説明

多血小板血漿分離キット及び多血小板血漿分離方法

【課題】中空針を取り付けた第2シリンジで第1シリンジのガスケットを基端側より貫通する際に、ガスケットをうまく貫通できない、貫通できたとしてもガスケットとシリンジ筒とで密封された血液が漏れ出すなどの問題がある。
【解決手段】第1プランジャロッドは、先端から基端に渡る挿通孔を有し、挿通孔の基端から第2中空針を挿通した際に、第2中空針が第1ガスケットを貫通することを特徴とする多血小板血漿分離キットである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液を吸引するために用いられるシリンジと、そのシリンジから血小板及び血漿を含む遠心分離区分を吸引するために用いられるシリンジと、を有する多血小板血漿分離キット、及び多血小板血漿分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多血小板血漿(以下、「PRP」とも称される。)とは、血小板を多く含む血漿である。血球成分を含む全血においては、赤血球が約95%、白血球が3%、血小板が約1%の割合で含まれる。これに対し、多血小板血漿においては、血小板が高い割合で含まれる。PRPにおける血小板の割合は特に定義がない。一般に、全血における血漿の割合が約55%であることを考慮すると、血球成分が除去された血漿に含まれる血小板の割合は約2%程度と考えられる。この約2%程度より明らかに高い割合の血小板が、PRPに含まれる。
【0003】
PRPは、全血を遠心分離することにより得られる。詳細に説明すると、まず、全血を弱遠心して赤血球を分離して血漿を得る。この血漿には白血球及び血小板が含まれる。さらに、得られた血漿を強遠心する。これにより、血小板は遠心力が加わる方向(以下、本明細書において遠心分離方向とも称する。)に集中し、上清には血小板がほぼ含まれない。強遠心された血漿から上清を取り除き、或いは遠心分離方向(下側)の所定量のみを取り出して、PRPを得る(特許文献1参照)。
【0004】
血小板のα顆粒中には、PDGF、TGF−β、ILGFなどの成長因子が存在することが知られている。これら成長因子が創傷治癒や組織再生に効果的な役割を果たすことが着目されている。例えば、歯周組織再生法などの再生医療において、PRPの利用が期待されている(特許文献2、特許文献3及び非特許文献1参照)。
【0005】
PRPを再生医療に用いる場合には、安全性の観点から、PRPを調整する器具はすべてγ線滅菌を施すことが要求される。しかしながら、例えば特許文献1に記載されている真空採血管のように、ゴム栓を使用した容器に対してγ線滅菌を施すと、ゴム栓が劣化するという問題がある。ゴム栓の劣化は、ゴム栓に含まれる添加物の滲出、破断片や砕片の発生を惹起し、これら添加物や破断片などが血液やPRPに混入するおそれがある。また、エチレンオキサイドガス滅菌については、真空採血管の管内までガスが注入できず、血液の接触部に対して滅菌できないおそれがある。
本発明者らは、上述の現状を鑑み、鋭意検討の結果、多血小板血漿分離キット及び多血小板血漿分離方法を発明するに至っている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−78428号公報
【特許文献2】特開2006−232834号公報
【特許文献3】特開2005−278910号公報
【特許文献4】WO2008/050688
【非特許文献1】多血小板血漿の口腔への応用、ロバート・E・マルクス著、クィーン・テッセンス出版社出版
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
引用文献4に記載の発明においては、血液を吸引するために用いられ第1シリンジ及び該第1シリンジから血小板及び血漿を含む遠心分離区分を吸引するために用いられる第2シリンジを用いて、多血小板血漿を分離する方法である。第1シリンジに満たされた血液を遠心分離し、第1シリンジのプランジャロッドを取り外し、第1シリンジのガスケット基端側より、中空針を取り付けた第2シリンジを挿入し、ガスケットを貫通後、分離された白血球及び血小板を含む血漿画分を吸引するものである。そのため、第1シリンジのガスケット基端側より、中空針を取り付けた第2シリンジを挿入し、ガスケットを貫通する際に、ガスケットの側面に中空針が刺さり、ガスケットがうまく貫通できないという問題点があった。さらに、あるいはガスケットとシリンジ筒とで密封された血液が漏れ出す、また第2シリンジによる貫通が深すぎて、遠心により分離された血漿画分層より深い位置に中空心が到達し、血漿画分が吸引できないという問題点もある。
【0008】
本発明は、上述の事情に問題に鑑みてなされたものであり、多血小板血漿の分離を簡便に且つ失敗することなく行うことができる血小板血漿分離キット及び多血小板血漿分離方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願請求項1に係る多血小板血漿分離キットは、血液を吸引するために用いられる第1シリンジと、該第1シリンジから血小板及び血漿を含む遠心分離区分を吸引するために用いられる第2シリンジと、該第1シリンジに脱着可能な第1中空針及び第1キャップと、該第2シリンジに脱着可能な第2中空針及び第2キャップと、を具備する多血小板血漿分離キットであって、前記第1シリンジは、先端に前記第1中空針及び前記第1キャップが脱着可能な第1ポートと、開放した基端と、を有する第1シリンジ筒と、前記第1シリンジ筒内を液密に封止して前記第1シリンジ筒内を往復動される第1ガスケットと、前記第1ガスケットの基端に先端が接続される第1プランジャロッドと、を備え、前記第2シリンジは、先端に前記第2中空針及び前記第2キャップが脱着可能な第2ポートと、開放した基端と、を有する第2シリンジ筒と、前記第2シリンジ筒内を液密に封止して前記第2シリンジ筒内を往復動される第2ガスケットと、前記第2ガスケットの基端に先端が接続される第2プランジャロッドと、を備え、前記第1プランジャロッドは、先端から基端に渡る挿通孔を有し、前記挿通孔の基端から前記第2中空針を挿通した際に、前記第2中空針が前記第1ガスケットを貫通することを特徴とする多血小板血漿分離キットである。
【0010】
本願請求項2に係る多血小板血漿分離キットは、前記挿通孔の径が、前記第1プランジャロッドの基端から先端に向かい小さくなるものであって、前記挿通孔の先端側開口部が、前記第1プランジャロッドの先端面の中心部に位置することを特徴とする多血小板血漿分離キットである。
【0011】
本願請求項3に係る多血小板血漿分離キットは、請求項1または2に記載の多血小板血漿分離キットであって、さらに、前記第2シリンジから遠心分離区分を吸引するために用いられる第3シリンジを具備する多血小板血漿分離キットであって、前記第3シリンジは、先端に第3中空針が設けられた第3ポートと、開放した基端と、を有する第3シリンジ筒と、前記第3シリンジ筒内を液密に封止して前記第3シリンジ筒内を往復動される第3ガスケットと、前記第3ガスケットの基端に先端が接続される第3プランジャロッドと、を備え、前記第2プランジャロッドは、先端から基端に渡る挿通孔を有し、前記挿通孔の基端から前記第3中空針を挿通した際に、前記第3中空針が前記第2ガスケットを貫通することを特徴とする多血小板血漿分離キットである。
【0012】
本願請求項4に係る多血小板血漿分離キットは、血液を吸引するために用いられる第1シリンジと、該第1シリンジから血小板及び血漿を含む遠心分離区分を吸引するために用いられる第2シリンジと、該第1シリンジに脱着可能な第1中空針及び第1キャップと、該第2シリンジに脱着可能な第2中空針及び第2キャップと、を具備する多血小板血漿分離キットであって、前記第1シリンジは、先端に前記第1中空針及び前記第1キャップが脱着可能な第1ポートと、開放した基端と、を有する第1シリンジ筒と、前記第1シリンジ筒内を液密に封止して前記第1シリンジ筒内を往復動される第1ガスケットと、前記第1ガスケットの基端に先端が脱着可能に接続される第1プランジャロッドと、を備え、前記第2シリンジは、先端に前記第2中空針及び前記第2キャップが脱着可能な第2ポートと、開放した基端と、を有する第2シリンジ筒と、前記第2シリンジ筒内を液密に封止して前記第2シリンジ筒内を往復動される第2ガスケットと、前記第2ガスケットの基端に先端が接続される第2プランジャロッドと、を備え、前記第1プランジャロッドを取り外した後に、前記第1シリンジ筒の基端から挿入可能で、挿入した際に前記第1ガスケットに当接するガイド部材を有し、前記ガイド部材は、前記第2中空針を挿通するための先端から基端に渡る挿通孔を有し、前記挿通孔の基端から前記第2中空針を挿通した際に、前記第2中空針が前記第1ガスケットを貫通することを特徴とする多血小板血漿分離キットである。
【0013】
本願請求項5に係る多血小板血漿分離キットは、前記挿通孔の径が、前記ガイド部材の基端から先端に向かい小さくなるものであって、前記挿通孔の先端側開口部が、前記ガイド部材の先端面の中心部に位置することを特徴とする請求項に記載の多血小板血漿分離キットである。
【0014】
本願請求項6に係る多血小板血漿分離キットは、請求項4または5に記載の多血小板血漿分離キットであって、さらに、前記第2シリンジから遠心分離区分を吸引するために用いられる第3シリンジを具備する多血小板血漿分離キットであって、前記第3シリンジは、先端に第3中空針が設けられた第3ポートと、開放した基端と、を有する第3シリンジ筒と、前記第3シリンジ筒内を液密に封止して前記第3シリンジ筒内を往復動される第3ガスケットと、前記第3ガスケットの基端に先端が接続される第3プランジャロッドと、を備え、前記ガイド部材の挿通孔の基端から前記第3中空針を挿通した際に、前記第3中空針が前記第2ガスケットを貫通することを特徴とする多血小板血漿分離キットである。
【0015】
本願請求項7に係る多血小板血漿分離方法は、先端に第1中空針及び第1キャップが脱着可能な第1ポートと開放した基端とを有する第1シリンジ筒と、前記第1シリンジ筒内を液密に封止して前記第1シリンジ筒内を往復動される第1ガスケットと、前記第1ガスケットの基端に先端が脱着可能に接続される第1プランジャロッドと、を備える前記第1シリンジと、先端に前記第2中空針及び前記第2キャップが脱着可能な第2ポートと開放した基端とを有する第2シリンジ筒と、前記第2シリンジ筒内を液密に封止して前記第2シリンジ筒内を往復動される第2ガスケットと、前記第2ガスケットの基端に先端が接続される第2プランジャロッドと、を備える前記第2シリンジと、前記第1シリンジ筒に挿入可能で、前記第2中空針を挿通するための先端から基端に渡る挿通孔を有するガイド部材と、を用いた多血小板血漿分離方法であって、前記第1シリンジ筒の前記第1プランジャロッドを取り外し、前記ガイド部材を挿入した後に、前記ガイド部材の前記挿通孔の基端側に前記第2シリンジに装着した前記第2中空針を挿通し、前記第2中空針で前記第1ガスケットを貫通するステップを含む多血小板血漿分離方法である。
【0016】
本願請求項8に係る多血小板血漿分離方法は、請求項7に記載の多血小板血漿分離方法であって、さらに、先端に第3中空針及び第3中空針が設けられた第3ポートと開放した基端とを有する第3シリンジ筒と、前記第3シリンジ筒内を液密に封止して前記第3シリンジ筒内を往復動される第3ガスケットと、前記第3ガスケットの基端に先端が接続される第3プランジャロッドとを備える前記第3シリンジを用いる多血小板血漿分離方法であって、前記第2シリンジ筒の前記第2プランジャロッドを取り外し、前記ガイド部材を挿入した後に、前記ガイド部材の前記挿通孔の基端側に前記第3シリンジに装着した前記第3中空針を挿通し、前記第3中空針で前記第2ガスケットを貫通するステップを含む多血小板血漿分離方法である。
【0017】
本発明に係る多血小板血漿分離キット及び多血小板血漿分離方法は、第1シリンジ及び第2シリンジを備えるものである。必要に応じて、第3シリンジを用いるものである。本発明において、基端とはシリンジのポート側を指すものであり、基端とはシリンジのプランジャロッドを挿入する側を指すものである。
第1シリンジは、血液を吸引するために用いられるものである。第1シリンジは、先端に第1中空針及び第1キャップが脱着可能な第1ポートと開放した基端とを有する第1シリンジ筒と、第1シリンジ筒内を液密に封止して第1シリンジ筒内を往復動される第1ガスケットと、第1ガスケットの基端に先端が接続される第1プランジャロッドとを備えるものである。血液を吸引する方法は、特に限定されないが、第1ポートへ第1中空針を取り付けた第1シリンジを用いて採血する方法や、第1シリンジを用いて血液回路に設けられたサンプリングポートなどから血液を吸引する方法などがある。第1ポートへ第1中空針が脱着可能であるとは、第1中空針が直接に第1ポートに取り付けられる態様や、第1中空針がエクステンションチューブなどの他の部材を介して第1ポートに取り付けられる態様が含まれる。
血液を吸引し、血液が満たされた第1シリンジは、第1シリンジ筒から第1中空針が取り外され、第1ポートが第1キャップにより封止される。これにより、第1シリンジ筒内に血液が密封される。さらに、遠心分離を行う。第1シリンジは、第1ガスケットに第1プランジャロッドが取り付けられた状態、あるいは第1ガスケットから第1プランジャロッドが取り外された状態で遠心分離が行うことができる。遠心分離により、血液が赤血球画分(第1区分)と、白血球及び血小板を含む血漿画分(第2区分)に分離される。この遠心分離では、赤血球画分が第1シリンジ筒内の第1ポート側に、血漿画分が第1ガスケット側に分離される。
【0018】
第2シリンジは、遠心分離された第1シリンジ筒から血漿画分を吸引するために用いられる。第2シリンジは、先端に第2中空針及び第2キャップが脱着可能な第2ポートと開放した基端とを有する第2シリンジ筒と、第2シリンジ筒内を液密に封止して第2シリンジ筒内を往復動される第2ガスケットと、第2ガスケットの基端に先端が接続される第2プランジャロッドとを備えるものである。第2ポートへ第2中空針が脱着可能であるとは、第2中空針が直接に第2ポートに取り付けられる態様や、第2中空針がエクステンションチューブなどの他の部材を介して第2ポートに取り付けられる態様が含まれる。
【0019】
第1プランジャロッドは、先端から基端に渡る挿通孔を有するものである。挿通孔は、第2シリンジに取り付けられた第2中空針を挿通するためのものであって、第2中空針は、挿通孔の基端から第2中空針を挿通した際に、第1ガスケットを貫通するものである。また、第1シリンジの第1プランジャロッドは、上述の様に、第2中空針を挿通するための挿通孔を有するものであってもよいし、挿通孔を有さないものであってもよい。挿通孔を有さない場合は、第1プランジャロッドに替わって取り付け可能で、挿通孔を有するガイド部材を別途設けるようにする。挿通孔を有するガイド部材は、第1プランジャロッドを取り外した後に、第1シリンジ筒の基端から挿入可能で、挿入した際に第1ガスケットに当接するものである。さらに、ガイド部材は、第2中空針を挿通するための先端から基端に渡る挿通孔を有し、第2中空針は、挿通孔の基端から第2中空針を挿通した際に、第1ガスケットを貫通するものである。
【0020】
第1プランジャロッドまたはガイド部材に設けられた挿通孔の径は、基端から先端に向かい小さくなるものである。第1プランジャロッドまたはガイド部材に設けられた挿通孔の径は、基端から先端に向かい小さくなるものであれば、特に形状は問わないが、径が基端から先端に向けて漸次小さくなる形状など基端から先端に向けて第2中空針を挿通し易い形状が適宜選択される。上述の形状により、先端部では第2中空針を第1ガスケットの貫通させたい位置への誘導する効果を奏する。また、第1挿通孔は、第2中空針が挿入できる径を有するものである。
挿通孔の先端側開口部は、第1プランジャロッドまたはガイド部材に設けられた先端面の中心部に位置するものである。そのため、第2中空針を第1ガスケットに貫通させる場合に、第1ガスケットが第1シリンジ筒内の血液と接触している先端部を貫通することが可能となり、例えば、第1ガスケットが第1シリンジ筒と接触している肉厚か箇所を貫通する恐れがなくなる。
【0021】
第2中空針が第1プランジャロッドの挿通孔に進入されて、第2中空針が第1ガスケットに貫通される。第2中空針の先端は、第1ガスケット側の血漿画分中に到達する。第2シリンジの第2プランジャロッドを基端側引くと、第2ガスケットが第2シリンジ筒を移動し、これにより、第2中空針を通じて血漿画分が第2シリンジ筒内に吸引される。
【0022】
血漿画分を吸引した後、第2シリンジと共に第2中空針が、又は第2中空針とエクステンションチューブが、第1プランジャロッドから引き出される。第2シリンジ筒から第2中空針が取り外され、第2ポートが第2キャップにより封止される。これにより、第2シリンジ筒内に血漿画分が密封される。さらに、遠心分離を行う。第2シリンジは、第2ガスケットに第2プランジャロッドが取り付けられた状態、あるいは第2ガスケットから第2プランジャロッドが取り外された状態で遠心分離が行うことができる。遠心分離により、血漿画分は、基端側がほぼ血漿成分のみの上清となり、先端側が血小板が多い多血小板血漿となる。第2シリンジ筒から第2キャップが外され、第2ガスケットに第2プランジャロッドが取り付けられて、多血小板血漿が、第2シリンジ筒の第2ポートから排出される。
【0023】
第3シリンジは、第2シリンジの第2プランジャロッドに挿通孔が設けられた場合、あるいは第2シリンジの第2プランジャロッドが第2ガスケットから脱着可能に設けられ、ガイド部材と交換可能である場合に、遠心分離された第2シリンジ筒から上清を吸引するために用いられる。第3ポートへ第3中空針が取付可能であるとは、第3中空針が直接に第3ポートに取り付けられる態様や、第3中空針がエクステンションチューブなどの他の部材を介して第3ポートに取り付けられる態様が含まれる。第3中空針は、第2プランジャロッドの挿通孔に進入されて、第3中空針が第2ガスケットに貫通される。第3中空針の先端は、第2ガスケット側の上清に到達する。第3シリンジの第3プランジャロッドを基端側に引くと、第3ガスケットが第3シリンジ筒を移動し、これにより、第3中空針を通じて上清が第2シリンジ筒内に吸引される。その後、第2シリンジ筒から第2キャップが外され、第2ガスケットに第2プランジャロッドが取り付けられて、多血小板血漿が、第2シリンジ筒の第2ポートから排出される。
【0024】
ガイド部材を用いる場合、第1シリンジ筒及び第2シリンジ筒の内径がほぼ同じであれば、同じガイド部材を用いてもよいし、2個のガイド部材を設けてもよい。また、第1シリンジ筒及び第2シリンジ筒の内径が異なる場合、2個のガイド部材を設けることが好ましい。
【0025】
第1シリンジに満たされた血液を遠心分離により、赤血球画分(第1区分)と、白血球及び血小板を含む血漿画分(第2区分)に分離させた後の第1シリンジにおいて、第1シリンジの第1ガスケットから第1プランジャロッドを取り外した後、第1ガスケットに当接する様にガイド部材を挿入する。さらに、ガイド部材の挿通孔の基端から第2シリンジに装着した第2中空針を挿通し、第2中空針で第1ガスケットを貫通する。貫通した第2中空針の先端は、第1シリンジ内の血漿画分中に到達する。第2シリンジの第2プランジャロッドを基端側に引くと、第2ガスケットが第2シリンジ筒を移動し、これにより、第2中空針を通じて血漿画分が第2シリンジ筒内に吸引される。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る多血小板血漿分離キット及び多血小板血漿分離方法によれば、挿通孔を有する部材を用いることで、多血小板血漿の分離を簡便に且つ失敗することなく行うことができ、高濃度の多血小板血漿を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1実施形態に係る多血小板血漿分離キットの第1シリンジまたは第2シリンジの外観構成を示す分解斜視図である。
【図2】図1における第1シリンジまたは第2シリンジの内部構成を示す縦断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る多血小板血漿分離キットの第3シリンジの外観構成を示す分解斜視図である。
【図4】図3における第3シリンジの内部構成を示す縦断面図である。
【図5】第1実施形態による多血小板血漿分離方法において、第1シリンジに満たされた血液を遠心分離するステップにおける多血小板血漿分離キットの状態を示す断面図である。
【図6】第1実施形態による多血小板血漿分離方法において、第1シリンジ内で遠心分離された第2区分を第2シリンジにより吸引するステップにおける多血小板血漿分離キットの状態を示す断面図である。
【図7】第1実施形態による多血小板血漿分離方法において、第2シリンジに満たされた第2区分を遠心分離するステップにおける多血小板血漿分離キットの状態を示す断面図である。
【図8】第1実施形態による多血小板血漿分離方法において、第2シリンジ内で遠心分離された上清を第3シリンジにより吸引するステップにおける多血小板血漿分離キットの状態を示す断面図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る多血小板血漿分離キットの第1シリンジまたは第2シリンジの外観構成を示す分解斜視図である。
【図10】図9における第1シリンジまたは第2シリンジの内部構成を示す縦断面図である。
【図11】本発明の第2実施形態に係る多血小板血漿分離キットのガイド部材の外観構成を示す分解斜視図である。
【図12】図10におけるガイド部材の内部構成を示す縦断面図及びガイド部材を第1シリンジに挿入した際の内部構成を示す縦断面図である。
【図13】第2実施形態による多血小板血漿分離方法において、第1シリンジに満たされた血液を遠心分離するステップにおける多血小板血漿分離キットの状態を示す断面図である。
【図14】第2実施形態による多血小板血漿分離方法において、遠心分離後の第1シリンジにガイド部材を挿入するステップ、及び第1シリンジ内で遠心分離された第2区分を第2シリンジにより吸引するステップにおける多血小板血漿分離キットの状態を示す断面図である。
【図15】第2実施形態による多血小板血漿分離方法において、第2シリンジに満たされた第2区分を遠心分離するステップにおける多血小板血漿分離キットの状態を示す断面図である。
【図16】第2実施形態による多血小板血漿分離方法において、遠心分離後の第2シリンジにガイド部材を挿入するステップ、及び第2シリンジ内で遠心分離された上清を第3シリンジにより吸引するステップにおける多血小板血漿分離キットの状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1:第1シリンジ
11:第1中空針
111:カヌラ
112:ハブ
12:第1キャップ
13:第1シリンジ筒
131:第1ポート
132:鍔
14:第1ガスケット
141:取付口
15:第1プランジャロッド
151:第1雄ネジ部
152:軸部
153:端板
154:第1挿通孔
155:第1先端開口部
156:第1基端開口部
16:第1プランジャロッド
161:第1雄ネジ部
162:軸部
163:端板
2:第2シリンジ
21:第2中空針
211:カヌラ
212:ハブ
22:第2キャップ
23:第2シリンジ筒
231:第2ポート
24:第2ガスケット
25:第2プランジャロッド
251:第2雄ネジ部
254:第2挿通孔
255:第2先端開口部
256:第2基端開口部
26:第2プランジャロッド
261:第2雄ネジ部
3:第3シリンジ
31:第3中空針
311:カヌラ
312;ハブ
33:第3シリンジ筒
331:第3ポート
332:鍔
34:第3ガスケット
35:第3プランジャロッド
41:血液
42:第1区分
43:第2区分
44:上清
45:多血小板血漿
5:ガイド部材
51:先端ポート
52:先端板
53:軸部
54:基端板
55:挿通孔
56:先端開口部
57:基端開口部
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施態様について、図面を参照しつつ説明する。なお、本実施形態は本発明の一実施態様にすぎず、これに限定されるものではない。
【0030】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る多血小板血漿分離キットの第1シリンジ1の外観構成を示す分解斜視図である。図2は、第1シリンジ1の内部構成を示す縦断面図である。図3は、本発明の第1実施形態に係る多血小板血漿分離キットの第3シリンジ3の外観構成を示す分解斜視図である。図4は、第3シリンジ3の内部構成を示す縦断面図である。なお、図注の括弧内の番号は、第2シリンジ2の構成を示すものである。
【0031】
本第1実施形態に係る多血小板血漿分離キットは、第1シリンジ1、第2シリンジ2と第3シリンジ3とを具備する。第1シリンジ1は、血液を吸引するために用いられる。血液の吸引とは、具体的には採血が挙げられるが、血液回路などからの吸引や既に採血された血液を吸引などであってもよい。第2シリンジ2は、遠心分離により第1シリンジ1に形成された白血球、血小板、及び血漿を含む画分(本発明の第2区分に相当する。)を吸引するために用いられる。第3シリンジ3は、第2シリンジ2に吸引した第2区分を遠心分離することで得られる上清を吸引除去するために用いられる。
また、第1実施形態における第1シリンジ1と第2シリンジ2は、第1プランジャロッド15に第1挿通孔154、第2プランジャロッド25に第2挿通孔254を有するものである。
【0032】
図1及び図2に示されるように、第1シリンジ1は、第1中空針11及び第1キャップ12が脱着可能な第1ポート131と、開放した基端と、を有する第1シリンジ筒13と、第1シリンジ筒13内を液密に封止して、第1シリンジ筒13内を往復動される第1ガスケット14と、第1ガスケット14に脱着可能に設けられた第1プランジャロッド15とを備える。
【0033】
第1シリンジ筒13は、ほぼ円筒形状であり、先端が縮径されて第1ポート131が形成されている。第1ポート131の内部空間は、第1シリンジ筒13の内部空間と連続している。第1シリンジ筒13の基端は、縮径されることなく開口されている。基端から第1シリンジ筒13の内部空間へ第1プランジャロッド15が進退される。第1シリンジ筒13の基端には、第1シリンジ筒13の外周側へ突出する鍔132が形成されている。鍔132はハンドリングを向上させるためのものであり、第1シリンジ筒13及び第1プランジャロッド15の操作の際に鍔132に指が掛けられる。
【0034】
第1シリンジ筒13のγ線滅菌やエチレンオキサイドガス滅菌が可能なものであれば素材は特に限定されず、ガラスや合成樹脂などが採用されうる。多血小板血漿分離キットがディスポーザル品とされることや、γ線滅菌やエチレンオキサイドガス滅菌が施されることを考慮すると、第1シリンジ筒13をポリプロピレンの成形品とすることが好ましい。第1シリンジ筒13の内部空間に満たされた血液や血漿などを目視確認するために、第1シリンジ筒13は、透明ないし半透明であることが好ましい。第1シリンジ筒13の容量は特に限定されない。第1シリンジ筒13に容量を示す目盛りが付されていると、内部空間に満たされた液体の量などが容易に把握できるので好ましい。
【0035】
第1中空針11は、採血などをする際に使用するためのものである。第1中空針11は、先端側に刃面が形成されたカヌラ111と、カヌラ111の基端と接続されたハブ112とを有する。第1キャップ12は、第1シリンジ筒13の第1ポート131を封止するためのものである。第1中空針11及び第1キャップ12は、第1シリンジ筒13の第1ポート131に取り付け及び取り外し可能なものであって、通常シリンジに用いられるルアーテーパーやルアーロックなどによって取り付けられるものである。第1キャップ12の素材はγ線滅菌やエチレンオキサイドガス滅菌が可能ものであれば特に限定されず、ガラスや合成樹脂などが採用されうる。多血小板血漿分離キットがディスポーザル品とされることや、γ線滅菌やエチレンオキサイドガス滅菌が施されることを考慮すると、第1キャップ12としてポリプロピレンやエラストマーの成形品が採用されうる。
【0036】
第1ガスケット14は、第1シリンジ筒13の内部に挿入されて第1シリンジ筒13を液密に封止する。第1ガスケット14は、液密状態を維持したまま、第1シリンジ筒13内を往復動可能である。第1ガスケット14の往復動により、第1シリンジ筒13の内部に密封可能な液体の容量が変化する。図1に示されるように、第1ガスケット14は、第1シリンジ筒13の内径に対応した径の円柱形状である。図2に示されるように、第1ガスケット14の先端は円錐形状に突出されている。この先端の形状は、第1シリンジ筒13内面の先端形状に対応している。第1プランジャロッド15と接続される第1ガスケット14の基端には、取付口141が形成されている。取付口141は第1ガスケット14の円形の基端面の中心に形成されている。取付口141は円孔で、内周面には雌ネジが形成されている。
【0037】
第1ガスケット14の素材はγ線滅菌やエチレンオキサイドガス滅菌が可能なものであれば特に限定されず、合成樹脂やエラストマーなどが採用されうる。多血小板血漿分離キットがディスポーザル品とされることや、γ線滅菌やエチレンオキサイドガス滅菌が施されることを考慮すると、第1ガスケット14としてエラストマーの成形品が採用されうる。
【0038】
第1プランジャロッド15は、ねじ込み式により第1ガスケット14に対して脱着可能なものである。第1プランジャロッド15の全体形状は、第1シリンジ筒13の内部空間に挿入可能な外形であって、第1シリンジ筒13の軸方向の長さより十分に長い。したがって、第1ガスケット14を第1シリンジ筒13の先端まで押し込んだ状態で、第1プランジャロッド15の一部が第1シリンジ筒13の基端から突出する。
【0039】
第1プランジャロッド15は、第1雄ネジ部151、軸部152と端板153を有し、先端から基端に渡って第1挿通孔154を有している。第1雄ネジ部151は、第1ガスケット14の取付口141にねじ込まれる。取付口141の雌ネジと第1雄ネジ部151とは噛合する。これにより、第1プランジャロッド15が第1ガスケット14に対してねじ込み式により脱着される。この脱着は繰り返し行うことができる。遠心分離する際に取り外してもよいし、取り付けたままでもよい。
【0040】
軸部152は、横断面において、中央に円形の第1挿通孔154が設けられ、その周囲に十字形状のリブを有するものである。軸部152の断面形状は成形加工の容易性や強度などを考慮して適宜選択されうる。軸部152の先端に第1雄ネジ部151が配置され、基端に端板153が配置されている。端板153は、円板形状の平板であり、軸部20の軸方向に対して垂直に接続されている。端板153は第1プランジャロッド15のハンドリングを向上させるためのものであり、第1プランジャロッド15が第1シリンジ筒13に対して押し込まれる際に指が押し当てられ、第1シリンジ筒13から第1プランジャロッド15を基端側に引く際に持ち手となる。
【0041】
さらに、第1プランジャロッド15は、先端から基端に渡る第1挿通孔154を有している。第1挿通孔154は、第1雄ネジ部151の先端から端板153の基端面に渡って設けられ、
第1先端開口部155及び第1基端開口部156を有している。第1挿通孔154の径は、第1プランジャロッド15の基端である第1基端開口部156から先端である第1先端開口部155に向かい小さくなるものである。第1挿通孔154の径は、第1基端開口部156から第1先端開口部155に向かい小さくなるものであれは、特に形状は問わないが、第1挿通孔154の径が第1基端開口部156から第1先端開口部155に向けて漸次小さくなる形状、または図2で示される第1挿通孔154の径が第1挿通孔154の一部分で縮径する形状など基端から先端に向けて第2中空針21を挿通し易い形状が適宜選択される。上述の形状により、先端部では第2中空針を第1ガスケットの貫通させたい位置への誘導する効果を奏する。
【0042】
加えて、第1挿通孔154の第1先端開口部155は、第1プランジャロッド15の先端面の中心部に位置するものである。第1挿通孔154の第1先端開口部155が、第1プランジャロッド15の先端面の中心部に位置することで、第1ガスケットの取付口141を通して、第1ガスケット14を基端側から貫通することができる。
第1プランジャロッド15の素材はγ線滅菌やエチレンオキサイドガス滅菌が可能なものであれば特に限定されず、ガラスや合成樹脂などが採用されうる。多血小板血漿分離キットがディスポーザル品とされることや、γ線滅菌やエチレンオキサイドガス滅菌が施されることを考慮すると、第1プランジャロッド15をポリプロピレンの成形品とすることが好ましい。
【0043】
第2シリンジ2においては、カヌラ211以外の構成は、図1及び図2の括弧で示されるように、第1シリンジ1と同じ構成である。ただし、第2シリンジ2は、遠心分離により第1シリンジ1に形成された白血球、血小板、及び血漿を含む画分(本発明の第2区分に相当する。)を吸引するために用いられるものであるため、第2シリンジ2における第2中空針21のカヌラ211の軸方向の長さは、第1シリンジ1の第1プランジャロッド14の基端から、第2中空針21を挿入した際に、第1ガスケット14を貫通するに必要な長さに設定される。この様な構成によって、第1ガスケット14を貫通した第2中空針21は、遠心分離された第2区分43を吸引することができる。
【0044】
図3及び図4に示されるように、第3シリンジ3は、第3中空針31と、第3中空針31が取付可能な第3ポート331を有する第3シリンジ筒33と、第3シリンジ筒33内を往復動される第3ガスケット34と、第3ガスケット34に設けられた第3プランジャロッド35とを具備する。
【0045】
第3中空針31は、中空管の先端側に刃面が形成されたカヌラ311と、カヌラ311の基端と接続されたハブ312とを有する。カヌラ311の軸方向の長さは、第2シリンジ2の第2ガスケット24を貫通するに必要な長さに設定される。ハブ312は、ほぼ円筒形状であり、第3シリンジ筒33の第3ポート331に外嵌されるに必要な内径及び軸方向の長さに設定される。カヌラ311とハブ312とは接着剤等により固定されている。ハブ312において、第3ポート331と接続される側の端部は開口されている。カヌラ311の基端側の開口は、ハブ312の内部空間と通じている。したがって、カヌラ311の先端側の開口からカヌラ311内に進入した液体等は、カヌラ311の基端側の開口からハ312ブの内部空間へ流入する。この内部空間は、ハブ312が第3ポート331に外嵌されることにより、第3ポート331と連続する。さらに、第3シリンジ3は、遠心分離により第3シリンジ3に形成された上清44を吸引するために用いられるものであるため、第3シリンジ3における第3中空針31のカヌラ311の軸方向の長さは、第2シリンジ2の第2プランジャロッド24の基端から、第3中空針31を挿入した際に、第2ガスケット24を貫通するに必要な長さに設定される。この様な構成によって、第2ガスケット24を貫通した第3中空針31は、遠心分離された上清44を吸引することができる。
【0046】
第3シリンジ筒33は、ほぼ円筒形状であり、先端が縮径されて第3ポート331が形成されている。第3ポート331の内部空間は、第3シリンジ筒33の内部空間と連続している。第3シリンジ筒33の基端は、縮径されることなく開口されている。基端から第3シリンジ筒33の内部空間へ第3プランジャ55が進退される。第3シリンジ筒33の基端には、第3シリンジ筒33の外周側へ突出する鍔332が形成されている。鍔332はハンドリングを向上させるためのものであり、第3シリンジ筒33及び第3プランジャロッド35の操作の際に鍔332に指が掛けられる。
【0047】
第3シリンジ筒33のγ線滅菌やエチレンオキサイドガス滅菌が可能なものであれば素材は特に限定されず、ガラスや合成樹脂などが採用されうる。多血小板血漿分離キットがディスポーザル品とされることや、γ線滅菌やエチレンオキサイドガス滅菌が施されることを考慮すると、第3シリンジ筒33をポリプロピレンの成形品とすることが好ましい。第3シリンジ筒33の内部空間に満たされた上清などを目視確認するために、第3シリンジ筒33は、透明ないし半透明であることが好ましい。第3シリンジ筒33の容量は特に限定されない。第3シリンジ筒33に容量を示す目盛りが付されていると、内部空間に満たされた液体の量などが容易に把握できるので好ましい。
【0048】
第3ガスケット34は、第3シリンジ筒33の内部に挿入されて第3シリンジ筒33を液密に封止する。第3ガスケット34は、液密状態を維持したまま、第3シリンジ筒33内を往復動可能である。第3ガスケット34の往復動により、第3シリンジ筒33の内部に密封可能な液体の容量が変化する。図3に示されるように、第3ガスケット34は、第3シリンジ筒33の内径に対応した径の円柱形状である。図4に示されるように、第3ガスケット34の先端は円錐形状に突出されている。この先端の形状は、第3シリンジ筒33内面の先端形状に対応している。第3ガスケット34は、第3プランジャロッド35と接続されている。
【0049】
第1実施形態において、第3プランジャロッド35は、取り外しができない様に第3ガスケット34に接続されるものである。第3ガスケット34と第3プランジャロッド35と接続については、取り外しができない形状であってもよいし、脱着可能な形状であってもよく、特に限定されるものではない。脱着可能な形状については、図1及び図2で示される第1シリンジ1の形状が挙げられる。第3プランジャロッド35の全体形状は、第3シリンジ筒33の内部空間に挿入可能な外形であって、第3シリンジ筒33の軸方向の長さより十分に長い。したがって、第3ガスケット34を第3シリンジ筒33の先端まで押し込んだ状態で、第3プランジャロッド35の一部が第3シリンジ筒33の基端から突出する。第3プランジャロッド35は、横断面において、十字形状のリブを有するものである。軸部の断面形状は成形加工の容易性や強度などを考慮して適宜選択されうる。
【0050】
第3ガスケット34の素材はγ線滅菌やエチレンオキサイドガス滅菌が可能なものであれば特に限定されず、合成樹脂やエラストマーなどが採用されうる。多血小板血漿分離キットがディスポーザル品とされることや、γ線滅菌やエチレンオキサイドガス滅菌が施されることを考慮すると、第3ガスケット34としてエラストマーの成形品が採用されうる。
第3プランジャロッド35の素材はγ線滅菌やエチレンオキサイドガス滅菌が可能なものであれば特に限定されず、ガラスや合成樹脂などが採用されうる。多血小板血漿分離キットがディスポーザル品とされることや、γ線滅菌やエチレンオキサイドガス滅菌が施されることを考慮すると、第3プランジャロッド35をポリプロピレンの成形品とすることが好ましい。
【0051】
再生医療に適した多血小板血漿が得ることを考慮すると、多血小板血漿分離キットを構成する各部材のうち、採血された血液と接触する少なくとも第1中空針11、第1キャップ12、第1シリンジ筒13、第1ガスケット14、第2中空針21、第2キャップ22、第2シリンジ筒23、第2ガスケット24、第3中空針31、第3シリンジ筒33、及び第3ガスケット34は、γ線滅菌やエチレンオキサイドガス滅菌される。また、第1シリンジ1、第2シリンジ2及び第3シリンジ3を滅菌袋に密封してキットとすることにより、多血小板血漿分離キットの使い勝手が向上する。
【0052】
また、本実施形態に係る第1シリンジ1、第2シリンジ2及び第3シリンジ3の各部材の構成は一例であり、本発明の要旨を変更しない範囲において、各部材の構成の一部を他の公知の部材の構成に変更しうる。
【0053】
以下に、本発明に係る多血小板血漿分離方法を説明する。本実施形態に係る多血小板血漿分離方法は、上記多血小板血漿分離キットを用いて行われ、5つの主要なステップからなる。第1ステップでは、採血された血液41が満たされた第1シリンジ筒13の第1ポート131を封止し、第1シリンジ筒13の先端側を遠心移動方向として、第1シリンジ筒13内の血液41を、赤血球を含む第1区分42と、白血球、血小板、及び血漿を含む第2区分43とに遠心分離する。第2ステップでは、第1シリンジ筒13内の第1ガスケット14に第2中空針21を貫通し、第2区分43を第2シリンジ筒23に吸引する。第3ステップでは、第2区分43が満たされた第2シリンジ筒23の第2ポート231を封止し、第2シリンジ筒23の先端側を遠心移動方向として、第2シリンジ筒30内の第2区分43に対して遠心分離を行う。第4ステップでは、第2シリンジ筒23内の第2ガスケット24に第3中空針31を貫通し、上清44を第3シリンジ筒33に吸引する。第5ステップでは、第2シリンジ筒23内の第2ガスケット24を先端側に移動させて、遠心分離された多血小板血漿45を第2ポート231から排出する。これら各ステップが、図5から図8を用いて以下に詳細に説明する。図5から図8は、多血小板血漿分離方法の各ステップにおける多血小板血漿分離キットの状態を示す断面図である。
【0054】
第1ステップでは、図5(a)に示されるように、第1シリンジ筒13の第1ポート131を第1キャップ12で封止して第1シリンジ筒13を密封状態にする。第1シリンジ1は、採血に使用される。採血する際には、第1シリンジ筒13の第1ポート131に採血針が取り付けられる。もちろん、エクステンションチューブなどを介して採血針が第1ポート131に取り付けられてもよい。また、第1プランジャロッド15は第1ガスケット14に取り付けられる。採血は通常の方法であり、詳細な説明は省略する。この採血により、第1シリンジ筒13は血液41で満たされる。血液41は全血であり、赤血球、白血球、血小板、血漿などを含む。採血後に、第1シリンジ筒13の第1ポート131から採血針を取り外して、第1キャップ12を用いて第1ポート131を封止する。これにより、図5(a)に示されるように、第1シリンジ筒13が密封状態となる。
【0055】
続いて、密封したシリンジを用いて1回目の遠心分離を行う。この遠心分離に先だって、図5(b)に示されるように、第1プランジャロッド15を第1ガスケット14から取り外す。第1プランジャロッド15は、遠心分離する際に取り外してもよいし、取り付けたままでもよい。しかしながら、第1プランジャロッド15を第1ガスケット14から取り外すことで、第1シリンジ筒13から第1プランジャロッド15が突出しないので、遠心分離において第1シリンジ筒13の取り扱いが容易である。また、遠心分離において、第1プランジャロッド15が不用意に操作されることがない。さらに、遠心分離において第1プランジャロッド15の重量が第1ガスケット14に作用しないので、第1シリンジ筒13から第1キャップ12が外れるおそれを軽減できるなどの理由から、第1プランジャロッド15を取り外すことが好ましい。
【0056】
この遠心分離において、第1シリンジ筒13の先端側を遠心移動方向とする。ここで、「遠心移動方向」とは、遠心分離において遠心力が作用する方向であり、本発明においては先端である。また、第1ステップにおける遠心分離は、弱遠心である。弱遠心とは、血液の遠心分離において慣用されており、一般に、「全血を赤血球とその他(白血球、血小板、血漿)に分離する遠心分離」(非特許文献1参照)と定義される。具体的には、遠心分離条件が約500〜2500rpmの範囲における遠心分離が弱遠心とされる。遠心分離装置としては一般的なものが用いられる。
【0057】
この遠心分離により、第1シリンジ筒13に密封された血液41は、第1区分42と第2区分43とに分離される。第1区分42は、赤血球画分である。第2区分43は白血球、血小板、及び血漿を含む画分である。図5(c)に示されるように、第1区分42は、遠心分離により遠心移動方向、つまり第1シリンジ筒13の先端に分離される。
【0058】
第2ステップでは、第1シリンジ筒13内の第2区分43を第2シリンジ筒23に吸引する。1回目の遠心分離を行った後、図6(a)に示されるように、第1シリンジ1の第1プランジャロッド15の第1基端開口部156から第2シリンジ38に取り付けた第2中空針21を第1挿通孔26に挿通させる。さらに、第2中空針21を推し進めると、第2中空針21は第1ガスケット14を貫通する。これにより、第2中空針21の先端は第1シリンジ筒13内の第2区分43に到達する。この状態で、第2シリンジ2の第2プランジャロッド25を第2シリンジ筒23から引いて、第1シリンジ筒13内の第2区分43を第2シリンジ筒23内へ吸引する。第2中空針21で第1ガスケット14を貫通させた後、第2区分43を吸引する際は、第2中空針21が第1ガスケット14から突出しすぎると、第1区分42に到達し、第2区分43を吸引できなくなる恐れがある。そのため、第2中空針21が第1ガスケット14を貫通し、第2区分43に到達した後、それ以上の突出を制限する構成を有することが好ましい。本発明においては、図6(a)に示されるように、第1挿通孔154の第1基端開口部156と第2シリンジ2の第2ポート231の先端が当接し、それ以上挿通できない形状であるが、特にこの形状に限定されるものではなく、例えば第1挿通孔154の内面と第2中空針21のハブ212が係止される構造、第1挿通孔154の第1基端開口部156と第2中空針21のハブ212が当接する構造などであってもよい。
【0059】
図6(b)に示されるように、第2シリンジ筒23から第2プランジャロッド25を引くと、第1シリンジ筒13内の第2区分43が第2シリンジ筒23へ吸引されるとともに、第1ガスケット14が、第1シリンジ筒13内を先端側へ移動する。第1ガスケット14の移動に伴って、第2シリンジ筒23が、第1シリンジ1の先端方向にさらに移動する。これにより、第1シリンジ筒13から第2シリンジ筒23への第2区分43の吸引が連続的かつ円滑に行われる。なお、第1シリンジ筒13には、第1区分42及び若干量の第2区分43が残るが、これらは廃棄するか、別目的に使用する。
【0060】
第1ステップにおける遠心分離を弱遠心とすることにより、血液41を第1区分42と第2区分43とに分離するとともに、第2区分43においては血小板をほぼ均等に分散させることができる。つまり、第1区分42との境界付近に血小板が集中することがない。これにより、第2区分43を第1シリンジ筒13から第2シリンジ筒23へ吸引する際に生ずる第2区分43の若干のロスにより失われる血小板の量を少なくすることができる。
【0061】
第3ステップでは、図7(a)に示されるように、第2シリンジ筒23の第2ポート231を第2キャップ22で封止して第2シリンジ筒23を密封状態にした後、密封したシリンジを用いて2回目の遠心分離を行う。この遠心分離に先だって、図7(b)に示されるように、第2プランジャロッド25を第2ガスケット24から取り外す。第2プランジャロッド25は、遠心分離する際に取り外してもよいし、取り付けたままでもよい。しかしながら、第2プランジャロッド25を第2ガスケット24から取り外すことで、第2シリンジ筒23から第2プランジャロッド25が突出しないので、遠心分離において第2シリンジ筒23の取り扱いが容易である。また、遠心分離において、第2プランジャロッド25が不用意に操作されることがない。さらに、遠心分離において第2プランジャロッド25の重量が第2ガスケット24に作用しないので、第2シリンジ筒23から第2キャップ22が外れるおそれを軽減できるなどの理由から、第2プランジャロッド25を取り外すことが好ましい。
【0062】
この遠心分離において、第2シリンジ筒23の先端側を遠心移動方向とする。また、第3ステップにおける遠心分離は、強遠心である。強遠心とは、血液の遠心分離において慣用されており、一般に、「血小板、白血球と残留赤血球を血漿から分離する遠心分離」(非特許文献1参照)と定義される。本発明では、第2区分の下方に血小板を濃縮する遠心分離を強遠心という。具体的には、遠心分離条件が約3000〜4000rpmの範囲における遠心分離が強遠心とされる。この遠心分離により、図7(c)に示されるように、第2区分43が遠心分離され、血小板が遠心移動方向、つまり第2シリンジ筒23の先端に移動する。また、この遠心分離を強遠心とすることにより、第2区分43から高濃度の多血小板血漿45を分離することができる。
【0063】
第4ステップでは、第2シリンジ筒23内の上清44を第3シリンジ筒33に吸引する。2回目の遠心分離を行った後、図8(a)に示されるように、第2シリンジ2の第2プランジャロッド25の第2基端開口部256から第3シリンジ3に取り付けた第3中空針31を第3挿通孔35に挿通させる。さらに、第3中空針31を推し進めると、第3中空針31は第2ガスケット24を貫通する。これにより、第3中空針31の先端は第2シリンジ筒23内の上清44に到達する。この状態で、第3シリンジ3の第3プランジャロッド35を第3シリンジ筒33から引いて、第2シリンジ筒23内の上清44を第3シリンジ筒33内へ吸引する。第3中空針31で第2ガスケット24を貫通させた後、上清44を吸引する際は、第3中空針31が第2ガスケット24から突出しすぎると、多血小板血漿45に到達し、上清44を吸引できなくなる恐れがある。そのため、第3中空針31が第2ガスケット24を貫通し、上清44に到達した後、それ以上の突出を制限する構成を有することが好ましい。本発明においては、図8(a)に示されるように、第2挿通孔254の第2基端開口部256と第3シリンジ3の第3ポート331の先端が当接し、それ以上挿通できない形状であるが、特にこの形状に限定されるものではなく、例えば第2挿通孔254の内面と第3中空針31のハブ312が係止される構造、第2挿通孔254の第2基端開口部256と第3中空針31のハブ312が当接する構造などであってもよい。
【0064】
図8(b)に示されるように、第3シリンジ筒33から第3プランジャロッド35を引くと、第2シリンジ筒23内の上清44が第3シリンジ筒33へ吸引されるとともに、第2ガスケット24が、第2シリンジ筒23内を先端側へ移動する。第2ガスケット24と第2シリンジ筒23とは嵌合状態にあるので、第2ガスケット24の移動に伴って、第3シリンジ筒33が、第2シリンジ筒23にさらに進入する。これにより、第2シリンジ筒23から第3シリンジ筒33への上清44の吸引が連続的かつ円滑に行われる。これにより、採血された血液41から多血小板血漿45が分離される。
【0065】
なお、本実施形態では、高濃度の多血小板血漿45を得るために、第4ステップにおいて、第2シリンジ筒23内の上清44を第3シリンジ筒33に吸引し、多血小板血漿45を分離することとした。しかしながら、操作行程の増加などを考慮して、第3ステップで遠心分離した後、上清44を除去せずに多血小板血漿45を第2シリンジ筒23から排出してもよい。
【0066】
このように、本発明に係る多血小板血漿分離キット及び多血小板血漿分離方法によれば、採血に使用した第1シリンジ1を用いて遠心分離を行って、血液41から多血小板血漿45を得ることができる。これにより、γ線滅菌やエチレンオキサイドガス滅菌がされた少数の器具で多血小板血漿45の分離を実現できる。また、3つのシリンジ1,2,3を用いることにより、第1区分42と第2区分43とを確実に分離して、高濃度の多血小板血漿45を得ることができる。
【0067】
[第2実施形態]
図9は、本発明の第2実施形態に係る多血小板血漿分離キットの第1シリンジ1の外観構成を示す分解斜視図である。図10は、第1シリンジ1の内部構成を示す縦断面図である。図11は、本発明の第2実施形態に係る多血小板血漿分離キットのガイド部材5の外観構成を示す分解斜視図である。図12は、ガイド部材5の内部構成を示す縦断面図である。
【0068】
本発明の第2実施形態に係る多血小板血漿分離キットは、第1シリンジ1、第2シリンジ2、第3シリンジ3とガイド部材5とを具備する。第1シリンジ1は、血液を吸引するために用いられる。血液の吸引とは、具体的には採血が挙げられるが、血液回路などからの吸引や既に採血された血液を吸引などであってもよい。第2シリンジ2は、遠心分離により第1シリンジ1に形成された白血球、血小板、及び血漿を含む画分(本発明の第2区分43に相当する。)を吸引するために用いられる。第3シリンジ3は、第2シリンジ2に吸引した第2区分43を遠心分離することで得られる上清44を吸引除去するために用いられる。ガイド部材5は、第1シリンジ1から第2シリンジ2を用いて第2区分43を吸引する際、及び第2シリンジ2から第3シリンジ3を用いて第2区分43を吸引する際に操作を補助するために使用するものである。
【0069】
本発明の第2実施形態に係る多血小板血漿分離キットにおける第1シリンジ1は、
本発明の第1実施形態における第1シリンジ1に対して、第1プランジャロッドの形状のみが異なるものである。
【0070】
図9に示す様に、第1プランジャロッド16は、ねじ込み式により第1ガスケット14に対して脱着可能なものである。第1プランジャロッド16の全体形状は、第1シリンジ筒13の内部空間に挿入可能な外形であって、第1シリンジ筒13の軸方向の長さより十分に長い。したがって、第1ガスケット14を第1シリンジ筒13の先端まで押し込んだ状態で、第1プランジャロッド16の一部が第1シリンジ筒13の基端から突出する。
【0071】
第1プランジャロッド16は、第1雄ネジ部161、軸部162と端板163を有している。第1雄ネジ部161は、第1ガスケット14の取付口141にねじ込まれる。取付口141の雌ネジと第1雄ネジ部161とは噛合する。これにより、第1プランジャロッド16が第1ガスケット14に対してねじ込み式により脱着される。この脱着は繰り返し行うことができる。遠心分離する際に取り外してもよいし、取り付けたままでもよい。
【0072】
軸部162は、横断面において、十字形状のリブを有するものである。軸部162の断面形状は成形加工の容易性や強度などを考慮して適宜選択されうる。軸部162の先端に第1雄ネジ部161が配置され、基端に端板163が配置されている。端板163は、円板形状の平板であり、軸部162の軸方向に対して垂直に接続されている。端板163は第1プランジャロッド16のハンドリングを向上させるためのものであり、第1プランジャロッド16が第1シリンジ筒13に対して押し込まれる際に指が押し当てられ、第1シリンジ筒13から第1プランジャロッド16を基端側に引く際に持ち手となる。
【0073】
第2シリンジ2においては、カヌラ211以外の構成は、図9及び図10の括弧で示されるように、第1シリンジ1と同じ構成である。ただし、第2シリンジ2は、遠心分離により第1シリンジ1に形成された白血球、血小板、及び血漿を含む画分(本発明の第2区分に相当する。)を吸引するために用いられるものであるため、第2シリンジ2における第2中空針21のカヌラ211の軸方向の長さは、ガイド部材5の基端から、第2中空針21を挿入した際に、第1ガスケット14を貫通するに必要な長さに設定される。この様な構成によって、第1ガスケット14を貫通した第2中空針21は、遠心分離された第2区分43を吸引することができる。
【0074】
第3シリンジ3は、第2シリンジ2に吸引した第2区分43を遠心分離することで得られる上清44を吸引除去するために用いられる。第2実施形態における第3シリンジ3は、第1実施形態における第3シリンジ3と同じ構成である。ただし、第3シリンジ3は、遠心分離により第3シリンジ3に形成された上清44を吸引するために用いられるものであるため、第3シリンジ3における第3中空針31のカヌラ311の軸方向の長さは、ガイド部材5の基端から、第3中空針31を挿入した際に、第2ガスケット24を貫通するに必要な長さに設定される。この様な構成によって、第2ガスケット24を貫通した第3中空針31は、遠心分離された上清44を吸引することができる。
【0075】
図11に示すように、ガイド部材5は、第1シリンジ1から第2シリンジ2を用いて第2区分43を吸引する際、及び第2シリンジ2から第3シリンジ3を用いて第2区分43を吸引する際に操作を補助するために使用するものである。ガイド部材5は、第1プランジャロッド16を取り外した後の第1シリンジ筒13、あるいは第2プランジャロッド26を取り外した後の第2シリンジ筒23に挿入可能なものである。ガイド部材5は、第1シリンジ1及び第2シリンジの形状が異なる場合、または血液の付着などによる衛生面での問題を考慮して、各シリンジ毎に設けてもよい。ガイド部材5の全体形状は、第1シリンジ筒13の内部空間に挿入可能な外形であって、第1シリンジ筒13の軸方向の長さより十分に長い。したがって、第1ガスケット14を第1シリンジ筒13の先端まで押し込んだ状態で、第1プランジャロッド16の一部が第1シリンジ筒13の基端から突出する。
【0076】
ガイド部材5は、先端ポート51、先端板52、軸部53と基端板54を有し、先端から基端に渡って挿通孔55を有している。第1ガスケット14から第1プランジャロッド16を取り外した後、ガイド部材5を第1シリンジ筒13に挿入した際、先端ポート51は第1ガスケット14の取付口141に挿入され、先端板52は第1ガスケット14の基端と当接する。軸部53は、横断面において、中央に円形の挿通孔55が設けられ、その周囲に十字形状のリブを有するものである。軸部53の断面形状は成形加工の容易性や強度などを考慮して適宜選択されうる。軸部53の基端に基端板54が配置されている。基端板54は、円板形状の平板であり、軸部53の軸方向に対して垂直に接続されている。基端板54はガイド部材5のハンドリングを向上させるためのものであり、第1シリンジ筒13からガイド部材5を基端側に引く際に持ち手となる。
【0077】
さらに、ガイド部材5は、先端から基端に渡る挿通孔55を有している。挿通孔55は、ガイド部材5の先端ポート51の先端から基端に渡って設けられ、先端開口部56及び基端開口部57を有している。挿通孔55の径は、ガイド部材5の基端である基端開口部57から先端である先端開口部56に向かい小さくなるものである。挿通孔55の径は、基端開口部57から先端開口部56に向かい小さくなるものであれば、特に形状は問わないが、挿通孔55の径が基端開口部57から先端開口部56に向けて漸次小さくなる形状、または図12(a)で示される挿通孔55の径が挿通孔55の一部分で縮径する形状など基端から先端に向けて第2中空針を挿通し易い形状が適宜選択される。上述の形状により、先端部では第2中空針を第1ガスケットの貫通させたい位置への誘導する効果を奏する。
【0078】
加えて、挿通孔55の先端開口部56は、ガイド部材5の先端面の中心部に位置するものである。挿通孔55の先端開口部56が、ガイド部材5の先端面の中心部に位置することで、第1ガスケット14の取付口141を通して、第1ガスケット14を基端側から貫通することができる。
ガイド部材5の素材はγ線滅菌やエチレンオキサイドガス滅菌が可能なものであれば特に限定されず、ガラスや合成樹脂などが採用されうる。多血小板血漿分離キットがディスポーザル品とされることや、γ線滅菌やエチレンオキサイドガス滅菌が施されることを考慮すると、ガイド部材5をポリプロピレンの成形品とすることが好ましい。
【0079】
再生医療に適した多血小板血漿が得ることを考慮すると、多血小板血漿分離キットを構成する各部材のうち、採血された血液と接触する少なくとも第1中空針11、第1キャップ12、第1シリンジ筒13、第1ガスケット14、第2中空針21、第2キャップ22、第2シリンジ筒23、第2ガスケット24、第3中空針31、第3シリンジ筒33、第3ガスケット34、及びガイド部材5は、γ線滅菌やエチレンオキサイドガス滅菌される。また、第1シリンジ1、第2シリンジ2、第3シリンジ3及びガイド部材5を滅菌袋に密封してキットとすることにより、多血小板血漿分離キットの使い勝手が向上する。
【0080】
また、本実施形態に係る第1シリンジ1、第2シリンジ2、第3シリンジ3及びガイド部材5の各部材の構成は一例であり、本発明の要旨を変更しない範囲において、各部材の構成の一部を他の公知の部材の構成に変更しうる。
【0081】
以下に、本発明に係る多血小板血漿分離方法を説明する。本実施形態に係る多血小板血漿分離方法は、上記多血小板血漿分離キットを用いて行われ、7つの主要なステップからなる。第1ステップでは、採血された血液41が満たされた第1シリンジ筒13の第1ポート131を封止し、第1シリンジ筒13の第1ポート131側を遠心移動方向として、第1シリンジ筒13内の血液41を、赤血球を含む第1区分42と、白血球、血小板、及び血漿を含む第2区分43とに遠心分離する。第2ステップでは、第1プランジャロッド16を第1ガスケット14から取り外した第1シリンジ筒13内に、ガイド部材5を挿入後、ガイド部材5の基端開口部57から第2中空針21を挿通し、さらに押し込むことで第2中空針21が第1ガスケット14を貫通する。第3ステップでは、第1シリンジ筒13内の第1ガスケット14を貫通した第2中空針21で、第2区分43を第2シリンジ筒23内に吸引する。第4ステップでは、第2区分43が満たされた第2シリンジ筒23の第2ポート231を封止し、第2シリンジ筒23の第2ポート231側を遠心移動方向として、第2シリンジ筒23内の第2区分43に対して遠心分離を行う。第5ステップでは、第2プランジャロッド26を第2ガスケット24から取り外した第2シリンジ筒23内に、ガイド部材5を挿入後、ガイド部材5の基端開口部57から第3中空針31を挿入し、さらに押し込むことで第3中空針31で第3ガスケット34を貫通する。第6ステップでは、第2シリンジ筒23内の第2ガスケット24を貫通した第3中空針31で上清44を第3シリンジ筒33内に吸引する。第7ステップでは、第2シリンジ筒23内の第2ガスケット24を先端側に移動させて、遠心分離された多血小板血漿45を第2ポート231から排出する。これら各ステップを図13から図16を用いて以下に詳細に説明する。図13から図16は、多血小板血漿分離方法の各ステップにおける多血小板血漿分離キットの状態を示す断面図である。
【0082】
第1ステップでは、図13(a)に示されるように、第1シリンジ筒13の第1ポート131を第1キャップ12で封止して第1シリンジ筒13を密封状態にする。第1シリンジ1は、採血に使用される。採血する際には、第1シリンジ筒13の第1ポート131に採血針が取り付けられる。もちろん、エクステンションチューブなどを介して採血針が第1ポート131に取り付けられてもよい。また、第1プランジャロッド16は第1ガスケット14に取り付けられる。採血は通常の方法であり、詳細な説明は省略する。この採血により、第1シリンジ筒13は血液41で満たされる。血液41は全血であり、赤血球、白血球、血小板、血漿などを含む。採血後に、第1シリンジ筒13の第1ポート131から採血針を取り外して、第1キャップ12を用いて第1ポート131を封止する。これにより、図13(a)に示されるように、第1シリンジ筒13が密封状態となる。
【0083】
続いて、密封したシリンジを用いて1回目の遠心分離を行う。この遠心分離に先だって、図13(b)に示されるように、第1プランジャロッド16を第1ガスケット14から取り外す。第1プランジャロッド16は、遠心分離する際に取り外してもよいし、取り付けたままでもよい。しかしながら、第1プランジャロッド16を第1ガスケット14から取り外すことで、第1シリンジ筒13から第1プランジャロッド16が突出しないので、遠心分離において第1シリンジ筒13の取り扱いが容易である。また、遠心分離において、第1プランジャロッド16が不用意に操作されることがない。さらに、遠心分離において第1プランジャロッド16の重量が第1ガスケット14に作用しないので、第1シリンジ筒13から第1キャップ12が外れるおそれを軽減できるなどの理由から、第1プランジャロッド16を取り外すことが好ましい。
【0084】
この遠心分離において、第1シリンジ筒13の第1ポート131側を遠心移動方向とする。ここで、「遠心移動方向」とは、遠心分離において遠心力が作用する方向であり、本発明においては先端である。また、第1ステップにおける遠心分離は、弱遠心である。弱遠心とは、血液の遠心分離において慣用されており、一般に、「全血を赤血球とその他(白血球、血小板、血漿)に分離する遠心分離」(非特許文献1参照)と定義される。具体的には、遠心分離条件が約500〜2500rpmの範囲における遠心分離が弱遠心とされる。遠心分離装置としては一般的なものが用いられる。
【0085】
この遠心分離により、第1シリンジ筒13に密封された血液41は、第1区分42と第2区分43とに分離される。第1区分42は、赤血球画分である。第2区分43は白血球、血小板、及び血漿を含む画分である。図13(c)に示されるように、第1区分42は、遠心分離により遠心移動方向、つまり第1シリンジ筒13の先端に分離される。
【0086】
第2ステップでは、図14(a)に示されるように、第1シリンジ筒13内にガイド部材5を挿入後、ガイド部材5の基端開口部57から第2中空針21を挿通し、さらに押し込むことで第2中空針21で第1ガスケット14を貫通させる。1回目の遠心分離を行う際に、第1プランジャロッド16を取り外した場合は、遠心分離した後の第1シリンジ筒13内にそのままガイド部材5を挿入すればよい。ガイド部材5を挿入後、ガイド部材5の基端開口部57から第2シリンジ2に取り付けた第2中空針21を挿通孔55に挿通させる。さらに、第2中空針21を推し進めると、第2中空針21は第1ガスケット14を貫通する。これにより、第2中空針21の先端は第1シリンジ筒13内の第2区分43に到達する。
【0087】
第3ステップでは、第1シリンジ筒13内の第2区分43を第2シリンジ筒23に吸引する。図14(a)に示されるように、第2中空針21が第1ガスケット14を貫通し、第2中空針21の先端は第1シリンジ筒13内の第2区分43に到達した状態で、第2シリンジ2の第2プランジャロッド26を第2シリンジ筒23から引いて、第1シリンジ筒13内の第2区分43を第2シリンジ筒23内へ吸引する。第2中空針21で第1ガスケット14を貫通させた後、第2区分43を吸引する際は、第2中空針21が第1ガスケット14から突出しすぎると、第1区分42に到達し、第2区分43を吸引できなくなる恐れがある。そのため、第2中空針21が第1ガスケット14を貫通し、第2区分43に到達した後、それ以上の突出を制限する構成を有することが好ましい。本発明においては、図14(a)に示されるように挿通孔55の基端開口部57と第2シリンジ2の第2ポート231の先端が当接し、それ以上挿通できない形状であるが、特にこの形状に限定されるものではなく、例えば挿通孔55の内面と第2中空針21のハブ212が係止される構造、挿通孔55の基端開口部57と第2中空針21の212が当接する構造などであってもよい。
【0088】
図14(b)に示されるように、第2シリンジ筒23から第2プランジャロッド26を引くと、第1シリンジ筒13内の第2区分43が第2シリンジ筒23へ吸引されるとともに、第1ガスケット14が、第1シリンジ筒13内を第1ポート131側へ移動する。第1ガスケット14の移動に伴って、第2シリンジ筒53が、第1シリンジ1の方向にさらに移動する。これにより、第1シリンジ筒13から第2シリンジ筒23への第2区分43の吸引が連続的かつ円滑に行われる。なお、第1シリンジ筒13には、第1区分42及び若干量の第2区分43が残るが、これらは廃棄するか、別目的に使用する。
【0089】
第1ステップにおける遠心分離を弱遠心とすることにより、血液41を第1区分42と第2区分43とに分離するとともに、第2区分43においては血小板をほぼ均等に分散させることができる。つまり、第1区分42との境界付近に血小板が集中することがない。これにより、第2区分43を第1シリンジ筒13から第2シリンジ筒23へ吸引する際に生ずる第2区分43の若干のロスにより失われる血小板の量を少なくすることができる。
【0090】
第4ステップでは、図15(a)に示されるように、第2シリンジ筒23の第2ポート231を第2キャップ22で封止して第2シリンジ筒23を密封状態にした後、密封したシリンジを用いて2回目の遠心分離を行う。この遠心分離に先だって、図15(b)に示されるように、第2プランジャロッド26を第2ガスケット24から取り外す。第2プランジャロッド26は、遠心分離する際に取り外してもよいし、取り付けたままでもよい。しかしながら、第2プランジャロッド26を第2ガスケット24から取り外すことで、第2シリンジ筒23から第2プランジャロッド26が突出しないので、遠心分離において第2シリンジ筒23の取り扱いが容易である。また、遠心分離において、第2プランジャロッド26が不用意に操作されることがない。さらに、遠心分離において第2プランジャロッド26の重量が第2ガスケット24に作用しないので、第2シリンジ筒23から第2キャップ22が外れるおそれを軽減できるなどの理由から、第2プランジャロッド26を取り外すことが好ましい。
【0091】
この遠心分離において、第2シリンジ筒23の先端側を遠心移動方向とする。また、第4ステップにおける遠心分離は、強遠心である。強遠心とは、血液の遠心分離において慣用されており、一般に、「血小板、白血球と残留赤血球を血漿から分離する遠心分離」(非特許文献1参照)と定義される。本発明では、第2区分の下方に血小板を濃縮する遠心分離を強遠心という。具体的には、遠心分離条件が約3000〜4000rpmの範囲における遠心分離が強遠心とされる。この遠心分離により、図15(c)に示されるように、第2区分43が遠心分離され、血小板が遠心移動方向、つまり第2シリンジ筒23の先端に移動する。また、この遠心分離を強遠心とすることにより、第2区分43から高濃度の多血小板血漿45を分離することができる。
【0092】
第5ステップでは、図16(a)に示されるように、第2シリンジ筒23内にガイド部材5を挿入後、ガイド部材5の基端開口部74から第3中空針31を挿通し、さらに押し込むことで第3中空針31で第2ガスケット24を貫通させる。2回目の遠心分離を行う際に、第2プランジャロッド26を取り外した場合は、遠心分離した後の第2シリンジ筒23内にそのままガイド部材5を挿入すればよい。ガイド部材5を挿入後、ガイド部材5の基端開口部57から第3シリンジ39に取り付けた第3中空針31を挿通孔55に挿通させる。さらに、第3中空針31を推し進めると、第3中空針31は第2ガスケット24を貫通する。これにより、第3中空針31の先端は第2シリンジ筒23内の上清44に到達する。
【0093】
第6ステップでは、第2シリンジ筒23内の上清44を第3シリンジ筒33に吸引する。図16(a)に示されるように、第3中空針31が第2ガスケット24を貫通し、第3中空針31の先端は第2シリンジ筒23内の第上清44に到達した状態で、第3シリンジ3の第3プランジャロッド35を第3シリンジ筒33から引いて、第2シリンジ筒23内の上清44を第3シリンジ筒33内へ吸引する。第3中空針31で第2ガスケット24を貫通させた後、上清44を吸引する際は、第3中空針31が第2ガスケット24から突出しすぎると、多血小板血漿45に到達し、上清44を吸引できなくなる恐れがある。そのため、第3中空針31が第2ガスケット24を貫通し、上清44に到達した後、それ以上の突出を制限する構成を有することが好ましい。本発明においては、図16(a)に示されるように、挿通孔55の基端開口部57と第3シリンジ3の第3ポート331の先端が当接し、それ以上挿通できない形状であるが、特にこの形状に限定されるものではなく、例えば挿通孔55の内面と第3中空針31の312が係止される構造、挿通孔55の基端開口部57と第3中空針31のハブ312が当接する構造などであってもよい。
【0094】
図16(b)に示されるように、第3シリンジ筒33から第3プランジャロッド35を引くと、第2シリンジ筒23内の上清44が第3シリンジ筒33へ吸引されるとともに、第2ガスケット24が、第2シリンジ筒23内を第2ポート231側へ移動する。第2ガスケット24の移動に伴って、第3シリンジ筒33が、第2シリンジ2の方向にさらに移動する。これにより、第2シリンジ筒23から第3シリンジ筒33への第2区分43の吸引が連続的かつ円滑に行われる。これにより、採血された血液41から多血小板血漿45が分離される。
【0095】
なお、本実施形態では、より高濃度の多血小板血漿45を得るために、4ステップにおいて、第2シリンジ筒23内の上清44を第3シリンジ筒33に吸引し、多血小板血漿45を分離することとした。しかしながら、操作行程の増加などを考慮して、第3ステップで遠心分離した後、上清44を除去せずに多血小板血漿45を第2シリンジ筒23から排出してもよい。
【0096】
このように、本発明に係る多血小板血漿分離キット及び多血小板血漿分離方法によれば、多血小板血漿の分離を簡便に且つ失敗することなく行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明は、全血を遠心分離することにより多血小板血漿を得るための多血小板血漿分離キット及び多血小板血漿分離方法に適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液を吸引するために用いられる第1シリンジと、該第1シリンジから血小板及び血漿を含む遠心分離区分を吸引するために用いられる第2シリンジと、該第1シリンジに脱着可能な第1中空針及び第1キャップと、該第2シリンジに脱着可能な第2中空針及び第2キャップと、を具備する多血小板血漿分離キットであって、
前記第1シリンジは、
先端に前記第1中空針及び前記第1キャップが脱着可能な第1ポートと、開放した基端と、を有する第1シリンジ筒と、
前記第1シリンジ筒内を液密に封止して前記第1シリンジ筒内を往復動される第1ガスケットと、
前記第1ガスケットの基端に先端が接続される第1プランジャロッドと、を備え、
前記第2シリンジは、
先端に前記第2中空針及び前記第2キャップが脱着可能な第2ポートと、開放した基端と、を有する第2シリンジ筒と、
前記第2シリンジ筒内を液密に封止して前記第2シリンジ筒内を往復動される第2ガスケットと、
前記第2ガスケットの基端に先端が接続される第2プランジャロッドと、を備え、
前記第1プランジャロッドは、先端から基端に渡る挿通孔を有し、
前記挿通孔の基端から前記第2中空針を挿通した際に、前記第2中空針が前記第1ガスケットを貫通することを特徴とする多血小板血漿分離キット。
【請求項2】
前記挿通孔の径が、前記第1プランジャロッドの基端から先端に向かい小さくなるものであって、
前記挿通孔の先端側開口部が、前記第1プランジャロッドの先端面の中心部に位置することを特徴とする請求項1に記載の多血小板血漿分離キット。
【請求項3】
請求項1または2に記載の多血小板血漿分離キットであって、
さらに、前記第2シリンジから遠心分離区分を吸引するために用いられる第3シリンジを具備し、
前記第3シリンジは、
先端に第3中空針が設けられた第3ポートと、開放した基端と、を有する第3シリンジ筒と、
前記第3シリンジ筒内を液密に封止して前記第3シリンジ筒内を往復動される第3ガスケットと、
前記第3ガスケットの基端に先端が接続される第3プランジャロッドと、を備え、
前記第2プランジャロッドは、先端から基端に渡る挿通孔を有し、
前記挿通孔の基端から前記第3中空針を挿通した際に、前記第3中空針が前記第2ガスケットを貫通することを特徴とする多血小板血漿分離キット。
【請求項4】
血液を吸引するために用いられる第1シリンジと、該第1シリンジから血小板及び血漿を含む遠心分離区分を吸引するために用いられる第2シリンジと、該第1シリンジに脱着可能な第1中空針及び第1キャップと、該第2シリンジに脱着可能な第2中空針及び第2キャップと、を具備する多血小板血漿分離キットであって、
前記第1シリンジは、
先端に前記第1中空針及び前記第1キャップが脱着可能な第1ポートと、開放した基端と、を有する第1シリンジ筒と、
前記第1シリンジ筒内を液密に封止して前記第1シリンジ筒内を往復動される第1ガスケットと、
前記第1ガスケットの基端に先端が脱着可能に接続される第1プランジャロッドと、を備え、
前記第2シリンジは、
先端に前記第2中空針及び前記第2キャップが脱着可能な第2ポートと、開放した基端と、を有する第2シリンジ筒と、
前記第2シリンジ筒内を液密に封止して前記第2シリンジ筒内を往復動される第2ガスケットと、
前記第2ガスケットの基端に先端が接続される第2プランジャロッドと、を備え、
前記第1プランジャロッドを取り外した後に、前記第1シリンジ筒の基端から挿入可能で、挿入した際に前記第1ガスケットに当接するガイド部材を有し、
前記ガイド部材は、前記第2中空針を挿通するための先端から基端に渡る挿通孔を有し、
前記挿通孔の基端から前記第2中空針を挿通した際に、前記第2中空針が前記第1ガスケットを貫通することを特徴とする多血小板血漿分離キット。
【請求項5】
前記挿通孔の径が、前記ガイド部材の基端から先端に向かい小さくなるものであって、
前記挿通孔の先端側開口部が、前記ガイド部材の先端面の中心部に位置することを特徴とする請求項に記載の多血小板血漿分離キット。
【請求項6】
請求項4または5に記載の多血小板血漿分離キットであって、
さらに、前記第2シリンジから遠心分離区分を吸引するために用いられる第3シリンジを具備し、
前記第3シリンジは、
先端に第3中空針が設けられた第3ポートと、開放した基端と、を有する第3シリンジ筒と、
前記第3シリンジ筒内を液密に封止して前記第3シリンジ筒内を往復動される第3ガスケットと、
前記第3ガスケットの基端に先端が接続される第3プランジャロッドと、を備え、
前記ガイド部材の挿通孔の基端から前記第3中空針を挿通した際に、前記第3中空針が前記第2ガスケットを貫通することを特徴とする多血小板血漿分離キット。
【請求項7】
先端に第1中空針及び第1キャップが脱着可能な第1ポートと開放した基端とを有する第1シリンジ筒と、前記第1シリンジ筒内を液密に封止して前記第1シリンジ筒内を往復動される第1ガスケットと、前記第1ガスケットの基端に先端が脱着可能に接続される第1プランジャロッドと、を備える前記第1シリンジと、
先端に前記第2中空針及び前記第2キャップが脱着可能な第2ポートと開放した基端とを有する第2シリンジ筒と、前記第2シリンジ筒内を液密に封止して前記第2シリンジ筒内を往復動される第2ガスケットと、前記第2ガスケットの基端に先端が接続される第2プランジャロッドと、を備える前記第2シリンジと、
前記第1シリンジ筒に挿入可能で、前記第2中空針を挿通するための先端から基端に渡る挿通孔を有するガイド部材と、を用いた多血小板血漿分離方法であって、
前記第1シリンジ筒の前記第1プランジャロッドを取り外し、前記ガイド部材を挿入した後に、前記ガイド部材の前記挿通孔の基端側に前記第2シリンジに装着した前記第2中空針を挿通し、前記第2中空針で前記第1ガスケットを貫通するステップを含む多血小板血漿分離方法。
【請求項8】
請求項7に記載の多血小板血漿分離方法であって、
さらに、先端に第3中空針及び第3中空針が設けられた第3ポートと開放した基端とを有する第3シリンジ筒と、前記第3シリンジ筒内を液密に封止して前記第3シリンジ筒内を往復動される第3ガスケットと、前記第3ガスケットの基端に先端が接続される第3プランジャロッドとを備える前記第3シリンジを用いる多血小板血漿分離方法であって、
前記第2シリンジ筒の前記第2プランジャロッドを取り外し、前記ガイド部材を挿入した後に、前記ガイド部材の前記挿通孔の基端側に前記第3シリンジに装着した前記第3中空針を挿通し、前記第3中空針で前記第2ガスケットを貫通するステップを含む多血小板血漿分離方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−161437(P2012−161437A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23395(P2011−23395)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000135036)ニプロ株式会社 (583)
【Fターム(参考)】