電源コードの電源プラグが任意のデジタル複合機の電源コンセントに接続されたときには、当該デジタル複合機より下段のデジタル複合機と接続するための接続端子部を遮蔽する構成としている。
【0024】
上記構成とすれば、下段からの電源の衝突(すなわち、一次側電源同士の衝突)が起こらないため、衝突防止回路等を設ける必要がなく、回路を単純化することができる。
【0025】
また、本発明の多段積載型デジタル複合機では、前記電源プラグ及び前記電源コンセントは、前記デジタル複合機に固有の形状に形成された構成としている。
【0026】
任意の(市販の)電源プラグが本発明を構成するデジタル複合機の電源コンセントに接続可能である場合、この任意の電源プラグがデジタル複合機の電源コンセントに誤って接続された場合には、接続コードの接続端子部が開放状態のままとなってしまうことになり、この開放状態の接続端子部に下段のデジタル複合機からの接続コードが誤って接続された場合には、上段と下段との間で電源衝突等が発生する可能性がある。しかし、本発明によれば、電源プラグと電源コンセントとを、本発明を構成するデジタル複合機に固有の形状としておくことで、このような不具合は発生しない。すなわち、本発明では、電源プラグを電源コンセントに接続したときには、下段のデジタル複合機と接続する接続端子部を遮蔽する構成としているため、電源コードが接続されたデジタル複合機と、それよりも下段のデジタル複合機とが誤って接続ケーブルで接続されてしまうといった事態の発生を確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明多段積載型デジタル複合機は上記のように構成したので、最上段のデジタル複合機は、主に原稿読取部として使用するため、多段積載型デジタル複合機の稼働中であっても、画像形成部や給紙部への電源供給を停止している。一方、最上段より下段のデジタル複合機は、主に画像出力部として使用するため、多段積載型デジタル複合機の稼働中であっても、原稿読取部への電源供給を停止している。このように、各段のデジタル複合機は、積み重ねられる位置によって自機に与えられた機能のみを動作させるように電源供給を制御するため、無駄な電力消費を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の多段積載型デジタル複合機を構成する単体のデジタル複合機の概略構成を示す説明図である。
【図2】図1に示したデジタル複合機を多段に積み重ねた状態を模式的に示す説明図である。
【図3A】電源コードとLANケーブルの接続部分を拡大して示す斜視図である。
【図3B】電源コードとLANケーブルの接続部分を拡大して示す斜視図である。
【図4】電源コードの電源プラグ部分を拡大して示す斜視図である。
【図5】デジタル複合機を多段に積み重ねて一つの多段積載型デジタル複合機Wとして使用する場合の、各デジタル複合機の設定及び処理動作の具体例1を示すフローチャートである。
【図6】多段積載型デジタル複合機として使用するときの各段のデジタル複合機の電源供給系統の一例を示す説明図である。
【図7】多段積載型デジタル複合機として使用するときの各段のデジタル複合機の電源供給系統をイメージ的に示す説明図である。
【図8】多段積載型デジタル複合機として印字処理を実行する場合の処理動作を示すフローチャートである。
【図9】多段積載型デジタル複合機の最上段のデジタル複合機を持ち出した場合の処理を説明するためのイメージ図である。
【図10】デジタル複合機を多段に積み重ねて一つの多段積載型デジタル複合機して使用する場合の他の処理動作を示すフローチャートである。
【図11】デジタル複合機を多段に積み重ねて一つの多段積載型デジタル複合機Wとして使用する場合の、各デジタル複合機の設定及び処理動作の具体例1を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0030】
図1は、本発明の多段積載型デジタル複合機を構成する単体のデジタル複合機の概略構成を示す説明図である。
【0031】
このデジタル複合機1は、単体で使用可能であるとともに、多段に積み重ねて一つの複合機(多段積載型デジタル複合機)としても使用することのできるデジタル複合機であって、装置本体10と原稿カバー70とから構成されている。
【0032】
装置本体10は、露光ユニットからなる原稿読取部(スキャナー部)11、現像器、感光体ドラム、クリーナユニット、帯電器、中間転写ベルトユニット及び定着ユニット等からなる画像形成部12、給紙カセット及び用紙搬送駆動部からなる給紙部13、装置本体10の筐体に設けられた操作パネルや各種機能キー等からなる操作部14、これら原稿読取部11、画像形成部12、給紙部13及び操作部14に電源を供給するスイッチング電源回路15、装置本体10の図示しない原稿載置台に載置された原稿や原稿カバー70の開閉を検知する原稿検知センサ16、給紙部13の給紙カセットに収容されている用紙の有無を検知する用紙検知センサ17、これら各部及びスイッチング電源回路15を制御する制御部18、LANケーブルを通じて図示しない外部機器(外部パソコン等)からの信号(ジョブ)を受信して処理する通信処理部19等を備えている。
【0033】
上記構成において、本実施形態のデジタル複合機1では、装置本体10に、電源コード51(図3A参照)を接続するための電源コンセント部31、LANケーブル61(図3A参照)を接続するためのLANケーブル接続端子部32、デジタル複合機1を上下に積み重ねた場合に、上下に隣接するデジタル複合機1同士を接続ケーブル41(図2参照)で接続するための上側接続端子部33及び下側接続端子部34を備えている。
【0034】
そして、電源コンセント部31のプラス側端子31aとスイッチング電源回路15のプラス側端子15aとが入力側電源線35aによって接続され、電源コンセント部31のマイナス側端子31bとスイッチング電源回路15のマイナス側端子15bとが出力側電源線35bによって接続されている。
【0035】
また、LANケーブル接続端子部32は、同軸のLAN信号線36によって通信処理部19に接続されており、通信処理部19と制御部18とはバス20によって接続されている。
【0036】
また、上側接続端子部33を構成する電源端子33pは、出力側分岐電源線37bを介して出力側電源線35bに接続され、上側接続端子33を構成する信号端子33sは、上側信号線38aによって制御部18の制御端子18aに接続されている。
【0037】
また、下側接続端子部34を構成する電源端子34pは、入力側分岐電源線37aを介して入力側電源線35aに接続され、下側接続端子34を構成する信号端子34sは、下側信号線38bによって制御部18の制御端子18bに接続されている。
【0038】
制御部18は、図示は省略しているがCPU、ROM、RAM等によって構成されており、ROMには、デジタル複合機1を単体として使用するときの単体用制御プログラムと、多段積載型デジタル複合機の一つの構成要素として使用するときの多段用制御プログラムとが格納されている。なお、図示は省略しているが、制御部18にも入力側電源線35a及び出力側電源線35bを通じて電力が供給されるようになっている。
【0039】
なお、後述する図2に示すように、装置本体10の正面側(図中左側)には開閉及び引き出し可能な排紙トレイ21が設けられている。また、装置本体10の裏面側(図中右側)には、図示は省略しているが、開閉及び引き出し可能な手差しトレイが設けられている。
【0040】
図2は、図1に示したデジタル複合機1を多段(この例では5段)に積み重ねた状態の多段積載型デジタル複合機Wを示している。また、図3A及び図3Bは、電源コードとLANケーブルの接続部分を拡大して示す斜視図、図4は、電源コードの電源プラグ部分を拡大して示す斜視図である。
【0041】
デジタル複合機1を多段に積載する構成としては、図示は省略しているが、各デジタル複合機1の原稿カバー70の周縁部(4隅部)の装置本体10上面に嵌合凹部を形成する一方、装置本体10の底面の周縁部(対応する4隅部)に脚を兼ねた嵌合凸部を形成し、上段のデジタル複合機1の嵌合凸部を下段のデジタル複合機1の嵌合凹部に嵌合することで、多段に積載することが可能である。
【0042】
そして、このように多段に積載された最上段のデジタル複合機1Aの下側接続端子部34と上から2段目のデジタル複合機1Bの上側接続端子部33とが接続ケーブル41によって接続され、上から2段目のデジタル複合機1Bの下側接続端子部34と上から3段目のデジタル複合機1Cの上側接続端子部33とが接続ケーブル41によって接続され、上から3段目のデジタル複合機1Cの下側接続端子部34と上から4段目のデジタル複合機1Dの上側接続端子部33とが接続ケーブル41によって接続され、上から4段目のデジタル複合機1Dの下側接続端子部34と上から5段目(最下段)のデジタル複合機1Eの上側接続端子部33とが接続ケーブル41によって接続されている。また、最上段のデジタル複合機1Aの上側接続端子部33と、最下段のデジタル複合機1Eの下側接続端子部34とは未接続(すなわち、開放状態)となっている。
【0043】
接続ケーブル41は、図示は省略しているが電力線と信号線とが互いに干渉しないように(すなわち、電力線からの電磁波の影響を信号線が受けないように絶縁されて)ひとまとめにしたもので、信号線は、一方のデジタル複合機1の下側接続端子部34の信号端子34sと他方のデジタル複合機1の上側接続端子部33の信号端子33sとを接続し、電力線は、一方のデジタル複合機1の下側接続端子部34の電源端子34pと他方のデジタル複合機1の上側接続端子部33の電源端子33pとを接続する。
【0044】
また、図3A及び図3Bに示すように、最下段(図にはn段目と表記されている)のデジタル複合機1Eには、電源コンセント部31に電源コード51の電源プラグ52が接続され、LANケーブル接続端子部32にLANケーブル61のコネクタ62が接続されている。
【0045】
ここで、図3A,図3B及び図4に示すように、本実施形態では、電源コード51の電源プラグ52の形状に工夫を凝らしている。すなわち、電源プラグ52をデジタル複合機1Eの電源コンセント部31に接続したとき、下側接続端子部34を遮蔽する構造としている。この例では、電源プラグ52の側面から略L字状に前方に延びる遮蔽体53を電源プラグ52と一体成形し、電源プラグ52をデジタル複合機1Eの電源コンセント部31に差し込むように接続したとき、この遮蔽板53がデジタル複合機1Eの本体側面に沿って差し込む方向にスライドし、本体側面に形成されている下側接続端子部34を遮蔽する構造としている。
【0046】
このように、電源プラグ52を電源コンセント部31に接続したときに、遮蔽板53によって下側接続端子部34を遮蔽する構造とすることで、電源プラグ52を接続したデジタル複合機1と、この電源プラグ52を接続したデジタル複合機1より下段に位置するデジタル複合機1とが接続ケーブルで接続される心配がない。すなわち、下段に位置するデジタル複合機1に別の電源コードが接続されていると、この下段のデジタル複合機1との間で一次側電源の衝突が起こり得るが、本実施形態のように下側接続端子部34を遮蔽してしまうことで、このような誤った接続を回避できるため、電源衝突という問題は発生しない。そのため、衝突防止回路等を設ける必要がなく、回路を単純化することができる。
【0047】
なお、本実施形態では、下側接続端子部34を遮蔽する構造として、電源プラグ52に遮蔽体53を設ける構造としているが、このような構造に限定されるものではない。例えば、装置本体10の側面の裏側に、下側接続端子部34の開口部を開閉できるスライド板を設けておき、電源プラグ52には、電源プラグ52を電源コンセント部31に差し込むときにこのスライド板を押すように作用する突起部を設ける構成としてもよい。すなわち、電源プラグ52を差し込むことによって突起部によりスライド板がスライド移動して、下側接続端子部34を遮蔽する構造としてもよい。この場合、スライド板に、下側接続端子部34を常に開放する方向に付勢する付勢手段(コイルスプリング等)を設けておき、電源プラグ52を電源コンセント部31から抜いたときには、この付勢手段の付勢力(例えば、収縮力)によってスライド板がスライド移動し、下側接続端子部34を開放するように構成しておけばよい。このようなスライド板による開閉構造は従来周知の構造である。また、下側接続端子部34を遮蔽及び開放する構造は、上記した遮蔽体53による構造やスライド板によるスライド構造に限定されるものではなく、その他の従来周知の機構構造を用いることができる。
【0048】
また、電源プラグ52及び電源コンセント部31を、本実施形態のデジタル複合機1に固有の形状に形成するように構成してもよい。任意の(市販の)電源プラグが本発明を構成するデジタル複合機の電源コンセントに接続可能である場合、この任意の電源プラグがデジタル複合機の電源コンセント部31に誤って接続された場合には、下側接続端子部34が開放状態のままとなってしまうことになり、この開放状態の下側接続端子部34に下段のデジタル複合機1からの接続コードが誤って接続された場合には、上段と下段との間で電源衝突等が発生する可能性がある。しかし、電源プラグ52と電源コンセント31とを、デジタル複合機1に固有の形状としておくことで、このような問題は発生しない。
【0049】
<具体例1>
次に、上記構成のデジタル複合機1を多段に積み重ねて一つの多段積載型デジタル複合機Wとして使用する場合の、各デジタル複合機1の設定及び処理動作(多段用制御プログラムによる設定及び処理動作)の具体例1について、図5に示すフローチャートを参照して説明する。
【0050】
まず、普段は単独で使用している(持ち出し可能な)デジタル複合機1を多段に積み重ね、上下に隣接するデジタル複合機1の上側接続端子部33と下側接続端子部34とを接続ケーブル41で互いに接続し、かつ、最下段(ただし、必ずしも最下段である必要はない)のデジタル複合機1の電源コンセント部31に電源コード51の電源プラグ52を接続し、LANケーブル接続端子部32にLANケーブル61のコネクタ62を接続する。これにより、図2に示した接続状態の多段積載型デジタル複合機Wとすることができる。
【0051】
次に、この初期状態において、ユーザーは、最下段のデジタル複合機1Eの電源スイッチをオンにする(ステップS1)。この電源スイッチのオンにより、接続ケーブル41を通じて各デジタル複合機1A〜1Eの制御部18に電源が供給される。ただし、この時点では、各デジタル複合機1A〜1Eの原稿読取部11、画像形成部12、給紙部13及び操作部14には電源は供給されない。
【0052】
各デジタル複合機1A〜1Eの制御部18は、この時点で自機の上側接続端子部33及び下側接続端子部34に接続ケーブル41が接続されているか否かを確認し、接続されている場合には、自機が多段積載型デジタル複合機Wの一つの構成要素として使用されていると判断して、ROMに格納されている多段用制御プログラムを起動し、自機の識別番号を「0」に設定する(ステップS2)。この識別番号は、制御部18の図示しないRAMの所定の領域に書き込むようにすればよい。
【0053】
各制御部18は、この状態において、原稿検知センサ16からの検知信号の有無を監視する(ステップS3)。すなわち、原稿カバー70が開閉されたか、または原稿載置台に原稿が載置されたかを、原稿検知センサ16からの検知信号によって確認する。
【0054】
一方、ユーザーは、電源スイッチをオンした後、最上段のデジタル複合機1Aの原稿カバー70を開く等の操作を行う。このとき、2段目以降のデジタル複合機1B〜1Eは、自機の上にほとんど隙間なく他のデジタル複合機が積載されているため、原稿カバー70を開けることができない状態となっている。
【0055】
この原稿カバー70の開閉操作により、最上段のデジタル複合機1Aの制御部18には、原稿検知センサ16から検知信号が送信されてくるので、この検知信号を受け取った制御部18は、自機が最上段のデジタル複合機1Aであることを認識し、自機に識別番号「1」を設定する(ステップS4)。
【0056】
また、自機に識別番号「1」を設定したことで、自機を多段積載型デジタル複合機Wの原稿読取部(スキャナー部)として動作させることを認識できるので、デジタル複合機1Aの制御部18は、スイッチング電源回路15を制御して、原稿読取部11と操作部14とに一次側電源を供給する(ステップS5)。具体的には、操作部14を点灯し、原稿読取部11の駆動準備を行う。一方、画像形成部12と給紙部13とには一次側電源を供給しないオフ状態とする。すなわち、最上段のデジタル複合機1Aは、原稿読取用として機能(動作)することになる。
【0057】
また、デジタル複合機1Aの制御部18は、接続ケーブル41を通じてその下の段のデジタル複合機1Bに各段に関する信号を送信する(ステップS6)。具体的には、各段に関する信号として、自機の識別番号「1」に「1」を追加した2パルスの信号を下段のデジタル複合機1Bに送信する。
【0058】
この信号を受け取ったデジタル複合機1Bの制御部18は、そのパルス数から自機が上から2段目であることを認識し、自機に識別番号「2」を設定(n=2)する(ステップS7)。ここで、デジタル複合機1Bは、最下段のデジタル複合機ではないので(ステップS8でNoと判断されるので)、デジタル複合機1Bの制御部18は、接続ケーブル41を通じてその下の段のデジタル複合機1Cに各段に関する信号を送信する(ステップS6)。具体的には、各段に関する信号として、自機の識別番号「2」に「1」を追加した3パルスの信号を下段のデジタル複合機1Cに送信する。
【0059】
ここで、自機が最下段のデジタル複合機であるか否かの判断は、自機の電源コンセント部31の接続状態を確認することによって判断することができる。すなわち、電源コンセント部31に電源コード51が接続されていなければ、自機が最下段ではないと判断することができる。
【0060】
下段の各デジタル複合機1B〜1Eは、上記ステップS8で自機が最下段のデジタル複合機であると判断されるまで、上記処理(ステップS6〜ステップS8)を繰り返す。その結果、上から3段目のデジタル複合機1Cには識別番号「3」が設定(n=3)され、上から4段面のデジタル複合機1Dには識別番号「4」が設定(n=4)され、上から5段面(すなわち、最下段)のデジタル複合機1Eには識別番号「5」が設定(n=5)されることになる。
【0061】
このようにして最下段のデジタル複合機1Eまで識別番号が設定されると、次に、最下段のデジタル複合機1E(識別番号n=5)から用紙有無のチェックを開始する(ステップS9)。すなわち、最下段のデジタル複合機1Eの制御部18は、自機の給紙カセットに用紙が収納されているか否かを、用紙検知センサ17からの検知信号に基づいて判断する(ステップS10,S11)。
【0062】
その結果、給紙カセットに用紙が収納されていなければ(ステップS11でNoと判断されれば)、自機が最上段のデジタル複合機でないことを確認(すなわち、識別番号=0でないことを確認)して(ステップS12)、その上の段のデジタル複合機1Dに接続ケーブル41を通じて用紙有無の検出指示を出力する(ステップS13)。この場合、デジタル複合機1Eは、各部11〜14に一次側電源を供給することなく、そのまま処理を終了する。
【0063】
この指示信号を受け取った上の段のデジタル複合機1Dの制御部18は、自機の給紙カセットに用紙が収納されているか否かを、用紙検知センサ17からの検知信号に基づいて判断する(ステップS10,S11)。
【0064】
その結果、給紙カセットに用紙が収納されていなければ(ステップS11でNoと判断されれば)、自機が最上段のデジタル複合機でないことを確認(すなわち、識別番号=1でないことを確認)して(ステップS12)、その上の段のデジタル複合機1Cに接続ケーブル41を通じて用紙有無の検出指示を出力する(ステップS13)。この場合、デジタル複合機1Dは、各部11〜14に一次側電源を供給することなく、そのまま処理を終了する。
【0065】
各デジタル複合機1A〜1Eは、上記ステップS10〜ステップS13の処理を、最下段の段のデジタル複合機から上段側のデジタル複合機に向けて順次実施する。そして、その処理過程において、任意のデジタル複合機(例えばデジタル複合機1C)において、用紙検知センサ17からの検知信号に基づき用紙有りを検知した場合(ステップS11においてYesと判断された場合)には、デジタル複合機1Cの制御部18は、スイッチング電源回路15を制御して、画像形成部12に一次側電源を供給する(ステップS14)。具体的には、画像形成部12の図示しない定着部のランプを点灯させる。一方、原稿読取部11と給紙部13と操作部14とには一次側電源を供給しないオフ状態とする。これにより、識別番号「3」のデジタル複合機1Cは、画像出力用として機能(動作)することになる。
【0066】
また、このデジタル複合機1Cの制御部18は、自機を画像出力用として設定したことから、その上の段のデジタル複合機1Bに対する用紙有無の検出指示は出力しないで処理を終了する。
【0067】
一方、上記ステップS10〜ステップS13の処理を、最上段のデジタル複合機1Aまで実施しても、給紙カセットに用紙有りを検知できなかった場合(ステップS12でYesと判断された場合)には、全ての段のデジタル複合機1A〜1Eの全ての給紙カセットに用紙が収納されていないということなので、この場合には、最上段のデジタル複合機1Aの操作部14の図示しない表示パネルに用紙補給メッセージを表示して、ユーザーに用紙の補給を促し(ステップS15)、その後、予め設定された一定時間(例えば、5分等)の経過を待って(ステップS16)、再びステップS10に戻り、最下段のデジタル複合機1Eから再び用紙の有無をチェックする。すなわち、少なくとも何れかの給紙カセットに用紙が収納されるまで、ステップS10〜S12,S15,S16の処理を繰り返すことになる。
【0068】
上記処理の結果、この多段積載型デジタル複合機Wは、各段のデジタル複合機1A〜1Eの電源供給系統が図6及び図7に示す状態となる。ただし、図7はイメージ図である。すなわち、最下段のデジタル複合機1Eに接続された電源コード51から供給される商用電源は、最上段のデジタル複合機1Aの原稿読取部11と操作部14の一次側電源に供給(図7では、斜線を付して供給イメージを示している。)されるとともに、上から3段目のデジタル複合機1Cの画像形成部12の一次側電源に供給(図7では、斜線を付して供給イメージを示している。)されており、その他には供給されていない。すなわち、上から2段目、4段目及び5段目(最下段)のデジタル複合機1B,1D,1Eについては、商用電源からの電力やLANケーブル61を通じて送信されてきたジョブを上段側へ伝送するだけで、自機においては各部に電源を供給しない構成とすることで、無駄な電力消費を抑えるようになっている。すなわち、多段積載型デジタル複合機Wの稼動時、最上段のデジタル複合機1Aを画像読取用として動作させ、用紙を備えている最下段のデジタル複合機1Cのみを画像出力用として動作させることで、実質的に1台のデジタル複合機の消費電力とほとんど変わらない消費電力に抑えることが可能となっている。
【0069】
なお、このように多段積載型デジタル複合機Wとして使用している場合においても、最後のジョブ実行後、予め設定されている所定時間が経過した場合には、従来のデジタル複合機と同様、最上段のデジタル複合機1A及び3段目のデジタル複合機1Cをそれぞれ省エネモード(低消費電力モード)に移行させるようにすればよい。
【0070】
次に、多段積載型デジタル複合機Wとして印字処理を実行する場合の処理動作について、図8に示すフローチャートを参照して説明する。
【0071】
上記構成の多段積載型デジタル複合機Wは、LANケーブル61を通じて送信されてくるジョブの待ち受け状態(ステップS31)、及び、最上段のデジタル複合機1Aに原稿をセットしてコピー指示が入力されるコピー動作の待ち受け状態(ステップS32)となっている。
【0072】
ここで、任意の外部機器(パソコン等)からLANケーブル61を通じてジョブ(例えば印刷要求)が送信されてくると(ステップS31でYesと判断されると)、最下段のデジタル複合機1Eの制御部18は、自機も含めて画像出力用として設定されているデジタル複合機にジョブを転送する(ステップS33)。
【0073】
ステップS33の処理を上記実施形態に則して具体的に説明すると、最下段のデジタル複合機1Eの制御部18は、自機が画像出力用として設定されていないため、このジョブをそのまま接続ケーブル41の信号線を通じて上の段のデジタル複合機1Dの制御部18に転送する。
【0074】
ジョブが転送されてきたデジタル複合機1Dの制御部18は、自機が画像出力用として設定されていないため、このジョブをそのまま接続ケーブル41の信号線を通じて上の段のデジタル複合機1Cの制御部18に転送する。
【0075】
ジョブが転送されてきたデジタル複合機1Cの制御部18は、自機が画像出力用として設定されているため、受け取ったジョブを図示しないハードディスク等のメモリ部に印字可能なデータに展開して一旦保存するとともに、画像形成部12と給紙部13とに電源を供給して、画像形成部12と給紙部13とを駆動し、メモリ部に保存している印刷データの印字処理を実行する(ステップS34)。
【0076】
一方、待ち受け状態において、最上段のデジタル複合機1Aに原稿をセットして、操作部14からコピー指示が入力されると(ステップS32でYesと判断されると)、最上段のデジタル複合機1Aの制御部18は、原稿読取部11を駆動して載置原稿の読み取りを行い(ステップS35)、その読み取った原稿データを画像出力用として設定されているデジタル複合機に転送する(ステップS36)。
【0077】
ステップS36の処理を上記実施形態に則して具体的に説明すると、最上段のデジタル複合機1Aの制御部18は、読み取った原稿データをそのまま接続ケーブル41の信号線を通じて下の段のデジタル複合機1Bの制御部18に転送する。
【0078】
原稿データが転送されてきたデジタル複合機1Bの制御部18は、自機が画像出力用として設定されていないため、この原稿データをそのまま接続ケーブル41の信号線を通じて下の段のデジタル複合機1Cの制御部18に転送する。
【0079】
原稿データが転送されてきたデジタル複合機1Cの制御部18は、自機が画像出力用として設定されているため、受け取った原稿データを図示しないハードディスク等のメモリ部に印字可能なデータに展開して一旦保存するとともに、画像形成部12と給紙部13とに電源を供給して、画像形成部12と給紙部13とを駆動し、メモリ部に保存している印刷データの印字処理を実行する(ステップS34)。
【0080】
なお、デジタル複合機1Cで印字処理を順次実行することによって、デジタル複合機1Cの給紙カセットに収納されている用紙が無くなった場合には、原稿検知センサ17から用紙無しの検知信号が送信されてくるので、デジタル複合機1Cの制御部18は、この検知信号を受け取ると、画像形成部12及び給紙部13への電源供給をオフするとともに、図5のステップS13からの処理を開始する。
【0081】
すなわち、上の段のデジタル複合機1Bの制御部18に接続ケーブル41を通じて用紙有無の検出指示を出力する(ステップS13)。
【0082】
この指示信号を受け取った上の段のデジタル複合機1Bの制御部18は、自機の給紙カセットに用紙が収納されているか否かを、用紙検知センサ17からの検知信号に基づいて判断する(ステップS10,S11)。
【0083】
その結果、給紙カセットに用紙が収納されている場合(ステップS11でYesと判断された場合)には、デジタル複合機1Bの制御部18は、スイッチング電源回路15を制御して、画像形成部12に一次側電源を供給する。一方、原稿読取部11と給紙部13と操作部14とには一次側電源を供給しないオフ状態とする(ステップS14)。これにより、今度は識別番号「2」のデジタル複合機1Bが、画像出力用として機能(動作)することになる。
【0084】
なお、デジタル複合機1Cの給紙カセットに収納されている用紙が印字途中において無くなった場合には、デジタル複合機1Cの制御部18は、上記処理(ステップS13からステップS10,ステップS11,ステップS12の繰り返し処理)と並行して、メモリ部に格納されている残りの印字データを接続ケーブル41の信号線を通じて上の段のデジタル複合機1Bの制御部18に転送し、デジタル複合機1Bの制御部18は、この転送されてきた残りの印字データをメモリ部に保存する。これにより、デジタル複合機1Bが画像出力用として機能(動作)するときには、このメモリ部に保存した残りの印字データの印字処理を引き続いて実行することが可能となる。
【0085】
なお、上記実施形態では、デジタル複合機1Cの給紙カセットに用紙が無くなったときには、そのデジタル複合機1Cから上の段に向かって用紙有無のチェックを行う構成としているが、最下段のデジタル複合機1Eから用紙有無のチェックを行うようにしてもよい。このような構成とすれば、最上段のデジタル複合機1Aの給紙カセットに収納されている用紙はほとんど使用されることなく残るため、最上段のデジタル複合機1Aを持ち出すとき、給紙カセットに用紙が入ったままの状態で持ち出すことができる。
【0086】
次に、図9を参照して、多段積載型デジタル複合機Wの最上段のデジタル複合機1Aを持ち出した場合の処理について簡単に説明する。
【0087】
最上段のデジタル複合機1Aを単体機として使用するために持ち出した場合、ユーザーは、その後、最上段となったデジタル複合機1Bの原稿カバー70を開閉操作する。これにより、この原稿カバー70の開閉をデジタル複合機1Bの原稿検知センサ16が検知し、検知信号を制御部18に送信する。制御部18は、この検知信号を受信することによって、自機が識別番号「2」から識別番号「1」になったことを認識する。従って、この場合には、図5に示すステップS3移行の処理を実行すればよい。その結果、図9の右側に示すように、識別番号「2」であったデジタル複合機1Bが識別番号「1」となり、識別番号「3」であったデジタル複合機1Cが識別番号「2」となり、識別番号「4」であったデジタル複合機1Dが識別番号「3」となり、識別番号「5」であったデジタル複合機1Eが識別番号「4」となる。すなわち、多段積載型デジタル複合機Wとして、それまでの5段構成から4段構成に変更されることになる。
【0088】
<具体例2>
次に、上記構成のデジタル複合機1を多段に積み重ねて一つの多段積載型デジタル複合機Wとして使用する場合の、各デジタル複合機1の設定及び処理動作(多段用制御プログラムによる設定及び処理動作)の具体例2について、図10に示すフローチャートを参照して説明する。
【0089】
上記具体例1では、多段積載型デジタル複合機Wとして使用する場合に、多段に積載される各デジタル複合機1の識別番号や、自機が原稿読取用として機能するのか、画像読取用として機能するのか、それとも何れの機能も行わないのか(単に信号を伝送するだけなのか)といった設定処理を、上段からまたは下段から順番に処理して設定していく構成としているが、本具体例2では、このような順次設定処理は行わず、各デジタル複合機1が単独で自機の状態を判断して設定及び処理を行うように構成している。
【0090】
以下、図10を参照して、任意のデジタル複合機1単独での自機の設定及び処理について説明する。
【0091】
普段は単独で使用しているデジタル複合機1を多段に積み重ね、上下に隣接するデジタル複合機1の上側接続端子部33と下側接続端子部34とを接続ケーブル41で互いに接続し、かつ、最下段(ただし、必ずしも最下段である必要はない)のデジタル複合機1の電源コンセント部31に電源コード51の電源プラグ52を接続し、LANケーブル接続端子部32にLANケーブル61のコネクタ62を接続する。これにより、図2に示した接続状態の多段積載型デジタル複合機Wとすることができる。
【0092】
次に、この状態において、ユーザーは、最下段のデジタル複合機1Eの電源スイッチをオンにする(ステップS41)。この電源スイッチのオンにより、接続ケーブル41を通じて各デジタル複合機1A〜1Eの制御部18に電源が供給される。ただし、この時点では、各デジタル複合機1A〜1Eの原稿読取部11、画像形成部12、給紙部13及び操作部14には電源は供給されない。
【0093】
各デジタル複合機1A〜1Eの制御部18は、この時点で自機の上側接続端子部33及び下側接続端子部34に接続ケーブル41が接続されているか否かを確認し、接続されている場合には、自機が多段積載型デジタル複合機Wの一つの構成要素として使用されていると判断して、ROMに格納されている多段用制御プログラムを起動し、単独で自機の状態を判断して設定及び処理を行う。これ以降の説明は、各デジタル複合機1A〜1Eにおいて同じ処理を行うことになるので、ここでは任意の段のデジタル複合機1として以下の説明を行うこととする。
【0094】
すなわち、任意の段のデジタル複合機1の制御部18は、まず、上段からの原稿検知信号がオフか否か(すなわち、原稿無しを検知しているか否か)を確認し(ステップS42)、次に、自機の原稿検知センサ16による原稿検知信号がオン(すなわち、原稿有りを検知しているか否か)を確認する(ステップS43)。その結果、上段からの原稿検知信号が原稿無しを検知し、かつ、自機の原稿検知信号が原稿有りを検知している場合(ステップS42,ステップS43が共にYesの場合)には、自機が最上段のデジタル複合機1であると判断し、原稿読取部11と操作部14とに一次側電源を供給する(ステップS44)。すなわち、この場合には、操作部14を点灯し、原稿読取部11の駆動準備を行うことで、自機を原稿読取用として機能(動作)させることになる。
【0095】
この後、制御部18は、原稿検知信号オン(原稿有り)を下段のデジタル複合機1に送信する(ステップS45)。また、制御部18は、ステップS42でNo、すなわち上段からの原稿検知信号がオンである場合も、ステップS45へと処理を進め、原稿検知信号オン(原稿有り)を下段のデジタル複合機1に送信する。
【0096】
一方、制御部18は、ステップS43でNoと判断された場合(すなわち、自機の原稿検知信号がオフである場合)には、ステップS46へと処理を進め、原稿検知信号オフ(原稿無し)を下段のデジタル複合機1に送信する。
【0097】
次に、制御部18は、下段のデジタル複合機1からの定着部駆動判定信号(flgHL)が非稼動(FALSE)であるか否かを確認し(ステップS47)、次に、自機の用紙検知信号がオンか否か(すなわち、用紙有りを検知しているか否か)を確認する(ステップS48)。その結果、下段のデジタル複合機1からの定着部駆動判定信号が非稼動(ステップS47でYes)、かつ、自機の用紙検知信号がオン(ステップS48でYes)である場合、制御部18は、スイッチング電源回路15を制御して、画像形成部12に一次側電源を供給する(ステップS49)。具体的には、自機の定着制御信号をオンとして、画像形成部12の図示しない定着部のランプを点灯させる。つまり、この場合には、自機を画像出力用として機能(動作)させることになる。
【0098】
次に、制御部18は、自機の定着部が稼動(TRUE)であることを示す定着部駆動判定信号(flgHL)を、上段のデジタル複合機1に送信して(ステップS50)、処理を終了する。また、制御部18は、下段のデジタル複合機1からの定着部駆動判定信号(flgHL)が稼動(TRUE)である場合(ステップS47でNoと判断された場合)もステップS50へと処理を進め、定着部が稼動(TRUE)であることを示す定着部駆動判定信号(flgHL)を、上段のデジタル複合機1に送信する。
【0099】
一方、制御部18は、自機の用紙検知信号がオフである場合(ステップS48でNoと判断された場合)には、ステップS51へと処理を進め、定着部が非稼動(FALSE)であることを示す定着部駆動判定信号(flgHL)を、上段のデジタル複合機1に送信する。
【0100】
各段のデジタル複合機1は、電源オン時にそれぞれが上記処理(ステップS41〜ステップS51)を実行することにより、自機の状態を判断し、自機が原稿読取用として機能するのか、画像読取用として機能するのか、それとも何れの機能も行わないのか(単に信号を伝送するだけなのか)、の何れかの設定処理を行うことになる。
【0101】
次に、上記のような処理設定を行った各デジタル複合機1による多段積載型デジタル複合機Wにおいて印字処理を実行する場合の処理動作について、図11に示すフローチャートを参照して説明する。
【0102】
上記構成の多段積載型デジタル複合機Wは、LANケーブル61を通じて送信されてくるジョブの待ち受け状態(ステップS61)、及び、最上段のデジタル複合機1Aに原稿をセットしてコピー指示が入力されるコピー動作の待ち受け状態(ステップS62)となっている。
【0103】
ここで、任意の外部機器(パソコン等)からLANケーブル61を通じてジョブ(例えば印刷要求)が送信されてくると(ステップS61でYesと判断されると)、最下段のデジタル複合機1Eの制御部18は、受信したジョブを印刷可能な画像データに処理後、接続ケーブル41の信号線を通じて全ての段のデジタル複合機1A〜1Eに画像データを転送する(ステップS63)。
【0104】
各デジタル複合機1A〜1Eは、自機の設定に従って画像データを処理する。すなわち、自機が画像出力用として設定されているデジタル複合機のみが画像データの印字処理を実行し(ステップS64)、他のデジタル複合機は、転送されてきた画像データを消去する。
【0105】
一方、待ち受け状態において、最上段のデジタル複合機1Aに原稿をセットして、操作部14からコピー指示が入力されると(ステップS62でYesと判断されると)、最上段のデジタル複合機1Aの制御部18は、原稿読取部11を駆動して載置原稿の読み取りを行い(ステップS65)、その読み取った原稿データを、接続ケーブル41の信号線を通じて下段の全てのデジタル複合機1B〜1Eに転送する(ステップS66)。
【0106】
原稿データが転送されてきた各デジタル複合機1B〜1Eの制御部18は、自機が画像出力用として設定されているかを確認し、自機が画像出力用として設定されている場合には、受け取った原稿データを図示しないハードディスク等のメモリ部に印字可能なデータに展開して一旦保存するとともに、給紙紙13と、既に電源が供給されている定着部を除く他の画像形成部12とに電源を供給して、画像形成部12と給紙部13とを駆動し、メモリ部に保存している印刷データの印字処理を実行する(ステップS64)。一方、自機が画像出力用として設定されていない場合には、転送されてきた原稿データを消去する。
【0107】
なお、今回開示した実施形態はすべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。従って、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0108】
1,1A〜1E デジタル複合機
10 装置本体
11 原稿読取部(スキャナー部)
12 画像形成部
13 給紙部
14 操作部
15 スイッチング電源回路
15a プラス側端子
15b マイナス側端子
16 原稿検知センサ
17 用紙検知センサ
18 制御部
18a,18b 制御端子
19 通信処理部
20 バス
21 排紙トレイ
31 電源コンセント部
31a プラス側端子
31b マイナス側端子
32 LANケーブル接続端子部
33 上側接続端子部
33p 電源端子
33s 信号端子
34 下側接続端子部
35a 入力側電源線
35b 出力側電源線
36 LAN信号線
37a 入力側分岐電源線
37b 出力側分岐電源線
38a 上側信号線
38b 下側信号線
41 接続ケーブル
51 電源コード
52 電源プラグ
61 LANケーブル
62 コネクタ
W 多段積載型デジタル複合機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単体のデジタル複合機を多段に積み重ねて一つの複合機として使用することのできる多段積載型デジタル複合機であって、
多段積載型デジタル複合機の稼働時、最上段のデジタル複合機は、原稿読取部及び操作部に電源と信号とを供給し、最上段より下段のデジタル複合機は、画像形成部に電源と信号とを供給することを特徴とする多段積載型デジタル複合機。
【請求項2】
請求項1に記載の多段積載型デジタル複合機であって、
上下に隣接するデジタル複合機は、互いの接続端子部同士を接続ケーブルで接続することで、各デジタル複合機が多段積載型デジタル複合機として動作することを特徴とする多段積載型デジタル複合機。
【請求項3】
請求項2に記載の多段積載型デジタル複合機であって、
各デジタル複合機は、前記接続ケーブルを通じて前記電源と信号とが供給されることを特徴とする多段積載型デジタル複合機。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の多段積載型デジタル複合機であって、
各デジタル複合機は、原稿カバーの開閉を検知する原稿検知センサを備え、
前記原稿検知センサにより原稿カバーの開閉を検知することによって自機が最上段のデジタル複合機であることを認識することを特徴とする多段積載型デジタル複合機。
【請求項5】
請求項4に記載の多段積載型デジタル複合機であって、
前記最上段のデジタル複合機は、前記接続ケーブルを通じて下段のデジタル複合機に各段に関する信号を順次送信することを特徴とする多段積載型デジタル複合機。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の多段積載型デジタル複合機であって、
各デジタル複合機は、給紙部の用紙の有無を検知する用紙検知センサを備え、
多段積載型デジタル複合機の稼働時、前記用紙検知センサにより用紙有りを検知しているデジタル複合機のうち最下段のデジタル複合機の画像形成部にのみ前記電源と信号とを供給することを特徴とする多段積載型デジタル複合機。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の多段積載型デジタル複合機であって、
電源コードの電源プラグが任意のデジタル複合機の電源コンセントに接続されたときには、当該デジタル複合機より下段のデジタル複合機と接続するための接続端子部を遮蔽することを特徴とする多段積載型デジタル複合機。
【請求項8】
請求項7に記載の多段積載型デジタル複合機であって、
前記電源プラグ及び前記電源コンセントは、前記デジタル複合機に固有の形状に形成されていることを特徴とする多段積載型デジタル複合機。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−61748(P2012−61748A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208094(P2010−208094)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】