説明

多重修飾されたゼラチン誘導体およびその架橋材料

一般式(I)の構造を有するだけでなく、一般式(II)、(III)および(IV)のうち、少なくとも1つの構造も有する多重修飾されたゼラチン誘導体を開示する。式中、GはA型ゼラチン残基、B型ゼラチン残基、遺伝子組み換えゼラチン残基を含むゼラチン残基であり、Rはアルキレン基、またはアミド結合を1つ含む連結基であり、Rはアルキル基またはアリール基であり、Rはアルキレン基であり、Rはカルボキシル基またはカルボキシル基の塩である。ゼラチンの多重修飾には、ゼラチンの側鎖アミノ基のアミド結合による疎水化、ゼラチンの側鎖アミノ基のアミド結合によるカルボキシ化、ゼラチンの側鎖カルボキシル基のチオール化、および、ゼラチンの側鎖アミノ基の、アミド結合によるカルボキシ化後の、当該カルボキシ化のチオール化の4種類の方法が含まれる。また、本発明はさらに当該多重修飾されたゼラチン誘導体の架橋材料を開示する。本発明の多重修飾されたゼラチン誘導体は、変化に富んだ化学構造および多様な性能を有し、その架橋材料は細胞培養用基材等に用いることができる。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化合物ゼラチン、特に、多重修飾されたゼラチン誘導体に関する。また、本発明は当該多重修飾されたゼラチン誘導体の架橋材料に関する。
【背景技術】
【0002】
ゼラチンは、コラーゲンの変性誘導体であり、人体に不可欠な18種類のアミノ酸を含む蛋白質の一種である。天然ゼラチンは、通常、動物の皮、骨、腱やじん帯等の結合組織中のコラーゲンを、酸またはアルカリ加水分解によって分離抽出することによって調製される。これらは通常、A型とB型に分類される。A型は酸加水分解によって調製されたゼラチンであり、側鎖カルボン酸残基が少なく、等電点が高い。B型はアルカリ加水分解によって調製されたゼラチンであり、側鎖のグルタミン残基およびアスパラギン残基の大部分が、グルタミン酸およびアスパラギン酸に転化しているため、側鎖に多くのカルボン酸残基を有し、等電点が低い。天然ゼラチンは、通常、調製方法が酸加水分解であるかアルカリ加水分解であるかを問わず、複雑な混合物であり、分子量の異なる複数種類のポリペプチドを含有しており、生産時のロットが異なると、性質にある程度の差異が生じる。ゼラチンは、遺伝子組み換え技術によって調製することも可能である。遺伝子組み換えによるゼラチンは、精確な分子量や等電点を有しており、特定の用途に応じて、ゼラチンの分子構造を設計することも可能である(Olsen他,Advanced Drug Delivery Reviews, 55,1547,2003)。
【0003】
ゼラチンは、生体適合性、生分解性、低免疫原性等、多くの優れた性能を有するため、バイオ医薬分野において、止血ゼラチンスポンジ、薬剤用ゼラチンカプセル、創面被覆用ゼラチンスポンジ材料、新型の薬物徐放製剤および組織再生基材等の広範な用途に用いられる。しかしながら、ゼラチンは体温条件下で水に可溶であるため、バイオ医薬品分野におけるゼラチンのほとんどの用途においては、ゼラチンの熱安定性および機械的安定性を高めるために、物理的または化学的手段でゼラチンを架橋することが不可欠である。ゼラチンを架橋する物理的な方法としては、脱水素熱処理および紫外線照射が一般的であるが、架橋効率が低く、制御も難しい。ゼラチンを架橋する化学的な方法は、相対的に効率が高い。一般的なゼラチンの化学架橋剤には、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、多官能エポキシ架橋剤、多官能イソシアネート架橋剤、アシルアジゾ化合物、カルボジイミド等が含まれる(Kuijpers他,Journal of Biomaterials Science:Polymer Edition,11,225,2000)。ただし、これらの化学架橋剤には、通常強い毒性の副作用があり、微量の化学架橋剤や架橋官能基が残留するだけでも、深刻な炎症反応を引き起こすおそれがある。このため、現在選択しうる化学架橋方法は、ゼラチンのバイオ医薬品分野への応用を大幅に制約してしまっている。
【0004】
ゼラチンのバイオ医薬品分野への応用を拡大する上での有効なアプローチは、ゼラチンを化学的に修飾することである。このようなアプローチによれば、ゼラチンに重要な物理化学性能を持たせることができるだけではなく、有毒な副作用のある化学架橋剤を減らしたり、または使用せずに、架橋されたゼラチン材料を調製することが可能である。例えば、Maらは、両親媒性を有する疎水性ポリ乳酸化(hydrophobically poly-latic acid modified)ゼラチン誘導体を開示し(Journal of Biomaterials Science:Polymer Edition,13,67,2002)、Van Den Bulckeらはメタクリルアミド化したゼラチン誘導体を開示している(Biomacromolecules,1,31,2000)。これら誘導体は、比較的マイルドな光開始ラジカル重合によって架橋されたゼラチン材料を調製することができる。また、Morikawa、Matsudaらが開示したN−イソプロピルアクリルアミドグラフト化したゼラチン誘導体は、温度呼応してゲル化する性能を有する(Journal of Biomaterials Science:Polymer Edition,13,167,2002)。Shuらが開示したチオール化したゼラチン誘導体は、おだやかなジスルフィド結合または求核付加反応によって、in situで架橋されたゼラチン材料を調製することができる(Biomaterials,24,3825,2003)。現在までのところ、これらの方法によって架橋されたゼラチン材料を調製する場合には、なお多くの限界がある。その主な原因は、ゼラチンの化学的修飾と架橋を行うための主要な官能基(側鎖のアミノ基またはカルボキシル基)の数が、かなり限定されるからである。例えば、B型ゼラチンにおける側鎖のアミノ基およびカルボキシル基の数は、アミノ酸残基1000個に対して、それぞれ約28個と118個である。A型ゼラチンにおける側鎖のアミノ基の含有量はB型ゼラチンに近いが、側鎖のカルボキシル基の含有量は、アミノ酸残基1000個に対し54個と、かなり低い。したがって、ゼラチンのバイオ医薬品分野での様々な応用範囲をさらに拡大するためには、新規な化学的修飾および架橋方法の開発が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする第一の課題は、新規な多重修飾されたゼラチン誘導体(multiple modified derivatives)を提供することである。
本発明が解決しようとする第二の課題は、多重修飾されたゼラチン誘導体から構成される新規な架橋材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はゼラチンを原料とし、ゼラチンにおいて、アミド結合による側鎖アミノ基の疎水化、アミド結合による側鎖アミノ基のカルボキシ化およびカルボキシル基のチオール化を行い、新規な多重修飾されたゼラチン誘導体を調製する。一重修飾(single modified)されたゼラチン誘導体と比べ、本発明の多重修飾されたゼラチン誘導体は、側鎖分子構造や化学性能が調節可能である等の多くの優れた性能を有し、バイオ医薬品分野において多くの重要な応用が見込まれる。
【0007】
本発明の多重修飾されたゼラチン誘導体は、下記一般式(I)の構造と、下記一般式(II)、(III)、(IV)のうち、少なくとも1つの構造とを、具備する。
【0008】
【化1】

式中、GはA型ゼラチン残基(gelatin residue)、B型ゼラチン残基、遺伝子組み換えゼラチン残基などを含むゼラチン残基であり、
はアルキレン基またはアミド結合を一つ含む連結基であり、
はアルキル基またはアリール基であり、
はアルキレン基または置換アルキレン基であり、
はカルボキシル基またはカルボキシル基の塩である。
【0009】
上記アミド結合を一つ含む連結基は、下記一般式(A)または(B)で表される化学構造を有する。
【0010】
【化2】

R’とR’’は、アルキレン基、置換アルキレン基、アリール基またはポリエーテル基である。
【0011】
上記アルキレン基は−(CH−(nは1〜15の整数)を意味する。好ましくは、nは1〜8の整数である。
【0012】
上記置換アルキレン基は、アルキル基、ヒドロキシル基、アミノ基、アルコキシ基、フェニル基、エステル基などの基の少なくとも一つの水素原子が置換されたアルキレン基を意味する。
【0013】
上記アリール基は、芳香族であるフェニル基、ナフチル基などを意味する。好ましくはフェニル基である。
【0014】
上記ポリエーテル基は、−[(CHR)O]−を意味し、ここでRはアルキル基、nは1〜10の整数、mは1〜500の整数である。好ましくは、Rは水素原子であり、nは、それぞれ2、3および4である。
【0015】
上記アルキル基は、炭素数1〜15の直鎖または分岐アルキル基を意味する。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、sec−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等である。好ましくは、炭素数1〜10の直鎖または分岐アルキル基であり、特に好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基である。
【0016】
上記アルコキシ基は、炭素数1〜6の直鎖または分岐アルコキシ基を意味する。例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等である。好ましくは、炭素数1〜4の分岐または直鎖アルコキシ基であり、特に好ましくはメトキシ基、エトキシ基である。
【0017】
上記エステル基は、−C(O)ORを意味し、ここでRは上記低級アルキル基である。好ましくは、メチルエステル基、エチルエステル基、プロピルエステル基、ブチルエステル基である。
【0018】
上記カルボキシル基は−COOHを意味し、カルボキシル基の塩は、上記カルボキシル基がアルカリで中和された基、つまり−COOを意味する。ここで、Aはナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、アンモニウムイオン等を含む。好ましくは、カルボキシル基、カルボキシル基のナトリウム塩またはカルボキシル基のカリウム塩である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例1における、アセチル化およびチオール化されたゼラチン誘導体の水素原子核磁気共鳴スペクトルおよび重要な化学シフトピークの帰属(DOを溶媒とする)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の多重修飾されたゼラチン誘導体は、下記のいくつかの代表的一般式で表される化学構造を有する。
【0021】
【化3】

式中、G、R、R、RおよびRの定義は前記と同様である。
【0022】
本発明の多重修飾されたゼラチン誘導体における、R、R、R、Rの好ましい化学構造は下記のとおりである。
【0023】
【化4】

上記一般式(V)〜(XI)の多重修飾されたゼラチン誘導体は、いずれも少なくとも1つのチオール基を含む。一般式(V)、(VI)、(VII)は、本発明の二重修飾されたゼラチン誘導体の化学構造式である。一般式(VIII)、(XI)、(X)は、本発明の三重修飾されたゼラチン誘導体の化学構造式である。一般式(XI)は、本発明の四重修飾されたゼラチン誘導体の化学構造式である。
【0024】
本発明の多重修飾されたゼラチン誘導体の化学的修飾には、(A)アミド結合によるゼラチンの側鎖アミノ基の疎水化、(B)アミド結合によるゼラチンの側鎖アミノ基のカルボキシ化、(C)ゼラチンの側鎖カルボキシル基のチオール化、(D)アミド結合によるゼラチンの側鎖アミノ基のカルボキシ化後の、当該カルボキシ基のチオール化の4種類の方法が含まれる。
【0025】
化学的修飾方法(A)である、アミド結合によるゼラチンの側鎖アミノ基の疎水化に通常用いられる方法は下記のとおりである。
【0026】
【化5】

式中、GおよびRの定義は前記と同様である。一般的調製プロセスは、具体的には、ゼラチンを温水に溶かして水溶液(通常約30℃)とし、溶液のpH値を弱アルカリ性(通常8〜10)に調節してから、酸無水物を加えて一定時間攪拌し反応させると同時に、適量のアルカリ溶液(例えば水酸化ナトリウム)を断続的に加えて、溶液を弱アルカリ性に保持する。最後に反応溶液を透析により精製し、冷凍乾燥すれば生成物が得られる。用いる酸無水物には、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水吉草酸、無水へキサン酸、無水ヘプタン酸、無水オクサン酸等が含まれる。
【0027】
化学的修飾方法(B)である、アミド結合によるゼラチンの側鎖アミノ基のカルボキシ化に通常用いられる方法は下記のとおりである。
【0028】
【化6】

式中、GおよびRの定義は前記と同様である。一般的調製プロセスは、具体的には、ゼラチンを温水に溶かして水溶液(通常約30℃)とし、溶液のpH値を弱アルカリ性(通常8〜10)に調節してから、酸二無水物を加えて一定時間攪拌し反応させると同時に、適量のアルカリ溶液(例えば水酸化ナトリウム)を断続的に加えて、溶液を弱アルカリ性に保持する。最後に反応溶液を透析精製し冷凍乾燥すれば生成物が得られる。用いられる酸二無水物には、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸、無水マレイン酸、ヘプタン二酸無水物、オクサン二酸無水物等が含まれる。
【0029】
化学的修飾方法(C)および(D)では、ゼラチンの側鎖カルボキシル基のチオール化(アミド結合によるゼラチンの側鎖アミノ基のカルボキシ化で導入されたカルボキシル基のチオール化を含む)に、ヒドラジン/カルボジイミドのカップリング方法(Shu他、Biomacromolecules,3,1304,2002)を用いる。その基本原理は、ゼラチンの側鎖カルボキシル基(または、アミド結合によって、ゼラチンの側鎖アミノ基をカルボキシ化することで導入されたカルボキシル基)が、カルボジイミド活性下で反応性中間体を生成し、ジチオジヒドラジドのヒドラジドアミノ基が反応性中間体を求核攻撃して付加体を生成し、最後に付加体のジスルフィド結合が還元されてフリーチオール基となり、これを精製すれば生成物が得られる。その通常用いられる方法は、下記のとおりである。
【0030】
【化7】

式中、GおよびRの定義は前記と同様である。一般的調製プロセスは、具体的には、ゼラチンまたはアミド結合でカルボキシ化されたゼラチン誘導体を、温水に溶かして水溶液(通常約30℃)とし、溶液のpH値を弱酸性(通常4.75)に調節してから、規定量のジチオジヒドラジドを加えて、攪拌溶解する。その後、規定量の1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩を加えると同時に、適量の酸溶液(例えば塩酸)を断続的に加えて、反応溶液のpH値を4.75に保持する。最後に、弱アルカリ性条件下(通常pH値は8〜10)でヒドロキシルチオール、ジチオスレイトールまたは水酸化ホウ素ナトリウム等の還元剤を加えて、ジスルフィド結合を還元してフリーチオール基とする。酸性条件下で透析精製を行って不純物を除去し、冷凍乾燥すれば生成物が得られる。
【0031】
化学的修飾方法(C)および(D)は、ゼラチンの側鎖カルボキシル基(または、アミド結合によってゼラチンの側鎖アミノ基をカルボキシ化することで導入されたカルボキシル基)のチオール化であり、用いられる代表的なジチオジヒドラジドには、ShuらがBiomacromolecules,3,1304,2002において開示したジチオジプロピオン酸ジヒドラジド(略称:DTPDH)およびジチオジブチル酸ジヒドラジド(略称:DTBDH)と、本出願人が特許出願(中国特許出願番号:200610118715.2、発明の名称:ジヒドラジド化合物およびその調製方法および用途)において開示した新規のジヒドラジド化合物が含まれ、当該新規のジヒドラジド化合物には、ジチオジプロピオン酸ジアシルグリシンジヒドラジド(略称:DGDTPDH)、ジチオジプロピオン酸ジアシルアラニンジヒドラジド(略称:DADTPDH)、ジチオジプロピオン酸ジアシルヒドロキシルアミノ酢酸ジヒドラジド(略称:DHADTPDH)、ジチオジプロピオン酸ジアシルアミノプロピオン酸ジヒドラジド(略称:DPDTPDH)、ジチオジプロピオン酸ジアシルアミノブチル酸ジヒドラジド(略称:DBDTPDH)、ジマロン酸ジアシルシスタミノジヒドラジド(略称:DPCDH)、ジコハク酸ジアシルシスタミノジヒドラジド(略称:DSCDH)、ジ(メチル)コハク酸ジアシルシスタミノジヒドラジド(略称:DMPCDH)、ジグルタル酸ジアシルシスタミノジヒドラジド(略称:DGCDH)、ジアジピン酸ジアシルシスタミノジヒドラジド(略称:DACDH)等が含まれる。これら代表的なジチオジヒドラジドの化学構造式は下記のとおりである。
【0032】
【化8】

前記一般式(V)で表される多重修飾されたゼラチン誘導体の生成方法には、化学的修飾方法(A)のゼラチンの側鎖アミノ基のアミド結合による疎水化と、化学的修飾方法(C)のゼラチンの側鎖カルボキシル基のチオール化との、二つのプロセスが含まれる。一般的な調製方法は、二つのステップを有する。
(1)ゼラチンを温水に溶かして水溶液(通常約30℃)とし、溶液のpH値を弱アルカリ性(通常8〜10)に調節してから、酸無水物を加えて一定時間攪拌し反応させると同時に、適量のアルカリ溶液(例えば水酸化ナトリウム)を断続的に加えて、溶液を弱アルカリ性に保持する。最後に反応溶液を透析精製し、冷凍乾燥して中間生成物が得られる。
(2)中間生成物を温水に溶かして水溶液とするか、または上述した未精製の中間生成物溶液(通常約30℃)をそのまま用いて、溶液のpH値を弱酸性(通常4.75)に調節してから、規定量のジチオジヒドラジドを加えて、攪拌溶解する。その後、規定量の1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩を加えると同時に、適量の酸溶液(例えば塩酸)を断続的に加えて、反応溶液のpH値を4.75に保持する。最後に、弱アルカリ性条件下(通常pH値は8〜10)でヒドロキシルチオール、ジチオスレイトールまたは水酸化ホウ素ナトリウム等の還元剤を加えて、ジスルフィド結合を還元してフリーチオール基とする。酸性条件下で透析精製を行って不純物を除去し、冷凍乾燥すれば、一般式(V)で表される本発明の多重修飾されたゼラチン誘導体が得られる。用いられる酸無水物(英語ではdiacid)には、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水ブチル酸、無水吉草酸、無水へキサン酸、無水ヘプタン酸、無水オクサン酸物が含まれ、用いられるジチオジヒドラジドは前記のとおりである。
【0033】
前記一般式(VI)で表される多重修飾されたゼラチン誘導体の生成方法には、化学的修飾方法(B)のアミド結合によるゼラチンの側鎖アミノ基のカルボキシ化と、化学的変性方法(C)のゼラチンの側鎖カルボキシル基のチオール化との、二つのプロセスが含まれる。一般的な調製方法は、二つのステップを有する。
(1)ゼラチンを温水に溶かして水溶液(通常約30℃)とし、溶液のpH値を弱酸性(通常4.75)に調節してから、規定量のジチオジヒドラジドを加えて攪拌溶解する。その後、規定量の1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩加えると同時に、適量の酸溶液(例えば塩酸)を断続的に加えて、反応溶液のpH値を4.75に保持する。最後に、弱アルカリ性条件下(通常pH値は8〜10)でヒドロキシルチオール、ジチオスレイトールまたは水酸化ホウ素ナトリウム等の還元剤を加えて、ジスルフィド結合を還元してフリーチオール基とする。酸性条件下で透析精製を行って不純物を除去し、冷凍乾燥すれば、中間生成物が得られる。
(2)不活性ガス(例えば窒素ガス等)の雰囲気下で、中間生成物を温水に溶かして水溶液(通常約30℃)とし、溶液のpH値を弱アルカリ性(通常8〜10)に調節してから、規定量の酸二無水物を加えて、一定時間攪拌し反応させる。同時に、適量のアルカリ溶液(例えば水酸化ナトリウム)を断続的に加えて、溶液を弱アルカリ性に保持する。最後に酸性条件下で反応溶液を透析精製し、冷凍乾燥すれば、一般式(VI)で表される本発明の多重修飾されたゼラチン誘導体が得られる。用いられる酸二無水物には、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸等が含まれ、用いられるジチオジヒドラジドは前記のとおりである。
【0034】
前記一般式(VII)と(X)で表される多重修飾されたゼラチン誘導体の生成方法には、化学的修飾方法(B)のアミド結合によるゼラチンの側鎖アミノ基のカルボキシ化と、化学的修飾方法(C)のゼラチンの側鎖カルボキシル基のチオール化と、化学的修飾方法(D)のアミド結合によるゼラチンの側鎖アミノ基のカルボキシル化後のチオール化との、三つのプロセスが含まれる。一般的な調製方法は基本的に同様で、二つのステップを有する。
(1)ゼラチンを温水に溶かして水溶液(通常約30℃)とし、溶液のpH値を弱アルカリ性(通常8〜10)に調節してから、酸二無水物を加えて一定時間攪拌し反応させると同時に、適量のアルカリ溶液(例えば水酸化ナトリウム)を断続的に加えて、溶液を弱アルカリ性に保持する。最後に反応溶液を透析精製し、冷凍乾燥すれば中間生成物が得られる。
(2)中間生成物を温水に溶かして水溶液とするか、または上述した未精製の中間生成物溶液(通常約30℃)をそのまま用いて、溶液のpH値を弱酸性(通常4.75)に調節してから、規定量のジチオジヒドラジドを加えて、攪拌溶解する。その後、規定量の1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩を加えると同時に、適量の酸溶液(例えば塩酸)を断続的に加えて、反応溶液のpH値を4.75に保持する。最後に、弱アルカリ性条件下(通常pH値は8〜10)でヒドロキシルチオール、ジチオスレイトールまたは水酸化ホウ素ナトリウム等の還元剤を加えて、ジスルフィド結合を還元してフリーチオール基とする。酸性条件下で透析精製を行って不純物を除去し、冷凍乾燥すれば、生成物が得られる。反応系中に1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩の量が多すぎると、すべてのカルボキシル基がチオール化されて、生成物は本発明の一般式(VII)で表される多重修飾されたゼラチン誘導体となる。反応系中に1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩の使用量が少ないと、カルボキシル基は部分的にチオール化されて、生成物は一般式(X)で表される本発明の多重修飾されたゼラチン誘導体となる。用いられる酸二無水物には、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸等が含まれ、用いられるジチオジヒドラジドは前記のとおりである。
【0035】
前記一般式(VIII)で表される多重修飾されたゼラチン誘導体の調製方法は、上記の一般式(VI)で表される多重修飾されたゼラチン誘導体の調製方法と基本的に同じであり、上記一般式(VI)で表される多重修飾されたゼラチン誘導体の調製方法のステップ(2)において、酸無水物と酸二無水物を同時に加えればよい。
【0036】
前記一般式(IX)および(XI)で表される多重修飾されたゼラチン誘導体の調製方法は、上記の一般式(VII)および(X)で表される多重修飾されたゼラチン誘導体の調製方法と基本的に同じであるが、上記一般式(VII)および(X)で表される多重修飾されたゼラチン誘導体の調製方法のステップ(2)において、酸無水物と酸二無水物を同時に加えればよい。反応系中に1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩の量が多すぎると、すべてのカルボキシル基がチオール化されて、生成物は本発明の一般式(IX)で表される多重修飾されたゼラチン誘導体となる。反応系中に1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩の使用量が少ないと、カルボキシル基は部分的にチオール化されて、生成物は本発明の一般式(XI)で表される多重修飾されたゼラチン誘導体となる。
【0037】
本発明の新規な多重修飾されたゼラチン誘導体は、少なくとも一つのフリーチオール基を側鎖に有し、適当な条件下で、再び酸化してジスルフィド結合を形成する。酸素ガス、低濃度過酸化水素、ヨード、鉄の3価イオン等の中程度の強度(modearte)の酸化剤はいずれもフリーチオール基にジスルフィド結合を形成させるため、架橋されたゼラチン材料を調製することができる。一般的な調製方法は、本発明の多重修飾されたゼラチン誘導体の水溶液を、中性または弱アルカリ性条件下で空気を用いて酸化させてジスルフィド結合で架橋された材料を調製する方法、あるいは、弱酸性または酸性条件下で、低濃度過酸化水素や鉄の3価イオン等のより強い酸化剤を用いて酸化させて、ジスルフィド結合で架橋された材料を調製する方法である。
【0038】
本発明の多重修飾されたゼラチンを架橋した材料は、本発明の多重修飾されたゼラチン誘導体をチオールとの反応性を有する架橋剤によって架橋することによって調製することも可能である。本発明で用いるチオールとの反応性を有する官能基には、マレイミド、ビニルスルフォン、α,β不飽和アクリル酸エステル、α,β不飽和メタクリル酸エステル、ハロプロピオン酸エステル、ハロプロピオンアミド、ジチオピリジン、N−ヒドロキシルスクシンイミド活性化エステル等が含まれる。この中で、マレイミド、ビニルスルフォン、ヨードプロピオン酸エステル、ヨードプロピオンアミド、ジチオピリジン等の官能基は、チオールとの高い反応性を有する。これらの反応は、以下の三種類に分類される。
(1)チオール基と活性化不飽和二重結合(active unsaturated double bond)の付加反応(この反応に属する官能基には、マレイミド、ビニルスルフォン、α,β不飽和アクリル酸エステル、α,β不飽和メタクリル酸エステル等が含まれる)
(2)チオール基と活性アルキロゲン(alkylogen)との置換反応(この反応に属する官能基には、ヨードプロピオン酸エステル、ブロモプロピオン酸エステル、クロロプロピオン酸エステル、ヨードプロピオンアミド、ブロモプロピオンアミド、クロロプロピオンアミド、ジチオピリジン等が含まれる)
(3)チオエステル化反応(この反応の官能基には、各種カルボン酸の活性化エステル、例えばN−ヒドロキシルスクシンイミド活性化エステル等が含まれる)
【0039】
本発明の一般式(V)で表される多重修飾されたゼラチン誘導体を例として、チオール基と上記官能基の反応式を以下に示す。
【0040】
【化9】

本発明で用いるチオールとの反応性を有する架橋剤は、上記反応性官能基を少なくとも2つ含むポリエチレングリコール(略称:PEG)の誘導体であり、例えば2アーム、3アーム、4アーム、8アームまたはさらに多くのアームのポリエチレングリコール誘導体である。それらは、典型的には下記のような化学構造を有する。
【0041】
【化10】

式中、F、F、F、F、F、F、F、Fは、例えばマレイミド、ビニルスルフォン、α,β不飽和アクリル酸エステル、α,β不飽和メタクリル酸エステル、ハロプロピオン酸エステル、ハロプロピオンアミド、ジチオピリジンまたはN−ヒドロキシルスクシンイミド等の、前記のチオールとの反応性を有する官能基であり、F〜Fの化学構造は、すべて同じでも、部分的に同じでも、すべて異なっていてもよい。PEGは、分子量が100〜1000000であり、CHCHOの繰り返し単位を持つセグメントを表す。
【0042】
2アームのポリエチレングリコールを例に採ると、本発明で用いる一般的な架橋剤には、ポリエチレングリコールジマレイミド、ポリエチレングリコールジビニルスルフォン、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリル酸エステル、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリルアミド、ポリエチレングリコールジハロプロピオン酸エステル、ポリエチレングリコールジハロプロピオンアミド、ポリエチレングリコールジジチオピリジン、ポリエチレングリコールジN−ヒドロキシルスクシンイミド等が含まれる。これらの化学構造式は下記のとおりである。
【0043】
【化11】

本発明の、チオールとの反応性を有する架橋剤を用いて架橋した、新規なゼラチン誘導体の架橋材料の一般的調製方法としては、本発明の多重修飾されたゼラチン誘導体を水溶液または混合水溶液とし、溶液のpH値を中性になるよう調節してから、上記チオールとの反応性を有する架橋剤の水溶液に加えて均一に混合した後、室温下でしばらく静置すれば、ゲルが形成されて架橋材料が得られる。上記2アームポリエチレングリコール誘導体架橋剤と一般式(V)で表される本発明の多重修飾されたゼラチン誘導体を例にとれば、調製される架橋材料は、下記のような化学構造を有する。
【0044】
【化12】

一般式(V)で表される本発明の多重修飾されたゼラチン誘導体と同様に、一般式(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、(X)、(XI)で表される本発明の多重修飾されたゼラチン誘導体も、少なくとも一つのチオール基を含んでいるため、上記と同様の架橋方法を用いて架橋することができる。また、マルチアームのポリエチレングリコール誘導体架橋剤を用いて、本発明の多重修飾されたゼラチン誘導体を架橋し、本発明の架橋されたゼラチン材料を調製してもよい。さらに、二種類または二種類以上のポリエチレングリコール誘導体架橋剤(例えば、2アームポリエチレングリコール誘導体架橋剤、3アームポリエチレングリコール誘導体架橋剤、4アームポリエチレングリコール誘導体架橋剤、8アームポリエチレングリコール誘導体架橋剤等)を用いて、本発明の多重修飾されたゼラチン誘導体の架橋材料を調製してもよい。また、本発明の多重修飾されたゼラチン誘導体を二種類または二種類以上同時に用いて、上記の調製方法で、架橋されたゼラチン材料を調製してもよい。
【実施例】
【0045】
以下の実施例は、当業者が本発明をより完全に理解できるよう記載するものであり、本発明は以下の実施例になんら限定されるものではない。
【0046】
(実施例1)
アセチル化およびチオール化したゼラチン誘導体(本発明の一般式(V)で表される本発明の多重修飾されたゼラチン誘導体、式中、R=−CHCH−、R=−CH)の合成および特性
【0047】
(1)ゼラチンのアセチル化
100mlの蒸留水(約30℃)に、ゼラチン(B型、牛皮由来、米国Sigma社)を1グラム溶解し、澄んだ透明溶液を得た。1.0mol/Lの水酸化ナトリウム溶液を用いて、溶液のpH値を約9.5に調節した後、マグネティックスターラーを用いて攪拌しながら分析用純度(analytical pure)の無水酢酸を0.05g加え、1.0mol/Lの水酸化ナトリウム溶液適量を断続的に加えて、溶液のpH値を弱アルカリ性(通常8.0〜9.5)に保持した。約30℃で1時間攪拌を行い反応させた。その後、上記溶液を透析チューブ(分画分子量:3500、米国Fisher社)に入れ、蒸留水を用いて透析し、ゲルバーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)検出(移動相は純水、紫外線波長210nmで吸光検出)で低分子不純物溶出ピークが観察されなくなるまで、8時間毎に透析液を交換した。最後に透析チューブ内の溶液を集め、冷凍乾燥して白色綿状固体(アセチル化したゼラチン)を約0.8g得た。
【0048】
(2)アセチル化したゼラチンのチオール化
蒸留水50ml(約30℃)に、上記アセチル化したゼラチンを0.5g溶解した。上記溶液中にジチオジプロピオン酸ヒドラジド(ShuらがBiomacromolecules,3,1304,2002に開示した方法により調製されたもの)を0.3g加えて、攪拌し溶解した。その後、0.1mol/Lの塩酸を用いて溶液のpH値を4.75に調節し、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(米国Aldrich社)を0.25g加えて、マグネティックスターラーを用いて攪拌した。上記溶液中には、0.1mol/Lの塩酸適量を断続的に加えて、溶液のpH値を4.75に保持した。マグネティックスターラーを用いて攪拌し2時間反応させた後、ジチオスレイトール(米国Diagnostic chemical社)を2.5gと、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム溶液を加えて攪拌し、溶液のpH値を8.5に調節した。そして、室温下でマグネティックスターラーを用いて攪拌し24時間反応させた後、上記溶液中に6mol/Lの塩酸をpH値が約3.0になるまで加えた。上記溶液を透析チューブ(分画分子量:3500、米国Fisher社)に入れ、0.001mol/Lの塩酸を10Lと、0.3mol/Lの塩化ナトリウムの溶液を用いて5日間透析し、8時間毎に透析液を交換した。その後、再び0.001mol/Lの塩酸溶液を10L用いて3日間透析し、GPC検出(移動相は純水、紫外線波長210nmで吸光検出)で低分子不純物溶出ピークが観察されなくなるまで、8時間毎に透析液を交換した。最後に透析チューブ内の溶液を集め、冷凍乾燥して白色綿状固体を約0.35g得た。
【0049】
(3)アセチル化およびチオール化したゼラチン誘導体の特性解析
アセチル化およびチオール化したゼラチン誘導体の化学構造は下記のとおりである。
【0050】
【化13】

GPC検出(移動相は純水、紫外線波長210nmで吸光検出)で低分子不純物溶出ピークが観察されないということは、合成されたアセチル化およびチオール化したゼラチン誘導体が高度に精製され、不純物が検査機器の検出レベルより低いということを表している。
【0051】
2,4,6−トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)試薬を用いて、アセチル化したゼラチンの側鎖アミノ基を測定したところ、約37%のアミノ基がアセチル化されていた。
【0052】
ShuらがBiomacromolecules,3,1304,2002において開示した改良Ellman法によってアセチル化およびチオール化したゼラチン誘導体の活性チオール含有量を検出したところ、0.5mmolチオール/gであった。
【0053】
水素核磁気共鳴スペクトル(H−NMR)(溶媒:DO)については、図1に示すとおりであった。
【0054】
(実施例2)
カプロイル化およびチオール化したゼラチン誘導体(本発明の一般式(V)で表されるゼラチン誘導体、式中、R=−CHCH−、R=−CHCHCHCHCH)の合成および特性
【0055】
(1)ゼラチンのカプロイル化
蒸留水100ml(約30℃)にゼラチン(A型、豚皮由来、米国Sigma社)を1グラム溶解し、澄んだ透明溶液を得た。1.0mol/Lの水酸化ナトリウム溶液を用いて、溶液のpH値を約9.5に調節した後、マグネティックスターラーを用いて攪拌しながら分析用純度(analytical pure)の無水吉草酸を0.1g加え、1.0mol/Lの水酸化ナトリウム溶液適量を断続的に加えて、溶液のpH値を弱アルカリ性(通常8.0〜9.5)に保持した。約30℃で1時間攪拌を行い反応させた。その後、上記溶液を透析チューブ(分画分子量:3500、米国Fisher社)に入れ、蒸留水を用いて透析し、ゲルバーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)検出(移動相は純水、紫外線波長210nmで吸光検出)で低分子不純物溶出ピークが観察されなくなるまで、8時間毎に透析液を交換した。最後に透析チューブ内の溶液を集め、冷凍乾燥して白色綿状固体(カプロイル化したゼラチン)を約0.8g得た。
【0056】
(2)カプロイル化したゼラチンのチオール化
50mlの蒸留水(約30℃)に、上記カプロイル化したゼラチンを0.5g溶解した。上記溶液中にジチオジプロピオン酸ヒドラジド(ShuらがBiomacromolecules,3,1304,2002に開示した方法により調製されたもの)を0.3g加えて、攪拌し溶解した。その後、0.1mol/Lの塩酸を用いて溶液のpH値を4.75に調節し、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(米国Aldrich社)を0.25g加えて、マグネティックスターラーを用いて攪拌した。上記溶液中には、0.1mol/Lの塩酸適量を断続的に加えて、溶液のpH値を4.75に保持した。マグネティックスターラーを用いて攪拌し2時間反応させた後、ジチオスレイトール(米国Diagnostic Chemical社)を2.5gと、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム溶液を加えて攪拌し、溶液のpH値を8.5に調節した。そして、室温下でマグネティックスターラーを用いて攪拌し24時間反応させた後、上記溶液中に6mol/Lの塩酸をpH値が約3.0になるまで加えた。上記溶液を透析チューブ(分画分子量:3500、米国Fisher社)に入れ、10Lの0.001mol/Lの塩酸と0.3mol/Lの塩化ナトリウムの溶液を用いて5日間透析し、8時間毎に透析液を交換した。その後、再び0.001mol/Lの塩酸溶液を10L用いて3日間透析し、GPC検出(移動相は純水、紫外線波長210nmで吸光検出)で低分子不純物溶出ピークが観察されなくなるまで、8時間毎に透析液を交換した。最後に透析チューブ内の溶液を集め、冷凍乾燥して白色綿状固体を約0.37g得た。
【0057】
(3)カプロイル化およびチオール化したゼラチン誘導体の特性解析
カプロイル化およびチオール化したゼラチン誘導体の化学構造は下記のとおりである。
【0058】
【化14】

GPC検出(移動相は純水、紫外線波長210nmで吸光検出)で低分子不純物溶出ピークが観察されないということは、合成されたカプロイル化およびチオール化したゼラチン誘導体が高度に精製され、不純物が検査機器の検出レベルより低いということを表している。
【0059】
2,4,6−トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)試薬を用いて、カプロイル化したゼラチンの側鎖アミノ基を測定したところ、約33%のアミノ基がカプロイル化されていた。
【0060】
ShuらがBiomacromolecules,3,1304,2002において開示した改良Ellman法によって、カプロイル化およびチオール化したゼラチン誘導体の活性チオール含有量を検出したところ、0.24mmolチオール/gであった。
【0061】
水素核磁気共鳴スペクトル(H−NMR)(溶媒:DO)の結果は、下表のとおりであった。
【表1】

【0062】
(実施例3)
ブチリル化およびチオール化したゼラチン誘導体の合成および特性
(本発明の一般式(V)で表される多重修飾されたゼラチン誘導体であって、式中Rは下記一般式(C)化学構造を有し、Rは−CHCHCHである)
【0063】
【化15】

【0064】
(1)ゼラチンのブチリル化
蒸留水100ml(約30℃)にゼラチン(B型、牛皮由来、米国Sigma社)を1グラム溶解し、澄んだ透明溶液を得た。1.0mol/Lの水酸化ナトリウム溶液を用いて、溶液のpH値を約9.5に調節した後、マグネティックスターラーを用いて攪拌しながら分析用純度(analytical pure)の無水酪酸を0.08g加え、1.0mol/Lの水酸化ナトリウム溶液適量を断続的に加えて、溶液のpH値を弱アルカリ性(通常8.0〜9.5)に保持した。約30℃で1時間攪拌を行い反応させた。その後、上記溶液を透析チューブ(分画分子量:3500、米国Fisher社)に入れ、蒸留水を用いて透析し、ゲルバーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)検出(移動相は純水、紫外線波長210nmで吸光検出)で低分子不純物溶出ピークが観察されなくなるまで、8時間毎に透析液を交換した。最後に透析チューブ内の溶液を集め、冷凍乾燥して白色綿状固体(ブチリル化したゼラチン)を約0.75g得た。
【0065】
(2)ブチリル化したゼラチンのチオール化
50mlの蒸留水(約30℃)に、上記ブチリル化したゼラチンを0.5g溶解した。上記溶液中にジコハク酸ジアシルシスタミノジヒドラジド(本出願人による特許出願(「ジヒドラジド化合物およびその調製方法と用途」中国出願番号200610118715.2)に開示された方法で調製されたもの)を0.4g加えて、攪拌し溶解した。その後、0.1mol/Lの塩酸を用いて溶液のpH値を4.75に調節し、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(米国Aldrich社)を0.25g加えて、マグネティックスターラーを用いて攪拌した。上記溶液中には、0.1mol/Lの塩酸適量を断続的に加えて、溶液のpH値を4.75に保持した。マグネティックスターラーを用いて攪拌し2時間反応させた後、ジチオスレイトール(米国Diagnostic Chemical社)を3.0gと、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム溶液を加えて攪拌し、溶液のpH値を8.5に調節した。そして、室温下でマグネティックスターラーを用いて攪拌し24時間反応させた後、上記溶液中に6mol/Lの塩酸をpH値が約3.0になるまで加えた。上記溶液を透析チューブ(分画分子量:3500、米国Fisher社)に入れ、10Lの0.001mol/Lの塩酸と0.3mol/Lの塩化ナトリウムの溶液を用いて5日間透析し、8時間毎に透析液を交換した。その後、再び0.001mol/Lの塩酸溶液を10L用いて3日間透析し、GPC検出(移動相は純水、紫外線波長210nmで吸光検出)で低分子不純物溶出ピークが観察されなくなるまで、8時間毎に透析液を交換した。最後に透析チューブ内の溶液を集め、冷凍乾燥して白色綿状固体を約0.31g得た。
【0066】
(3)ブチリル化およびチオール化したゼラチン誘導体の特性解析
ブチリル化およびチオール化したゼラチン誘導体の化学構造は下記のとおりである。
【0067】
【化16】

GPC検出(移動相は純水、紫外線波長210nmで吸光検出)で低分子不純物溶出ピークが観察されないということは、合成されたブチリル化およびチオール化したゼラチン誘導体が高度に精製され、不純物が検査機器の検出レベルより低いということを表している。
【0068】
2,4,6−トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)試薬を用いて、ブチリル化したゼラチンの側鎖アミノ基を測定したところ、約36%のアミノ基がカプロイル化されていた。
【0069】
ShuらがBiomacromolecules,3,1304,2002において開示した改良Ellman法によって、ブチリル化およびチオール化したゼラチン誘導体の活性チオール含有量を検出したところ、0.47mmolチオール/gであった。
【0070】
水素核磁気共鳴スペクトル(H−NMR)(溶媒:DO)の結果は、下表のとおりであった。
【表2】

【0071】
(実施例4)
アセチル化およびチオール化したゼラチン誘導体
(本発明の一般式(V)で表される多重修飾されたゼラチン誘導体であって、式中Rは下記一般式(D)化学構造を有し、Rは−CHである)
【化17】

【0072】
(1)ゼラチンのアセチル化
蒸留水100ml(約30℃)に、ゼラチン(A型、豚皮由来、米国Sigma社)を1グラム溶解し、澄んだ透明溶液を得た。1.0mol/Lの水酸化ナトリウム溶液を用いて、溶液のpH値を約9.5に調節した後、マグネティックスターラーを用いて攪拌しながら無水酢酸(分析用純度)を0.08g加え、1.0mol/Lの水酸化ナトリウム溶液適量を断続的に加えて、溶液のpH値を弱アルカリ性(通常8.0〜9.5)に保持した。約30℃で1時間攪拌を行い反応させた。その後、上記溶液を透析チューブ(分画分子量:3500、米国Fisher社)に入れ、蒸留水を用いて透析し、ゲルバーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)検出(移動相は純水、紫外線波長210nmで吸光検出)で低分子不純物溶出ピークが観察されなくなるまで、8時間毎に透析液を交換した。最後に透析チューブ内の溶液を集め、冷凍乾燥して白色綿状固体(アセチル化したゼラチン)を約0.8g得た。
【0073】
(2)アセチル化したゼラチンのチオール化
50mlの蒸留水(約30℃)に、上記アセチル化したゼラチンを0.5g溶解した。上記溶液中にジチオジプロピオン酸ジアシルグリシンジヒドラジド(本出願人による特許出願(「ジヒドラジド化合物およびその調製方法と用途」出願番号200610118715.2)に開示された方法で調製されたもの)を0.5g加えて、攪拌し溶解した。その後、0.1mol/Lの塩酸を用いて溶液のpH値を4.75に調節し、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(米国Aldrich社)を0.3g加えて、マグネティックスターラーを用いて攪拌した。上記溶液中には、0.1mol/Lの塩酸適量を断続的に加えて、溶液のpH値を4.75に保持した。マグネティックスターラーを用いて攪拌し2時間反応させた後、ジチオスレイトール(米国Diagnostic Chemical社)を3.0gと、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム溶液を加えて攪拌し、溶液のpH値を8.5に調節した。そして、室温下でマグネティックスターラーを用いて攪拌し24時間反応させた後、上記溶液中に6mol/Lの塩酸をpH値が約3.0になるまで加えた。上記溶液を透析チューブ(分画分子量:3500、米国Fisher社)に入れ、10Lの0.001mol/Lの塩酸と0.3mol/Lの塩化ナトリウムの溶液を用いて5日間透析し、8時間毎に透析液を交換した。その後、再び0.001mol/Lの塩酸溶液を10L用いて3日間透析し、GPC検出(移動相は純水、紫外線波長210nmで吸光検出)で低分子不純物溶出ピークが観察されなくなるまで、8時間毎に透析液を交換した。最後に透析チューブ内の溶液を集め、冷凍乾燥して白色綿状固体を約0.3g得た。
【0074】
(3)アセチル化およびチオール化したゼラチン誘導体の特性解析
アセチル化およびチオール化したゼラチン誘導体の化学構造は下記のとおりである。
【0075】
【化18】

GPC検出(移動相は純水、紫外線波長210nmで吸光検出)で低分子不純物溶出ピークが観察されないということは、合成されたアセチル化およびチオール化したゼラチン誘導体が高度に精製され、不純物が検査機器の検出レベルより低いということを表している。
【0076】
2,4,6−トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)試薬を用いて、アセチル化したゼラチンの側鎖アミノ基を測定したところ、約52%のアミノ基がアセチル化されていた。
【0077】
ShuらがBiomacromolecules,3,1304,2002において開示した改良Ellman法によって、ホルミル化およびチオール化したゼラチン誘導体の活性チオール含有量を検出したところ、0.32mmolチオール/gであった。
【0078】
水素核磁気共鳴スペクトル(H−NMR)(溶媒:DO)の結果は、下表のとおりであった。
【表3】

【0079】
(実施例5)
スクシニルカルボキシ化およびチオール化したゼラチン誘導体(本発明の一般式(VI)で表されるゼラチン誘導体、式中、R=−CHCH−、R=−CHCH−、R=−COOH)の合成および特性
【0080】
(1)ゼラチンのチオール化
蒸留水200ml(約30℃)に、ゼラチン(B型、牛皮由来、米国Sigma社)を2グラム溶解した。上記溶液中にジチオジプロピオン酸ヒドラジド(ShuらがBiomacromolecules,3,1304,2002に開示した方法により調製されたもの)を1.2g加えて、攪拌し溶解した。その後、0.1mol/Lの塩酸を用いて溶液のpH値を4.75に調節し、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(米国Aldrich社)を0.5g加えて、マグネティックスターラーを用いて攪拌した。上記溶液中には、0.1mol/Lの塩酸適量を断続的に加えて、溶液のpH値を4.75に保持した。マグネティックスターラーを用いて攪拌し2時間反応させた後、ジチオスレイトール(米国Diagnostic Chemical社)を6.0gと、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム溶液を加えて攪拌し、溶液のpH値を8.5に調節した。そして、室温下でマグネティックスターラーを用いて攪拌し24時間反応させた後、上記溶液中に6mol/Lの塩酸をpH値が約3.0になるまで加えた。上記溶液を透析チューブ(分画分子量:3500、米国Fisher社)に入れ、10Lの0.001mol/Lの塩酸と0.3mol/Lの塩化ナトリウムの溶液を用いて5日間透析し、8時間毎に透析液を交換した。その後、再び0.001mol/Lの塩酸溶液を10L用いて3日間透析し、GPC検出(移動相は純水、紫外線波長210nmで吸光検出)で低分子不純物溶出ピークが観察されなくなるまで、8時間毎に透析液を交換した。最後に透析チューブ内の溶液を集め、冷凍乾燥して白色綿状固体(チオール化したゼラチン)を約1.3g得た。
【0081】
(2)チオール化したゼラチンのスクシニルカルボキシ化
不活性ガス(窒素ガス)雰囲気下で、蒸留水100ml(約30℃)に上記チオール化したゼラチンを1グラム溶解し、澄んだ透明溶液を得た。1.0mol/Lの水酸化ナトリウム溶液を用いて、溶液のpH値を約9.0に調節した後、マグネティックスターラーを用いて攪拌しながら分析用純度(analytical pure)の無水コハク酸を0.5g加え、適量の1.0mol/Lの水酸化ナトリウム溶液を断続的に加えて、溶液のpH値を弱アルカリ性(通常8.0〜9.5)に保持した。約30℃で20分間攪拌を行い反応させた。6mol/Lの塩酸を加え、上記溶液のpH値を約3.0に調節した。上記溶液を透析チューブ(分画分子量:3500、米国Sigma社)に入れ、10Lの0.001mol/Lの塩酸と0.3mol/Lの塩化ナトリウムの溶液を用いて5日間透析し、8時間毎に透析液を交換した。その後、再び0.001mol/Lの塩酸溶液を10L用いて3日間透析し、GPC検出(移動相は純水、紫外線波長210nmで吸光検出)で低分子不純物溶出ピークが観察されなくなるまで、8時間毎に透析液を交換した。最後に透析チューブ内の溶液を集め、冷凍乾燥して白色綿状固体(スクシニルカルボキシ化およびチオール化したゼラチン誘導体)を約0.7g得た。
【0082】
(3)スクシニルカルボキシ化およびチオール化したゼラチン誘導体の特性解析
スクシニルカルボキシ化およびチオール化したゼラチン誘導体の化学構造は下記のとおりである。
【0083】
【化19】

GPC検出(移動相は純水、紫外線波長210nmで吸光検出)で低分子不純物溶出ピークが観察されないということは、合成されたスクシニルカルボキシ化およびチオール化したゼラチン誘導体が高度に精製され、不純物が検査機器の検出レベルより低いということを表している。
【0084】
ShuらがBiomacromolecules,3,1304,2002において開示した改良Ellman法によってスクシニルカルボキシ化およびチオール化したゼラチン誘導体の活性チオール含有量を検出したところ、0.31mmolチオール/gであった。
【0085】
水素核磁気共鳴スペクトル(H−NMR)(溶媒:DO)の結果は、下表のとおりであった。
【表4】

【0086】
(実施例6)
スクシニルカルボキシ化およびチオール化したゼラチン誘導体(本発明の一般式(VII)で表されるゼラチン誘導体、式中、R=−CHCH−、R=−CHCH−)の合成および特性
【0087】
(1)ゼラチンのスクシニルカルボキシ化
蒸留水100ml(約30℃)に、ゼラチン(B型、豚皮由来、米国Sigma社)を1グラム溶解し、澄んだ透明溶液を得た。1.0mol/Lの水酸化ナトリウム溶液を用いて、溶液のpH値を約9.5に調節した後、マグネティックスターラーを用いて攪拌しながら分析用純度(analytical pure)の無水コハク酸を0.05g加え、1.0mol/Lの水酸化ナトリウム溶液適量を断続的に加えて、溶液のpH値を弱アルカリ性(通常8.0〜9.5)に保持した。約30℃で1時間攪拌を行い反応させた。その後、上記溶液を透析チューブ(分画分子量:3500、米国Fisher社)に入れ、蒸留水を用いて透析し、ゲルバーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)検出(移動相は純水、紫外線波長210nmで吸光検出)で低分子不純物溶出ピークが観察されなくなるまで、8時間毎に透析液を交換した。最後に透析チューブ内の溶液を集め、冷凍乾燥して白色綿状固体(スクシニルカルボキシ化したゼラチン)を約0.7g得た。
【0088】
(2)スクシニルカルボキシ化したゼラチンのチオール化
蒸留水50ml(約30℃)に、上記スクシニルカルボキシ化したゼラチンを0.5g溶解した。上記溶液中にジチオジプロピオン酸ヒドラジド(ShuらがBiomacromolecules,3,1304,2002に開示した方法により調製されたもの)を1.2g加えて、攪拌し溶解した。その後、0.1mol/Lの塩酸を用いて溶液のpH値を4.75に調節し、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(米国Aldrich社)を0.75g加えて、マグネティックスターラーを用いて攪拌した。上記溶液中には、0.1mol/Lの塩酸適量を断続的に加えて、溶液のpH値を4.75に保持した。マグネティックスターラーを用いて攪拌し2時間反応させた後、ジチオスレイトール(米国Diagnostic Chemical社)を5gと、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム溶液を加えて攪拌し、溶液のpH値を8.5に調節した。そして、室温下でマグネティックスターラーを用いて攪拌し24時間反応させた後、上記溶液中に6mol/Lの塩酸をpH値が約3.0になるまで加えた。上記溶液を透析チューブ(分画分子量:3500、米国Sigma社)に入れ、10Lの0.001mol/Lの塩酸と0.3mol/Lの塩化ナトリウムの溶液を用いて5日間透析し、8時間毎に透析液を交換した。その後、再び0.001mol/Lの塩酸溶液を10L用いて3日間透析し、GPC検出(移動相は純水、紫外線波長210nmで吸光検出)で低分子不純物溶出ピークが観察されなくなるまで、8時間毎に透析液を交換した。最後に透析チューブ内の溶液を集め、冷凍乾燥して白色綿状固体を約0.33g得た。
【0089】
(3)スクシニルカルボキシ化およびチオール化したゼラチン誘導体の特性解析
スクシニルカルボキシ化およびチオール化したゼラチン誘導体の化学構造は下記のとおりである。
【0090】
【化20】

GPC検出(移動相は純水、紫外線波長210nmで吸光検出)で低分子不純物溶出ピークが観察されないということは、合成されたスクシニルカルボキシ化およびチオール化したゼラチン誘導体が高度に精製され、不純物が検査機器の検出レベルより低いということを表している。
【0091】
2,4,6−トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)試薬を用いて、スクシニルカルボキシ化したゼラチンの側鎖アミノ基を測定したところ、約45%のアミノ基がスクシニルカルボキシ化されていた。
【0092】
ShuらがBiomacromolecules,3,1304,2002において開示した改良Ellman法によってスクシニルカルボキシ化およびチオール化したゼラチン誘導体の活性チオール含有量を検出したところ、0.87mmolチオール/gであった。
【0093】
水素核磁気共鳴スペクトル(H−NMR)(溶媒:DO)の結果は、下表のとおりであった。
【表5】

【0094】
(実施例7)
アセチル化、スクシニルカルボキシ化およびチオール化したゼラチン誘導体(本発明の一般式(VIII)で表されるゼラチン誘導体、式中、R=−CHCH−、R=−CH、R=−CHCH−、R=−COOH)の合成および特性
【0095】
(1)ゼラチンのチオール化
蒸留水200ml(約30℃)に、ゼラチン(B型、牛皮由来、米国Sigma社)を2グラム溶解した。上記溶液中にジチオジプロピオン酸ヒドラジド(ShuらがBiomacromolecules,3,1304,2002に開示した方法により調製されたもの)を1.2g加えて、攪拌し溶解した。その後、0.1mol/Lの塩酸を用いて溶液のpH値を4.75に調節し、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(米国Aldrich社)を0.5g加えて、マグネティックスターラーを用いて攪拌した。上記溶液中には、0.1mol/Lの塩酸適量を断続的に加えて、溶液のpH値を4.75に保持した。マグネティックスターラーを用いて攪拌し2時間反応させた後、ジチオスレイトール(米国Diagnostic Chemical社)を6gと、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム溶液を加えて攪拌し、溶液のpH値を8.5に調節した。そして、室温下でマグネティックスターラーを用いて攪拌し24時間反応させた後、上記溶液中に6mol/Lの塩酸をpH値が約3.0になるまで加えた。上記溶液を透析チューブ(分画分子量:3500、米国Sigma社)に入れ、10Lの0.001mol/Lの塩酸と0.3mol/Lの塩化ナトリウムの溶液を用いて5日間透析し、8時間毎に透析液を交換した。その後、再び0.001mol/Lの塩酸溶液を10L用いて3日間透析し、GPC検出(移動相は純水、紫外線波長210nmで吸光検出)で低分子不純物溶出ピークが観察されなくなるまで、8時間毎に透析液を交換した。最後に透析チューブ内の溶液を集め、冷凍乾燥して白色綿状固体(チオール化したゼラチン)を約1.3g得た。
【0096】
(2)チオール化したゼラチンのアセチル化およびスクシニルカルボキシ化
不活性ガス(窒素ガス)雰囲気下で、蒸留水(約30℃)100mlに上記チオール化したゼラチンを1グラム溶解し、澄んだ透明溶液を得た。1.0mol/Lの水酸化ナトリウム溶液を用いて、溶液のpH値を約9.0に調節した後、マグネティックスターラーを用いて攪拌しながら分析用純度(analytical pure)の無水コハク酸を0.5gと、無水酢酸(分析用純度)を0.15g加え、適量の1.0mol/Lの水酸化ナトリウム溶液を断続的に加えて、溶液のpH値を弱アルカリ性(通常8.0〜9.5)に保持した。約30℃で20分間攪拌を行い反応させた。6mol/Lの塩酸を加え、上記溶液のpH値を約3.0に調節した。上記溶液を透析チューブ(分画分子量:3500、米国Sigma社)に入れ、10Lの0.001mol/Lの塩酸と0.3mol/Lの塩化ナトリウムの溶液を用いて5日間透析し、8時間毎に透析液を交換した。その後、再び0.001mol/Lの塩酸溶液を10L用いて3日間透析し、GPC検出(移動相は純水、紫外線波長210nmで吸光検出)で低分子不純物溶出ピークが観察されなくなるまで、8時間毎に透析液を交換した。最後に透析チューブ内の溶液を集め、冷凍乾燥して白色綿状固体(アセチル化、スクシニルカルボキシ化およびチオール化したゼラチン誘導体)を約0.7g得た。
【0097】
(3)アセチル化、スクシニルカルボキシ化およびチオール化したゼラチン誘導体の特性解析
アセチル化、スクシニルカルボキシ化およびチオール化したゼラチン誘導体の化学構造は下記のとおりである。
【0098】
【化21】

GPC検出(移動相は純水、紫外線波長210nmで吸光検出)で低分子不純物溶出ピークが観察されないということは、合成されたスクシニルカルボキシ化およびチオール化したゼラチン誘導体が高度に精製され、不純物が検査機器の検出レベルより低いということを表している。
【0099】
ShuらがBiomacromolecules,3,1304,2002において開示した改良Ellman法によってスクシニルカルボキシ化およびチオール化したゼラチン誘導体の活性チオール含有量を検出したところ、0.47mmolチオール/gであった。
【0100】
水素核磁気共鳴スペクトル(H−NMR)(溶媒:DO)の結果は、下表のとおりであった。
【表6】

【0101】
(実施例8)
アセチル化、スクシニルカルボキシ化およびチオール化したゼラチン誘導体(本発明の一般式(IX)で表されるゼラチン誘導体、式中、R=−CHCH−、R=−CH、R=−CHCH−)の合成および特性
【0102】
(1)ゼラチンのアセチル化
蒸留水100ml(約30℃)に、ゼラチン(B型、豚皮由来、米国Sigma社)を2グラム溶解し、澄んだ透明溶液を得た。1.0mol/Lの水酸化ナトリウム溶液を用いて、溶液のpH値を約9.5に調節した後、マグネティックスターラーを用いて攪拌しながら分析用純度(analytical pure)の無水酢酸を0.02g加え、1.0mol/Lの水酸化ナトリウム溶液適量を断続的に加えて、溶液のpH値を弱アルカリ性(通常8.0〜9.5)に保持した。約30℃で1時間攪拌を行い反応させた。その後、上記溶液を透析チューブ(分画分子量:3500、米国Fisher社)に入れ、蒸留水を用いて透析し、ゲルバーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)検出(移動相は純水、紫外線波長210nmで吸光検出)で低分子不純物溶出ピークが観察されなくなるまで、8時間毎に透析液を交換した。最後に透析チューブ内の溶液を集め、冷凍乾燥して白色綿状固体(アセチル化したゼラチン)を約1.6g得た。
【0103】
(2)アセチル化したゼラチンのスクシニルカルボキシ化
蒸留水100ml(約30℃)に、上記アセチル化したゼラチンを1g溶解し、澄んだ透明溶液を得た。1.0mol/Lの水酸化ナトリウム溶液を用いて、溶液のpH値を約9.5に調節した後、マグネティックスターラーを用いて攪拌しながら無水コハク酸(分析用純度)を0.02g加え、1.0mol/Lの水酸化ナトリウム溶液適量を断続的に加えて、溶液のpH値を弱アルカリ性(通常8.0〜9.5)に保持した。約30℃で1時間攪拌を行い反応させた。その後、上記溶液を透析チューブ(分画分子量:3500、米国Fisher社)に入れ、蒸留水を用いて透析し、ゲルバーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)検出(移動相は純水、紫外線波長210nmで吸光検出)で低分子不純物溶出ピークが観察されなくなるまで、8時間毎に透析液を交換した。最後に透析チューブ内の溶液を集め、冷凍乾燥して白色綿状固体(スクシニルカルボキシ化アセチル化したゼラチン)を約0.7g得た。
【0104】
(3)スクシニルカルボキシ化およびアセチル化したゼラチンのチオール化
蒸留水50ml(約30℃)に、上記スクシニルカルボキシ化およびアセチル化したゼラチンを0.5g溶解した。上記溶液中にジチオジプロピオン酸ヒドラジド(ShuらがBiomacromolecules,3,1304,2002に開示した方法により調製されたもの)を1.2g加えて、攪拌し溶解した。その後、0.1mol/Lの塩酸を用いて溶液のpH値を4.75に調節し、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(米国Aldrich社)を0.75g加えて、マグネティックスターラーを用いて攪拌した。上記溶液中には、0.1mol/Lの塩酸適量を断続的に加えて、溶液のpH値を4.75に保持した。マグネティックスターラーを用いて攪拌し2時間反応させた後、ジチオスレイトール(米国Diagnostic Chemical社)を5gと、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム溶液を加えて攪拌し、溶液のpH値を8.5に調節した。そして、室温下でマグネティックスターラーを用いて攪拌し24時間反応させた後、上記溶液中に6mol/Lの塩酸をpH値が約3.0になるまで加えた。上記溶液を透析チューブ(分画分子量:3500、米国Sigma社)に入れ、10Lの0.001mol/Lの塩酸と0.3mol/Lの塩化ナトリウムの溶液を用いて5日間透析し、8時間毎に透析液を交換した。その後、再び0.001mol/Lの塩酸溶液を10L用いて3日間透析し、GPC検出(移動相は純水、紫外線波長210nmで吸光検出)で低分子不純物溶出ピークが観察されなくなるまで、8時間毎に透析液を交換した。最後に透析チューブ内の溶液を集め、冷凍乾燥して白色綿状固体を約0.33g得た。
【0105】
(4)アセチル化、スクシニルカルボキシ化およびチオール化したゼラチン誘導体の特性解析
アセチル化、スクシニルカルボキシ化およびチオール化したゼラチン誘導体の化学構造は下記のとおりである。
【0106】
【化22】

GPC検出(移動相は純水、紫外線波長210nmで吸光検出)で低分子不純物溶出ピークが観察されないということは、合成されたアセチル化、スクシニルカルボキシ化およびチオール化したゼラチン誘導体が高度に精製され、不純物が検査機器の検出レベルより低いということを表している。
【0107】
2,4,6−トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)試薬を用いて、ゼラチンの側鎖アミノ基を測定したところ、約21%がアセチル化され、28%がスクシニルカルボキシ化されていた。
【0108】
ShuらがBiomacromolecules,3,1304,2002において開示した改良Ellman法によって、アセチル化、スクシニルカルボキシ化およびチオール化したゼラチン誘導体の活性チオール含有量を検出したところ、0.64mmolチオール/gであった。
【0109】
水素核磁気共鳴スペクトル(H−NMR)(溶媒:DO)の結果は、下表のとおりであった。
【表7】

【0110】
(実施例9)
スクシニルカルボキシ化およびチオール化したゼラチン誘導体(本発明の一般式(X)で表されるゼラチン誘導体、式中、R=−CHCH−、R=−CHCH−)の合成および特性
【0111】
(1)ゼラチンのスクシニルカルボキシ化
蒸留水100ml(約30℃)に、ゼラチン(B型、豚皮由来、米国Sigma社)を1グラム溶解し、澄んだ透明溶液を得た。1.0mol/Lの水酸化ナトリウム溶液を用いて、溶液のpH値を約9.5に調節した後、マグネティックスターラーを用いて攪拌しながら分析用純度(analytical pure)の無水コハク酸を0.05g加え、1.0mol/Lの水酸化ナトリウム溶液適量を断続的に加えて、溶液のpH値を弱アルカリ性(通常8.0〜9.5)に保持した。約30℃で1時間攪拌を行い反応させた。その後、上記溶液を透析チューブ(分画分子量:3500、米国Fisher社)に入れ、蒸留水を用いて透析し、ゲルバーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)検出(移動相は純水、紫外線波長210nmで吸光検出)で低分子不純物溶出ピークが観察されなくなるまで、8時間毎に透析液を交換した。最後に透析チューブ内の溶液を集め、冷凍乾燥して白色綿状固体(スクシニルカルボキシ化したゼラチン)を約0.7g得た。
【0112】
(2)スクシニルカルボキシ化したゼラチンのチオール化
蒸留水50ml(約30℃)に、上記スクシニルカルボキシ化したゼラチンを0.5g溶解した。上記溶液中にジチオジプロピオン酸ヒドラジド(ShuらがBiomacromolecules,3,1304,2002に開示した方法により調製されたもの)を0.3g加えて、攪拌し溶解した。その後、0.1mol/Lの塩酸を用いて溶液のpH値を4.75に調節し、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(米国Aldrich社)を0.25g加えて、マグネティックスターラーを用いて攪拌した。上記溶液中には、0.1mol/Lの塩酸適量を断続的に加えて、溶液のpH値を4.75に保持した。マグネティックスターラーを用いて攪拌し2時間反応させた後、ジチオスレイトール(米国Diagnostic Chemical社)を2.5gと、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム溶液を加えて攪拌し、溶液のpH値を8.5に調節した。そして、室温下でマグネティックスターラーを用いて攪拌し24時間反応させた後、上記溶液中に6mol/Lの塩酸をpH値が約3.0になるまで加えた。上記溶液を透析チューブ(分画分子量:3500、米国Sigma社)に入れ、10Lの0.001mol/Lの塩酸と0.3mol/Lの塩化ナトリウムの溶液を用いて5日間透析し、8時間毎に透析液を交換した。その後、再び0.001mol/Lの塩酸溶液を10L用いて3日間透析し、GPC検出(移動相は純水、紫外線波長210nmで吸光検出)で低分子不純物溶出ピークが観察されなくなるまで、8時間毎に透析液を交換した。最後に透析チューブ内の溶液を集め、冷凍乾燥して白色綿状固体を約0.33g得た。
【0113】
(3)スクシニルカルボキシ化およびチオール化したゼラチン誘導体の特性解析
スクシニルカルボキシ化およびチオール化したゼラチン誘導体の化学構造は下記のとおりである。
【0114】
【化23】

GPC検出(移動相は純水、紫外線波長210nmで吸光検出)で低分子不純物溶出ピークが観察されないということは、合成されたスクシニルカルボキシ化およびチオール化したゼラチン誘導体が高度に精製され、不純物が検査機器の検出レベルより低いということを表している。
【0115】
2,4,6−トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)試薬を用いて、スクシニルカルボキシ化したゼラチンの側鎖アミノ基を測定したところ、約45%のアミノ基がスクシニルカルボキシ化されていた。
【0116】
ShuらがBiomacromolecules,3,1304,2002において開示した改良Ellman法によってスクシニルカルボキシ化およびチオール化したゼラチン誘導体の活性チオール含有量を検出したところ、0.64mmolチオール/gであった。
【0117】
水素核磁気共鳴スペクトル(H−NMR)(溶媒:DO)の結果は、下表のとおりであった。
【表8】

【0118】
(実施例10)
スクシニルカルボキシ化およびチオール化したゼラチン誘導体(本発明の一般式(X)で表されるゼラチン誘導体であって、式中Rは下記一般式(E)化学構造を有し、Rは−CHCH−である)
【0119】
【化24】

【0120】
(1)ゼラチンのスクシニルカルボキシ化
蒸留水100ml(約30℃)に、ゼラチン(B型、豚皮由来、米国Sigma社)を1グラム溶解し、澄んだ透明溶液を得た。1.0mol/Lの水酸化ナトリウム溶液を用いて、溶液のpH値を約9.5に調節した後、マグネティックスターラーを用いて攪拌しながら分析用純度(analytical pure)の無水コハク酸を0.05g加え、1.0mol/Lの水酸化ナトリウム溶液適量を断続的に加えて、溶液のpH値を弱アルカリ性(通常8.0〜9.5)に保持した。約30℃で1時間攪拌を行い反応させた。その後、上記溶液を透析チューブ(分画分子量:3500、米国Fisher社)に入れ、蒸留水を用いて透析し、ゲルバーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)検出(移動相は純水、紫外線波長210nmで吸光検出)で低分子不純物溶出ピークが観察されなくなるまで、8時間毎に透析液を交換した。最後に透析チューブ内の溶液を集め、冷凍乾燥して白色綿状固体(スクシニルカルボキシ化したゼラチン)を約0.7g得た。
【0121】
(2)スクシニルカルボキシ化したゼラチンのチオール化
蒸留水50ml(約30℃)に、上記スクシニルカルボキシ化したゼラチンを0.5g溶解した。上記溶液中にジコハク酸ジアシルシスタミノジヒドラジド(本出願人による特許出願(「ジヒドラジド化合物およびその調製方法と用途」出願番号200610118715.2)に開示された方法で調製されたもの)を0.5g加えて、攪拌し溶解した。その後、0.1mol/Lの塩酸を用いて溶液のpH値を4.75に調節し、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(米国Aldrich社)を0.25g加えて、マグネティックスターラーを用いて攪拌した。上記溶液中には、0.1mol/Lの塩酸適量を断続的に加えて、溶液のpH値を4.75に保持した。マグネティックスターラーを用いて攪拌し2時間反応させた後、ジチオスレイトール(米国Diagnostic Chemical社)を3.0gと、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム溶液を加えて攪拌し、溶液のpH値を8.5に調節した。そして、室温下でマグネティックスターラーを用いて攪拌し24時間反応させた後、上記溶液中に6mol/Lの塩酸をpH値が約3.0になるまで加えた。上記溶液を透析チューブ(分画分子量:3500、米国Sigma社)に入れ、10Lの0.001mol/Lの塩酸と0.3mol/Lの塩化ナトリウムの溶液を用いて5日間透析し、8時間毎に透析液を交換した。その後、再び0.001mol/Lの塩酸溶液を10L用いて3日間透析し、GPC検出(移動相は純水、紫外線波長210nmで吸光検出)で低分子不純物溶出ピークが観察されなくなるまで、8時間毎に透析液を交換した。最後に透析チューブ内の溶液を集め、冷凍乾燥して白色綿状固体を約0.33g得た。
【0122】
(3)スクシニルカルボキシ化およびチオール化したゼラチン誘導体の特性解析
スクシニルカルボキシ化およびチオール化したゼラチン誘導体の化学構造は下記のとおりである。
【0123】
【化25】

GPC検出(移動相は純水、紫外線波長210nmで吸光検出)で低分子不純物溶出ピークが観察されないということは、合成されたスクシニルカルボキシ化およびチオール化したゼラチン誘導体が高度に精製され、不純物が検査機器の検出レベルより低いということを表している。
【0124】
2,4,6−トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)試薬を用いて、スクシニルカルボキシ化したゼラチンの側鎖アミノ基を測定したところ、約45%のアミノ基がスクシニルカルボキシ化されていた。
【0125】
ShuらがBiomacromolecules,3,1304,2002において開示した改良Ellman法によってスクシニルカルボキシ化およびチオール化したゼラチン誘導体の活性チオール含有量を検出したところ、0.61mmolチオール/gであった。
【0126】
水素核磁気共鳴スペクトル(H−NMR)(溶媒:DO)の結果は、下表のとおりであった。
【表9】

【0127】
(実施例11)
スクシニルカルボキシ化およびチオール化したゼラチン誘導体(本発明の一般式(XI)で表されるゼラチン誘導体、式中、R=−CHCH−、R=−CH、R=−CHCH−)の合成および特性
【0128】
(1)ゼラチンのアセチル化
蒸留水100ml(約30℃)に、ゼラチン(B型、豚皮由来、米国Sigma社)を2グラム溶解し、澄んだ透明溶液を得た。1.0mol/Lの水酸化ナトリウム溶液を用いて、溶液のpH値を約9.5に調節した後、マグネティックスターラーを用いて攪拌しながら分析用純度(analytical pure)の無水酢酸を0.02g加え、1.0mol/Lの水酸化ナトリウム溶液適量を断続的に加えて、溶液のpH値を弱アルカリ性(通常8.0〜9.5)に保持した。約30℃で1時間攪拌を行い反応させた。その後、上記溶液を透析チューブ(分画分子量:3500、米国Fisher社)に入れ、蒸留水を用いて透析し、ゲルバーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)検出(移動相は純水、紫外線波長210nmで吸光検出)で低分子不純物溶出ピークが観察されなくなるまで、8時間毎に透析液を交換した。最後に透析チューブ内の溶液を集め、冷凍乾燥して白色綿状固体(アセチル化したゼラチン)を約1.6g得た。
【0129】
(2)アセチル化したゼラチンのスクシニルカルボキシ化
蒸留水100ml(約30℃)に、上記アセチル化したゼラチンを1g溶解した。1.0mol/Lの水酸化ナトリウム溶液を用いて、溶液のpH値を約9.5に調節した後、マグネティックスターラーを用いて攪拌しながら分析用純度(analytical pure)の無水コハク酸を0.02g加え、1.0mol/Lの水酸化ナトリウム溶液適量を断続的に加えて、溶液のpH値を弱アルカリ性(通常8.0〜9.5)に保持した。約30℃で1時間攪拌を行い反応させた。その後、上記溶液を透析チューブ(分画分子量:3500、米国Fisher社)に入れ、蒸留水を用いて透析し、ゲルバーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)検出(移動相は純水、紫外線波長210nmで吸光検出)で低分子不純物溶出ピークが観察されなくなるまで、8時間毎に透析液を交換した。最後に透析チューブ内の溶液を集め、冷凍乾燥して白色綿状固体(スクシニルカルボキシ化アセチル化したゼラチン)を約0.7g得た。
【0130】
(3)スクシニルカルボキシ化およびアセチル化したゼラチンのチオール化
蒸留水50ml(約30℃)に、上記スクシニルカルボキシ化およびアセチル化したゼラチンを0.5g溶解した。上記溶液中にジチオジプロピオン酸ヒドラジド(ShuらがBiomacromolecules,3,1304,2002に開示した方法により調製されたもの)を0.3g加えて、攪拌し溶解した。その後、0.1mol/Lの塩酸を用いて溶液のpH値を4.75に調節し、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(米国Aldrich社)を0.25g加えて、マグネティックスターラーを用いて攪拌した。上記溶液中には、0.1mol/Lの塩酸適量を断続的に加えて、溶液のpH値を4.75に保持した。マグネティックスターラーを用いて攪拌し2時間反応させた後、ジチオスレイトール(米国Diagnostic Chemical社)を2.5gと、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム溶液を加えて攪拌し、溶液のpH値を8.5に調節した。そして、室温下でマグネティックスターラーを用いて攪拌し24時間反応させた後、上記溶液中に6mol/Lの塩酸をpH値が約3.0になるまで加えた。上記溶液を透析チューブ(分画分子量:3500、米国Sigma社)に入れ、10Lの0.001mol/Lの塩酸と0.3mol/Lの塩化ナトリウムの溶液を用いて5日間透析し、8時間毎に透析液を交換した。その後、再び0.001mol/Lの塩酸溶液を10L用いて3日間透析し、GPC検出(移動相は純水、紫外線波長210nmで吸光検出)で低分子不純物溶出ピークが観察されなくなるまで、8時間毎に透析液を交換した。最後に透析チューブ内の溶液を集め、冷凍乾燥して白色綿状固体を約0.33g得た。
【0131】
(4)スクシニルカルボキシ化、アセチル化およびチオール化したゼラチン誘導体の特性解析
スクシニルカルボキシ化、アセチル化およびチオール化したゼラチン誘導体の化学構造は下記のとおりである。
【0132】
【化26】

GPC検出(移動相は純水、紫外線波長210nmで吸光検出)で低分子不純物溶出ピークが観察されないということは、合成されたスクシニルカルボキシ化およびチオール化したゼラチン誘導体が高度に精製され、不純物が検査機器の検出レベルより低いということを表している。
【0133】
2,4,6−トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)試薬を用いて、ゼラチンの側鎖アミノ基を測定したところ、約21%がアセチル化され、28%がスクシニルカルボキシ化されていた。
【0134】
ShuらがBiomacromolecules,3,1304,2002において開示した改良Ellman法によってスクシニルカルボキシ化およびチオール化したゼラチン誘導体の活性チオール含有量を検出したところ、0.54mmolチオール/gであった。
【0135】
水素核磁気共鳴スペクトル(H−NMR)(溶媒:DO)の結果は、下表のとおりであった。
【表10】

【0136】
(実施例12)
多重修飾されたゼラチン誘導体を架橋したヒドロゲルの調製
1、多重修飾されたゼラチン誘導体をポリエチレングリコールジビニルスルフォンで架橋するヒドロゲルの調製
0.1mol/Lのリン酸塩バッファ溶液(pH7.0)10mlに、実施例1で調製したアセチル化およびチオール化したゼラチン誘導体を0.3g溶解し、澄んだ透明溶液を得た後、上記溶液中に0.1mol/Lの水酸化ナトリウムをpH7.4になるまで適量加えた。0.1mol/Lのリン酸塩バッファ溶液(pH7.0)2.5mlに、ポリエチレングリコールジビニルスルフォン(分子量3400、米国Nektar Therapeutics社)を0.1g溶解し、澄んだ透明溶液を得た。そして、上記2.5mlのポリエチレングリコールジビニルスルフォン溶液を、10mlのアセチル化およびチオール化したゼラチン誘導体溶液に加え、ただちにマグネティックスターラーを用いて30秒攪拌した後、室温下で30分間静置した。溶液の粘度は徐々に増大し、ゲルが形成された。
【0137】
2、多重修飾されたゼラチン誘導体をポリエチレングリコールジアクリル酸エステルで架橋するヒドロゲルの調製
0.1mol/Lのリン酸塩バッファ溶液(pH7.0)10mlに、実施例3で調製したブチニル化およびチオール化したゼラチン誘導体を0.25g溶解し、澄んだ透明溶液を得た後、上記溶液中に0.1mol/Lの水酸化ナトリウムをpH7.4になるまで適量加えた。0.1mol/Lのリン酸塩バッファ溶液(pH7.0)2.5mlに、ポリエチレングリコールジビニルスルフォン(分子量3400、米国Nektar Therapeutics社)を0.1g溶解し、澄んだ透明溶液を得た。そして、上記2.5mlのポリエチレングリコールジビニルスルフォン溶液を、10mlのブチリル化およびチオール化したゼラチン誘導体溶液に加え、ただちにマグネティックスターラーを用いて30秒攪拌した後、室温下で30分間静置した。溶液の粘度は徐々に増大し、ゲルが形成された。
【0138】
3、多重修飾されたゼラチン誘導体をポリエチレングリコールジビニルスルフォンで架橋するヒドロゲルの調製
0.1mol/Lのリン酸塩バッファ溶液(pH7.0)10mlに、実施例5で調製したスクシニルカルボキシ化およびチオール化したゼラチン誘導体を0.2g溶解し、澄んだ透明溶液を得た後、上記溶液中に0.1mol/Lの水酸化ナトリウムをpH7.4になるまで適量加えた。0.1mol/Lのリン酸塩バッファ溶液(pH7.0)2.5mlに、ポリエチレングリコールジビニルスルフォン(分子量3400、米国Nektar Therapeutics社)を0.1g溶解し、澄んだ透明溶液を得た。そして、上記2.5mlのポリエチレングリコールジビニルスルフォン溶液を、10mlのスクシニルカルボキシ化およびチオール化したゼラチン誘導体溶液に加え、ただちにマグネティックスターラーを用いて30秒攪拌した後、室温下で30分間静置した。溶液の粘度は徐々に増大し、ゲルが形成された。
【0139】
4、多重修飾されたゼラチン誘導体をポリエチレングリコールジビニルスルフォンで架橋するヒドロゲルの調製
0.1mol/Lのリン酸塩バッファ溶液(pH7.0)10mlに、実施例6で調製したスクシニルカルボキシ化およびチオール化したゼラチン誘導体を0.3g溶解し、澄んだ透明溶液を得た後、上記溶液中に0.1mol/Lの水酸化ナトリウムをpH7.4になるまで適量加えた。0.1mol/Lのリン酸塩バッファ溶液(pH7.0)2.5mlに、ポリエチレングリコールジビニルスルフォン(分子量3400、米国Nektar Therapeutics社)を0.1g溶解し、澄んだ透明溶液を得た。そして、上記2.5mlのポリエチレングリコールジビニルスルフォン溶液を、10mlのスクシニルカルボキシ化およびチオール化したゼラチン誘導体溶液に加え、ただちにマグネティックスターラーを用いて30秒攪拌した後、室温下で30分間静置した。溶液の粘度は徐々に増大し、ゲルが形成された。
【0140】
5、多重修飾されたゼラチン誘導体をポリエチレングリコールジビニルスルフォンで架橋するヒドロゲルの調製
0.1mol/Lのリン酸塩バッファ溶液(pH7.0)10mlに、実施例8で調製したアセチル化、スクシニルカルボキシ化およびチオール化したゼラチン誘導体を0.3g溶解し、澄んだ透明溶液を得た後、上記溶液中に0.1mol/Lの水酸化ナトリウムをpH7.4になるまで適量加えた。0.1mol/Lのリン酸塩バッファ溶液(pH7.0)2.5mlに、ポリエチレングリコールジビニルスルフォン(分子量3400、米国Nektar Therapeutics社)を0.1g溶解し、澄んだ透明溶液を得た。そして、上記2.5mlのポリエチレングリコールジビニルスルフォン溶液を、10mlのアセチル化、スクシニルカルボキシ化およびチオール化したゼラチン誘導体溶液に加え、ただちにマグネティックスターラーを用いて30秒攪拌した後、室温下で30分間静置した。溶液の粘度は徐々に増大し、ゲルが形成された。
【0141】
6、多重修飾されたゼラチン誘導体をポリエチレングリコールジビニルスルフォンで架橋するヒドロゲルの調製
0.1mol/Lのリン酸塩バッファ溶液(pH7.0)10mlに、実施例9で調製したスクシニルカルボキシ化およびチオール化したゼラチン誘導体を0.3g溶解し、澄んだ透明溶液を得た後、上記溶液中に0.1mol/Lの水酸化ナトリウムをpH7.4になるまで適量加えた。0.1mol/Lのリン酸塩バッファ溶液(pH7.0)2.5mlに、ポリエチレングリコールジビニルスルフォン(分子量3400、米国Nektar Therapeutics社)を0.1g溶解し、澄んだ透明溶液を得た。そして、上記2.5mlのポリエチレングリコールジビニルスルフォン溶液を、10mlのスクシニルカルボキシ化およびチオール化したゼラチン誘導体溶液に加え、ただちにマグネティックスターラーを用いて30秒攪拌した後、室温下で30分間静置した。溶液の粘度は徐々に増大し、ゲルが形成された。
【0142】
7、多重修飾されたゼラチン誘導体をポリエチレングリコールジビニルスルフォンおよびポリエチレングリコールジアクリル酸エステルで架橋するヒドロゲルの調製
0.1mol/Lのリン酸塩バッファ溶液(pH7.0)10mlに、実施例1で調製したアセチル化およびチオール化したゼラチン誘導体を0.15gと、実施例9で調製したスクシニルカルボキシ化およびチオール化したゼラチン誘導体0.15gとを同時に溶解し、澄んだ透明溶液を得た後、上記溶液中に0.1mol/Lの水酸化ナトリウムをpH7.4になるまで適量加えた。0.1mol/Lのリン酸塩バッファ溶液(pH7.0)2.5mlに、ポリエチレングリコールジビニルスルフォン(分子量3400、米国Nektar Therapeutics社)0.05gと、ポリエチレングリコールジアクリル酸エステル(分子量3400、米国Nektar Therapeutics社)0.05gとを同時に溶解し、澄んだ透明溶液を得た。そして、上記2.5mlのポリエチレングリコールビニルスルフォン/ポリエチレングリコールジアクリル酸エステル溶液を、10mlのゼラチン誘導体溶液に加え、ただちにマグネティックスターラーを用いて30秒攪拌した後、室温下で30分間静置した。溶液の粘度は徐々に増大し、ゲルが形成された。
【0143】
(実施例13)
多重修飾されたゼラチン誘導体を架橋したヒドロゲルを細胞接着および増殖の基材とする
実施例12のようにして、24孔の標準細胞培養プレート内に、6種類のゼラチン誘導体ヒドロゲルを各孔に0.4mlずつ調製した。12時間後、細胞培養プレート全体を75%のアルコール溶液に浸して2時間消毒した。そして、細胞培養プレートを無菌生理食塩水に浸して3回洗浄した。各孔に細胞培養液(DMEM、10%牛血清)1mlと、2万個のNIH3T3繊維芽細胞を加えた。37℃のCOインキュベータで24時間培養した。顕微鏡で観察したところ、ポリエチレングリコールジアクリル酸エステルで架橋されたヒアルロン酸―ゼラチン二液型ヒドロゲルの表面の細胞の接着と広がりは、ブランクの細胞培養プレートと似ており、細胞は紡錘形を呈していた。この結果から、ゼラチン誘導体架橋ヒドロゲルは細胞接着および増殖の好適な基材であることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0144】
本発明の多重修飾されたゼラチン誘導体は、変化に富んだ化学構造と、多様な性能を有する。一般式(V)、(VIII)、(IX)および(XI)で表される本発明の多重修飾されたゼラチン誘導体においては、ゼラチンの側鎖アミノ酸の修飾によって疎水基が導入されているため、本発明の多重修飾されたゼラチン誘導体の疎水性能が向上し、水溶液の性質が変更されて、疎水ミセルの形成が促進され、疎水性物質(例えば、薬品など)に対する可溶化が向上している。また、同時にゼラチンの側鎖カルボキシル基のチオール化によって、さらなる化学的修飾のための、高い反応性を有する活性点となりうる(例えば、高度な生体適合性をもつ架橋剤で架橋材料を調製できる等の)活性チオールが与えられている。一般式(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、(X)および(XI)で表される本発明の多重修飾されたゼラチン誘導体においては、ゼラチンの側鎖アミノ基の修飾によって、一定数以上のカルボキシル基が導入され、水溶液の性質が変更されて、本発明の多重修飾されたゼラチン誘導体の親水性能が向上した。また、さらに重要なことは、アミノ基をカルボキシル基に転化することによって、さらなる化学的修飾のためのカルボキシル基の含有量が大幅に増加したことである(例えば、B型ゼラチンの側鎖カルボキシル基含有量を24%にまで増加させることができ、A型ゼラチンの側鎖カルボキシル基含有量を50%にまで増加させることができる)。また、これらカルボキシル基と、ゼラチン自身のカルボキシル基は、いずれもチオール化が可能であり、それによってさらなる化学的修飾のための、高い反応性を有する活性点となりうる(例えば、高度な生体適合性を有する架橋剤で架橋材料を調製できる等の)活性チオールが与えられる。
本発明によれば、高い生体適合性を有するゼラチン架橋材料を簡便に調製することができ、これらゼラチン架橋材料は、フィルム、スポンジ、ゲル等の各種の形態とすることが可能であり、細胞培養用基材等に用いることができる。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)の構造と、下記一般式(II)、(III)および(IV)のうち、少なくとも一つの構造とを、具備する多重修飾されたゼラチン誘導体(multiple modified derivatives of gelatin)。
【化1】

[前記式中、GはA型ゼラチン残基(gelatin residue)、B型ゼラチン残基、遺伝子組み換えゼラチン残基を含むゼラチン残基であり、
はアルキレン基またはアミド結合を1つ含む連結基であり、
はアルキル基またはアリール基であり、
はアルキレン基であり、
はカルボキシル基またはカルボキシル基の塩である]
【請求項2】
前記式におけるRとRはアルキレン基であり、Rはアルキル基であり、Rはカルボキシル基、カルボキシル基のナトリウム塩またはカルボキシル基のカリウム塩である、請求項1に記載の多重修飾されたゼラチン誘導体。
【請求項3】
前記式におけるRとRはいずれも炭素原子数1〜15のアルキレン基である、請求項2に記載の多重修飾されたゼラチン誘導体。
【請求項4】
前記式におけるRは炭素原子数1〜15のアルキル基である、請求項2に記載の多重修飾されたゼラチン誘導体。
【請求項5】
前記式におけるRはアミド結合を1つ含む連結基であり、Rはアルキレン基であり、Rはアルキル基である、請求項1に記載の多重修飾されたゼラチン誘導体。
【請求項6】
前記式におけるRはアミド結合を1つ含む連結基であり、Rは炭素原子数1〜15のアルキレン基であり、Rは炭素原子数1〜15のアルキル基である、請求項5に記載の多重修飾されたゼラチン誘導体。
【請求項7】
前記アミド結合を1つ含む連結基は、下記一般式(A)または(B)の化学構造を有する、請求項1または5または6に記載の多重修飾されたゼラチン誘導体。
【化2】

[R’とR”はアルキレン基、置換アルキレン基、アリール基またはポリエーテル基である]
【請求項8】
一種類または一種類以上の請求項1〜7のいずれかに記載の多重修飾されたゼラチン誘導体を、同一のまたは異なるチオールとの反応性を有する官能基を少なくとも2つ含む架橋剤で、架橋させて生成した、架橋されたゼラチン材料。
【請求項9】
前記チオールと反応性を有する官能基を含む架橋剤は、チオールとの反応性を有する官能基を有するアームを2つ、3つまたは更に多く有するポリエチレングリコール誘導体を含み、前記ポリエチレングリコール誘導体の分子量は100〜1000000である、請求項8に記載の架橋されたゼラチン材料。
【請求項10】
前記チオールとの反応性を有する官能基は、マレイミド、ビニルスルフォン、α,β不飽和アクリル酸エステル、α,β不飽和メタクリル酸エステル、ヨードプロピオン酸エステル、ブロモプロピオン酸エステル、ヨードプロピオンアミド、ブロモプロピオンアミド、ジチオピリジンおよびN−ヒドロキシルスクシンイミド活性化エステルを含む、請求項9に記載の架橋されたゼラチン材料。

【図1】
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【公表番号】特表2010−515788(P2010−515788A)
【公表日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−545047(P2009−545047)
【出願日】平成19年9月29日(2007.9.29)
【国際出願番号】PCT/CN2007/002863
【国際公開番号】WO2008/083542
【国際公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(509164005)常州百瑞吉生物医▲薬▼有限公司 (3)
【氏名又は名称原語表記】BIOREGEN BIOMEDICAL (CHANGZHOU) CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No. 165 East East Rd., Changzhou, Jiangsu 213025 CHINA
【Fターム(参考)】