説明

多軸スクリュープレス

【課題】スクリーン内面に汚泥層が堆積することを少なくともろ室上部において抑制してろ過水量を安定させることで、脱水機全体の脱水効率を向上させることができる多軸スクリュープレスを提供する。
【解決手段】実質的に平行に配置し、かつ上下方向の位置が異なる複数のスクリュー軸31、32と、各スクリュー軸31、32に形成するスクリュー羽根41、42と、スクリュー羽根41、42の周囲にろ室を形成するスクリーン2と、スクリーン内面に摺接してスクリュー羽根41、42の径方向外側縁に設けるスクレーパ6を備え、少なくともろ室上部に配置する上位のスクリュー軸31が多条の上位のスクリュー羽根41を有するとともに、各条の羽根411、412がそれぞれスクレーパを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多軸スクリュープレスに関し、例えば下水汚泥や工業廃水汚泥等の有機性汚泥を脱水する技術に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来の多軸スクリュープレスは、本体ケーシングの外周部がスクリーンをなし、本体ケーシングを軸心方向に挿通してスクリュー軸を配置し、スクリュー軸にスクリュー羽根を形成している。スクリュー羽根の径方向外側の先端縁にはスクレーパを設けており、スクレーパがスクリーンの内面に弾性的に接触している。スクリュー羽根は汚泥供給側から汚泥排出側へ行くほどにピッチが狭くなる形状をなし、あるいはスクリュー軸の軸径が汚泥排出側ほど太くなる形状をなす。
【0003】
本体ケーシングの汚泥排出側には開口に対向して背圧板を配置しており、背圧板はシリンダー装置によって開口に向けて出退自在であり、開口に向けて作用させる圧力を調整することにより脱水力(圧搾力)を制御する。
【0004】
本体ケーシングに投入した脱水対象汚泥は、スクリーンでろ過されながらスクリュー軸およびスクリュー羽根の回転によって汚泥排出側へ搬送される。この際に、スクリュー羽根のピッチが汚泥排出側ほど狭くなり、あるいはスクリュー軸の軸径が汚泥排出側ほど太くなることで、本体ケーシングにおけるスクリュー羽根の1ピッチ当たりのろ室容積が減少して行く。汚泥はろ室容積の減少による圧密力および背圧板による背圧の作用により脱水されて、汚泥排出側の開口から本体ケーシングの外部へ脱水汚泥(ケーキ)として排出される。
【0005】
スクリーンによるろ過処理においては、ろ過処理の経過とともにスクリーン内面に汚泥層が堆積してろ過抵抗を生じさせ、汚泥中の水分がスクリーン内面の汚泥層を通過するのに際して障害となる。このスクリーン内面の汚泥層が厚くなるほどにろ過抵抗は飛躍的に増加し、機内圧力を一定に維持して運転するとろ過水量が小さくなり、ケーキ含水率を低下させることが困難となる。
【0006】
このため、スクリュー羽根の外周縁にスクレーパを設け、スクリュー羽根の回転に伴ってスクレーパでスクリーン内面をスクレーピングして汚泥層を剥離させることがある。本発明者らは、スクレーピング頻度が多いほどにスクリーン内面の汚泥層の増加を抑制でき、スクレーピングの頻度を多くすることがケーキ含水率低下に大きく貢献することを見出した。ここで、スクレーピング頻度の増加はスクリュー羽根の回転速度を高めることで実現でき、単位時間当たりの汚泥処理量を一定に維持する運転条件下では、スクリュー羽根の羽根ピッチを小さくすることでスクリュー羽根の回転速度を高めることが可能となる。
【0007】
しかしながら、スクリュー羽根の回転速度が高くなると、汚泥を過剰に剪断して凝集フロックの破壊を生むことになり、スクレーピング頻度が増加しても結果としては脱水性能が向上しなかった。
【0008】
このため、スクリュー羽根の回転速度を高めることなくスクレーピング頻度を増加させることが求められるが、これはスクリュー羽根を多条に設けることで実現可能である。
スクリュー羽根を多条に設ける多軸スクリュープレスとしては、例えば特許文献1に記載するものがある。これは、濃縮用ケーシングの内部に一対の多条螺旋翼を水平方向に所定間隔で平行に配列したもので、双方の多条螺旋翼は自身の螺旋翼が相手の螺旋翼間に入り込むように配置しており、双方の多条螺旋翼が相互に逆方向へ回転する。
【0009】
また、特許文献2に記載するものは、スクリーン篭の内部に一対のアルキメデス・スクリューを水平方向に所定間隔で平行に配列してあり、各アルキメデス・スクリューは主ネジ山の間に主ネジ山よりも高さの低い補助ネジ山を設けてある。一対のアルキメデス・スクリューは一方のアルキメデス・スクリューの補助ネジ山が他方のアルキメデス・スクリューの主ネジ山の近くに位置するように配置してある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特公昭61−37031号公報
【特許文献2】特開平9−273066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、スクリーンの汚泥供給部付近でのろ室上部内の汚泥は、その汚泥濃度(固形物濃度)が低く、自由水中に凝集フロックが漂っているような状態である。一方、ろ室下部内の汚泥は、脱水作用を受けてろ室上部よりも汚泥濃度(固形物濃度)が高く、単位体積当たりに多くの凝集フロックが密集して存在する状態であり、凝集フロック間にわずかな自由水が存在する状態である。
【0012】
この自由水は液体で圧縮性が小さく、高い圧力を加えてもそれ自体が変性することはない。一方、凝集フロックは汚泥に凝集剤を加えて形成した半固形状の塊であり、その内部に内包水を有している。内包水を多く保持した状態の凝集フロックは軟弱で、高い圧力を加えるとそれ自体が崩壊(フロックの解体)する特性を持つが、一旦内部に保持している内包水を排出し圧縮された凝集フロックは、その強度を高め、比較的高い圧力にも耐えられるようになる特性を持つ。
【0013】
ここで、以下の説明においては、スクリーン内での汚泥供給側のゾーンに必要な脱水力を「ろ過圧力」と定義し、「ろ過圧力」=「基準水頭圧」+「外部圧力」と定義する。「基準水頭圧」とは、外部ケーシング高さ(スクリーン径)など構造的に決定されるろ過圧力であり、「外部圧力」とは汚泥投入ホッパの水位など、運転上、調整可能なろ過圧力を指す。外部圧力は、汚泥供給側では汚泥供給圧が支配的となり、汚泥排出側では背圧が支配的となる。
【0014】
従来のスクリュープレスでは、スクリーン内のろ室上部とろ室下部とで水頭圧差に起因してろ過圧力に差異が生じる。ろ室上部ではろ過圧力が低いので、排出するろ液は清澄で、ろ水量が少なくなり、ろ室下部ではろ過圧力が高いので、排出するろ液のろ水量は多くなるが、固形物漏出量も多くなる。
【0015】
このため、汚泥脱水機への汚泥供給圧は、ろ室下部における固形物漏出量が過剰とならない値に設定せざるを得ず、ろ室上部でのろ過圧力が低い状態で運転せざるを得ない。よって、ろ過処理の経過とともにスクリーン内面に汚泥層が堆積することで過抵抗が生じると、ろ過圧力が低いろ室上部ではろ過水量が小さくなり、ケーキ含水率を低下させることが困難となる。この傾向は水頭差が大きいスクリュープレスにおいて特に顕著となる。
【0016】
本発明は上記した課題を解決するものであり、スクリーン内のろ室上部とろ室下部とで水頭圧差に起因してろ過圧力に差異が生じる現象を脱水効率の向上に積極的に利用するものであり、脱水対象汚泥に作用する水頭圧をろ室下部においてろ過圧力として有効に利用し、スクリーン内面に汚泥層が堆積することを少なくともろ室上部において抑制してろ過水量を安定させることで、脱水機全体の脱水効率を向上させることができる多軸スクリュープレスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、本発明の多軸スクリュープレスは、実質的に平行に配置し、かつ上下方向の位置が異なる複数のスクリュー軸と、各スクリュー軸に形成するスクリュー羽根と、スクリュー羽根の周囲にろ室を形成するスクリーンと、スクリーン内面に摺接してスクリュー羽根の径方向外側縁に設けるスクレーパを備え、少なくともろ室上部に配置する上位のスクリュー軸が多条のスクリュー羽根を有するとともに、各条の羽根がそれぞれスクレーパを有することを特徴とする。
【0018】
また、本発明の多軸スクリュープレスにおいて、ろ室上部に配置するスクリュー羽根は、その条数がろ室下部に配置する下位のスクリュー羽根の条数より多いことを特徴とする。
【0019】
また、本発明の多軸スクリュープレスにおいて、スクレーパは、スクリーン内面と非接触の不連続部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、複数のスクリュー軸およびスクリュー羽根を上下方向の位置を異ならせて配置することでスクリーンの内部に形成するろ室が上下方向に長くなり、ろ室内の水頭が高くなる。このため、従来のように複数のスクリュー軸およびスクリュー羽根を水平方向に配列する構造に比べて、本発明ではろ室内の水頭をろ室下部におけるろ過圧力として有効に利用でき、ろ室下部ではろ室上部よりも相対的に大きいろ過圧力の下でろ液の排出を十分に行なえる。
【0021】
一方、スクリーンのろ室上部では、ろ室下部よりも相対的に基準水頭圧が小さくなってろ過圧力も低くなる。そのために、ろ室上部内の自由水の排出効率が悪く、上下ろ室間での脱水状態のアンバランスを生じる。
【0022】
しかしながら、ろ室上部に配置する上位のスクリュー軸が多条のスクリュー羽根を有し、各条の羽根がそれぞれスクレーパを有することで、スクリュー軸が一回転する間に複数のスクレーパがスクリーン内面の同一箇所を通過し、各スクレーパでスクリーン内面をスクレーピングして汚泥層を剥離させる。
【0023】
このため、スクリュー軸およびスクリュー羽根の回転速度を高くすることなく、スクレーピング頻度を多くしてスクリーン内面の汚泥層の増加を抑制できるので、ろ室上部ではろ室下部より相対的に小さいろ過圧力であっても固形物の漏出を抑制しつつ、スクリーンを通して容易にろ液を排出することができる。
【0024】
よって、スクリーンから固形物が漏出することを抑制しながら、脱水機全体の脱水効率を向上させることができる。
さらに、スクレーパがスクリーン内面と非接触の不連続部を有することで、スクレーパは不連続部における端面の縁部にエッジ部を有する。このエッジ部がスクリーン内面に堆積したし渣を効率良く掻き取ることでスクリーンの目詰まりをよりいっそう抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態における多軸スクリュープレスを示す一部破断正面図
【図2】同実施の形態における多条スクリュー羽根を示す正面図
【図3】同実施の形態における多軸スクリュープレスを示す断面図
【図4】同実施の形態におけるスクレーパを示す要部拡大図
【図5】同実施の形態におけるスクレーパを示す要部拡大図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1乃至図5において、本実施の形態に係る多軸スクリュープレスの基本的な構成は概略的に以下のものである。
図1において、汚泥脱水機としての多軸スクリュープレスは、本体1によりスクリーン2を支持しており、スクリーン2は軸心方向で複数に分割し、かつ上下に分割した複数のセグメントからなり、スクリーン2にはパンチングメタルやウェッジワイヤ等の種々の形態のろ材を適用可能である。
【0027】
スクリーン2は内部にろ室を形成しており、ろ室には軸心方向に挿通して多数のスクリュー軸3、およびスクリュー軸3の軸心廻りに形成した多条のスクリュー羽根4を挿通し、本体1の汚泥排出側にはスクリーン2の開口に対向して背圧板5を配置している。本実施の形態では一対のスクリュー軸3のそれぞれに多条のスクリュー羽根4を設けた構成を開示するが、本発明においてスクリュー軸3の数およびスクリュー羽根4の条数は任意に設けることができる。
【0028】
複数のスクリュー軸3は実質的に平行に、かつ上下方向の位置を異ならせて配置しており、本実施の形態ではスクリーン2のろ室上部に配置する上位のスクリュー軸31と、スクリーン2のろ室下部に配置する下位のスクリュー軸32からなる。
【0029】
本実施の形態では、図2および図3に示すように、上位のスクリュー軸31に形成した上位のスクリュー羽根41、および下位のスクリュー軸32に形成した下位のスクリュー羽根42はそれぞれ2条の螺旋形状をなしており、図4に示すように、各羽根411、412、421、422の径方向外側の先端縁には合成ゴム等の弾性材からなるスクレーパ6がボルト601およびナット602で固定してあり、スクレーパ6がスクリーン2の内面に摺接する。図5に示すように、スクレーパ6はスクリュー軸31、32の軸心廻りの位置にスクリーン2の内面と非接触の不連続部611を有しており、不連続部611における端面の縁部にエッジ部612を形成している。
【0030】
上位のスクリュー羽根41および下位のスクリュー羽根42は、羽根411、412、421、422のピッチが汚泥排出側ほど狭くなっており、羽根411、412、421、422の1ピッチ当たりのろ室容積が減少して行く。あるいはスクリュー軸31、32の軸径を汚泥排出側ほど太くすることでスクリュー羽根の1ピッチ当たりのろ室容積を減少させることも可能である。
【0031】
上位のスクリュー羽根41および下位のスクリュー羽根42は、その羽根巻き方向が相互に逆方向であり、つまりスクリュー軸31、32の軸心廻りで相互に逆方向に旋回する螺旋形状をなし、回転位相が90度ずれて相互に逆方向に回転するように設置している。
【0032】
図2および図3に示すように、上位のスクリュー羽根41および下位のスクリュー羽根42は、それぞれ1条目の羽根411、421と2条目の羽根412、422がスクリュー軸31、32の軸心廻りの位相を180度ずらして設けてある。すなわち、上位のスクリュー羽根41および下位のスクリュー羽根42がそれぞれ1回転すると、スクリーン2の内面の同一箇所を各羽根411、412、421、422がそれぞれ180度間隔で2回通過し、各羽根411、412、421、422のスクレーパ6によりスクリーン2の内面の同一箇所にそれぞれ2回のスクレーピングを行なう。
【0033】
上位のスクリュー羽根41および下位のスクリュー羽根42は、羽根巻き方向を同方向に形成することも可能である。各羽根411、412、421、422とスクリュー軸31、32との角度は直角に限らず、任意に設定できる。また、上位のスクリュー羽根41および下位のスクリュー羽根42を3条に形成する場合には、上位のスクリュー羽根41および下位のスクリュー羽根42を同一の回転位相で相互に逆方向に回転するように設けるとともに、上位のスクリュー羽根41および下位のスクリュー羽根42におけるそれぞれの羽根はスクリュー軸31、32の軸心廻りの位相を120度ずらして設ける。この場合に上位のスクリュー羽根41および下位のスクリュー羽根42がそれぞれ1回転すると、スクリーン2の内面の同一箇所を各羽根が120度間隔で3回通過し、各羽根のスクレーパ6によりスクリーン2の内面の同一箇所に3回のスクレーピングを行なう。
【0034】
スクリーン2の汚泥供給側において上位のスクリュー軸31および下位のスクリュー軸32の一端には従動ギア312、322が装着してあり、従動ギア312、322は相互に噛合している。本体1にはモータ101および駆動ギア102を設けており、駆動ギア102が下位のスクリュー軸32の従動ギア322に噛合している。
【0035】
上記した構成における作用を説明する。運転時には、モータ101による駆動ギア102の回転により、駆動ギア102に噛合する下位のスクリュー軸32の従動ギア322および上位のスクリュー軸31の従動ギア312を駆動し、上位のスクリュー羽根41および下位のスクリュー羽根42を相互に逆方向に回転させる。
【0036】
汚泥供給側からスクリーン2の内部に投入した脱水対象汚泥は、スクリーン2でろ過されながら上位、下位のスクリュー軸31、32および上位、下位のスクリュー羽根41、42の回転によって汚泥排出側へ搬送される。この際に、スクリュー羽根41、42の各羽根411、412、421、422のピッチが汚泥排出側ほど狭くなり、各羽根411、412、421、422の1ピッチ当たりのろ室容積が減少して行く。汚泥はろ室容積の減少による圧密力および背圧板5による背圧の作用により脱水され、汚泥排出側の開口からスクリーン2の外部へ排出される。
【0037】
本実施の形態では、複数のスクリュー軸31、32およびスクリュー羽根41、42を上下方向の位置を異ならせて配置することでスクリーン2の内部に形成するろ室が上下方向に長くなり、ろ室内の水頭が高くなる。このため、一軸スクリューの構造部や従来のように複数のスクリュー軸およびスクリュー羽根を水平方向に配列する構造に比べて、本発明ではろ室内の水頭をろ室下部におけるろ過圧力として有効に利用でき、ろ室下部ではろ室上部よりも相対的に大きいろ過圧力の下でろ液の排出を十分に行なえる。
【0038】
一方、スクリーン2のろ室上部では、ろ室下部よりも相対的に基準水頭圧が小さくなってろ過圧力も低くなる。そのために、スクリーンが目詰まりし、ろ室上部内の自由水の排出効率が悪く、上下ろ室間での脱水状態のアンバランスを生じる。
【0039】
前述したように、従来のスクリュープレスでは、スクリーン内のろ室上部とろ室下部とで水頭圧差に起因してろ過圧力に差異が生じる。ろ室上部ではろ過圧力が低いので、排出するろ液は清澄で、ろ水量が少なくなり、ろ室下部ではろ過圧力が高いので、排出するろ液のろ水量は多くなるが、固形物漏出量も多くなる。
【0040】
このため、汚泥脱水機への汚泥供給圧は、ろ室下部における固形物漏出量が過剰とならない値に設定せざるを得ず、ろ室上部でのろ過圧力が低い状態で運転せざるを得ない。よって、ろ過処理の経過とともにスクリーン内面に汚泥層が堆積することで過抵抗が生じると、ろ過圧力が低いろ室上部ではろ過水量が小さくなり、ケーキ含水率を低下させることが困難となる。この傾向は水頭差が大きいスクリュープレスにおいて特に顕著となる。
【0041】
しかしながら、ろ室上部に配置する上位のスクリュー軸31が多条のスクリュー羽根41を有し、各条の羽根がそれぞれスクレーパ6を有することで、スクリュー軸31が一回転する間に複数のスクレーパ6がスクリーン内面の同一箇所を通過し、各スクレーパ6でスクリーン内面をスクレーピングして汚泥層を剥離させる。
【0042】
このため、スクリュー軸31およびスクリュー羽根41の回転速度を高くすることなく、スクレーピング頻度を多くしてスクリーン2の内面の汚泥層の増加を抑制できるので、ろ室上部ではろ室下部よりも相対的に小さいろ過圧力の下であっても固形物の漏出を抑制しつつ、スクリーン2を通して容易にろ液を排出することができる。よって、スクリーン2から固形物が漏出することを抑制しながら、脱水機全体の脱水効率を向上させることができる。
【0043】
本実施の形態では、上位のスクリュー羽根41および下位のスクリュー羽根42が多条である。しかしながら本発明は、少なくともろ室上部に配置する上位のスクリュー羽根41が多条で、かつ各条の羽根411、412がそれぞれスクレーパ6を有することで実現することができ、ろ室上部に配置する上位のスクリュー羽根41の条数をろ室下部に配置する下位のスクリュー羽根42の条数よりも多くすることも可能である。
【0044】
本実施の形態において、スクレーパ6は各羽根411、412、421、422の径方向外側の先端縁に沿って連続的に設けており、スクレーパ6の全長にわたってスクリーン2の内面に摺接している。
【0045】
ところで、スクレーパ6はスクリーン内面に堆積した汚泥層をスクリーン内面に押し付ける方向に作用するので、汚泥中に繊維物(し渣)が多い場合にはスクリーン内面にし渣が堆積し、し渣分が脱水されて固くなるので、スクリーン2が目詰まりを起こしてしまう。
【0046】
しかしながら、図5に示すように、スクレーパ6はスクリュー軸31、32の軸心廻りの位置にスクリーン2の内面と非接触の不連続部611を有する構造とすることで、スクレーパ6は不連続部における端面の縁部にエッジ部612を形成しており、このエッジ部612がスクリーン2の内面に堆積したし渣を掻き取ることでスクリーン2の目詰まりを抑制できる。不連続部はスクレーパ6の縁に形成する切欠き等でもよく、スクリーン2の内面に摺接するスクレーパ6の縁をのこ歯状に形成することも可能である。このように、各羽根411、412、421、422のスクレーパ6にそれぞれエッジ部612を設けることで、掻き取り頻度が通常のものより多くなる。
【符号の説明】
【0047】
1 本体
2 スクリーン
3 スクリュー軸
4 スクリュー羽根
5 背圧板
6 スクレーパ
31 上位のスクリュー軸
32 下位のスクリュー軸
41 上位のスクリュー羽根
42 下位のスクリュー羽根
101 モータ
102 駆動ギア
312、322 従動ギア
411、412、421、422 羽根
601 ボルト
602 ナット
611 不連続部
612 エッジ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に平行に配置し、かつ上下方向の位置が異なる複数のスクリュー軸と、各スクリュー軸に形成するスクリュー羽根と、スクリュー羽根の周囲にろ室を形成するスクリーンと、スクリーン内面に摺接してスクリュー羽根の径方向外側縁に設けるスクレーパを備え、少なくともろ室上部に配置する上位のスクリュー軸が多条のスクリュー羽根を有するとともに、各条の羽根がそれぞれスクレーパを有することを特徴とする多軸スクリュープレス。
【請求項2】
ろ室上部に配置するスクリュー羽根は、その条数がろ室下部に配置する下位のスクリュー羽根の条数より多いことを特徴とする請求項1記載の多軸スクリュープレス。
【請求項3】
スクレーパは、スクリーン内面と非接触の不連続部を有することを特徴とする請求項1記載の多軸スクリュープレス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−279973(P2010−279973A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−135616(P2009−135616)
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】