説明

多相変圧器および変圧システム

【課題】本発明は、従来より製造が容易となる構造の多相変圧器およびこれを複数直列に接続した変圧システムを提供する。
【解決手段】本発明にかかる3相変圧器Trcは、3個のコイル7u、7v、7wと、これらコイル7u、7v、7wにおける軸方向の両端にそれぞれ配置される一対の磁性部材21、22とを備え、これらコイル7u、7v、7wのそれぞれは、絶縁材を挟んで重ね合わせた帯状の4個の導体部材を巻回することによって構成される複数のサブコイル71〜74を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の相の電力に用いられる多相変圧器に関する。そして、本発明は、この変圧器を複数直列に接続した変圧システムに関する。
【背景技術】
【0002】
変圧器は、変成器あるいはトランスとも呼ばれ、1次コイルに流れる電気エネルギーを電磁誘導によって2次コイルへ伝達する部品であり、電気製品や電子製品だけでなく、電力系統等にも幅広く利用されている。この変圧器は、一般に、1次コイルと、2次コイルと、コアとを備え、前記1次コイルおよび2次コイルのそれぞれは、前記コアに例えば絶縁被覆を有する断面丸形や角形の軟銅線を巻回することによって構成され、前記コアは、例えば複数の薄い電磁鋼板、例えばケイ素鋼板等を積層することによって構成され、1次コイルと2次コイルとを相互インダクタンスで結合する磁気回路として機能するものである。なお、変圧器には、複数の変圧比に対応するために複数の2次コイルを備えたものや、所定の目的のための3次コイルを備えたもの等も知られている。
【0003】
このような変圧器は、例えば、特許文献1に開示されている。この特許文献1に開示の変圧器は、帯状の電磁鋼板を巻回し、この電磁鋼板を幅方向に対して切断し、この切断箇所から2個の巻き線を挿入し、そして、この切断箇所における切断端同士を突き合わせて接合して閉じて前記巻き線を固定するというものである。この特許文献1に開示の変圧器では、前記巻回した電磁鋼板がコアに相当し、前記巻き線がコイルに相当している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−150507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような従来の変圧器は、外部への磁束漏洩を無くして1次コイルから2次コイルへの効率的な磁気結合を行う磁気回路を形成すべく、コアが例えば○形状や□形状等の環状構造を有している。このため、この環状構造のままのコアに巻き線を巻き付けて1次コイルおよび2次コイルを作る場合では、環状構造であるが故に巻き線の巻き付け作業が繁雑となり、生産性の向上に限界が生じてしまう。一方、巻き付け作業を容易とするために、コアを複数の部材に分けて巻き付け作業を行った後に複数の部材を繋ぎ合わせて環状構造のコアにする場合や前記特許文献1のように巻回した電磁鋼板(コア)を幅方向に切断して巻き線を挿入後に切断端同士を接合して閉じる場合では、磁気損失が少なくなるように繋ぎ合わせる必要が生じる。特に、前記特許文献1では、切断端が巻回方向に50゜〜70゜の角度を持って傾斜するように端部を処理しなければならず、手間がかかってしまう。
【0006】
本発明は、上述の事情に鑑みて為された発明であり、その目的は、従来より製造が容易となる構造の多相変圧器およびこれを複数直列に接続した変圧システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、種々検討した結果、上記目的は、以下の本発明により達成されることを見出した。すなわち、本発明の一態様にかかる多相変圧器は、複数のコイルと、前記複数のコイルにおける軸方向の両端にそれぞれ配置される一対の磁性部材とを備え、前記複数のコイルのそれぞれは、絶縁材を挟んで重ね合わせた帯状の複数の導体部材を巻回することによって構成される複数のサブコイルを備えることを特徴とする。
【0008】
このような構成の多相変圧器では、複数のコイルを一対の磁性部材で挟み込む構造であるので、前記複数のコイルのうちの1つのコイルによって生成された磁束は、一方端部に配置される磁性部材、残余のコイルおよび他方端部に配置される磁性部材を介して前記1つのコイルに環流する。したがって、このような構成の多相変圧器では、各コイルによって生成される磁束線は、上下端部において相殺される。よって、このような構成の多相変圧器は、コイルの側面を外囲するように配置されるコアが不要となるので、背景技術のように環状のコアに巻き線を巻き付けることによって1次コイルや2次コイル等として機能する前記サブコイルを作る必要がない。しかも、この構成によれば、絶縁材を挟んで重ね合わせた帯状の複数の導体部材を巻回するので、1回の巻回工程で複数のサブコイルを構成することができるから、このような構成の多相変圧器は、従来より容易に製造することができる。
【0009】
また、他の一態様では、上述の多相変圧器において、前記磁性部材は、軟磁性粉末を形成したものであることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、磁性部材が軟磁性体粉末で形成されるので、このような構成の変圧器は、容易に磁性部材を形成することができ、その鉄損も低減することができる。
【0011】
また、他の一態様では、上述の多相変圧器において、前記磁性部材は、帯状の軟磁性部材を、該軟磁性部材の幅方向が前記複数のコイルにおける軸方向に沿うように、巻回することによって構成されることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、帯状の軟磁性部材を巻回することによって磁性部材を作ることができるので、このような構成の多相変圧器は、容易に製造することができ、さらに、小型なものはもちろん、大型化も可能である。
【0013】
また、他の一態様では、上述の多相変圧器において、前記巻き回された軟磁性部材間には、絶縁層をさらに備えることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、径方向の電気抵抗が高くなるので、このような構成の多相変圧器は、磁性部材における渦電流損を低減することができる。
【0015】
また、他の一態様では、これら上述の多相変圧器において、前記複数のサブコイルのそれぞれは、帯状の導体部材を、該導体部材の幅方向が当該コイルの軸方向に沿うように、巻回することによって構成されることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、サブコイルが導体部材の幅方向を、当該複数のサブコイルから成る当該コイルの軸方向に沿わせて帯状の長尺な導体部材を巻回することによって構成されるので、磁性部材が、前記複数のコイルの軸方向を法線方向とする2平面で前記複数のコイルを挟み込む構造である場合には、サブコイルの導体部材を磁束線の方向に略沿わせるように配置することが可能となる。このため、このような構成の多相変圧器は、コイル(サブコイル)における渦電流損を低減することができる。
【0017】
また、他の一態様では、上述の多相変圧器において、前記導体部材は、前記軸方向と直交する一方側面に配置された軟磁性体部材をさらに備えていることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、軸方向と直交する導体部材の一方側面に軟磁性体部材が配置されているので、複数のサブコイル部分の透磁率がより高くなり、インダクタンスをより大きくすることができ、損失を抑制することができる。このため、インダクタンスのより大きい、低損失な多相変圧器が提供される。
【0019】
また、他の一態様では、上述の多相変圧器において、前記軸方向と直交する方向における前記軟磁性体部材の厚さは、当該多相変圧器に給電される交流電力の周波数における表皮厚み以下であることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、渦電流損の発生を低減することができる。
【0021】
また、他の一態様では、これら上述の多相変圧器において、前記導体部材は、前記軟磁性体部材が被覆形成されていることを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、軟磁性体部材が被覆している導体部材を巻き回すことによって、軸方向と直交する導体部材の一方側面に軟磁性体部材が配置されている多相変圧器をより簡易に製造することができる。
【0023】
また、他の一態様では、これら上述の多相変圧器において、前記導体部材は、前記軟磁性体部材が圧着形成されていることを特徴とする。
【0024】
この構成によれば、軟磁性体部材が圧着している導体部材を巻き回すことによって、軸方向と直交する導体部材の一方側面に軟磁性体部材が配置されている多相変圧器をより簡易に製造することができる。
【0025】
また、他の一態様では、これら上述の多相変圧器において、前記複数のサブコイルは、当該コイルの軸方向に積層されていることを特徴とする。
【0026】
この構成によれば、複数のサブコイルを軸方向に積層した多相変圧器を提供することができる。
【0027】
また、他の一態様では、これら上述の多相変圧器において、前記複数のサブコイルは、当該コイルの径方向に積層されていることを特徴とする。
【0028】
この構成によれば、複数のサブコイルを径方向に積層した多相変圧器を提供することができる。
【0029】
また、他の一態様では、上述の多相変圧器において、前記複数の導体部材は、1以上の整数であって互いに異なる数をm、nとする場合に、(m+n)個であり、前記m個の導体部材は、前記mが2以上の場合には直列に接続され、前記n個の導体部材は、前記nが2以上の場合には直列に接続されていることを特徴とする。
【0030】
この構成によれば、複数のサブコイルは、m:nの2個のコイルから成るので、このような構成の多相変圧器は、2個のサブコイル間の電圧比をm:nとすることができ、このようなm:nの電圧比の多相変圧器が提供される。
【0031】
また、他の一態様では、上述の多相変圧器において、前記m個の導体部材の厚さ:前記n個の導体部材の厚さ=n:mであることを特徴とする。
【0032】
この構成によれば、(m枚)×(前記m個の導体部材の厚さ)=(n枚)×(前記n個の導体部材の厚さ)であるので、各サブコイルの厚さを等しくすることができ、このような各サブコイルの厚さの等しい多相変圧器が提供される。
【0033】
また、他の一態様では、これら上述の多相変圧器において、前記複数のコイルは、当該複数のコイルの各軸方向が互いに平行となるように同一平面上に並設されていることを特徴とする。
【0034】
この構成によれば、複数のコイルを同一平面上に並設した多相変圧器を提供することができる。
【0035】
また、他の一態様では、これら上述の多相変圧器において、前記複数のコイルと前記磁性部材との間に生じる間隙に充填される熱伝達部材をさらに備えることを特徴とする。
【0036】
この構成によれば、前記間隙に熱伝達部材が充填されているので、このような構成の多相変圧器は、各コイルで生じる熱を、熱伝達部材を介して磁性部材に伝導することができ、放熱性を改善することができる。
【0037】
また、他の一態様では、これら上述の多相変圧器において、前記導体部材の厚さは、当該多相変圧器に給電される交流電力における周波数に対する表皮厚みの1/3以下であることを特徴とする。
【0038】
この構成によれば、導体部材の厚さが交流電力の周波数に対する表皮厚みの3分の1以下であるので、このような構成の多相変圧器は、渦電流損を低減することができる。なお、表皮厚みδは、交流電力の角周波数をωとし、導体部材の透磁率をμとし、導体部材の電気伝導率をρとする場合に、一般に、δ=(2/ωμρ)1/2である。
【0039】
そして、本発明の他の一態様にかかる変圧システムは、直列に接続された複数の変圧器を備える変圧システムであって、前記複数の変圧器のうちの少なくとも1つは、これら上述のいずれか1つの多相変圧器であることを特徴とする。
【0040】
この構成によれば、上述の多相変圧器を備えた変圧システムが提供される。そして、この構成によれば、多段の変圧器によって構成されるので、各変圧器によって順次に変圧することができ、1個の変圧器にかかる電圧が低減され、変圧器1個当たりの負荷が軽減される。
【発明の効果】
【0041】
本発明にかかる多相変圧器は、従来より容易に製造することができる。また、本発明によれば、このような多相変圧器を含む変圧システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】第1実施形態における3相変圧器の構成を示す図である。
【図2】第1実施形態の3相変圧器における、図1(A)にII線で示す切断線での断面図である。
【図3】磁歪効果を説明するための図である。
【図4】第2実施形態の3相変圧器における一部断面図である。
【図5】第3実施形態における3相変圧器の構成を示す斜視図である。
【図6】第3実施形態の3相変圧器における一部断面図である。
【図7】第3実施形態の3相変圧器におけるダブルパンケーキ構造のコイルの製造方法を説明するための図である。
【図8】第4実施形態における3相変圧器の構成を示す図である。
【図9】第4実施形態の3相変圧器におけるコイルの結線状態を説明するための図である。
【図10】第5実施形態における単相変成器の構成を示す図である。
【図11】変形形態におけるコイル部分の構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明にかかる実施の一形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、適宜、その説明を省略する。
【0044】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態における3相変圧器の構成を示す図である。図1(A)は、その斜視図であり、図1(B)は、その上面図である。図2は、第1実施形態の3相変圧器における、図1(A)にI−I線で示す切断線での断面図である。
【0045】
図1において、第1実施形態の3相変圧器Traは、複数のコイル1と、各コイル1によって生成される磁束を略集中的に通すための磁性部材2とを備えて構成される。
【0046】
複数のコイル1は、第1実施形態の3相変圧器TraがU相、V相およびW相を持つ3相交流電力の用途に用いられることから、U相に使用されるU相コイル1u、V相に使用されるV相コイル1vおよびW相に使用されるW相コイル1wの3個のコイルを備えて構成されている。これらU相、V相およびW相は、位相が120度ずつずれており、例えば、U相の位相を基準とすると、V相の位相は、U相の位相に対し120度進んでおり、そして、W相の位相は、U相の位相に対し120度遅れている。
【0047】
これら3個のコイル1(1u、1v、1w)のそれぞれは、複数のサブコイルを備えている。この複数のサブコイルは、任意の個数、例えば、3相変圧器Traの使用によって適宜に設計される個数でよいが、図1および図2に示す例では、この複数のサブコイルは、2個の第1および第2サブコイル11、12から構成されている。すなわち、U相コイル1uは、第1U相サブコイル11uと第2U相サブコイル12uとを備える。V相コイル1vは、第1V相サブコイル11vと第2V相サブコイル12vとを備える。W相コイル1wは、第1W相サブコイル11wと第2W相サブコイル12wとを備える。第1サブコイル11(11u、11v、11w)は、例えば、1次コイル(または2次コイル)となり、第2サブコイル12(12u、12v、12w)は、2次コイル(または1次コイル)となる。なお、複数のサブコイルが3個以上である場合に、2次コイルが複数とされてもよく、また、帰還コイル等の所定の目的(所定の用途)のための、1次および2次コイルの他の第3のコイルとされてもよい。
【0048】
なお、本明細書において、総称する場合には添え字を省略した参照符号で示し、個別の構成を指す場合には添え字を付した参照符号で示す。
【0049】
第1および第2サブコイル11、12のそれぞれは、例えば断面○形状や□形状等の絶縁被覆した導電性線材を巻回することによって構成してもよいが、本実施形態では、帯状の導体部材を、該導体部材の幅方向が当該コイル1の軸方向に沿うように、巻回することによって構成される。より具体的には、第1および第2サブコイル11、12のそれぞれは、片面を絶縁被覆した帯状の導体部材を渦巻き状に所定回数だけ巻き回していわゆるシングルパンケーキ巻きで形成される。あるいは、第1および第2サブコイル11、12のそれぞれは、帯状の導体部材に比較的薄い絶縁シートを挟み込んで渦巻き状に所定回数だけ巻き回していわゆるシングルパンケーキ巻きで形成される。このような帯状の長尺な導体部材は、シート形状、リボン形状あるいはテープ形状であり、幅(幅方向の長さ)Wに対する厚さ(厚み方向の長さ)tが1未満である(0<t/W<1)。
【0050】
そして、第1および第2サブコイル11、12は、図1および図2に示すように、当該コイル1の軸方向に絶縁材4を挟んで積層されている。
【0051】
磁性部材2は、複数のコイル1における軸方向の両端部分のそれぞれを覆うように各両端にそれぞれ配置される一対の部材21、22で構成される。すなわち、本実施形態の3相変圧器Traは、複数のコイル1をその軸方向で一対の磁性部材21、22で挟み込む構造である。磁性部材2(21、22)は、例えば仕様等に応じた所定の磁気特性(透磁率)を有しており、帯状の軟磁性部材を、該軟磁性部材の幅方向が複数のコイル1における軸方向に沿うように、巻回することによって構成される。より具体的には、一対の磁性部材21、22のそれぞれは、片面を絶縁被覆した帯状(テープ状、リボン状)の軟磁性部材を渦巻き状に巻き回していわゆるシングルパンケーキ巻きで形成される。あるいは、一対の磁性部材21、22のそれぞれは、帯状の軟磁性部材に比較的薄い絶縁シートを挟み込んで渦巻き状に巻き回していわゆるシングルパンケーキ巻きで形成される。この帯状の軟磁性部材は、例えば、純鉄系または低シリコン添加の柔軟な磁性体を、帯状に圧延し、その後に、軟磁性とするために、これを焼鈍処理することによって得られる。前記絶縁被覆や前記絶縁シートには、例えば、ポリイミド樹脂等の樹脂が用いられる。
【0052】
そして、本実施形態の3相変圧器Traでは、軸方向に積層された第1および第2U相サブコイル11u、12uを備えて成る輪郭円柱状のU相コイル1uと、軸方向に積層された第1および第2V相サブコイル11v、12vを備えて成る輪郭円柱状のV相コイル1uと、軸方向に積層された第1および第2W相サブコイル11w、12wを備えて成る輪郭円柱状のW相コイル1wとは、各中心点(軸芯)が正三角形の各頂点に一致するようにそれぞれ配置され、各軸方向が互いに平行となるように、そして、その一方端が同一平面となるように、並設されている。U相、V相およびW相の各コイル1u、1v、1wにおける各芯部には、第1および第2サブコイル11u、12u;11v、12v;11w、12wを挿通するように、所定の磁気特性を有する中実円柱形状のポールピース3u、3v、3wがそれぞれ配置されている。これらポールピース3u、3v、3wは、磁気飽和した場合でも低ヒステリシス損の材料で形成されることが好ましい。このようなポールピース3u、3v、3wは、比較的低いヒステリシス損の合金粉を熱可塑性の樹脂で固化することによって形成される。そして、一方の磁性部材21は、上述のように並設された3個のU相、V相およびW相コイル1u、1v、1wにおける軸方向の一方端部におけるこれら3個のU相、V相およびW相コイル1u、1v、1wによって形成される一方面を略覆うべく、面取りされた略正三角形形状の横断面となるように、帯状の軟磁性部材が巻き回されて形成され、前記一方端部の前記一方面を略覆うようにその部分に配置されている。同様に、他方の磁性部材22は、上述のように並設された3個のU相、V相およびW相コイル1u、1v、1wにおける軸方向の他方端部におけるこれら3個のU相、V相およびW相コイル1u、1v、1wによって形成される他方面を略覆うべく、面取りされた略正三角形形状の横断面となるように、帯状の軟磁性部材が巻き回されて形成され、前記他方端部の前記他方面を略覆うようにその部分に配置されている。
【0053】
このような構成の3相変圧器Traでは、複数のコイル1を一対の磁性部材2で挟み込む構造であるので、U相では、U相コイル1uにおける1次コイル(例えば第1サブコイル11u)に交流電力が供給されると、前記1次コイルによって磁場が形成され、前記1次コイルによって生成された磁場の磁束は、前記1次コイルから、一方の磁性部材21を通り、他のV相コイル1vおよびW相コイル1wをそれぞれ介して他方の磁性部材22を通り、そして、前記1次コイルに環流する。このため、U相コイル1uの2次コイル(例えば第2サブコイル12u)は、磁性部材2によって前記1次コイルと磁気結合し、電磁誘導によって前記1次コイルの交流電力が伝達され、所定の電圧が誘起される。同様に、V相では、V相コイル1vにおける1次コイル(例えば第1サブコイル11v)に交流電力が供給されると、前記1次コイルによって磁場が形成され、前記1次コイルによって生成された磁場の磁束は、前記1次コイルから、一方の磁性部材21を通り、他のW相コイル1wおよびU相コイル1uをそれぞれ介して他方の磁性部材22を通り、そして、前記1次コイルに環流する。このため、V相コイル1vの2次コイル(例えば第2サブコイル12v)は、磁性部材2によって前記1次コイルと磁気結合し、電磁誘導によって前記1次コイルの交流電力が伝達され、所定の電圧が誘起される。そして、同様に、W相では、W相コイル1wにおける1次コイル(例えば第1サブコイル11w)に交流電力が供給されると、前記1次コイルによって磁場が形成され、前記1次コイルによって生成された磁場の磁束は、前記1次コイルから、一方の磁性部材21を通り、他のU相コイル1uおよびV相コイル1vをそれぞれ介して他方の磁性部材22を通り、そして、前記1次コイルに環流する。このため、W相コイル1wの2次コイル(例えば第2サブコイル12w)は、磁性部材2によって前記1次コイルと磁気結合し、電磁誘導によって前記1次コイルの交流電力が伝達され、所定の電圧が誘起される。一対の磁性部材21、22は、コイル1で生成された磁束を当該コイル1に環流させ、1次コイルと2次コイルとを相互インダクタンスで結合する磁気回路の一部として機能している。
【0054】
したがって、このような各コイル1u、1v、1wによって生成される各磁束線は、上下端部において相殺される。よって、このような構成の多相変圧器Traは、コイル1u、1v、1wの側面を外囲するように配置されるコアが不要となるので、背景技術のように環状のコアに巻き線を巻き付けることによって1次コイルや2次コイル等として機能する前記サブコイル11u、12u;11v、12v;11w、12wを作る必要がない。このため、このような構成の多相変圧器Traは、従来より容易に製造することができる。
【0055】
また、磁性部材2が、各相のコイル1u、1v、1wの各軸方向を法線方向とする2平面で各相のコイル1u、1v、1wを挟み込む構造であって、第1および第2サブコイル11、12が、帯状の導体部材を、該導体部材の幅方向が該コイル1の軸方向に沿うように巻回することによってそれぞれ構成されているので、一対の磁性部材21、22間の空間では、第1および第2サブコイル11、12の各導体部材は、その磁束線に略沿っている。したがって、第1および第2サブコイル11、12の各導体部材では、その渦電流損が低減される。
【0056】
そして、このような3相変圧器Traは、例えば、次の各工程によって製造することができる。
【0057】
コイル1u、1v、1wを形成するべく、所定の厚さを有するとともに少なくとも片面が絶縁被覆された帯状の導体部材がサブコイルの個数、図1および図2に示す例では6個用意される。そして、これら絶縁被覆された6個の導体部材が、それぞれ、中心(軸芯)から所定の距離だけ離間した位置から所定の回数だけ巻き回され、これらのうちの2個が1組で軸方向に絶縁材4を介して積層され、これらの軸芯部にポールピース3u、3v、3wがそれぞれ挿通され、配置される。あるいは、これら絶縁被覆された6個の導体部材が、2個1組で、絶縁材4を備えたポールピース3u、3v、3wにそれぞれ所定の回数だけ巻き回される。これによって、第1および第2サブコイル11u、12v;11v、12v;11w、12wを軸方向に積層した輪郭円柱状のコイル1u、1v、1wが形成される。
【0058】
一方、一対の磁性部材21、22を形成するべく、所定の厚さを有するとともに少なくとも片面が絶縁被覆された帯状の軟磁性部材が2個用意される。これら絶縁被覆された2個の軟磁性部材が、それぞれ、中心(軸芯)から所定の距離だけ離間した位置から、その横断面が面取りされた正三角形形状となるように、所定の回数だけ巻き回される。これによって一対の磁性部材21、22のそれぞれが形成される。
【0059】
続いて、U相コイル1u、V相コイル1uおよびW相コイル1wは、各中心点(軸芯)が正三角形の各頂点に一致するように配置され、各軸方向が互いに平行となるように並設される。
【0060】
続いて、これら並設されたU相コイル1u、V相コイル1uおよびW相コイル1wにおける軸方向の一方端部に一方の磁性部材21が例えばエポキシ系等の高分子接着剤によって接着固定され、これら並設されたU相コイル1u、V相コイル1uおよびW相コイル1wにおける軸方向の他方端部に他方の磁性部材22が同様に接着固定される。こうして3相変圧器Traが製造される。
【0061】
以上説明したように、本実施形態における3相変圧器Traは、U相、V相およびW相の3個のコイル1u、1v、1wを一対の磁性部材21、22で挟み込む構造であるので、各コイル1u、1v、1wによって生成される各磁束線が上下端部において相殺するからコイル1u、1v、1wの側面を外囲するように配置されるコアが不要となるので、背景技術のように環状のコアに巻き線を巻き付けることによって1次コイルや2次コイル等として機能する前記サブコイル11u、12u;11v、12v;11w、12wを作る必要がない。このため、このような構成の多相変圧器Traは、従来より容易に製造することができる。
【0062】
また、本実施形態における3相変圧器Traでは、帯状の軟磁性部材を巻回することによって磁性部材2(21、22)を作ることができるので、本実施形態における3相変圧器Traは、容易に製造することができる。さらに、後述するように、例えば軟磁性粉末を、圧力成型、或いは加熱や接着剤等を用いて成型して形成される磁性部材2は、一括プレスで製作することができ、低コスト化にメリットがある一方で、プレス設備が大型化してしまうため、大きな磁性部材2には、適していない。これに対し、本実施形態の磁性部材2は、上述のように帯状の軟磁性部材を巻き回して形成されるため、小径なものは言うに及ばず、大径化した場合でも容易に製作することができ、低コスト化も可能である。
【0063】
また、本実施形態における3相変圧器Traでは、前記巻回された軟磁性部材間が絶縁材によって絶縁されているので、径方向の電気抵抗が高くなり、この結果、磁性部材2における渦電流を効果的に抑制することができる。さらに、渦電流損を低減するために、軟磁性部材の厚みをいわゆる表皮厚みδ以下とされてもよい。
【0064】
また、本実施形態における3相変圧器Traでは、磁性部材2(21、22)に生じる磁歪効果も抑制することができる。図3は、磁歪効果を説明するための図である。図3(A)は、磁場の無い無磁場下の場合を示し、図3(B)は、磁場の有る有磁場下の場合を示す。すなわち、磁場の無い無磁場下における磁性材料では、図3(A)に示すように、電子のスピンによる微小磁石におけるNS極の方向が不揃いな状態(様々な方向を向いたランダムな状態)であるが、磁場が印加された有磁場下における磁性材料では、図3(B)に示すように、前記微小磁石におけるNS極の方向が揃うため、磁性材料全体において、所定の一方向に膨張するとともに所定の他方向で収縮する歪み(磁歪)が生じる。本実施形態における3相変圧器Traでは、磁歪効果によって帯状の軟磁性部材における長手方向に伸縮が生じるが、帯状の軟磁性部材が巻き回されているので、前記伸縮が周方向の巻き弛緩および緊縛として吸収され、前記伸縮が生じても径方向の伸縮は、1/π(πは円周率)〜1/3に縮小されるため、前記磁歪効果が抑制される。
【0065】
また、本実施形態における3相変圧器Traでは、サブコイル11u、12u;11v、12v;11w、12wが導体部材の幅方向を、当該複数のサブコイル11u、12u;11v、12v;11w、12wから成る当該コイル1u、1v、1wの軸方向に沿わせて帯状の長尺な導体部材を巻回することによって構成されているとともに、磁性部材2が、これら複数のコイル1u、1v、1wの軸方向を法線方向とする2平面でこれら複数のコイル1u、1v、1wを挟み込む構造であるので、サブコイル11u、12u;11v、12v;11w、12wの導体部材を磁束線の方向に略沿わせるように配置することが可能となる。このため、本実施形態における3相変圧器Traは、コイル1(サブコイル11、12)における渦電流損を低減することができる。
【0066】
そして、本実施形態における3相変圧器Traでは、複数のサブコイル11、12を軸方向に積層した3相変圧器Traが提供される。
【0067】
次ぎに、別の実施形態について説明する。
【0068】
(第2実施形態)
図4は、第2実施形態の3相変圧器における一部断面図である。第1実施形態における3相変圧器Traは、複数のサブコイルが当該コイルの軸方向に積層されたが、第2実施形態における3相変圧器Trbは、図4に示すように、当該コイルの径方向に積層されて構成される。なお、図4には、図1に対する図2と同様に、或る1つのコイル、例えばu相のコイル6uの軸芯から外周までの範囲が示されている。また、第2実施形態における3相変圧器Trbの上面図は、図1に示す第1実施形態における3相変圧器Traの上面図と同様であるので、省略する。
【0069】
このような第2実施形態における3相変圧器Trbは、複数のコイル6と、各コイル6によって生成される磁束を略集中的に通すための磁性部材2とを備えて構成される。この第2実施形態における変圧器Trbの磁性部材2は、第1実施形態における変圧器Traの磁性部材2と同様であるので、その説明を省略する。
【0070】
そして、複数のコイル6は、第1実施形態と同様に、第2実施形態の3相変圧器TrbがU相、V相およびW相を持つ3相交流電力の用途に用いられることから、U相に使用されるU相コイル6u、V相に使用されるV相コイル6vおよびW相に使用されるW相コイル6wの3個のコイルを備えて構成されている。
【0071】
これら3個のコイル6(6u、6v、6w)のそれぞれは、複数のサブコイルを備えている。これら複数のサブコイルのそれぞれは、帯状の長尺な導体部材を絶縁材(図略)を挟んで所定回数だけ巻回することによって構成されて成る。複数のサブコイルは、任意の個数、例えば、変圧器Trbの使用によって適宜に設計される個数でよいが、図4に示す例では、複数のサブコイルは、外側および内側の2個の外コイル61および内コイル62から構成されて成る。外コイル61と内コイル62とは、絶縁材を介して径方向に積層される。
【0072】
このような構成の第2実施形態における変圧器Trbも第1実施形態にかかる変圧器Traと同様の作用効果を奏し、第2実施形態にかかる変圧器Trbは、従来より容易に製造することができる。そして、第2実施形態によれば、複数のコイル6を径方向に積層した変圧器Trbが提供される。
【0073】
次ぎに、別の実施形態について説明する。
【0074】
(第3実施形態)
図5は、第3実施形態における3相変圧器の構成を示す斜視図である。図6は、第3実施形態の3相変圧器における一部断面図である。
【0075】
第1実施形態における3相変圧器Traは、複数のサブコイルが当該コイルの軸方向に積層されたが、第3実施形態における3相変圧器Trcは、図5および図6に示すように、複数のサブコイルが、絶縁材を挟んで重ね合わせた帯状の複数の導体部材を巻回することによって構成される。なお、図6には、図1に対する図2と同様に、或る1つのコイル、例えばu相のコイル7uの軸芯から外周までの範囲が示されている。
【0076】
このような第3実施形態における3相変圧器Trcは、複数のコイル7と、各コイル7によって生成される磁束を略集中的に通すための磁性部材2(21、22)とを備えて構成される。この第3実施形態における変圧器Trcの磁性部材2は、第1実施形態における変圧器Traの磁性部材2と同様であるので、その説明を省略する。
【0077】
そして、複数のコイル7は、第1実施形態と同様に、第3実施形態の3相変圧器TrcがU相、V相およびW相を持つ3相交流電力の用途に用いられることから、U相に使用されるU相コイル7u、V相に使用されるV相コイル7vおよびW相に使用されるW相コイル7wの3個のコイルを備えて構成されている。
【0078】
これら3個のコイル7(7u、7v、7w)のそれぞれは、複数のサブコイルを備えている。この複数のサブコイルは、任意の個数、例えば、3相変圧器Trcの仕様によって適宜に設計される個数でよいが、図5および図6に示す例では、この複数のサブコイルは、4個の第1ないし第4サブコイル71〜74から構成されている。これら複数のサブコイル71〜74は、図5および図6に示すように、絶縁材を挟んで重ね合わせた帯状の複数(本実施形態では4つ)の長尺な導体部材を所定回数だけ巻回することによって構成されて成る。そして、複数のサブコイル71〜74は、シングルパンケーキ構造であってもよいが、本実施形態では、図5および図6に示すように、ダブルパンケーキ構造で構成されている。
【0079】
第1ないし第4サブコイル71、72、73、74の各両端部Tma1、Tma2;Tmb1、Tmb2;Tmc1、Tmc2;Tmd1、Tmd2は、接続端子として機能する。そして、第2サブコイル72、第3サブコイル73および第4サブコイル74で1個のコイルを形成すべく、第2サブコイル72の他方端部Tmb2と第3サブコイルの一方端部Tmc1とが電気的に接続されるとともに、第3サブコイル73の一方端部Tmc2と第4サブコイルの一方端部Tmd1とが電気的に接続されている。このため、図5および図6に示す例の3相変圧器Trcでは、第1サブコイル71は、その両端部Tma1、Tma2を接続端子とする1次コイル(または2次コイル)となり、第2ないし第4サブコイル72、73、74は、第2サブコイル12の一方端部Tmb1および第4サブコイル74の他方端部Tmd2を接続端子とする2次コイル(または1次コイル)となっている。
【0080】
このように複数のサブコイル71〜74は、1以上の整数であって互いに異なる数をm、nとする場合に、絶縁材を挟んで重ね合わせた帯状の(m+n)個の導体部材を巻回することによって構成され、前記m個の導体部材は、前記mが2以上の場合には直列に接続され、前記n個の導体部材は、前記nが2以上である場合には直列に接続されているものである。このように構成することによって、複数のサブコイル71〜74がm:nの2個のサブコイルから成るので、3相変圧器Trcは、2個のサブコイル間の電圧比をm:nとすることができる。
【0081】
なお、このような構成のサブコイル71〜74において、前記m個の導体部材の厚さ:前記n個の導体部材の厚さ=n:mであることが好ましい。このように構成することによって、(m枚)×(前記m個の導体部材の厚さ)=(n枚)×(前記n個の導体部材の厚さ)であるので、各サブコイル(前記1次コイルおよび前記2次コイル)71〜74の厚さを等しくすることができ、このような各サブコイル71〜74の厚さの等しい変圧器Traが提供される。
【0082】
このようなダブルパンケーキ構造のサブコイル71〜74は、例えば、次の各工程によって製造することができる。
【0083】
図7は、第3実施形態の3相変圧器におけるダブルパンケーキ構造のコイルの製造方法を説明するための図である。まず、所定の厚さを有するとともに少なくとも片面を絶縁被覆した帯状の導体部材がサブコイルの個数だけ用意される。以下では、図5および図6に示す例の3相変圧器Trcにおける3個のコイル7(7u、7v、7w)のいずれか1つを製造する場合について説明する。この場合、サブコイル71〜74を製造するべく、導体部材が4個用意される。もちろん、各工程は、任意の個数の導体部材であっても同様に実施することができる。続いて、これら絶縁被覆された4個の導体部材が絶縁材によって電気的に絶縁されるように順次に重ね合わせられ(順次に積層され)、図7(A)に示すように、この重ね合わされた4個の導体部材(重ね合わせ導体部材SB)がその両端からそれぞれ巻回され、その中間部分が例えば塑性成形によって帯状の重ね合わせ導体部材SBを含む平面内において長尺方向と直交する方向(幅方向)に所定角度だけ曲げられる。続いて、図7(B)に示すように、この曲げた部分が中心巻枠CFの外周面に当接され、この重ね合わせ導体部材SBが、この当接点を起点に、所定の巻き数となるように、中心巻枠CFの外周面に巻き付けられ、中心巻枠CFを巻枠としてDP巻き(ダブルパンケーキ巻き)される。続いて、重ね合わせ導体部材SBが中心巻枠CFに巻き付け終わると、図7(C)に示すように、中心巻枠CFが抜き取られて、第1ないし第4サブコイル71〜74から構成されて成る第U相コイル7uが形成される。そして、重ね合わせ導体部材SBの巻き残しが第1ないし第4サブコイル71、72、73、74の各接続端子Tma1、Tma2;Tmb1、Tmb2;Tmac、Tmc2;Tmd1、Tmd2となる。そして、第2ないし第4サブコイル72、73、74で1個のコイルを形成すべく、これら各接続端子Tmb1、Tmb2;Tmac、Tmc2;Tmd1、Tmd2が上述のように結線される。このような手順によって、ダブルパンケーキ構造の複数のサブコイル71〜74が作製される。
【0084】
このような構成の第3実施形態における変圧器Trcも第1実施形態にかかる変圧器Traと同様の作用効果を奏し、特に、第3実施形態にかかる変圧器Trcは、1回の巻回工程で複数のサブコイル71〜74を構成することができるから、従来よりさらに容易に製造することができる。
【0085】
次に、別の実施形態について説明する。
【0086】
(第4実施形態)
図8は、第4実施形態における3相変圧器の構成を示す図である。図9は、第4実施形態の3相変圧器におけるコイルの結線状態を説明するための図である。
【0087】
第1実施形態における3相変圧器Traは、複数のサブコイルが当該コイルの軸方向に積層されたが、第4実施形態における3相変圧器Trdは、図8に示すように、複数のコイル8(8u−1、8u−2;8v−1、8v−2;8w−1、8w−2)が、当該複数のコイル8の各軸方向が互いに平行となるように同一平面上に並設されている。なお、図8には、一方の磁性部材21を取り除いた状態での第4実施形態における3相変圧器Trdの上面図が示されている。
【0088】
このような第4実施形態における3相変圧器Trdは、複数のコイル8と、各コイル8によって生成される磁束を略集中的に通すための磁性部材2とを備えて構成される。この第4実施形態における変圧器Trdの磁性部材2は、第1実施形態のように略正三角形形状の横断面ではなくドーナツ形状の横断面である点を除き、第1実施形態における変圧器Traの磁性部材2(21、22)と同様であるので、その説明を省略する。
【0089】
そして、複数のコイル8は、第1実施形態と同様に、第4実施形態の3相変圧器TrdがU相、V相およびW相を持つ3相交流電力の用途に用いられることから、U相に使用されるU相コイル8u、V相に使用されるV相コイル8vおよびW相に使用されるW相コイル8wを備えて構成されており、さらに、本実施形態では、これらU相コイル8u、V相コイル8vおよびW相コイル8wのそれぞれは、複数であって、この複数のU相コイル8u、複数のV相コイル8vおよび複数のW相コイル8wが、各コイル8の各軸方向が互いに平行となるように、そして、その一方端が同一平面となるように、環状に順次に並べられて並設されている。図8に示す例では、各相のコイル8u、8v、8wのそれぞれは、2個の第1および第2コイルを備えて構成されている。すなわち、U相コイル8uは、第1U相コイル8u−1と第2U相コイル8u−2とを備える。V相コイル8vは、第1V相コイル8v−1と第2V相コイル8v−2とを備える。W相コイル8wは、第1W相コイル8w−1と第2W相コイル8w−2とを備える。
【0090】
これら各相の第1および第2コイル8u−1、8u−2;8v−1、8v−2;8w−1、8w−2;のそれぞれは、第1ないし第3実施形態の3相変圧器Tra〜Trcにおけるコイル1、6、7のいずれの構造であってもよいが、図8に示す例では、第3実施形態の3相変圧器Trcにおけるコイル7の構造が採用されている。すなわち、第4実施形態の3相変圧器Trdにおける各コイル8u−1、8u−2;8v−1、8v−2;8w−1、8w−2;のそれぞれは、複数のサブコイルを備えている。この複数のサブコイルは、任意の個数、例えば、3相変圧器Trdの仕様によって適宜に設計される個数でよいが、図8および図9に示す例では、この複数のサブコイルは、3個の第1ないし第3サブコイル81〜83から構成されている。これら複数のサブコイル81〜83は、絶縁材(
図略)を挟んで重ね合わせた帯状の複数(本実施形態では3つ)の長尺な導体部材を所定回数だけ巻回することによって構成されて成る。そして、本実施形態では、各コイル8u−1、8u−2;8v−1、8v−2;8w−1、8w−2;のそれぞれは、シングルパンケーキ構造で構成されている。
【0091】
図9に示すように、第1ないし第3サブコイル81、82、83の各両端部Tm11、Tm12;Tm21、Tm22;Tm31、Tm32は、接続端子として機能する。そして、第2サブコイル82および第3サブコイル83で1個のコイルを形成すべく、第2サブコイル82の他方端部Tm22と第3サブコイル83の一方端部Tm31とが電気的に接続されている。このため、図8および図9に示す例の3相変圧器Trdでは、第1サブコイル81は、その両端部Tm11、Tm12を接続端子とする1次コイル(または2次コイル)となり、第2および第3サブコイル82、83は、第2サブコイル82の一方端部Tm21および第3サブコイル83の他方端部Tm32を接続端子とする2次コイル(または1次コイル)となっている。
【0092】
このような構成の第4実施形態における変圧器Trdも第1実施形態にかかる変圧器Traと同様の作用効果を奏し、第4実施形態にかかる変圧器Trdは、従来より容易に製造することができる。そして、第4実施形態によれば、複数のコイル8u、8v、8wを並設した3相変圧器を提供することができる。
【0093】
次に、別の実施形態について説明する。
【0094】
(第5実施形態)
図10は、第5実施形態における単相変成器の構成を示す図である。図10(A)は、その上面図であり、図10(B)は、その斜視図である。第1ないし第4実施形では、多相変成器Tra〜Trdであったが、第5実施形態における変成器は、第1ないし第4実施形態における多相変成器Tra〜Trdと同様の考え方に基づく単相変成器である。
【0095】
このような第5実施形態における単相変成器Treは、1次コイル91および2次コイル92を備える複数のコイル9と、1次コイル91および2次コイル92によって生成される磁束を略集中的に通すための磁性部材2(21、22)とを備えて構成される。
【0096】
1次コイル91は、例えば断面○形状や□形状等の絶縁被覆した導電性線材を巻回することによって構成してもよいが、本実施形態では、第1ないし第4実施形態における第1および第2サブコイルと同様に、帯状の導体部材を、該導体部材の幅方向が当該1次コイル91の軸方向に沿うように、巻回することによって構成される。より具体的には、1次コイル91は、片面を絶縁被覆した帯状の導体部材を渦巻き状に所定回数だけ巻き回していわゆるシングルパンケーキ巻きで形成される。あるいは、1次コイル91は、帯状の導体部材に比較的薄い絶縁シートを挟み込んで渦巻き状に所定回数だけ巻き回していわゆるシングルパンケーキ巻きで形成される。2次コイル92も1次コイル91と同様である。
【0097】
磁性部材2は、第1ないし第4実施形態における磁性部材2と同様に、複数のコイル9(91、92)における軸方向の両端部分のそれぞれを覆うように各両端にそれぞれ配置される一対の部材21、22で構成される。すなわち、本実施形態の単相変圧器Treは、複数のコイル9(91、92)をその軸方向で一対の磁性部材21、22で挟み込む構造である。磁性部材2(21、22)は、例えば仕様等に応じた所定の磁気特性(透磁率)を有しており、帯状の軟磁性部材を、該軟磁性部材の幅方向が複数のコイル9(91、92)における軸方向に沿うように、巻回することによって構成される。より具体的には、一対の磁性部材21、22のそれぞれは、片面を絶縁被覆した帯状の軟磁性部材を渦巻き状に巻き回していわゆるシングルパンケーキ巻きで形成される。あるいは、一対の磁性部材21、22のそれぞれは、帯状の軟磁性部材に比較的薄い絶縁シートを挟み込んで渦巻き状に巻き回していわゆるシングルパンケーキ巻きで形成される。
【0098】
そして、これら1次コイル91および2次コイル92は、各コイル9(91、92)の各軸方向が互いに平行となるように、そして、その一方端が同一平面となるように、さらに、所定の間隔を空けて隣接するように、並設されている。これに応じて磁性部材2は、本実施形態では、その横断面が平行部分を有する長円形状(⊂形状と⊃形状とをその端部を繋げた形状)となっている。
【0099】
このような構成の単相変圧器Treでは、1次コイル91および2次コイル92を一対の磁性部材2(21、22)で挟み込む構造であるので、1次コイル91に交流電力が供給されると、1次コイル91によって磁場が形成され、1次コイル91によって生成された磁場の磁束は、1次コイル91から、一方の磁性部材21を通り、2次コイル92を介して他方の磁性部材22を通り、そして、1次コイル91に環流する。このため、2次コイル92は、一対の磁性部材21、22によって1次コイル91と磁気結合し、電磁誘導によって1次コイル91の交流電力が伝達され、所定の電圧が誘起される。一対の磁性部材21、22は、1次コイル91で生成された磁束を当該コイル91に環流させ、1次コイル91と2次コイル92とを相互インダクタンスで結合する磁気回路の一部として機能している。このような構成の単相変圧器Treは、コイル9(91、92)の側面を外囲するように配置されるコアが不要となるので、背景技術のように環状のコアに巻き線を巻き付けることによって1次コイルや2次コイルを作る必要がない。このため、このような構成の単相変圧器Treは、従来より容易に製造することができる。
【0100】
また、磁性部材2が、各コイル91、92の各軸方向を法線方向とする2平面で各コイル91、92を挟み込む構造であって、1次コイル91および2次コイル92が、帯状の導体部材を、該導体部材の幅方向が該コイル91、92の軸方向に沿うように巻回することによってそれぞれ構成されているので、一対の磁性部材21、22間の空間では、1次コイル91および2次コイル92の各導体部材は、その磁束線に略沿っている。したがって、1次コイル91および2次コイル92の各導体部材では、その渦電流損が低減される。
【0101】
なお、上述の第1ないし第5実施形態では、磁性部材2は、帯状の軟磁性部材を巻回したものであったが、磁性部材2は、所望の形状の成形容易性の観点から、軟磁性体粉末を形成したものであってもよい。このような構成の多相変圧器Tr(Tra、Trb、Trc、Trd)および単相変圧器Treは、容易に磁性部材2を形成することができ、その鉄損も低減することができる。さらにまた、磁性部材2は、軟磁性粉末と非磁性粉末との混合物を成形したものであってもよい。軟磁性粉末と非磁性粉末との混合率比を比較的容易に調整することができ、前記混合比率を適宜に調整することによって、磁性部材2における前記所定の磁気特性をそれぞれ所望の磁気特性に容易に実現することが可能となる。
【0102】
この軟磁性粉末は、強磁性の金属粉末であり、より具体的には、例えば、純鉄粉、鉄基合金粉末(Fe−Al合金、Fe−Si合金、センダスト、パーマロイ等)およびアモルファス粉末、さらには、表面にリン酸系化成皮膜などの電気絶縁皮膜が形成された鉄粉等が挙げられる。これら軟磁性粉末は、公知の手段、例えば、アトマイズ法等によって微粒子化する方法や、酸化鉄等を微粉砕した後にこれを還元する方法等によって製造することができる。また、一般に、透磁率が同一である場合に飽和磁束密度が大きいので、軟磁性粉末は、例えば上記純鉄粉、鉄基合金粉末およびアモルファス粉末等の金属系材料であることが特に好ましい。このような軟磁性粉末に基づく磁性部材2は、例えば、圧粉形成等の公知の常套手段によって形成することができる。
【0103】
また、上述の第1ないし第5実施形態において、複数のコイル1、6、7、8、9と磁性部材2との間に生じる間隙には、熱伝達部材がさらに充填されてもよい。このような構成の多相変圧器Tr(Tra、Trb、Trc、Trd)および単相変圧器Treでは、前記間隙に熱伝達部材が充填されているので、各コイル1、6、7、8、9で生じる熱は、前記熱伝達部材を介して磁性部材2に伝導することができる。このため、このような構成の多相変圧器Tr(Tra、Trb、Trc、Trd)および単相変圧器Treは、その放熱性を改善することができる。前記熱伝導部材は、例えば、比較的熱伝導性のよい高分子部材(比較的高伝導率の高分子部材)を挙げることができる。この高分子部材は、例えば、接着性に優れたエポキシ系の樹脂等である。このような高分子部材によって各コイル1、6、7、8が磁性部材2に略固定され、このような多相変圧器Tr(Tra、Trb、Trc、Trd)および単相変圧器Treは、磁歪による振動を低減することも可能となる。また例えば、前記熱伝導部材は、BNセラミック(チッ化ボロンセラミック)等の絶縁材であってもよく、コンパウンドで充填されてもよい。このような熱伝導部材によって、絶縁性も改善することができる。
【0104】
また、上述の第1ないし第5実施形態において、各コイル1、6、7、8、9の前記導体部材の厚さは、当該多相変圧器Tr(Tra、Trb、Trc、Trd)および単相変圧器Treに給電される交流電力における周波数に対する表皮厚みの1/3以下であってもよい。このような構成の多相変圧器Tr(Tra、Trb、Trc、Trd)および単相変圧器Treは、渦電流損を低減することができる。一般に、コイルに流れる電流は、表皮厚みδまでの範囲でしか流れず、導体断面全体に一様に電流が流れない。したがって、導体部材の厚みtを表皮厚みδ以下に設定することで渦電流損が減少できる。表皮厚みδは、交流電力の角周波数をωとし、導体部材の透磁率をμとし、導体部材の電気伝導率をρとする場合に、一般に、δ=(2/ωμρ)1/2である。
【0105】
また、上述の第1ないし第4実施形態では、多相変圧器Tr(Tra、Trb、Trc、Trd)は、3相交流電力に対応するべく、U相、V相およびW相の3個のコイル1、6、7、8を備える3相変圧器Trを例に挙げたが、これに限定されるものではなく、他の相数の変圧器Trであってもよい。多相変圧器Tr(Tra、Trb、Trc、Trd)は、例えば、2個の相に対応する2相変圧器Trであってもよい。
【0106】
そして、これら上述の多相変圧器Tr(Tra、Trb、Trc、Trd)および単相変圧器Treのうちの少なくとも1を含む、直列に接続された複数の変圧器を備える変圧システムが構成されてもよい。このような構成の変圧システムでは、多段の変圧器によって構成されるので、各変圧器によって順次に変圧することができるから、1個の変圧器にかかる電圧が低減され、絶縁破壊に効果的であり、また、変圧器1個当たりの負荷が軽減される。
【0107】
そして、上述の第1ないし第5実施形態およびその変形形態において、第1および第2サブコイル11、12;61、62;71、72;81、82と1次コイル91、2次コイル92とにおける導体部材は、複数のコイル1、6、7、8、9の軸方向と直交する一方側面に配置された軟磁性体部材をさらに備えてもよい。このように構成することによって、軸方向と直交する導体部材の一方側面に軟磁性体部材が配置されるので、複数のコイル1、6、7、8、9部分における透磁率がより高くなり、インダクタンスをより大きくすることができ、損失を抑制することができる。このため、このような構成の複数のコイル1、6、7、8、9を用いることによって、インダクタンスがより大きく、低損失の変圧器が提供される。
【0108】
図11は、変形形態におけるコイル部分の構成を説明するための図である。図11には、このような構成の第1および第2サブコイル11、12;61、62;71、72;81、82と1次コイル91、2次コイル92における一部分のコイルCoが示されている。
【0109】
より具体的には、これら上述の複数のコイル1、6、7、8、9において、その変形形態では、コイルCoは、図11に示すように、帯状の長尺な所定材料の導体部材Cnと、軸方向と直交する導体部材Cnの一方側面に配置される、所定材料の軟磁性体部材Maと、軸方向と直交する導体部材Cnの一方側面に軟磁性体部材Maを介して配置される、所定材料の絶縁材Inとを備え、これら導体部材Cn、軟磁性体部材Maおよび絶縁材Inは、順次に積層されるように、共に巻き回されている。すなわち、これら導体部材Cn、軟磁性体部材Maおよび絶縁材Inは、順次に重ね合わせて束ねられて渦巻き状に共巻きされている。
【0110】
第1実施形態では、このような導体部材Cn、軟磁性体部材Maおよび絶縁材Inを順次に積層されるように共に巻き回した2個のコイルを、軸方向に積層することによって、第1実施形態の第1および第2サブコイル11、12における変形形態の各コイルが構成される。第2実施形態では、このような導体部材Cn、軟磁性体部材Maおよび絶縁材Inを順次に積層されるように共に巻き回した2個のコイルを、径方向に積層することによって、第2実施形態の第1および第2サブコイル61、62における変形形態の各コイルが構成される。そして、第3実施形態では、このような導体部材Cn、軟磁性体部材Maおよび絶縁材Inを順次に積層した4組の部材を、さらに順次に積層して巻き回すことによって、第3実施形態の第1および第2サブコイル71、72における変形形態の各コイルが構成される。第4実施形態における第1および第2サブコイル81、82、ならびに、第5実施形態における1次コイル91および2次コイル92も同様である。
【0111】
例えば、帯状の長尺な銅のテープに、同様な帯状の長尺な鉄のテープおよび同様な帯状の長尺な絶縁材のテープを重ねることによって、軟磁性体部材Maは、導体部材Cnの一方側面に配置されてよい。また例えば、軟磁性体部材Maは、導体部材Cnに例えばメッキ(電解メッキ等)や蒸着等によって被覆形成されることによって、導体部材Cnの一方側面に配置されてもよい。例えば、銅のテープに鉄がメッキされる。また例えば、軟磁性体部材Maは、熱圧着等によって圧着形成されることによって、導体部材Cnの一方側面に配置されてもよい。例えば、銅のテープと鉄のテーブとを重ね合わせ、加熱しながら荷重を加えることによって、銅と鉄とを圧着したテープが形成される。これら例において、前記銅は、導体部材Cnの一例であり、前記鉄は、軟磁性体部材Maの一例である。これら一方側面に鉄の層(薄膜)を形成した銅テープでは、銅の導電率が鉄の導電率よりも約一桁程度大きいので、電流は、主に銅部分に流れる。なお、上述では、軟磁性体部材Maは、導体部材Cnの一方側面に直接的に配置されたが、絶縁材を介して導体部材Cnの一方側面に間接的に配置されてもよい。
【0112】
軟磁性体部材Maの厚さ(前記軸方向と直交する方向における軟磁性体部材Maの厚さ)は、コイルCoに給電される交流電力の周波数における表皮厚みδ以下であることが好ましい。このように構成することによって、渦電流損の発生を低減することができる。
【0113】
また、導体部材Cnの幅(軸方向の長さ)と軟磁性体部材Maの幅(軸方向の長さ)とは、同一であってもよく(一致してもよく)、また異なってもよい。好ましくは、軟磁性体部材Maの両端部を磁気結合部材2(21、22)に当接させるべく、軟磁性体部材Maの幅は、導体部材Cnの幅よりも長い。
【0114】
第1ないし第5実施形態において、そのインダクタンスをより大きくしようとすると、複数のコイル1、6、7、8、9の巻き数(ターン数)を大きくする必要があり、より多くの導体部材が必要となるとともに装置が大型化してしまう。しかしながら、本変形形態の前記構成を採用することによって、導体部材の増大および装置の大型化を抑制することができる。例えば、銅テープでコイルを形成する場合には、比較的安価な純鉄系材を用いるだけで、そのインダクタンスを大きくすることができる。そして、複数のコイル1、6、7、8、9の部分に、本変形形態では、軟磁性体部材Maを設けるので、磁束線は、複数のコイル1、6、7、8、9の部分にも分散する。このため、磁束密度が低下するので、純鉄系材に固有なヒステリシス損の増大が効果的に抑制され、低損失化を図ることができる。このため、インダクタンスが大きく、低損失の変圧器が提供される。
【0115】
なお、この変形形態において、磁気結合部材をその芯部に備える有芯コイルとする場合には、前記磁気結合部材は、軟磁性体部材を備えるコイル部分の平均透磁率と等価な透磁率であることが好ましい。このような透磁率を持つ磁気結合部材は、例えば、上述の軟磁性体粉末で圧粉形成される。このような前記磁気結合部材をその芯部に備えることによって、有芯コイルとする場合でも、磁束線の複数のコイル1、6、7、8、9の部分への分散を維持することができ、純鉄系材に固有なヒステリシス損の増大に対する抑制効果も維持することができる。
【0116】
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
【符号の説明】
【0117】
Tra、Trb、Trc、Trd 3相変圧器
Co コイル
1、6、7、8、9 コイル
2(21、22) 磁性部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコイルと、
前記複数のコイルにおける軸方向の両端にそれぞれ配置される一対の磁性部材とを備え、
前記複数のコイルのそれぞれは、絶縁材を挟んで重ね合わせた帯状の複数の導体部材を巻回することによって構成される複数のサブコイルを備えること
を特徴とする多相変圧器。
【請求項2】
前記磁性部材は、軟磁性粉末を形成したものであること
を特徴とする請求項1に記載の多相変圧器。
【請求項3】
前記磁性部材は、帯状の軟磁性部材を、該軟磁性部材の幅方向が前記複数のコイルにおける軸方向に沿うように、巻回することによって構成されること
を特徴とする請求項1に記載の多相変圧器。
【請求項4】
前記巻き回された軟磁性部材間には、絶縁層をさらに備えること
を特徴とする請求項3に記載の多相変圧器。
【請求項5】
前記複数のサブコイルのそれぞれは、帯状の導体部材を、該導体部材の幅方向が当該コイルの軸方向に沿うように、巻回することによって構成されること
を特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の多相変圧器。
【請求項6】
前記導体部材は、前記軸方向と直交する一方側面に配置された軟磁性体部材をさらに備えていること
を特徴とする請求項5に記載の多相変圧器。
【請求項7】
前記軸方向と直交する方向における前記軟磁性体部材の厚さは、当該多相変圧器に給電される交流電力の周波数における表皮厚み以下であること
を特徴とする請求項6に記載の多相変圧器。
【請求項8】
前記導体部材は、前記軟磁性体部材が被覆形成されていること
を特徴とする請求項6また請求項7に記載の多相変圧器。
【請求項9】
前記導体部材は、前記軟磁性体部材が圧着形成されていること
を特徴とする請求項6また請求項7に記載の多相変圧器。
【請求項10】
前記複数のサブコイルは、当該コイルの軸方向に積層されていること
を特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の多相変圧器。
【請求項11】
前記複数のサブコイルは、当該コイルの径方向に積層されていること
を特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の多相変圧器。
【請求項12】
前記複数の導体部材は、1以上の整数であって互いに異なる数をm、nとする場合に、(m+n)個であり、
前記m個の導体部材は、前記mが2以上の場合には直列に接続され、
前記n個の導体部材は、前記nが2以上の場合には直列に接続されていること
を特徴とする請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載の多相変圧器。
【請求項13】
前記m個の導体部材の厚さ:前記n個の導体部材の厚さ=n:mであること
を特徴とする請求項12に記載の多相変圧器。
【請求項14】
前記複数のコイルは、当該複数のコイルの各軸方向が互いに平行となるように同一平面上に並設されていること
を特徴とする請求項1ないし請求項13のいずれか1項に記載の多相変圧器。
【請求項15】
前記複数のコイルと前記磁性部材との間に生じる間隙に充填される熱伝達部材をさらに備えること
を特徴とする請求項1ないし請求項14のいずれか1項に記載の多相変圧器。
【請求項16】
前記導体部材の厚さは、当該多相変圧器に給電される交流電力における周波数に対する表皮厚みの1/3以下であること
を特徴とする請求項1ないし請求項15のいずれか1項に記載の多相変圧器。
【請求項17】
直列に接続された複数の変圧器を備える変圧システムであって、
前記複数の変圧器のうちの少なくとも1つは、請求項1ないし請求項16のいずれか1項に記載の多相変圧器であること
を特徴とする変圧システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−60194(P2012−60194A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−283617(P2011−283617)
【出願日】平成23年12月26日(2011.12.26)
【分割の表示】特願2010−263745(P2010−263745)の分割
【原出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】