説明

多軸椎弓根スクリューおよびそれを備えた固定システムキット

【課題】軸部の配向を別に固定できる多軸椎弓根スクリューを提供する。
【解決手段】多軸椎弓根スクリューは、U字状横断通路を有する受容頭部と、受容頭部の外部にあるねじ部30と受容頭部内に収容されて回転可能なバルジ端部31とを有する軸部3と、受容頭部内に収容されてバルジ端部31と嵌合可能とされており、バルジ端部31を定位置に固定する固定差込部4と、U字状横断通路内に受容された連結ロッド200を固定するための、遠位開口21に係合された位置決めねじ5とを備え、多軸スクリューの受容頭部が少なくとも1つの側面開口部42を特徴とし、側面開口部42が、固定差込部4をその固定位置に維持するために、外部押圧手段が固定差込部4の接触面41に作用できるように、接触面41を露出している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、整形外科インプラントの一般的な分野に関する。より具体的には、本発明は、外科脊椎治療の分野で使用される、椎弓根スクリュー固定システムの一部である多軸椎弓根スクリューに関する。
【背景技術】
【0002】
脊椎の損傷または奇形の治療に用いられる外科技術は、通常、脊椎の2つ以上の椎骨を、脊椎固定と呼ばれる処理によって連結することを目的としている。
【0003】
脊椎固定のアプローチの一つは、2つ以上の連続する椎骨の椎弓根に整形外科スクリューを埋め込むことによって脊椎に据え付けられる固定システムを採用している。個々のスクリューは、スクリューの頭部に設けられた横断孔に都合よく収容される剛体または半剛体のロッドによって連結される。
【0004】
しかしながら、骨格の構造は不規則であるため、一度スクリューが脊椎の椎弓根に埋め込まれてしまうと、ロッドを挿入するためにスクリューの頭部を適切に整列させようとしても難しくなってしまう。そのため、ロッドの挿入を容易にするために、スクリューは、通常、軸部(shank)に対して自在に回転可能な頭部を備えている。
【0005】
この型のスクリューは、多軸スクリューと呼ばれており、頭部に設けられたソケット状の空洞において回転するバルジ(bulging)端部を有するねじ加工された軸部を有する。上記ソケット状の空洞の上部は、軸部が適切な配向で設置された際にバルジ端部を保持する(clamp)のに適した固定差込部によって画定される。連結ロッドを収容する横断孔が、ソケット状の空洞の上方に配置され、その上方には、ロッドを保持して位置決めするために、位置決めねじが備えられている。
【0006】
従来技術の多軸椎弓根スクリュー(特許文献1参照)では、例えば、位置決めねじを固定すると、位置決めねじによって加えられる圧力が連結ロッドを介して固定差込部に伝達されるため、連結ロッドおよび軸部の両方の配向を固定してしまう。
【0007】
しかしながら、このような構成とされていると、外科医は、スクリュー頭部が軸部に対して自在に回転可能な状態で連結ロッドを挿入しなければならず、固定システムを適切に配置するには不利となる可能性がある。脊椎手術は、特に低侵襲技術を用いる場合には、非常に難易度の高い作業であるということは重視されるべきであり、治療介入(intervention)を容易にしつつ固定システムの配置に自由度を提供することは、非常に重要なことである。
【0008】
上記の重要性に対する解決策が先行技術で開示されており(特許文献2参照)、その先行技術では、スクリュー頭部の内部のねじ面と噛み合う、ねじ加工された固定差込部が提案されている。そのため、軸部の配向を、固定差込部だけではなく、別に固定させることができる。しかしながら、この解決策では、ロッドが固定差込部の上に配置されたときに固定差込部を緩めることができないため、外科医は、連結ロッドの挿入中または挿入後に、軸部の配向を修正することができない。
【0009】
別の解決策が先行技術によって提案されている(例えば、特許文献3および特許文献4参照)。それらの文献に開示されている多軸スクリューは、同心の内側上方位置決めねじ(set screw)と外側上方位置決めねじとを備える。外側上方位置決めねじは、固定差込部の一部に作用し、内側上方位置決めねじによって保持される連結ロッドとは独立して、固定差込部を位置決めするように締め付ける。しかしながら、外側上方位置決めねじがあるために、連結ロッドを上方から挿入することができず、結果的に外科医は、低侵襲手術において、ロッドを挿入する前に軸部の相対的な配向を固定することができない。
【0010】
別の解決策が先行技術に記載されており(特許文献5参照)、その先行技術では、専用器具を用いて、連結ロッドを設置する間、固定差込部を保持位置に保つ。しかしながら、この器具は、ロッドを保持する位置決めねじの挿入前に取り外されなければならず、固定システムをできるだけ最適な配置にしようとしつつ、構成部材を締め付けたり緩めたりする際の外科医の自由度をまたしても限定してしまう。
【0011】
さらに別の解決策もまた先行技術で提案されており(特許文献6参照)、その先行技術では、連結ロッドを収容して別に固定するためのサイドアームを有する頭部を備える多軸スクリューが開示されている。しかしながら、このような構成は、固定システムの横方向の外形を著しく増加させ、従来の外科技術には適していない。さらに、ロッドの位置がスクリューの軸線からオフセットされているため、このスクリューは低侵襲手術および奇形矯正手術にも適していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許5,672,176号明細書
【特許文献2】米国特許5,443,467号明細書
【特許文献3】米国特許7,223,268号明細書
【特許文献4】米国特許6,063,090号明細書
【特許文献5】米国特許5,681,319号明細書
【特許文献6】米国特許6,063,089号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
前述のことに鑑みて、本発明の基礎となる技術的課題は、先行技術による解決策の欠点を克服するとともに、軸部の配向を別に固定できる多軸椎弓根スクリューを提供することである。
【0014】
本発明の別の目的は、外科医が、低侵襲手術および/または奇形矯正において、ロッドを挿入する前に軸部の相対的な配向を固定できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前述の技術的課題は、近位開口から遠位開口へと長手方向に延在する受容頭部であって、遠位開口の周辺部において開口するU字状横断通路を有する受容頭部と、近位開口を横断し、受容頭部の外部にあるねじ部と受容頭部内に収容されて回転可能なバルジ端部とを有する軸部と、受容頭部内に収容され、バルジ端部と嵌合可能とされており、バルジ端部の受容頭部に対する相対移動を固定する固定位置に移動可能とされた固定差込部と、U字状横断通路内に受容された連結ロッドを固定するために遠位開口に係合された固定手段とを備えるタイプの多軸椎弓根スクリューによって解決される。
【0016】
受容頭部は、固定差込部をその固定位置に維持するために、外部押圧手段が固定差込部の接触面に作用するように、接触面を露出する少なくとも1つの側面開口部を有する。
【0017】
したがって、外部押圧手段は、U字状通路への到達を邪魔されることなく作用することができ、連結ロッドの挿入を、軸部の配向の固定やスクリューの配設から独立して、制限されることなく行うことができる。
【0018】
側面開口部は、受容頭部を直径方向に横断する貫通孔によって画定される2つの側面開口部であるのが有利でありうる。
【0019】
さらに、固定差込部を、貫通孔内に収容することができる。
【0020】
具体的には、固定差込部は、受容頭部から突出することなく側面開口部内で延在する2つの側面アームを有する細長い形状を呈し、側面アームの遠位側が接触面を画定していてもよい。このような場合には、側面開口部が、固定差込部の側面アームの遠位方向における動作を制限するのが有利であり得る。
【0021】
また、受容頭部が2つ(またはそれ以上)の側面縦溝部(lateral longitudinal grooves)を有し、側面縦溝部が、貫通孔に開口し、外部押圧手段用の長手方向通路を画定していてもよい。そのような方法においては、縦溝部を通って延びる外部押圧手段が、デバイスの断面から突出することなく固定差込部の側面アームに接触して、低侵襲技術の採用を可能にするので有利である。
【0022】
側面アームは、受容頭部から突出する側面延出部を有していてもよいことは明らかであり、重要なことは、これらの側面アームの遠位側が外部押圧手段に接触面を提供し得ることである。
【0023】
側面開口部を画定する貫通孔は、好ましくは、U字状通路に対する直交軸に沿って延在してもよい。貫通孔はまた、U字状通路に対して近傍にオフセットされていてもよい。
【0024】
受容頭部に対して外部押圧手段をしっかりと位置決めするために、受容頭部は、外部押圧手段を特徴とする専用器具を係合させるための複数の形成部を有していてもよい。当業者は、これらの形成部は掴むという目的に適したあらゆる形状を有することができることを理解するであろう。
【0025】
具体的には、形成部は、受容頭部の側面周辺部の面取り角部に設けられたくぼみであってもよい。
【0026】
固定差込部の接触面は、実質的に平らであってもよいし、または、若干凹んでいてもよい。
【0027】
前述の技術的課題はまた、少なくとも1つの上記の多軸椎弓根スクリューと、U字状横断通路内に収容されるように適合された少なくとも1つの連結ロッドと、接触面に作用させるように意図された外部押圧手段を有する少なくとも1つの器具とを備える固定システムキットによっても解決される。
【0028】
器具は、多軸椎弓根スクリューの受容頭部と連結することができる側方プロング(prong)を有し、外部押圧手段は、側方プロングに対して摺動可能に取り付けられた押圧アームによって画定されてもよい。
【0029】
側方プロングは、固定器具と受容頭部との連結を確実に行うように、受容頭部のくぼみと協働するように内側に向かって突出するピンを備えていてもよい。
【0030】
本発明による多軸椎弓根スクリューおよび固定システムキットのさらなる呈示および有利性は、添付の図面を参照しつつ、非限定的な例として記載された特定の実施形態の下記の説明によって、より明確となるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明による多軸椎弓根スクリューの斜視図である。
【図2】図1の多軸椎弓根スクリューの側面図である。
【図3】図1の多軸椎弓根スクリューの上面図である。
【図4】図3で特定した断面A−Aにおける多軸椎弓根スクリューの断面図である。
【図5】本発明による多軸椎弓根スクリューに作用するように適合された器具の先端の斜視図である。
【図6】図5の器具の先端に連結された本発明による多軸椎弓根スクリューの斜視図である。
【図7】本発明の代替的実施形態による多軸椎弓根スクリューの斜視図である。
【図8】図7の代替的実施形態の多軸椎弓根スクリューの上面図である。
【図9】本発明による多軸椎弓根スクリュー、特に、図7および図8に示す代替的実施形態に作用するように適合された器具の先端の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1〜4を参照すると、本発明による多軸椎弓根スクリュー1が図示されている。複数のスクリュー1は、連結ロッド200と共に、脊椎手術用の固定システムを形成しており、当該固定システムは、図5〜6に描かれるように、固定器具100と合わせてキットとして販売することができる。
【0033】
多軸椎弓根スクリュー1は、ねじ部30およびバルジ端部31を有する軸部3を備える。スクリュー1は、本発明の原理から逸脱することなく、カニューレ化される(cannulated)か穴が開けられていてもよい。スクリューは、円錐型であっても平行型であってもよく、用途の目的に従って、適切な塗膜で被覆されていてもよい。
【0034】
ねじ部30は、一条ねじまたは多条ねじであって、端が先端部32とされており、患者の椎骨の椎弓根に挿入されて確実に据え付けられるように適合されている。好ましい解決策は、二条ねじによって提供される。バルジ端部31は、実質的に球形であり、適切なレンチと嵌まり合うことができるソケット33を特徴とする平らな遠位端を有する。バルジ端部31の他の代替形状を採用することもできるのは明らかであり、例えば、バルジ端部31は、部分的な球形であったり、対応するホスティングシート(hosting seat)の内部で枢動できる形状であったりしてもよい。
【0035】
多軸椎弓根スクリュー1はまた、上記の軸部3と連結ロッド200との間で連結構成部材として機能する受容頭部2を備える。連結ロッド200は、結合されることになる隣接する椎骨の椎弓根に埋め込まれる1つまたは複数の他のスクリューに多軸スクリューを連結するように意図されている。ロッド200は、合金によって実現されているときには実質的に剛性(rigid)の場合があり、例えばPEEKなどの合成プラスチック素材によって実現されているときには軟性(flexible)の場合もある。
【0036】
受容頭部2は、長手軸xに沿って、円形の近位開口20から遠位開口21まで延在する中空構造である。なお、近位および遠位という用語は、本明細書において、椎弓根と、記載されているデバイスを構成する部品との間の相対距離を特定するために使用されていることに留意されたい。したがって、椎弓根スクリューが正しく患者に埋め込まれた場合には、近位開口は椎弓根により近い位置にあることを意味しており、一方、遠位開口は椎弓根からより遠い位置にあることになる。
【0037】
近位開口20では、軸部3を動かすことができる。近位開口20の直径は、軸部3のバルジ端部31の直径よりも小さいため、その端部は受容頭部2の中空部内にとどまり、受容端部に対する軸部3の一平面上または多軸上における配向を可能にする玉継ぎ手20Aを実質的に形成する。ユニプラナースクリュー(uni−planar screw)は、一方向のみにおいて角度をつけることができる。前述のように、バルジ端部31は、受容頭部2の中空部内で回転可能とさせられているため、このバルジ端部の形状によって、軸部3の向きを必要に応じて変えることが可能となる。
【0038】
レンチ(wrench)の先端を遠位開口から導入し、バルジ端部31のソケット33に係合させることができるため、患者の椎弓根椎体から軸部3をねじ込んだり緩めたりすることができることに留意されたい。
【0039】
固定差込部4は受容頭部2内に収容されており、デバイスの長手軸xに沿って摺動可能となっている。固定差込部4は、近位側において実質的に球形にされるとともに近位開口20の方に向けられた嵌合面43を有する。この面は、軸部のバルジ端部31の遠位側の部分と嵌まり合うように意図されており、その結果、固定差込部4は、固定位置に維持される場合、つまり、受容頭部2の近位端に向かって押しつけらいる場合に、デバイスの受容頭部2に対する上記バルジ端部31の相対動作を抑えることができる。固定差込部4は、例えば、横断ピン(traverse pin)でも固定することができる。これにより、構成部材が分解するのを防ぐことができる。受容頭部2には、その近位端の高さのすぐ上に形成された貫通孔が直径方向に横断している。その貫通孔は、概して角の丸められた正方形のような形状の断面を呈し、受容頭部2の2つの側面開口部42を画定する。本発明の原理から逸脱することなく、異なる形状および代替の形状を採用することができるのは明らかである。
【0040】
固定差込部4は、直径方向の貫通孔内に収容されており、受容頭部の本体から突出することなく側面開口部42を通って延在する2つの側面アーム44を有する細長い形状を呈している。
【0041】
側面開口部42は、固定差込部4の摺動を導き、この開口部の周辺部に側面アーム44が当接することで、遠位方向への動きを都合よく制限していることに留意されたい。
【0042】
固定差込部4は、レンチの先端が遠位開口21からバルジ端部31のソケット33に届くように、中央に穴を有する。
【0043】
固定差込部4の2つの側面アーム44の遠位側は、都合よく平らであるか、または、若干凹んでおり、遠位開口21の方に向けられた、嵌合面43の実質的に反対側にある2つの接触面41を画定している。これら2つの接触面の目的は、この説明の次のセクションにおいて説明することとする。
【0044】
多軸椎弓根スクリュー1の受容頭部2はまた、U字状横断通路を有する。U字状横断通路の目的は、多軸椎弓根スクリュー1を隣接する多軸椎弓根スクリュー1に繋ぐように意図された連結ロッド200を受容することである。U字状通路22は、先に画定された遠位開口21の周辺部において開口し、実際には、遠位開口21の周りの側面の縁の対向する両側に設けられた2つのU字状の切り欠きによって画定されている。
【0045】
U字状通路22および側面開口部42は、長手方向においてオフセットされた2つの直交軸に沿って延びている。実際、U字状通路22の近位端は、上記側面開口部42の近位端に対しては遠位に位置させられているが、2つの側面開口部42の遠位端に対しては近位に位置させられている。
【0046】
遠位開口21の周りにある側面の縁の内周面は、部分的なねじ部23を有しており、U字状横断通路内に受容された連結ロッド200を固定するために、固定手段5が部分的なねじ部23に係合するようにあらかじめ配置されている。当該固定手段は、例えば、位置決めねじであってもよい。部分的なねじ部23のねじ山の角度は、素早い固定動作を可能とするように採用されている。
【0047】
U字状通路22の延在が、固定差込部4を収容する貫通孔の延在と干渉することによって、位置決めねじ5によって連結ロッド200に印加される固定力は、固定差込部に伝達され、受容頭部2に対する軸部3の相対配向も固定する。
【0048】
先に論じたように、受容頭部2の遠位端は、遠位開口21の周りにある側面の縁から構成されており、この縁は、U字状通路22を形成する2つの対向する切り欠きによって途切れているとともに、部分的なねじ部23を特徴とする円形の内側周辺部を有する。
【0049】
側面の縁の外側面周辺部は、面取り縁部25を有する概して長方形の断面を有する。側面周辺部のうちの短い方の側面は、中間部分に、受容頭部2の遠位端から側面開口部42に至る側面縦溝部26を有する。側面縦溝部26は、以下の説明から明らかとなるように、専用の固定器具100の2つの押圧アーム101の導入を可能にするように設計されており、当該押圧アームは、固定差込部4の接触面41に作用するように溝を進む。換言すれば、溝は、押圧アーム101として表わした外部押圧手段のための長手方向通路(longitudinal path)を画定している。
【0050】
縁周辺部の4カ所の面取り縁部25の各々には、それの近傍において、くぼみ24が設けられている。くぼみ24は、固定器具100をスナップ挿入できるように設計されている。これらのくぼみ(indentation)24は、他の形状を有していてもよく、例えば、切り欠き(notch)、溝(groove)、または、少なくとも2つの穴などであってもよい。
【0051】
器具100は、受容頭部2の短い方の側面に作用して受容頭部2を保持することが意図された2つの側方プロング103を有する。プロング103の内面102は、図5に明確に示すように、器具102が多軸椎弓根スクリュー1をしっかりと保持するようにするために、受容頭部2のくぼみ24と協働するように意図されている、内側に突出する4つのピン104と、中央着脱可能リブ108とを有する。突出ピン104の数は、さらに多くても少なくてもよいことは明らかである。
【0052】
中央調整ロッド106は、器具100が本発明の椎弓根スクリューを保持するのに使われる場合に、位置決めねじ5を押圧するものと考えられる。この調整ロッド106は、アームプロング103に平行に延在しており、固定手段5に当接する自由端部を有する。この特徴により、本発明の椎弓根スクリューを使用して低侵襲手術を実施することができる。
【0053】
押圧アーム101は、当該プロングの内側に摺動可能に備え付けられている。押圧アーム101は、器具100がピン/くぼみの連結を介して受容頭部2に取り付けられたときに、押圧アーム101の先端102で固定差込部4の接触面41を押圧し、ロッドの自由な移動を可能としつつ固定差込部4を固定位置に維持しながら、縦溝部26内を摺動することができするように設計されている。このことは、従来技術の解決策と比較して非常に優れている点である。
【0054】
ここで、図7、8,9の実施形態をより具体的に参照しつつ、本発明の椎弓根スクリューの代替的実施形態を開示する。先に開示した実施形態と構造的に同一のすべての構成部材および部分は、同じ符号によって特定される。
【0055】
図7に示すスクリューは、第1の実施形態の受容頭部2と比較すると、角がより丸くなっている受容頭部2’を備える。遠位開口21の周りにある側面の縁は、U字状通路22を形成する2つの対向する切り欠きによって途切れており、内側内周辺部は部分的なねじ部23を有する。
【0056】
前述した縁の外側側面周辺部は、図8に示すように、面取り縁部が上方にある、概して円形の断面を有する。
【0057】
対向する側面縦溝部26は、前述の実施形態のように、受容頭部2’の遠位端から側面開口部42まで延在しており、図9に示すように、固定器具100の2つの押圧アーム101の導入を可能にする。
【0058】
押圧アーム101は、固定差込部4の接触面41に作用するように、両方の溝26を通過する。
【0059】
第1の実施形態と異なり、縁周辺部には、くぼみ24’が、長手方向に延びる受容頭部2’に対してより中央側の位置に設けられており、開口42により近い。
【0060】
本発明による多軸椎弓根スクリュー1を備える固定システムは、次のように埋め込むことができる。
【0061】
事前の手術段階を終えた後、多軸スクリュー1の軸部3が、適切なレンチの先端(これは専用器具100であってもよい。)をソケット33内に導入することで、椎弓根の位置に挿入される。
【0062】
次いで、外科医は、おそらくは隣接する多軸スクリューの位置を考慮しつつ、受容頭部2または2’を軸部3に対して所望の角度関係に配向することができる。
【0063】
ここで、固定器具100の押圧アーム101を用いることによって、受容頭部2または2’の相対配向を固定するために、固定差込部4に作用することができる。さらに、固定器具100の調整ロッド106によって、椎弓根スクリュー1をしっかりと固定しなくても、固定手段5の位置を維持することができる。
【0064】
専用器具があることによって、U字状通路22内に受容される連結ロッドの挿入を妨げることはない。それどころか、固定手段5をしっかりと固定する前に、椎弓根スクリュー1の頭部を固定してロッド200を調整することさえできる。そのため、外科医は、スクリューの配向が固定されているとき、あるいは、固定されていないときのどちらにおいてもこのようなロッド200を挿入するかを決定することができる。さらに、U字状通路22内にロッド200があるかどうかに拘わらず、デバイスの固定状態および固定解除状態を常に切り換えることができる。例えば、ロッド200は、固定されたスクリューに挿入されてもよく、また、外科医が、受容頭部2または2’が隣接する受容頭部に対して適切に整列していないことに気付いた場合には、スクリューを緩めてその不備を修正することができる。これにより、2つの固定されたスクリューを最終的な位置まで回転させることもできるため、2つの固定されたスクリューをディストラクション(distraction)することができる。
【0065】
最終的に、外科医が固定システムの配置に満足すると、受容頭部2および連結ロッド200の両方の配向を固定するための、遠位開口21にある位置決めねじ5などの固定手段を固定することができる。器具100は、最終的な固定が行われた後に、安全に取り外すことができる。
【0066】
当業者は、特定の要求に合うように、上記の多軸椎弓根スクリューを変更したり変形したりできることを容易に認識するであろうことは明らかであるが、それらのすべては、以下の特許請求の範囲によって定義される保護の範囲内にある。
【0067】
この点において、スクリュー軸、スクリュー頭部、または、くぼみ、溝などのすべての構成部材の表面は、よりしっかりと掴むように粗くされていてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
近位開口(20)から遠位開口(21)へと長手方向に延在しており、前記遠位開口(21)の周辺部において開口するU字状横断通路(22)を有する受容頭部(2)と、
前記近位開口(20)を横断し、受容頭部(2)の外部にあるねじ部(30)と前記受容頭部(2)内に収容されて回転可能なバルジ端部(31)とを有する軸部(3)と、
前記受容頭部(2)内に収容され、前記バルジ端部(31)と嵌合可能であり、前記バルジ端部(31)を前記受容頭部(2)に対して固定する固定位置に移動可能な固定差込部(4)と、
前記U字状横断通路(22)内に受容された連結ロッド(200)を固定するために前記遠位開口(21)に係合された固定手段(5)と
を備える多軸椎弓根スクリュー(1)であって、
前記受容頭部(2)は、前記固定差込部(4)をその固定位置に維持するために外部押圧手段が前記固定差込部(4)の接触面(41)に作用するように、前記接触面(41)を露出する少なくとも1つの側面開口部(42)を有し、
前記受容頭部(2)を直径方向に横断する貫通孔によって画定される2つの側面開口部(42)があり、前記固定差込部(4)は前記貫通孔内に収容されていることを特徴とする多軸椎弓根スクリュー(1)。
【請求項2】
前記固定差込部(4)は、前記受容頭部(2)から突出することなく前記側面開口部(42)内で延在する2つの側面アーム(44)を有する細長い形状を有し、前記側面アーム(44)の遠位側が前記接触面(41)を画定していることを特徴とする請求項1に記載の多軸椎弓根スクリュー。
【請求項3】
前記側面開口部(42)は、前記固定差込部(4)の前記側面アーム(44)の遠位方向における動作を制限することを特徴とする請求項2に記載の多軸椎弓根スクリュー。
【請求項4】
前記受容頭部(2)は、前記貫通孔に開口する少なくとも1つの側面縦溝部(26)を有し、
前記少なくとも1つの側面縦溝部(26)は、前記外部押圧手段のための長手方向通路を画定することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の多軸椎弓根スクリュー。
【請求項5】
前記側面開口部(42)を画定する前記貫通孔は、前記U字状通路(22)に対する直交軸に沿って延在することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の多軸椎弓根スクリュー。
【請求項6】
前記側面開口部(42)を画定する前記貫通孔は、前記U字状通路(22)に対して近傍にオフセットされていることを特徴とする請求項3に記載の多軸椎弓根スクリュー。
【請求項7】
前記受容頭部(2)は、前記外部押圧手段を特徴とする専用器具(100)を係合させるための複数の形成部を有することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の多軸椎弓根スクリュー。
【請求項8】
前記専用器具(100)を係合させるための前記複数の形成部は、前記受容頭部(2)の側面周辺部の面取り角部(25)の近傍に設けられたくぼみ(24)であることを特徴とする請求項7に記載の多軸椎弓根スクリュー。
【請求項9】
前記接触面(41)が実質的に平らであることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の多軸椎弓根スクリュー。
【請求項10】
前記接触面(41)の反対側にある、前記差込部(4)の嵌合面(43)が凹んでいることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の多軸椎弓根スクリュー。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載の少なくとも1つの多軸椎弓根スクリュー(1)と、
前記U字状横断通路(22)内に収容されるように適合された少なくとも1つの連結ロッド(200)と、
前記接触面(41)に作用するように適合された外部押圧手段を有する固定器具(100)と
を備えることを特徴とする固定システムキット。
【請求項12】
前記固定器具(100)は、前記多軸椎弓根スクリュー(1)の前記受容頭部(2)を保持するように適合された側方プロング(103)を有し、前記外部押圧手段は、前記側方プロング(103)に対して摺動可能に取り付けられた押圧アーム(101)によって画定されることを特徴とする請求項11に記載の固定システムキット。
【請求項13】
前記側方プロング(103)は、前記固定器具(100)と前記多軸椎弓根スクリュー(1)の前記受容頭部(2)との連結を確実に行うために、前記受容頭部(2)の前記くぼみ(24)と協働するように内側に向かって突出するピン(104)を備えることを特徴とする請求項12に記載の固定システムキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−196453(P2012−196453A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−65024(P2012−65024)
【出願日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【出願人】(512073792)メダクタ・インターナショナル・ソシエテ・アノニム (2)
【Fターム(参考)】