説明

多糖類の製造方法

【課題】多糖類の加水分解を抑制でき、長期保存に適した多糖類の製造方法を提供すること。
【解決手段】
(1)多糖類を産生する微生物を培養することにより、多糖類を製造する工程、及び(2)培養終了後に、培養液と培養槽の気相部とをそれぞれ熱処理する工程を含む多糖類の製造方法。
本発明によれば、培養槽内で培養液と気相部を同時に熱処理することにより多糖類の加水分解を抑制でき、長期保存に適した多糖類を製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多糖類の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
乳酸菌は菌の体外に多糖類を生産することが知られており、菌の種類によって多種多様な多糖類を生産する。このような多糖類は、様々な物理化学的性質や生理機能を有していることから、食品、化粧品、医療等幅広い用途で用いられており、生産性を上げるための研究が盛んになされている。なかでも、ヒアルロン酸は、医療用途(例えば、関節炎治療剤等)、化粧品用途(例えば、保湿剤等)、食品用途等、幅広く使用され、使用目的によって様々な平均分子量のものが求められている。
ヒアルロン酸は、一定の品質の製品が容易に得られることから、多くの場合、醗酵法によって製造されている。醗酵法によってヒアルロン酸を製造する場合には、薬剤等を用いて使用する微生物が本来有するヒアルロン酸分解酵素(ヒアルロニダーゼ)を発現し難いようにした変異株を培養することにより、平均分子量の大きいヒアルロン酸を取得することができる(特許文献1〜3参照)。
また、分子量低下を抑制して高分子量の製品を得る方法としては、培養液から速やかに菌体を除去する方法、例えば、培養液を希釈して濾過により菌体を除去する方法(特許文献4参照)、培養液を10℃以下に冷却し、遠心分離により菌体を除去する方法(特許文献5参照)が知られている。
しかしながら、上記方法は、大量の培養液を速やかに処理することができる精製設備を保有している場合は可能であるが、醗酵設備に対して精製設備の能力が劣る場合には、分割して精製を強いられるので培養液を長期保存せざるを得ない。この場合、微生物の作用により、保存中に分子量低下を招き、安定的に高分子量のヒアルロン酸を得ることができない。
このような現象に対して、培養液を熱処理することにより微生物を死滅化して分子量低下を抑制する方法も知られている。例えば、醗酵液のpHを5.0に調整し、次いで90℃の温度で20分間加熱する方法(特許文献6参照)が知られている。
しかしながら、当該方法では、熱処理温度が高いために熱処理中にヒアルロン酸の加水分解が起こり、平均分子量の著しい低下を招いてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平04−6356号公報
【特許文献2】特公平04−43637号公報
【特許文献3】特許第2547965号公報
【特許文献4】特開平1−67196号公報
【特許文献5】特許第3632197号公報
【特許文献6】特許第2571908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明の主な目的は、多糖類の加水分解を抑制でき、長期保存に適した多糖類の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、乳酸菌の培養液を醗酵槽で熱処理する際、別途、醗酵槽の気相部も熱処理することにより上記課題を達成することを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、(1)多糖類を産生する微生物を培養することにより、多糖類を製造する工程、及び(2)培養終了後に、培養液と培養槽の気相部とをそれぞれ熱処理する工程を含む、多糖類の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、多糖類の加水分解を抑制でき、長期保存に適した多糖類を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(1)乳酸菌及び乳酸菌由来の多糖類
本発明における乳酸菌とは、通常の培養により菌体外に多糖類を生産することができる乳酸菌のことである。当該乳酸菌は多糖生産能を有していれば種類は限定されない。例えば、Lactobacillus属に属する微生物、Lactococcus属に属する微生物、Leuconostoc属に属する微生物、Pediococcus属に属する微生物及びStreptococcus属に属する微生物等を挙げることができる。
乳酸菌の生産する乳酸菌由来の多糖類には、単一の糖からなるホモ多糖と、複数の単糖や単糖誘導体からなるヘテロ多糖がある。ホモ多糖には、グルコースからなるデキストラン、βグルカン、ムタン、アルテルナン;フルクトースからなるレバン、イヌリン;ガラクトースからなるガラクタン等が知られている。
デキストランを生産する乳酸菌としては、Lactobacillus hilgardii、Lactobacillus confusus、Lactobacillus viridescens、Leuconostoc mesenteriodes等、βグルカン生産乳酸菌としては、Pediococcus damnosus等、ムタン生産乳酸菌としては、Streptococcus mutan、Streptococcus sobrius等、アルテルナン生産菌としては、Leuconostoc mesenteriodes等、レバン生産乳酸菌としては、Streptococcus mutan、Streptococcus salivarius等、イヌリン生産乳酸菌としては、Streptococcus mutan等、ガラクタン生産乳酸菌としては、Lactococcus lactis等が挙げられる。
ヘテロ多糖は、単糖のグルコース、ガラクトース、ラムノース、フコース、糖誘導体であるN−アセチルグルコサミン、N−アセチルガラクトサミン、グルクロン酸などが少なくとも2種類以上で構成されるユニットが連なったものである。
代表的なヘテロ多糖としては、N−アセチルグルコサミンとグルクロン酸からなるヒアルロン酸、グルコースとガラクトースからなるケフィランが挙げられる。ヒアルロン酸生産乳酸菌としては、Streptococcus equi、Streptococcus zooepidemicus、Streptococcus pyogenes、Streptococcus uberis、Streptococcus thermophilus等、ケフィラン生産乳酸菌としては、Lactobacillus kefiranofaciens等が挙げられる。
ヘテロ多糖生産菌としては、Lactobacillus paracasei、Lactobacillus rhamnosus、Lactobacillus delbrue subsp.bulgaricus、Lactobacillus sakei、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus helveticus、Lactobacillus kefiranofaciens、Lactococcus lactis subsp.cremoris、Streptococcus thermophilus、Streptococcus macedonicus、Streptococcu equi、Streptococcus zooepidemicus、Streptococcus pyogenes、Streptococcus uberis等が挙げられる。
本明細書では、これらの多糖類のうち、代表してヒアルロン酸について述べる。
(2)ヒアルロン酸生産能を有する微生物
本発明では、ヒアルロン酸生産能を有する微生物としては、Streptococcus属に属する微生物が好ましい。ヒアルロン酸生産能を有するStreptococcus属に属する微生物は、一般に牛鼻腔粘膜、牛眼球に存在していることが知られている。本発明ではそこから単離された微生物を利用することもできる。また、Streptococcus属に属しない微生物でも、通常の遺伝子工学的手法を用いてヒアルロン酸生産能を得た微生物も使用することができる。
【0008】
Streptococcus属に属する微生物としては、例えば、Streptococcus zooepidemicus、Streptococcus equi、Streptococcus pyogens等が挙げられる。その中でも、Streptococcus zooepidemicusがより好ましい。
【0009】
さらに、Streptococcus属の属する微生物等のヒアルロン酸生産能を有する微生物を、紫外線、NTG(N−メチル−N´−ニトロ−N−ニトロソグアニジン)、メチルメタンスルホン酸等で処理することにより、ヒアルロニダーゼ非生産菌や非溶血性菌に改良することがより好ましい。人体または動物に悪影響を及ぼす可能性が低くなるからである。
【0010】
前記ヒアルロニダーゼ活性及び溶血性を欠損させた菌株としては、Streptococcus zooepidemicus NH−131(FERM P−7580)、Streptococcus zooepidemicus HA−116(ATCC39920)、Streptococcus zooepidemicus MK5(FERM P−21487)、Streptococcus zooepidemicus YTT2030(FERM BP−1305)が好ましく、その中でもStreptococcus zooepidemicus MK5(FERM P−21487)、Streptococcus zooepidemicus YTT2030(FERM BP−1305)が特に好ましい。
【0011】
これらのうち、FERM株については、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターより入手可能である。また、ATCC株については、American Type Culture Collectionから入手可能である。
(3)微生物の培養
培地は、上記微生物がヒアルロン酸を生産できる培地であれば限定されず、微生物の種類に応じた公知の培地を用いることができる。例えば、炭素源としてグルコース、フルクトース等の単糖類、乳糖、スクロース、マルトース等の二糖類、オリゴ糖類等;窒素源としてポリペプトン、酵母エキス等の有機窒素源;アルギニン、グルタミン酸、グルタミン等の遊離アミノ酸;ビタミン;無機塩類等;タンニン等のフェノール性水酸基を有するヒアルロニダーゼ阻害剤を含む(水に溶解した)培地を使用することができる。
【0012】
当該培地は、加熱処理(加熱殺菌)を行った後に、微生物の培養に用いることができる。微生物が完全に殺菌されれば、加熱条件は限定されない。例えば、100〜130℃で5〜30分間、より好ましくは121℃〜125℃で15〜30分間という条件を挙げることができる。また、一部若しくは全部の成分を精密濾過による非加熱滅菌することにより使用することができる。
微生物の培養は、上記のようにして得られた培地に植菌すればよい。植菌する際の微生物の濃度は限定されず、例えば0.1〜10(v/v)%、好ましくは0.2〜5(v/v)%、より好ましくは1(v/v)%程度とすればよい。
培養条件も限定されるものではないが、pHを約6〜8、好ましくはpHを約7〜7.5、温度を30〜40℃程度、より好ましくは33〜37℃程度に制御して、好気的に培養すればよい。このようにして、微生物を培養することにより微生物がヒアルロン酸を産生し、培地中にヒアルロン酸が蓄積される。また、培養時間も限定されず、培養液の量、所望のヒアルロン酸の量に応じて適宜選択することができる。
また、前記の培養(本培養)は、必要に応じて、前培養を行った後に行うこともできる。前培養の方法も限定されず、公知の方法で行えばよい。例えば、グルコース、フルクトース等の炭素源、ポリペプトン、酵母エキス、麦芽エキス等の窒素源、ビタミン、無機塩類を含む培地中で、pHを4〜8、温度を30〜37℃に制御して好気的に培養することが好ましい。
(4)熱処理
培養終了後、培養液と培養槽の気相部とに対してそれぞれ熱処理を行う。ここで、「気相部」とは培養槽(微生物を培養するタンク)において液体(培地等)が占める部分を除いた気体や水蒸気等が占める部分をいう。
通常、培養の規模が大きくない(小さな装置を用いた)場合には、培養装置中の培養液を加熱することにより気相部も同時に加熱することができる。しかしながら、培養の規模が大きい場合には、培養液を加熱しただけでは気相部が十分に加熱されなかったり、外気の影響を受けて気相部が均一に十分に加熱されなかったりする。一方で、気相部も十分に加熱しようとした場合、培養液を必要以上に高温で加熱する必要があるために、培養液を加熱しすぎるために得られた多糖類が分解されてしまう。
そこで、本発明では、培養液と培養槽の気相部とをそれぞれ(別々に)加熱処理することにより、培養液中の多糖類の分解を十分に抑制し、且つ、培養液と培養槽の気相部とを十分に熱処理することができるので、長期保存に適した多糖類を製造することができる。
本明細書において、培養液と培養槽の気相部とをそれぞれ加熱するとは、培養液と培養槽の気相部とを別々に加熱することを意味する。すなわち、発酵液を加熱することにより発生した熱で発酵槽の気相部が加熱されたり、発酵槽の気相部を加熱することによって発生した熱で発酵液が加熱されたりすることは除かれる。
培養液と気相部の加熱は同じ方法で行ってもよく、異なる方法で行ってもよい。また、これらの加熱は同時に始めてもよく、加熱開始時間が異なっていてもよい。
培養液の熱処理
培養終了後、培養液は、ジャケット付き培養槽を用いた場合にはジャケットにスチームを供給して加熱する。また、内部コイル付き培養槽を用いた場合には内部コイルにスチームを供給して培養液を加熱する。
熱処理温度は、微生物が死滅化し、且つ、ヒアルロン酸の分解が抑制される50〜70℃とすればよい。好ましくは55〜65℃である。当該熱処理温度を維持する時間は、1分から3時間、より好ましくは10分から1時間、さらに好ましくは20分から40分という条件を挙げることができる。
【0013】
熱処理終了後は、スチーム供給を停止し、ジャケット又は内部コイルに冷却水を供給し、且つ、スパージャーから空気を供給して培養液を室温まで冷却すればよい。自然冷却も可能であるが、この方法により培養液を早めに冷却することにより、培養液の腐敗などを抑制することができるので好ましい。
【0014】
気相部の熱処理
培養終了後、気相部は、気相部にスチームを供給できる配管、例えば、植菌用の配管から気相部にスチームを供給して加熱する。
【0015】
熱処理温度は、培養中に気相部内壁、攪拌軸、バッフル、植菌用配管等に飛散した培養液中で繁殖した微生物が死滅化し、且つ、培養液の温度が過剰に上昇しない50〜75℃とすればよい。好ましくは55〜70℃である。熱処理温度を維持する時間は、1分から3時間、より好ましくは10分から1時間、さらに好ましくは20分から40分という条件を挙げることができる。熱処理終了後は、スチーム供給を停止し、スパージャーから供給した空気により室温まで冷却すればよい。
【0016】
このようにして得られたヒアルロン酸は、培養液が十分に滅菌されており、且つ、気相部も十分に滅菌されている。従って、培養槽が冷えた時に、気相部内壁等に付着していた凝縮水又は水滴が培養液に落下しても、培養槽中で菌が生存又は増殖することはなく、当該培養液を長期保存してもヒアルロン酸が加水分解されて分子量が低下するという問題は生じない。
【0017】
(5)その他
このようにして得られたヒアルロン酸は、公知の方法により精製等を行うことができる。例えば、培地を必要に応じて(好ましくは、ヒアルロン酸濃度が0.1〜5g/Lになるように)希釈した後、例えば遠心分離、濾過、カーボン、セライト、パーライト等を用いて菌体を除去し、菌体を除去した培地を活性炭と接触させればよい。
【0018】
得られたヒアルロン酸の平均分子量は、公知の方法により求めることができる。例えば、極限粘度測定法、分子量既知のプルランを用いたGPC液クロ(示差屈折計)による相対分子量測定法、GPC液クロ(示差屈折計)と光散乱検出器の組み合わせによる絶対分子量測定法等を使用することができる。
【実施例】
【0019】
以下、実施例、比較例及び参考例により本発明をさらに詳細に説明する。
<実施例1>
〔工程1〕ストレプトコッカス・ズーエピデミカス(FERM P−21487)の培養
グルコース6(w/v)%、ポリペプトン−N(大日本製薬株式会社製)1.5(w/v)%、酵母エキス(オリエンタル酵母工業製)0.5%、硫酸マグネシウム7水塩0.01(w/v)%、リン酸水素2ナトリウム0.05(w/v)%、グルタミン酸ナトリウム0.05(w/v)%、アデカプルロニックL−61(旭電化工業製)0.01(w/v)%の組成の培地を1000Lのジャーファーメンター(株式会社丸菱製)に500L入れ、ジャケットにスチームを供給して121℃、20分間滅菌した。尚、グルコースは121℃、20分間別滅菌して、培養開始時に一度に添加した。
前培養した該菌を1(v/v)%接種し、27(w/v)%水酸化ナトリウムにてpHを7.4に連続的に制御しながら温度37℃、攪拌数50rpm、通気量1vvmで24時間通気攪拌培養した。攪拌翼は、直径60mmの門型攪拌翼(醗酵槽内径との比L/D=0.5)を使用した。
なお、前培養は、グルコース0.2質量%、ポリペプトン2.0質量%、酵母エキス0.5質量%、硫酸マグネシウム7水塩0.05質量%の組成からなる培地(pH7.0)を綿栓付き500ml容三角フラスコに100ml添加し、加熱殺菌後、同一組成の寒天プレート上に形成したストレプトコッカス・ズーエピデミカス(FERM P−21487)のコロニーを一白菌耳植菌し、30℃で18時間培養することにより行った。
〔工程2〕培養液及び気相部の熱処理
培養終了後、攪拌のみ継続しながら、ジャーファーメンター外面の下部から上部に掛けて約6割を覆っているジャケットにスチームを供給し、約20分掛けて培養液の温度が60℃に到達した時点でジャケットへのスチーム供給を停止した。同時に、気相部には植菌ラインからスチームを供給し、約20分掛けて気相部の温度が70℃になったところで気相部へのスチーム供給を停止した。スチーム停止後30分間この状態を維持した。余熱で培養液温度は62℃を、気相部温度は70℃を維持した。次に、ジャケットに冷却水を供給して約1.5時間掛けて培養液温度を20℃まで冷却した。この状態を20時間維持した。
〔工程3〕培養液の処理
(イ)前記工程2で熱処理した培養液(ヒアルロン酸含有液)を、イオン交換水を用いて10倍に希釈し、その2.5L水溶液のpHを4に調整後、活性炭(武田薬品社製の白鷺RW50−T)を5g、パーライト(三井金属鉱業株式会社のロカヘルプ♯409)を30g添加して、1時間処理し、ヌッチェを用いて濾過した。
(ロ)前記工程2で熱処理した培養液(ヒアルロン酸含有液)を、25℃で2週間保存した。その後、イオン交換水を用いて10倍に希釈し、その2.5L水溶液のpHを4に調整後、活性炭(武田薬品社製の白鷺RW50−T)を5g、パーライト(三井金属鉱業株式会社のロカヘルプ♯409)を30g添加して、1時間処理し、ヌッチェを用いて濾過した。
〔工程4〕ヒアルロン酸ナトリウム結晶の取得
前記工程2で調整したヒアルロン酸含有液各1Lに、食塩3gを溶解、pH7に調整後、2−プロパノール6Lで析出を行い、40℃で真空乾燥し、0.5gのヒアルロン酸ナトリウム結晶を得た。
【0020】
〔試験例1〕生菌数の測定
(I)寒天プレート作製
グルコース1(w/v)%、ポリペプトン−N(大日本製薬株式会社製)0.5(w/v)%、酵母エキス(オリエンタル酵母工業製)0.3%、麦芽エキス(オリエンタル酵母工業製)0.3%、寒天2(w/v)%、pH7.2に調整した培地を、121℃、20分間オートクレブした。寒天が固結しない内に、クリーンベンチ内でシャーレに各20ml分注して固結させ寒天プレートを作製した。
(II)シャーレの培養
熱処理前の培養液は、滅菌した生理食塩水で10億倍に希釈し、その0.1mlを寒天表面に注ぎ、コンラージ棒で均一に塗布した。
【0021】
熱処理後の培養液は、滅菌した生理食塩水で10倍に希釈し、その1mlを寒天表面に注ぎ、コンラージ棒で均一に塗布した。さらに、原液1mlを寒天培地に注ぎ、コンラージ棒で均一に塗布した。
【0022】
塗布後のシャーレは、30℃のふ卵器に入れて、48時間培養した。培養後、シャーレに形成されたコロニーを計測して(肉眼で数えた)生菌数を測定した。結果を表1に示した。
【0023】
〔試験例2〕ヒアルロン酸平均分子量の測定
ヒアルロン酸ナトリウム結晶約4mgを純水5mlに溶解し、分析用サンプルとしてGPCカラムを用いた液体クロマトグラフィ−(島津製作所社製)により相対平均分子量を算出した。
(i)使用機器
島津高速液体クロマトグラフProminenceGPCシステム
システムコントローラ:CBM−20A
液送ユニット:LC−20AD
オンラインデガッサ:DGU−20A3
オートサンプラ:SIL−20AC
カラムオーブン:CTO−20A
示差屈折率検出器:RID−10A
LCワークステーション:LCsolution Ver.1.24SP1+
(ii)分析条件
カラム:Shodex Ohpak SB−806M HQ
ガードカラム:Shodex Ohpak SP−G
溶離液:50mmol/L硫酸ナトリウム水溶液
流量:1.00ml/min
カラム温度:40.0℃
(iii)検量線作成用多糖類
平均分子量5900、9600、21100、47100、107000、200000、375000、708000のプルラン(Shodex STANDARD P−82 Lot No81001)を用いて検量線を作成した。
【0024】
結果を表1に示した。
<比較例1>
培養液の熱処理時に気相部にスチームを供給しなかった以外は、実施例1と同様の操作を実施した。結果を表1に示した。
<比較例2>
培養液の熱処理温度を35分掛けて75℃に設定し、気相部にスチームを供給しなかった以外は、実施例1と同様の操作を実施した。結果を表1に示した。
<参考例>
培養液の熱処理をしなかった以外は、実施例1と同様の操作を実施した。結果を表1に示した。
【0025】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む多糖類の製造方法。
(1)多糖類を産生する微生物を培養することにより、多糖類を製造する工程、
(2)培養終了後に、培養液と培養槽の気相部とをそれぞれ熱処理する工程
【請求項2】
培養液と気相部の熱処理温度がそれぞれ50〜70℃である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
多糖類を産生する微生物が、Lactobacillus属に属する微生物、Lactococcus属に属する微生物、Leuconostoc属に属する微生物、Pediococcus属に属する微生物及びStreptococcus属に属する微生物からなる群から選ばれる少なくとも一種の乳酸菌である請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
乳酸菌が、ヒアルロン酸生産能を有する微生物である請求項3記載の方法。
【請求項5】
ヒアルロン酸生産能を有する微生物が、Streptococcus zooepidemicusである請求項4記載の方法。
【請求項6】
Streptococcus zooepidemicusが、Streptococcus zooepidemicus MK5(FERM P−21487)である請求項5記載の方法。

【公開番号】特開2011−116825(P2011−116825A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−273575(P2009−273575)
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】