説明

多色化粧料の製造方法

【課題】強度不足を招くことなく、複雑な模様や細かな模様も含めて多様な模様に対応可能にする。
【解決手段】化粧料の粉末またはスラリーを予備打型して、所定の形状を有する第1の化粧料3を生成する。化粧皿2内の一部に第1の化粧料3をセットする。化粧皿2における第1の化粧料3が存在しない部位に相当する充填空間に、第1の化粧料3とは色が異なり、かつ、化粧料の粉体を顆粒化した第2の化粧料4を充填する。そして、化粧皿2内の第1の化粧料3および第2の化粧料4を本打型する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多色化粧料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、化粧皿に複数色の固形化粧料が並んだ多色化粧料が知られている。このような化粧料では、個々の化粧料の着色を変えることにより、色の組合わせによる面白さを演出できる。例えば、特許文献1には、型抜きされた乾式化粧料が有する丸状貫通孔(充填空間)に、円柱状の乾式化粧料を嵌め入れることによって、丸状模様を形成した多色化粧料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−75789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の手法は、比較的単純な模様には適しているものの、模様の形状が複雑になると対応が困難になる。また、このような所定形状に固化した化粧料の嵌め入れに代えて、充填空間内に化粧料の粉体を直接充填する手法も考えられる。しかしながら、この場合、化粧料の処方によっては、粉体が軽すぎて十分な流動性が得られず、充填空間の狭い隙間部分を含めて粉体を隅々まで行き渡らせることが必ずしも容易ではない。その結果、模様を適切に形成できなかったり、充填密度のバラツキによる強度不足を招くといった問題が生じる。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、強度不足を招くことなく、複雑な模様や細かな模様も含めて多様な模様に対応できる新規な多色化粧料の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決すべく、本発明は、化粧料の粉末またはスラリーを予備打型して、所定の形状を有する第1の化粧料を生成する第1のステップと、化粧皿内の一部に第1の化粧料をセットする第2のステップと、化粧皿における第1の化粧料が存在しない部位に相当する充填空間に、第1の化粧料とは色が異なり、かつ、化粧料の粉体を顆粒化した第2の化粧料を充填する第3のステップと、化粧皿内の第1の化粧料および第2の化粧料を打型する第4のステップとを有する多色化粧料の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、充填空間に充填される第2の化粧料として、化粧料の粉体を顆粒化したものを用いる。処方にもよるが、一般に、顆粒は粉体そのものよりも流動性に優れているため充填空間内に行き渡り易く、狭い隙間部分にも顆粒が崩れて入り込み易い。したがって、第2の化粧料を充填空間の隅々まで行き渡らせることができる。その結果、充填密度のバラツキに起因した強度不足を招くことなく、複雑な模様や細かな模様も含めて多様な模様に対応することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】多色化粧料の斜視図
【図2】第1の化粧料を化粧皿内にセットする工程の説明図
【図3】化粧皿の充填空間内に第2の化粧料を充填する工程の説明図
【図4】第1の化粧料および第2の化粧料を本打型する工程の説明図
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本実施形態に係る多色化粧料の斜視図である。この多色化粧料1は、化粧皿2と、この化粧皿2内に圧縮打型された化粧料3,4と主体に構成されている。化粧皿2は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス等の金属、または、ポリエチレンテレフタレート樹脂等の合成樹脂で形成されており、その上方が開口している。化粧料3,4は、ファンデーション、フェイスパウダー、アイシャドウ等のように、粉末化粧料を打型したものであるが、その露出した表面には模様が面一で表現されている。この表面模様は、金太郎飴のように、深さに依存することなく化粧皿2の内底2aに至るまで常に同じ模様(断面模様)になっている。
【0010】
なお、ユーザに新鮮味を与え、アイキャッチ効果の向上を図るべく、化粧料3,4は、「異なる色」が付されている。本明細書では、「異なる色」という用語を、両者の違いをユーザが視覚的に認識できれば足りる程度の意味合いで用いている。したがって、明度、彩度、色相の違いはもとより、同一色であっても、パール等を加えたものと、そうでないものといったように質感が異なるものも、ここでいう「異なる色」の範疇に含まれる。
【0011】
つぎに、多色化粧料1の製造方法を図2から図4を参照しながら説明する。まず、化粧料の粉末またはスラリーを予備打型して、所定形状に固化された第1の化粧料3を生成する。その形状に特に制限はなく、円柱状または多角柱状のものでもよいし、化粧料3の固形体を単体若しくは複数組み合わせて模様が形成されるようなものでもよい。また、化粧料3の固化は、湿式化粧料と乾式化粧料のどちらを用いて行ってもよい。湿式化粧料を用いる場合、スラリー(化粧料の流動体)中の揮発成分を吸収・乾燥させることによって固化する。スラリーとしては、化粧料基材と、エタノール、水、流動パラフィン、イソパラフィン、イソプロピルアルコール等の揮発性溶剤とを混合したものが用いられる。湿式化粧料は、乾式化粧料と比べて粒子密度が疎であることに起因して、しっとりサラサラにした使用感が得られるという特性がある。一方、乾式化粧料を用いる場合、化粧料の粉体を圧縮打型して固化する。なお、いずれの場合であっても、後工程において再度打型(本打型)が行われるので、ここでの予備打型は、本打型よりも緩いプレスに留める。予備打型により、化粧料3の表面が全体的に平坦化され、化粧皿2の上縁と略同一となる均一な厚みとなる。
【0012】
つぎに、図2に示すように、化粧皿2内の一部に、先の工程で生成した第1の化粧料3を少なくとも一つセットする。同図は、直方体状の化粧料3を隙間を空けて4つセットした状態を示している。化粧皿2内において、第1の化粧料3が存在しない部位(内部空間)は、第2の化粧料4が充填される充填空間Aに相当する。
【0013】
つぎに、図3に示すように、化粧皿2内の充填空間Aに、第1の化粧料3とは色が異なり、かつ、化粧料の粉体を顆粒化した第2の化粧料4を充填する。一般に、充填空間Aが形状的に複雑だったり、狭い隙間部分が存在したりすると、充填空間Aの全体に第2の化粧料4をくまなく充填することが困難になる。特に、化粧料4として粉体を用いる場合には、この問題が顕著になる。この問題を解決するためには、化粧料4として、化粧料の粉体を顆粒化した顆粒状化粧料を用いることが好ましい。処方にもよるが、一般に、顆粒は粉体そのものよりも流動性に優れているため充填空間内に行き渡り易い。また、顆粒を構成する個々の粉体自体は緩く結合しているので、力が加わると顆粒が容易に崩れる。このような崩壊容易性から、充填空間Aの狭い隙間部分にも顆粒が崩れて入り込み易い。したがって、第2の化粧料4として顆粒化したものを用いれば、これを充填空間Aの隅々まで行き渡らせることができる。化粧料4を顆粒化する手法としては、例えば、粉末状の化粧料を一度プレスして仮固めした後に、ふるいで落とすといった手法、或いは、粉末状の化粧料にバインダー(油等)を入れて、揺すりながら顆粒化するといった手法等が挙げられる。この場合、化粧料4の粒子径は、充填空間Aのサイズや複雑さに応じて適宜設定すればよく、同一径のものを用いてもよいし、径が異なるものを用いてもよい。
【0014】
つぎに、図4に示すように、プレス部材5を用いて、化粧皿2内の第1の化粧料3および第2の化粧料4を共に本打型する。これにより、化粧皿2内の化粧料全体がプレスされ、予備打型された第1の化粧料3と、充填空間Aに充填された第2の化粧料4とが同時に圧縮され、所望の固化状態が得られる。なお、この本打型に先立ち、或いは、本打型を行った後に、化粧皿2に収容された化粧料3,4の表面をカット機等で薄くスライスしてもよい。これにより、化粧料3,4間の境界を鮮明に形成することができる。
【0015】
このように、本実施形態によれば、充填空間Aに充填される第2の化粧料4として、化粧料の粉体を顆粒化したものを用いる。顆粒の特性である流動性と崩壊容易性とを利用することで、第2の化粧料4を充填空間Aに隈無く行き渡らせることができる。その結果、充填密度のバラツキに起因した強度不足を招くことなく、充填空間Aを密に充填することができる。それとともに、充填空間Aの形状が比較的単純な場合はもとより、これが複雑であったり、狭い隙間部分を有する場合でも、強度を損なうことなく柔軟に対応することが可能になる。
【0016】
また、本実施形態によれば、予備打型された第1の化粧料3を型として、化粧皿2内に第2の化粧料4を充填し、これら全体に本打型を行うことにより、多色化粧料1の全体的な強度を確保できる。
【産業上の利用可能性】
【0017】
以上のように、本発明に係る多色化粧料の製造方法は、ファンデーション、フェイスパウダー、アイシャドウといった様々な化粧料に広く適用できる。
【符号の説明】
【0018】
1 多色化粧料
2 化粧皿
2a 内底
3 第1の化粧料
4 第2の化粧料
5 プレス部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多色化粧料の製造方法において、
化粧料の粉末またはスラリーを予備打型して、所定の形状を有する第1の化粧料を生成する第1のステップと、
化粧皿内の一部に前記第1の化粧料をセットする第2のステップと、
前記化粧皿内における前記第1の化粧料が存在しない部位に相当する充填空間に、前記第1の化粧料とは色が異なり、かつ、化粧料の粉体を顆粒化した第2の化粧料を充填する第3のステップと、
前記化粧皿内の前記第1の化粧料および前記第2の化粧料を打型する第4のステップと
を有することを特徴とする多色化粧料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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