説明

多軸骨固定装置

【課題】拡大されたピボット角度を有する多軸骨固定装置であって、安全な係止を同時に提供することによりサイズが小さく、かつモジュール式システムとして使用できる多軸骨固定装置を提供する。
【解決手段】多軸骨固定装置であって、骨の中に固定するためのシャンク(2)およびヘッド(3)を有する骨固定要素(1)と、ロッド(6)を骨固定要素(1)に結合するための受け側(5)とを備え、受け側は第1の端部(9a)、第2の端部(9b)、および中にロッド(6)を受入れるための底面を有する凹所(12)を有するロッド受け部(9)、第1の端部(19a)、境界エッジを有する開いている第2の端部(19b)、および開いている第2の端部(19b)と連通してヘッド(3)を導入するための中空内部(23)を有するヘッド受け部(19)、ヘッド受け部(19)の周りに取付けられるロッキングリング(8)を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は拡大されたピボット角度を有する多軸骨固定装置に関する。多軸骨固定装置は、骨の中に固定するための骨固定要素と、安定化ロッドを骨固定要素に結合するための受け側とを含む。受け側は、ロッドを受入れるためのロッド受け部と、骨固定要素のヘッドを導入およびクランプできるよう可撓性であるヘッド受け部とを含む。受け側のヘッド受け部を締め付けるために、ロッキングリングが設けられてヘッドを固定する。ヘッド受け部の境界エッジは、固定要素が境界エッジの第1の位置において、境界エッジの第2の位置よりも大きいピボット角度で回動できるよう構成されている。ヘッド受け部はロッド受け部に対して回転可能であり、それによってより大きいピボット角度の方向性を選択することができる。
【背景技術】
【0002】
拡大されたピボット角度を有する多軸骨固定装置は、米国特許第6,736,820号に記載されている。この骨固定装置は、骨ねじと骨ねじのヘッド用のシートとを有する受け側を含む。ねじ部材は拡大された角度により、少なくとも一方側に回動することができる。なぜなら、受け側の自由端のエッジは非対称な構成だからである。
【0003】
別の多軸骨固定は、米国特許出願公開第2005/0080415号A1に記載されている。この骨固定は、ロッドを受入れるためのU字形のチャネルを有する本体部材と、固定部材のヘッドを受入れる圧縮可能凹所を有し、アンカー部材は本体部材に対して最初は多軸的に角度を形成することになり、さらに本体部材に対して摺動可能に配置され、かつヘッドの周りに凹所を締め付けることができるカラーを有する。本体部材の下境界エッジは皿頭領域を含んで、固定部材が皿頭領域に対して配向される場合に角度形成を増大できる。
【0004】
米国特許出願公開第2007/0118123号A1は、角度形成が大きくなった多軸骨固定を記載している。多軸骨固定は、たとえばねじまたはフックなどの固定部材が、固定ヘッド内で固定部材を圧縮ロックする前に、骨固定の中心軸の周りを広い角度で多軸的に回動できるよう整形および構成される係止要素を有する。
【0005】
上述の多軸骨固定装置は特定の方向性において拡大された角度形成を与えるが、設計上の簡単性および用途の多様性の観点から改良された多軸骨固定装置のニーズは依然としてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,736,820号B2
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/0080415号A1
【特許文献3】米国特許出願公開第2007/0118123号A1
【特許文献4】米国特許出願公開第2010/0204735号A1
【特許文献5】米国特許出願公開第2008/0015579号A1
【特許文献6】欧州特許第1923011号A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、拡大されたピボット角度を有する多軸骨固定装置であって、安全な係止を同時に提供することによりサイズが小さく、かつモジュール式システムとして使用できる多軸骨固定装置を提供することである。
【0008】
本目的は請求項1に記載の多軸骨固定装置によって達成される。従属項において、他の特徴が示される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
多軸骨固定装置は底面装着多軸骨固定装置であり、固定要素は受け側の底面から受け部内に挿入することができる。骨固定装置は、ロッキングリングを有する予め組立てられた受け側、および受け側とは離れている1つ以上の骨固定要素としてメーカーから提供され得る。これにより、異なる直径、ねじ切り形態または他の異なる特徴を有するさまざまなシャンクを、特定の臨床状況での実際の臨床要件と組合せることができる。これにより、外科医は移植片についてかなりの数の選択肢を得ることになる。
【0010】
モジュール式により、在庫を抱えることによる経費を減少させることができる。
拡大されたピボット角度は、受け側の中心軸の周り360°の範囲内で選択できるので、この骨固定装置は多様な用途で用いることができる。受け側に対する骨固定要素の最大ピボット角度は、真っ直ぐな位置から測定して45°以上である。拡大されたピボット角度の方向性は、たとえばロッドの軸およびシャンクの軸を含む面内において、またはロッドの軸に対して90°もしくは他の角度で選択できる。これにより、この骨固定装置はたとえば頸椎などの外側塊の用途に特に適することとなる。
【0011】
骨固定装置の設計により、高さの寸法および直径の寸法をさらに小さくすることができ、これにより、たとえば頸椎の手術や小児科の用途、外傷および骨の手術での最小切開用途の分野において、小さい固定装置が必要である用途に特に適することになる。
【0012】
さらなる特徴および利点は、添付している図面により、実施例の記載から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施例に従う多軸骨固定装置の分解斜視図である。
【図2】組立てられた状態の、図1の多軸骨固定装置の斜視図である。
【図3】骨固定要素が第1の回動位置にある、断面がロッド軸に対して垂直な多軸骨固定装置の断面図である。
【図4】骨固定要素が第2の回動位置にある、断面がロッド軸に対して垂直な多軸骨固定装置の断面図である。
【図5】図1の多軸骨固定装置の受け側のロッド受け部の斜視図である。
【図6】受け側のロッド受け部の下からの斜視図である。
【図7】断面がロッド軸に対して垂直な、受け側のロッド受け部の断面図である。
【図8】受け側のロッド受け部の側面図である。
【図9】受け側のロッド受け部を90°回転させた側面図である。
【図10】受け側のロッド受け部の上面図である。
【図11】図1の多軸骨固定装置の受け側のヘッド受け部の下からの斜視図である。
【図12】受け側のヘッド受け部の上からの別の斜視図である。
【図13】受け側のヘッド受け部の断面図である。
【図14】受け側のヘッド受け部の側面図である。
【図15】90°回転させられた、図14の受け部の側面図である。
【図16】受け側のヘッド受け部の上面からの図である。
【図17】組立工程での受け側(ロッキングリングがない)の分解斜視図である。
【図18】受け側における組立てられたロッド受け部およびヘッド受け部の斜視図である。
【図19】ロッキングリングの斜視図である。
【図20】図19の線A−Aに沿って取られた、ロッキングリングの断面図である。
【図21】第2の実施例に従う多軸骨固定装置であって、ロッキングリングがない受け側の分解斜視図である。
【図22】組立てられた状態の、図21のロッキングリングがない受け側の斜視図である。
【図23】断面がロッド軸に対して垂直な、ロッキングリングがない図21の組立てられた受け側の断面図である。
【図24】多軸骨固定装置の第3の実施例に係る、ロッキングリングがない受け側の斜視分解図である。
【図25】組立てられた状態の、図24の受け側の斜視図である。
【図26】断面がロッド軸に対して垂直な、図24の受け側の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1から図4に示されるように、第1の実施例に従う多軸骨固定装置は、骨固定要素1を含み、これはねじ切りされたシャンク2および球状形ヘッド3を有する骨ねじの形にある。ヘッド3はツールと係合するための凹所4を有する。骨固定装置はさらに受け側5を含み、これはロッド6を受入れて骨固定要素1に接続する。さらに、内ねじまたは留めねじの形の閉鎖要素7が設けられて、ロッド6を受け側5内に固定する。さらに、骨固定装置は、ヘッド3を受け側5内に係止するためのロッキングリング8を含む。
【0015】
図1から図16でさらにわかるように、受け側5は互いに回転可能に接続されるロッド受け部9およびヘッド受け部19を含む。ロッド受け部9は実質的に円筒形であり、第1の端部9aおよび対向する第2の端部9bを有し、さらにこれらを通る対称中心軸Cがある。ロッド受け部9は、第2の端部9bに設けられる同軸の第1のボア10を有する。第1のボア10の直径は、骨固定要素のヘッド3の直径よりも小さい。ロッド受け部9はさらに第1の端部9aから第2の端部9bに向かってある距離延在する同軸の第2のボア11と、第1のボア10および第2のボア11と連通する同軸の第3のボア11aを含む。第2のボア11の直径は、ロッド6の直径より大きい。実質的にU字形の凹所12はロッド受け部9において、第1の端部9aから第2の端部9bに延在し、U字形の凹所の直径は、ロッド6が凹所内に入り、その中で案内されるよう、ロッドの直径よりもわずかに大きい。U字形凹所12により、2本の自由脚12aおよび12bが形成され、その内側にねじ山13が設けられる。内側ねじ山13は、メートルねじ、角ねじ、負角のねじ(negative angle thread)、鋸歯ねじまたは他のねじ切りされた形態であり得る。好ましくは角ねじまたは負角のねじの形のねじ山が用いられて、内ねじ7がねじ込まれたときに脚12aおよび12bが外に広がるのを防ぐ。U字形凹所の高さは、ロッド6および内ねじ7が脚間に挿入できるものである。凹所12の底面と脚12aおよび12bとの間には、平坦部14が設けられ、第2のボア11の端部をなす。
【0016】
第2の端部9bにおいて、直径方向において対向して配置される2つの切抜き部15が設けられる。切抜き部15は第2の端部9bからU字形凹所12の底面に延在する。切抜き部15は、以下で記載されるロッキングリング8の部分を受入れるよう構成されている。
【0017】
切抜き部の両側にはピンホール16が設けられ、ピンホール16は凹所12によって形成されるチャネルの長手方向軸Lに対して平行に、受け側5のロッド受け部9を通って延在する。ピンホール16は、特に図6に示されるように、円周方向の長さに沿って第1のボア10内に突き出て、開口17を形成するような大きさを有する。図1から図4に示されるように、2つのピン18はそれぞれのピンホール16に挿入できるよう構成される。ピン18の長さは、挿入された位置では受け側5のロッド受け部9の外面から突出しないようになっている。ピン18が挿入されると、ピンの一部18aは開口17を通って第1のボア10内に突出し、それにより開口17の位置での第1のボア10の直径を減らす。ピンの断面は円形である。したがって、開口を通って突出する部分18aは、実質的に断面が楕円である形を有する。
【0018】
受け側のヘッド受け部19は、骨固定要素1のヘッド3を収容する空間を与える。ヘッド受け部19は、ロッド受け部9の第2の端部9bに対向する第1の端部19aと、第2の端部19bと、同軸のスルーホール19cとを有する。第1の端部19aに隣接して、周縁溝21を有する実質的に円筒形の部分20がある。円筒形部分20の外径は、円筒形部分20が第1のボア10内に嵌合するよう、受け側5のロッド受け部9の第1のボア10の内径と同じまたはわずかに小さい。溝21の直径は、特に図3および図4に示されるように、ピン18が挿入された場合に、開口17での第1のボア10の内径と実質的に対応する。
【0019】
ヘッド受け部19は、第2の端部19bに向かって広がる円錐形の外面22を有する。さらに、骨固定要素1の球状形ヘッド3を収容する空間をなす内部中空球状部23が、ヘッド受け部19内に形成される。内部中空球状部23は、ヘッド3の最も大きい直径を含む領域をカバーする側から骨固定要素のヘッドを囲むよう構成されている。
【0020】
特に図11から図16に示されるように、第2の部分の第2端部19bに開く複数のスリット24が設けられる。スリット24は第2の端部19bからある距離で終わる。スリットの大きさおよびその数により、ヘッド受け部に所望の弾性が与えられる。ヘッド受け部16の弾性は、固定要素1のヘッド3がヘッド受け部を広げることによって挿入でき、かつこのヘッド受け部24を狭めることによって固定できるものである。
【0021】
第2の端部19bの境界にあるエッジは非対称である。示される実施例では、これは内部中空空間23での皿頭または凹所領域25によって達成される。これにより、固定要素1の固定軸が受け側5の中心軸Cと同軸である場合(図3)には、固定要素は、凹所領域25の位置において真っ直ぐな位置に対してより大きい角度α1分回動することができるのに対して、反対方向ではより小さいピボット角度α2分回動できる(図4)。したがって、凹所領域25は、ロッド受け部9に対して、拡大したピボット角度の位置を規定する。
【0022】
受け側5は図17および図18に示されるように組立てられる。まず、ステップa)において、ヘッド受け部19は第1の部分の第2端部9bからロッド受け部内に差し込まれ、その第1の端部19aが第1のボア10の端部に当接するまで挿入される(図3および図4)。次に、ステップb)において、ピン18はピンホール16内に入れられ、ピンは部分的に開口17を延在して溝21に入る。これにより、ヘッド受け部19は外れないようロッド受け部9に接続される。ピン18は楕円形の断面のような開口17を通って延在するので、ピンは溝21内において動くことができる。これにより、ヘッド受け部19はロッド受け部9に対して回転可能となる。ロッド軸の方向性に対する凹所領域25の方向性は、ロッド受け部9に対してヘッド受け部19を時計回りまたは反時計回りに回転させることにより、0から360°のいずれかの角度から選択することができる。
【0023】
ロッキングリング8は図19および図20を参照して以下に記載する。ロッキングリング8は実質的に円筒形の外面を有し、その外径は、受け側5のロッド受け部9の外面から突出しないまたは少しだけ突出するものである。ロッキングリング8の軸方向の高さは、受け側5のヘッド受け部19の高さよりも小さく、それにより、図3および図4に示されるように、ロッキングリング8がヘッド3をクランプする位置にある場合に、ロッキングリング8とロッド受け部9の第2の端部9bとの間に距離がある。
【0024】
ロッキングリング8の内側には、湾曲した内側面8aがある。その湾曲は、ロッキングリングの中心に向かっている。湾曲面8aは球面曲率を有することができる。他の種類の曲率も可能である。ロッキングリングの内径は、ヘッド受け部19の外側円錐面22に沿ってロッキングリング8が摺動できるものであり、それにより下方向に摺動すると次第ににヘッド受け部19を圧迫する。
【0025】
さらに、ロッキングリング8は第2の端部9bに面する側において、直径方向において互いに対向して位置する2つの突出部81を含む。突出部81の高さは、実質的にU字形の凹所19の底面から突出して、ヘッド3がまだ固定されていない位置にロッキングリング8がある場合に、切抜き部15内に延在するものである。突出部の自由端82は湾曲可能に、特にロッド9に対応する曲率で内側に湾曲することができる。ロッキングリングは、突出部81が凹所19の位置にあるよう、受け側5のヘッド受け部19の周りに配置される。これにより、切抜き部15を通って凹所12内に突出する突出部81は、ロッドが挿入されていない場合にロッキングリング8が回転するのを防ぐ。
【0026】
ロッキングリング8は第2の部分の第2端部19bから取付けられる。第2の端部19bに当接する最も上位の位置にある場合、ヘッド受け部19はロッド受け部9に対してまだ自由に回転可能である。
【0027】
ヘッド受け部19の可撓性および開口している第2端部19bでのヘッド受け部19の大きさにより、ロッキングリング8を第2の端部19bからヘッド受け部19内に組立てることにより、装着することができる。ヘッド受け部19の外径はロッド受け部9の外径よりも小さいので、ロッキングリング8は半径方向においてロッド受け部からわずかにしか突出しない。
【0028】
ロッキングリング8は、ストップとして働く受け側のロッド受け部9の第2の端部9bによって制限される第1の位置と、ヘッド受け部19の第2の端部19b近傍の第2の位置との間で移動可能である。第2の位置において、ヘッド3はヘッドの締付けによって係止される。ヘッド受け部19のテーパ状外面22は、ロッキングリング8が第2端部19bの方にずれるのを防ぐ。
【0029】
内ねじ7は、脚に設けられる内側ねじ山13に対応するねじ山を有する。脚が広がるのを防ぐねじ山の形が用いられるのなら、内ねじ7のような単一の閉鎖要素で十分である。これは、半径方向における骨固定装置の大きさを減少させる。
【0030】
受け側5、ロッキングリング8、内ねじ7および骨固定要素1は、生体適合性材料、たとえばチタンもしくはステンレス鋼、ニチノールのようなニッケルおよびチタンの合金のような生体適合性合金、またはたとえばポリエーテルエーテルケトン(PEEK)のような生体適合性プラスチック材からなる。個々のパーツは同じまたは異なる材料からなり得る。
【0031】
骨固定装置はいくつかの態様で使用することができる。1つの使用態様では、骨固定要素1、受け側5およびロッキングリング8は予め組立てられる。受け側のヘッド受け部19は、拡大されたピボット角度の方向性を規定する凹所領域25が所望の方向に位置付けられるよう、所望の位置に回転させられる。次に、骨固定要素は、受け側が取付けられている状態で、骨の中に差し込まれる。ヘッドの凹所4は、第1、第2、および第3のボアを通るツールによってアクセスすることができる。ロッキングリングは、ヘッド3をクランプしないロッド受け部9の第2の端部9b近くの第1の位置にある。受け側5の可撓性ヘッド受け部19は、中空部23の内面に小さな重畳をもたらすプリテンションを少し発生させる。したがって、受け側5は特定の角度位置においてヘッド3に対して摩擦で保持される。次に、受け側5はロッド6を受入れるよう手作業で配列できる。他の骨固定装置に対してロッドの正しい位置が得られると、内ねじ7はロッド9を押さえ付けるまで、脚間にねじ込まれる。ロッドはU字形凹所の底部に押さえ付けられ、それにより突出部81のそれぞれの自由端82が係合し、ロッキングリング8を下に動かす。ロッキングリング8がヘッド受け部19の第2の端部19bに向かって移動する際、ロッキングリング8はヘッド受け部19を締め付けて、ヘッド3をクランプする。内ねじを最終的に締めることにより、ロッドおよびヘッドが同時にロックされる。
【0032】
別の使用態様では、受け側5およびロッキングリング8だけが予め組立てられる。骨固定要素3は多様な骨固定要素の中から選択され、中空内部23内に差し込まれ、その間ロッキングリングはロッド受け部の第2端部9bに近い位置にある。これにより、直径、長さおよび固定部分の他の特徴が異なり得る多様な骨固定要素の中から適切な骨固定要素を選択することができる。こうして、受け側と個々に選択することができる複数の骨固定要素とを含むモジュール式システムが提供できる。さらに、さまざまな拡大ピボット角度用に異なる凹所領域25を有する複数の受け側を提供することもできる。モジュール式により、骨固定装置の適用分野が広がる。
【0033】
さらに他の使用態様では、内ねじが締め付けられて、ヘッドおよびロッドを係止させる。その後、内ねじを緩めてロッドをさらに調整することができる。ヘッドはロッキングリング8を所定の位置に保持する摩擦力により、暫定的にクランプされた状態に留まる。
【0034】
図21から図23は、第2の実施例として受け側が第1の実施例と異なる多軸骨固定装置を示す。第2の実施例に係る受け側5′は、ロッド6を受入れるためのロッド受け部9′と、骨固定要素1のヘッド3を受入れるためのヘッド受け部19′とを含む。第1の実施例と同じ部分や箇所は、同じ参照符号で示され、その説明は繰返されない。ロッド受け部9′は、ピンホール16およびピン18を有さない。ロッド受け部9′は、第2の端部9bからある距離をおいて周縁溝30を含む。ヘッド受け部19′は、第1の端部19aの近傍において、スプリットリング50を収容するための周縁溝21′を含む。スプリットリング50は、溝30の断面に実質的に対応する円形の断面を有するリングであり、開いている、すなわちギャップ51を有する。したがって、スプリットリング50は可撓性を示す。スプリットリング50の大きさは、ギャップ51がスプリットリング50を締め付けることによって閉じると、スプリットリング50が溝21′内において完全に収まるものである。溝21′および30は、ヘッド受け部19′がロッド受け部9′内に挿入された場合、互いに対向する。溝21′および30′は、溝が互いに対向した場合、スプリットリング50が中で広がることができる空間31があるようなサイズとなっている。
【0035】
受け側5′の組立は以下のとおりである。まず、スプリットリング50が圧縮され、ヘッド受け部19′の溝21′内に挿入される。次に、ヘッド受け部19′はスプリットリング50とともに、第2の端部9bからロッド受け部9′内に挿入される。第1の端部19aが第1のボア10の端部に当接すると、溝21′および30は互いに対向し、スプリットリング50は広がる。これにより、ヘッド受け部19′がはずれないようになる。同時に、ヘッド受け部19′はロッド受け部9′に対して依然として回転可能であり、凹所領域25を所望の位置に回転させることができる。
【0036】
ロッキングリング8の取り付けおよび固定装置全体の組立は、第1の実施例と同様である。
【0037】
多軸骨固定装置の第3の実施例が図24から図26に示される。第3の実施例が第2の実施例と異なるのは、受け側5″およびスプリットリング50′の構成である。第2の実施例と同じ部分や箇所は、同じ参照符号で示され、その説明は繰返されない。
【0038】
第3の実施例は、矩形の断面を有するスプリットリング500を備える。さらに、ロッド受け部の溝300およびヘッド受け部の溝210は、矩形の断面を有し、その長辺は中心軸に対して垂直である。矩形の断面は、第2の実施例と比べて、より強い保持力を与える。
【0039】
第3の実施例に従う骨固定装置の組立および使用は、第1および第2の実施例の多軸骨固定装置の組立および使用と同様である。スプリットリング500は溝210内に挿入されて圧縮される。
【0040】
ヘッド受け部19″がロッド受け部9″に取付けられると、溝はギャップ310を有する寸法のものなので、スプリットリング50′は溝300内で広がる。スプリットリング500ならびに溝210および300の断面が矩形であることにより、ヘッド受け部の回転の際のより大きい摩擦力は、凹所領域25の位置をより正確に調整することを可能にする。
【0041】
実施例のさらなる変形が考えられる。たとえば、骨固定要素について、あらゆる種類の固定要素を用いることができ、受け側と組合せることができる。これらの固定要素とは、異なる長さ、異なる直径のねじ、管状ねじ(cannulated screws)、異なるねじ切り形態のねじ、釘、留め金などである。ヘッドおよびシャンクは、互いに接続可能である別個の部分であってもよい。
【0042】
受け側の変形も可能である。たとえば、拡大されたピボット角度を形成するには、傾斜した態様で底面が切断されている対称のヘッド受け部を用いることが可能であり、より大きい円周領域にわたって拡大されたピボット角度を形成できる。凹所領域は、中心軸Cに対して垂直な開口を与える対称ヘッド受け部における切抜きにより実現できる。
【0043】
ロッド受け部内でのヘッド受け部の回転支持は、他の態様で実現することができる。第1の実施例のピンおよび対応するピンホールは、円周方向の別の場所に配置することができる。1個の単一ピンホールおよび単一ピンで十分であり得る。ピンまたはスプリットリングの代わりに、たとえば転がり軸受を用いることができる。ロッド受け部とヘッド受け部との間の接続は少なくとも部分的に噛み合い嵌合である。しかし、摩擦嵌合のみでも接続が得られることが考えられる。
【0044】
ロッキングリングおよびヘッド受け部の対応する外面の構成は、示されている実施例と異なることができる。たとえば、ロッキングリングの内側面もテーパ状にして、第2部分のテーパ状外面と対応させることができる。ロッキングリングおよびヘッド受け部の対応する面は、ヘッドのクランピングが、ロッキングリングと第2部分との締まりばめによって得られるよう、平行であってもよい。ヘッドを固定するための十分な固定力を生成する他の構成も考えられ得る。
【0045】
ロッドを受入れるU字形の凹所の代わりに、側面に開いている凹所を用いることもでき、さらにロッド用のチャネルを閉じることもできる。他の種類のロック装置として、外ナット、外側冠、バヨネット固定装置なども可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 骨固定要素
2 ねじ切りされたシャンク
3 球状形ヘッド
4 凹所
5 受け側
6 ロッド
7 閉鎖要素
8 ロッキングリング
9,9′,9″ ロッド受け部
9a 第1の端部
9b 第2の端部
12 凹所
19,19′,19″ ヘッド受け部
19a 第1の端部
19b 第2の端部
23 中空内部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多軸骨固定装置であって、
骨の中に固定するためのシャンク(2)およびヘッド(3)を有する骨固定要素(1)と、
ロッド(6)を骨固定要素(1)に結合するための受け側(5,5′,5″)とを備え、受け側は
第1の端部(9a)、第2の端部(9b)、および中にロッド(6)を受入れるための底面を有する凹所(12)を有するロッド受け部(9,9′,9″)、
第1の端部(19a)、境界エッジを有する開いている第2の端部(19b)、および開いている第2の端部(19b)と連通してヘッド(3)を導入するための中空内部(23)を有するヘッド受け部(19,19′,19″)を含み、ヘッド受け部はヘッド(3)の挿入およびクランプを可能にするよう可撓性を有し、
さらに、ヘッド受け部(19)の周りに取付けられるロッキングリング(8)を含み、
ヘッド(3)はヘッド受け部(19)内において回動可能であり、ロッキングリング(8)によってヘッド受け部(19)を締付けることにより、ある角度で固定でき、
境界エッジは、骨固定要素(1)が境界エッジ(19c)の第1の位置において、境界エッジの第2の位置よりも大きいピボット角度で回動できるよう構成されており、
ヘッド受け部(19,19′,19″)はロッド受け部(9,9′,9″)に回転可能に接続される、多軸骨固定装置。
【請求項2】
ヘッド受け部(19,19′,19″)の第1の端部(19a)は、ロッド受け部(9,9′,9″)の第2の端部(9b)に接続される、請求項1に記載の多軸骨固定装置。
【請求項3】
ヘッド受け部(19,19′,19″)およびロッド受け部(9,9′,9″)は噛合い嵌合によって接続される、請求項1または2に記載の多軸骨固定装置。
【請求項4】
ヘッド受け部(19,19′,19″)は、第1の端部(19a)において、周縁溝(21)がある円筒形部分(20)を有し、ロッド受け部(9,9′,9″)は第2の端部(9b)において、円筒形部分(20)が嵌合するボア(10)を有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の多軸骨固定装置。
【請求項5】
ロッド受け部(9)は、少なくとも1つのピンホール(16)と、溝(21)内に少なくとも部分的に延在するよう位置づけられるピン(18)とを含む、請求項4に記載の多軸骨固定装置。
【請求項6】
ボア(10)は、ヘッド受け部(19′,19″)の溝(21)に対向して、その壁に周縁溝(30,300)を含み、ヘッド受け部の溝(21)内に、ロッド受け部(9′,9″)の溝(21′,210)に延在できるスプリットリング(50,500)が設けられる、請求項4に記載の多軸骨固定装置。
【請求項7】
境界エッジは、骨固定要素が中に回動したときに、拡大されたピボット角度を与える凹所領域(25)を含む、請求項1から6のいずれか1項に記載の多軸骨固定装置。
【請求項8】
ヘッド受け部(19,19′,19″)は、ヘッドが固定されるようにロッキングリング(8)がヘッド受け部を締付ける場合に、ロッド受け部(9,9′,9″)に対して固定される、請求項1から7のいずれか1項に記載の多軸骨固定装置。
【請求項9】
受け側(5,5′,5″)は、ロッド受け部(9,9′,9″)の第1の端部(9a)からヘッド受け部(19,19′,19″)の開いている第2の端部(19b)に延在する対称軸(C)を含み、ロッキングリング(8)は対称軸(C)に沿って移動可能である、請求項1から8のいずれか1項に記載の多軸骨固定装置。
【請求項10】
ロッド(6)を介してロッキングリング(8)に圧力を与える動きは、ヘッド(3)が固定されるまでヘッド受け部を締付ける、請求項1から9のいずれか1項に記載の多軸骨固定装置。
【請求項11】
ロッド(6)用の凹所(21)はU字形の凹所である、請求項1から10のいずれか1項に記載の多軸骨固定装置。
【請求項12】
ロッキングリング(8)はヘッド受け部の開放端部(19b)から取付け可能である、請求項1から11のいずれか1項に記載の多軸骨固定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2013−63269(P2013−63269A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−200477(P2012−200477)
【出願日】平成24年9月12日(2012.9.12)
【出願人】(511211737)ビーダーマン・テクノロジーズ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンディートゲゼルシャフト (30)
【氏名又は名称原語表記】BIEDERMANN TECHNOLOGIES GMBH & CO. KG
【Fターム(参考)】