説明

多眼式撮像装置、撮像方法およびプログラム

【課題】多眼方式の撮像装置において、高速に精度良くフォーカス位置を決定する。
【解決手段】複数の撮像部を備える多眼式撮像装置であって、撮像部が備えるフォーカスレンズを駆動させる駆動範囲を、撮像部の間で重複しないように設定する設定手段と、設定された駆動範囲内でフォーカスレンズの位置を変更しながら撮像部それぞれによって撮像された各画像についてフォーカスの程度を評価する評価手段と、各画像について得られるフォーカスの程度に基づいて最適なフォーカスレンズの位置を決定する決定手段とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多眼方式の撮像装置において、被写体へ高速にピント位置を調整するオートフォーカス機能を備える多眼式カメラシステム用の多眼式撮像装置、撮像方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
オートフォーカス(以下、AF)とは、カメラのピント位置に係る調整を、ユーザが操作設定することなく自動化して実行する機能である。このAFを実現する方式にはいくつかの方式があり、そのうちコントラスト検出型と呼ばれる方式は、カメラの小型化が容易である事から多くのコンパクトカメラに採用されている。ここで、コントラスト検出型とは、イメージセンサー上で被写体の画像のコントラストが最も高くなるレンズ位置を合焦状態とする方式である。
【0003】
この方式の課題は、合焦画像を検出するまでの時間が、比較的長いという点にある。その結果、この方式では、高速に移動する被写体にピントを合わせる事が困難になる。つまり、ピントを合わせている間に、被写体がフレームアウトして撮影できないことが起こりうる。
【0004】
そこで、多眼方式の撮像装置において、各撮像部のピント位置を予めずらして撮影し、撮影した複数の画像から最もピントの合っている画像を最終画像とする方式が発明されている(特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−216600号公報
【特許文献2】特開2005−109622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2で提案されている方式には、正確なピント位置を定める事ができない、或いは必要な撮像部の数が増えるという課題がある。なぜなら、この方式で選択可能なピント位置は、予めずらしたピント位置のみだからである。例えば、撮像部の数が3つなら、ピント位置は3つのみ選択可能であるが、被写体が予め設定されたピント位置に存在する場合もあれば、そうでない場合もあり、3つのいずれも最終画像として適さないことも在りうる。
【0007】
そこで、本発明は、多眼方式の撮像装置において、高速に精度良くピント位置を決定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
複数の撮像部を備える多眼式撮像装置であって、前記撮像部が備えるフォーカスレンズを駆動させる駆動範囲を、前記撮像部の間で重複しないように設定する設定手段と、設定された駆動範囲内でフォーカスレンズの位置を変更しながら前記撮像部それぞれによって撮像された各画像についてフォーカスの程度を評価する評価手段と、前記各画像について得られるフォーカスの程度に基づいて最適なフォーカスレンズの位置を決定する決定手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る多眼式撮像装置および撮像方法によれば、高速で精度の高い合焦点画像を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】複数の撮像部を備えた多眼式撮像装置の一例を示した図である。
【図2】多眼式撮像装置の内部構成を示すブロック図である。
【図3】撮像部の内部構成を示す図である。
【図4】多眼式撮像装置におけるAFの動作を説明するための図である。
【図5】実施形態1の最大コントラスト値検出の概念を示す図である。
【図6】実施形態1におけるAF処理により決定されるフォーカス位置の概念を説明するための図である。
【図7】実施形態1における、撮像部制御部208の構成を示す図である。
【図8】実施形態1における、カメラ情報読み込み部500の構成を示す図である。
【図9】実施形態1における、フォーカス位置探索範囲決定部501の構成を示す図である。
【図10】実施形態1のAF処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図11】実施形態1のカメラパラメータを取得する処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図12】実施形態1のフォーカス位置探索範囲決定処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図13】実施形態1における画像処理部212の構成を示す図である。
【図14】実施形態2における撮像部制御部208の構成を示す図である。
【図15】実施形態1のフォーカスレンズの稼動範囲を概念的に示す図である。
【図16】実施形態2のフォーカスレンズの稼動範囲を概念的に示す図である。
【図17】実施形態2の探索範囲算出処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図18】実施形態2においてさらに処理を高速化するための内容を説明するための図である。
【図19】実施形態2においてさらに処理を高速化するための内容を説明するための図である。
【図20】実施形態2の追加形態でAF測距するエリアを説明するための図である。
【図21】実施形態3のフォーカスレンズの稼動範囲を概念的に示す図である。
【図22】実施形態3における画像処理部2200の構成を示す図である。
【図23】実施形態3における画像処理部の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態1)
図1は、本発明に係る複数の撮像部を備えた多眼方式による多眼式撮像装置の一例を示した図である。
【0012】
100は、多眼式撮像装置の筐体である。筐体の内部に、カラー画像を取得することが可能な9個の撮像部101〜109、及び撮影ボタン110が設けられている。なお、9個の撮像部101〜109は、正方格子上に均等に配置されている。
【0013】
ユーザが撮影ボタン110を押下すると、撮像部101〜109が被写体の光情報をセンサ(撮像素子)で受光し、受光した信号がA/D変換されて、複数のカラー画像(デジタルデータ)が同時に取得される。
【0014】
このような多眼式撮像装置により、同一の被写体を複数の視点位置から撮像したカラー画像群を得ることができる。
【0015】
なお、ここでは撮像部の数を9個として例示しているが、撮像部の数は9個に限定されない。多眼式撮像装置が複数の撮像部を備えていれば、本発明は適用可能である。
【0016】
また、ここでは9個の撮像部が正方格子上に均等に配置される例について説明したが、撮像部の配置は任意である。例えば、放射状や直線状に配置してもよいし、まったくランダムに配置してもよい。
【0017】
図2は、多眼式撮像装置100の内部構成を示すブロック図である。
【0018】
201は中央処理装置(CPU)であり、以下に述べる各部を統括的に制御する。
【0019】
202はRAMであり、CPU201の主メモリ、ワークエリア等として機能する。
【0020】
203はROMであり、カメラパラメータ(画角やカメラモード)、CPU201で実行される制御プラグラム等を格納している。
【0021】
204は各種データの転送経路となるバスである。例えば、撮像部101〜109によって取得されたデジタルデータはこのバス204を介して所定の処理部に送られる。
【0022】
205はユーザの指示を受け取る操作部であり、ボタンやモードダイヤルなどが含まれる。
【0023】
206は撮影画像や文字の表示を行う表示部であり、例えば、液晶ディスプレイが用いられる。表示部206はタッチスクリーン機能を有していても良く、その場合はタッチスクリーンを用いたユーザ指示を操作部205の入力として扱うことも可能である。
【0024】
207は表示制御部207であり、表示部206に表示される撮影画像や文字の表示制御を行う。
【0025】
208は撮像部制御部であり、フォーカスを合わせる、シャッターを開く・閉じる、絞りを調節するなどの、CPU201からの指示に基づいた撮像系の制御を行う。撮像部制御部のAFに関する処理の詳細については後述する。
【0026】
209はデジタル信号処理部であり、バス204を介して受け取ったデジタルデータに対し、ホワイトバランス処理、ガンマ処理、ノイズ低減処理などの各種処理を行う。
【0027】
210はエンコーダ部であり、デジタルデータをJPEGやMPEGなどのファイルフォーマットに変換する処理を行う。
【0028】
211は外部メモリ制御部であり、PCやその他のメディア(例えば、ハードディスク、メモリーカード、CFカード、SDカード、USBメモリ)に繋ぐためのインターフェースである。
【0029】
212は画像処理部であり、撮像部101〜109で取得されたカラー画像群或いは、デジタル信号処理部209から出力されるカラー画像群から、ぶれのない画像を選び出し出力する処理を行う。画像処理部212の詳細については後述する。
【0030】
なお、多眼式撮像装置の構成要素は上記以外にも存在するが、本件発明の主眼ではないので、説明を省略する。
【0031】
図3は、撮像部101〜109の内部構成を示す図である。なお、撮像部101〜109の内部構成はそれぞれ同一である。
【0032】
撮像部101〜109は、レンズ301〜303、絞り304、シャッター305、光学ローパスフィルタ306、iRカットフィルタ307、カラーフィルタ308、センサ309及びA/D変換部310で構成される。
【0033】
レンズ301〜303は夫々、ズームレンズ301、フォーカスレンズ302、ぶれ補正レンズ303である。センサ309は、例えばCMOSやCCDなどのセンサである。
【0034】
センサ309で被写体の光量を検知すると、検知された光量がA/D変換部310によってデジタル値に変換され、デジタルデータとなってバス204に出力される。
【0035】
<発明の原理>
次に、図4を用いて、多眼式撮像装置におけるAFの動作を説明する。図4(a)は、通常のカメラモジュールにおいて多眼式のコントラスト検出方式に係るAFの動作を説明するための図である。なお、ここでは、3眼式の多眼カメラを例に挙げるが、撮像部の数が2個以上ならいくつでも良い。このカメラシステムは、撮像部が持つフォーカスレンズの可動可能な全範囲について、ピント位置を決定するためのコントラスト算出を行う。つまり、撮像部101、102、103は独立して最短被写体距離から遠方までコントラスト算出を順次行い、コントラストが最大となる被写体距離をフォーカス位置と決定する。よって、コントラスト計算におけるコストがほぼゼロと仮定した場合、AFに必要な時間は、フォーカスレンズが最短被写体距離から最遠方まで移動するのに要した時間となる。
【0036】
図4(b)は、本発明に係る多眼式撮像装置におけるAFの動作を説明するための図である。この場合、撮像部101についてのコントラスト測定は区間Aを、撮像部102についてのコントラスト測定は区間Bを、撮像部103についてのコントラスト測定は区間Cに設定されている。このように、各区間は重複しないように設定される。各撮像部のフォーカスレンズは、設定された区間において駆動される。そして、測定が終了し、それぞれの区間の最大コントラストの中で最大値(図5に示すピーク)に対応する被写体距離がフォーカス位置として決定される。例えば、図6に示すように、三つの縦線で示す位置が最終的なフォーカス位置として決定される。すなわち、各撮像装置は、設定された駆動範囲内でフォーカスレンズを駆動して画像を撮像する。そして、撮像された各画像についてフォーカスの程度を示すコントラスト値を算出して評価することにより、最適なフォーカス位置を決定する。
【0037】
図4(b)に示す区間A,B,Cがそれぞれ等距離であり、各撮像部が持つフォーカスレンズの移動速度が等しいと仮定すると、AFに必要な時間は、撮像部101,102,103のフォーカスレンズが区間A,B,Cを移動する時間に等しい。つまり、本発明におけるAFに必要な時間は、図4(a)に示す従来の方式よりも1/3にすることができる。これは、多眼カメラの台数に応じてさらに短くすることができる。
【0038】
説明した発明の原理に関係する処理部は撮像部制御部208と、画像処理部212である。そこで、以下ではこれら2つの処理内容について説明する。
【0039】
<撮像部制御部208の構成>
図7は、撮像部制御部208の構成の中で、本発明の原理に関わりのある処理部のみを記載しており、撮像部制御部208は、カメラ情報読込部500と、フォーカス位置探索範囲決定部501とから構成される。
【0040】
カメラ情報読込部500は、カメラ本体の情報だけではなく、各撮像部の情報を読み込む。尚、カメラ情報読込部500の詳細については後述する。
【0041】
フォーカス位置探索範囲決定部501は、各撮像部のフォーカス位置探索処理開始位置Siと終了位置Eiを設定する。SiとEi、及びフォーカス位置探索範囲決定部501の詳細については後述する。なお、SiとEiの範囲がフォーカスレンズの駆動範囲となる。
【0042】
また、本実施例では、撮像部のカメラ特性は同一であるものとし、フォーカスレンズの可動範囲は9mmとする。また、以下では、説明を簡単にする為、撮像部の数Nを3つとするが、撮像部の数によらず構成は同じである。
【0043】
<画像処理部212の構成図>
図13に示すように、画像処理部212は、第一コントラストAF部1300と、第二コントラストAF部1301、第三コントラストAF部1302、最大値検出部1303、フォーカス位置決定部1304で構成されている。
【0044】
第一コントラストAF部1300、第二コントラストAF部1301、第三コントラストAF部1302は、撮像部101,102,103から出力される各画像に対し、コントラスト値を算出する。そして、最大となるコントラスト値を出力する。コントラストAF方式は、撮像素子からの信号に基づいて生成された映像信号の中から高周波成分を抽出する。そして、この高周波成分のレベルを所定のサンプリング間隔で観察して、高周波成分のレベルがピークに向かう方向に焦点調節レンズを駆動する方式(以下、コントラストAF(オートフォーカス)方式)である。このことによって、最終的に高周波成分のレベルが所定のピーク範囲に到達することをもって合焦と判定するものである。
【0045】
最大値検出部1303は、各コントラストAF部1300,1301,1302から出力される最大コントラストの中から更に最大値を検出する。
【0046】
フォーカス位置決定部1304は、1303が出力するコントラスト値に対応するフォーカスレンズの位置を決定する。
【0047】
次に、図10に示すフローチャートを参照して、撮像部制御部208と画像処理部212によって行なわれる本発明に係るフォーカス位置を決定するためのAF処理の詳細を説明する。
【0048】
AF処理が始まると、まず、ステップ1001において、カメラ情報読込部500は、ROMに格納されているカメラパラメータPを読み込む。
【0049】
次に、ステップ1002において、得られたカメラパラメータPを基に、フォーカス位置探索範囲決定部501は、各撮像部(個眼)のAF開始位置Si,i=0,1,2と、終了位置Ei,i=0,1,2を決定する。なお、i=0,1,2は、撮像部101,102,103に対応する。
【0050】
次に、ステップ1003では、各撮像部のフォーカスレンズが開始位置Siから、終了位置Eiまで移動する。その際、フォーカスレンズは、カメラモジュールで規定されている最低移動量M=0.001[mm]ずつ移動する。なお、1回の移動ごとに、撮影された画像から、第一コントラストAF部1300、第二コントラストAF部1301、及び第三コントラストAF部1302は、コントラスト検出型AFに基づいて最大コントラスト値Ci,i=0,1,2を計測する。さらに、それら最大コントラスト値Ci,i=0,1,2を計測した時の、フォーカスレンズの位置fiを記録する。
【0051】
最後に、ステップ1004において、各撮像部について得られる最大コントラスト値Ciのうち、最大となる最大値Cmを特定し、Cmに対応するフォーカスレンズの位置をfiの中から抽出する。以上のAF処理により、最終的なフォーカス位置を決定する。
【0052】
<カメラ情報読み込み処理>
カメラ情報読込部500は、図8に示すように、カメラ台数取得部600と、フォーカスレンズ可動範囲取得部601とから構成される。
【0053】
カメラ台数取得部600は、撮像部の数を取得する。
【0054】
フォーカスレンズ可動範囲取得部601は、各撮像部のフォーカスレンズが移動できる範囲を取得する。
【0055】
図11のフローチャートは、図10のステップ1001の詳細を示している。このフローチャートを参照して、カメラ情報読み込み部500によるカメラパラメータPの取得処理の詳細を説明する。
【0056】
まず、ステップ1101において、カメラ台数取得部600は、カメラ台数N=3[台]を取得する。
【0057】
次に、ステップ1102において、フォーカスレンズ可動範囲取得部601は、フォーカスレンズの可動範囲d=9[mm]を取得する。なお、フォーカスレンズの稼動範囲dを概念的に示したのが図15である。
【0058】
このように、カメラパラメータを取得して処理が終了する。
【0059】
<フォーカス位置探索範囲決定処理>
フォーカス位置探索範囲決定部501は、図9に示すようにフォーカスレンズ移動距離算出部700と、撮像部フォーカス探索範囲決定部701とから構成される。
【0060】
フォーカスレンズ移動距離算出部700は、各撮像部がどのような範囲に対してコントラスト値算出処理を行うかを決定する。撮像部フォーカス探索範囲決定部701は、各撮像部について、コントラスト値算出処理を実行する際に必要となる開始位置と終了位置とを決定する。
【0061】
図12のフローチャートは、図10のステップ1002の詳細を示している。このフローチャートを参照して、フォーカス位置探索範囲決定部501によるフォーカス位置探索範囲決定処理の詳細を説明する。
【0062】
ステップ1201において、フォーカスレンズ移動距離算出部700は、可動範囲dを撮像部の数Nで分割することにより、各個のAF測距範囲Dを決定する(式1)。このDは、図4(b)に示す撮像部101,102,103のAF対象区間A,B,Cに対応する。
【0063】
【数1】

【0064】
次に、ステップ1202では、撮像部フォーカス探索範囲決定部701が、図4(b)に示す撮像部101,102,103に対応する矢印の起点Si(i=0,1,2)を以下の式2に基づいて決定する。i=0,1,2は、それぞれ撮像部101,102,103の起点に対応している。
【0065】
【数2】

【0066】
aは初期値を調整するパラメータであり、今回は0が入る。各個のAFの測定は、それぞれSiから開始されて、Dだけ移動して、コントラスト値算出処理は終了する。なお、フォーカスレンズの制御モータなどの制限上、厳密にDだけ移動する事は難しい場合がある為、式3の様に精度を考慮した設定にすることもできる。
【0067】
【数3】

【0068】
以上のように処理して、フォーカス位置探索範囲決定部501は、開始位置と、終了位置とを決定する。
【0069】
以上、実施形態による説明の通り、本発明は、各撮像部におけるフォーカスレンズの移動範囲を限定することによりAFに係る処理の時間を短縮することができる。
【0070】
(実施形態2)
まず、図14と図16を利用して、本発明の実施形態2に係る動作原理について説明する。
【0071】
<動作原理>
実施形態1では、フォーカスレンズの可動範囲全てに対してコントラスト値算出処理を行っている。フォーカス処理にかかる時間は、レンズが可動範囲全てを走査する時間であるため、実施形態1では、可動範囲を分割して限定する事により、AF処理の高速化を実現している。これに対し実施形態2では、フォーカスレンズの可動範囲の一部だけを走査する事で、さらに高速化するものである。
【0072】
なお、レンズの可動範囲の一部とは、カメラモードに応じて設定されるものである。例えば、図16(a)は、遠方にある山や木の撮影を想定して設定された各撮像部のAF測距範囲を示している。実施形態1では、図16に示すdをフォーカス可能な範囲として全てカバーするように各撮像部のAF範囲を設定している。しかし、実施形態2では、被写体が遠方にある事を前提としているので、AF測距範囲が遠方のみをカバーするように処理する。例えば、図16(b)は、人物写真など、被写体が比較的近距離に存在する場合を想定している為、AF測距範囲は、中距離の範囲内のみをカバーしている。また、図16(c)は、マクロ撮影を想定しており、AF測距範囲は、撮像装置からごく近距離のみをカバーしている。つまり、カメラモードが風景の時、AF測距範囲は、図16(a)のようになり、人物の時、図16(b)、マクロの時、図16(c)となる。
【0073】
なお、実施形態2は、実施形態1と比較して撮像部制御部208の構成だけが異なる。よって、以下では、実施形態2における撮像部制御部1200の構成のみを説明する。
【0074】
<撮像部制御部208の構成>
図14は、実施形態2に係る撮像部制御部208の構成を示している。撮像部制御部208は、モード切替部1400と、カメラ情報読込部500と、フォーカス位置探索範囲決定部501から構成されている。
【0075】
モード切替部1400は、ユーザ或いは、CPUにより決定されるカメラモードに応じて、式1及び式2に示すa,dの値を変更する。なお、カメラ情報読込部500と、フォーカス位置探索範囲決定部501は実施形態1と同じ動作をする。
【0076】
次に、図17のフローチャートを参照して、フォーカス位置探索範囲決定部501の動作の詳細を説明する。
【0077】
探索範囲算出処理がスタートすると、まず、S1701で、カメラモード(mode)を取得する。例えば、カメラモードが風景の場合はmode=0、人物の場合はmode=1、マクロの場合はmode=2のように設定されており、現在設定されているモードに応じた、モードを識別するための数値を取得する。
【0078】
次に、S1702で、取得したmodeの値を判別する。modeの値に応じて、処理がS1703、S1704、S1705に進む。
【0079】
取得したmodeが0の場合、S1703で、a=6*90/9=60、d=3×90/9に設定する。
【0080】
取得したmodeが1の場合、S1704で、a=2*90/9、d=3×90/9に設定する。
【0081】
取得したmodeが2の場合、S1705で、a=0、d=90/9に設定する。
【0082】
以上の処理手順に従ってa、dの値が設定されると、探索範囲算出処理が終了する。
【0083】
尚、本実施形態では、奥行き方向(レンズから被写体の方向)のAF測距範囲を分割しているが、水平・垂直方向を撮像部の画角や設置場所に応じて分割するようにしても構わない。
【0084】
ここで、図18は、画角が異なる二つの撮像部で構成された二眼式の多眼カメラを上から見下ろした模式図である。この多眼カメラは、各撮像部で撮影した画像を重ね合わせることにより高画質化する。よって、最終的にユーザが取得する高画質画像は、図18に示す太線で囲まれた、両方の撮像部に投影した被写体のみが存在する事になる。ここで、撮像部101に着目すると、被写体は画角の右半分のみに存在する。つまり、画角の左半分にはAF処理を施す必要はない。図19は、図18に対応したプレビュー画面内のAF測距範囲を表している。撮像部101は、図19(a)のプレビュー画面に、撮像部102は、図19(b)に対応している。図19において、実線で示す矩形はAF測距領域を表し、破線で示す矩形はAF測距しない領域である。図19に示す通り、撮像部102は、画面全体でAFを行い、撮像部101では、右側だけでAF測距する。このように、撮像部の画角に応じて、被写体が存在しない領域に対してはAF処理を省いて、AFの速度を向上させることが可能になる。
【0085】
より具体的な例について、図20を参照して説明する。
【0086】
θ1=60°、とθ2=20°とはそれぞれ、撮像部101、102の画角を表している。l=10mmは、カメラ間の基線長を表し、h1は、AF測距の不必要な領域の範囲を示し、h2は被写体が存在する為、AF測距が必要となる領域の範囲を示す。カメラモードが人物に設定されており、距離d=5000mm以内に被写体が存在する場合、h1とh2の比率は式4のようになる。
【0087】
【数4】

【0088】
よって、このモードでは、図19を画面全体の10/(10+7)に相当するh1の範囲についてAF測距されない。
【0089】
(実施形態3)
まず、図21を用いて、実施形態3に係る発明の動作原理について説明する。なお、図21は、実施形態3に係るAF処理において、各撮像部のフォーカスレンズを移動させる範囲を概念的に表した図である。
【0090】
<発明の原理>
実施形態1では、各撮像部がAF測距範囲を分担した。その際に実施されるAF処理において、フォーカスレンズはカメラモジュールで規定されている最小移動量ずつ移動している。一方、本実施形態では、図21(a)に示すように、まず、各AF測距範囲を3回だけコントラスト値を算出する。つまり、荒くコントラストAFする。次に、図21(b)に示すように、最もコントラスト値が大きかった区間を3分割して、それぞれ3回AF測距する。この動作を繰り返し、最終的に図21(c)に示すようにフォーカス位置を決定する。
【0091】
<画像処理部2200の構成>
次に、本実施形態において特徴となる画像処理部2200の構成を説明する。
【0092】
図22に示すように、画像処理部2200は、画像処理部2202,2203と、パラメータ変更部2201と、で構成されている。なお、画像処理部2200は、図2に示す画像処理部212である。パラメータ変更部2201は、パラメータsi、ei、Mを変更する。
【0093】
次に、画像処理部2200の動作を図23のフローチャートを参照して詳細に説明する。
【0094】
まず、画像処理が開始すると、ステップ2301で、フォーカスレンズの最小動き量Mを0.1[mm]に設定する。なお、フォーカスレンズは最小で0.01[mm]ずつ移動可能である。
【0095】
次に、ステップ2302で、画像処理部212と同じ画像処理を行う。つまり、最小動き量Mが0.1[mm]に設定されていることにより、図21(a)に示すように、荒いコントラストAF処理が実行される。
【0096】
次に、ステップ2303で、si、ei、Mの値を変更する。具体的には、ステップ2302で得られた各撮像部の最大コントラスト値を算出した区間、例えばk2(図21(a))で最大コントラスト値を検出すれば、si及びeiは、k2区間内に図21(b)のように再設定される。そして、Mは0.01[mm]に設定される。
【0097】
次に、ステップ2304では、再設定されたsi、ei、Mに応じて画像処理部212と同じ動作をする。その結果、図21(c)に示すように最終的なフォーカス位置が決定される。本実施例では、AFを二回に分けてピント位置を追い込んだが、フォーカスレンズの可動域が長い場合は、当該動作を所定の回数繰り返すようにしてAF処理を行い、ピント位置を追い込んでも良い。
【0098】
(その他の実施形態)
また、本発明の目的は、以下の処理を実行することによっても達成される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体を、システム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出す処理である。この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施の形態の機能を実現することになり、そのプログラムコード及び該プログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の撮像部を備える多眼式撮像装置であって、
前記撮像部が備えるフォーカスレンズを駆動させる駆動範囲を、前記撮像部の間で重複しないように設定する設定手段と、
設定された駆動範囲内でフォーカスレンズの位置を変更しながら前記撮像部それぞれによって撮像された各画像についてフォーカスの程度を評価する評価手段と、
前記各画像について得られるフォーカスの程度に基づいて最適なフォーカスレンズの位置を決定する決定手段と
を備えることを特徴とする多眼式撮像装置。
【請求項2】
前記設定手段は、撮影のモードに応じて、前記撮像部のフォーカスレンズの駆動範囲を設定することを特徴とする請求項1に記載の多眼式撮像装置。
【請求項3】
前記設定手段は、撮像された各画像のうち、フォーカスの程度が最も高い画像が撮像されたフォーカスレンズの位置に対応する駆動範囲を前記撮像部の数に応じて分割した新たな駆動範囲を算出して各前記撮像部に対し設定し、
前記評価手段は、新たな駆動範囲内でフォーカスレンズの位置を変更しながら前記撮像部それぞれによって撮像された各画像についてフォーカスの程度をさらに評価し、
前記決定手段は、前記設定手段による設定と、前記評価手段による評価とを所定の回数繰り返すことにより、狭められた駆動範囲内におけるフォーカスの程度に基づいて最適なフォーカスレンズの位置を決定する
ことを特徴とする請求項1に記載の多眼式撮像装置。
【請求項4】
複数の撮像部を備える多眼式撮像装置における撮像方法であって、
前記撮像部が備えるフォーカスレンズを駆動させる駆動範囲を、前記撮像部の間で重複しないように設定する設定ステップと、
設定された駆動範囲内でフォーカスレンズの位置を変更しながら前記撮像部それぞれによって撮像された各画像についてフォーカスの程度を評価する評価ステップと、
前記各画像について得られるフォーカスの程度に基づいて最適なフォーカスレンズの位置を決定する決定ステップと
を備えることを特徴とする撮像方法。
【請求項5】
請求項4に記載の撮像方法を多眼式撮像装置に実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2013−30962(P2013−30962A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165321(P2011−165321)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】